【実施例】
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り、「質量%」を表す。
【0033】
[実施例1]
ダイヤモンド砥粒として、平均粒径dが、1.5μm、3.5μm、7.5μm、15μm、50μm、75μm、95μm、110μmのものをそれぞれ使用し、ろう材厚みが0.2μm〜80μmである研磨布用ドレッサーを作製した。
【0034】
ろう材の組成は、Ni−4.2%Si−3.0%B−7.0%Cr−1.0%P−2.0%Tiだった。
【0035】
1.
ドレッサーの製造
上記ろう材の組成を有する合金を溶製し、母合金を作製した。この母合金を用いて、公知の単ロール急冷法によって、厚みが15μm〜40μm、幅が50mmの箔を製造した。具体的には、0.4mm〜0.6mm×50mmのスロットノズルを備えた石英るつぼで溶製した母合金を溶解し、周速20〜30mm/秒で回転しているCu製冷却ロール上にスロットノズルを通じて溶湯を噴出して箔を製造した。この方法で得られた箔の厚みは、15〜40μmであった。これらの箔のうち、所望の厚みのものを選択して、ろう材厚みが15〜40μmのろう材とした。また、これらの箔に対して、フッ酸系、あるい、塩酸系の化学エッチング液を用いてエッチングを行い、ろう材厚みを15μmより薄くしたろう材を製造した。単ロール法によって得られる箔はアモルファスであり、箔内の組成が均一となっているためエッチングによって均一に薄くすることができた。また、複数枚の上記箔を重ねて、ろう材厚みを40μmより厚くしたろう材を製造した。
【0036】
金属製支持材には、SUS304ステンレス製の直径100mm、厚み4mmの円盤を用いた。この金属製支持材の片面に描いた半径35mmの円と半径48mmの円の間のドーナツ状領域に砥粒を配置した。その際、ドーナツ状領域を金属製支持材の中心からから見て等角度で6つのアーク状に分割し、それぞれの隣どうしのアーク状領域に2mm幅で砥粒を配置しない領域を設けた。ダイヤモンド砥粒の配置パターンは正方形配置とした。
【0037】
砥粒を配置するために、それぞれのドレッサーに固着させる砥粒の大きさdと所定の砥粒間隔Lの配置パターンと同じパターンに合わせて篩を作製し、この篩を通して砥粒を金属製支持材上に配置していった。具体的には、砥粒を配置する領域に所定厚みのろう材をスポット領域で仮固定する。この箔の上に有機系バインダーを塗布し、その上から篩を通じて砥粒を配置した。その後、加熱炉を用いて、1000℃で20分間、10
−3Paの真空中でろう付け処理を行った。ろう材の厚みは、断面を光学顕微鏡、または、SEMで観察して測定した。
【0038】
このようにして、表1および表2に記載のそれぞれのドレッサーを製造した。
【0039】
2.
