【解決手段】本発明は、タングステン含有半導体デバイスの化学機械平坦化(CMP)において使用できる組成物、方法およびシステムに関する。二環式アミジン添加剤を含むCMPスラリーは低ディッシングおよび低浸食トポグラフィを提供する。
前記研磨剤が、コロイド状シリカ;ヒュームドシリカ;アルミナ;チタニア;セリア;ジルコニア;活性化剤含有粒子、複合粒子、格子ドープおよび無機酸化物粒子;ならびにカチオン性またはアニオン性電荷変性粒子からなる群から選択される表面変性粒子の少なくとも1種を含む、請求項1に記載のCMP組成物。
前記酸化剤が、過酸化水素;過酸化尿素;ペルオキシギ酸;過酢酸;プロパンペルオキシ酸;置換もしくは非置換ブタンペルオキシ酸;ヒドロペルオキシ−アセトアルデヒド;過ヨウ素酸カリウム;ペルオキシ一硫酸アンモニウム;ならびに亜硝酸第二鉄;KClO4;KBrO4;およびKMnO4のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載のCMP組成物。
前記二環式アミジン化合物が、2−フェニル−2−イミダゾリン;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン溶液;1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン;1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン;7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン;3,3,6,9,9−ペンタメチル−2,10−ジアザビシクロ[4.4.0]デカ−1−エン;および1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンのうちの少なくとも1種を含む、請求項8に記載のCMP組成物。
可溶性の活性化剤化合物;活性化剤化合物で変性された表面を有する粒子;粒子コアと表面の両方に含まれる活性化剤を有する粒子;およびシェル表面上に露出した活性化剤を含むコア−シェル複合粒子からなる群から選択される活性化剤を更に含む、請求項1に記載のCMP組成物。
前記活性化剤が、シュウ酸アンモニウム鉄(III)三水和物;クエン酸鉄(III)三塩基性一水和物;アセチルアセトン酸鉄(III);硝酸鉄(III)およびその水和塩;ならびにエチレンジアミン四酢酸鉄(III)ナトリウム塩水和物のうちの少なくとも1種を含む可溶性の活性化剤化合物である、請求項15に記載のCMP組成物。
アジピン酸;フタル酸;クエン酸;マロン酸;シュウ酸、オルトフタル酸;リン酸;置換もしくは非置換ホスホン酸;ホスホネート化合物;およびニトリルの少なくとも1種を含む安定剤を更に含む、請求項1に記載のCMP組成物。
サルコシネート;炭化水素置換サルコシネート;アミノ酸;エチレンオキシド繰り返し単位を含む有機ポリマーおよびコポリマー;エトキシル化界面活性剤;窒素−水素結合、スルフィド、オキサゾリジンまたは1つの化合物中に官能基の混合物を有しない窒素含有複素環;アルキルアンモニウムイオンを形成する3個以上の炭素原子を有する窒素含有化合物;3個以上の炭素原子を有するアミノアルキル;少なくとも1個の窒素含有複素環または第三級もしくは第四級窒素原子の繰り返し基を含むポリマー腐食抑制剤;ポリカチオン性アミン化合物;シクロデキストリン化合物;ポリエチレンイミン化合物;グリコール酸;キトサン;糖アルコール;ポリサッカリド;アルギネート化合物;ホスホニウム化合物およびスルホン酸ポリマーのうちの少なくとも1種を含むディッシング低減剤を更に含む、請求項1に記載のCMP組成物。
シリカ、過酸化水素、硝酸第二鉄、グリシン、マロン酸、および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンまたはその加水分解誘導体を含む、請求項1に記載のCMP組成物。
前記CMP組成物が0.0001〜0.5質量パーセントの1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンまたはその加水分解誘導体を含む、請求項19に記載のCMP組成物。
c)前記タングステン含有表面が1000オングストローム未満のディッシングトポグラフィと1000オングストローム未満の浸食トポグラフィとを含むようになるまで工程(b)を実施し続けること、
を更に含む、請求項22に記載の方法。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、CMPスラリー(組成物または配合物)に関し、具体的には、半導体デバイスまたは基材の研磨において望ましい除去速度を維持しつつ、浸食およびディッシングを低減するためにCMPスラリーを使用するシステムおよび方法に関する。さらに具体的には、本発明は、CMPスラリー、具体的には、タングステンを含有する半導体デバイスまたは基材の研磨において望ましい除去速度を維持しつつ、ディッシングおよび浸食を低減するようにCMPスラリーを使用するシステムおよび方法に関する。
【0011】
さらに、本発明のいくつかの具体的な態様の概略を以下で説明する。
【0012】
態様1:以下の成分を含む化学機械平坦化(CMP)組成物であって、
研磨剤;
酸化剤;
アミジン化合物、またはその加水分解誘導体であって、二重結合により第一窒素原子に、そして単結合により第二窒素原子に結合した炭素原子を含み、このアミジン化合物は、以下の構造、
【化1】
式中、
R
1、R
2、R
3およびR
4は、酸素;窒素;水素;炭素;複素環式炭素環;置換されていても非置換であってもよい飽和もしくは不飽和環状基;飽和もしくは不飽和であってよく、そして飽和もしくは不飽和環状基を含み得る、線状もしくは分枝C
1〜C
20アルキル基;ならびにR
1、R
2、R
3、R
4のうちの2つもしくは3つから形成される飽和もしくは不飽和環構造であって、随意選択的に置換されていてもよい環からなる群から独立して選択される、
を有する、アミジン化合物と、
溶媒と、
を含む、化学機械平坦化(CMP)組成物。
【0013】
態様2:前記アミジン化合物が、9を超える少なくとも1つのpKaを含む、態様1に記載のCMP組成物。
【0014】
態様3:1〜7の範囲のpHを有する、態様1〜2のいずれかに記載のCMP組成物。
【0015】
態様4:2〜5の範囲のpHを有する、態様1〜3のいずれかに記載のCMP組成物。
【0016】
態様5:前記研磨剤が、コロイド状シリカ;ヒュームドシリカ;アルミナ;チタニア;セリア;ジルコニア;活性化剤含有粒子、複合粒子、格子ドープ(lattice doped)および無機酸化物粒子からなる群から選択される表面変性粒子;ならびにカチオン性またはアニオン性電荷変性粒子のうちの少なくとも1種を含む、態様1〜4のいずれかに記載のCMP組成物。
【0017】
態様6:前記酸化剤が、過酸化水素;過酸化尿素;ペルオキシギ酸;過酢酸;プロパンペルオキシ酸(peroxoic acid);置換もしくは非置換ブタンペルオキシ酸;ヒドロペルオキシ−アセトアルデヒド;過ヨウ素酸カリウム;ペルオキシ一硫酸アンモニウム;ならびに亜硝酸第二鉄;KClO
4;KBrO
4;およびKMnO
4のうちの少なくとも1種を含む、態様1〜5のいずれかに記載のCMP組成物。
【0018】
態様7:前記アミジン化合物が複素環式炭素環を含む、態様1〜6のいずれかに記載のCMP組成物。
【0019】
態様8:前記アミジン化合物が二環式アミジン化合物または加水分解誘導体である、態様1〜7のいずれかに記載のCMP組成物。
【0020】
態様9:前記アミジン化合物が正の電荷分布を有する、態様8に記載のCMP組成物。
【0021】
態様10:前記二環式アミジン化合物が:2−フェニル−2−イミダゾリン;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン溶液;1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン;1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン;7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン;3,3,6,9,9−ペンタメチル−2,10−ジアザビシクロ[4.4.0]デカ−1−エン;および1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンのうちの少なくとも1種を含む、態様8に記載のCMP組成物。
【0022】
態様11:前記アミジン化合物が1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、またはその加水分解誘導体である、態様1〜10のいずれかに記載のCMP組成物。
【0023】
態様12:前記アミジン化合物が2−フェニル−2−イミダゾリンまたはその加水分解誘導体である、態様1〜11のいずれかに記載のCMP組成物。
【0024】
態様13:前記溶媒が、水、アルコール、エーテル、ケトン、グリコール、有機酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1〜12のいずれかに記載のCMP組成物。
【0025】
態様14:前記アミジン化合物がpH2.3で8ミリボルト超のゼータ電位を有する二環式アミジン化合物の加水分解誘導体である、態様1〜13のいずれかに記載のCMP組成物。
【0026】
態様15:可溶性活性化剤化合物;活性化剤化合物で変性された表面を有する粒子;前記粒子コアと前記表面の両方に含まれる活性化剤を有する粒子;および前記シェル表面上に露出した活性化剤を含むコア−シェル複合粒子からなる群から選択される活性化剤をさらに含む、態様1〜14のいずれかに記載のCMP組成物。
【0027】
態様16:前記活性化剤が、シュウ酸アンモニウム鉄(III)三水和物;クエン酸鉄(III)三塩基性一水和物;アセチルアセトン酸鉄(III);硝酸鉄(III)およびその水和塩;ならびにエチレンジアミン四酢酸鉄(III)ナトリウム塩水和物のうちの少なくとも1種を含む可溶性の活性化剤化合物である、態様15に記載のCMP組成物。
