【課題】分析用試薬を移送するためにのみ使用されるポンプを用いず、かつ、分析用試薬の補充や交換を容易に行うことができる水質計およびこれを用いた水質分析方法を提供する。
【解決手段】水質計101は、分析ユニット103と、試料水106が導入される試料水導入口118および試料水106を分析ユニット103に供給する試料水供給コネクタ119を筐体112に備え、試料水106中の測定対象物質を測定する分析用試薬107を複数回分析分充填した試薬バッグ113を備える試薬ユニット102と、を備え、試薬ユニット102と分析ユニット103とは、結合部123を介して相互に着脱可能に結合されており、試料水導入口118から導入された試料水106の圧力で試薬バッグ113を加圧し、分析用試薬107を分析ユニット103に導入する。
試料水と分析用試薬とを混合させる混合部、混合した溶液を発色させる反応部、発色した前記溶液の透過度および吸光度のうちの少なくとも一方を測定する分析部を有する分析ユニットと、
前記試料水が導入される試料水導入口および前記試料水を前記分析ユニットに供給する試料水供給コネクタを筐体に備えるとともに、前記試料水中の測定対象物質を測定する分析用試薬を複数回分析分充填した試薬バッグを備える試薬ユニットと、
を備え、
前記試薬ユニットと前記分析ユニットとは、結合部を介して相互に着脱可能に結合されており、
前記試料水導入口から導入された前記試料水の圧力で前記試薬バッグを加圧し、前記分析用試薬を前記分析ユニットに導入することを特徴とする水質計。
試料水と分析用試薬とを混合させる混合部、混合した溶液を発色させる反応部、発色した前記溶液の透過度および吸光度のうちの少なくとも一方を測定する分析部を有する分析ユニットと、前記試料水が導入される試料水導入口および前記試料水を前記分析ユニットに供給する試料水供給コネクタを筐体に備えるとともに、前記試料水中の測定対象物質を測定する分析用試薬を複数回分析分充填した試薬バッグを備える試薬ユニットと、を備え、前記試薬ユニットと前記分析ユニットとは、結合部を介して相互に着脱可能に結合されている水質計を用いて水質を分析する水質分析方法であり、
前記試料水導入口から導入された前記試料水の圧力で前記試薬バッグを加圧し、前記分析用試薬を前記分析ユニットに導入するとともに、前記試料水導入口から導入された前記試料水を前記分析ユニットに導入する導入工程と、
導入された前記分析用試薬と前記試料水とを前記混合部で混合する混合工程と、
混合した前記溶液を前記反応部で反応させて発色させる反応工程と、
発色させた前記溶液の前記透過度および前記吸光度のうちの少なくとも一方を前記分析部で測定する分析工程と、
を有することを特徴とする水質分析方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明はこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
本明細書に記載される「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として有する意味で使用する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値または下限値は、他の段階的に記載されている上限値または下限値に置き換えてもよい。
【0019】
(水質計101)
(第1実施形態)
図1Aは、第1実施形態に係る水質計101の構成を説明する概略構成図である。
図1Bは、試薬ユニット102の一態様を説明する概略構成図である。
図1Cは、分析ユニット103の一態様を説明する概略構成図である。
図1Aに示すように、水質計101は、試薬ユニット102と、分析ユニット103と、を有している。また、水質計101は、通信制御ユニット104と、電源ユニット105と、を有している。
【0020】
(試薬ユニット102)
図1Bに示すように、試薬ユニット102は、試料水106が導入される試料水導入口118および試料水106中の測定対象物質を測定するための分析用試薬107を複数回分析分充填した試薬バッグ113を備えている。
【0021】
ここで、試料水106としては、例えば、上水、下水、再生水、温調用水、農業用水など水の属性・特性・由来などを問わず様々な水が対象となる。
また、測定対象物質としては、例えば、塩素、二酸化炭素、亜塩素酸ナトリウム、遊離シアン、全シアン、6価クロム、全クロム、鉄、2価鉄、3価鉄、過酸化水素、マンガン、ニッケル、亜硝酸、亜硝酸態窒素、硝酸、硝酸態窒素、鉛、フェノール、全窒素、亜鉛、銅、ほう素、化学的酸素要求量、ホルムアルデヒド、過マンガン酸カリウム量、ヒ素、陰イオン界面活性剤、溶存酸素、アンモニウム、アンモニウム態窒素、りん酸、りん酸態りん、全りん、硫化物(硫化水素)、シリカ、カルシウム、遊離ふっ素、オゾン、塩化物、カリウム、土壌油分、硫酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
分析用試薬107は、前記した測定対象物質を測定するために市販されている任意の試薬を用いることができる。
【0022】
試料水導入口118から試薬ユニット102内に導入される試料水106は、任意の手段によって圧力が加えられていることが好ましい。このような任意の手段としては、例えば、チューブポンプ、シリンジポンプ、手動によるシリンジ、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、スクリューポンプなどが挙げられる。また、このような任意の手段としては、例えば、水頭差を用いる送液手段が挙げられるほか、水道管などから分岐させることや、水道管などから分岐させた後にバルブで流量制御して導入することなども挙げられる。
【0023】
図1Bに示すように、試薬ユニット102は筐体112を有しており、筐体112の内部に前記した試薬バッグ113、コネクタ114、試薬用配管115、供給量調節バルブ116を備えている。また、試薬ユニット102の筐体112には、試薬供給コネクタ117、試料水導入口118、試料水供給コネクタ119が設けられている。
コネクタ114は、試薬バッグ113と試薬用配管115とを接続する。試薬用配管115は、コネクタ114と供給量調節バルブ116とを接続する。供給量調節バルブ116は、試薬供給コネクタ117と試薬バッグ113との間に設けられている。なお、供給量調節バルブ116は、例えば、
