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特開2020-71262隔壁用感光性樹脂組成物及びその硬化物並びにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-71262(P2020-71262A)
(43)【公開日】2020年5月7日
(54)【発明の名称】隔壁用感光性樹脂組成物及びその硬化物並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20200410BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20200410BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20200410BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20200410BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20200410BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20200410BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20200410BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20200410BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20200410BHJP
   C08G 59/14 20060101ALI20200410BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20200410BHJP
   C08F 8/14 20060101ALI20200410BHJP
   C08F 290/08 20060101ALI20200410BHJP
   C08G 75/045 20160101ALI20200410BHJP
【FI】
   G03F7/027 515
   G03F7/038
   G03F7/004 501
   G03F7/004 505
   H05B33/02
   H05B33/14 A
   H05B33/22 Z
   H05B33/12 B
   H05B33/10
   G02B5/20 101
   C08G59/14
   C08F2/48
   C08F8/14
   C08F290/08
   C08G75/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-203020(P2018-203020)
(22)【出願日】2018年10月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】今野 高志
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
3K107
4J011
4J030
4J036
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
2H148BD11
2H148BE03
2H148BE09
2H148BE13
2H148BE36
2H148BF07
2H148BG01
2H148BG06
2H148BH15
2H148BH28
2H225AC36
2H225AC44
2H225AC46
2H225AC52
2H225AC54
2H225AD06
2H225AN39P
2H225AN83P
2H225AP03P
2H225AP10P
2H225BA16P
2H225BA29P
2H225BA35P
2H225CA24
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
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3K107BB01
3K107CC33
3K107CC45
3K107DD89
3K107DD97
3K107EE27
3K107FF06
3K107GG06
3K107GG12
3K107GG24
3K107GG26
3K107GG28
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4J011CA08
4J011CC04
4J011CC10
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4J011PA27
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4J127BG33Y
4J127CB371
4J127CC311
4J127FA30
(57)【要約】
【課題】所望する光学濃度、所望する断面形状および硬化した際に収縮差が生じない隔壁用樹脂組成物及びその硬化物を提供すること。
【解決手段】本発明の隔壁用感光性樹脂組成物は、(A)不飽和基含有感光性樹脂と、
(B)2つ以上のエチレン性の重合性基を末端に有する樹枝状ポリマーと、(C)光重合開始剤と、を含む隔壁用感光性樹脂組成物である。本発明の隔壁は、隔壁用感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不飽和基含有感光性樹脂と、
(B)2つ以上のエチレン性の重合性基を末端に有する樹枝状ポリマーと、
(C)光重合開始剤と、
を含む隔壁用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分は、一般式(1)で表されるビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物を更に多塩基カルボン酸又はその無水物と反応させて得られた不飽和基含有感光性樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の隔壁用感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子のいずれかであり、Xは−CO−、−SO−、−C(CF−、−Si(CH−、−CH−、−C(CH−、−O−、一般式(2)で表されるフルオレン−9,9−ジイル基又は単結合を示し、lは、0〜10の整数である。)
【化2】
【請求項3】
前記(B)成分は、一般式(3)で示される多官能(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基中の炭素−炭素二重結合の一部に、一般式(4)で示される多価メルカプト化合物を付加させて得られる樹枝状ポリマーであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の隔壁用感光性樹脂組成物。
【化3】
(式(3)中、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは多価アルコールR(OH)のm個のヒドロキシル基うちn個のヒドロキシル基を一般式(3)中のエステル結合に供与した残り部分を表し、mは2〜20の整数を表し、nは2〜20の整数を表すが、m≧nである。)
【化4】
(式(4)中、Rは単結合又は2〜6価の炭素数1〜6の炭化水素基含有基であり、pはRが単結合であるときは2であり、Rが2〜6価の基であるときは、2〜6の整数を表す。)
【請求項4】
前記隔壁用感光性樹脂組成物は、(D)成分として撥インキ剤を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の隔壁用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記隔壁用感光性樹脂組成物は、(E)成分として黒色顔料、混色有機顔料及び白色顔料から選ばれた少なくとも1種の着色剤を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の隔壁用感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の隔壁用感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項7】