ドレッサーの評価
上記作製したドレッサーを用いて、実際にパッドを研削し、研削後のパッド厚み減少量からパッドの研削速度、パッド平坦性およびダイヤモンド砥粒の脱落数を求めた。パッドは発砲ポリウレタン製であり、パッドの直径は250mmだった。
【0040】
このパッドを研磨盤の上に貼り付けた。ドレッサーを、回転機構とパッドの半径方向に揺動する機構を備えた装置に固定し、加圧機構によって1kgの加重を加えて、パッドに押し付けた。ドレッサーの中心をパッド半径方向にパッド中心から30mm〜90mmの範囲で半径方向に揺動させた。パッド回転数は90rpm、ドレッサー回転数は80rpm、揺動は10往復/分とした。パッド回転方向とドレッサーの回転方向は同じである。研削全面が水の膜で覆われる程度に水を供給した。
【0041】
研削開始後5分が経過した時点で一端、研削を中断して、互いに直交する2本の直径上に沿ってパッド厚みを測長顕微鏡で測定した。1つの直径を等間隔で10等分し、等分した部位のほぼ真中付近を合計で20点測定し、平均値を求めた。再び研削を続けて、15時間後に同様な測定を行った。パッド厚みの平均値から、研削開始後5分から15時間の研削時間の間における平均のパッド研削速度を求めた。平坦性は、15時間後に測定した20点の値の中で最大値から最小値を引いた値として求めた。
【0042】
ダイヤモンド砥粒の脱落数は、ドレッサーに固着しているダイヤモンド砥粒の個数を研削の前後それぞれにマイクロスコープで観察して数えて、研削前に固着しているダイヤモンド砥粒の個数から、研削後に固着しているダイヤモンド砥粒の個数を減算して求めた。
【0043】
上記測定されたパッドの研削速度、パッド平坦性およびダイヤモンド砥粒の脱落数の結果を、砥粒平均粒径d、ろう材厚み、ろう材層厚み/d、L/dおよびd≦L<2dを満たす砥粒割合と共に表1および表2に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1および表2から明らかなように、ダイヤモンド砥粒の平均粒径dが3μm以上100μm未満であり、かつ、前記ろう材層の厚みが0.1d以上0.4d未満である発明例のドレッサーは、研削速度が速く、研削されたパッドもより平坦であり、ダイヤモンド砥粒の脱落も生じなかった。
一方、ダイヤモンド砥粒の平均粒径dが3μm未満である比較例No.1および比較例No.2のドレッサーは、ダイヤモンド砥粒の脱落数が12個以上であった。また、ダイヤモンド砥粒の平均粒径dが100μmより大きい比較例No.32〜比較例No.35のドレッサーは、パッドの厚みの差が大きく、平坦性が他のドレッサーよりも劣化していた。
【0047】
ろう材層の厚みが0.1dより小さい比較例No.3、比較例No.7、比較例No.12、比較例No.17、比較例No.22、比較例No.27、比較例No.32は、おそらくはダイヤモンド砥粒の接合強度が低下したため、ダイヤモンド砥粒の脱落数が5個以上であった。
【0048】
ろう材層の厚みが0.4dより大きい比較例No.2、比較例No.6、比較例No.11、比較例No.16、比較例No.21、比較例No.26、比較例No.31、比較例No.35のドレッサーは、L/dの値が同じ比較例No.1、発明例No.5、発明例No.9、発明例No.14、発明例No.19、発明例No.24、発明例No.29、発明例No.34とそれぞれ比較したときに、パッド研削速度が0.78〜0.85倍に遅くなった。
【0049】
隣り会う砥粒同士の前記Lがd≦L<2dであるように配置された砥粒の割合が全体の砥粒数に対して70%以上である発明例No.9、発明例No.14、発明例No.19、発明例No.24、発明例No.29のドレッサーは、上記配置された砥粒の割合が70%未満である発明例No.10、発明例No.15、発明例No.20、発明例No.25、発明例No.30とそれぞれ比較したときに、パッド研削速度はほぼ変わらないが、一方でパッド平坦性が0.59〜0.66倍と小さかった。
【0050】
[実施例2]
