【解決手段】光導波路素子10は、電気光学効果を有し光導波路12を有する基板11と基板11に形成された信号電極18および接地電極19a、19bを備える。光導波路12は、入力側の端部121および出力側の端部122と、これら端部121、122間に設けられた光変調部123を有する。基板11は、変調部123と平行な側面11aを有し、入力側の端部121は側面11aに向かって屈曲形成されている。基板11の側面11aの一部を光学面13によって構成し、光学面13に入力側のポート121aを位置させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の光導波路素子は、基板内を光が伝搬することから、低損失な構造とするためには、伝搬距離が短くなるような位置に光ファイバを配置する必要があり、光ファイバを直接基板に接続するような場合にしか対応できないという問題がある。また、出力側の短辺に光ファイバを配置するような構造に対応することは困難であるという問題もある。
【0006】
また、特許文献2に記載の光導波路素子は、基板に半導体(InP)が用いられており、その基板の側面に、L字状に形成された光導波路が導かれている。ここで、半導体基板を用いた光導波路素子に比べ、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)等の電気光学効果を有する基板を用いた光導波路素子のサイズは、一般的に幅が0.5〜数mm程度であるのに対し側面の長さが数十mmと非常に細長い形状を有している。このため、基板の側面全面を研磨して光学面とするには、基板の固定方法や、側面を所定の面粗さに高精度に仕上げるといった点で困難であり、製造コストの高騰を招くという問題があった。
【0007】
また、一般に光導波路素子においては、基板を研磨する際の端部の欠け防止や、接続させる光ファイバ等の光学部品の十分な接着強度を得るために、補強ブロックを基板の上面に貼り付ける場合がある。このとき、側面を研磨面とするには、補強ブロックを長手方向に延びる側面全面に貼り付けるための余白を基板に確保する必要があり、このため基板の幅が増大する。その結果、光導波路素子は大型化し、1つのウエハから素子を分割して得る場合、素子が得られる数が減少して製造コストの高騰を招くという問題があった。さらに、補強ブロックを貼り付ける部分には制御電極を配線できないため、高周波中継基板やコネクタ・ピン等の併設する電気部品の設置場所が制限されるという問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電気光学効果を有する基板の側面に光学面を形成することにより、安価で効果的に光変調器の短小化を図ることができるとともに、併設する電気部品の設置場所に関する設計の自由度を向上させることができる光導波路素子および光変調器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光導波路素子は、(1)電気光学効果を有し、光波が伝搬するよう形成された光導波路を有する基板と、前記基板に形成され、前記光導波路を伝搬する光波に変調信号を印加する制御電極と、を備え、前記光導波路は、入力側の端部および出力側の端部と、該入力側の端部と該出力側の端部との間に延在する光変調部と、を有し、前記基板は、前記光変調部を構成する光導波路の延在方向と略平行な側面および該側面に交差する端面を有し、前記光導波路の前記入力側の端部および前記出力側の端部のうちの少なくともいずれか一方は、前記側面に向かって屈曲形成された屈曲端部を有し、前記屈曲端部は、その先端に光波の入射および出射のいずれかがなされるポートを有し、前記基板の前記側面の一部が光学面によって構成され、前記屈曲端部は前記光学面まで延在しており、該屈曲端部の前記ポートが前記光学面に位置していることを特徴とする。
【0010】
この構成により、本発明に係る光導波路素子は、電気光学効果を有する基板の側面全面を光学面で構成する必要がないため、その光学面の面積を小さくすることができる。その結果、側面を研磨加工して光学面を形成する手間が軽減して光学面を容易かつ安価に形成することができるとともに、光学面の全面を所定の面粗さに高い精度で形成することができる。
【0011】
また、本発明に係る光導波路素子は、光導波路素子の入力側の端部および出力側の端部のうちの少なくともいずれか一方が、側面に向かって屈曲形成された屈曲端部を構成することにより、光導波路が基板内で屈曲した構成を有する。このため、当該光導波路素子を用いた光変調器の短小化を図ることができる。
【0012】
本発明に係る光導波路素子は、(2)前記光学面は、前記基板の前記側面から前記端面にわたり形成された傾斜面で構成される。
【0013】