(E)成分が黒色顔料または混色有機顔料である請求項1〜4のいずれか一項に記載の隔壁用感光性樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を乾燥させる工程と、
前記塗膜を紫外線露光装置で露光する工程と、
前記塗膜をアルカリ水溶液で現像し、熱焼成する工程と、
を有する隔壁の製造方法であって、
前記隔壁の光学濃度(OD)は0.2〜4.0/μmであることを特徴とする、隔壁の製造方法。
【請求項8】
(E)成分が白色顔料である請求項1〜4のいずれか一項に記載の隔壁用感光性樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を乾燥させる工程と、
前記塗膜を紫外線露光装置で露光する工程と、
前記塗膜をアルカリ水溶液で現像し、熱焼成する工程と、
を有する隔壁の製造方法であって、
前記隔壁の光学濃度(OD)は0.1〜0.3/μmであることを特徴とする、隔壁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隔壁用感光性樹脂組成物および当該樹脂組成物を硬化してなる硬化物並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子、量子ドットディスプレイ、TFTアレイ及び波長変換素子などを含むカラーフィルターの製造においては、露光が不要であり、必要な部分だけに着色材料を塗布することが可能なインクジェット方式により、画素などの有機層をパターン印刷するインクジェット法が採用されている。ここで、インクジェット法は、ガラス、プラスチックシートなどの透明基板上に隔壁を形成した後、上記形成された隔壁に囲まれた領域内に所定量の有機層の材料を含むインクを注入する方法である。
【0003】
インクジェット方式の場合には、隔壁に囲まれた領域内にインクを注入する際に、隣接する領域内にインクが流入すること、及び隔壁にインクが付着することを抑制するために隔壁に撥インク性を付与することが必要となる。また、隔壁内にインクを保持するために、隔壁は厚膜であることが求められる。しかしながら、隔壁を厚くするにつれて、露光された部分での膜厚方向に対する架橋密度の差が拡大するため、しわがなく、良好な形状の隔膜を得ることが難しい。
【0004】
特許文献1では、アルカリ可溶性樹脂としてアクリル共重合体を加えたブラックレジストが、厚さ1μm以上の厚膜において、しわの発生を抑制することが開示されている。
【0005】
特許文献2では、多官能アクリレートに、多官能アクリレートが有するエチレン性二重結合に対して少量の多価メルカプト化合物をマイケル付加させた樹枝状ポリマーが開示されている。これにより、曲げに対する柔軟性と耐擦傷性を備えた多分岐ポリマーを含む樹脂組成物を提供できるとしている。ここで、樹枝状ポリマーはデンドリマー又は多分岐ポリマーとも称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−286478号公報
【特許文献2】国際公開第2008/47620号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、厚膜であってもしわを抑制できる樹脂組成物を、特許文献2では、柔軟性、耐擦傷性にすぐれた樹脂組成物を提供できるとしている。しかしながら、本発明者らの検討によると、特許文献1、2に記載の樹脂組成物で隔壁を形成した場合に、所望する光学濃度、所望する断面形状および硬化した際に収縮差が生じないというすべての条件を満たす隔壁は得られなかった。
【0008】
本発明の目的は、かかる点に鑑みてなされたものであり、所望する光学濃度、所望する断面形状および硬化した際に収縮差が生じない隔壁用樹脂組成物及びその硬化物を提供することである。また、本発明の目的は、上記樹脂組成物を用いた隔壁の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る隔壁用感光性樹脂組成物は、(A)不飽和基含有感光性樹脂と、(B)2つ以上のエチレン性の重合性基を末端に有する樹枝状ポリマーと、(C)光重合開始剤と、を含む隔壁用感光性樹脂組成物である。
【0010】
本発明に係る硬化物は、上記隔壁用感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物である。
【0011】
本発明に係る隔壁の製造方法は、(E)成分が黒色顔料または混色有機顔料である上記隔壁用感光性樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を乾燥させる工程と、前記塗膜を紫外線露光装置で露光する工程と、前記塗膜をアルカリ水溶液で現像し、熱焼成する工程と、を有する。前記隔壁の光学濃度(OD)は0.2〜4.0/μmである。
【0012】
また、本発明に係る隔壁の製造方法は、(E)成分が白色顔料である上記隔壁用感光性樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を乾燥させる工程と、前記塗膜を紫外線露光装置で露光する工程と、前記塗膜をアルカリ水溶液で現像し、熱焼成する工程と、を有する。前記隔壁の光学濃度(OD)は0.1〜0.3/μmである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、遮光性に優れ、表面外観及びパターン形状が良好であり、また、表面撥インキ性に優れる隔壁用樹脂組成物及びその硬化物を提供することができる。また、本発明の目的は、上記樹脂組成物を用いた隔壁の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の隔壁用感光性樹脂組成物(以下、感光性樹脂組成物と略称することがある)は、(A)〜(E)成分を含有する。以下、(A)〜(E)成分について、説明する。
【0015】
((A)成分)
(A)成分である不飽和基含有感光性樹脂は、1分子中に重合性不飽和基と、アルカリ可溶性を発現するための酸性基を有していることが好ましく、重合性不飽和基とカルボキシル基との両方を含有していることがより好ましい。上記樹脂であれば、特に限定されることなく、広く使用することができる。
【0016】
上記不飽和基含有感光性樹脂の例には、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物(以下、「ビスフェノール型エポキシ化合物」と称する)に、(メタ)アクリル酸を反応させ、得られたヒドロキシ基を有する化合物に多塩基カルボン酸又はその無水物を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物がある。ビスフェノール類から誘導されるエポキシ化合物とは、ビスフェノール類とエピハロヒドリンを反応させて得られるエポキシ化合物又はこれと同等物を意味する。(A)成分である不飽和基含有感光性樹脂は、エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを併せ持つため、感光性樹脂組成物として優れた光硬化性、良現像性、パターニング特性を与え遮光膜の物性向上をもたらしうる。特に、上記樹脂を使用したパターニング性については、例えば、20μm開口のネガ型フォトマスクを使用した場合に形成される太線の画素パターンだけでなく、5μm開口のネガ型フォトマスクを使用した場合に形成される細線の画素パターンについても良好なパターニング性を有しうる。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の総称であり、これらの一方又は両方を意味する。
【0017】
(A)成分である不飽和基含有感光性樹脂は、一般式(1)で表されるビスフェノール型エポキシ化合物であることが好ましい。
