【解決手段】隣接する多角錐枠体Pの頂点同士、及び辺同士を連結して組み合わせて構成され、多角錐枠体Pは、4つの正三角形枠41から形成され、枠体形状が不変形で固定された正三角錐枠体P4と、正四角形枠50と4つの正三角形枠51とを有する四角錘枠体P5と、を備え、四角錘枠体P5の正四角形枠50は、各頂点の角度が変形自在に設けられ、隣接する多角錐枠体Pの頂点同士を連結する接続継手2が設けられ、接続継手2は、隣接する多角錐枠体Pの組み合わせ姿勢に合わせた形状に形成された構成の建築構造物を提供する。
前記継手製造部は、前記継手データ処理部で形成した前記継手データに基づいて前記実物の接続継手を造型可能な三次元プリンタであることを特徴とする請求項4に記載の構造物構築システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の簡易型の建築構造物では、以下のような問題があった。
すなわち、上述した特許文献1のようなプレハブ式の建物では、組み立てられた状態において規定範囲内で決められた形状となることから、使用者の好みに合わせた建物形状を自由にアレンジすることができないという問題があった。
【0006】
また、建築構造物の形状を自在にアレンジする場合には、部屋の大きさ等に合わせた部材を各別で製造する必要があり、製造コストが増大するうえ、複数の住宅で共有化できないことから、仮設などの建物には適用が困難であり、その点で改善の余地があった。
さらに、大型の三次元プリンタを使用して建築構造物全体を一度に造型する方法の場合には、大型の三次元プリンタを現地に設ける必要があるため、非現実的であり、製造コストがかかるおそれがあった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、簡易な構造で構造物形状の自由度を高めることができるうえ、部材の共有化を図ることが可能となり、製造コストが増大することを抑えることができる建築構造物、構造物構築システム、及び建築構造物の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る建築構造物は、隣接する多角錐枠体の頂点同士、及び辺同士を連結して組み合わせて構成される建築構造物であって、前記多角錐枠体は、4つの正三角形枠から形成され、枠体形状が不変形で固定された正三角錐枠体と、正四角形枠と4つの前記正三角形枠とを有する四角錘枠体、及び正五角形枠と5つの前記正三角形枠とを有する五角錐枠体のうち少なくとも一方と、を備え、前記四角錘枠体の前記正四角形枠、及び前記五角錐枠体の前記正五角形枠は、それぞれの各頂点の角度が変形自在に設けられ、前記隣接する多角錐枠体の頂点同士を連結する接続継手が設けられ、前記接続継手は、前記隣接する多角錐枠体の組み合わせ姿勢に合わせた形状に形成されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る建築構造物の構築方法は、上述した建築構造物を構築するための建築構造物の構築方法であって、複数の前記多角錐枠体を適宜組み合わせ、前記四角錘枠体及び前記五角錐枠体のうち少なくとも一方を任意の形状とした構造物全体の組み合わせ姿勢を決定する工程と、決定した組み合わせ姿勢における複数の前記多角錐枠体の頂点の位置に合わせた形状の継手形状を設定する工程と、設定した前記継手形状に基づいて実物の接続継手を製造する工程と、複数の前記多角錐枠体同士を前記接続継手によって連結する工程と、を有することを特徴としている。
【0010】
本発明では、各多角錐枠体が同じ形状の正三角形枠を有しているので、任意の多角錐枠体を使用し、隣接する多角錐枠体の頂点同士、及び辺同士を連結して組み合わせた構造物を簡単に構築することができる。そして、本発明では、形状変形可能な四角錘枠体や五角錐枠体と正三角錐枠体を組み合わせ、隣接する多角錐枠体同士を接続継手で連結することで所望の形状に一体的に固定することができ、組み合わせ姿勢にバリエーションをもたせることが可能となるので、構築される建築構造物の形状の自由度を高めることができ、利用者の好みに合わせた建築構造物を構築できる。
【0011】