この構成により、本発明に係る光導波路素子は、基板の側面を研磨加工するなどして傾斜面を形成することにより光学面を容易かつ安価に形成することができるとともに、基板の側面全面に補強ブロックを設置する余白を確保する必要がないため、基板の幅が増大することを抑制することができる。
【0014】
本発明に係る光導波路素子は、(3)前記光学面は、前記基板の前記側面から前記端面にわたり形成された段差面で構成される。
【0015】
この構成により、本発明に係る光導波路素子は、基板の側面をダイサー等で切削加工した後に研磨加工するなどして段差面を形成し、その段差面を光学面として構成することができる。このため、当該光学面を容易かつ安価に形成することができるとともに、基板の側面全面に補強ブロックを設置する余白を確保する必要がないため、基板の幅が増大することを抑制することができる。
【0016】
本発明に係る光変調器は、(4)上記本発明に係る光導波路素子と、前記光導波路素子を収納する筐体と、前記光導波路素子に光学的に接続され、該光導波路素子の前記光導波路に光波を入力する入力側の光伝送手段および前記光導波路から光波を出力する出力側の光伝送手段と、を備え、前記入力側の光伝送手段および前記出力側の光伝送手段が、それぞれ前記筐体に並列接続された入力側の光ファイバおよび出力側の光ファイバを含むことを特徴とする。なお、入力側および出力側の各光ファイバと光導波路素子との光学的な接続の手段としては、直接接続(バットジョイント)してもよいし、レンズ等を使用した空間光学系で光を結合させてもよい。
【0017】
この構成により、本発明に係る光変調器は、電気光学効果を有する基板の側面に光学面を容易かつ安価に形成することができるとともに、光学面の全面を所定の面粗さに高い精度で形成することができる光導波路素子を備えた光変調器を提供することができる。さらに、光学面を形成する部分のみに補強ブロックを貼り付ければよいので、基板の幅が増大することを抑制しつつ制御電極を配線するスペースを確保することができるため、高周波中継基板やコネクタ・ピン等の電気部品の設置場所に関する設計の自由度が向上する。
【0018】
また、本発明に係る光変調器は、光導波路の屈曲端部に対し光波を入力または出力する光伝送手段を備えるため、光伝送手段を直列に接続する構成が回避され、その結果、当該光変調器の短小化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電気光学効果を有する基板の側面に光学面を形成することにより、安価で効果的に光変調器の短小化を図ることができるとともに、併設する電気部品の設置場所に関する設計の自由度が向上する光導波路素子および光変調器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る光導波路素子および光導波路素子を備えた光変調器について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
まず、構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、第1の実施形態に係る光変調器1は、光導波路素子10と、光導波路素子10を収納する筐体20と、を備えている。また、第1の実施形態に係る光変調器1は、後述するように、光導波路素子10の光導波路12に光波を入力する入力側の光ファイバ31と、光導波路12から光波を出力する出力側の光ファイバ32と、を備えている。各光ファイバ31、32は、本発明の光伝送手段を構成する。
【0024】
第1の実施形態に係る筐体20は、ステンレス等の金属からなる直方体状の金属製ケースで構成されている。光導波路素子10は、筐体20内に収納され、図示せぬ蓋体が筐体20に装着されて筐体20内に密封されるようになっている。
【0025】
第1の実施形態に係る光導波路素子10は、電気光学効果を有し、光波が伝搬するよう形成された光導波路12を有する基板11と、基板11の表面に形成された信号電極18および接地電極19a、19bと、を備えている。信号電極18および接地電極19a、19bは、本発明の制御電極を構成する。
【0026】
第1の実施形態に係る基板11は、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)、PLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)、やEOポリマー等からなる基板が用いられる。とりわけ、ニオブ酸リチウムの結晶を用いたいわゆるLN基板(X板、Z板)は、高い電気光学効果を示すことから好適に用いられる。また、基板11は、制御電極(信号電極18および接地電極19a、19b)が配置された後述する光変調部123以外の部分については、石英系の材料等の他の材料を用いて構成されてもよい。
【0027】
基板11は薄板状であって平面視が略長方形状の形状を有する。ここで、