【0018】
【化1】
一般式(1)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子のいずれかであり、Xは−CO−、−SO−、−C(CF−、−Si(CH−、−CH−、−C(CH−、−O−、式(2)で表されるフルオレン−9,9−ジイル基又は単結合を示し、lは、0〜10の整数である。
【0019】
【化2】
【0020】
一般式(1)で表されるビスフェノール型エポキシ化合物は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させて得られる2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物である。この反応の際には、一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、ビスフェノール骨格を2つ以上含むエポキシ化合物を含んでいる。
【0021】
この反応に用いられるビスフェノール類の例には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、3,3’−ビフェノールなどが含まれる。この中でも、フルオレン−9,9−ジイル基を有するビスフェノール類が好ましい。
【0022】
また、このようなエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られたエポキシ(メタ)アクリレート分子中のヒドロキシ基と反応させる(a)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物の例には、鎖式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物、脂環式ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物、芳香族ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。ここで、鎖式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。また、脂環式ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸等の酸一無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物等も含まれる。また、芳香族ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物の例には、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の酸一無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物が含まれる。
【0023】
また、このようなエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られたエポキシ(メタ)アクリレート分子中のヒドロキシ基と反応させる(b)テトラカルボン酸の酸二無水物の例には、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物又は芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物が含まれる。ここで、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸等の酸二無水物が含まれ、さらには、任意の置換基が導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物が含まれる。また、脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸等の酸二無水物が含まれ、さらには、任意の置換基の導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物が含まれる。さらに、芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸等の酸二無水物が含まれ、さらには任意の置換基の導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物が含まれる。
【0024】
エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(a)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸無水物と(b)テトラカルボン酸の酸二無水物とのモル比(a)/(b)は、0.01〜10.0であることが好ましく、0.02以上3.0未満であることがより好ましい。モル比(a)/(b)が上記範囲を逸脱すると、良好な光パターニング性を有する感光性樹脂組成物とするための最適分子量が得られないため、好ましくない。なお、モル比(a)/(b)が小さいほど分子量は大きくなり、アルカリ溶解性は低下する傾向にある。
【0025】
また、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応、及びこの反応で得られたエポキシ(メタ)アクリレートと多塩基酸又はその酸無水物との反応は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。また、上記反応で合成される不飽和基含有感光性樹脂は、その重量平均分子量(Mw)は2000〜10000が好ましく、酸価は30〜200mg/KOHであることが好ましい。
【0026】
(A)成分である不飽和基含有感光性樹脂として好ましい樹脂の別の例には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体であって、(メタ)アクリル基及びカルボキシル基を有する樹脂が含まれる。上記樹脂の例には、グリシジル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル酸エステル類を溶剤中で共重合させて得られた共重合体に、(メタ)アクリル酸を反応させ、最後にジカルボン酸又はトリカルボン酸の無水物を反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂が含まれる。上記共重合体は、特開2014−111722号公報に示されている、両端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化されたジエステルグリセロールに由来する繰返し単位20〜90モル%、及びこれと共重合可能な1種以上の重合性不飽和化合物に由来する繰返し単位10〜80モル%で構成され、数平均分子量が2千〜2万かつ酸価が35〜120mgKOH/gである共重合体、及び特開2018−141968号公報に示されている、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来するユニットと、(メタ)アクリロイル基およびジまたはトリカルボン酸残基を有するユニットと、を含む、重量平均分子量(Mw)3000〜50000、酸価30〜200mg/KOHの重合体である重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を参考にできる。
【0027】
(A)成分の不飽和基含有感光性樹脂については、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
((B)成分)