ダイヤモンド砥粒として、平均粒径dが15μmのものを使用し、実施例1と同様にしてドレッサーを製造し、実施例1と同様にしてパッドの研削速度、パッド平坦性およびダイヤモンド砥粒の脱落数を測定した。
【0051】
このとき、ろう材の組成は、Pを1.0%、Tiを2.0%としたほかは、表3および表4に記載のように変更した。ろう材層の厚みは、ろう材層の厚み/dが0.32〜0.37の範囲になるよう調整した。L/dは、1.5とした。隣り会う砥粒同士の中心間距離Lがd≦L<2dであるように配置された砥粒の割合は、全体の砥粒数に対して100%だった。
【0052】
上記測定されたパッドの研削速度、パッド平坦性およびダイヤモンド砥粒の脱落数の結果を、ろう材層の組成と共に表3および表4に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
表3および表4の結果から明らかなように、ろう材中のNi+Feの含有量が70%以上95%以下であり、Fe/(Ni+Fe)が0.4%以下であり、Si+Bの含有量が2%以上15%以下であり、B/(Si+B)が0.8%以下であり、Pの含有量が0.5%以上4%以下であり、X(Ti)の含有量が0.2%以上3%以下である発明例のドレッサーは、研削速度が速く、研削されたパッドもより平坦であり、ダイヤモンド砥粒の脱落も生じなかった。
【0056】
一方で、Ni+Feの含有量が70%以上95%以下、またはFe/(Ni+Fe)が0.4%以下の条件を満たさない発明例No.41、発明例No.52、発明例No.56のドレッサーは、1個以上3個以下のダイヤモンド砥粒の脱落が生じた。
【0057】
Si+Bの含有量が2%以上15%以下の条件を満たさない発明例No.42、発明例No.51では、おそらくはろう材の融点が上昇して、1000℃のろう付け温度ではダイヤモンド砥粒の接合不良が生じたため、1個以上3個以下のダイヤモンド砥粒の脱落が生じた。
【0058】
B/(Si+B)が0.8%より多い発明例No.61では、おそらくはろう材が脆くなったため、3個のダイヤモンド砥粒の脱落が生じた。
【0059】
[実施例3]
ダイヤモンド砥粒として、平均粒径dが50μmのものを使用し、実施例1と同様にしてドレッサーを製造し、実施例1と同様にしてパッドの研削速度、パッド平坦性およびダイヤモンド砥粒の脱落数を測定した。
【0060】
このとき、ろう材の組成は、Pを3.7%、Tiを2.8%としたほかは、表5に記載のように変更した。ろう材層の厚みは、ろう材層の厚み/dが0.32〜0.37の範囲になるよう調整した。L/dは、1.7とした。隣り会う砥粒同士の中心間距離Lがd≦L<2dであるように配置された砥粒の割合は、全体の砥粒数に対して100%だった。
【0061】
上記測定されたパッドの研削速度、パッド平坦性およびダイヤモンド砥粒の脱落数の結果を、ろう材層の組成と共に表5に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
表5の結果から明らかなように、ろう材中のNi+Feの含有量が70%以上95%以下であり、Fe/(Ni+Fe)が0.4%以下であり、Si+Bの含有量が2%以上15%以下であり、B/(Si+B)が0.8%以下であり、Pの含有量が0.5%以上4%以下であり、X(Ti)の含有量が0.2%以上3%以下である発明例のドレッサーは、ダイヤモンド砥粒の平均粒径dが50μmであっても、研削速度が速く、研削されたパッドもより平坦であり、ダイヤモンド砥粒の脱落も生じなかった。
【0064】
[実施例4]
ダイヤモンド砥粒として、平均粒径dが15μmのものを使用し、実施例1と同様にしてドレッサーを製造し、実施例1と同様にしてパッドの研削速度、パッド平坦性およびダイヤモンド砥粒の脱落数を測定した。
【0065】
このとき、ろう材の組成は、Feを0.08%、Siを4.2%、Bを3.0%、Crを7.0、PおよびXを表6および表7に記載の量、Niを残量とした。ろう材層の厚みは、ろう材層の厚み/dが0.32〜0.37の範囲になるよう調整した。L/dは、1.5とした。隣り会う砥粒同士の中心間距離Lがd≦L<2dであるように配置された砥粒の割合は、全体の砥粒数に対して100%だった。