本発明では、組み合わせる多角錐枠体に形状変形しない正三角錐枠体を使用することから、形状変形可能な四角錘枠体や五角錐枠体を使用しても、組み合わせた形状を安定した姿勢で固定することができる。
また、本発明では、正三角錐枠体、四角錘枠体、及び五角錐枠体は、それぞれ同じ形状の正三角形枠を形成しているので、辺部に相当する直線状の部材の長さを同じ寸法とすることができ、部材の共有化を図ることができることから、製造コストの増大を抑えることができる。
さらに、多角錐枠体は、簡単な構造となるので、組み立てにかかる作業時間や手間を低減することができる利点がある。
【0012】
また、本発明に係る建築構造物では、前記多角錐枠体は、辺部を構成する直線フレームと、該直線フレーム同士によって囲まれた開口面に沿って設けられる面材と、を備え、前記面材は、前記多角錐枠体の複数の前記開口面のうち少なくとも一つに設けられていることを特徴としてもよい。
【0013】
この場合には、多角錐枠体における直線フレームによって囲まれた任意の開口面に面材を配置することができるので、複数の多角錐枠体を組み合わせて構築された建築構造物の所望の箇所に面材を有する壁材、あるいは屋根材を設けることができる。このとき、すべての多角錐枠体において、直線フレームによって囲まれた同じ形状の正三角形の開口面が形成されるため、面材の大きさを統一化でき、複数の大きさの面材を製造する必要がなくなることから、製造コストを低減することができる。
【0014】
また、本発明では、直線フレーム、面材、及び接続継手によって組み立てられる簡単な構造であり、それぞれの部材を分割した状態で持ち運びを容易に行うことができる。しかも接続継手を使用して直線フレームに接続するという簡単な方法により組み立て作業を行うことが可能であることから、熟練の技術が不要であり、利用者が自分で複数の多角錐枠体を組み合わせた建築構造物の組立、解体を行うことができる。
【0015】
また、本発明に係る建築構造物は、前記直線フレームには、前記接続継手が接続される端部に係合凹部が形成され、前記接続継手は、複数の前記直線フレームの前記係合凹部に嵌合される複数の係合凸部が形成されていることを特徴としてもよい。
【0016】
この場合には、直線フレームの係合凹部に接続継手の係合凸部を嵌合させることで、容易に複数の多角錐枠体同士を接続することができ、形状変形可能な四角錘枠体や五角錐枠体を所望の形状とした組み合わせ姿勢で固定することができる。
【0017】
また、本発明に係る構造物構築システムは、上述した建築構造物を構築するための構造物構築システムであって、前記多角錐枠体の寸法や形状からなる多角錐枠体情報が格納されたデータ蓄積部と、前記データ蓄積部に格納されている複数の前記多角錐枠体を適宜組み合わせ、前記四角錘枠体及び前記五角錐枠体のうち少なくとも一方を任意の形状とした構造物全体の組み合わせ姿勢を決定する処理を行う多角錐枠体組合せ設定部と、前記多角錐枠体組合せ設定部で決定した複数の前記多角錐枠体の頂点の位置に合わせた形状となるように継手データを形成するデータ処理を行う継手データ処理部と、前記継手データ処理部で形成した前記継手データに基づいて実物の接続継手を製造する継手製造部と、を備えたことを特徴としている。
【0018】
本発明では、上述したような建築構造物の自由度を高めることができ、部材の共有化を図ることができるので、製造コストを低減することができる効果に加え、以下の利点を有する。
すなわち、本発明では、データ蓄積部、多角錐枠体組合せ設定部、及び継手データ処理部を有する継手データ処理装置を使用し、予め格納された多角錐枠体情報に基づいて複数の多角錐枠体を適宜組み合わせて構造物全体の組み合わせ姿勢を決定し、その組み合わせ姿勢の隣接する多角錐枠体の頂点の位置に合わせた形状の接続継手を前記継手データ処理装置内で継手データとして形成することができる。そして、継手製造部において継手データを使用して複雑な形状となる実物の接続継手を製造することができるので、実物の多角錐枠体を組み合わせた状態で接続継手の形状を形成する手間が不要となり、接続継手の製造にかかる手間と時間を低減することができる。
【0019】
また、本発明に係る構造物構築システムは、前記継手製造部は、前記継手データ処理部で形成した前記継手データに基づいて前記実物の接続継手を造型可能な三次元プリンタであることが好ましい。
