【解決手段】(i)バシラス(Bacillus)属細菌、(ii)バシラス(Bacillus)属細菌のBC5213遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子が導入された形質転換体、または、(ii)バシラス(Bacillus)属細菌のBC5213タンパク質、若しくはそのホモログタンパク質を用いて、化合物を製造する。
上記形質転換体は、更に、バシラス(Bacillus)属細菌のBC5214遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子が導入されたものである、請求項1または2に記載の製造方法。
上記反応工程では、上記バシラス(Bacillus)属細菌のBC5213タンパク質、若しくはそのホモログタンパク質と、上記基質と、バシラス(Bacillus)属細菌のBC5214タンパク質、若しくはそのホモログタンパク質と、を接触させる、請求項1または2に記載の製造方法。
(i)バシラス(Bacillus)属細菌、または、バシラス(Bacillus)属細菌のBC5213遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子が導入された形質転換体、を培養する培養工程、または、
(ii)バシラス(Bacillus)属細菌のBC5213タンパク質、若しくはそのホモログタンパク質と、基質とを接触させる反応工程、を有する、アミノプロピル基の付加方法。
上記形質転換体は、更に、バシラス(Bacillus)属細菌のBC5214遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子が導入されたものである、請求項5に記載のアミノプロピル基の付加方法。
上記反応工程では、上記バシラス(Bacillus)属細菌のBC5213タンパク質、若しくはそのホモログタンパク質と、上記基質と、バシラス(Bacillus)属細菌のBC5214タンパク質、若しくはそのホモログタンパク質と、を接触させる、請求項5または6に記載のアミノプロピル基の付加方法。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kroger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.97, No.26, 2000, p14133-14138
【非特許文献2】Matsunaga et al., ChemBioChem, 8, 2007, p1729-1735
【非特許文献3】Bridoux et al., Rapid Commun. Mass Spectrom, 25, 2011, p877-888
【非特許文献4】Bridoux et al., Organic Geochemistry, 47, 2012, p9-21
【非特許文献5】Bridoux et al., Organic Geochemistry, 48, 2012, p9-20
【非特許文献6】Menzel et al., Chem. Commun., 2003, p2994-2995
【非特許文献7】Annenkov et al., ARKIVOC, 2009, xiii, p116-130
【非特許文献8】Knott, FEBS Letters, 583, 209, p3519-3524
【非特許文献9】Valasinas et al., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 11, 2003, p4121-4131
【非特許文献10】Oshima et al., Methods and Protocols, Methods in Molecular Biology, Vol.720, 2011, p81-111
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態及び実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態及び実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。本明細書中、数値範囲に関して「A〜B」と記載した場合、当該記載は「A以上B以下」を意図する。
【0033】
本発明者は、バシラス(Bacillus)属細菌が、独自の化合物を合成するための、独自の生合成経路を有していることを見出した。具体的に、本発明者は、バシラス属細菌が、タンデム構造を有する化合物群を生産していること、および、該化合物群の合成に関与する遺伝子を有していることを見出し、当該知見に基づいて、タンデム構造を有する化合物に関する新たな技術を提供することに成功した。以下に、本発明の詳細について説明する。
【0034】
〔1.本発明の化合物〕
本実施形態の化合物は、本発明者によって見出された新規な化合物であって、後述するシリカ重合剤の有効成分として利用することができる。
【0035】
本実施形態の化合物は、以下の式(I)にて示される化合物である:
【0037】
(上記式(I)中、Rは、水素または任意の有機基であり、nは、16以上の整数である)。
【0038】
上記式(I)では、Rが、H
2N−(CH
2)
4−、H
2N−(CH
2)
3−、NH
10C
5−、または、NH
10C
6−にて示される有機基であってもよい。
【0039】