図1Bに示すように、試薬供給コネクタ117と連接して設けることができる。試薬バッグ113、コネクタ114、試薬用配管115、供給量調節バルブ116および試薬供給コネクタ117は、内部を分析用試薬107が通流できるように中空状の通流路が形成されている。
【0024】
試薬ユニット102の試薬供給コネクタ117は、分析ユニット103の試薬導入コネクタ103a(
図1A、
図1C参照)と着脱可能、かつこれらの内部を溶液が通流可能に結合される。従って、分析用試薬107は、試薬ユニット102から、試薬供給コネクタ117および試薬導入コネクタ103aを介して、分析ユニット103に導入される。
【0025】
試薬ユニット102の試料水供給コネクタ119は、分析ユニット103の試料水導入コネクタ103b(
図1A、
図1C参照)と着脱可能、かつこれらの内部を溶液が通流可能に結合される。従って、試料水106は、試薬ユニット102から、試料水供給コネクタ119および試料水導入コネクタ103bを介して、分析ユニット103に導入される。なお、試料水106は、分析用試薬107の導入の有無に関わらず、試料水導入口118から連続して導入され、筐体112内を満たす。
【0026】
試料水導入口118は、
図1Aおよび
図1Bに示すように、試薬ユニット102の底部や側壁の下部に設け、試料水106が試薬ユニット102の下方から導入されるようにすることが好ましい。また、試料水供給コネクタ119は、試薬ユニット102の上部に設け、試料水106が試薬ユニット102内から上向きに導出されるようにすることが好ましい。試料水導入口118と試料水供給コネクタ119とをこのような態様とすると、試薬ユニット102内の試料水106に気泡が生じた場合に、試薬ユニット102の上方に設けられた試料水供給コネクタ119から気泡を除去することができる。そのため、気泡に試料水106の圧力が吸収されるおそれがなく、試薬バッグ113から分析用試薬107を好適に供給できる。なお、本実施形態では、試薬ユニット102の内部から外部に気泡を除去するため、例えば、逆止弁などを備えたエア抜き口(図示せず)を試薬ユニット102の上部に設けてもよい。また、試料水106は、予め脱気処理などをしておいてもよい。
【0027】
試薬供給コネクタ117は、試料水供給コネクタ119に合わせて、試薬ユニット102の上部に設けることが好ましい。また、試薬供給コネクタ117と試料水供給コネクタ119とは、試薬供給コネクタ117から分析用試薬107が導出される導出方向と、試料水供給コネクタ119から試料水106が導出される導出方向とが同じ方向とすることが好ましい。さらに、これらの導出方向と、試薬ユニット102と分析ユニット103との着脱方向とが同じ方向であることが好ましい。このようにすると、後記するように、試薬ユニット102と分析ユニット103との着脱を行う際に、試料水供給コネクタ119と試料水導入コネクタ103bとの着脱、および、試薬供給コネクタ117と試薬導入コネクタ103aとの着脱をそれぞれ容易に行うことができる。
【0028】
分析用試薬107は、試薬バッグ113から、コネクタ114、試薬用配管115、供給量調節バルブ116を経た後、試薬供給コネクタ117および試薬導入コネクタ103aを介して分析ユニット103に導入される。ここで、前記したように、試料水106が筐体112内に満たされることで、試料水106の圧力により試薬バッグ113が加圧される。そして、試薬バッグ113の先に設置されている供給量調節バルブ116を一定時間開放することにより、加圧されている試薬バッグ113から一定量(分析1回分)の分析用試薬107を分析ユニット103に供給することができる。試薬バッグ113に加圧される圧力に対して、供給量調節バルブ116の開放時間と分析用試薬107の吐出量には相関関係があるため、試薬バッグ113内に充填された分析用試薬107がなくなる時間が予測できる。
【0029】
試薬バッグ113の大きさは、分析用試薬107の使用期限や使用量、分析回数に応じて、分析用試薬107の劣化、すなわち分析結果への影響が最小限になるように、分析用試薬107の充填量に応じて適宜変更される。
試薬バッグ113内の分析用試薬107は、空気に触れていたり、溶存空気があったりすると、使用中に劣化することが懸念される。分析用試薬107内の空気を脱気してから試薬バッグ113に充填したり、試薬バッグ113に分析用試薬107を充填してから窒素などを導入することで分析用試薬107内の空気を除去したり、試薬バッグ113に充填する際に窒素雰囲気下で行ったりすることで、分析用試薬107に触れる空気の量を最小限にすることが可能である。
【0030】
(分析ユニット103)
図1Cに示すように、分析ユニット103は、試料水106と分析用試薬107とを混合させる混合部131、混合した溶液を発色させる反応部132、発色した溶液の透過度および吸光度のうちの少なくとも一方を測定する分析部133を有する。分析ユニット103は、試料水106と分析用試薬107を導入して溶液を発色させ、当該溶液の透過度および吸光度のうちの少なくとも一方を測定した後、溶液を処理液108として排出する。また、分析ユニット103は、前記したように、試薬導入コネクタ103aおよび試料水導入コネクタ103bを有している。分析ユニット103の試薬導入コネクタ103aおよび試料水導入コネクタ103bは、それぞれマイクロ流路134により混合部131に通じている。
【0031】
分析ユニット103は、マイクロフローシステムを用いたものであればよい。つまり、分析ユニット103は、前記したマイクロ流路134内で試料水106と分析用試薬107とを混合し、さらに混合した溶液を発色させ、溶液の透過度などを測定する。マイクロ流路134でこのような処理を行うためには、マイクロ流路134の流路径の代表長さ(つまり、流路の幅や直径)は2mm以下にすることが好ましい。特に、試料水106と分析用試薬107を分子拡散により迅速に混合させるために、流路径の代表長さは数十μm〜1mmの範囲が好ましい。このようにすると、使用する分析用試薬107の量、および廃液となる処理液108の量を大幅に減らすことができる。なお、マイクロ流路134の流路の長さは、測定対象物質と分析用試薬107とが混合して反応する時間を考慮して適宜に設定することができる。