(B)成分である樹枝状ポリマーは、2つ以上のエチレン性の重合性基を末端に有する多分岐型のポリマーである。エチレン性の重合性基は、(メタ)アクリレートに由来するものであることが好ましい。ここで、エチレン性の重合性基は、炭素−炭素二重結合を有する基であり、この炭素−炭素二重結合にカルボニル基が結合したα,β−不飽和カルボニル化合物のような共役した化合物においては、メルカプト化合物のような求核剤との相互作用が最も強いビニル基でマイケル付加反応が起こることが知られている。したがって、α,β−不飽和カルボニル化合物のような複数のエチレン性の重合性基を有する化合物と、多価メルカプト化合物のような複数の求核性基を有する化合物とを反応させることにより、カルボニル基に対しβ位の炭素に付加反応が生じる。ここで、付加反応が生じる基が複数ある場合には、多くの分岐が生じて樹枝状ポリマーとなる。このような樹枝状ポリマーは、特許文献2などにより公知であり、かかる文献に記載の方法により得ることができる。
【0029】
(B)成分である樹枝状ポリマーの例には、一般式(3)で示される多官能(メタ)アクリレートと一般式(4)で示される多価メルカプト化合物とが、マイケル付加(カルボニル基に関しβ位の炭素−炭素二重結合への付加)により重合したものが含まれる。
【0030】
【化3】
【0031】
【化4】
【0032】
ここで、一般式(3)で示される多官能(メタ)アクリレートへの一般式(4)で示される多価メルカプト化合物のマイケル付加は、得られる樹枝状ポリマーが、その後もなお炭素−炭素二重結合に基づく放射線重合を行うことができるように、一般式(3)で示される化合物が有する炭素−炭素二重結合の全量を100モル%としたとき、炭素−炭素二重結合が0.1〜50モル%の範囲で残存するように行われることが好ましい。
【0033】
例えば、一般式(4)で示される多価メルカプト化合物のメルカプト基と、一般式(3)で示される多官能(メタ)アクリレートの炭素−炭素二重結合(一般式(3)において、CH=C(R)−で表わされる二重結合をいい、モル比の計算の場合は二重結合という。)との付加の割合は、メルカプト基/二重結合のモル比が1/100〜1/3であることが好ましく、1/50〜1/5であることがより好ましく、1/20〜1/8であることが特に好ましい。
【0034】
また、上記樹枝状ポリマーは、放射線重合のための十分な量の官能基を有することが好ましい。このため、樹枝状ポリマーの分子量において、炭素−炭素二重結合1モル当たりの分子量は100〜10000の範囲にあることが好ましい。また、樹枝状ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1000〜20000の範囲にあることが好ましく、8000〜15000の範囲にあることがより好ましい。
【0035】
上記一般式(3)において、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは多価アルコールR(OH)のm個のヒドロキシル基うちn個のヒドロキシル基を一般式(3)中のエステル結合に供与した残り部分である。R(OH)は、炭素数2〜8の非芳香族の直鎖又は分枝鎖の炭化水素骨格に基づく多価アルコールであるか、多価アルコールの複数分子がアルコールの脱水縮合によりエーテル結合を介して連結してなる多価アルコールエーテルであるか、又はこれらの多価アルコール又は多価アルコールエーテルとヒドロキシ酸とのエステルである。一般式(3)において、mは2〜20の整数を表し、nは、2〜20の整数を表すが、m≧nである。
【0036】
一般式(3)で示される多官能(メタ)アクリレートの例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アルコキシ変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。これらの化合物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
上記一般式(4)において、Rは単結合又は2〜6価の炭素数1〜6の炭化水素基含有基であり、pはRが単結合であるときは2であり、Rが2〜6価の基であるときは、2〜6の整数を表す。ここで、Rは単結合又は置換基を有してもよいし、炭素数1〜6の炭化水素基又は炭化水素基の骨格中に酸素原子をさらに含んでいてよい。これらの炭化水素基は直鎖又は分枝鎖であってよい。また、これらの炭化水素基含有基は、さらに一般式(4)中に示されるチオメチル基(HSCH−)の一部と結合するカルボニルオキシ基を有してもよい。なお、炭化水素基の骨格中に酸素原子を含む場合は、両端は炭化水素基であることが好ましい。ここで、pは2〜6の整数を表し、Rの価数に対応する。したがって、Rが単結合であるときは、pは2であり、Rの炭素数が1であるときは、pは2〜4であり、Rの炭素数が2〜6であるときは、pは2〜6である。
【0038】
一般式(4)で示される多価メルカプト化合物の例には、1,2−ジメルカプトエタン、1,3−ジメルカプトプロパン、1,4−ジメルカプトブタン、ビスジメルカプトエタンチオール、トリメチロールプロパントリ(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリ(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールトリ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトプロピオネート)などが含まれる。
【0039】
上記(B)成分である樹枝状ポリマーの合成に際しては、必要に応じて重合防止剤を加えてよい。重合防止剤の例には、ヒドロキノン系化合物、フェノール系化合物が含まれる。これらの具体例には、ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、カテコール、p−tert−ブチルカテコール、クレゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール(BHT)などが含まれる。
【0040】
(B)成分である樹枝状ポリマーの合成の完了の確認は、液体クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、その他の一般的な分析機器により確認することができる。
【0041】
(B)成分である樹枝状ポリマーを合成する際、一般式(4)で示される多価メルカプト化合物が、一般式(3)で示される多官能(メタ)アクリレートの二重結合へ付加されるマイケル付加反応が生じる。この反応は、多官能(メタ)アクリレートと多価メルカプト化合物とを混合し、室温〜100℃で、塩基性触媒を添加することにより行うことができる。反応時間は、通常、30分間〜20時間が好ましく、6〜12時間がより好ましい。
【0042】
(B)成分である樹枝状ポリマーが感光性樹脂組成物として優れた特性を有することの詳細メカニズムは定かではない。しかしながら、一般にチオールとアクリレートを用いた樹枝状ポリマーは、その独特な構造上、ラジカル重合において酸素や溶剤による反応阻害を受けにくく低エネルギーで硬化すること、硬化収縮が少ないこと、塗膜の表面粗度の悪化が抑制されることから、例えば、遮光膜にした場合に、特に優れた特性を有すると考えられる。
【0043】
また、(A)及び(B)成分の含有量の割合は95/5〜40/60が好ましく、60/40〜50/50がより好ましい。(A)及び(B)成分の含有量の割合を好ましい範囲内にすることで、剥離減少を抑制することができ、表面しわも抑制できる適正なパターニングをすることができる。また、より好ましい範囲内にすることにより、隔壁で必要とされる5〜25μmといった厚膜のパターニングを適正な現像時間で、パターン形状、パターン表面性状に優れた硬化膜パターンを得ることができる。
【0044】
(A)成分の割合が上記範囲よりも少ない場合には、光硬化反応後の硬化物が脆くなりやすい。反対に、(A)成分の配合割合が上記範囲よりも多くなる場合には、未露光部のアルカリ現像液に対する溶解速度を大きくすることが難しい。したがって、(A)成分の配合成分が上記範囲よりも多くなる場合には、カラーフィルター用として通常形成される2μm以下の膜厚のパターニングをする際は、適正な現像速度に制御することが可能であるが、5μm以上の膜厚のパターニングをする際は、適正な現像速度及びパターン形状を制御することが難しくなる。
【0045】
(その他の光重合性モノマー)