上記式(I)では、nの下限値は、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30であってもよい。一方、上記式(I)では、nの上限値は、55、60、70、80、90または100であってもよい。
【0040】
〔2.化合物の製造方法〕
本実施形態の化合物の製造方法は、(i)バシラス属細菌、または、バシラス属細菌のBC5213遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子が導入された形質転換体、を培養する培養工程、または、(ii)バシラス属細菌のBC5213タンパク質、若しくはそのホモログタンパク質と、基質とを接触させる反応工程、を有する。
【0041】
上記製造方法により製造される化合物は、下記式(I)で示される化合物である。
【0043】
なお、上記式(I)中、Rは、水素または任意の有機基であり、nは、2以上の整数である。上記構成によれば、タンデム構造(換言すれば、アミノプロピル基が連続して結合している構造)を有する化合物の新たな製造方法を提供することができる。
【0044】
上記式(I)では、Rが、H
2N−(CH
2)
4−、H
2N−(CH
2)
3−、NH
10C
5−、または、NH
10C
6−にて示される有機基であってもよい。
【0045】
上記式(I)では、nの下限値は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16であってもよい。一方、上記式(I)では、nの上限値は、55、60、70、80、90または100であってもよい。
【0046】
<A.培養工程>
本実施形態の化合物の製造方法における培養工程では、バシラス属細菌、または、バシラス属細菌のBC5213遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子が導入された形質転換体を培養する。上記形質転換体は、更に、バシラス属細菌のBC5214遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子が導入されたものであってもよい。
【0047】
上記バシラス属細菌としては、バシラス属(Bacillus)に分類される細菌であれば特に限定されない。バシラス属に分類される細菌の具体例として、例えば、バシラス セレウス(Bacillus cereus)、バシラス スリンジエンシス(Bacillus thuringiensis)、バシラス マイコイデス(Bacillus mycoides)およびバシラス メガテリウム(Bacillus megaterium)等を挙げることができる。
【0048】
上記バシラス セレウスの具体例として、Bacillus cereus ATCC 14579株、Bacillus cereus ATCC 10987株、Bacillus cereus YH64株、Bacillus cereus YH221株、Bacillus cereus E33L等が挙げられる。
【0049】
バシラス属細菌は、上記式(I)にて示される化合物を合成する。該化合物の合成には、例えば、バシラス属細菌の体内に含まれるアミノプロピル基転移酵素が関与していると考えられる。BC5213遺伝子がコードするBC5213タンパク質は、アミノプロピル基転移酵素と同一性が高く、これらのタンパク質は、アミノプロピル基転移活性を有していると考えられる。ここで、上記「アミノプロピル基転移酵素」とは、アミノプロピル基の供与体(例えば、脱炭酸S−アデノシルメチオニン)から基質へ、アミノプロピル基を転移する酵素を意図する。より具体的に、上記「アミノプロピル基転移酵素」とは、アミノプロピル基の供与体(例えば、脱炭酸S−アデノシルメチオニン)から、基質のアミノプロピル基へ、アミノプロピル基を転移する酵素を意図する。
【0050】
上記BC5213遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子は、より具体的に、(1)配列番号3または5で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、または(2)配列番号3または5で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アミノプロピル基転移酵素活性(または、タンデム構造形成活性)、または、アミノプロピル基転移酵素補助活性(または、タンデム構造形成補助活性)を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであってもよい。
【0051】
BC5213遺伝子にコードされるBC5213タンパク質は、アミノ末端から数えて2−73番目のアミノ酸が欠失していても、機能を失うことがない。配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、BC5213タンパク質の全長をコードしているポリヌクレオチドに対応する。一方、配列番号5で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、アミノ末端から数えて2−73番目のアミノ酸が欠失しているBC5213タンパク質をコードしているポリヌクレオチドに対応する。
【0052】