【0032】
分析ユニット103の分析部133は、発色した溶液の透過度および/または吸光度を測定するための光源135、分光セル136および受光部137を有している。光源135は、分光セル136に向けて所定の波長の光を発光する。分光セル136は、発色した溶液を通流させる流路(光路)を有している。分光セル136の両端は、光を透過できるように透明となっており、分光セル136を通流する溶液に対して、光源135から光138を入射する。
図1Cに示すように、分光セル136の一端側近傍に前記した光源135が配置され、他端側近傍に受光部137が配置される。つまり、光源135から発光された光138は分光セル136の一端側から入射され、流路を透過した後、受光部137に向けて分光セル136の他端側から透過する。受光部137は、分光セル136を透過した光139を受光して透過度などを測定し、そのデータ111(
図1A参照)を通信制御ユニット104に送信する。
【0033】
光路長となる分光セル136の長さは、長くするほど測定対象物質を低濃度で含有する溶液でも測定できるようになり、測定精度が上がる。しかしながら、光路長となる分光セル136の長さを長くすると、分光セル136の内容積が増えて、使用する分析用試薬107の量、および廃液となる処理液108の量が増える。従って、分光セル136の断面の代表長さ(つまり、分光セル136を透過する光路に対して垂直な断面の幅や直径)は2mm以下にすることが好ましい。分光セル136の長さは10〜50mmの範囲が好ましい。
【0034】
(結合部123)
試薬ユニット102と分析ユニット103とは、結合部123(
図1B、
図1C参照)を介して相互に着脱可能に結合されている。これは、例えば、試薬ユニット102の試薬供給コネクタ117および試料水供給コネクタ119のそれぞれの近傍に設けられた結合部123a(
図1B参照)と、分析ユニット103の試薬導入コネクタ103aおよび試料水導入コネクタ103bのそれぞれの近傍において、前記した結合部123aと対応する位置に設けられた結合部123b(
図1C参照)と、により具現できる。
【0035】
結合部123としては、例えば、結合部123aおよび結合部123bのうちの一方を磁石とし、他方を鉄などの磁性体としたり、双方を互いに引き付け合う磁極の磁石としたりすることが挙げられる。このようにすると、分析用試薬107が充填された試薬バッグ113を有する試薬ユニット102を容易に交換できる。これにより、水質計101は、試薬ユニット102を取り外して新しい試薬ユニット102に交換するだけで分析用試薬107の補充や交換を容易に行うことができる。
【0036】
試薬ユニット102と分析ユニット103との結合については、試薬ユニット102の筐体112の所定の位置と、分析ユニット103の筐体103c(
図1C参照)の所定の位置とに、それぞれ凸部および凹部(いずれも図示せず)を設けて嵌め合い構造を採用することができる。このようにすると、試薬ユニット102と分析ユニット103とを結合する際にこれらの凹部と凸部とを嵌め合わせることによって、より確実な位置決めと結合とを行うことができる。
【0037】
(通信制御ユニット104)
通信制御ユニット104は、分析ユニット103で測定された透過度に関する透過度データおよび吸光度に関する吸光度データのうちの少なくとも一方のデータ111を分析ユニット103から受信する。また、通信制御ユニット104は、外部との信号およびデータ(いずれも図示せず)の送受信を行う。さらに、通信制御ユニット104は、試薬ユニット102および分析ユニット103の制御も行う。さらに、通信制御ユニット104は、図示しない各種のポンプの運転や図示しないバルブの開閉、光源135の点灯および消灯、受光部137からのデータ111の受信やこれを受光部137から送信させるのに必要な各種制御110などを行う。
【0038】
(電源ユニット105)
電源ユニット105は、バッテリ、交流電源、直流電源などの電源供給用の適宜の手段を備え、試薬ユニット102、分析ユニット103、通信制御ユニット104に電源109を供給する。
【0039】
(液体と接する接液部の材質)
以上に説明した試薬ユニット102内の筐体112、試薬バッグ113、コネクタ114、試薬用配管115、供給量調節バルブ116、試薬供給コネクタ117、試料水導入口118、試料水供給コネクタ119などにおいて液体と接する接液部(液体と接する部分や部品)の材質は、試料水106、分析用試薬107、試料水106と分析用試薬107との混合およびその後の反応に悪い影響を与えないものであれば、試料水106や分析用試薬107の種類に応じて適宜変更することができる。
【0040】
分析ユニット103内において液体と接する接液部の材質も、試料水106、分析用試薬107、試料水106と分析用試薬107との混合およびその後の反応に悪い影響を与えないものであれば、試料水106や分析用試薬107の種類に応じて適宜変更することができる。
【0041】
試薬ユニット102内における接液部および分析ユニット103内における接液部の材質としては、例えば、シリコーン樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン)樹脂、フッ素系樹脂などの各種樹脂や、ステンレス、シリコン、ガラス、3次元プリンタのインクに用いられる各種材料などを用いることができる。3次元プリンタのインクに用いられる各種材料としては、例えば、ABS樹脂、ABSライク樹脂、ASA(アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム)樹脂、PC−ABS(ポリカーボネート−ABS)樹脂、PLA(ポリ乳酸)樹脂、PPライク樹脂、PEI(ポリエーテルイミド)樹脂、ゴムライク樹脂、石膏、ポリアミド樹脂、光硬化性アクリル樹脂、PC樹脂、PP樹脂、ワックスなどを挙げることができる。本実施形態においては、前記した接液部は、グラスライニング、金属の表面にニッケルや金などのコーティングをしたもの、シリコンの表面を酸化させたものなど、耐食性を向上させたものを用いてもよい。なお、接液部の材質を全て同一にする必要はなく、加工性やチューブの柔軟性などに応じて適宜変更することができる。