光硬化性を制御するために、(A)成分と(B)成分に加えて、少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー(B’成分)を併用することができる。上記光重合性モノマーの例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等が含まれる。これらの光重合性モノマーは、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
((C)成分)
(C)光重合開始剤の例には、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルビイミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2,4,5−トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類;2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メチルチオスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物類;1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−(4−フェニルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−ベンゾアート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−アセタート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1−オンオキシム−O−アセタート等のO−アシルオキシム系化合物類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン等が含まれる。これらの光重合開始剤は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
特に、着色剤を含む感光性樹脂組成物とする場合には、O−アシルオキシム系化合物類(ケトオキシムを含む)を用いることが好ましい。また、着色剤を高顔料濃度で用いる場合および遮光膜パターンを形成する場合には、365nmにおけるモル吸光係数が10000以上であるO−アシルオキシム系光重合開始剤を用いることが好ましい。その具体的化合物群としては、一般式(5)で示されるO−アシルオキシム系光重合開始剤がある。なお、本発明でいう「光重合開始剤」とは、増感剤を含む意味で使用される。
【0048】
【化5】
(式(5)中、R、R10は、それぞれ独立にC1〜C15のアルキル基、C6〜C18のアリール基、C7〜C20のアリールアルキル基又はC4〜C12の複素環基を表し、R11はC1〜C15のアルキル基、C6〜C18のアリール基、C7〜C20のアリールアルキル基を表す。ここで、アルキル基およびアリール基はC1〜C10のアルキル基、C1〜C10のアルコキシ基、C1〜C10のアルカノイル基、ハロゲンで置換されていてもよく、アルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。また、アルキル基は直鎖、分岐、又は環状のいずれのアルキル基であってもよい。
【0049】
(C)成分の光重合開始剤の使用量は、(A)及び(B)の各成分の合計100重量部を基準として3〜30重量部が好ましく、5〜20重量部がより好ましい。(C)成分の配合割合が3重量部未満の場合には、感度が低下して、光重合の速度が遅くなってしまう。それに対して(C)成分の配合割合が30重量部を超える場合には、感度が強すぎて、所望するパターン線幅及び所望するパターンエッジを得られないおそれがある。
【0050】
((D)成分)
(D)成分の撥インキ剤は、隔壁にインキに対する撥インキ性を付与するものである。隔壁に囲まれた領域内に所定量の有機層の材料を含むインクを注入する場合には、撥インキ剤を含有することが好ましい。隣接する隔壁内にインクが流入すること、及び隔壁にインクが付着することを抑制できるからである。
【0051】
(D)成分の撥インキ剤の例には、シリコーン含有化合物やフッ素系化合物が含まれる。本発明では、(D)成分の撥インキ剤は、フッ素系化合物であることが好ましく、架橋基を含有するフッ素系化合物であることがより好ましい。撥インキ剤としてフッ素系化合物を用いた場合には、当該フッ素原子を有する基が、隔壁の表面に配向することによりインキのにじみや混色を抑制するからである。また、当該基がインキをはじくことにより隣接する隔壁の領域内に進入することを抑制できるからである。また、架橋基を含有するフッ素系化合物を用いることにより、形成した塗布膜を露光する際にその表面での架橋反応を加速することができる。これにより、現像処理において塗布膜から撥インキ剤が流出しにくくなるので、高い撥インキ性を有する隔壁を得ることができる。
【0052】
上記架橋基としては、エポキシ基又はエチレン性不飽和基が好ましく、隔壁から撥インキ剤の流出抑制の観点からはエチレン性不飽和基が好ましい。ここで、エチレン性不飽和基を有するフッ素系化合物の例には、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルアルキレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基と親水基を含むオリゴマー、パーフルオロアルキル基と親油基を含むオリゴマー、パーフルオロアルキル基と親水基と新油基を含むオリゴマー、パーフルオロアルキルと親水基を含むウレタン、パーフルオロアルキルエステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのフッ素含有有機化合物などが含まれる。
【0053】
本発明で使用する(D)成分の撥インキ剤の分子量は、特に限定されず、小さくても、大きくてもよい。ここで、分子量が大きい撥インキ剤を用いることにより、焼成による撥インキ剤の流動性が抑制され、隔壁から撥インキ剤の流出を抑制できるため好ましい。また、撥インキ剤の重量平均分子量(Mw)は、100〜200,000の範囲にあることが好ましく、1,000〜150,000の範囲にあることがより好ましく、10,000〜130,000の範囲にあることが特に好ましい。質量平均分子量(Mw)が下限値(Mw:100)以上であると、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて硬化膜を形成する際に、撥インキ剤が上面移行しやすい。また、上限値(Mw:200,000)以下であると開口部残渣が少なくなるため好ましい。
【0054】
本発明の感光性樹脂組成物中の(D)成分の撥インキ剤の含有量は、全固形分に対して0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上6質量%以下であることが特に好ましい。ここで、撥インキ剤の含有量を0.01質量%以上とすることで高い撥インキ性を有し、10質量%以下とすることで画素部への流出を抑制できる。
【0055】
撥インク剤の例には、主鎖が炭化水素鎖であり、側鎖にフッ素原子を含む化合物からなる撥インク剤が含まれる。また、撥インク剤には、フッ素原子を有する加水分解性シラン化合物を含む加水分解性シラン化合物の部分加水分解縮合物からなる撥インク剤を用いてもよい。撥インク剤は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
((E)成分)
本発明で使用できる(E)成分の黒色顔料、混色有機顔料及び白色顔料の着色剤は、1〜1000nmの平均粒径(レーザー回折・散乱法粒径分布計又は動的光散乱法粒径分布計測定された平均粒径)で分散されたものであれば、公知の着色剤を特に制限なく使用することができる。
【0057】