【0028】
態様17:アジピン酸;フタル酸;クエン酸;マロン酸;シュウ酸、オルトフタル酸;リン酸;置換もしくは非置換ホスホン酸;ホスホネート化合物;およびニトリルの少なくとも1種を含む安定剤をさらに含む、態様1〜16のいずれかに記載のCMP組成物。
【0029】
態様18:サルコシネート;炭化水素置換サルコシネート;アミノ酸;有機ポリマーおよびエチレンオキシド繰り返し単位を含むコポリマー;エトキシル化界面活性剤;一つの化合物において窒素−水素結合、スルフィド、オキサゾリジンまたは官能基の混合物を含まない窒素含有複素環;アルキルアンモニウムイオンを形成する3個以上の炭素原子を有する窒素含有化合物;3個以上の炭素原子を有するアミノアルキル;少なくとも1個の窒素含有複素環または第三もしくは第四窒素原子の繰り返し基を含むポリマー腐食抑制剤;ポリカチオン性アミン化合物;シクロデキストリン化合物;ポリエチレンイミン化合物;グリコール酸;キトサン;糖アルコール;ポリサッカライド;アルギネート化合物;ホスホニウム化合物およびスルホン酸ポリマーのうちの少なくとも1種を含むディッシング低減剤をさらに含む、態様1〜17のいずれかに記載のCMP組成物。
【0030】
態様19:シリカ、過酸化水素、硝酸第二鉄、グリシン、マロン酸、および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンまたはその加水分解誘導体を含む、態様1〜18のいずれかに記載のCMP組成物。
【0031】
態様20:前記CMP組成物が0.0001〜0.5質量パーセントの1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンまたはその加水分解誘導体を含む、態様19に記載のCMP組成物。
【0032】
態様21:タングステンを含む少なくとも1つの表面を有する半導体基材の化学機械平坦化のためのシステムであって、
研磨パッドと、
態様1に記載の研磨組成物と、
前記研磨組成物を前記研磨パッドに適用するように操作的に構成されたアプリケータと、
タングステンを含む前記少なくとも1つの表面を前記研磨パッドと接触させるように操作的に構成された支持体と、
を含む、システム。
【0033】
態様22:半導体デバイスのタングステン含有表面の化学機械平坦化(CMP)のための方法であって、以下の工程、
a)態様1に記載の組成物を研磨パッドに適用することと、
b)工程(a)を実施した後に、前記タングステン含有表面を前記研磨パッドで研磨して、研磨されたタングステン含有表面を生成すること、
を含む、方法。
【0034】
態様23:態様22に記載の方法が、
c)前記タングステン含有表面が1000オングストローム未満のディッシングトポグラフィと1000オングストローム未満の浸食トポグラフィとを含むようになるまで工程(b)を実施し続けること、
をさらに含む、態様22に記載の方法。
【0035】
研磨組成物中の少なくとも1種のアミジン化合物は、複素環式炭素環の一部、二環式炭素化合物の一部であり得るか、または二環式アミジン化合物である。二環式アミジン化合物は正の電荷分布を有し得る。二環式アミジン化合物としては、限定されるものではないが、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン溶液、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、3,3,6,9,9−ペンタメチル−2,10−ジアザビシクロ[4.4.0]デカ−1−エン、および1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンが挙げられる。1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)が好ましい。
【0036】
いくつかの他の態様において、少なくとも1種のアミジン化合物はアミジン化合物の加水分解された形態を含み得る。
【0037】
二環式アミジン化合物(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)の加水分解反応の一例を以下の式1に示す:
【0039】
CMP組成物は、i)スラリー中の可溶性活性化剤化合物(ii)活性化剤化合物で変性された表面を有する粒子(iii)粒子コアおよび表面の両方に含まれる活性化剤を有する粒子(iv)表面上に露出した活性化剤を含むコア−シェル複合粒子からなる群から選択される活性化剤をさらに含み得る。可溶性の鉄化合物は好ましい活性化剤である。
【0040】
CMP組成物は、アジピン酸、フタル酸、クエン酸、マロン酸およびオルトフタル酸;から選択される有機酸;リン酸;置換もしくは非置換ホスホン酸;ホスホネート化合物;ニトリル;活性化剤材料と結合することができ、したがって酸化剤を分解する反応を低減することができるリガンド;およびそれらの組み合わせからなる群から選択される安定剤をさらに含み得る。マロン酸が好ましい安定剤である。
【0041】
CMP組成物は、サルコシネートおよび関連するカルボン酸化合物;炭化水素置換サルコシネート;アミノ酸;ポリエチレンオキシド(PEO)などの、エチレンオキシド繰り返し単位を含む分子を有する有機ポリマーおよびコポリマー;エトキシル化界面活性剤;1つの化合物中に窒素−水素結合、スルフィド、オキサゾリジンまたは官能基の混合物を含まない窒素含有複素環;アルキルアンモニウムイオンを形成する3個以上の炭素原子を有する窒素含有化合物;3個以上の炭素原子を有するアミノアルキル;少なくとも1つの窒素含有複素環または第三級もしくは第四級窒素原子の繰り返し基を含むポリマー腐食抑制剤;ポリカチオン性アミン化合物;シクロデキストリン化合物;ポリエチレンイミン化合物;グリコール酸;キトサン;糖アルコール;ポリサッカリド;アルギネート化合物;ホスホニウム化合物;スルホン酸ポリマーからなる群から選択されるディッシング低減添加剤またはディッシング低減剤をさらに含んでもよい。グリシンが好ましいディッシング低減添加剤である。
【0042】
CMP組成物は、界面活性剤、分散剤、キレート化剤、膜形成腐食防止剤、pH調節剤、殺生物剤、および研磨促進剤を随意選択的にさらに含んでもよい。
【0043】
別の態様において、タングステンを研磨するためのCMP組成物は、研磨剤粒子、少なくとも1種の酸化剤、活性化剤、および少なくとも1種の二環式アミジン化合物を含み、スラリーのpHは1〜14であり、さらに好ましくは1〜7であり、最も好ましくは2〜5である。
【0044】
別の態様において、タングステン表面を研磨するためのCMP組成物は、研磨剤粒子と、過酸化水素と、可溶性鉄化合物、鉄化合物の存在下で過酸化水素を安定化させるための添加剤と、少なくとも1種の二環式アミジン化合物とを含み、スラリーのpHは1〜14、さらに好ましくは1〜7、そして最も好ましくは2〜5である。
【0045】
別の態様において、タングステン表面を研磨するためのCMP組成物は、研磨剤粒子と、少なくとも1種の酸化剤と、活性化剤と、二環式アミジン化合物とを含み、前記二環式アミジン化合物は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンであり、スラリーのpHは1〜14であり、さらに好ましくは1〜7であり、そして最も好ましくは2〜5である。
【0046】
さらに別の態様において、タングステン表面を研磨するためのCMP組成物は、シリカ粒子と、過酸化水素と、硝酸第二鉄と、グリシンと、マロン酸と、二環式アミジン化合物とを含み、前記二環式アミジン化合物は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンであり、スラリーのpHは、1〜14であり、さらに好ましくは1〜7であり、そして最も好ましくは2〜5である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
半導体デバイスウェハ製造中の導電性金属フィーチャの形成は、ウェハをパターン化する工程と、ウェハを構成する誘電材料中にライントレンチまたはビアをエッチングする工程と、それらのビアまたはライントレンチに導電性金属を充填する工程と、次いで化学機械平坦化(CMP)工程を実施して、過剰の金属を除去し、非常に平坦な表面を提供する工程とを含む。CMPプロセスは、研磨性かつ腐食性である化学的スラリー(配合物または組成物とも称する)を、典型的にはウェハよりも大きな直径の研磨パッドと併せて使用する。研磨パッドを回転させ、そしてスラリーをパッドに適用する間に、パッドおよびウェハをあわせてプレスする。これによって材料を除去し、いずれかの不規則なトポグラフィを平坦にし、ウェハが平らまたは平坦になる。
【0049】
研磨されたウェハの平坦性を規定する重要なCMPパラメータはディッシングおよび浸食である。
図1は、研磨されたウェハまたは基材100のCMP後に観察されるディッシングおよび浸食トポグラフィの図を示す。ウェハまたは基材は研磨された表面104を有する誘電材料102を含む。ライントレンチまたはビア106、110は間隔108、112によって隔てられて誘電材料102にエッチングされる。CMPプロセスの前に、トレンチまたはビアに、導電性金属、例えばタングステン114を充填する。
【0050】
ディッシングとは、フィールドレベル104とも称される、基材の研磨された表面に対する個々のラインまたはビア116中の陥凹を指す。ディッシングは、フィールドレベル104とライン陥凹116の深さとの間の距離118として定量化される。ディッシングは、より大きなフィーチャ(典型的には1ミクロンを超える)について、また低パターン化密度領域において主に重大な問題である。
【0051】
浸食は、フィールドレベル104と比べた金属構造120のアレイの陥凹である。浸食は、フィールドレベル104とアレイ120の深さとの間の距離122として定量化される。浸食は、概して、10ミクロン以下のフィーチャサイズおよび50パーセント以上のパターン化金属密度を有する狭い金属構造の高密度アレイについてより問題である(Elbel et al, J.Electrochem Soc., Col.145, No.5, May 1998 pp.1659-1664.)