上記BC5214遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子は、より具体的に、(3)配列番号7で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、または(4)配列番号7で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アミノプロピル基転移酵素活性(または、タンデム構造形成活性)、または、アミノプロピル基転移酵素補助活性(または、タンデム構造形成補助活性)を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであってもよい。
【0053】
本明細書中で使用される場合、用語「ストリンジェントな条件」は、いわゆる塩基配列に特異的な2本鎖のポリヌクレオチドが形成され、非特異的な2本鎖のポリヌクレオチドが形成されない条件をいう。換言すれば、同一性が高い核酸同士、例えば完全にマッチしたハイブリッドの融解温度(Tm値)から15℃、好ましくは10℃、更に好ましくは5℃低い温度までの範囲の温度でハイブリダイズする条件ともいえる。
【0054】
例えば、一例を示すと、0.25M Na
2HPO
4、pH7.2、7%SDS、1mM EDTA、1×デンハルト溶液からなる緩衝液中で温度が60〜68℃、好ましくは65℃、さらに好ましくは68℃の条件下で16〜24時間ハイブリダイズさせ、さらに20mM Na
2HPO
4、pH7.2、1%SDS、1mM EDTAからなる緩衝液中で温度が60〜68℃、好ましくは65℃、さらに好ましくは68℃の条件下で15分間の洗浄を2回行う条件を挙げることができる。
【0055】
他の例としては、25%ホルムアミド、より厳しい条件では50%ホルムアミド、4×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)、50mM Hepes pH7.0、10×デンハルト溶液、20μg/mL変性サケ精子DNAを含むハイブリダイゼーション溶液中、42℃で一晩プレハイブリダイゼーションを行った後、標識したプローブを添加し、42℃で一晩保温することによりハイブリダイゼーションを行う。その後の洗浄における洗浄液および温度条件は、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度で、より厳しい条件としては「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度で、さらに厳しい条件としては「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」程度で実施することができる。このようにハイブリダイゼーションの洗浄の条件が厳しくなるほど、特異性の高いハイブリダイズとなる。ただし、上記SSC、SDSおよび温度の条件の組み合わせは例示であり、当業者であれば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する上記若しくは他の要素(例えば、プローブ濃度、プローブの長さ、ハイブリダイゼーション反応時間等)を適宜組み合わせることにより、上記と同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。このことは、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory(2001)等に記載されている。
【0056】
アミノプロピル基転移酵素活性(または、タンデム構造形成活性)を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであるか否かは、当該ポリヌクレオチドを宿主(例えば、大腸菌)に導入し、当該宿主内にて、アミノプロピル基が転移された化合物の量が増加するか否か、または、アミノプロピル基が転移された新たな化合物が合成されるか否か、を確認することによって判定することができる。宿主内にて、アミノプロピル基が転移された化合物の量が増加した場合、および/または、アミノプロピル基が転移された新たな化合物が合成された場合には、上記ポリヌクレオチドは、アミノプロピル基転移酵素活性(または、タンデム構造形成活性)を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドである、と判定することができる。
【0057】
アミノプロピル基転移酵素補助活性(または、タンデム構造形成補助活性)を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであるか否かは、当該ポリヌクレオチドと、別のポリヌクレオチド(例えば、BC5213遺伝子、または、BC5214遺伝子)を宿主(例えば、大腸菌)に導入し、当該宿主内にて、アミノプロピル基が転移された化合物の量が増加するか否か、または、アミノプロピル基が転移された新たな化合物が合成されるか否か、を確認することによって判定することができる。宿主内にて、アミノプロピル基が転移された化合物の量が増加した場合、および/または、アミノプロピル基が転移された新たな化合物が合成された場合には、上記ポリヌクレオチドは、アミノプロピル基転移酵素補助活性(または、タンデム構造形成補助活性)を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドである、と判定することができる。なお、「アミノプロピル基転移酵素補助活性(または、タンデム構造形成補助活性)」とは、例えば、アミノプロピル基転移酵素と複合体を形成することによって、当該アミノプロピル基転移酵素の機能を調節(例えば、活性化)する活性などが、意図される。
【0058】