【0042】
(水質計101の動作)
以上に説明したように、水質計101は、試料水導入口118、試料水供給コネクタ119および試薬バッグ113を備える試薬ユニット102と、分析ユニット103と、を備えている。そして、水質計101の試薬ユニット102と、分析ユニット103とは、結合部123を介して相互に着脱可能に結合されている。
【0043】
このような構成を採用しているため、水質計101は、測定対象である試料水106を試薬ユニット102に導入し、さらにこの試薬ユニット102から分析ユニット103に導入できる。水質計101は、試薬ユニット102に導入された試料水106の圧力で試薬バッグ113を加圧し、試薬バッグ113に内包されている分析用試薬107を分析ユニット103に導入する。このように、水質計101は、試料水106および分析用試薬107を分析ユニット103に導入するにあたって、分析用試薬を移送するためにのみ使用されるポンプなどを用いない。つまり、水質計101は、従来必要であった分析用試薬107を分析ユニット103に移送するためにのみ使用されるポンプが不要である。そのため、水質計101は、従来よりも低コスト化でき、装置全体のサイズも小さくできる。
【0044】
また、前記したように、水質計101は、試薬ユニット102と分析ユニット103とを結合部123を介して相互に着脱可能に結合されている。そして、前記したように、試薬ユニット102の試薬供給コネクタ117は、分析ユニット103の試薬導入コネクタ103aと着脱可能、かつこれらの内部を溶液が通流可能に結合されている。また、試薬ユニット102の試料水供給コネクタ119は、分析ユニット103の試料水導入コネクタ103bと着脱可能、かつこれらの内部を溶液が通流可能に結合されている。そのため、水質計101は、使用済みの試薬ユニット102を取り外して新しい試薬ユニット102を取り付けるだけで分析用試薬107の補充や交換を容易に行うことができる。
【0045】
なお、水質計101では、試薬ユニット102が試薬バッグ113を備えている。そのため、測定対象物質を変更する場合、水質計101では、試薬ユニット102を、測定対象物質に応じた分析用試薬107を内包する試薬バッグ113を備えた試薬ユニット102に変更するだけで容易に多種類の測定対象物質に対応できる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る水質計201について説明する。
図2Aは、第2実施形態に係る水質計201の構成を説明する概略構成図である。
図2Bは、試薬ユニット202の一態様を説明する概略構成図である。
図2Cは、分析ユニット203の一態様を説明する概略構成図である。
図2Aに示すように、水質計201は、試薬ユニット202と、分析ユニット203と、を有している。また、水質計201は、通信制御ユニット104と、電源ユニット105と、を有している。
【0047】
図2Aに示すように、水質計201は、試薬ユニット202に対する制御(
図1の制御110参照)や電源(
図1の電源109参照)の供給が不要である点で第1実施形態に係る水質計101とは相違しているが、その他の構成要素は第1実施形態と同様である。
【0048】
図2Bに示すように、試薬ユニット202は、筐体112を有しており、筐体112の内部に前記した試薬バッグ113、コネクタ114、試薬用配管115を備えている。また、試薬ユニット202の筐体112には、試薬供給コネクタ117、試料水導入口118、試料水供給コネクタ119が設けられている。
図2Bに示すように、前記した試薬用配管115は、試薬供給コネクタ117と接続されている。つまり、
図2Bに示す試薬ユニット202は、分析用試薬107を分析ユニット203に供給するためのバルブ(
図1Bに示す供給量調節バルブ116に相当するバルブ)を備えていない。
【0049】
そして、第2実施形態に係る水質計201は、第1実施形態の
図1Bに示す試薬ユニット102内の供給量調節バルブ116に相当する役割を担う導入量調節バルブ216を、
図2Cに示すように、分析ユニット203側に備えている。導入量調節バルブ216は、分析用試薬107の分析ユニット203内への導入量を調節するバルブである。導入量調節バルブ216は、具体的には、試薬導入コネクタ103aと混合部131との間に備えられている。
【0050】
なお、導入量調節バルブ216は、供給量調節バルブ116と同様の構成とし、制御することができる。そのため、水質計201は、第1実施形態において試薬ユニット102で行っていた分析用試薬107の供給量の制御を分析ユニット203で行うことができる。この場合、この導入量調節バルブ216は、分析ユニット203における試薬導入コネクタ103aと混合部131の間に備えることが好ましい。このような態様とすると、導入量調節バルブ216が分析ユニット203側に備えられていることにより、試薬ユニット202に対する制御や電源の供給は不要となる。そのため、水質計201は、試薬ユニット202を低価格にすることができる。従って、水質計201は、試薬ユニット202の使い捨てに適したものとなる。
【0051】
なお、この態様の場合、試薬ユニット202では、試薬供給コネクタ117が開放された状態となるため、分析ユニット203と結合するまでは封がされた状態にしておくことが好ましい。また、試薬ユニット202を交換する際には、試薬バッグ113内などに残存している分析用試薬107が試薬供給コネクタ117から出てくる可能性があるため、取り外し後に試薬供給コネクタ117に封をしてこれを防止することが好ましい。
【0052】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る水質計について説明する。
図3は、第3実施形態における試薬ユニット302の一態様を説明する概略構成図である。第3実施形態に係る水質計(図示せず)は、第1実施形態における試薬ユニット102(
図1Aおよび
図1B参照)に替えて
図3に示す試薬ユニット302を備えている点で、第1実施形態に係る水質計101と相違しているが、その他の構成要素は第1実施形態と同様である。