【0020】
この場合には、複雑な形状となる接続継手を三次元プリンタを使用して造型することにより、容易にかつ高精度で製造することができる。しかも、接続継手のみを造型するシステムであるため、大型の三次元プリンタが不要であり、三次元プリンタの持ち運びも容易となることから、多角錐枠体を組み立てる現地に三次元プリンタを搬入して、現地で接続継手を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の建築構造物、構造物構築システム、及び建築構造物の構築方法によれば、簡易な構造で構造物形状の自由度を高めることができるうえ、部材の共有化を図ることが可能となり、製造コストが増大することを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態による建築構造物、構造物構築システム、及び建築構造物の構築方法について、図面に基づいて説明する。
【0024】
図1乃至
図3に示すように、本実施形態による建築構造物1は、隣接する多角錐枠体Pの頂点同士、及び辺同士を連結して組み合わせることにより構築され、構造物の全体形状を自由にアレンジすることを可能としたものである。
建築構造物1の用途としては、例えば仮設住宅や、イベント等の展示ブース、テント等、短期間で簡易に設置、撤去できる仮設の建築構造物が好適とされるが、長期的に設置される本設の住宅等であっても勿論かまわない。
【0025】
建築構造物1は、複数の多角錐枠体P、P、…同士が接続される頂点で接続継手2を介して組み合わせることで構築される。そして、建築構造物1は、複数の多角錐枠体Pの組み合わせや変形状態に応じて利用者の好みや使用状態に合わせた形状に自在に変形させて設置することができる構造となっている。
建築構造物1における接続継手2は、互いに接続される複数の多角錐枠体P、P、…の各辺同士の連結角度(姿勢)が決定された状態で連結可能な継手形状に継手製造手段(後述する
図8に示す三次元プリンタ6)によって製造される。
【0026】
多角錐枠体Pは、4つの正三角形枠41、41、…によって形成され枠体形状が固定された正三角錐枠体P4(
図4参照)と、正四角形枠50と正三角錐枠体P4の正三角形枠41と同形の4つの正三角形枠51、51、…とを有する四角錘枠体P5(
図5(a)、(b)参照)、及び正五角形枠60と正三角錐枠体P4の正三角形枠41と同形の5つの正三角形枠61とを有する五角錐枠体P6(
図6(a)、(b)参照)のうち少なくとも一方と、を備えている。つまり、多角錐枠体Pによって組み合わされる建築構造物1は、少なくとも1つの正三角錐枠体P4が設けられ、四角錘枠体P5及び五角錐枠体P6のうち少なくとも一方が必ず設けられる。
ここで、
図1〜
図3において、正三角形枠41、51、61、正四角形枠50、及び正五角形枠60を指す位置は、見やすくするために枠ではなく、各枠によって囲まれる面を指しているものもある。
【0027】
なお、多角錐枠体Pは、全ての枠内に後述する面材12を備えた場合には、いわゆる多面体となる。つまり、正三角錐枠体P4、四角錘枠体P5、及び五角錐枠体P6は、それぞれ正四面体、五面体、及び六面体となる。
【0028】
正三角錐枠体P4は、
図4に示すように、正三角形をなす4つの正三角形枠41(
図1(b)参照)から形成され、枠体形状の全体が不変形で固定された構成となっている。すなわち、正三角錐枠体P4は、各辺部の辺長はすべて同じ長さで一致しているため、変形不可となる枠体をなしている。
【0029】
四角錘枠体P5と五角錐枠体P6は、それぞれ形状変形可能な枠体である。
四角錘枠体P5は、
図5(a)、(b)に示すように、4つの正三角形枠51(
図1(b)、
図2(b)、及び
図3(b)参照)と、4つの正三角形枠51の各1辺を共有する正四角形枠50と、から構成されている。すなわち、四角錘枠体P5の各辺部の辺長はすべて同じ長さで一致している。正三角形枠51は、正三角錐枠体P4の正三角形枠41と同一形状である。正四角形枠50は、
図5(a)に示すように変形前の状態では正四角形であるが、
図5(b)に示すように正四角形以外の角度に変形可能である。そのため、正四角形枠50の変形に対応して四角錘枠体P5の全体形状も変形可能となっている。