上記培養工程において培養される形質転換体の宿主としては、例えば、大腸菌、枯草菌、微細藻類、酵母等を挙げることができるが、勿論、本発明は、これらの宿主に限定されない。これらの宿主の中では、増殖が早いという利点を有しているという観点から、枯草菌および大腸菌が好ましい。本発明の化合物の製造方法に用いられる形質転換体は、少ない数の遺伝子を導入することによって作製され得る。それ故に、あらゆる生物(例えば、微生物)を宿主とし得る。なお、宿主に遺伝子を導入する方法としては、周知の方法を用いればよい。
【0059】
上記培養工程において用いる培地は、バシラス属細菌、または、上記形質転換体が生育可能な培地であれば、特に限定されない。
【0060】
<B.反応工程>
本実施形態の化合物の製造方法における反応工程では、バシラス属細菌のBC5213タンパク質、若しくはそのホモログタンパク質と、基質とを接触させる。上記反応工程では、バシラス属細菌のBC5213タンパク質、若しくはそのホモログタンパク質と、基質と、バシラス属細菌のBC5214タンパク質、若しくはそのホモログタンパク質と、を接触させてもよい。なお、物質同士の接触は、in vitroにて行ってもよいし、in vivoにて行ってもよい。
【0061】
上記BC5213タンパク質、若しくはそのホモログタンパク質は、より具体的に、(5)配列番号4または6に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、(6)配列番号4または6に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アミノプロピル基転移酵素活性(または、タンデム構造形成活性)、または、アミノプロピル基転移酵素補助活性(または、タンデム構造形成補助活性)を有するタンパク質であってもよい。
【0062】
BC5213タンパク質は、アミノ末端から数えて2−73番目のアミノ酸が欠失していても、機能を失うことがない。配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、BC5213タンパク質の全長に対応する。一方、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、アミノ末端から数えて2−73番目のアミノ酸が欠失しているBC5213タンパク質に対応する。
【0063】
上記BC5214タンパク質、若しくはそのホモログタンパク質は、より具体的に、(5)配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、(6)配列番号8に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アミノプロピル基転移酵素活性(または、タンデム構造形成活性)、または、アミノプロピル基転移酵素補助活性(または、タンデム構造形成補助活性)を有するタンパク質であってもよい。
【0064】
本実施形態において、アミノ酸配列中の欠失、置換若しくは付加が生じる位置は、特に限定されない。また、本実施形態において、「1若しくは数個のアミノ酸」が意図するアミノ酸の数は特に限定されないが、70個以内、60個以内、50個以内、40個以内、30個以内、20個以内、10個以内、9個以内、8個以内、7個以内、6個以内、5個以内、4個以内、3個以内、2個以内、または、1個のアミノ酸であり得る。
【0065】
本実施形態の、化合物の製造方法における反応工程は、バシラス属細菌のBC5213タンパク質、若しくはそのホモログタンパク質と、基質とを接触させる。
【0066】
上記基質は、特に限定されず、特定の化合物、特定の化合物の混合物、生体(例えば、微生物(例えば、大腸菌、バシラス属細菌))の破砕物、または、生体(例えば、微生物(例えば、大腸菌、バシラス属細菌))の破砕物を含む溶液であってもよい。より具体的に、上記基質は、式(I)にて示される化合物から、1つ以上のアミノプロピル基を脱離させてなる化合物であってもよい。より具体的に、上記基質は、式(I)にて示される化合物から、1つ以上のアミノプロピル基を脱離させてなる化合物であって、Rは、例えば、H
2N−(CH
2)
4−、H
2N−(CH
2)
3−、NH
10C
5−、または、NH
10C
6−で示される化合物であってもよい。
【0067】
上記反応工程は、例えば溶媒中において行なってもよい。溶媒としては、バシラス属細菌のBC5213タンパク質若しくはそのホモログタンパク質、基質、および、BC5214タンパク質若しくはそのホモログタンパク質が失活しない溶媒であれば特に限定されない。このような溶媒としては、水を挙げることができる。
【0068】
〔3.形質転換体〕
本実施形態の形質転換体は、バシラス属細菌のBC5213遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子が導入されている。また、本実施形態の形質転換体は、更に、バシラス属細菌のBC5214遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子が導入されていてもよい。上記形質転換体は、タンデム構造を有する化合物の製造に用いることができる。
【0069】
遺伝子および宿主など、上述の〔化合物の製造方法〕において説明したものについては、ここでは説明を省略する。
【0070】