【0053】
図3に示すように、試薬ユニット302は、筐体112を有している。そして、この筐体112の内部には、分析用試薬107を複数回分析可能な量充填した、複数の試薬バッグ313、連結コネクタ314、試薬用配管115、供給量調節バルブ116を備えている。また、試薬ユニット302の筐体112には、試薬供給コネクタ117、試料水導入口118、試料水供給コネクタ119が設けられている。前記した供給量調節バルブ116は、試薬供給コネクタ117と試薬バッグ113との間に設けられている。また、試薬供給コネクタ117が分析ユニット103の試薬導入コネクタ103a(
図1A参照)と着脱可能に結合され、試料水供給コネクタ119が分析ユニット103の試料水導入コネクタ103b(
図1A参照)と着脱可能に結合されている。
【0054】
分析用試薬107は、複数の試薬バッグ313のうちの少なくとも1つから、試薬バッグ313と試薬用配管115を接続する連結コネクタ314、試薬用配管115、供給量調節バルブ116を経て、試薬供給コネクタ117から分析ユニット103に供給される。ここで、試料水106が筐体112内を満たすことで、試料水106の圧力により複数の試薬バッグ313が加圧される。そして、試薬バッグ313の先に設置されている供給量調節バルブ116を一定時間開放することにより、一定量(分析1回分)の分析用試薬107を吐出させることができる。
【0055】
第1実施形態と同様に、試薬バッグ313に加圧される圧力に対して、供給量調節バルブ116の開放時間と分析用試薬107の吐出量には相関関係があるため、試薬バッグ313内に充填された分析用試薬107がなくなる時間が予測できる。試薬ユニット302と分析ユニット103は、第1実施形態と同様、結合部123により着脱可能に結合されている。そのため、第3実施形態に係る水質計(図示せず)は、使用済みの試薬ユニット302を取り外して新しい試薬ユニット302を取り付けるだけで分析用試薬107の補充や交換を容易に行うことができる。
【0056】
試薬バッグ313の大きさは、分析用試薬107の使用期限や使用量、分析回数に応じて、分析用試薬107の劣化、すなわち分析結果への影響が最小限になるように、分析用試薬107の充填量に応じて適宜変更される。さらに、試薬バッグ313の数を変更することにより、分析用試薬107の充填量の変更が容易である。
【0057】
また、例えば、第3実施形態と第1実施形態とで、筐体112と分析用試薬107をそれぞれ同じ容積とした場合、第1実施形態に示す例では試薬バッグ113を1つ用いているのに対して、第3実施形態に示す例では分析用試薬107を複数の試薬バッグ313に小分けして収めることになる。そのため、同じ容積の分析用試薬107に対する第3実施形態における複数の試薬バッグ313の比表面積は、第1実施形態における試薬バッグ113の比表面積よりも大きくなる。従って、第3実施形態における複数の試薬バッグ313は、試料水106による圧力が伝わりやすく、分析ユニット103に供給する分析用試薬107の量をより精密に制御できる。
【0058】
さらに、本発明では、試料水を用いて試薬バッグを加圧している。そのため、仮に試薬バッグが破損した場合には、試料水が試薬バッグ内に混入してしまい、分析用試薬が試料水と反応するという事態が考えられる。この場合、第1実施形態の例で示すように、試薬ユニット102に内包される試薬バッグ113が1つの場合には、混入した試料水106の量によっては、試薬ユニット102内の全ての分析用試薬107が使えなくなってしまい、試薬ユニット102を交換する必要がある。一方、第3実施形態の例で示すように、試薬ユニット302に内包される試薬バッグ313が複数ある場合には、仮に1つの試薬バッグ313が破損しても、当該破損した試薬バッグ313内の分析用試薬107が使えなくなるだけであり、他の試薬バッグ313内の分析用試薬107には問題はない。通常、分析用試薬107は、分析結果の安定性の観点から必要量に対して過剰に充填されている。そのため、1つの試薬バッグ313が破損して試料水106が混入することによる分析用試薬107への影響は小さく、試薬ユニット302を交換しなくて済む可能性がある。
【0059】
ここで、試薬バッグ313の材質は、第1実施形態における試薬バッグ313と同様、試料水106、分析用試薬107、試料水106と分析用試薬107との混合およびその後の反応に悪い影響を与えないものであれば、試料水106や分析用試薬107の種類に応じて適宜変更することができる。
【0060】
また、
図3に示す例では、1つの試薬バッグ313に対して1つの連結コネクタ314を用いており、当該連結コネクタ314は相互に連結されている。連結コネクタ314は、例えば、一の連結コネクタ314の一端を他の連結コネクタ314の他端に融着、接着、螺合、嵌め込み等によって連結されている。しかし、本実施形態においてはこれに限定されるものではなく、例えば、複数個の連結コネクタ314を一体型コネクタ(図示せず)として成形し、一体型コネクタに必要な数の試薬バッグ313を接続してもよい。
【0061】
なお、
図3に示す試薬ユニット302では、試薬バッグ313が5つの場合を図示しているが、試薬バッグ313は2つや3つ、4つでもよく、6つ以上であってもよい。
【0062】
(残留塩素の測定)
ここで、DPD(ジエチルパラフェニレンジアミン)法に基づき、第3実施形態で説明した試薬ユニット302を備えた水質計(図示せず)で残留塩素の測定を行った結果について説明する。
試料水106として水道水を用い、分析用試薬107としてDPD試薬を用いた。水道水を容器に貯め、ポンプを稼動させて前記容器に貯めた水道水を吸引して採取し、試料水106として試料水導入口118に導入した。
試薬バッグ313として、1個あたり2.5mLの内容積のバッグを4個用いて、供給量調節バルブ116の開放時間を1秒としたところ、その際のDPD試薬の導入量は10μLであった。
マイクロ流路134内で水道水とDPD試薬を混合させ、混合した溶液を発色させた後、分析セルの光路長を10mmとして発色した溶液を分光計測した。その結果、第3実施形態で説明した試薬ユニット302を備えた水質計は、従来の残塩計による値と比べ、±2.5%以内の誤差で計測できることが確認された。