【0052】
ラインのディッシングは、典型的にはより広いラインほど増加する。典型的には50パーセントパターン密度の幅100ミクロンのラインのディッシングが、CMPの間のディッシングを低減する際のスラリーの能力を測定するための代表的な構造と考えられる。アレイの浸食は、典型的には、パターン密度の増加とともに増加する。1ミクロン間隔を有する9ミクロン金属アレイ(9×1ミクロンアレイ、90パーセントパターン密度)の浸食は、典型的には、スラリーが浸食を低減する能力を測定するための代表的構造として使用される。典型的なタングステンCMPプロセスにおいて、100ミクロンのラインのタングステンディッシングが2000オングストローム未満であり、9×1ミクロンアレイの浸食が1500オングストローム未満であることが望ましい。
【0053】
本発明は、タングステン含有半導体デバイス、基材、または膜の化学機械平坦化(CMP)において使用することができるスラリーに関する。本発明のCMPスラリーは、高い除去速度、優れたコロイド安定性、および非常に低い腐食を提供しつつ、タングステン構造の低ディッシングおよび低減された浸食の独特の結果を提供する。タングステン膜または基材は純粋にタングステンであってもよいし、またはタングステン合金化元素を含んでもよい。タングステン合金元素としては、限定されるものではないが、コバルト、チタンおよびゲルマニウムが挙げられる。
【0054】
本発明の配合物は、パターン化構造において使用される多くの種類の誘電材料にとって好適であり得る。誘電材料の例としては、限定されるものではないが、熱酸化物、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、高密度プラズマ(HDP)酸化物、高アスペクト比プロセス(HARP)膜、フッ素化酸化物膜、ドープされた酸化物膜、有機ケイ酸ガラス(OSG)低K誘電体膜、スピンオングラス(Spin-On Glass)(SOG)、ポリマー膜、流動性化学堆積(CVD)、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸炭化ケイ素、酸窒化ケイ素、および酸炭化窒化ケイ素が挙げられる。
【0055】
好ましい態様において、本発明のCMPスラリーまたは配合物は、研磨剤、酸化剤、二環式アミジン化合物、および溶媒を含み、CMPスラリーは1〜14、さらに好ましくは1〜7、そして最も好ましくは2〜5のpHを有する。態様において、CMP組成物は随意選択的に、限定されるものではないが、活性化剤、安定剤、ディッシング低減添加剤(ディッシング低減剤とも称する)、界面活性剤、分散剤、キレート化剤、膜形成腐食防止剤、pH調節剤、殺生物剤、および研磨促進剤を含む、他の成分をさらに含んでもよい。
【0056】
本明細書中で使用する場合、「a」または「an」という語は複数形も含むので、「an activator」などの語は、2種以上の活性化剤が存在する態様を含む。
【0057】
本明細書中で使用する場合、パーセント組成物は、特に断りがない限り、全CMPスラリーまたは組成物に対する質量パーセントで与えられる。
【0058】
研磨剤
本発明のCMPスラリーにおいて使用される研磨剤には、活性化剤含有粒子(すなわち、活性化剤コーティングを有する研磨剤)と非活性化剤含有粒子とが含まれる。研磨剤は、概して、研磨剤粒子の形態であり、典型的には、多くの研磨剤粒子は1つの材料または異なる材料の組み合わせで作られる。好ましくは、好適な研磨剤粒子は、実質的に球状であり、約10〜約300ナノメートル(nm)の有効直径を有するが、個々の粒子サイズは異なっていることができる。凝集体または集塊粒子の形態の研磨剤を好ましくはさらに処理して、個々の研磨剤粒子を形成することができる。
【0059】
研磨剤の粒子サイズは、限定されるものではないが、静的光散乱、動的光散乱、流体力学的流体分別、沈降分析、電気的感知領域分析および動画像解析、ならびにディスク遠心分離分析などのいずれかの好適な技術によって測定することができる。粒子サイズおよび分布測定のための好ましい方法は動的光散乱である。態様において、CMPスラリーは2種以上の研磨剤を含んでもよく、そして異なる種類の研磨剤について異なるサイズを有することが有利である可能性がある。
【0060】
研磨剤としては、限定されるものではないが、金属酸化物、半金属酸化物、金属酸化物と半金属酸化物との化学混合物が挙げられる。好適な金属酸化物研磨剤としては、限定されるものではないが、アルミナ、セリア、ゲルマニア、シリカ、スピネル、チタニア、タングステンの酸化物もしくは窒化物、ジルコニア、または1以上の他の無機物もしくは元素でドープされた上記のいずれか、およびそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。好適な金属酸化物研磨剤は、ゾル−ゲル、熱水、加水分解、プラズマ、発熱性、エアロゲル、発煙(fuming)および沈殿技術、ならびにそれらのいずれかの組み合わせを含む様々な技術のいずれかにより製造することができる。
【0061】
沈澱金属酸化物および半金属酸化物は、金属塩と酸または他の沈澱剤との反応による公知プロセスによって得ることができる。熱分解法金属酸化物および/または半金属酸化物粒子は、酸素/水素火炎中での好適で蒸発可能な出発物質の加水分解によって得られる。1つの例は、四塩化ケイ素からの熱分解法二酸化ケイ素である。酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化ゲルマニウム、および酸化バナジウムならびにそれらの化学的および物理的混合物の熱分解法酸化物は好適な研磨剤である。
【0062】
1つの態様において、研磨剤は2つの分子種SiO
2およびAl
2O
3からなる混合酸化物を含む。1つの態様において、研磨剤はアルミナでコーティングされたシリカを含む。1つの態様において、金属酸化物研磨剤は沈澱又はヒュームド研磨剤、好ましくはヒュームド研磨剤を含む。好ましい態様において、ヒュームド金属酸化物研磨剤はヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、またはヒュームドシリカ/アルミナであってよい。
【0063】
最も好ましい研磨剤はシリカである。シリカは、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、熱分解法シリカ、1種以上の補助剤(adjutant)でドープされたシリカ、またはいずれかの他のシリカ系化合物およびそれらの組み合わせのいずれかであり得る。1つの態様において、シリカは、例えば、ゾル−ゲルプロセス、熱水プロセス、プラズマプロセス、発煙プロセス、沈殿プロセス、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるプロセスによって製造することができる。ある態様において、シリカ粒子表面は変性されていてもよい。限定されるものではないが、米国特許第9567491号、米国特許出願公開第2017/090936号、米国特許第9074118号、米国特許第9309442号、米国特許第9303188号明細書などの先行技術において記載された様々な粒子変性法があり、あたかもその全体が本明細書中で記載されているかのように参照により本明細書中に組み込まれる。
【0064】
ある態様において、シリカ粒子は、CMPスラリー中、>5mVまたはさらに好ましくは10mV超または最も好ましくは25mV超の永久的な正の電荷を有し得る。ある他の態様では、シリカ粒子は、CMPスラリー中、5mV未満またはさらに好ましくは−10mV未満または最も好ましくは−25mV未満の永久的な正の電荷を有し得る。ある好ましい態様において、スラリー中の粒子のゼータ電位は−5mV〜5mVである。本明細書で使用される場合、ゼータ電位とは、分散媒と分散粒子に付着した流体の静止層との間の電位差を指す。
【0065】
ある態様において、全表面ヒドロキシル基密度は約1.5ヒドロキシル基/nm
2超であるか、またはさらに好ましくは4ヒドロキシル基/nm
2超であるか、または最も好ましくは5ヒドロキシル基/nm
2超である。他の態様において、4ヒドロキシル基/nm
2未満の全表面ヒドロキシル密度が好ましい。1つの態様において、シリカは有利には、約2〜約300ナノメートル、例えば約30〜約250ナノメートル、またはさらに好ましくは100nm〜180nmの動的光散乱により測定された粒子サイズである。
【0066】
研磨剤粒子は、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、鉄などの金属不純物を除去するためにイオン交換などの好適な方法を使用して精製することができる。別法として、高純度の研磨剤粒子を使用する。ある特定の好ましい態様において、シリカ粒子中の全金属含有量は100ppm未満、またはさらに好ましくは10ppm未満、または最も好ましくは1ppm未満である。
【0067】
前記研磨剤は、単独で、または互いに組み合わせて用いることができる。態様において、異なるサイズを有する2種以上の研磨剤粒子を組み合わせて優れた性能を得ることができる。本発明の好ましい態様では、研磨剤は、コロイド状シリカ、ヒュームドシリカ、アルミナ、チタニア、セリア、ジルコニア、活性化剤含有粒子、複合粒子、格子ドープおよび無機酸化物粒子、ならびにそれらの組み合わせから選択される表面変性粒子からなる群から選択される。