(a)BC5213遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子と、(b)BC5214遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子との両方を宿主に導入する場合には、(a)BC5213遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子と、(b)BC5214遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子とを、別々の発現ベクターに挿入した状態で、別々に宿主に導入してもよく、(a)BC5213遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子と、(b)BC5214遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子とを、1つの発現ベクターに挿入した状態で、一緒に宿主に導入してもよい。
【0071】
各遺伝子の発現レベルを略同一にして、所望の化合物を効率良く生産するという観点からは、(a)BC5213遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子と、(b)BC5214遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子とを、1つの発現ベクターに挿入した状態で、一緒に宿主に導入することが好ましい。また、この場合には、両方の遺伝子の発現を、共通のプロモーターによって制御することが、更に好ましい。
【0072】
形質転換体の作製に用いる発現ベクターは、限定されず、宿主に応じた、市販の発現ベクターを用いればよい。また、形質転換体の作製は、宿主に応じた、周知の方法にしたがって行えばよい。
【0073】
〔4.アミノプロピル基の付加方法〕
本実施形態の、アミノプロピル基の付加方法は、(i)バシラス属細菌、または、バシラス属細菌のBC5213遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子が導入された形質転換体、を培養する培養工程、または、(ii)バシラス属細菌のBC5213タンパク質、若しくはそのホモログタンパク質と、基質とを接触させる反応工程、を有する。上記構成によれば、アミノプロピル基が付加された化合物を製造することができる。
【0074】
本実施形態のアミノプロピル基の付加方法では、アミノプロピル基の供与体からアミノプロピル基が基質に転移され、かつ、基質にアミノプロピル基が付加される。より具体的に、本実施形態のアミノプロピル基の付加方法では、アミノプロピル基の供与体からアミノプロピル基が基質に転移され、かつ、基質のアミノプロピル基にアミノプロピル基が付加される。
【0075】
本実施形態のアミノプロピル基の付加方法は、上述の〔化合物の製造方法〕に記載の、培養工程および反応工程により実現される。それ故に、既に説明したものについては、ここでは説明を省略する。
【0076】
上記培養工程では、バシラス属細菌、または、バシラス属細菌のBC5213遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子が導入された形質転換体を、基質を含む培地を用いて培養してもよい。
【0077】
上記形質転換体は、更に、バシラス属細菌のBC5214遺伝子、若しくはそのホモログ遺伝子が導入されたものであってもよい。
【0078】
上記反応工程では、バシラス属細菌のBC5213タンパク質、若しくはそのホモログタンパク質と、上記基質と、バシラス属細菌のBC5214タンパク質、若しくはそのホモログタンパク質と、を接触させてもよい。
【0079】
上記基質は、特に限定されず、特定の化合物、特定の化合物の混合物、生体(例えば、微生物(例えば、大腸菌、バシラス属細菌))の破砕物、または、生体(例えば、微生物(例えば、大腸菌、バシラス属細菌))の破砕物を含む溶液であってもよい。より具体的に、上記基質は、式(I)にて示される化合物から、1つ以上のアミノプロピル基を脱離させてなる化合物であってもよい。より具体的に、上記基質は、式(I)にて示される化合物から、1つ以上のアミノプロピル基を脱離させてなる化合物であって、Rが、例えば、H
2N−(CH
2)
4−、H
2N−(CH
2)
3−、NH
10C
5−、または、NH
10C
6−で示される化合物、であってもよい。
【0080】
〔5.シリカ重合剤〕
本実施形態のシリカ重合剤は、下記式(I)にて示される化合物を有効成分として含むものである:
【0082】
なお、上記式(I)中、Rは、水素または任意の有機基であり、nは、2以上の整数である。上記構成によれば、新たなシリカ重合剤を提供することができる。
【0083】
上記式(I)中、Rは、H
2N−(CH
2)
4−、H
2N−(CH
2)
3−、NH
10C
5−、または、NH
10C
6−にて示される有機基であってもよい。
【0084】
上記式(I)では、nの下限値は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16であってもよい。一方、上記式(I)では、nの上限値は、55、60、70、80、90または100であってもよい。
【0085】
本明細書において、「シリカ重合剤」とは、ケイ酸を重合させる(または、ケイ酸の重合を促進する)ことによって、シリカを生成するためのものを意図する。ケイ酸を重合させる際、上記式(I)中に含まれる化合物により、常温、常圧または水中において、シリカを効率よく重合することが可能である。本実施形態のシリカ重合剤を用いるシリカの製造方法は、従来の、化学合成によるシリカの製造方法と比べ、高温、酸性条件、および、有機溶媒等の条件が厳格に求められるものではない。