ここで、黒色顔料の例には、ペリレンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラックなどが含まれる。混色有機顔料の例には、アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾメチン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、スレン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料などの有機顔料から選択される少なくとも2色が混合された顔料が含まれる。白色顔料の例には、酸化チタン顔料、複合酸化物顔料;ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機フィラーが含まれる。これらの(E)成分は、目的とする感光性樹脂組成物の機能に応じて、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
なお、(E)成分として使用可能な有機顔料の例には、カラーインデックス名で以下のナンバーのものが含まれるが、これに限定されない。
ピグメント・レッド2、3、4、5、9、12、14、22、23、31、38、112、122、144、146、147、149、166、168、170、175、176、177、178、179、184、185、187、188、202、207、208、209、210、213、214、220、221、242、247、253、254、255、256、257、262、264、266、272、279等
ピグメント・オレンジ5、13、16、34、36、38、43、61、62、64、67、68、71、72、73、74、81等
ピグメント・イエロー1、3、12、13、14、16、17、55、73、74、81、83、93、95、97、109、110、111、117、120、126、127、128、129、130、136、138、139、150、151、153、154、155、173、174、175、176、180、181、183、185、191、194、199、213、214等
ピグメント・グリーン7、36、58等
ピグメント・ブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、80等 ピグメント・バイオレット19、23、37等
【0059】
(E)成分の着色剤の配合割合については、所望の遮光度によって任意に決めることができるが、感光性樹脂組成物中の固形成分に対して1〜80質量%であることが好ましい。ここで、黒色の隔壁を形成する場合は3〜50質量%であることがより好ましく、白色の隔壁を形成する場合は10〜80質量%であることがより好ましい。
【0060】
上記(E)成分は溶剤に分散させた着色剤分散体として他の配合成分と混合するのが通常であり、この際には分散剤(E’成分)を添加することができる。分散剤は、顔料(着色剤)分散に用いられている公知の化合物(分散剤、分散湿潤剤、分散促進剤等の名称で市販されている化合物等)等を特に制限なく使用することができる。分散剤の例には、カチオン性高分子系分散剤、アニオン性高分子系分散剤、ノニオン性高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤(分散助剤)が含まれる。特に、分散剤は、着色剤への吸着点としてイミダゾリル基、ピロリル基、ピリジル基、一級、二級または三級のアミノ基等のカチオン性の官能基を有し、アミン価が1〜100mgKOH/g、数平均分子量が1千〜10万の範囲にあるカチオン性高分子系分散剤であることが好ましい。この分散剤の配合量は、着色剤に対して1〜35質量%であることが好ましく、2〜25質量%であることがより好ましい。なお、樹脂類のような高粘度物質は、一般に分散を安定させる作用を有するが、分散促進能を有しないものは分散剤として扱わない。しかし、分散を安定させる目的で使用することを制限するものではない。
【0061】
適切な方法で、上記(A)〜(E)成分を混合して分散させることにより、本発明の感光樹脂組成物を調製することができる。
【0062】
(溶剤)
本発明の感光性樹脂組成物には、(A)〜(E)の成分の他に(F)成分である溶剤を使用することが好ましい。溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類が含まれる。これらを単独又は2種類以上を併用して溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。
【0063】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じてエポキシ樹脂等の(A)成分以外の樹脂、硬化剤、硬化促進剤、熱重合禁止剤および酸化防止剤、可塑剤、充填材、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤、カップリング剤等の添加剤を配合することができる。ここで、熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。充填材の例には、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等が含まれる。消泡剤やレベリング剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。界面活性剤の例には、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが含まれる。カップリング剤の例には、3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0064】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を除いた固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマーを含む)中に、(A)成分である不飽和基含有感光性樹脂と、(B)成分である樹枝状ポリマーと、(C)成分である光重合開始剤と、(D)成分である撥インキ剤と、(E)着色剤が合計で80質量%以上、好ましくは90質量%以上含まれることが好ましい。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、全体量に対して40〜90質量%であることが好ましい。
【0065】
また、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物(隔壁)は、例えば、感光性樹脂組成物の溶液を基板等に塗布し、溶剤を乾燥し、光(紫外線、放射線等を含む)を照射して硬化させることで得られる。フォトマスク等を使用して光が当たる部分と当たらない部分とを設けて、光が当たる部分だけを硬化させ、他の部分をアルカリ溶液で溶解させれば、所望のパターンの隔壁が得られる。
【0066】
感光性樹脂組成物の塗布・乾燥による成膜方法の各工程について、具体的に例示する。
【0067】
感光性樹脂組成物を基板に塗布する方法としては、公知の溶液浸漬法、スプレー法、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコート機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プレベーク)ことにより、被膜が形成される。プレベークはオーブン、ホットプレート等による加熱、真空乾燥又はこれらの組み合わせることによって行われる。プレベークにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択されうるが、例えば、80〜120℃で、1〜10分間行われることが好ましい。
【0068】
露光に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、放射線の波長の範囲は、250〜450nmであることが好ましい。また、このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の水溶液を用いることができる。これらの現像液は、樹脂層の特性に合わせて適宜選択されうるが、必要に応じて界面活性剤を添加することも有効である。現像温度は、20〜35℃であることが好ましく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗される。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