【0068】
研磨剤の濃度は、使用時濃度でCMP組成物の0.01質量パーセント〜30質量パーセント、さらに好ましくは約0.05質量パーセント〜約10質量パーセント、そして最も好ましくは約0.1〜4質量パーセントの範囲であり得る。態様において、スラリーは、濃縮形態で作製され、使用前に希釈される。濃縮スラリー中の研磨剤濃度ははるかに高い。
【0069】
酸化剤
本発明のCMPスラリーは、材料の化学的エッチングのための酸化剤(oxidizing agent)(本明細書中では酸化剤(oxidizer)とも称する)を含む。CMPスラリーの酸化剤は基材と接触し、基材表面上の標的材料の化学的除去を支援する。酸化剤成分は、したがって、組成物の材料除去速度を促進または増大し得る。好ましくは、組成物中の酸化剤の量は、化学的除去プロセスを支援するために十分であるが、取り扱い、環境、またはコストなどの類似もしくは関連する問題を最小限に抑えるためにできるだけ低くする。
【0070】
有利には、1つの態様において、酸化剤は、少なくとも1種の活性化剤に曝露されると、高度に酸化性のフリーラジカルを生成する成分である。以下で記載するフリーラジカルはほとんどの金属を酸化し、そして表面が他の酸化剤からの酸化をより受け易くなるようにする。しかしながら、酸化剤は、以下で議論する「フリーラジカルを生成する化合物」とは別に列挙されるが、というのも、一部の酸化剤は活性化剤に曝露された場合に容易にフリーラジカルを形成しないからである。幾つかの態様において、基材上で見出され得る金属の様々な組み合わせに対して適合したエッチングまたは選択的なエッチング速度を提供する1種以上の酸化剤があるのが有利である。
【0071】
当該技術
分野で知られている様に、一部の酸化剤は、他の成分についてよりもある特定の成分についてより適している。本発明のいくつかの態様では、当該技術分野において知られているように、1つの金属の別の金属に対するCMP系の選択性は最大化される。しかしながら、本発明のある特定の態様では、伝導体とバリアとの組み合わせについて実質的に同様のCMP速度(単純なエッチング速度とは対照的に)を提供するように酸化剤の組み合わせが選択される。
【0072】
1つの態様において、酸化剤は無機または有機ペル化合物(per-compound)である。ペル化合物は、本明細書で使用される場合、過塩素酸などの、その最も高い酸化状態にある元素を含む化合物、または過酢酸および過クロム酸などの、少なくとも1種のペルオキシ基(−O−O−)を含む化合物として規定される。少なくとも1つのペルオキシ基を含む好適なペル化合物としては、限定されるものではないが、過酢酸またはその塩、過炭酸塩、および有機ペルオキシド、例えばベンゾイルペルオキシド、尿素過酸化水素、および/またはジ−t−ブチルペルオキシドが挙げられる。
【0073】
少なくとも1つのペルオキシ基を含む好適なペル化合物としてはペルオキシドが挙げられる。本明細書で使用される場合、「ペルオキシド」という用語は、R−O−O−R’(式中、RおよびR’は各々独立してH、C
1〜C
6直鎖もしくは分枝アルキル、アルカノール、カルボン酸、ケトン(例えば)、またはアミンであって、前記の各々は独立して、それ自体がOHまたはC
1〜C
5アルキルで置換されていてもよい1つ以上のベンジル基で置換することができる(例えばベンゾイルペルオキシド))、ならびにその塩および付加物を包含する。したがって、この用語は、過酸化水素、ペルオキシギ酸、過酢酸、プロパンペルオキシ酸、置換もしくは非置換ブタンペルオキシ酸、ヒドロペルオキシ−アセトアルデヒドなどの一般的な例を含む。また、この用語には、過酸化尿素などのペルオキシドの一般的な複合体も含まれる。
【0074】
少なくとも1つのペルオキシ基を含む好適なペル化合物としてはペルスルフェートが挙げられる。本明細書で使用される場合、「ペルスルフェート」という用語は、モノペルスルフェート、ジ−ペルスルフェート、酸、塩、およびその付加物を包含する。例えばペルオキシモノ硫酸カリウムなどの塩であるが、好ましくはペルオキシ一硫酸アンモニウムなどの非金属塩を含む、ペルオキシジスルフェート、ペルオキシモノ硫酸および/またはペルオキシモノスルフェート、カロ酸(ペルオキシ硫酸)が含まれる。少なくとも1つのペルオキシ基を含む好適なペル化合物としては、前記で規定された、およびペルオキシジホスフェートを含む、ペルホスフェートが挙げられる。
【0075】
ペルオキシ基を含まない好適なペル化合物としては、限定されるものではないが、過ヨウ素酸および/またはいずれかの過ヨウ素酸塩(以下、「パーイオデート」)、過塩素酸および/またはいずれかの過塩素酸塩(以下、「パークロレート」)、過臭素酸および/またはいずれかの過臭素酸塩(以下、「パーブロメート」)、および過ホウ酸および/またはいずれかの過ホウ酸塩(以下、「パーブロメート」)が挙げられる。
【0076】
また、他の酸化剤も本発明の組成物の好適な成分である。イオデートが好適な酸化剤である。また、オゾンは単独または1種以上の他の好適な酸化剤との組み合わせのいずれかで好適な酸化剤である。2種以上の酸化剤もまた、組み合わせて相乗的性能の利点を得ることができる。
【0077】
酸化剤濃度は0.01質量パーセント〜30質量パーセントの範囲であり得、一方、酸化剤のより好ましい量は約0.1質量パーセント〜約6質量パーセントである。質量パーセントは組成物に対する。
【0078】
本発明の好ましい態様において、酸化剤は、過酸化水素、過酸化尿素、ペルオキシギ酸、過酢酸、プロパンペルオキシ酸、置換もしくは非置換ブタンペルオキシ酸、ヒドロペルオキシ−アセトアルデヒド,過ヨウ素酸カリウム、ペルオキシ一硫酸アンモニウムからなる群から選択されるペルオキシ化合物、および亜硝酸第二鉄、KClO
4、KBrO
4、KMnO
4からなる群から選択される非ペルオキシ化合物からなる群から選択される。
【0079】
アミジン化合物
本発明のCMP配合物は、少なくとも1種のアミジン化合物、またはその加水分解誘導体を含む。本明細書で使用される場合、「加水分解誘導体」という語は、化合物と水との反応から得られるいずれかの分子構造を意味する。アミジン化合物は、二重結合によって1つの窒素原子と結合し、単結合によって別の窒素原子と結合した炭素原子を含むアミジン基の存在によって特徴づけられる。代表的なアミジン化合物を式Iで以下に示す構造を有する。
【化3】
【0080】
R
1、R
2、R
3、R
4基は、酸素、窒素、水素、炭素、複素環式炭素環、置換であっても非置換であってもよい、飽和もしくは不飽和環状基、飽和してもよいし、もしくは随意選択的に不飽和を含んでもよく、飽和もしくは不飽和環状基を含んでもよい線状もしくは分枝アルキル基、あるいはR
1、R
2、R
3、R
4のうちの2つもしくは3つから形成される飽和または不飽和環構造から独立して選択され、環は随意選択的に置換されていてもよい。好ましいアミジン化合物は2−フェニル−2−イミダゾリンである。
【0081】
好ましい態様において、アミジン化合物は、8超、または好ましくは10、または最も好ましくは11超の少なくとも1つのpKaを有する。好ましい態様において、アミジン基は複素環式炭素環の一部である。さらに好ましい態様において、アミジン基は二環式炭素化合物の一部である。最も好ましい態様において、アミジン基は二環式アミジン化合物である。いくつかの好ましい態様において、アミジン基は正の電荷分布を有する二環式アミジン化合物である。
【0082】
好ましい二環式アミジン化合物としては、限定されるものではないが、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン溶液、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、3,3,6,9,9−ペンタメチル−2,10−ジアザビシクロ[4.4.0]デカ−1−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンが挙げられる。さらに好ましい二環式アミジン化合物は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンであり、これは本明細書ではポリCAT DBUまたはDBUとも称する。
【0083】
いくつかの態様において、アミジン化合物は、二環式アミジン化合物の加水分解誘導体(または形態)を含む。二環式アミジン化合物(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)の加水分解反応の一例を式1として以下に示す:
【化4】
【0084】
加水分解反応は、pHがアルカリ性である条件下でアミジン化合物を水中に溶解させると起こる。ある態様において、CMPスラリーは、原料として水中に溶解させたアミジン化合物を使用して調製する。この場合、アミジン化合物は加水分解し、CMPスラリー配合物中に加水分解された形態で残存する。
【0085】
