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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-57024(P2020-57024A)
(43)【公開日】2020年4月9日
(54)【発明の名称】光変調器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20200313BHJP
【FI】
   G02F1/035
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-4832(P2020-4832)
(22)【出願日】2020年1月16日
(62)【分割の表示】特願2016-147161(P2016-147161)の分割
【原出願日】2016年7月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA03
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA04
2K102DA04
2K102DA05
2K102DB05
2K102DC08
2K102DD03
2K102DD05
2K102DD07
2K102EA03
2K102EA08
2K102EA09
2K102EB12
2K102EB30
(57)【要約】
【課題】
一方の光変調素子から放射された高周波信号が他方の光変調素子に影響を与えることを抑制することが可能な光変調器を提供する
【解決手段】
並列して配置された基板1A,1Bのそれぞれには、変調電極3への高周波信号を入力するための入力用接続パッド13と、変調電極3からの高周波信号を出力するための出力用接続パッド14とが設けられる。変調電極3は、光導波路2を伝搬する光波に変調作用を及ぼす変調区間S1と、入力用接続パッド13から変調区間S1までの入力側区間S2と、変調区間S1から出力用接続パッド14までの出力側区間S3とに分けられる。一方の光変調素子(例えば基板1B側)の入力側区間S2から放射される高周波信号が伝搬する伝搬方向の延長線上には、他方の光変調素子(例えば基板1A側)の入力用接続パッド13を配置しない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極とが各々に形成された少なくとも第1及び第2の基板を有する光変調器において、
前記第1及び第2の基板は、基板面を平面視した際に、基板長さ方向に隣接するように並列して配置され、
前記第1及び第2の基板のそれぞれには、前記第1及び第2の基板の互いに隣接する側の辺とは反対側の辺に沿って配置された、該変調電極への高周波信号を入力するための入力用接続パッドが設けられ、
該変調電極は、該光導波路を伝搬する光波に変調作用を及ぼす変調区間と、該入力用接続パッドから該変調区間までの入力側区間とを少なくとも有し、
基板面を平面視した際に、前記第1の基板の少なくとも1つの該入力側区間における該入力用接続パッドにつながる直線区間の延長線上、あるいは、該入力側区間に曲げ部がある場合の最初の曲率最大部分の延長線上に対して、前記第2の基板の該入力用接続パッドの全てを配置せず、さらに、前記第1及び第2の基板を互いの基板面が異なる高さになるように構成したことを特徴とする光変調器。
【請求項2】
請求項1に記載の光変調器において、
前記第1及び第2の基板のそれぞれには、前記隣接する側の辺に沿って配置された、該変調電極からの高周波信号を出力するための出力用接続パッドが更に設けられ、
該変調電極は、該変調区間から該出力用接続パッドまでの出力側区間を更に有し、
基板面を平面視した際に、前記第1の基板の少なくとも1つの該出力側区間における該出力用接続パッドにつながる直線区間の延長線上に対して、前記第2の基板の該出力用接続パッドの全てを配置しないように構成したことを特徴とする光変調器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光変調器において、
前記第1及び第2の基板を収容する筐体を有し、
該筐体の一方の側壁には、該第1の基板に高周波信号を導入するための第1の信号入力部が設けられ、
前記一方の側壁に対向する該筐体の他方の側壁には、該第2の基板に高周波信号を導入するための第2の信号入力部が設けられていることを特徴とする光変調器。
【請求項4】
請求項3に記載の光変調器において、
前記第1及び第2の信号入力部は、互いの基板厚さ方向の位置が異なることを特徴とする光変調器。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の光変調器において、