【0030】
五角錐枠体P6は、
図6(a)、(b)に示すように、5つの正三角形枠61(
図3(b)参照)と、5つの正三角形枠61の各1辺を共有する正五角形枠60と、から構成されている。すなわち、五角錐枠体P6の各辺部の辺長はすべて同じ長さで一致している。正三角形枠61は、正三角錐枠体P4の正三角形枠41と同一形状である。正五角形枠60は、
図6(a)に示すように変形前の状態では正五角形であるが、
図6(b)に示すように、正五角形以外の角度に変形可能である。そのため、正五角形枠60の変形に対応して五角錐枠体P6の全体形状も変形可能となっている。
【0031】
四角錘枠体P5の正四角形枠50、及び五角錐枠体P6の正五角形枠60は、それぞれの各頂点の角度が変形自在に設けられている。
つまり、
図5(b)において、二点鎖線が変形前の状態、すなわち正四角形枠50(
図1(b)参照)が正四角形となっている姿勢(変形前姿勢T0)を示している。
図5(b)の実線は変形後の一例を示す状態、すなわち正四角形枠50を図中矢印E1方向に変形させた変形四角形枠50A(
図1(b)、及び
図2(b)参照)とした変形姿勢T1を示している。
【0032】
また、
図6(b)において、二点鎖線が変形前の状態、すなわち正五角形枠60が正五角形となっている姿勢(変形前姿勢T0)を示している。
図6(b)の実線は変形後の一例を示す状態、すなわち正五角形枠60を図中矢印E2方向に変形させた変形五角形枠60A(
図3(b)参照)とした変形姿勢T1を示している。
なお、四角錘枠体P5と五角錐枠体P6が変形姿勢T1であるとき、それぞれ正四角形枠50、正五角形枠60によって囲まれる部分は1つの面ではなく、複数の面から形成されることになる。
【0033】
多角錐枠体Pは、上述したように、
図4に示す正三角錐枠体P4と、
図5(a)、(b)に示す四角錘枠体P5と、
図6(a)、(b)に示す五角錐枠体P6の3種類が採用されている。
多角錐枠体P(P4、P5、P6)は、辺部を構成する直線フレーム11と、直線フレーム11によって囲まれた開口面に沿って張設された面材12(
図1〜
図3参照)と、を備えている。
【0034】
直線フレーム11は、例えばアルミニウム、スチール等の金属材料や樹脂等で形成される断面円形あるいは断面矩形のパイプ材等の棒状部材が採用されている。直線フレーム11は、接続継手2が接続される第1端部11aに係合凹部13が形成されている。なお、直線フレーム11において、他の多角錐枠体Pに接続されない頂部側に位置する第2端部11b(
図1(a)、(b)参照))は、当該多角錐枠体Pにおける他の直線フレーム11に直接連結され、第1端部11aのような係合凹部13であってもなくてもかまわない。
なお、直線フレーム11の断面形状は、円形や角形等、とくに限定されることはなく、筒状体や密実なものであってもかまわない。
【0035】
面材12は、布材や樹脂製のパネル等を採用することができ、各多角錐枠体Pに形成される複数の開口面のうち少なくとも一つに設けられている。
【0036】
接続継手2は、
図7(a)、(b)に示すように、隣接する複数の多角錐枠体P、P、…の組み合わせ姿勢に合わせた形状に形成されている。つまり、接続継手2は、二つの多角錐枠体P、Pを1つの頂点で接続するだけでなく、複数(例えば3つ、或いは4つの多角錐枠体Pのそれぞれの頂点同士を接続するように構成されている。
【0037】
接続継手2は、接続する多角錐枠体Pの複数の直線フレーム11の軸線と同軸に延びる複数の軸部21と、それら軸部21のそれぞれに設けられ、直線フレーム11の筒状の係合凹部13に嵌合される係合凸部22と、を有している。
複数の軸部21は、接合中心部Oから接続する複数の直線フレーム11の係合凹部13に向けた角度で放射状に突出している。
【0038】
接続継手2としては、樹脂製、金属製等の部材により形成され、本実施形態では三次元プリンタ6(後述する)を使用して所望の形状に製造される。
【0039】
図1(a)、(b)及び