【0063】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る水質計について説明する。
図4は、第4実施形態における試薬ユニット402の一態様を説明する概略構成図である。第4実施形態に係る水質計(図示せず)は、第1実施形態における試薬ユニット102(
図1Aおよび
図1B参照)に替えて
図4に示す試薬ユニット402を備えている点で、第1実施形態に係る水質計101と相違しているが、その他の構成要素は第1実施形態と同様である。
【0064】
図4に示すように、試薬ユニット402は、筐体112を有している。そして、この筐体112の内部には、分析用試薬107を複数回分析可能な量充填した、折りたたみ構造の試薬バッグ413、コネクタ114、試薬用配管115、供給量調節バルブ116を備えている。また、試薬ユニット402の筐体112には、試薬供給コネクタ117、試料水導入口118、試料水供給コネクタ119が設けられている。前記した供給量調節バルブ116は、試薬供給コネクタ117と試薬バッグ113との間に設けられている。また、試薬供給コネクタ117が分析ユニット103の試薬導入コネクタ103a(
図1A参照)と着脱可能に結合され、試料水供給コネクタ119が分析ユニット103の試料水導入コネクタ103b(
図1A参照)と着脱可能に結合されている。
【0065】
分析用試薬107は、試薬バッグ413から、試薬バッグ413と試薬用配管115を接続するコネクタ114、試薬用配管115、供給量調節バルブ116を経て、試薬供給コネクタ117から分析ユニット103に供給される。ここで、試料水106が筐体112内を満たすことで、折りたたまれた試薬バッグ413が試料水106の圧力により加圧される。そして、試薬バッグ413の先に設置されている供給量調節バルブ116を一定時間開放することにより、一定量(分析1回分)の分析用試薬107を吐出させることができる。
【0066】
第1実施形態と同様に、試薬バッグ413に加圧される圧力に対して、供給量調節バルブ116の開放時間と分析用試薬107の吐出量には相関関係があるため、試薬バッグ413内に充填された分析用試薬107がなくなる時間が予測できる。試薬ユニット402と分析ユニット103は、第1実施形態と同様、結合部123により着脱可能に結合されている。そのため、第4実施形態に係る水質計(図示せず)は、使用済みの試薬ユニット402を取り外して新しい試薬ユニット402を取り付けるだけで分析用試薬107の補充や交換を容易に行うことができる。
【0067】
試薬バッグ413の大きさは、分析用試薬107の使用期限や使用量、分析回数に応じて、分析用試薬107の劣化、すなわち分析結果への影響が最小限になるように、分析用試薬107の充填量に応じて適宜変更される。
【0068】
また、例えば、第4実施形態と第1実施形態とで、筐体112と分析用試薬107をそれぞれ同じ容積とした場合、第1実施形態に示す例では試薬バッグ113を1つ用いているのに対して、第4実施形態に示す例では折りたたみ構造を有する試薬バッグ413に分析用試薬107を充填している。そのため、同じ容積の分析用試薬107に対する第4実施形態における折りたたみ構造を有する試薬バッグ413の比表面積は、第1実施形態における試薬バッグ113の比表面積よりも大きくなる。従って、第4実施形態における折りたたみ構造を有する試薬バッグ413は、試料水106による圧力が伝わりやすく、分析ユニット103に供給する分析用試薬107の量をより精密に制御できる。
【0069】
ここで、試薬バッグ413の材質は、試料水106、分析用試薬107、試料水106と分析用試薬107との混合およびその後の反応に悪い影響を与えないものであれば、試料水106や分析用試薬107の種類に応じて適宜変更することができる。試薬バッグ413の材質は、折りたたみ構造を実現するために、薄いシート状(フィルム状)の材料を貼り合わせて作製したものであることが好ましい。試薬バッグ413の材質としては、例えば、アクリル樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタラート)樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂などの各種樹脂の樹脂シート(樹脂フイルム)を用いることができる。さらに、試薬バッグ413は、例えば、樹脂シート(樹脂フィルム)の表面をアルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミ(アルミナ)で蒸着することにより、ガス遮断性や表面への測定対象物質の付着を防止することができる。なお、本明細書における薄いシートとは、例えば、厚さが10〜2000μm程度であることをいう。
【0070】
樹脂シート(樹脂フィルム)は、レーザーの強度や波長を変えることにより、接合したり、切断したりすることができる。折りたたみ部分は、部分的に溶着することによって折りたたみやすくすることができる。
また、
図4に示す試薬バッグ413では蛇行構造となっているが、これに限られるものではなく、蛇腹構造や、花のつぼみのように周囲を中央に向かって折りたたむ構造などとすることができる。試薬バッグ413をこれらの折りたたみ構造とすれば、比表面積を増大させることができる。
【0071】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る水質計について説明する。
図5Aは、第5実施形態に係る水質計501の構成を説明する概略構成図である。
図5Bは、試薬ユニット502の一態様を説明する概略構成図である。
図5Aに示すように、水質計501は、試薬ユニット502と、分析ユニット103と、を有している。また、水質計501は、通信制御ユニット104と、電源ユニット105と、を有している。
【0072】
図5Aおよび
図5Bに示すように、水質計501は、試薬ユニット502の試料水導入口518が分岐部518aを有している点、分岐部518aと試料水供給コネクタ519とが試料水用配管503で接続されている点、および試薬ユニット502が試料水排水口504を有している点で第1実施形態に係る水質計101とは相違しているが、その他の構成要素は第1実施形態と同様である。
【0073】