図1においてL、Wは、それぞれ光変調器1および光導波路素子10の長手方向および幅方向を示している。以下の説明での長手方向および幅方向は、それぞれこれらL、Wで示す方向をいう。
【0028】
図1に示すように、基板11は、長手方向に延在する長辺側の一対の側面11a、11bと、該側面11a、11bと交差する短辺側の一対の端面11c、11dと、を有する。また、筐体20は、光導波路素子10の側面11a、11bにそれぞれ対向する側板部20a、20bと、光導波路素子10の端面11c、11dにそれぞれ対向する端板部20c、20dと、を有する。
【0029】
本実施形態に係る光導波路12は、マッハツェンダ型の配線構造を有する。光導波路12は、基板11内の表面近傍に、周囲より屈折率の高い部分を設けることで形成されている。基板11がLN基板の場合、光導波路12は、Ti等の熱拡散法やプロトン交換法等で形成することができる。
【0030】
図2に示すように、本実施形態に係る光導波路12は、屈曲した入力側の端部121および直線状の出力側の端部122と、入力側の端部121と出力側の端部122との間に延在する光変調部123と、を有する。
【0031】
光導波路12は、入力側光導波路と、前記入力側光導波路に接続された入力側分岐光導波路と、前記入力側分岐光導波路と接続され、並行な光導波路を構成する並行光導波路と、前記並行光導波路に接続された出力側分岐光導波路と、前記出力側分岐光導波路に接続された出力側光導波路と、を有する。
【0032】
本実施形態では、光導波路12の入力側の端部121は、上述の入力側光導波路を構成している。また、出力側の端部122は、上述の出力側分岐光導波路を構成している。また、光変調部123は、上述の入力側分岐光導波路、並行光導波路および出力側分岐光導波路を構成している。
【0033】
光変調部123は、互いに平行な並行導波路を構成する第1の光導波路124aおよび第2の光導波路124bと、入力側の端部121から分岐して第1の光導波路124aおよび第2の光導波路124bにそれぞれ接続する第3の光導波路125および第4の光導波路126と、出力側の端部122から分岐して第1の光導波路124aおよび第2の光導波路124bにそれぞれ接続する第5の光導波路127および第6の光導波路128と、を有する。第1の光導波路124aおよび第2の光導波路124bは、それぞれ長手方向に沿って延在している。
【0034】
屈曲した入力側の端部121は、第3の光導波路125および第4の光導波路126への分岐点129aから端面11dに向かって長手方向に延在する第1の直線光導波路121bと、側面11aに向かって幅方向に延在する第2の直線光導波路121cと、を有する。この入力側の端部121は、本発明の屈曲端部を構成する。
【0035】
入力側の端部121の第2の直線光導波路121cは、基板11の側面11aの一部を構成する後述する光学面13まで延在し、その光学面13に、光波の入射がなされる入力側の端部121のポート121aが位置している。
【0036】
出力側の端部122は、第5の光導波路127と第6の光導波路128との合流点129bから長手方向に沿って端面11cまで延在する直線光導波路122dで構成されている。基板11の端面11cには、光波の出射がなされる出力側の端部122のポート122aが位置している。
【0037】
基板11の側面11a、11bは、光変調部123を構成する第1の光導波路124aおよび第2の光導波路124bと平行または略平行である。
【0038】
なお、本実施形態においては、入力側の端部121を構成する第1の直線光導波路121bおよび第2の直線光導波路121cは、上述の入力側光導波路に対応している。また、光変調部123を構成する第3の光導波路125および第4の光導波路126は、上述の入力側分岐光導波路に対応している。また、光変調部123を構成する第1の光導波路124aおよび第2の光導波路124bは、上述の並行光導波路に対応している。また、光変調部123を構成する第5の光導波路127および第6の光導波路128は、上述の出力側分岐光導波路に対応している。また、出力側の端部122を構成する直線光導波路122dは、上述の出力側光導波路に対応している。
【0039】
図1に示すように、基板11は、その表面に、信号電極18と、信号電極18を挟む一対の接地電極19a、19bと、を有する。信号電極18および接地電極19a、19bは、Au等の導電材料を基板11の表面にメッキするなどの方法で基板11の表面に形成されている。
【0040】
図2に示すように、基板11の一方の側面11aは、その一端部が光学面13によって構成されている。光学面13は、基板11の側面11aから端面11dにわたり形成された傾斜面13aで構成されている。光導波路12の入力側のポート121aは、光学面13に位置している。
【0041】