図2(a)、(b)に示す第1建築構造物1A(1)は、正三角錐枠体P4と、変形させた四角錘枠体P5を組み合わせた一例を示している。すなわち、第1建築構造物1Aは、4個の正三角錐枠体P4と、1個の変形した四角錘枠体P5を使用し、四角錘枠体P5の正四角形枠50の各辺に正三角錐枠体P4の一つの辺部(直線フレーム11)が接続されている。そして、隣接する多角錐枠体P、P同士の辺部に位置する直線フレーム11は、共通の部材として1本の直線フレーム11により構成されている。
なお、
図1(a)、(b)及び
図2(a)、(b)は、四角錘枠体P5の変形の度合いが異なる形状の例を示している。
【0040】
また、
図3(a)、(b)に示すように、他の建築構造物1の例として、第2建築構造物1B(1)は、正三角錐枠体P4、変形させた四角錘枠体P5、及び変形させた五角錐枠体P6を組み合わせた一例を示している。すなわち、第2建築構造物1Bは、3個の正三角錐枠体P4と、1個の変形した四角錘枠体P5と、1個の変形した五角錐枠体P6を使用し、五角錐枠体P6の正五角形枠60の各辺に正三角錐枠体P4及び四角錘枠体P5の一つの辺部(直線フレーム11)が接続されている。そして、隣接する多角錐枠体P、P同士の辺部に位置する直線フレーム11は、共通の部材として1本の直線フレーム11により構成されている。
【0041】
次に、本実施形態では、
図8に示すように、上述した複数の多角錐枠体P、P、…を組み合わせて構成される建築構造物1は構造物構築システム10を用いて構築される。
構造物構築システム10は、データ蓄積部3と、多角錐枠体組合せ設定部4と、継手データ処理部5と、三次元プリンタ6(継手製造部)と、を備えている。
【0042】
データ蓄積部3、多角錐枠体組合せ設定部4、及び継手データ処理部5は、例えばプログラムを組み込んだ継手データ処理装置10Aが用いられている。継手データ処理装置10Aは、CPU(演算処理装置)、データの送受信インターフェース、HDDやSSDなどの記憶装置、ROM、RAM、キーボード、マウスなどの入力装置、ディスプレイやプリンタなど出力装置などを任意に備えている。
【0043】
データ蓄積部3は、多角錐枠体P(正三角錐枠体P4、四角錘枠体P5、五角錐枠体P6)の寸法や形状からなる多角錐枠体情報Dが格納されている。データ蓄積部3には、多角錐枠体情報Dをシステム使用者が入力するための画面を表示する入力手段(図示省略)が設けられている。
【0044】
多角錐枠体組合せ設定部4は、データ蓄積部3に格納されている複数の多角錐枠体Pを適宜組み合わせ、四角錘枠体P5及び五角錐枠体P6のうち少なくとも一方を任意の形状とした構造物全体の組み合わせ姿勢を決定する処理が行われる。多角錐枠体組合せ設定部4では、データ蓄積部3の多角錐枠体情報Dよりモデル化された3D画像データ等を使用し、組み合わせられる多角錐枠体Pの種類、数量、組み合わせ状態、多角錐枠体の変形状態等を設定することで所望の建築構造物1全体の組み合わせ形状が決定される。
【0045】
継手データ処理部5は、多角錐枠体組合せ設定部4で決定した複数の多角錐枠体P、P、…の頂点の位置に合わせた形状となるように継手データ2Aを形成するデータ処理を行う継手データ処理が行われる。
【0046】
三次元プリンタ6は、いわゆる三次元プリンタであって、継手データ処理部5で形成した継手データ2Aに基づいて実物の接続継手2を造型することにより製造するものである。造型される接続継手2は、構築する建築構造物1としての所望の強度を確保できる材料、形状により製造されることはいうまでもない。
【0047】
そして、三次元プリンタ6によって製造された接続継手2は、寸法の精度が高く、継手データ処理部5で形成した継手データ2Aに対して製造誤差がほぼ生じることがなく、組み立てられた複数の多角錐枠体Pによって構築される建築構造物1の組み合わせ精度も高めることができる。
ここで、三次元プリンタ6の三次元プリンタとしては、市販のものを使用することができる。また、アウトプットされる接続継手2は、三次元プリンタ6によって形状のみが得られればよく、材質や着色等はとくに限定されるものではない。
【0048】
このように構成される建築構造物1の施工手順について、図面に基づいて説明する。ここでは、上述した構造物構築システム10を使用した構築方法について説明する。