図5Bに示すように、試薬ユニット502は、筐体112を有しており、筐体112の内部に前記した試薬バッグ113、コネクタ114、試薬用配管115、導入量調節バルブ116を備えている。また、試薬ユニット502の筐体112には、試薬供給コネクタ117、試料水導入口518、試料水供給コネクタ519、試料水排出口504が設けられている。
【0074】
図5Aおよび
図5Bに示すように、試料水導入口518の分岐部518aは、導入した試料水106を分岐させて一部を試薬ユニット502内に導入するとともに、他の一部を試料水用配管503を通じて試料水供給コネクタ519に導入する。試料水導入口518の分岐部518aから試薬ユニット502内に導入された試料水106は、試料水排出口504から排出される。このような態様とすると、試料水供給コネクタ519から導入された試料水106は、試料水用配管503および試料水供給コネクタ519を経て直接かつ即時的に分析ユニット103に供給される。そのため、水質計501は、試料水106の成分が急激に変化した場合にも、筐体112内の試料水106により成分の変化が平準化されることなく、より迅速にその変化を捉えることが可能となる。
【0075】
また、第1〜第4実施形態においては、筐体112内の試薬バッグ113(313、413)を加圧するための試料水106と、分析ユニット103に導入する試料水106と、が共通である。そのため、これらの態様では、仮に試薬バッグ113が破損した場合には、試料水106が試薬バッグ113内の分析用試薬107の影響を受けてしまい、筐体112内の試料水106を入れ替える作業が必要となる。一方、第5実施形態に示す態様とすると、供給試料水導入口518は、導入した試料水106を試薬ユニット502内と、試料水供給コネクタ519と、に分岐させる。従って、第5実施形態に示す態様では、仮に試薬バッグ113が破損した場合であっても、分析ユニット103に導入する試料水106は影響を受けないため、筐体112内の試料水106を入れ替える作業を行う必要はなく、そのまま分析を継続することができる。
【0076】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係る水質計について説明する。
図6は、第6実施形態における分析ユニット603の一態様を説明する概略構成図である。第6実施形態に係る水質計(図示せず)は、分析ユニット103(
図1Aおよび
図1C参照)に替えて
図6に示す分析ユニット603を備えている点で、第1実施形態に係る水質計101と相違しているが、その他の構成要素は第1実施形態と同様である。
【0077】
図6に示すように、分析ユニット603は、筐体103c内に分析ユニットシート611を備えている。分析ユニットシート611は、薄いシート状またはフィルム状の材料を用いたものであり、マイクロ流路634にあたる任意の箇所を融着等せずに溶液が通流できるように貼り合わせることにより、混合部631および反応部632を形成したものである。なお、分析ユニットシート611上には、第1実施形態における分光セル136と同様の分光セル636が取り付けられている。
【0078】
このように、分析ユニット603は、試料水106、分析用試薬107およびそれらが混合して反応した処理液108が流れるマイクロ流路634および分光セル636、分光セル636内の溶液を分光計測するための光源635および受光部637を含んで構成されている。
【0079】
分析ユニット603に導入された試料水106および分析用試薬107は、混合部631のマイクロ流路634内で混合後、試料水106内の測定対象物質と分析用試薬107が、反応部632のマイクロ流路634内で反応することにより発色する。発色した溶液は、分析部633の分光セル636に導入され、処理液108として排出される。
【0080】
分光セル636の両端は、第1実施形態における分光セル136と同様、光138を透過できるように透明となっており、分光セル636に導入された溶液に対して、光源635から光138を入射することができる。分析ユニットシート611は、光源635を分光セル636に臨ませるため、必要に応じて
図6に示す光源用切欠き部635aを設けることができる。また、分析ユニットシート611は、受光部637を分光セル636に臨ませるため、必要に応じて
図6に示す受光部用切欠き部637aを設けることができる。
【0081】
発色した溶液を通過して得られた光139は、受光部637により測定することができる。受光部637は、透過度に関する透過度データおよび吸光度に関する吸光度データのうちの少なくとも一方のデータ111を通信制御ユニット104に送信する。
【0082】
マイクロ流路634でこのような処理を行うためには、マイクロ流路634の流路径の代表長さ(つまり、流路の幅や直径)は2mm以下にすることが好ましい。特に、試料水106と分析用試薬107を分子拡散により迅速に混合させるために、流路径の代表長さは数十μm〜1mmの範囲が好ましい。このようにすると、使用する分析用試薬107の量、および廃液となる処理液108の量を大幅に減らすことができる。
【0083】
光路長となる分光セル636の長さは、長くするほど測定対象物質を低濃度で含有する溶液でも測定できるようになり、測定精度が上がる。しかしながら、光路長となる分光セル636の長さを長くすると、分光セル636の内容積が増えて、使用する分析用試薬107の量、および廃液となる処理液108の量が増える。従って、分光セル636の断面の代表長さ(つまり、分光セル636を透過する光路に対して垂直な断面の幅や直径)は2mm以下にすることが好ましい。分光セル636の長さは10〜50mmの範囲が好ましい。
【0084】