加水分解産物の存在は、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)またはHPLC/MS(質量分析)などのいずれかの好適な分析技術によって検出することができる。加水分解反応は、アミジン化合物を水に添加した後に、1分間〜240時間、または好ましくは10時間〜48時間の範囲の時間に亘って起こり得る。加水分解の反応速度は、温度、濃度などのプロセス条件を変えることによっても変えることができる。
【0086】
別法として、アミジン化合物(スラリーpHより高いpKa、または好ましくは8より高いpKa)を酸性スラリー配合物に直接添加する場合、アミジン化合物は、酸性pHでプロトン化形態において安定であるので、加水分解しない。
【0087】
二環式アミジン化合物またはその加水分解された形態のCMPスラリー中での濃度は、0.00001質量パーセント〜1質量パーセント、または好ましくは0.0001質量パーセント〜0.1質量パーセント、または最も好ましくは0.001質量パーセント〜0.1質量パーセントの範囲であり得る。
【0088】
溶媒
好ましい溶媒としては、限定されるものではないが、水、アルコール、エーテル、ケトン、他の極性試薬およびそれらの組み合わせからなる群から選択される極性溶媒、ならびに水と極性溶媒との混合物が挙げられる。本明細書中で言及される「他の極性試薬」としては、限定されるものではないが、グリコールおよび有機酸が挙げられる。組成物中の溶媒の濃度は、組成物の90質量パーセントまたはそれ以上である。
【0089】
活性化剤
いくつかの態様において、CMP組成物は随意選択的に活性化剤を含んでもよい。活性化剤はまた、本明細書では触媒とも称され、流体中に存在する少なくとも1種のフリーラジカル生成化合物を有することによってフリーラジカルの形成を促進する材料である。活性化剤が金属イオン、または金属含有化合物である場合、それは、流体と接触する固体の表面と結合する薄層中にある。活性化剤が非金属含有物質である場合、それを流体中に溶解させることができる。活性化剤が所望の量のフリーラジカル形成を促進するために十分な量で存在することが好ましい。
【0090】
例えば、米国特許第7014669号、同第6362104号、同第5958288号、米国特許第8241375号、米国特許第7887115号、米国特許第6930054号、米国特許出願公開第2014/315386号、同第2016/280962号、および韓国特許公開第1020110036294号明細書(その開示が、あたかもその全体が本明細書中で完全に記載されているかのように参照により本明細書中に組み込まれる)の活性化剤または触媒をこの能力(capacity)で使用することができる。活性化剤は、研磨パッド上で、スラリー中に存在することができるか、または酸化剤を含むスラリーがパッドとウェハ基材との間を通過する前に活性化剤と接触する場所に存在し得る。
【0091】
活性化剤は1つ以上の異なる形態で存在してもよい。活性化剤の異なる形態の例としては、限定されるものではないが、(i)スラリー中の可溶性活性化剤化合物(ii)活性化剤化合物で変性された表面を有する粒子(iii)粒子コアおよび表面の両方に含まれる活性化剤を有する粒子(iv)表面上に露出した活性化剤を含むコア−シェル複合粒子が挙げられる。
【0092】
1つの態様では、活性化剤は、酸化剤がペルオキシド、特に過酸化水素であるフェントン反応において活性化剤として有用であることが知られているいずれかの金属含有化合物である。マンガン、コバルト、およびセリウムのような遷移金属、ならびにより伝統的な鉄および銅はこの反応を触媒することができる。好ましい態様において、活性化剤は、元素周期律表の第4(b)族、第5(b)族または第6(b)族の金属以外の金属を有する金属含有化合物を含む。1つの態様において、第1(b)族または第8族の金属の化合物は、好ましい金属含有活性化剤である。
【0093】
金属含有活性化剤化合物はスラリー中の可溶性化合物の形態で使用することができる。本発明のpH範囲に適した活性化剤化合物としては、限定されるものではないが、シュウ酸アンモニウム鉄(III)三水和物、硝酸鉄(III)およびその水和物、クエン酸鉄(III)三塩基性一水和物、アセチルアセトン酸鉄(III)およびエチレンジアミン四酢酸、鉄(III)ナトリウム塩水和物が挙げられる。可溶性活性化剤はまた、Ag、Co、Cr、Cu、Fe、Mo、Mn、Nb、Ni、Os、Pd、Ru、Sn、Ti、Vおよび複数の酸化状態を有するそれらの混合物の金属化合物でもあり得る。本発明のほとんどの態様において、活性化剤としては、限定されるものではないが、遷移金属が挙げられる。
【0094】
1つの態様において、活性化剤は非金属含有化合物であってもよい。ヨウ素は、例えば過酸化水素とフリーラジカルを形成する有用な活性化剤である。ヨウ素は、所望のフリーラジカル活性を創出するために十分な量で存在する。いくつかの態様において、ヨウ素は、約1ppm〜約5000ppm、好ましくは約10ppm〜約1000ppmの範囲の量で存在してもよい。1つの態様において、非金属活性化剤は、金属含有活性化剤と相乗的に組み合わせられる。
【0095】
1つの態様において、活性化剤は、酸化チタンなどの光活性化活性化剤(および活性化剤として使用される光)である。米国特許第6,362,104号明細書(その開示があたかも本明細書中で完全に記載されているかのように参照により組み込まれる)の光活性化材料をこの能力で使用することができる。
【0096】
活性化剤が存在する態様において、CMPスラリー中の活性化剤の量は、全CMP組成物の約0.0005質量パーセント〜約10質量パーセント、好ましくは0.001質量パーセント〜2質量パーセント、さらに好ましくは0.005質量パーセント〜0.1質量パーセント、そして最も好ましくは0.01質量パーセント〜0.05質量パーセントの範囲である。
【0097】
フリーラジカルを生成する化合物
1つの態様において、CMP組成物は随意選択的にフリーラジカルを生成する化合物(本明細書中ではフリーラジカル生成化合物とも称する)を含んでもよく、これは、少なくとも1種の活性化剤に曝露されると、基材の少なくとも選択された構造に対して増大したエッチング速度を与えることができるフリーラジカルを生成する。本明細書で使用される場合、フリーラジカル生成化合物という用語は、少なくとも1種の活性化剤に曝露されると、フリーラジカルを生成することができる化合物を意味する。フリーラジカルは、本明細書で使用される場合、別の分子または原子上の自由電子と共有結合する自由電子を含む化学成分である。フリーラジカルはまた、概して1以上の不対電子を有する分子フラグメントとしても記載される。フリーラジカルは、通常、短寿命かつ高反応性でもある。存在が一時的であるにもかかわらず、フリーラジカルは多くの化学反応を開始させることができる。
【0098】
好ましい態様において、フリーラジカルは反応性酸素ラジカルである。酸素を含むいずれかのフリーラジカルを、反応性酸素ラジカルと呼ぶことができる。酸素含有ヒドロキシルラジカルは、その反応性においてフッ素元素に次ぐことが知られている最も反応性の高い化学種である。これは好ましいフリーラジカルである。酸素シングレットは別の好ましいフリーラジカルである。
【0099】
1つの態様において、CMPスラリー中の好ましいフリーラジカル生成化合物は、ペルオキシド化合物、ペルスルフェート化合物、ペルオキシジホスフェート化合物、オゾン、またはその混合物を含む。1つの態様において、フリーラジカル生成化合物はヒドロキシルアミンを含む。最も好ましいフリーラジカル生成化合物はペルオキシド化合物である。1つの態様において、最も好ましいフリーラジカル生成化合物は、ペルオキシド化合物、例えば過酸化水素、過酸化尿素、過酸化水素、または置換ペルオキシド、例えばt−ブチルペルオキシド(CAS#110−05−9)もしくはt−ブチルヒドロペルオキシド(CAS#75−91−2)、またはその混合物であり、最も好ましくは過酸化水素である。別の態様では、1種以上が全量で約0.01パーセント〜約10パーセント、好ましくは約0.1パーセント〜約5パーセント存在する。
【0100】
ディッシング低減剤
1つの態様において、CMPスラリー配合物は、本明細書中でディッシング低減剤とも称するディッシング低減添加剤を随意選択的に含んで、CMPの間のタングステン(または他の伝導性金属)エッチングおよび腐食を低減してもよい。
【0101】
好適なディッシング低減添加剤またはディッシング低減剤としては、限定されるものではないが:サルコシネートおよび関連するカルボン酸化合物;炭化水素置換サルコシネート;アミノ酸;エチレンオキシド繰り返し単位、例えばポリエチレンオキシド(PEO)を含む分子を有する有機ポリマーおよびコポリマー;エトキシル化界面活性剤;1つの化合物中に窒素−水素結合、スルフィド、オキサゾリジンまたは官能基の混合物を含まない窒素含有複素環;アルキルアンモニウムイオンを形成する3個以上の炭素原子を有する窒素含有化合物;3個以上の炭素原子を有するアミノアルキル;少なくとも1つの窒素含有複素環または第三級もしくは第四級窒素原子の繰り返し基を含むポリマー腐食防止剤;ポリカチオン性アミン化合物;シクロデキストリン化合物;ポリエチレンイミン化合物;グリコール酸;キトサン;糖アルコール;ポリサッカライド;アルギネート化合物;ホスホニウム化合物およびスルホン酸ポリマーが挙げられる。好ましいディッシング低減剤としては、限定されるものではないが、アミノ酸が挙げられる。グリシンがさらに好ましいディッシング低減剤である。ディッシング低減剤が存在する態様において、ディッシング低減剤の量は、全CMP組成物の質量当たりの質量に基づいて、1ppm〜10,000ppm、さらに好ましくは10ppm〜5000ppm、そして最も好ましくは100〜1000ppmの範囲である。