図8に示すように、継手データ処理装置10Aのデータ蓄積部3に多角錐枠体P(正三角錐枠体P4、四角錘枠体P5、五角錐枠体P6)の寸法や形状からなる多角錐枠体情報Dを格納しておく。
【0049】
次に、多角錐枠体組合せ設定部4において、
図1〜
図3に示すように、データ蓄積部3に格納されている複数の多角錐枠体Pを適宜組み合わせ、四角錘枠体P5及び五角錐枠体P6のうち少なくとも一方を任意の形状とした構造物全体の組み合わせ姿勢を決定する処理を行う。
その後、
図7(a)、(b)に示すように、継手データ処理部5において、多角錐枠体組合せ設定部4で決定した複数の多角錐枠体Pの頂点の位置に合わせた形状の接続継手を継手データ処理した継手データ2Aを形成する処理を行う。
【0050】
なお、ここまでの処理は、現場で多角錐枠体Pを組み立てて施工する前に事前に行っておくことが可能である。あるいは、現場で多角錐枠体Pを組み立てながら、構造物全体の組み合わせ形状を確認しながら、多角錐枠体組合せ設定部4で構造物全体の組み合わせ姿勢を決定する処理を行うようにしてもよい。
【0051】
次に、三次元プリンタ6において、継手データ処理部5で形成した継手データ2Aに基づいて実物の接続継手2を製造する。
その後、複数の多角錐枠体P同士を三次元プリンタ6で製造した接続継手2によって連結するとともに、適宜な開口面に面材12を設置することで、多角錐枠体組合せ設定部4で設定した組み合わせ姿勢と同等の実物の建築構造物1が構築される。
【0052】
次に、上述した建築構造物、構造物構築システム、及び建築構造物の構築方法の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態では、
図1〜
図3に示すように、各多角錐枠体Pが同じ形状の正三角形枠を有しているので、任意の多角錐枠体Pを使用し、隣接する多角錐枠体Pの頂点同士、及び辺同士を連結して組み合わせた建築構造物1を簡単に構築することができる。
そして、本実施形態では、形状変形可能な四角錘枠体P5や五角錐枠体P6と正三角錐枠体P4を組み合わせ、隣接する多角錐枠体P同士を接続継手2で連結することで所望の形状に一体的に固定することができ、組み合わせ姿勢にバリエーションをもたせることが可能となるので、構築される建築構造物1の形状の自由度を高めることができ、利用者の好みに合わせた建築構造物1を構築できる。
【0053】
本実施形態では、組み合わせる多角錐枠体Pに形状変形しない正三角錐枠体P4を使用することから、形状変形可能な四角錘枠体P5や五角錐枠体P6を使用しても、組み合わせた形状を安定した姿勢で固定することができる。
【0054】
また、本実施形態では、多角錐枠体Pが2種類(正三角錐枠体P4と四角錘枠体P5(又は五角錐枠体P6))又は3種類(正三角錐枠体P4、四角錘枠体P5、及び五角錐枠体P6)と少なく、従来のような多数の部材を組み合わせる構造に比べて部材の製造コストを低減できる。そのうえ、正三角錐枠体P4、四角錘枠体P5、及び五角錐枠体P6は、それぞれ同じ形状の正三角形枠を形成しているので、辺部に相当する直線状の部材(直線フレーム11)の長さを同じ寸法とすることができ、部材の共有化を図ることができることから、製造コストの増大を抑えることができる。
さらに、本実施形態において、多角錐枠体Pは、簡単な構造となるので、組み立てにかかる作業時間や手間を低減することができる利点がある。
【0055】
また、本実施形態の場合には、多角錐枠体Pにおける直線フレーム11によって囲まれた任意の開口面に面材を配置することができるので、複数の多角錐枠体Pを組み合わせて構築された建築構造物1の所望の箇所に面材12を有する壁材、あるいは屋根材を設けることができる。このとき、すべての多角錐枠体Pにおいて、直線フレーム11によって囲まれた同じ形状の正三角形の開口面が形成されるため、面材12の大きさを統一化でき、複数の大きさの面材を製造する必要がなくなることから、製造コストを低減することができる。
【0056】
また、本実施形態では、直線フレーム11、面材12、及び接続継手2によって組み立てられる簡単な構造であり、それぞれの部材を分割した状態で持ち運びを容易に行うことができる。しかも接続継手2を使用して直線フレーム11に接続するという簡単な方法により組み立て作業を行うことが可能であることから、熟練の技術が不要であり、利用者が自分で複数の多角錐枠体Pを組み合わせた建築構造物1の組立、解体を行うことができる。