前記第1及び第2の信号入力部は、互いの基板長さ方向の位置が異なることを特徴とする光変調器。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の光変調器において、
前記第1又は第2の基板の少なくとも一方を、前記第1の信号入力部と前記第2の信号入力部の間を遮るように配置したことを特徴とする光変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器に関し、特に、2波長集積型、4波長集積型などの多素子高集積型変調器の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムの高速化、大容量化が進む中で、それに使用される光変調器の高性能化、高密度化が進んでいる。また、光変調器の小型化の要請に伴い、光変調器を構成する光変調素子の小型化も進められている。しかしながら、光変調器の高性能化と、高密度化及び小型化とは相反する要求であるため、これらを両立するための工夫が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1〜4には、基板上に複数の光変調部を設けた構造の光変調器について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−197054号公報
【特許文献2】国際公開第2004/005972号パンフレット
【特許文献3】特開2003−121806号公報
【特許文献4】特開2011−034057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、2波長集積型などの高集積型光変調器が開発されている。図1には、従来の2波長集積型DP−QPSK(Dual Polarization - Quadrature Phase Shift Keying)変調器の構成例を示してある。同図の光変調器は、筐体5内に、それぞれ光変調素子を構成する2枚の基板1A,1Bを並列に配置した構造となっている。基板1A,1Bは、筐体5の外部から入力された光波を変調する光変調領域がそれぞれ形成されている。各基板の光変調領域は、光導波路2と、光導波路2を伝搬する光波を高周波信号により変調するための変調電極3とを備えている。光導波路2は、マッハツェンダー型光導波路をネスト型に多重に配置した構造となっており、これに相応して多数の変調電極3が設けられる。
【0006】
基板1A,1Bの下流には、偏波合成部4がそれぞれ配置されており、メインとなるマッハツェンダー型光導波路の出力側アーム部を伝搬する光波を偏波合成部4で合成して、光変調器の筐体5の外部に出力する。偏波合成部は、空間光学系を用いて偏波合成を行う構造のものや、光導波路を用いて偏波合成を行う構造のものなどがある。
【0007】
基板1A,1Bには、基板長さ方向の一方の辺に沿って、変調電極3への高周波信号を基板外から入力するための入力用接続パッド13が設けられ、他方の辺に沿って、変調電極3からの高周波信号を基板外に出力するための出力用接続パッド14が設けられる。変調電極3は、光導波路2を伝搬する光波に変調作用を及ぼす変調区間S1と、入力用接続パッド13から変調区間S1までの入力側区間S2と、出力用接続パッド14から変調区間S1までの出力側区間S3とに分けられる。
【0008】
基板1Aと筐体5の側面との間には、中継基板6Aが配置されており、この中継基板6Aに、筐体外の高周波ドライバから出力される高周波信号を中継する中継信号線路12が設けられる。中継信号線路12の一方の端部は、筐体5の側面に設けられた信号入力部11と電気的に接続され、他方の端部は、入力用接続パッド13を介して変調電極3と電気的に接続される。また、基板1Aと基板1Bとの間には、終端基板7Aが配置されており、この終端基板7Aに、高周波信号を終端する終端抵抗部15が設けられる。終端抵抗部15は、出力用接続パッド14を介して変調電極3と電気的に接続される。
基板1Bに対しても同様に、中継基板6Bや終端基板7Bが配置される。
【0009】
上記のように複数の光変調素子を備えた光変調器では、高周波信号(例えば、マイクロ波信号)の放射による光信号品質や伝送品質の低下が問題となる。すなわち、第1の光変調素子(例えば、基板1A)に入力された高周波信号が第1の光変調素子から放射し、第2の光変調素子(例えば、基板2A)に直接影響を与える。若しくは、第1の光変調素子から放射した高周波信号が第2の光変調素子を駆動する高周波ドライバに影響し、間接的に第2の光変調素子に影響を与える。結果として、第2の光変調素子の光信号品質(アイパタン消光比やジッタ)が低下してしまう。同様に、第2の光変調素子に入力された高周波信号が第1の光変調素子に影響を与え、第2の光変調素子の光信号品質が低下してしまう。