基板11の側面11aは、傾斜面13aで構成された光学面13と、光学面13以外の長手方向に沿った部分とを有することになる。したがって以下の説明では、側面11aにおいて光学面13以外の長手方向に沿った部分を主側面11fという。すなわち側面11aは、主側面11fと光学面13とを有する。
【0042】
光学面13は、
図3に示すように、基板11の角部11eを研磨加工して削除することにより形成することができる。
【0043】
光学面13を形成する研磨加工の方法としては、例えば、ポリッシャーに基板11の角部11eを押し当てて研磨するなどの方法が挙げられる。角部11eの削除部分は、本実施形態では側面11a側が長く、端面11d側が短い三角形状となっている。これにより光学面13は、主側面11fから端面11dに向かってなだらかに傾斜するように形成されている。
【0044】
また、
図2に示すように、基板11の端面11cは、その全面が上述のようにして研磨加工されることにより、光学面に形成されている。
【0045】
以下、側面11a側の傾斜面13aで構成される光学面を入力側の光学面13といい、端面11cを出力側の光学面11cという。
【0046】
図1および
図3に示すように、入力側の光ファイバ31は、筐体20の側板部20aを略直交して貫通し、その先端が光導波路12の入力側のポート121aに光学的に接続するように筐体20に設けられている。
図1に示すように、筐体20の側板部20aには、入力側の光ファイバ31が貫通する保持スリーブ33aが設けられている。入力側の光ファイバ31は、保持スリーブ33aによって筐体20への固定状態が保持されるようになっている。
【0047】
図1および
図3に示すように、出力側の光ファイバ32は、筐体20の端板部20cを略直交して貫通し、その先端が光導波路12の出力側のポート122aに光学的に接続するように筐体20に設けられている。
図1に示すように、筐体20の端板部20cには、出力側の光ファイバ32が貫通する保持スリーブ33bの一端が固定されている。出力側の光ファイバ32は、保持スリーブ33bによって筐体20への固定状態が保持されるようになっている。
【0048】
本実施形態の光導波路素子10は、入力側の光ファイバ31から入力側の光学面13に位置する光導波路12の入力側のポート121aに向けて光波が出射されて光導波路12に光波が入力されるようになっている。そして、光導波路12の光変調部123を伝搬する光波に信号電極18および接地電極19a、19bによって電界が印加されて光波が変調され、変調した光波が変調信号として出力側の光ファイバ32から出力されるようになっている。
【0049】
図3に示すように、入力側の光学面13は、基板11の主側面11fに対し角度φで傾斜している。この主側面11fに対する入力側の光学面13の傾斜角度φは、該光学面13で反射した戻り光が入力側の光ファイバ31に入射しないような角度に設定されている。すなわち本実施形態に係る光導波路素子10は、光学面13で反射した戻り光が入力側の光ファイバ31に入射しないように構成されている。
【0051】
本実施形態に係る光変調器1では、入力側の光ファイバ31から光導波路素子10の入力側のポート121aに向けて光波が出射され、該ポート121aから光波が光導波路12の入力側の端部121に入力される。入力側の端部121に入力された光波は、第3および第4の光導波路125、126を経て第1および第2の光導波路124a、124bにそれぞれ分波し、第5および第6の光導波路127、128を経て出力側の端部122に集波する。そしてその光波は、出力側のポート122aから出力側の光ファイバ32に入射して該出力側の光ファイバ32から出力される。
【0052】
ここで、光変調部123を伝搬する光波には、信号電極18および接地電極19a、19bによって電界が変調信号として印加される。これにより光変調部123を伝搬する光波は変調され、変調した光波が出力側の光ファイバ32から出力される。光波の変調は、例えば位相変調や強度変調等である。
【0053】
本実施形態の光導波路素子10は、光導波路12の入力側においては、入力側の端部121が長手方向に延在してから幅方向に向けて屈曲しており、入力側のポート121aが入力側の光学面13に位置している。一方、光導波路12の出力側においては、出力側の端部122は出力側の光学面11cまで直線状に延在し、出力側のポート122aは該光学面11cに位置している。このような構成により、本実施形態の光導波路12は、基板11内において略90°で屈曲した構成となっている。
【0054】
したがってこのような光導波路素子10を備えた本実施形態に係る光変調器1は、入力側の光ファイバ31が筐体20から長手方向に延出しないため、短小化を図ることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る光導波路素子10は、光導波路12を屈曲させることによって基板11の側面11aに形成することが必要となった入力側の光学面13が、側面11aの一部に形成されている。