【0066】
上記測定されたパッドの研削速度、パッド平坦性およびダイヤモンド砥粒の脱落数の結果を、ろう材層の組成と共に表6および表7に示す。
【0067】
尚、表6および表7において、「
図1の範囲」の欄には、XとPの含有量が、
図1のcdghiで囲まれる範囲内のものを「A」、abciで囲まれる範囲内のものを「B1」、場合をdefgで囲まれる範囲内のものを「B2」、これら範囲から外れるものを「C」と表記した。また、「X」の欄には、Xとして用いた元素を括弧内に表記した。
【0068】
【表6】
【0069】
【表7】
【0070】
表6および表7の結果から明らかなように、ろう材中のNi+Feの含有量が70%以上95%以下であり、Fe/(Ni+Fe)が0.4%以下であり、Si+Bの含有量が2%以上15%以下であり、B/(Si+B)が0.8%以下であり、Pの含有量が0.5%以上4%以下であり、X(Ti)の含有量が0.2%以上3%以下である発明例のドレッサーは、ダイヤモンド砥粒の平均粒径dが50μmであっても、研削速度が速く、研削されたパッドもより平坦であり、ダイヤモンド砥粒の脱落も2個以下と少なかった。
【0071】
さらに、X/Pが0.4以上2.0以下であり、
図1のcdghiで囲まれる範囲内に含まれる発明例No.89、発明例No.90、発明例No.94〜発明例No.96、発明例No.99、発明例No.100、発明例No.103〜発明例No.105、発明例No.107では、ダイヤモンド砥粒の脱落が生じなかった。これは、X/Pがこの範囲であると、接合に寄与するカーバイドが十分に形成されて接合強度が大きくなり、かつ、Pによるダイヤモンド表面の黒鉛化の抑制効果もより十分に発揮されたためと考えられる。
【0072】
一方で、Pの含有量が0.5%より少ない発明例No.81、発明例No.86、発明例No.92、発明例No.98、発明例No.106では、おそらくはPによる黒鉛化の抑制効果が少なかったため、2個または3個のダイヤモンド砥粒の脱落が生じた。
【0073】
Pの含有量が4.0%より多い発明例No.85、発明例No.91、発明例No.97、発明例No.102では、おそらくはダイヤモンド砥粒とろう材との間の濡れ性が過大となって、ダイヤモンド砥粒の突き出し高さが十分とならなかったため、研削速度が低下する傾向が観られた。
【0074】
X(Ti)の含有量が0.2%未満である発明例No.110、発明例No.111では、おそらくは炭化物形成元素の含有量が少なく、カーバイドによる接合強度がより小さかったため、4個のダイヤモンド砥粒の脱落が生じた。
【0075】
X(Ti)の含有量が3.0%より大きい発明例No.81〜発明例No.85でも、研削速度、パッド平坦性、およびダイヤモンド砥粒の脱落に変化はなかった。そのため、おそらくは3.0%でX(Ti)の効果は飽和していると考えられる。
【0076】
X/Pが0.2より小さい発明例No.109、発明例No.110、発明例No.111では、おそらくは炭化物形成元素の含有量が少なく、カーバイドによる接合強度がより小さかったため、3個または4個のダイヤモンド砥粒の脱落が生じた。
【0077】
[実施例5]
実施例4で製造したドレッサーのうち、表8に示すものについて、パッドを研削するときの加重を3.5kgにした以外は実施例4と同様にしてダイヤモンド砥粒の脱落数を測定した。
【0078】
上記測定されたダイヤモンド砥粒の脱落数の結果を、ろう材層の組成と共に表8に示す。
【0079】
尚、表8において、「
図1の範囲」の欄には、XとPの含有量が、
図1のcdghiで囲まれる範囲内のものを「A」、abciで囲まれる範囲内のものを「B1」、場合をdefgで囲まれる範囲内のものを「B2」、これら範囲から外れるものを「C」と表記した。また、「X」の欄には、Xとして用いた元素を括弧内に表記した。