【0069】
このようにして現像した後、180〜250℃で、20〜100分間、熱処理(ポストベーク)が行われる。ただし、製膜する基板等の耐熱性が低い場合には、80〜180℃で、30〜100分間のポストベーク条件にできるように組成物の配合を設計することもできる。このポストベークは、パターニングされた塗膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプレベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。
【0070】
以上により、本発明では、光学濃度(OD)が0.2〜4.0/μmであり、テーパー角が21°以上である黒色の隔壁及び光学濃度(OD)が0.1〜0.3/μmであり、テーパー角が21°以上であり白色の隔壁を得ることができる。また、光学濃度(OD)が0.2〜4.0/μmであり、テーパー角が51°以上である黒色の隔壁及び光学濃度(OD)が0.1〜0.3/μmであり、テーパー角が51°以上である51°以上である白色の隔壁を得ることができる。
【0071】
本発明の感光性樹脂組成物は、有機EL素子、量子ドットディスプレイ、TFTアレイ及び波長変換素子などを含むカラーフィルターの製造に用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、(A)成分である不飽和基含有感光性樹脂及び(B)成分である樹枝状ポリマーの合成例を示す。なお、本発明はこれらの実施例等によりその範囲を限定されるものではない。
【0073】
合成例1〜3で使用する略号は次のとおりである。
BPFE :ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(9,9−ビス(4−ヒドロ
キシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物(エポキ
シ当量250g/eq)。
AA :アクリル酸
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
TEAB :臭化テトラエチルアンモニウム
BPDA :3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA :テトラヒドロ無水フタル酸
MAA :メタクリル酸
MMA :メタクリル酸メチル
CHMA :メタクリル酸シクロヘキシル
AIBN :アゾビスイソブチロニトリル
GMA :グリシジルメタクリレート
TPP :トリフェニルホスフィン
TBPC :2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
PTMA :ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)
DPHA :ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの
混合物
HQ :ハイドロキノン
BzDMA:ベンジルジメチルアミン
【0074】
[合成例1]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中に、BPFE(114.4g(0.23モル)、AA(33.2g(0.46モル))、PGMEA(157g)及びTEAB(0.48g)を仕込み、100〜105℃で20時間撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内にBPDA(35.3g(0.12モル))、THPA(18.3g(0.12モル))を仕込み、120〜125℃で6時間撹拌し、不飽和基含有感光性樹脂(A)−1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56.1質量%であり、酸価(固形分換算)は103mgKOH/gであり、GPC分析によりMwは3600であった。
【0075】
[合成例2]
窒素導入管及び還流管付き1000ml四つ口フラスコ中に、MAA(51.65g(0.60モル))、MMA(36.04g(0.36モル))、CHMA(40.38g(0.24モル))、AIBN(5.91g)、及びPGMEA(360g)を仕込み、窒素気流下、80〜85℃で8時間撹拌して重合させた。さらに、フラスコ内にGMA(61.41g(0.43モル))、TPP(2.27g)及びTBPC(0.086g)を仕込み、80〜85℃で16時間撹拌し、不飽和基含有感光性樹脂(A)−2を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は、35.7質量%であり、酸価(固形分換算)は50mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは19600であった。
【0076】
[合成例3]
1Lの四つ口フラスコ内に、PTMA(20g(メルカプト基:0.19モル))、DPHA(212g(アクリル基:2.12モル))、PGMEA(58g)、HQ(0.1g)、及びBzDMA(0.01g)を仕込み、60℃で12時間撹拌して重合させ、樹枝状ポリマー(B)を得た。得られた樹枝状ポリマーの固形分濃度は80質量%であり、GPC分析によるMwは10000であった。上記樹枝状ポリマーは、ヨードメトリー法でメルカプト基の消失が確認された。
【0077】
合成例1〜3で得られた不飽和基含有感光性樹脂及び樹枝状ポリマーの固形分濃度、酸価及び分子量は以下の方法により求めた。
【0078】
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W0(g)〕に含浸させて秤量し〔W1(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の重量〔W2(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W2−W0)/(W1−W0)
【0079】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置〔平沼産業株式会社製、商品名COM−1600〕を用いて1/10N−KOH水溶液で滴定して求めた。
【0080】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)[東ソー株式会社製 商品名:HLC−8220GPC、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuperH−2000(2本)+TSKgelSuperH−3000(1本)+TSKgelSuperH−4000(1本)+TSKgelSuper−H5000(1本)〔東ソー株式会社製〕、温度:40℃、速度:0.6ml/min]にて測定し、標準ポリスチレン〔東ソー株式会社製PS−オリゴマーキット〕換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0081】
実施例1〜17及び比較例1の隔壁用感光性樹脂組成物の各成分及びその配合量を表1及び2に示す。なお、表1及び2中の(A)〜(E)の各成分は、溶剤以外の固形分の分量であり、樹脂溶液、着色分散液の溶剤の量は、溶剤(F)に合算して示している。また、(A)〜(F)で示される成分を以下に記載した。
【0082】
表1及び表2で示される実施例及び比較例で使用する記号は次のとおりである。
(A)不飽和基含有感光性樹脂
(A)−1:合成例1で得られた樹脂
(A)−2:合成例2で得られた樹脂
(B)樹枝状ポリマー:合成例3で得られた樹枝状ポリマー
(B’)光重合性モノマー:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物(DPHA、日本化薬株式会社製)