【0056】
ここで、
図4に、本実施形態に対する対比例として、基板11の側面11aの全面が入力側の光学面で構成された光導波路素子10Bを示す。この光導波路素子10Bにおいても、光導波路12の入力側の端部121のポート121aが入力側の光学面すなわち側面11aに位置している。側面11aは、その全面が所定の面粗さになるように研磨加工され、光学面として構成される。
【0057】
これに対し本実施形態に係る光導波路素子10は、入力側の光学面13が基板11の側面11aの一部に形成されている。このため、本実施形態に係る光導波路素子10は、
図4に示した対比例のように基板11の側面11aの全面を光学面とする必要がなく、光学面13の面積を大幅に小さくすることができる。その結果、側面11aを研磨加工して光学面13を形成する手間が軽減し、光学面13を容易かつ安価に形成することができる。また、光学面13の全面を所定の面粗さに高い精度で形成することができる。
【0058】
また、前述したように、一般に光導波路素子においては、基板を研磨する際の端部の欠けや、光ファイバ等の光学部品を接続する部分の接着強度を得るために、必要箇所の基板上面に補強ブロックを貼り付ける場合がある。そこで、
図4に示したように基板11の側面11aの全面を光学面に構成した場合においては、
図5(a)に示すように側面11aの全域に対応する基板11の上面に補強ブロック41を貼り付ける必要がある。しかしこの場合には、補強ブロック41を貼り付けるための領域を余白として基板11に確保するために基板11の幅が増大する。なお、
図5(a)の基板11においては、出力側の光ファイバ32が接続される短辺側の光学面11cに対応する基板11の上面には、補強ブロック42を貼り付けている。
【0059】
これに対し、本実施形態では、入力側の光学面13は側面11aの一部に形成されているため、この光学面13に対応する部分に補強ブロックを設ければよい。例えば、
図5(b)に示すように、補強ブロック43を短辺側の端面11dの全域に対応する基板11の上面に貼り付けてもよいし、
図5(c)に示すように、光学面13に対応する部分のみに補強ブロック44を貼り付けてもよい。いずれの補強ブロック43、44も、光学面13の領域をカバーするように設けられる。また、
図5(b)、(c)の各基板11においては、上述の出力側の光ファイバ32が接続される短辺側の光学面11cに対応する基板11の上面には、
図5(a)と同様に補強ブロック42をそれぞれ貼り付けている。
【0060】
図5(b)の形態では、従来技術を用いて補強ブロック43を設けることができるため、製造コストの高騰を抑制できるという利点がある。また、
図5(c)の形態では、基板11の端面11d近傍に高周波部品を配置するにあたって必要な制御電極を光導波路12の入力側の端部121の方向に配設する場合、その制御電極を回避して補強ブロック44を設けることができる。このため、制御電極の断線のリスクや高周波特性の劣化等の発生が抑制される点で優位である。
【0061】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0062】
以下に説明する第2の実施形態の光導波路素子10は、上述した第1の実施形態における光導波路12の出力側の端部122も入力側の端部121と同様に側面11aの方向に屈曲した構成となっている。またこれに加えて、基板11の側面11aには出力側の端部122に対応した出力側の光学面14が形成されている。第2の実施形態はこれらの点で第1の実施形態と相違し、したがって以下の説明では第1の実施形態と同一構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、主に第1の実施形態との相違点を説明する。
【0063】
図6は、第2の実施形態に係る光変調器1を示している。該光変調器1が備える光導波路素子10は、基板11の側面11aの両端に、入力側の光学面13と出力側の光学面14とをそれぞれ有する。第2の実施形態に係る光導波路素子10においては、入力側の端部121および出力側の端部122の双方が本発明の屈曲端部を構成する。
【0064】
図7に示すように、出力側の光学面14は、基板11の側面11aから端面11cにわたり形成された傾斜面14aで構成されている。
【0065】
図7に示すように、第2の実施形態に係る光導波路12の出力側の端部122は、第5および第6の光導波路127、128の合流点129bから端面11cに向かって長手方向に延在する第1の直線光導波路122bと、側面11aに向かって幅方向に延在する第2の直線光導波路122cと、を有する。第2の直線光導波路122cは、基板11の側面11aの一部を構成する光学面14まで延在し、その光学面14に、出力側の端部122のポート122aが位置している。