このような問題は、複数の光変調素子を同一筐体内に収容して多素子化したDP−QPSK変調器などで懸念され、小型化が進んだ光変調器において特に顕著となる。
【0010】
高周波信号の放射は、主に、光変調素子の基板1A,1Bに高周波信号を入出力する接続パッド13,14、変調電極3の屈曲部、終端抵抗部15などの特定の部位から高周波信号が漏洩すること等により発生する。
高周波信号の放射により光信号品質や伝送品質が低下するために、光変調素子間(基板1Aと基板1Bの間)に電波吸収部材を配置することが考えられるが、光変調器の小型化が難しくなるという問題がある。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、上記のような問題を解決し、一方の光変調素子から放射された高周波信号が他方の光変調素子に影響を与えることを抑制することが可能な光変調器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の光変調器は、以下のような技術的特徴を有する。
(1) 光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極とが各々に形成された少なくとも第1及び第2の基板を有する光変調器において、前記第1及び第2の基板は、基板面を平面視した際に、基板長さ方向に隣接するように並列して配置され、前記第1及び第2の基板のそれぞれには、前記第1及び第2の基板の互いに隣接する側の辺とは反対側の辺に沿って配置された、該変調電極への高周波信号を入力するための入力用接続パッドが設けられ、該変調電極は、該光導波路を伝搬する光波に変調作用を及ぼす変調区間と、該入力用接続パッドから該変調区間までの入力側区間とを少なくとも有し、基板面を平面視した際に、前記第1の基板の少なくとも1つの該入力側区間における該入力用接続パッドにつながる直線区間の延長線上、あるいは、該入力側区間に曲げ部がある場合の最初の曲率最大部分の延長線上に対して、前記第2の基板の該入力用接続パッドの全てを配置せず、さらに、前記第1及び第2の基板を互いの基板面が異なる高さになるように構成したことを特徴とする。
【0013】
(2) 上記(1)に記載の光変調器において、前記第1及び第2の基板のそれぞれには、前記隣接する側の辺に沿って配置された、該変調電極からの高周波信号を出力するための出力用接続パッドが更に設けられ、該変調電極は、該変調区間から該出力用接続パッドまでの出力側区間を更に有し、基板面を平面視した際に、前記第1の基板の少なくとも1つの該出力側区間における該出力用接続パッドにつながる直線区間の延長線上に対して、前記第2の基板の該出力用接続パッドの全てを配置しないように構成したことを特徴とする。
【0014】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の光変調器において、前記第1及び第2の基板を収容する筐体を有し、該筐体の一方の側壁には、該第1の基板に高周波信号を導入するための第1の信号入力部が設けられ、前記一方の側壁に対向する該筐体の他方の側壁には、該第2の基板に高周波信号を導入するための第2の信号入力部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
(4) 上記(3)に記載の光変調器において、前記第1及び第2の信号入力部は、互いの基板厚さ方向の位置が異なることを特徴とする。
(5) 上記(3)又は(4)に記載の光変調器において、前記第1及び第2の信号入力部は、互いの基板長さ方向の位置が異なることを特徴とする。
【0016】
(6) 上記(3)乃至(5)のいずれかに記載の光変調器において、前記第1又は第2の基板の少なくとも一方を、前記第1の信号入力部と前記第2の信号入力部の間を遮るように配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光変調器によれば、一方の光変調素子から放射された高周波信号が他方の光変調素子に影響を与えることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来の2波長集積型DP−QPSK変調器の構成例を示す平面図である。
図2】本発明の第1実施例に係る光変調器を説明する平面図である。
図3】本発明の第1実施例に係る光変調器を説明する断面図である。
図4】本発明の第1実施例に係る光変調器の変形例を説明する断面図である。
図5】本発明の第2実施例に係る光変調器を説明する平面図である。
図6】本発明の第3実施例に係る光変調器を説明する平面図である。
図7】本発明の第4実施例に係る光変調器を説明する平面図である。