【0057】
また、本実施形態では、直線フレーム11の係合凹部13に接続継手2の係合凸部22を嵌合させることで、容易に複数の多角錐枠体P同士を接合することができ、形状変形可能な四角錘枠体P5や五角錐枠体P6を所望の形状とした組み合わせ姿勢で固定することができる。
【0058】
また、本実施形態の構造物構築システム10によれば、
図8に示すように、データ蓄積部3、多角錐枠体組合せ設定部4、及び継手データ処理部5を有する継手データ処理装置10Aを使用し、予め格納された多角錐枠体情報Dに基づいて複数の多角錐枠体Pを適宜組み合わせて構造物全体の組み合わせ姿勢を決定し、その組み合わせ姿勢の隣接する多角錐枠体Pの頂点の位置に合わせた形状の接続継手2を継手データ処理装置10A内で継手データ2Aとして形成することができる。
【0059】
そして、本実施形態では、三次元プリンタ6において継手データ2Aを使用して複雑な形状となる実物の接続継手2を製造することができるので、実物の多角錐枠体Pを組み合わせた状態で接続継手の形状を形成する手間が不要となり、接続継手2の製造にかかる手間と時間を低減することができる。
【0060】
しかも、本実施形態の構造物構築システム10では、複雑な形状となる接続継手2を三次元プリンタ6を使用して造型することにより、容易にかつ高精度で製造することができる。しかも、接続継手2のみを造型するシステムであるため、大型の三次元プリンタが不要であり、三次元プリンタ6の持ち運びも容易となることから、多角錐枠体Pを組み立てる現地に三次元プリンタ6を搬入して、現地で接続継手2を製造することが可能となる。
【0061】
上述のように本実施形態による建築構造物、構造物構築システム、及び建築構造物の構築方法では、簡易な構造で構造物形状の自由度を高めることができるうえ、部材の共有化を図ることが可能となり、製造コストが増大することを抑えることができる。
【0062】
以上、本発明による建築構造物、構造物構築システム、及び建築構造物の構築方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0063】
例えば、本実施形態では、多角錐枠体Pのうち任意の開口面に面材12を配置した構成としているが、面材12を省略することも可能であるし、例えば直線フレーム11のみで構成された建築構造物1全体を別のシート材や壁材等で覆う一体形成された外壁部材を採用してもよい。
【0064】
また、多角錐枠体P(正三角錐枠体P4、四角錘枠体P5、五角錐枠体P6)の正三角形枠41、51、61の大きさ、直線フレーム11の長さ寸法は、任意に設定することができる。要は、同じ建築構造物1で使用する全ての多角錐枠体Pにおいて、正三角形枠41、51、61の大きさ、直線フレーム11の長さ寸法は同一のものが使用されればよいのである。
【0065】
さらに、接続継手2と直線フレーム11との係合構造は、上述した実施形態のように凹凸係合に限定されることはなく、他の係合構造を採用することも可能である。例えば、直線フレーム11の第1端部11aと接続継手2の軸部21とを挟持する別部材を設けて、両者を接続するような構造であってもよい。
【0066】
さらにまた、本実施形態では、構造物構築システム10を使用して、継手データ処理装置10Aによって継手データ2Aを形成し、その継手データ2Aに基づいて三次元プリンタ6を使用して接続継手2を造型する方法としているが、これに限定されることはない。
例えば、三次元プリンタ6を使用せずに、継手データ2Aに基づいて製作した金型を用いて金属製の接続継手2を製造するようにしてもよい。また、継手データ処理装置10Aを使用せずに、現地で複数の多角錐枠体を組み合わせた状態で配置し、この組み合わせ姿勢を例えばレーザー等の測定機器を使用して計測し、この計測データに基づいて各接続部における直線フレーム11の角度を算出して、接続継手の製造データとしてもよい。
【0067】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。