【0102】
安定剤
態様において、CMP組成物はまた、本明細書中で安定剤とも称する安定化剤も随意選択的に含んでよい。これらの随意選択的な安定化剤は、概して、沈降、綿状沈殿(粒子の沈殿、凝集または凝塊などを含む)、および分解に対して組成物の安定化を容易化または促進するために用いられる。安定剤は、活性化剤材料を単離すること、フリーラジカルをクエンチすること、またはフリーラジカルを形成する化合物を他の方法で安定化することにより、フリーラジカルを生成する化合物を含む酸化剤(複数可)のポットライフを延長するために使用することができる。
【0103】
1つの態様において、ある材料は、過酸化水素を安定化するために有用である。金属汚染の一つの例外は、スズなどの選択された安定化金属の存在である。本発明のいくつかの態様において、スズは、典型的には約25ppm未満、例えば約3〜約20ppmの少量で存在し得る。同様に、亜鉛は、しばしば安定剤として使用される。本発明のいくつかの態様において、亜鉛は、少量で、典型的には約20ppm未満、例えば約1〜約20ppmで存在し得る。別の好ましい態様において、基材と接触する流体組成物は、500ppm未満、例えば100ppm未満の、スズおよび亜鉛を除く、複数の酸化状態を有する溶解した金属を有する。本発明の最も好ましい態様において、基材と接触する流体組成物は、スズおよび亜鉛を除く、9ppm未満の複数の酸化状態を有する溶解した金属、例えば2ppm未満の複数の酸化状態を有する溶解した金属を有する。本発明のいくつかの好ましい態様において、基材と接触する流体組成物は、50ppm、好ましくは20ppm未満、さらに好ましくは10ppm未満の、スズおよび亜鉛を除く溶解した全金属を有する。
【0104】
溶液中の金属は概して推奨されないので、典型的に塩形態、例えばペルスルフェートで存在するそれらの非金属含有酸化剤は、酸形態および/または過硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩形態であることが好ましい。
【0105】
他の好適な安定剤としてはフリーラジカル失活剤(quencher)が挙げられる。これらは、生成されたフリーラジカルの有用性を損なう。したがって、存在する場合は、少量で存在することが好ましい。ほとんどの抗酸化剤、すなわち、ビタミンB、ビタミンC、クエン酸などはフリーラジカル失活剤である。ほとんどの有機酸はフリーラジカル失活剤であるが、しかしながら有効であり、他の有益な安定化特性を有する三種のものは、ホスホン酸と結合剤シュウ酸と非ラジカル−スカベンジング金属イオン封鎖剤(scavenging sequestering agent)没食子酸とである。
【0106】
さらに、カーボネートおよびホスフェートは活性化剤上に結合し、流体の接近を妨害する。カーボネートは、スラリーを安定化させるために使用できるので特に有用であるが、少量の酸で安定化イオンを迅速に除去する可能性がある。1つの態様において、吸収された活性化剤に適した安定化剤は、シリカ粒子上に膜を形成する膜形成剤であり得る。
【0107】
好適な安定化剤としては、アジピン酸、フタル酸、クエン酸、マロン酸、オルトフタル酸などの有機酸、リン酸、置換もしくは非置換ホスホン酸、すなわちホスホネート化合物;ニトリル;および他のリガンド、例えば活性化剤材料と結合し、かくして酸化剤を分解する反応を低減するもの、ならび前記薬剤のいずれかの組み合わせが挙げられる。本明細書で使用される場合、酸安定化剤とは、酸安定剤およびその共役塩基の両方を指す。すなわち、様々な酸安定化剤はまた、それらの共役形でも使用することもできる。例として、本明細書中では、アジピン酸安定化剤はアジピン酸および/またはその共役塩基を包含し、カルボン酸安定化剤はカルボン酸および/またはその共役塩基、カルボキシレートを包含し、そして前述の酸安定化剤についてもそのようである。好適な安定剤は、単独または1種以上の他の安定剤と組み合わせて使用して、過酸化水素などの酸化剤がCMPスラリー中に混合された場合の分解速度を低下させる。マロン酸が好ましい安定剤である。
【0108】
対照的に、組成物中の安定化剤の存在は、活性化剤の有効性を損なう可能性がある。その量は、CMP系の有効性に対する悪影響が最も低く、必要とされる安定性に適合するように調節されなければならない。概して、これらの随意選択的な添加剤のいずれも、組成物を実質的に安定化させるために十分な量で存在しなければならない。必要な量は、選択された特定の添加剤や、研磨剤成分の表面の性質などのCMP組成物の特定の構成によってさまざまである。使用する添加剤が少な過ぎると、添加剤は組成物の安定性に対してほとんどまたは全く影響を及ぼさない。あるいは、使用する添加剤が多過ぎると、添加剤は組成物中での望ましくない泡および/または凝集剤(flocculant)の形成に寄与する可能性がある。好ましくは、これらの随意選択的な安定化剤の好適な量は、組成物に対して約0.001〜約2質量パーセントの範囲であり、好ましくは約0.001〜約1質量パーセントである。これらの随意選択的な安定化剤は、組成物に直接添加してもよいし、または組成物の研磨剤成分の表面に適用してもよい。固体表面に付着した活性化剤化合物を含む態様では、一旦酸化剤がスラリーに添加されたら、酸化剤の分解を防止するための安定化剤化合物は必要ではない場合がある。
【0109】
好ましい態様において、室温にて7日後のスラリー配合物中の過酸化水素酸化剤の損失は、元の過酸化水素濃度に対して、10パーセント未満、またはさらに好ましくは5パーセント未満である。
【0110】
pH調節剤
CMP組成物のpHは、好ましくは、約pH1〜約pH14、さらに好ましくは約pH1〜約pH7、そして最も好ましくは約pH2〜約pH5程度である。組成物のpHは、好適な酸、塩基、アミン、またはそれらのいずれかの組み合わせなどの適切なpH調節剤を用いて調節することができる。好ましくは、組成物において使用されるpH調節剤は、望ましくない金属成分が組成物に導入されないように金属イオンを含まない。好適なpH調節剤としては、アミン、水酸化アンモニウム、硝酸、リン酸、硫酸、有機酸、および/またはその塩、およびそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0111】
本組成物は、0質量パーセント〜1質量パーセント、好ましくは0.005質量パーセント〜0.5質量パーセント、さらに好ましくは0.02質量パーセント〜0.2質量パーセントの、酸性pH条件については、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、他の無機もしくは有機酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、またはアルカリ性pH条件については、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、水酸化有機第四級アンモニウム化合物、有機アミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、pH調節剤を含み得る。
【0112】
殺生物剤
態様において、CMP組成物は、貯蔵中の細菌または真菌の成長を防止するために微生物成長阻害剤または防腐剤を含んでもよい。
【0113】
微生物成長阻害剤としては、限定されるものではないが、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、および水酸化アルキルベンジルジメチルアンモニウムであって、アルキル鎖が1個〜約20個の炭素原子の範囲であるもの、亜塩素酸ナトリウム、および次亜塩素酸ナトリウムが挙げられる。
【0114】
商業的に入手可能な防腐剤の幾つかとしては、Dow Chemicals製のKATHONTMおよびNEOLENE(商標)プロダクトファミリー、およびLanxess製のPreventol(商標)ファミリーが挙げられる。さらに多くが、米国特許第5,230,833号明細書(Romberger et al.)および米国特許出願公開第2002/0025762号明細書に開示されている。それらの内容は、あたかも全体が本明細書中に記載されているかのように、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0115】
封入されたCMP研磨組成物中の殺生物剤の使用は、CMP研磨組成物のpH値が中性pH条件に近いかまたは中性pH条件付近である場合に、細菌および他の微生物を特に低減または除去する。殺生物剤は、CMP組成物の約0.0001質量パーセント〜約0.03質量パーセントの範囲である。
【0116】