【0086】
本実施形態のシリカ重合剤における有効成分の量は、特に限定されず、例えば、シリカ重合剤に対して、0.001重量%〜100重量%であってもよく、0.01重量%〜100重量%であってもよく、0.1重量%〜100重量%であってもよく、0.1重量%〜95重量%であってもよく、0.1重量%〜90重量%であってもよく、0.1重量%〜80重量%であってもよく、0.1重量%〜70重量%であってもよく、0.1重量%〜60重量%であってもよく、0.1重量%〜50重量%であってもよく、0.1重量%〜40重量%であってもよく、0.1重量%〜30重量%であってもよく、0.1重量%〜20重量%であってもよく、0.1重量%〜10重量%であってもよい。
【0087】
本実施形態のシリカ重合剤は、有効成分以外の成分(薬学的に受容可能なキャリアなど)を含んでいてもよい。有効成分以外の成分としては、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁剤、等張化剤、緩衝剤および無痛化剤を挙げることができる。その他、有効成分以外の成分として、防腐剤、抗酸化剤および安定化剤も挙げることができる。
【0088】
上記「賦形剤」としては、例えば、乳糖、白糖、D−マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、デンプンおよび結晶セルロースを挙げることが、これらに限定されない。
【0089】
上記「滑沢剤」としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ワックス、タルクおよびコロイドシリカを挙げることが、これらに限定されない。
【0090】
上記「結合剤」としては、例えば、α化デンプン、メチルセルロース、結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、トレハロース、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンを挙げることが、これらに限定されない。
【0091】
上記「崩壊剤」としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウムおよびカルボキシメチルスターチナトリウムを挙げることが、これらに限定されない。
【0092】
上記「溶剤」としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油およびトリカプリリンを挙げることが、これらに限定されない。
【0093】
上記「溶解補助剤」としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムを挙げることが、これらに限定されない。
【0094】
上記「懸濁剤」としては、例えば、界面活性剤(例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン)および親水性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)を挙げることが、これらに限定されない。
【0095】
上記「等張化剤」としては、例えば、塩化ナトリウム、グリセリンおよびD−マンニトールを挙げることが、これらに限定されない。
【0096】
上記「緩衝剤」としては、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびクエン酸塩を挙げることが、これらに限定されない。
【0097】
上記「無痛化剤」としては、例えば、ベンジルアルコールを挙げることが、これに限定されない。
【0098】
上記「防腐剤」としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸およびソルビン酸を挙げることが、これらに限定されない。
【0099】
上記「抗酸化剤」としては、例えば、亜硫酸塩およびアスコルビン酸を挙げることが、これらに限定されない。
【0100】
上記「安定化剤」としては、製薬分野において通常用いられるものであればよく、特に限定されない。
【0101】
本実施の形態のシリカ重合剤における有効成分以外の成分の量は、特に限定されず、例えば、シリカ重合剤に対して、0重量%〜99.999重量%であってもよく、0重量%〜99.99重量%であってもよく、0重量%〜99.9重量%であってもよく、5重量%〜99.9重量%であってもよく、10重量%〜99.9重量%であってもよく、20重量%〜99.9重量%であってもよく、30重量%〜99.9重量%であってもよく、40重量%〜99.9重量%であってもよく、50重量%〜99.9重量%であってもよく、60重量%〜99.9重量%であってもよく、70重量%〜99.9重量%であってもよく、80重量%〜99.9重量%であってもよく、90重量%〜99.9重量%であってもよい。
【実施例】
【0102】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0103】
<1.Bacillus cereusからの長鎖ポリアミンの抽出>
Bacillus cereus ATCC 14579株(ATCCより入手)またはBacillus cereus YH64株(NBRCより入手)を、0.6mM CaCl
2、0.03mM MnCl
2、0.05mM ZnCl
2、0.05mM FeSO