【0066】
図6および
図7に示すように、第2の実施形態に係る出力側の光ファイバ32は、筐体20の側板部20aを直交して貫通し、その先端が光導波路12の出力側の端部122のポート122aに光学的に接続するように筐体20に設けられている。
【0067】
第2の実施形態に係る出力側の光学面14は、入力側の光学面13と同様に、主側面11fに対し光学面14で反射した戻り光が出力側の端部122へ入射しないような角度で傾斜している。すなわち第2の実施形態に係る光導波路素子10においては、光学面14で反射した戻り光が出力側の端部122に入射しないように構成されている。
【0068】
第2の実施形態に係る光導波路素子10は、光導波路12が基板11の側面11aから光変調部123を経た後に側面11aに戻るという構成を有する。このため、光導波路素子10に接続する入力側の光ファイバ31および出力側の光ファイバ32は同一の側面11aに並列に設置される。したがってこのような光導波路素子10を備えた第2の実施形態に係る光変調器1は、入力側の光ファイバ31および出力側の光ファイバ32が筐体20から長手方向に延出しないため、より一層の短小化を図ることができる。
【0069】
また、出力側の光学面14は、入力側の光学面13と同様に側面11aの一部に形成されており、側面11aの全面よりも面積が小さいものとなっている。このため、光学面14を容易かつ安価に形成することができるとともに、光学面14の全面を所定の面粗さに高い精度で形成することができる。
【0070】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
【0071】
以下に説明する第3の実施形態に係る光変調器1は、上述した第1の実施形態の光導波路素子10への光波の入力を、光路変換部50を介して行う点で第1の実施形態と相違している。したがって以下の説明では第1の実施形態と同一構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、主に第1の実施形態との相違点を説明する。
【0072】
図8に示すように、第3の実施形態に係る光変調器1は、筐体20に並列接続された入力側の光ファイバ31および出力側の光ファイバ32を備えている。また、筐体20内の側板部20b側の側方には、高周波ドライバアンプ60が収納されているとともに、これに対応して側板部20bの外面にはRFインターフェース410が設けられている。RFインターフェース410は、同軸コネクタ、PIN、FPC、フィードスルー等からなる。また、筐体20内には、入力側の光ファイバ31から出射された光波の光路を屈折させて光導波路素子10に導く光路変換部50が収納されている。
【0073】
第3の実施形態では、入力側の光ファイバ31は出力側の光ファイバ32と平行に配されて筐体20の端板部20cに接続されている。入力側の光ファイバ31は筐体20の端板部20cを貫通し、筐体20内の光導波路素子10と側板部20aとの間において長手方向に延在している。入力側の光ファイバ31は、その先端が光路変換部50に近接するように設けられている。第3の実施形態では、光ファイバ31および光路変換部50が、本発明の入力側の光伝送手段を構成する。
【0074】
高周波ドライバアンプ60は、筐体20内において光導波路素子10と側板部20bとの間に配置されている。高周波ドライバアンプ60は、高周波信号を信号電極18に供給することで光導波路素子10を駆動する。高周波ドライバアンプ60は半導体素子単体で実装されていてもよいし、セラミック等の中継基板に実装されたものを使用してもよい。
【0075】
光路変換部50は、レンズ51、52と、プリズム53と、を有する。レンズ51、52およびプリズム53は、筐体20内の基板11の側方に配置されている。
【0076】
第3の実施形態の光変調器1では、光ファイバ31と筐体20と光導波路素子10とは概ね平行である。
図9に示すように、光ファイバ31から出射された光波は、レンズ51で平行光化されて、境界面で反射した戻り光を抑制できるような傾斜を持ったプリズム53へ入射する。そして、プリズム53内において臨界角θ
Cで反射され、光導波路素子10側の境界面から出射する。光導波路素子10側の境界面から出射した光波は、レンズ52で集光され、筐体20となす任意の角度φの傾斜面を持つ光導波路素子10の光学面13に位置する入力側のポート121aに入射するようになっている。
【0077】
なお、本実施形態の光路変換部50は2枚のレンズ51、52を用いたコリメート光学系の例を示しているが、1枚のレンズによって光ファイバ31から出射された光波を光導波路10の入力側のポート121aに集光するような構成としてもよい。
【0078】
ここで、
図9に示すように、光導波路12の入力側の端部121において第1の直線光導波路121bに対し第2の直線光導波路121cが角度θ