図8】本発明の第5実施例に係る光変調器を説明する平面図である。
図9】本発明の第6実施例に係る光変調器を説明する平面図である。
図10】変調電極の曲線区間から放射する高周波信号について説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る光変調器について詳細に説明する。
本発明に係る光変調器は、例えば図2に示すように、光導波路2と、該光導波路2を伝搬する光波を変調するための変調電極3とが各々に形成された少なくとも基板1A,1Bを有する。基板1A,1Bは並列して配置される。
【0020】
基板1A,1Bとしては、石英、半導体、誘電体など光導波路を形成できる基板であれば良く、特に、電気光学効果を有する基板である、LiNbO(ニオブ酸リチウム),LiTaO(タンタル酸リチウム)又はPLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛)のいずれかの結晶などを用いた基板が好適に利用可能である。
基板1A,1Bの各々には、筐体5の外部から入力された光波を変調するための光変調領域がそれぞれ形成されている。すなわち、基板1A,1Bは、それぞれが光変調素子を構成している。
【0021】
基板1A,1Bに形成する光導波路2は、例えば、LiNbO基板(LN基板)上にチタン(Ti)などの高屈折率物質を熱拡散することにより形成される。また、光導波路となる部分の両側に溝を形成したリブ型光導波路や光導波路部分を凸状としたリッジ型導波路も利用可能である。また、PLC等の異なる導波路基板に光導波路を形成し、これらの導波路基板を貼り合せ集積した光回路にも、本発明を適用することが可能である。
【0022】
基板1A,1Bには、光導波路2を伝搬する光波を制御信号(高周波信号やDC信号)により制御するための制御電極が設けられる。制御電極としては、高周波信号が印加される変調電極3やこれを取り巻く接地電極(不図示)、DC信号を印加するDC電極(不図示)などがある。これら制御電極は、基板表面に、Ti・Auの電極パターンを形成し、金メッキ方法などにより形成することが可能である。さらに、必要に応じて光導波路形成後の基板表面に誘電体SiO等のバッファ層を設けることも可能である。
各基板の光導波路2は、マッハツェンダー型導波路をネスト型に多重に配置した構造となっており、これに相応して多数の制御電極が設けられる。
【0023】
基板1A,1Bの下流には、偏波合成部4がそれぞれ配置されており、メインとなるマッハツェンダー型光導波路の出力側アーム部を伝搬する光波を偏波合成部4で合成して、光変調器の筐体5の外部に出力する。偏波合成部は、空間光学系を用いて偏波合成を行う構造のものや、光導波路を用いて偏波合成を行う構造のものなどがある。
【0024】
基板1A,1Bは、互いに並列に配置して筐体5内に収容される。基板1A,1Bには、基板長さ方向の一方の辺に沿って、変調電極3への高周波信号を基板外から入力するための入力用接続パッド13が設けられ、他方の辺に沿って、変調電極3からの高周波信号を基板外に出力するための出力用接続パッド14が設けられる。変調電極3は、光導波路2を伝搬する光波に変調作用を及ぼす変調区間S1と、入力用接続パッド13から変調区間S1までの入力側区間S2と、出力用接続パッド14から変調区間S1までの出力側区間S3とに分けられる。
【0025】
基板1Aと筐体5の側面との間には、中継基板6Aが配置されており、この中継基板6Aに、筐体外の高周波ドライバから出力される高周波信号を中継する中継信号線路12が設けられる。中継信号線路12の一方の端部は、筐体5の側面に設けられた信号入力部11と電気的に接続され、他方の端部は、入力用接続パッド13を介して変調電極3と電気的に接続される。また、基板1Aと基板1Bとの間には、終端基板7Aが配置されており、この終端基板7Aに、高周波信号を終端する終端抵抗部15が設けられる。終端抵抗部15は、出力用接続パッド14を介して変調電極3と電気的に接続される。
基板1Bに対しても同様に、中継基板6Bや終端基板7Bが配置される。
【0026】
本発明に係る光変調器の主な特徴は、下記(要件1)、(要件2)の一方または両方を備えたことである。
(要件1)基板1Bの入力用接続パッド13の少なくとも1つを、基板1Aの入力側区間S2から放射される高周波信号が伝搬する伝搬方向の延長線上に配置しないように構成する。
(要件2)基板1Bの出力用接続パッド14の少なくとも1つを、基板1Aの出力側区間S3から放射される高周波信号が伝搬する伝搬方向の延長線上に配置しないように構成する。
【0027】