4および100μg/mlのケイ酸(Si[OH]
4)を加えたR2A培地中で72時間培養することで、表面にシリカ(SiO
2)を蓄積した胞子を形成させた。なお、R2A培地の組成の詳細は、文献Aに記載されている(文献A:Reasoner and Geldreich 1985 Appl. Environ. Microbiol. 49, 1)。
【0104】
その後、遠心分離処理(2000g、20分)によって胞子を回収し、当該胞子を純水で洗浄した。洗浄後、試験管に入れた胞子懸濁液に、等量の濃硝酸、および四倍量の濃硫酸を添加し、当該胞子懸濁液をドラフト内においてガスバーナーで加熱して沸騰させた。胞子懸濁液の温度を室温程度にまで低下させた後、当該胞子懸濁液を超遠心処理(100,000g、15分)に供し、酸に不溶な画分を沈殿させた。
【0105】
得られた沈殿を、pHが中性になるまで純水で繰り返し洗浄した。洗浄後の沈殿を6M フッ化アンモニウム水溶液に懸濁し、室温で30分間静置することで、フッ化アンモニウム水溶液中にシリカを溶解させた。得られた溶液を、200mM 酢酸アンモニウム溶液に対して一晩透析することで、溶液からフッ化アンモニウムを除去した。透析後の溶液を凍結乾燥に供して溶媒を除去し、残存した画分を超純水に溶解させた。溶解後に得られた溶液を、大気圧化学イオン化質量分析(LTQ Orbitrap XL、Thermo Fisher Scientific社製)またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(装置名:AXIMA−CFR plus、島津製作所社製)に供することで、上記溶液中に含まれる物質を同定した。その結果、上記溶液中に、長鎖ポリアミンが存在することが確認された。
【0106】
大気圧化学イオン化質量分析によって得られた、Bacillus cereus ATCC 14579株由来の長鎖ポリアミン(上記「タンデム構造を有する化合物」に該当)のマススペクトルを
図1に、また、Bacillus cereus YH64株由来の長鎖ポリアミンのマススペクトルを
図2に示す。また、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析によって得られたBacillus cereus ATCC 14579株由来の長鎖ポリアミンのマススペクトルを
図3に示す。
【0107】
図1は、大気圧化学イオン化質量分析によって得られた、Bacillus cereus ATCC 14579株由来の長鎖ポリアミンのマススペクトルである。
図1に示すように、m/zに関して、57.058間隔で複数のピークが検出された。各ピークのm/zの値は、545.57、602.63、659.69、716.74、773.80、830.86、887.92、944.98、1002.03、1059.09、116.15、1173.21、1230.27、1287.32、1344.38、1401.44、1458.50、1515.56、1572.61、1572.61、1630.68、1687.73、1743.79であった。これらのピークから、Bacillus cereus ATCC 14579株由来の長鎖ポリアミンは、H
2N−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−[−NH−CH
2−CH
2−CH
2−]
n−NH
2(n=8−29)の構造を有することが確認された。
【0108】
図2の(a)は、大気圧化学イオン化質量分析によって得られた、Bacillus cereus YH64株由来の長鎖ポリアミンのマススペクトルである。
図2の(b)は、
図2の(a)のピークを拡大したマススペクトルである。
図2に示す通り、
図1と同様に長鎖ポリアミン由来の等間隔のピークが検出された。
図2では、
図1にて検出されたものと同じピーク群(
図2の(b)中のA)に加え、m/zの値が異なる3種類のピーク群が存在した(
図2の(b)中のB、CおよびD)。いずれのピーク群もピークの間隔は57.058であることから、長鎖ポリアミンの繰り返し部分の構造は共通しているが、長鎖ポリアミンの末端の構造が異なると考えられる。これらのピークから、Bacillus cereus YH64株由来の長鎖ポリアミンは、以下の構造を有すると考えられる。
共通の繰り返し構造:R−[−NH−CH
2−CH
2−CH
2−]
n−NH
2、(n=4−34)、
ピーク群A:R=−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−NH
2、
ピーク群B:R=−CH
2−CH
2−CH
2−NH
2、
ピーク群C:R=−C
5H
10N、
ピーク群D:R=−C
6H
10N。
【0109】
図3は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析によって得られたBacillus cereus ATCC 14579株由来の長鎖ポリアミンのマススペクトルである。
図3に示す通り、
図1と同様に長鎖ポリアミン由来の等間隔のピークが検出された。確認できる最大のピークのm/zの値は3227であり、これはnの値が55に相当する。各ピーク群の質量から、Bacillus cereus ATCC 14579株由来の長鎖ポリアミンは、以下の構造を有すると考えられる:
H
2N−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−[−NH−CH
2−CH