WGで傾斜するものとした場合、その屈曲角度θ
WGは、光学面13の傾斜角度φ、プリズム53を透過する光波の屈折角度および基板11の屈折率に基づいて決定される。
【0079】
例えば、
図9に示すように、基板11にニオブ酸リチウム(LiNbO
3)の結晶を用いた場合、第2の直線導波路121cの屈曲角度θ
WGを80°〜90°、光導波路素子10の光学面13の傾斜角度φを1°〜10°とすると、好適に実現することができる。その他のパラメータは下記に示すとおりである。
【0080】
・プリズム53の材料の屈折率
光学ガラスの場合:n
prism=1.5
・出射側の屈折率(空気の屈折率):n
air=1
・入射側の基板11(LiNbO
3)の屈折率:n
LN=2.22
・筐体20||光ファイバ31||光導波路素子10
・第2の直線導波路121cの屈曲角度:θ
WG=80°〜90°
・光導波路素子10の傾斜面角度φ:1°〜10°
【0081】
第3の実施形態に係る光変調器1は、光導波路素子10の光導波路12に対し光波を入力する光路変換部50が筐体20内の基板11の側方に配置されているため、光路変換部50を含む光変調器1の短小化を図ることができる。
【0082】
また、第3の実施形態に係る光変調器1は、各光ファイバ31、32を筐体20に並列に設置することにより、光路変換部50および高周波ドライバアンプ60が筐体20内に収納された構成であっても短小化を図ることができる。
【0083】
また、第3の実施形態に係る光変調器1は、各光ファイバ31、32を筐体20に並列接続することにより、上述した短小化とあいまって、当該光変調器1を機器に実装する上で実装箇所の選択範囲が広がり、当該機器の設計の自由度が向上する。
【0084】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
【0085】
図10に示す第4の実施形態の光変調器1は、上述の第3の実施形態の光導波路素子10がネスト型導波路構造を備えたマッハツェンダ光導波路210、220を有するとともに、光導波路素子10からの出力光を偏波合成する偏波合成部300を有している。また、第4の実施形態の光変調器1は、RFインターフェース410および高周波中継基板420を有している。第4の実施形態の光変調器1はこれらの点で上述の第3の実施形態と相違している。したがって以下の説明では、第3の実施形態と同一構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、主に第3の実施形態との相違点を説明する。
【0086】
図10に示すように、第4の実施形態に係る光導波路素子10の光導波路12は、屈曲する入力側の端部121と、互いに平行な並行導波路を構成する第1の光導波路124aおよび第2の光導波路124bと、を有する。また、光導波路12は、入力側の端部121から分岐して第1の光導波路124aおよび第2の光導波路124bにそれぞれ接続する第3の光導波路125および第4の光導波路126と、を有する。そして、第1の光導波路124aおよび第2の光導波路124bの下流側には、ネスト型導波路構造を備えた第1のマッハツェンダ光導波路210および第2のマッハツェンダ光導波路220がそれぞれ接続されている。
【0087】
第1のマッハツェンダ光導波路210は、2つのサブマッハツェンダ光導波路211、212を、メインマッハツェンダ光導波路213を構成する2つの分岐導波路213a、213bにそれぞれ組み込んだ構成を有している。また、第2のマッハツェンダ光導波路220は、2つのサブマッハツェンダ光導波路221、222を、メインマッハツェンダ光導波路223を構成する2つの分岐導波路223a、223bにそれぞれ組み込んだ構成を有している。
【0088】
第1のマッハツェンダ光導波路210の出力側には、基板11の端面11cまで延在する出力側光導波路214が接続されており、端面11cには、出力側光導波路214から光波の出射がなされる出力側のポート214aが位置している。また、第2のマッハツェンダ光導波路220の出力側には、基板11の端面11cまで延在する出力側光導波路224が接続されており、端面11cには、出力側光導波路224から光波の出射がなされる出力側のポート224aが位置している。
【0089】
第4の実施形態では、第1および第2のマッハツェンダ光導波路210、220の形成領域が、それぞれ光変調部225を構成する。すなわち光導波路素子10は2つの光変調部225を有し、当該領域に、これら光導波路210、220に変調信号を印加する図示せぬ制御電極(信号電極および接地電極)が設けられている。
【0090】
第4の実施形態では、基板11の端面11cと出力側の光ファイバ32との間に、偏波合成部300が配設されている。第4の実施形態は、当該偏波合成部300を含む偏波多重の構成を有する。