以下、実施例を参照して具体的に説明する。なお、本明細書では、基板厚さ方向を「X方向」とし、基板長さ方向(長手方向)を「Y方向」とし、基板幅方向(短手方向)を「Z方向」とする。X方向は基板を平面視する方向(図中の×印の方向)に対応し、Y方向は光波の進行方向(図中の矢印Yの方向)に対応し、これに基板平面で直交する方向(図中の矢印Zの方向)がZ方向となる。
【実施例1】
【0028】
図2は、本発明の第1実施例に係る光変調器を説明する平面図であり、図3は、これをY方向に見たA−A’線断面図である。
第1実施例に係る光変調器は、各光変調素子(基板1A,1B)を基板長さ方向(Y方向)について距離d1分ずらして配置してある。これにより、一方の光変調素子(例えば基板1B側)の接続パッド13,14は、他方の光変調素子(例えば基板1A側)の接続パッド13,14とは基板長さ方向の位置が異なる配置となる。
【0029】
ここで、基板1Aと基板1Bの間の平面を仮想し、この仮想平面に各基板の入力用接続パッド13や出力用接続パッド14を投影したとする。この場合、基板1Aの入力用接続パッド13と基板1Bの入力用接続パッド13とは、各々の位置を仮想平面に投影した際に、投影した位置が互いにずれる位置関係となる。また、基板1Aの出力用接続パッド14と基板1Bの出力用接続パッド14とは、各々の位置を仮想平面に投影した際に、投影した位置が互いにずれる位置関係となる。ここでは、基板1Aの基板面と基板1Bの基板面を揃えて配置することを想定しているため、基板長さ方向(Y方向)の軸と基板厚さ方向(X方向)の軸よりなるXY平面を仮想平面としている。なお、基板1Aと基板1Bで基板面を傾けて配置する場合には、仮想平面は各基板の傾きに相応した傾きを持つことになる。
上記のように、各基板の入力用接続パッド13を仮想平面上の投影位置がずれる配置とすることで、一方の光変調素子の入力側区間S2の延長線上には、他方の光変調素子の入力用接続パッド13が配置されないことになる。また、各基板の出力用接続パッド14を仮想平面上の投影位置がずれる配置とすることで、一方の光変調素子の出力側区間S3の延長線上には、他方の光変調素子の出力用接続パッド14が配置されないことになる。
【0030】
光変調素子の変調区間S1に入力される高周波信号は、例えば、入力側区間S2の方向に伝搬された後、変調区間S1に至る屈曲部で漏洩して放射される。この場合、入力側区間S2から放射される高周波信号の多くが、これまでの伝搬方向(入力側区間S2の延伸方向)の延長線に沿って進行することになるが、この延長線上には他の光変調素子の入力用接続パッド13は存在していない。このため、一方の光変調素子の入力側区間S2から放射された高周波信号が、他方の光変調素子の入力用接続パッド13を介して他方の光変調素子の高周波信号経路を逆流する等により、他方の光変調素子に直接または間接的に影響を与えてしまうことを抑制できる。
【0031】
また、光変調素子の変調区間S1から出力される高周波信号は、例えば、出力側区間S3の方向に伝搬された後、出力用接続パッド14との接続部で漏洩して放射される。この場合、出力側区間S3から放射される高周波信号の多くが、これまでの伝搬方向(出力側区間S3の延伸方向)の延長線に沿って進行することになるが、この延長線上には他の光変調素子の出力用接続パッド14は存在していない。このため、一方の光変調素子の出力側区間S3から放射された高周波信号が、他方の光変調素子の出力用接続パッド14を介して他方の光変調素子の高周波信号経路を逆流する等により、他方の光変調素子に直接または間接的に影響を与えてしまうことを抑制できる。
【0032】
ここで、一般に、入力用接続パッド13の基板長さ方向の位置と、出力用接続パッド14の基板長さ方向の位置との間には十分な間隔がある。このため、信号入力側から放射された高周波信号が信号出力側に影響を与えることは殆どない。同様に、信号出力側から放射された高周波信号が信号入力側に影響を与えることも殆どない。したがって、入力用接続パッド13と出力用接続パッド14との関係については考慮しなくても構わない。
【0033】
また第1実施例では、図3に示すように、各光変調素子(基板1A,1B)を基板厚さ方向(X方向)について距離d2分ずらして配置してある。これにより、一方の光変調素子(例えば基板1B側)の接続パッド13,14は、他方の光変調素子(例えば基板1A側)の接続パッド13,14とは基板厚さ方向の位置も異なる配置となる。
すなわち、基板1Aの入力用接続パッド13と基板1Bの入力用接続パッド13とは、基板1Aと基板1Bの間の仮想平面に各入力用接続パッド13の位置を投影した際に、投影した位置のずれ量が更に大きくなる。また、基板1Aの出力用接続パッド14と基板1Bの出力用接続パッド14とについても、基板1Aと基板1Bの間の仮想平面に各出力用接続パッド14の位置を投影した際に、投影した位置のずれ量が更に大きくなる。