(C)光重合開始剤:オキシムエステル系光重合開始剤(アデカアークルズNCI −831、ADEKA株式会社製、「アデカアークルズ」は同社の登録商標)
(D)撥インキ剤:(メガファックRS−72−K、DIC株式会社、「メガファック」は同社の登録商標)
(E)着色剤
(E)−1:カーボンブラック
(E)−2:ラクタムブラック
(E)−3:酸化チタン
(E’)分散剤
(F)溶剤:PGMEA
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
[実施例1]
(A)〜(F)までの各成分を表1に記載の割合で配合して、均一に混合することにより実施例1に係る隔壁用感光性樹脂組成物を得た。
【0086】
実施例1で得られた隔壁用感光性樹脂組成物を用いて、以下の評価を行った。
【0087】
[光学濃度(OD)]
上記隔壁用感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス板(EAGLE XG、コーニング社製、「EAGLE XG」は同社の登録商標)上に、ポストベーク後の膜厚が1μmとなるように塗布し、90℃で1分間プレベークした。熱風乾燥機を用いて230℃、30分間熱ポストベークした後、マクベス透過濃度計を用いて測定を行い、光学濃度(OD)を評価した。
【0088】
光学濃度(OD)は次の式(1)で算出した。
光学濃度(OD)=−log10T (1)
(Tは透過率を示す)
【0089】
[現像時間(膜厚:10μm)]
上記隔壁用感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス板(EAGLE XG、コーニング社製)上に、ポストベーク後の膜厚が10μmとなるように塗布し、90℃で1分間プレベークした。乾燥塗膜の上に、20μm開口のネガ型フォトマスクを露光ギャップ100μmに調整して被せ、i線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで80mJ/cmの紫外線を照射し、感光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗板を25℃、0.05%水酸化カリウム水溶液を用いて、1kgf/cmのシャワー現像圧にて、パターンが現れ始める現像時間を評価した。
【0090】
膜厚が10μmであるときの現像時間は以下のように評価した。
(評価)
○:パターンが現れ始める現像時間が2分未満
△:パターンが現れ始める現像時間が2分以上3分未満
×:パターンが現れ始める現像時間が3分以上
【0091】
[現像時間(膜厚:2μm)]
ポストベーク後の膜厚が2μmとなるようにした以外は、上記膜厚(10μm)の現像時間の操作と同様にして評価を行った。
【0092】
膜厚が2μmであるときの現像時間は以下のように評価した。
(評価)
○:パターンが現れ始める現像時間が20秒以上
△:パターンが現れ始める現像時間が20秒未満
×:パターンが現れ始める現像時間が5秒未満
【0093】
[細線のパターニング性(膜厚:5μm)]
上記隔壁用感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス板(EAGLE XG、コーニング社製)上に、ポストベーク後の膜厚が10μmとなるように塗布し、90℃で1分間プリベークした。乾燥塗膜の上に、5μm開口のネガ型フォトマスクを露光ギャップ100μmに調整して被せ、i線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで80mJ/cmの紫外線を照射し、感光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗板を25℃、0.05%水酸化カリウム水溶液を用いて、1kgf/cmのシャワー現像圧にて、パターンが現れ始める現像時間から、さらに10秒経過後の現像後、5kgf/cm圧のスプレー水洗を行い、塗膜の未露光部を除去して、ガラス基板上に画素パターンが形成されるかを確認した。
【0094】
[太線のパターニング性(膜厚:20μm)]
ネガ型フォトマスクの開口を5μmから20μmに変更した以外は、上記細線のパターニング性と同様にしてガラス基板上に画素パターンが形成されるかを確認した。
【0095】
細線及び太線のパターニング特性の評価は以下のように評価した。
(評価)
○:パターンが形成される
△:パターンが形成されるが一部に剥離が見られる
×:パターンが形成されない
【0096】
[テーパー角度]
上記隔壁用感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス板(EAGLE XG、コーニング社製)上に、ポストベーク後の膜厚が10μmとなるように塗布し、90℃で1分間プリベークした。乾燥塗膜の上に、20μm開口のネガ型フォトマスクを露光ギャップ100μmに調整して被せ、i線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで80mJ/cmの紫外線を照射し、感光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗板を25℃、0.05%水酸化カリウム水溶液を用いて、1kgf/cmのシャワー現像圧にて、パターンが現れ始める現像時間から、さらに10秒経過後の現像後、5kgf/cm圧のスプレー水洗を行い、塗膜の未露光部を除去して、ガラス基板上に画素パターンを形成した。形成した画素パターン(格子状の隔壁)を切断して、断面観察用のサンプルを作製し、走査型電子顕微鏡(株式会社キーエンス製)を用いて隔壁の断面形状を観察し、そのテーパー角度を測定した。
【0097】
テーパー角度の評価は以下のように評価した。
(評価)
◎:テーパー角度が51〜90°
○:テーパー角度が21〜50°
×:テーパー角度が5〜20°
【0098】
(表面シワの評価)
テーパー角度評価用サンプルについて、形成した画素パターンの表面を光学顕微鏡で観察し、シワの有無を評価した。
【0099】
表面シワの評価は以下のように評価した。
(評価)
○:表面にシワがない
△:次工程に影響を及ぼさない程度のシワがある
×:表面にシワがある
【0100】
[実施例2〜17及び比較例1]
実施例1と同様に、実施例2〜17及び比較例1についても(A)〜(F)までの各成分を表1に記載の割合で配合して、均一に混合することにより実施例2〜17及び比較例1に係る隔壁用感光性樹脂組成物を得た。実施例2〜17及び比較例1に係る隔壁用感光性樹脂組成物の各評価は、実施例1と同様にして行った。
【0101】
実施例1〜17及び比較例1の評価結果を表3および4に示す。
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
表3及び表4に示す評価結果から、不飽和基含有感光性樹脂(A)と樹枝状ポリマー(B)を併用することにより、硬化後の画素パターンに表面にシワが生じないことが確認できた。したがって、樹枝状ポリマー(B)は、隔壁用感光性樹脂組成物が硬化した際の収縮差の抑制に有効である。
【0105】
また、不飽和基含有感光性樹脂(A)の配合量と樹枝状ポリマー(B)の配合量を調整することにより、2μmのような薄膜から10μmのような厚膜まで適用可能な隔壁用感光性樹脂組成物を提供することができる。
【0106】
また、ビスフェノール型エポキシ化合物から誘導されるエポキシアクリレート酸付加物(例えば(A)−1)を不飽和基含有感光性樹脂として用いることにより、太線だけでなく細線においても良好なパターニング性を得ることができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の感光性樹脂組成物は有機EL素子、量子ドットディスプレイ、TFTアレイ及び波長変換素子などを含むカラーフィルターの製造に極めて有用である。また、厚膜隔壁に特化した組成物でもあることから、ミニLEDやマイクロLEDの隔壁等強い光源体の混色防止材としても有用であると考えられる。