界面活性剤
1つの態様において、界面活性剤は随意選択的に存在してもよい。好適な界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性、双性イオン性界面活性剤もしくは両性界面活性剤または2以上の界面活性剤の組み合わせが挙げられる。1000未満から30,000を超える範囲内の分子量を有する様々なアニオン性およびカチオン性界面活性剤を分散剤として使用することができる。好適な界面活性剤としては、限定されるものではないが、ラウリルスルフェート、アルキルポリホスフェート、ドデシルベンゼンスルホネート、ジイソプロピルナフタレンスルホネート、ジオクチルスルホスクシネート、エトキシル化および硫酸化ラウリルアルコール、ならびにエトキシル化および硫酸化アルキルフェノールが挙げられる。
【0117】
好適なカチオン性界面活性剤としては、限定されるものではないが、ポリエチレンイミン、エトキシル化脂肪族アミンおよびステアリルベンジルジメチルアンモニウムクロリドまたはニトレートが挙げられる。代替的分散剤としては:ポリエチレングリコール、レシチン、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン、イソオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルキルアリールスルホネートのアミン塩、ポリアクリレートおよび関連する塩ならびにポリメタクリレートが挙げられる。
【0118】
好ましくは、CMPスラリー中で使用される界面活性剤は、スラリーの有効な安定化を達成するために十分でなければならず、そして典型的には、選択された特定の界面活性剤および金属酸化物研磨剤の表面の性質に応じてさまざまである。例えば、十分でない選択された界面活性剤が使用される場合、CMPスラリー安定化に対してほとんどまたは全く効果を及ぼさない。あるいは、CMPスラリー中の界面活性剤が多過ぎると、望ましくない発泡および/または綿状沈殿が生じる可能性がある。
【0119】
界面活性剤の添加は、ウェハのウェハ内不均一性(WIWNU)を低減し、それによってウェハの表面を改善し、ウェハ欠陥を低減するのに有用であり得ることが見出された。本組成物について多くの好適な界面活性剤添加剤があるが、好ましい界面活性剤添加剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸アンモニウム塩、およびそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。好適な商業的に入手可能な界面活性剤としては、Union Carbide製のTRITON DF 16(商標)およびAir Products and Chemicals製のSURFYNOL(商標)が挙げられる。
【0120】
存在する場合、界面活性剤は、概して、CMP組成物の全質量に基づいて、約0.001質量パーセント〜約0.2質量パーセント、好ましくは約0.001〜約0.1質量パーセントの範囲の量で存在する。
【0121】
さらに、界面活性剤添加剤は、スラリーに直接添加してもよいし、または公知技術を用いて金属酸化物研磨剤の表面上に処理されてもよい。いずれの場合でも、界面活性剤添加剤の量は、研磨スラリー中で所望の濃度を達成するように調節される。
【0122】
調製方法
本発明のCMPスラリーの成分を単一成分スラリーとして一緒に混合してもよいし、または使用時に混合される2つ以上の成分で提供してもよい。1つの態様において、酸化剤は使用時に添加することが好ましい。
【0123】
好ましい態様において、スラリーは、水などの溶媒で希釈できるように濃縮形態で提供され、そして酸化剤は使用前に添加することができる。態様において、スラリーは、使用時に添加される水などの溶媒の体積が、好ましくはスラリーの体積の2倍、またはさらに好ましくはスラリーの体積の3倍超、または最も好ましくはスラリーの体積の5倍超となるように濃縮される。
【0124】
好ましい態様において、CMPスラリーは、1〜14、さらに好ましくは1〜7、そして最も好ましくは2〜5のpHを有する。1つの態様において、CMPスラリーは、研磨剤、少なくとも1種の酸化剤、活性化剤、少なくとも1種の二環式アミジン化合物、および溶媒を含む。別の態様において、CMPスラリーは、研磨剤、過酸化水素、可溶性鉄化合物、鉄化合物の存在下で過酸化水素を安定化させるための添加剤、および少なくとも1種の二環式アミジン化合物を含む。別の態様において、CMPスラリーは、研磨剤、少なくとも1種の酸化剤、活性化剤、および二環式アミジン化合物を含み、前記二環式アミジン化合物は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)である。好ましい態様において、CMPスラリーは、シリカ粒子、過酸化水素、硝酸第二鉄、グリシン、マロン酸、および二環式アミジン化合物を含み、前記二環式アミジン化合物は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)であり、そしてスラリーのpHは1〜14、さらに好ましくは1〜7、そして最も好ましくは2〜5である。
【0125】
使用方法
好ましい態様において、4psiのダウンフォースおよび100RPMのテーブル速度でのタングステンブランケット膜の研磨速度は、1000オングストローム/分超、またはさらに好ましくは2000オングストローム/分超、または最も好ましくは3000オングストローム/分超である。同じ研磨速度およびテーブル速度を使用する態様において、パターン化ウェハ上で測定された9×1ミクロンアレイ(幅1ミクロンの誘電体ラインにより隔てられた幅9ミクロンのタングステンライン幅)の浸食は、渦電流測定または光学エンドポイント検出などの好適な方法を使用することによってパターンウェハ研磨の終点が検出された後にウェハを15秒の更なる時間研磨する場合に、1500オングストローム未満またはさらに好ましくは1000オングストローム未満である。
【0126】
「研磨選択性」とは、本明細書中で使用する場合、タングステン(または他の伝導性金属)ラインの除去速度を誘電材料の除去速度で割ったものである。ある態様において、タングステンおよびTEOS除去速度間の望ましい研磨選択性は0.5〜10であり、さらに好ましくは1〜8であるか、または最も好ましくは2〜5である。他の態様において、タングステンおよびTEOS除去速度間の望ましい研磨選択性は、25超、またはさらに好ましくは50超、または最も好ましくは100超である。
【実施例】
【0127】
一般的実験手順
パラメータ:
Angstrom:オングストローム−長さの単位
BP:背圧、psi単位
CMP:化学機械平坦化=化学機械研磨
DF:ダウンフォース:CMPの間に加えられる圧力、単位psi
min:分
ml:ミリメートル
ppm:質量/質量基準の百万分の一
mV:ミリボルト
psi:平方インチ当たりのポンド
PS:rpmで表した研磨装置のプラテン回転速度(分当たりの回転数)
SF:研磨組成物流量(mL/分)
TEOS:前駆体としてテトラエチルオルトシリケートを使用した化学蒸着(CVD)による酸化ケイ素膜
除去速度(RR):(研磨前の膜厚さ−研磨後の膜厚さ)/研磨時間。
【0128】
成分の全ての濃度は、特に断りのない限り質量パーセント(質量%)である。
【0129】
以下に提示する例において、CMP実験は以下に提示する手順および実験条件を使用して実施した。
【0130】
例で使用したCMP装置は、日本国の荏原製作所製造のEbara FREX 300である。Cabot Microelectronics製のNexPlanarE6088研磨パッド、タングステン膜、TEOS膜またはタングステン含有SKWパターン化構造でコーティングされた300mm直径のシリコンウェハ(SKW Associates, Inc. 2920 Scott Blvd. Santa Clara, CA 95054から入手)を使用した。ブランケット膜の研磨時間は1分間であった。タングステン除去速度は、シート抵抗測定技術を用いて測定した。TEOS除去は光学技術を使用して測定した。パターン化ウェハを、Ebara研磨機上で渦電流終点検出技術に基づく時間の間、研磨した。パターン化ウェハの研磨時間は、渦電流終点技術によって特定される終点を15秒間超過した。パターン化ウェハは、KLA Tencor P15 Profiler(大フィーチャサイズ)またはAFMツール(小フィーチャサイズ)で分析した。研磨は、4.3psiダウンフォース、80RPMのテーブル速度、81RPMの支持体速度81RPM、および100mL/分のスラリー流量を用いて実施した。
【0131】
例1:CMP組成物についてのタングステンおよびTEOS除去速度
CMP組成物が表1で示すようにして調製されたが、表中、組成物の成分の濃度は、全組成物の質量パーセントとして表されている。CMP組成物1および2は、それぞれ100ppmおよび500ppmの1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)を含んでいた。組成物のpHは2.3であった。使用した溶媒は、組成物の全質量を100パーセントにする水であった。