したがって、一方の光変調素子から放射された高周波信号が、他方の光変調素子に直接または間接的に影響を与えてしまうことを更に抑制することができる。
【0034】
なお、第1実施例では、接続パッド13,14の基板長さ方向の位置および基板厚さ方向の位置を各光変調素子で異ならせているが、これら位置の少なくとも一方を異ならせるだけでも、上記のような効果を得ることができる。
また、複数ある接続パッド13,14の全てについて、基板長さ方向の位置や基板厚さ方向の位置を各光変調素子で異ならせているが、接続パッド13,14のいずれか1つについて、基板長さ方向の位置や基板厚さ方向の位置を各光変調素子で異ならせてもよい。この場合にも、高周波信号の放射による影響を抑制する効果を得ることができる。
【0035】
また、高周波信号の放射は、中継信号線路12と入力用接続パッド13の接続部においても発生する。そこで、図2では、基板1A側の中継信号線路12を基板幅方向に延伸させるのではなく、基板幅方向に対して傾斜した方向に延伸させている。
このような構成とすることで、基板1B側の入力用接続パッド13は、基板1A側の中継信号線路12の延長線上に存在しないことになる。したがって、一方の光変調素子における中継信号線路12と入力用接続パッド13の接続部から漏洩して放射された高周波信号が、他方の光変調素子の入力用接続パッド13を介して他方の光変調素子に直接又は間接的に影響を与えてしまうことを抑制できる。
なお、複数ある中継信号線路12は少なくとも1つ傾斜していればよく、複数が傾斜している場合においても、その傾斜角は全て異なっていてもよいし、全て同じでもよい。
また、他の各実施例においても、本実施例のように中継信号線路12を傾けた構成を採用することもできる。
【0036】
ここで、第1実施例では、信号入力部11の基板長さ方向の位置および基板厚さ方向の位置を各光変調素子で同じにしているが、これらの位置も異ならせる構造にしてもよい。
図4には、第1実施例の変形例として、信号入力部11の基板厚さ方向の位置を各光変調素子でずらした例を示してある。すなわち、筐体5の一方の側壁に基板1A側の信号入力部11を設け、該側壁に対向する他方の側壁に基板1B側の信号入力部11を設けると共に、互いに対向する位置が一致しないように配置してある。このような構造により、一方の光変調素子の信号入力部11から漏洩して放射された高周波信号が、他方の光変調素子の信号入力部11や入力用接続パッド13を介して他方の光変調素子に影響を与えることを抑制する効果を更に高めることができる。
【0037】
更に、第1実施例では、終端抵抗部15の基板長さ方向の位置および基板厚さ方向の位置も、各光変調素子で異ならせている。すなわち、基板1Aの出力用接続パッド14に接続された終端抵抗部15と基板1Bの出力用接続パッド14に接続された終端抵抗部15とは、上記の仮想平面に各終端抵抗部15の位置を投影した際に、投影した位置が互いにずれる位置関係となる。これにより、一方の光変調素子からの終端抵抗部15から漏洩して放射された高周波信号が、他方の光変調素子の終端抵抗部15や出力用接続パッド14を介して他方の光変調素子に影響を与えることを抑制する効果を更に高めることができる。
【実施例2】
【0038】
図5は、本発明の第2実施例に係る光変調器を説明する平面図である。
第2実施例に係る光変調器は、各光変調素子(基板1A,1B)を基板長さ方向(Y方向)で揃えた上で、接続パッド13,14の基板長さ方向の位置を各光変調素子で距離d1分ずらして配置してある。なお、他の構造は、第1実施例と基本的に同じである。
このような構造でも、一方の光変調素子の入力用接続パッド13は、他方の光変調素子の入力用接続パッド13とは基板長さ方向の位置が異なる配置となる。このため、各基板の入力用接続パッド13は仮想平面上の投影位置がずれる配置となり、一方の光変調素子の入力側区間S2の延長線上には、他方の光変調素子の入力用接続パッド13が配置されない(存在しない)ことになる。したがって、一方の光変調素子の入力側区間S2から放射された高周波信号が、他方の光変調素子の入力用接続パッド13を介して他方の光変調素子の高周波信号経路を逆流する等により、他方の光変調素子に直接または間接的に影響を与えてしまうことを抑制できる。
【0039】
また、一方の光変調素子の出力用接続パッド14も、他方の光変調素子の出力用接続パッド14とは基板の長さ方向の位置が異なる配置となる。このため、各基板の出力用接続パッド14は仮想平面上の投影位置がずれる配置となり、一方の光変調素子の出力側区間S3の延長線上には、他方の光変調素子の出力用接続パッド14が配置されない(存在しない)ことになる。したがって、一方の光変調素子の出力側区間S3から放射された放射された高周波信号が、他方の光変調素子の出力用接続パッド14を介して他方の光変調素子の高周波信号経路を逆流する等により、他方の光変調素子に直接または間接的に影響を与えてしまうことを抑制できる。