2−CH
2−]
n−NH
2。
【0110】
<2.遺伝子破壊の例>
Bacillus cereus ATCC 14579株のゲノムの塩基配列を確認したところ、アミノプロピル基転移酵素とホモロジーが高いBC5213タンパク質(Accession Number:NP_834876)、および、当該BC5213タンパク質と機能上関係していると思われるBC5214タンパク質(Accession Number:NP_834877)が存在することが明らかになった。
【0111】
そこで、周知の方法(例えば、Arnaud et al. 2004 Appl. Environ. Microbiol. 70, 6887に記載の方法)にしたがって、これらのタンパク質をコードしているBC5213遺伝子またはBC5214遺伝子の何れか一方が破壊された遺伝子破壊株を作製した。
【0112】
次いで、上述した<1.Bacillus cereusからの長鎖ポリアミンの抽出>に記載の方法にしたがって、遺伝子破壊株由来の長鎖ポリアミンの検出を試みた。
【0113】
しかしながら、BC5213遺伝子またはBC5214遺伝子の何れか一方が破壊された遺伝子破壊株では、マススペクトルにおける長鎖ポリアミンのピークが消失していた。
【0114】
このことから、BC5213遺伝子およびBC5214遺伝子が長鎖ポリアミンの生合成に関与していることが明らかになった。
【0115】
<3.大腸菌への遺伝子導入の例>
Bacillus cereus ATCC 14579株のBC5213遺伝子(配列番号3)がコードするタンパク質(配列番号4)から、アミノ末端から数えて2−73番目のアミノ酸残基に相当する部分が除去されたタンパク質(配列番号6)をコードする遺伝子(配列番号5)、ならびに、BC5213遺伝子の下流に存在するBC5214遺伝子(配列番号7)を、1つのポリヌクレオチド断片としてPCRにより増幅した。PCRの鋳型には、Bacillus cereus ATCC 14579株のゲノムDNAを使用し、プライマーとして以下の配列のオリゴDNAを使用した(5’−AAGGAGATATACATATGGATGTGTGGGATGAAATTTCTCT−3’(配列番号1)、5’−GGTGGTGGTGCTCGAGTCAATCGGCAGTAACAATTTCTCCT−3’(配列番号2))。
【0116】
得られたPCR産物を精製し、InFusion HD Cloning Kit(Clontech社)を用いて、制限酵素NdeIおよびXhoIで切断したpET−24bプラスミド(Merck社)と、精製したPCR産物とを反応させて、pET−24bプラスミド内にPCR産物を挿入した。反応後の溶液を用いて、クローニング用大腸菌宿主DH5α株を形質転換して、所望のプラスミドが導入されたクローニング用大腸菌宿主HD5αを選抜した。次いで、当該クローニング用大腸菌宿主HD5αから、所望のプラスミドを精製した。
【0117】
得られたプラスミドを用いて、大腸菌Rosetta2(DE3)pLysS(Merck社)を形質転換した。得られた形質転換体を、1%(w/v)グルコース、50μg/mlカナマイシンおよび30μg/mlクロラムフェニコールを加えた2×YT培地中で、OD
600が約0.5になるまで、37℃で培養した。その後、当該2×YT培地に対して、終濃度が1mMになるよう、IPTG(Isopropyl beta-D-thiogalact o-pyranoside、ナカライテスク社)を添加した。さらに28℃で6時間、形質転換体を培養することで、目的のタンパク質(BC5213タンパク質、および、BC5214タンパク質)を発現させた。
【0118】
遠心分離処理(12,000g,1分)によって菌体を回収し、5%トリクロロ酢酸水溶液に菌体を懸濁した後、超音波処理に供することで菌体を破砕した。破砕された菌体を含有している溶液を氷上にて30分間静置した後、遠心分離処理(12,000g,15分)に供し、上清をポリアミン抽出画分として回収した。回収した画分を、ヘプタフルオロ酪酸をイオンペア試薬として用いるC8逆相クロマトグラフィーに供することで、鎖長の異なるポリアミンを分離し、既報(文献B:森屋 2015 ポリアミン 2,15)に従い、ポリアミンのポストカラム誘導体化と蛍光検出とを行うことで、長鎖ポリアミンの存在を確認した。
【0119】
HPLCによる長鎖ポリアミンの検出結果を
図4に示す。
図4の(a)は、ネガティブコントロール(つまり、インサートを持たないpET−24bプラスミドを導入した大腸菌Rosetta2(DE3)pLysS株に対して、上述と同様の操作を行ったもの)のクロマトグラムを示す。
図4の(b)は、目的の遺伝子が導入された大腸菌のポリアミン抽出画分のクロマトグラムである。
【0120】
図4の(b)に示す通り、溶出時間が26−34分の範囲に、ネガティブコントロールには存在しない複数の連続したピーク(四角形の枠線内を参照)が観察された。これらは鎖長の異なる長鎖ポリアミンのピークであり、nの値は、4−9に相当する。26−34分の範囲に出現しているピークを含む溶出液を、上述の大気圧化学イオン化質量分析に供することで、長鎖ポリアミンの構造を同定した結果、該ポリアミンの構造は、H
2N−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−[−NH−CH
2−CH
2−CH
2−]
n−NH
2(n=4−9)であることを確認した。
【0121】
以上の結果から、タンデム構造を有する化合物(長鎖ポリアミン)を人為的に作製できた。