【0132】
【表1】
【0133】
タングステンおよびTEOSブランケット膜およびパターン化タングステン膜を、4psi膜および120RPMのテーブル速度と120mL/分の流量で、Mirra研磨機で研磨した。使用した動的光散乱によって測定して約125nmの凝集体サイズを有するFuso PL7の繭型の高純度コロイド状シリカ研磨剤粒子を扶桑工業株式会社(日本国、103−00、東京都中央区日本橋本町2丁目2−5)から入手した。
【0134】
タングステンおよびブランケット除去速度を得て、表2にまとめた。除去速度はオングストローム/分の単位で表されている。
【0135】
【表2】
【0136】
例2:CMP組成物のディッシング
表2中のデータは、両方の組成物がタングステンについて高い除去速度と、TEOSについてより低い除去速度とを有していたことを示す。例1で使用した組成物をタングステンディッシングについて試験した。
【0137】
タングステンのディッシングは、パターンウェハ研磨の終点が渦電流測定を使用することにより検出された後に、ウェハを15秒間の更なる時間すなわちオーバー研磨(OP)時間研磨したときに、9×1ミクロンアレイ(タングステンライン幅/誘電体ラインにより分離されたトレンチ幅/スペーサ(ミクロン))、7×3ミクロンアレイ、5×5ミクロンアレイを含む異なるアレイに関して試験した。ディッシングデータを表3に示す。
【0138】
ディッシングデータは、両方の組成物が構造の全てのフィーチャを設けられたアレイのサイズについて低いディッシング(500オングストローム未満)をもたらすことを示した。ディッシングは9×1ミクロンの構造について300オングストローム未満であった。
【0139】
【表3】
【0140】
表3の結果は、DBU添加剤を含む組成物1および2が、タングステン含有ウェハの研磨について低いディッシング(1200オングストローム未満)を与えることを示す。DBUは約13.5のpKa値を有するので、CMP配合物のpHで、ほとんど完全にプロトン化され、その結果、全体として+1e−の電荷となる。特定の理論には拘束されないが、正の電荷分布を有する分子を有することで、配合物のpHで存在することが予想される負に帯電したヒドロキシル化WOx(酸化タングステン)表面との強力な静電的相互作用が生じやすいと考えられる。ウェハの高い部分では、パッドはこの保護層を押しのける可能性があり、したがってW除去速度は強く影響されることはない;しかしながら、低い部分の上の保護層は強力な相互作用と低い局部圧力のために完全なままで残る可能性が高く、したがって実験で示されるような改善されたトポグラフィがもたらされる。
【0141】
例3:加水分解DBUを含むCMP組成物対非加水分解DBUを含むCMP組成物
表4に列挙したCMPスラリー配合物は、2つの異なる方法を用いて調製した。第1の方法では、CMPスラリーが、0.02質量パーセントのDBU原料をスラリーに直接添加することによって調製されたが、ここでDBUは加水分解されていなかった。第2の方法では、水中の10質量パーセントのDBUが調製され、2日間保存され、次いで0.02質量パーセントの加水分解DBUがCMPスラリーに添加された。過酸化水素が添加されて、使用時にスラリー配合物中に2質量パーセントとされた。パターン化されたタングステンウェハが例2で記載されている研磨法どおりに研磨され、そして様々なディッシングおよび浸食パラメータが測定された。ディッシングおよび浸食結果をそれぞれ
図2および3にまとめる。
【0142】
【表4】
【0143】
図2および3は、いずれかの方法によって形成された、すなわち、DBUが加水分解または非加水分解のいずれかであるCMPスラリーによって同様の結果が得られたことを示す。
【0144】
これらの結果は、DBUを使用した組成物がタングステン含有ウェハの研磨に関して低いディッシング(1200オングストローム未満)および低い浸食(500オングストローム未満)をもたらすことを示した。
【0145】
例4 低選択性スラリー対高選択性スラリー
低選択性スラリーは例1の組成物と同じ方法で調製し、そして高選択性スラリーは表5に示す組成物を使用して調製した。選択性は、タングステンとTEOSとの間の研磨RRの一般的比として規定される。両方のスラリーは、0.02のパーセントの加水分解DBUを含むか、または添加剤を含んでいなかった。添加剤なしのスラリーと比較した、DBUを含む低選択性スラリーについてのディッシングおよび浸食の結果を表6にまとめる。これらの結果は、低選択性スラリーについて、DBUを含む組成物が、DBU添加剤を含まない組成物と比較して、ほとんどのパターンフィーチャに関して低減されたディッシングおよび浸食を有することを示す。
【0146】
【表5】
【0147】
【表6】
【0148】
添加剤を含まないスラリーと比較しての、DBUを含有する高選択性スラリーについてのディッシングの結果を表7にまとめる。これらの結果は、高選択性スラリーについて、DBUを含有する組成物は、DBU添加剤を含まない組成物と比較して、ほとんどのフィーチャに関してディッシングが低減していることを示す。
【0149】
【表7】
【0150】
例5:イミダゾリンを使用する高選択性の例
2−フェニル−2−イミダゾリンをアミジン添加剤として使用する以外は、例1の組成物と同じ方法で高選択性スラリーを調製した。イミダゾリンを含有するスラリーについてのディッシングおよび浸食の結果を表8にまとめる。
【0151】
【表8】
【0152】
例6:50秒のOPでのディッシングおよび浸食に対するDBU濃度の効果
スラリーは、DBUの濃度を変える以外は、例1においてと同様に調製して、50秒のオーバー研磨後のDBU濃度の影響を評価した。ディッシングおよび浸食試験の結果を表9に提示する。これらの結果は、検討したDBU濃度が添加剤濃度の増加とともにディッシングおよび浸食が減少する傾向を示すことを示している。
【0153】
【表9】
【0154】
例7:アミジン添加剤の比較
異なるアミジン添加剤を含む組成物を表10で記載するように調製し、ディッシングおよび浸食について評価した。評価したアミジン化合物は:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU);1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN);1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD);ベンズアミジン塩酸塩水和物および2−フェニル−2−イミダゾリンであった。SKWブランドのパターン化ウェハ(MITパターン)を、2psiの圧力で、検出された終点までのCMPプロセス+更なる10秒のオーバーポリッシュ(OP)で使用した。これらの組成物を使用したディッシングおよび浸食試験についての結果を表11にまとめる。これらの結果は、アミジン分子を含む組成物は全てが、添加剤を含まない組成物と比較して、有意に減少したディッシングをもたらしたことを示す。
【0155】
【表10】
【0156】
【表11】
2psi〜EP+10秒間のオーバーポリッシュ(OP)
SKWブランドのパターン化ウェハ(MITパターン)
【0157】
例8:加水分解DBUを含むスラリーのゼータ電位
加水分解DBUを除く例1の必須スラリー成分を含む配合物を調製し、Colloidal Dynamics ZetaProbe装置を使用して検査して、粒子表面上の電荷を測定した。加水分解DBUの配合物中への滴定を実施し、結果を
図4に示す。加水分解DBUの添加により、ゼータ電位の増加がもたらされた。ゼータ電位がさらに高い正の値まで増加するにつれ、研磨剤粒子コロイド安定性が増加し、それにより配合物の保存可能期間が長くなる。
【0158】
凝集からの研磨剤粒子の安定性は、配合物の保存可能期間の重要な特徴である。安定化の1つの方法は、電荷の反発によるものであり、粒子が各粒子上の電荷によってクーロン力により(coulombically)反発される。これは、相互作用および凝集傾向の低減をもたらした。ゼータ電位は粒子表面上の電荷の探針であり、したがって、配合物中の研磨剤のコロイド安定性の尺度である。概して、>+25mVおよび<−25mVのゼータ電位は強力にクーロン力により安定化された粒子と考えられるが、というのも、高い電荷密度は強力な反発性を与えるからである。加水分解DBUは粒子表面と相互作用して、正電荷の増加をもたらす。加水分解DBUなしでpH2.3での配合物におけるシリカ表面の場合には、シリカのゼータ電位はわずかに陽性である。加水分解DBUを増加して添加すると、ゼータ電位が、加水分解DBUなしでの+3mV付近の値から、500ppm(質量基準)の加水分解DBUがあれば+14.2mVまで、更に正の値に増加する。
【0159】
前述の態様の例および説明は、特許請求の範囲によって規定された本発明を限定するのではなく、例示するものと解釈されるべきである。容易に理解されるように、多くの変更および前記の特徴の組み合わせは、特許請求の範囲で記載された本発明から逸脱することなく利用することができる。そのような変更は、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。