【実施例3】
【0040】
図6は、本発明の第3実施例に係る光変調器を説明する平面図である。
第3実施例に係る光変調器は、各光変調素子の変調電極3における入力側区間S2を、基板幅方向(Z方向)に延伸させるのではなく、基板幅方向に対して傾斜した方向に延伸させている。なお、他の構造は、第2実施例と基本的に同じである。
このような構造でも、一方の光変調素子の接続パッド13は、他方の光変調素子の変調電極3における入力側区間S2の延長線上に存在しないことになる。したがって、一方の光変調素子の入力側区間S2から放射された高周波信号が、他方の光変調素子の入力用接続パッド13を介して他方の光変調素子の高周波信号経路を逆流する等により、他方の光変調素子に直接または間接的に影響を与えてしまうことを抑制できる。
【0041】
第3実施例では更に、一方の光変調素子に入力された高周波信号の曲げに対する漏洩の影響が分散・低減される。これにより、一方の光変調素子の入力側区間S2から放射された高周波信号が他方の光変調素子に与える影響を更に抑制できる効果を持つ。
なお、第3実施例では、光変調素子毎に設けた4つの変調電極3について、入力側区間S2の基板長さ方向に対する傾斜角をθ1、θ2、θ3、θ4とそれぞれ異なる角度にしているが、互いに同じ傾斜角にしても構わない。
また、変調電極3の全てについて、入力側区間S2を基板幅方向に対して傾斜した方向に延伸させているが、変調電極3の少なくとも1つについて、入力側区間S2を基板幅方向に対して傾斜した方向に延伸させてもよい。この場合にも、高周波信号の放射による影響を抑制する効果を得ることができる。
【実施例4】
【0042】
図7は、本発明の第4実施例に係る光変調器を説明する平面図である。
第4実施例に係る光変調器は、各光変調素子の変調電極3における出力側区間S3を、基板幅方向(Z方向)に延伸させるのではなく、基板幅方向に対して傾斜した方向に延伸させている。なお、他の構造は、第3実施例と基本的に同じである。
このような構造でも、一方の光変調素子の接続パッド14は、他方の光変調素子の変調電極3における出力側区間S3の延長線上に存在しないことになる。したがって、一方の光変調素子の出力側区間S3から放射された高周波信号が、他方の光変調素子の出力用接続パッド14を介して他方の光変調素子の高周波信号経路を逆流する等により、他方の光変調素子に直接または間接的に影響を与えてしまうことを抑制できる。
なお、第3実施例では、光変調素子毎に設けた4つの変調電極3について、出力側区間S3の基板長さ方向に対する傾斜角をそれぞれ異なる角度にしているが、互いに同じ傾斜角にしても構わない。
また、変調電極3の全てについて、出力側区間S3を基板幅方向に対して傾斜した方向に延伸させているが、変調電極3の少なくとも1つについて、出力側区間S3を基板幅方向に対して傾斜した方向に延伸させてもよい。この場合にも、高周波信号の放射による影響を抑制する効果を得ることができる。
【実施例5】
【0043】
図8は、本発明の第5実施例に係る光変調器を説明する平面図である。
第5実施例に係る光変調器は、基板1Aと基板1Bの間に、これらの基板で共用する単一の終端基板7を配置している。すなわち、基板1Aの出力用接続パッド14に接続された終端抵抗部15を有する終端基板と、基板1Bの出力用接続パッド14に接続された終端抵抗部15を有する終端基板とを、同一基板(終端基板7)としている。そして、各光変調素子に対する終端抵抗部15を、終端基板7に、基板長さ方向(Y方向)の位置を互いに異ならせて配置している。なお、他の構造は、第1実施例と基本的に同じである。
このような構造でも、一方の光変調素子から放射した高周波信号が、他方の光変調素子に直接または間接的に影響を与えてしまうことを抑制できる。
【実施例6】
【0044】
図9は、本発明の第6実施例に係る光変調器を説明する平面図である。
これまでの実施例では、各光変調素子で接続パッド13,14を基板の異なる側の辺に配置していた。すなわち、入力用接続パッド13は、各基板の筐体5に近い側の辺に沿って配置し、出力用接続パッド14は、各基板の筐体5から遠い側の辺に沿って配置していた。
これに対し、第6実施例に係る光変調器は、各光変調素子で入力用接続パッド13を各基板の同じ側の辺(図中の基板下側の辺)に配置している。また、各光変調素子で出力用接続パッド14を各基板の同じ側の辺(図中の基板上側の辺)に配置している。
【0045】