【0080】
【表8】
【0081】
表8の結果から明らかなように、元素XとしてTiを含有し、Tiの含有量が、0.5%以上3%以下である発明例No.89、発明例No.90、発明例No.94〜発明例No.96、発明例No.100、発明例No.103〜発明例No.105、では、加重が3.5kgに増えても、ダイヤモンド砥粒の脱落は少なかった。
【0082】
さらに、元素XとしてTiを含有し、Tiの含有量が、0.5%以上1%以下である発明例No.103〜発明例No.105では、加重が3.5kgに増えても、ダイヤモンド砥粒の脱落が生じなかった。
【0083】
一方で、Tiの含有量が、0.5%未満である発明例No.107、発明例No.108では、加重が3.5kgに増えると、ダイヤモンド砥粒の脱落数が増えた。
【0084】
[実施例6]
ダイヤモンド砥粒として、平均粒径dが15μmのものを使用し、実施例1と同様にしてドレッサーを製造し、実施例1と同様にしてパッドの研削速度、パッド平坦性およびダイヤモンド砥粒の脱落数を測定した。
【0085】
このとき、ろう材の組成は、Feを0.08%、Siを4.2%、Bを3.0%、Crを7.0、PおよびXを表9および表10に記載の量、Niを残量とした。ろう材層の厚みは、ろう材層の厚み/dが0.32〜0.37の範囲になるよう調整した。L/dは、1.5とした。隣り会う砥粒同士の中心間距離Lがd≦L<2dであるように配置された砥粒の割合は、全体の砥粒数に対して100%だった。
【0086】
上記測定されたパッドの研削速度、パッド平坦性およびダイヤモンド砥粒の脱落数の結果を、ろう材層の組成と共に表9および表10に示す。
【0087】
尚、表9および表10において、「
図1の範囲」の欄には、XとPの含有量が、
図1のcdghiで囲まれる範囲内のものを「A」、abciで囲まれる範囲内のものを「B1」、場合をdefgで囲まれる範囲内のものを「B2」、これら範囲から外れるものを「C」と表記した。また、「X」の欄には、Xとして用いた元素を括弧内に表記した。
【0088】
【表9】
【0089】
【表10】
【0090】
表9および表10の結果から明らかなように、XとしてNb、Ta、VまたはZrを含有する発明例のドレッサーも、研削速度が速く、研削されたパッドもより平坦であり、ダイヤモンド砥粒の脱落も2個以下と少なかった。
【0091】
また、XがTiの場合と同様に、X/Pが0.4以上2.0以下であり、
図1のcdghiで囲まれる範囲内に含まれる発明例No.122〜発明例No.124、発明例No.126、発明例No.128〜発明例No.130、発明例No.132、発明例No.134〜発明例No.136、発明例No.138、発明例No.140〜発明例No.142、発明例No.144では、ダイヤモンド砥粒の脱落が生じなかった。これは、X/Pがこの範囲であると、接合に寄与するカーバイドが十分に形成されて接合強度が大きくなり、かつ、Pによるダイヤモンド表面の黒鉛化の抑制効果もより十分に発揮されたためと考えられる。
【0092】
[実施例7]
ダイヤモンド砥粒として、平均粒径dが15μmのものを使用し、実施例1と同様にしてドレッサーを製造し、実施例1と同様にしてパッドの研削速度、パッド平坦性およびダイヤモンド砥粒の脱落数を測定した。ただし、ダイヤモンド砥粒の脱落数は、パッドを研削するときの加重を1.0kgとしたときと3.5kgとしたときの両方で測定した。
【0093】
このとき、ろう材の組成は、Feを0.08%、Siを4.2%、Bを3.0%、Crを7.0、PおよびXを表11、表12および表13に記載の量、Niを残量とした。ろう材層の厚みは、ろう材層の厚み/dが0.32〜0.37の範囲になるよう調整した。L/dは、1.5とした。隣り会う砥粒同士の中心間距離Lがd≦L<2dであるように配置された砥粒の割合は、全体の砥粒数に対して100%だった。
【0094】
上記測定されたパッドの研削速度、パッド平坦性およびダイヤモンド砥粒の脱落数の結果を、ろう材層の組成と共に表11、表12および表13に示す。