【0091】
偏波合成部300は、偏波合成素子310と、出力側のポート214aからの出射光を平行光化して偏波合成素子310に導くレンズ320と、出力側のポート224aからの出射光を平行光化して偏波合成素子310に導くレンズ330と、レンズ330からの出射光の偏波を回転させる半波長板340と、を有している。
【0092】
偏波合成素子310は、出力側のポート214a、224aからそれぞれ偏波合成素子310に入射した2つの光(変調光)を直交させて偏波合成するとともに同一の光路上に集束し、出力側の光ファイバ32の光軸に沿って出射する機能を有する。偏波合成部300によれば、例えば50Gb/sの変調光が偏波合成されて100Gb/sの変調光が得られるようになっている。
【0093】
また、第4の実施形態では、上述の信号電極に高周波信号を増幅して供給する図示せぬ高周波ドライバアンプに接続されるRFインターフェース410が、筐体20の端板部20dの外面に設けられている。RFインターフェース410は、同軸コネクタ、PIN、FPC、フィードスルー等からなる。また、第4の実施形態では、筐体20内の端板部20dと光導波路素子10との間に、光導波路素子10とRFインターフェース410との接続を中継するための高周波中継基板420が配設されている。
【0094】
第4の実施形態に係る光変調器1は、第3の実施形態と同様に、光導波路素子10の光導波路12に対し光波を入力する光路変換部50が筐体20内の基板11の側方に配置されているため、光路変換部50を含む光変調器1の短小化を図ることができる。
【0095】
また、第4の実施形態に係る光変調器1は、各光ファイバ31、32を筐体20に並列に設置することにより、光路変換部50、偏波合成部300および高周波中継基板420が筐体20内に収納された構成であっても短小化を図ることができる。
【0096】
また、第4の実施形態に係る光変調器1は、各光ファイバ31、32を筐体20に並列に設置することにより、上述した短小化とあいまって、当該光変調器1を機器に実装する上で実装箇所の選択範囲が広がり、当該機器の設計の自由度が向上する。
【0097】
第4の実施形態では、光学面13を形成する部分のみに補強ブロック43を貼り付ければよいので、基板11の幅が増大することを抑制しつつ制御電極を配線するスペースを確保することができる。このため、電気部品の設置場所に関する設計の自由度が向上する。これにより、RFインターフェース410が配された端部側に、信号処理LSIを配設してもよい。また、筐体20内において高周波中継基板420に高周波ドライバアンプを実装して光導波路素子10と直接接続してもよい。
【0098】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。
【0099】
以下に説明する第5の実施形態の光導波路素子10は、上述した第1の実施形態の光導波路素子10の光学面13に代えて光学面15を有する点で第1の実施形態と相違している。したがって以下の説明では第1の実施形態と同一構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、主に第1の実施形態との相違点を説明する。
【0100】
図11に示すように、第5の実施形態に係る光導波路素子10は、側面11aの一部が光学面15で構成されている。光学面15は、基板11の側面11aから端面11dにわたり形成された段差面15aで構成されている。光導波路12においては、入力側の端部121の第2の直線光導波路121cが光学面15まで延在しており、入力側のポート121aが光学面15に位置している。
【0101】
光学面15は、側面11aと端面11dとにより形成されていた基板11の角部(
図3の11eに相当する部分)を、切削加工した後、研磨加工して削除することにより形成することができる。
【0102】
第5の実施形態に係る光導波路素子10では、光学面15は、該光学面15で反射した戻り光が入力側の光ファイバ31に入射しない角度に形成されている。
【0103】
第5の実施形態に係る光導波路素子10は、基板11の側面11aをダイサー等で切削加工した後に研磨加工するなどして光学面15を容易かつ安価に形成することができる。また、光学面15に対応して補強ブロックを設置する場合には、形成した光学面15の加工部分のみにその補強ブロックを設置すればよいので、基板11の幅が増大することを抑制することができる。また、第5の実施形態に係る光導波路素子10では、光学面15で透過せずに反射した戻り光を抑制することができる。
【0104】
なお、上記各実施形態では、基板11の側面11aの一部が光学面を構成する形態であるが、基板11の側面11bの一部が光学面を構成する形態であってもよい。また、双方の側面11a、11bにそれぞれ光学面を形成し、それらの光学面に光導波路12の端部を導く構成としてもよい。