この場合にも、これまでの実施例と同様に、一方の光変調素子の入力用接続パッド13を、他方の光変調素子の変調電極3における入力側区間S2の延長線でない位置に配置すればよい。これにより、一方の光変調素子の入力側区間S2から放射された高周波信号が、他方の光変調素子の入力用接続パッド13を介して他方の光変調素子の高周波信号経路を逆流する等により、他方の光変調素子に直接または間接的に影響を与えてしまうことを抑制できる。
【0046】
また、一方の光変調素子の出力用接続パッド14を、他方の光変調素子の変調電極3における出力側区間S3の延長線でない位置に配置すればよい。これにより、一方の光変調素子の出力側区間S3から放射された高周波信号が、他方の光変調素子の出力用接続パッド14を介して他方の光変調素子の高周波信号経路を逆流する等により、他方の光変調素子に直接または間接的に影響を与えてしまうことを抑制できる。
また、本構成では、各光変調素子として同一設計の素子を使用することができる。複雑な導波路と電極構成の素子歩留まりを考慮すると、同一設計の素子高周波信号の漏洩等の影響を低減できる本構成は、多素子化変調器において非常に優位な構成となる。
【0047】
また、上記の各実施例では、入力側区間S2を変調区間S1に対して直線的に接続する構成となっているが、入力側区間S2を変調区間S1に対して曲線的に接続する構成も考えられる。この場合には、入力側区間S2のうちの変調区間S1に繋がる曲げ部(曲線部分)において、曲率が最大となる最大曲率部分で高周波信号が漏洩して放射し易いことが想定される。このため、図10に示すように、入力側区間S2の曲げ部から高周波信号が放射する場合、曲げ部の最大曲率部分における高周波信号の伝搬方向(最大曲率部分の接線Lと平行な方向)の延長線に沿って進行する成分が多くなると想定される。
【0048】
そこで、一方の光変調素子(例えば基板1B側)の入力用接続パッド13の少なくとも1つを、他方の光変調素子(例えば基板1A側)の入力側区間S2の曲げ部の最大曲率部分における高周波信号の伝搬方向の延長線とは異なる位置に配置するようにする。具体的には、例えば、入力用接続パッド13の基板長さ方向の位置や基板厚さ方向の位置を、曲げ部の最大曲率部分における前記延長線上から外れるようにする。
これにより、変調電極3の入力側区間S2の曲げ部から放射される高周波信号の進行方向に、他の光変調素子の入力用接続パッド13が存在しないようにすることができる。このため、一方の光変調素子の入力側区間S2から放射され高周波信号が、他方の光変調素子の入力用接続パッド13を介して他方の光変調素子に直接または間接的に影響を与えてしまうことを抑制できる。
【0049】
上記の説明は、入力側区間S2を変調区間S1に対して曲線的に接続する場合における入力用接続パッド13の位置について言及しているが、出力側区間S3を変調区間S1に対して曲線的に接続する場合における出力用接続パッド14の位置についても同様である。
なお、複数ある接続パッド13,14の全てを前記曲げ部の最大曲率部分における前記延長線上から外して配置するのではなく、接続パッド13,14のいずれか1つを前記延長線上から外して配置するだけでも、高周波信号の放射による影響を抑制する効果を得ることができる。また、ある程度の長さの区間に亘って最大曲率部分が存在する場合には、その区間の開始位置の前記延長線から終了位置の前記延長線までの範囲に、接続パッド13,14が存在しないようにすることが好ましい。この場合、各基板を基板厚さ方向でずらして配置することで、上記範囲から外れた位置への接続パッド13,14の配置を容易に実現できる。
【0050】
以上、実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した内容に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能であることはいうまでもない。
特に本実施例では2素子を同一筐体に集積した場合を例示したが、4素子や6素子等、更に多素子化した場合にも本発明の考え方を適応し設計変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上、説明したように、本発明によれば、一方の光変調素子から放射された高周波信号が他方の光変調素子に影響を与えることを抑制することが可能な光変調器を提供することができる。
【符号の説明】
【0052】
1A,1B 基板
2 光導波路
3 変調電極
4 偏波合成部
5 筐体
6A,6B 中継基板
7,7A,7B 終端基板
11 信号入力部
12 中継信号線路
13 入力用接続パッド
14 出力用接続パッド
15 終端抵抗部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10