ここで、分析ユニット603の材質は、試料水106、分析用試薬107、および試料水106と分析用試薬107との混合およびその後の反応に悪い影響を与えないものであれば、試料水106や分析用試薬107の種類に応じて適宜変更することができる。前記したように、分析ユニットシート611は、薄いシート状またはフィルム状の材料を貼り合わせたものである。分析ユニットシート611は、例えば、アクリル樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタラート)樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂などの各種樹脂の樹脂シート(樹脂フィルム)を用いて形成することができる。さらに、分析ユニットシート611は、樹脂シート(樹脂フィルム)の表面をアルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミ(アルミナ)で蒸着することにより、ガス遮断性や表面への測定対象物質の付着を防止することができる。このような分析ユニットシート611は、例えば、流路となる部分にはレーザーを照射せず、その他の部分にレーザーを照射して融着や接着等することにより、マイクロ流路634を形成することができる。
【0085】
分光セル636の材質は、両端は光を透過できるように透明である必要があるが、その他の部分は光を反射しなければよい。例えば、分光セル636の両端に用いるための透明な材料としては、ABS樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂などの各種樹脂やガラスなどがある。分光セル636の両端以外の部分に用いるための材料としては、前記透明な材料のほかに、シリコーン樹脂、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン)樹脂、フッ素系樹脂、3次元プリンタのインクに用いられる各種材料などを用いることができる。3次元プリンタのインクに用いられる各種材料は、前述したものを用いることができる。
また、光源635および受光部637については、通常の分光計測に用いられているものを使用することができる。
【0086】
分析ユニット603を第1〜第5実施形態のいずれかで説明した試薬ユニット102、202、302、402、502と組み合わせて使用し、試薬ユニット102、202、302、402、502を交換するときに、分析ユニット603または分析ユニットシート611も併せて交換することにより、分析ユニット603内の流路表面の汚れや気泡による分析結果への影響を最小限にすることができる。特に、分析ユニットシート611を交換すると、分析ユニット603内の流路表面の汚れや気泡の問題を簡単かつ低コストで解決することができる。すなわち、本実施形態によれば、分析ユニット603内の流路表面に汚れや気泡があるときにこれを解決することができる。
【0087】
(水質分析方法)
次に、本実施形態に係る水質分析方法について説明する。
図7は、本実施形態に係る水質分析方法の内容を説明するフローチャートである。
本実施形態に係る水質分析方法は、前述した第1〜第6実施形態に係る水質計を用いて好適に行うことができる。なお、以下の説明において、水質計の構成や動作などに関しては代表的に第1実施形態を参照することとし、第1実施形態と共通する構成要素については第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0088】
本実施形態に係る水質分析方法は、分析ユニット103と、試薬ユニット102と、を備え、試薬ユニット102と分析ユニット103とは、結合部123を介して相互に着脱可能に結合されている水質計101を用いて水質を分析するものである。
【0089】
図7に示すように、本実施形態に係る水質分析方法は、導入工程S1と、混合工程S2と、反応工程S3と、分析工程S4と、を有する。
【0090】
導入工程S1は、試料水導入口118から導入された試料水106の圧力で試薬バッグ113を加圧し、分析用試薬107を分析ユニット103に導入するとともに、試料水導入口118から導入された試料水106を分析ユニット103に導入する。従って、この導入工程S1では、従来必要であった分析用試薬107を分析ユニット103に移送するためにのみ使用されるポンプが不要となる。そのため、本実施形態に係る水質分析方法は、従来よりも低コストで導入工程S1を行うことができ、また、装置全体のサイズも小さくできる。
次いで行う混合工程S2は、導入された分析用試薬107と試料水106とを混合部131で混合する。
次いで行う反応工程S3は、混合した溶液を反応部132で反応させて発色させる。
次いで行う分析工程S4は、発色させた溶液の透過度および吸光度のうちの少なくとも一方を分析部133で測定する。
【0091】
前述したように、本実施形態に係る水質分析方法は、前述した第1〜第6実施形態に係る水質計を用いて好適に行うことができる。従って、本実施形態に係る水質分析方法は、導入工程S1から分析工程S4までの一連の工程を複数回行い(すなわち、試料水106の分析を複数回行い)、分析用試薬107の残量がなくなったり、劣化したりした場合に、試薬ユニット102を取り外して新しい試薬ユニット102に交換するだけで分析用試薬107の補充や交換を容易に行うことができる。
【0092】
以上、本発明の一実施形態に係る水質計および水質分析方法について詳細に説明したが本発明の主旨はこれに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。例えば、第3〜第5実施形態に示す試薬ユニット302、402、502は供給量調節バルブ116を備えているがこれを廃し、当該供給量調節バルブ116に相当するバルブを分析ユニット103に備えることができる(第2実施形態に示す試薬ユニット202、分析ユニット203および供給量調節バルブ216参照)。
【0093】
また、前記した各構成、機能、処理部、処理手段、制御手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、ICカード、SDカード、DVDなどの記録媒体に置くことができる。
さらに、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0094】
なお、試料水106としては、前記したように、例えば、上水、下水、再生水、温調用水、農業用水など水の属性・特性・由来などを問わず様々な水を対象としている。しかし、本発明では、水の割合が極端に少ない溶液であっても、前記したマイクロ流路134内で分析用試薬107と混合し、さらに混合した溶液を発色させ、溶液の透過度などを測定することが可能であれば、以上に述べた水質計を適用できる。