【0095】
尚、表11、表12および表13において、「
図1の範囲」の欄には、XとPの含有量が、
図1のcdghiで囲まれる範囲内のものを「A」と表記した。また、「X」の欄には、Xとして用いた元素を括弧内に表記した。
【0096】
【表11】
【0097】
【表12】
【0098】
【表13】
【0099】
表11〜表13の結果から明らかなように、XとしてTi、Nb、Ta、VまたはZrのうち2種類以上の元素を含有する本発明のドレッサーも、研削速度が速く、研削されたパッドもより平坦であり、ダイヤモンド砥粒の脱落も加重1kgでは生じなかった。
【0100】
ただし、Tiを含有しない発明例No.167〜発明例No.178のドレッサーは、加重を3.5kgにしたときに2個以上4個以下のダイヤモンド砥粒の脱落が見られた。
【0101】
また、Xの含有量が0.2%以上3%以下の範囲内であり、Xとして少なくともTiを含有していても、Tiの含有量が0.5%未満である発明例No.151、発明例No.155、発明例No.159、発明例No.163のドレッサーでは、加重を3.5kgにしたときに2個のダイヤモンド砥粒の脱落が見られた。
【0102】
また、Xの含有量が0.2%以上3%以下の範囲内であり、Xとして少なくともTiを含有していても、Tiの含有量が1.0%より多い発明例No.154、発明例No.158、発明例No.162、発明例No.166のドレッサーでは、加重を3.5kgにしたときに1個のダイヤモンド砥粒の脱落が見られた。
【0103】
これらの結果から、元素Xとして少なくともTiを含有し、Tiの含有量が0.5%≦Ti≦1%であると、ダイヤモンド砥粒の接合力が高くなり、ダイヤモンド砥粒の脱落が抑制できることがわかった。
【0104】
[実施例8]
実施例1と同様にしてろう材層を製造した。
【0105】
金属製支持材には、SUS304ステンレス製の直径100mm、厚み4mmの円盤を用いた。この金属製支持材の片面に描いた半径35mmの円と半径48mmの円の間のドーナツ状領域に平均粒径dが50μmのダイヤモンド砥粒を配置した。その際、ドーナツ状領域を金属製支持材の中心からから見て等角度で6つのアーク状に分割し、それぞれの隣どうしのアーク状領域に2mm幅で砥粒を配置しない領域を設けた。
【0106】
ダイヤモンド砥粒配置領域に格子状にメッシュを描き、その交点にダイヤモンド砥粒を配置した。格子間隔が砥粒中心間距離Lに相当する。その際、格子間隔を85μm(L=1.7d)と160μm(L=3.2d)の二つとし、両者を所定の割合でランダムに配置させた。具体的には、先ず、ステンレス製支持材のダイヤモンド配置領域にスポット溶接で箔状のろう材を仮付けした。次に、ダイヤモンドが通り抜ける程度の穴を配置した篩を作製し、その篩を支持材の上に置いて篩を通してダイヤモンドを配置した。篩に穴を開ける場合の穴に位置決めは、間隔が85μmである格子と160μmである格子をランダムに配置させた格子を描き、それらの各格子点に穴を開けた。Lが85μmである格子辺の数をN85、160μmである数をN160とした場合、{N85/(N85+N160)}×100(%)が表8に示す値になるように設計した。
【0107】
このようにして、表14に記載のそれぞれのドレッサーを製造した。
【0108】
表14に記載のそれぞれのドレッサーについて、パッドの研削速度、パッド平坦性およびダイヤモンド砥粒の脱落数を、実施例1と同様に測定した。
【0109】
上記測定されたパッドの研削速度、パッド平坦性およびダイヤモンド砥粒の脱落数の結果を、{N85/(N85+N160)}×100(%)と共に表14に示す。
【0110】
【表14】
【0111】
表14の結果から明らかなように、隣り会う砥粒同士の前記Lがd≦L<2dであるように配置された砥粒の割合が全体の砥粒数に対して70%以上である発明例No.181〜発明例No.183のドレッサーでは、研削速度が速く、研削されたパッドもより平坦だった。