特開2020-83895(P2020-83895A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

特開2020-83895気相堆積のための低ハロゲン化物ランタン前駆体
<>
  • 特開2020083895-気相堆積のための低ハロゲン化物ランタン前駆体 図000013
  • 特開2020083895-気相堆積のための低ハロゲン化物ランタン前駆体 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-83895(P2020-83895A)
(43)【公開日】2020年6月4日
(54)【発明の名称】気相堆積のための低ハロゲン化物ランタン前駆体
(51)【国際特許分類】
   C07C 257/12 20060101AFI20200508BHJP
【FI】
   C07C257/12
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-215261(P2019-215261)
(22)【出願日】2019年11月28日
(31)【優先権主張番号】62/772,450
(32)【優先日】2018年11月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】16/685,266
(32)【優先日】2019年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ニール オスターウォルダー
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ ブイ.イバノフ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA04
4H006AA05
4H006AB91
4H006AD17
4H006BC51
4H006BD80
(57)【要約】
【課題】気相堆積用ランタニド化合物の提供。
【解決手段】≦50.0ppm、≦30.0ppm、又は≦10.0ppmのすべてハロゲン化物不純物の合計を有する気相堆積用ランタニド化合物が提供される。精製装置及び方法も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

(式中、Rは、水素、及びC〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から選択され;R及びR各々は、C〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から独立して選択され;Lnは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる群から選択されるランタニドである。)
を有するランタニドアミジナート化合物Ln(AMD)を含む組成物であって、
前記組成物は少なくとも1種のハロゲン化物不純物を含み、ハロゲン化物不純物の各々は10.0ppm又はそれより少ない範囲であり;すべてのハロゲン化物不純物の合計は50.0ppm又はそれより少ない範囲である、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のハロゲン化物不純物が、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物及びこれらの組み合わせからなる群から選択され;ハロゲン化物不純物の各々は5.0ppm又はそれより少ない範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
≦1.0ppmの塩化物、≦1.0ppmの臭化物、≦1.0ppmのヨウ化物、及び≦1.0ppmのフッ化物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
が水素であり、前記ランタニドアミジナート化合物が、La(FAMD)、Ce(FAMD)、Pr(FAMD)3、Nd(FAMD)、Pm(FAMD)、Sm(FAMD)、Eu(FAMD)、Gd(FAMD)、Tb(FAMD)、Dy(FAMD)、Ho(FAMD)、Er(FAMD)、Tm(FAMD)、Yb(FAMD)、及びLu(FAMD)からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ランタニドがランタンであり、Rが水素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
気相堆積ための粗製のランタニドアミジナート材料精製装置であって、
f)前記粗製のランタニドアミジナート材料は式I
【化2】
(式中、Rは、水素、及びC〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から選択され;R及びR各々は、C〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から独立して選択され;Lnは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる群から選択されるランタニドである。)
を有するランタニドアミジナート化合物を含み;
g)前記粗製のランタニドアミジナート材料が内部に置かれる少なくとも1つの昇華器を含むゾーン1;
h)ゾーン1と流体連通している、少なくとも1つのコンデンサを含むゾーン2;
i)ゾーン2と流体連通している、少なくとも1つの冷却器を含むゾーン3;
及び任意選択的に、
j)前記ゾーン1及び前記ゾーン2の間に設置される、回旋状の通路、ガラスウール、フィルタ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される分離ユニットを含み;
前記粗製のランタニドアミジナート材料は、50ppm又はそれより多くの、(i)LnCl(AMD)(x+y=3)、LnBr(AMD)(x+y=3)、LnI(AMD)(x+y=3)、LnF(AMD)(x+y=3)(式中、x又はyは1又は2から選択される。)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるハロゲン化物不純物;(ii)低沸点の不純物LnO(AMD)、(iii)痕跡量金属、及び(iv)痕跡量の不揮発性の不純物Ln、Ln(OH)、又は組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の不純物を含み;
精製されたランタニドアミジナート材料が、前記ゾーン2内の前記少なくとも1種のコンデンサの内部にあり;
前記精製されたランタニドアミジナート材料は、各々10.0ppm又はそれより少ない範囲のハロゲン化物不純物、及び50.0ppm又はそれより少ない範囲のすべてのハロゲン化物不純物の合計を含む、装置。
【請求項7】
前記精製されたランタニドアミジナート材料が、各々5.0ppm又はそれより少ない範囲のハロゲン化物不純物含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ランタニドアミジナート化合物がLa(FAMD)、Ce(FAMD)、Pr(FAMD)、Nd(FAMD)、Pm(FAMD)、Sm(FAMD)、Eu(FAMD)、Gd(FAMD)、Tb(FAMD)、Dy(FAMD)、Ho(FAMD)、Er(FAMD)、Tm(FAMD)、Yb(FAMD)、及びLu(FAMD)からなる群から選択される、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記ランタニドがランタンであり、Rが水素である、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は分離ユニットを含み、前記精製されたランタニドアミジナート材料が、各々2.0ppm又はそれより少ない範囲のハロゲン化物不純物を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は分離ユニットを含み、前記精製されたランタニドアミジナート材料が、各々1.0ppm又はそれより少ない範囲のハロゲン化物不純物を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項12】
気相堆積のための粗製のランタニドアミジナート材料精製方法であって、
a.式I
【化3】
(式中、Rは、水素、及びC〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から選択され;R及びR各々は、C〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から独立して選択され;Lnは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる群から選択されるランタニドである。)
を有するランタニド化合物を含む粗製のランタニドアミジナート材料を与えること;
前記粗製のランタニドアミジナート材料は、(i)LnCl(AMD)(x+y=3)、LnBr(AMD)(x+y=3)、LnI(AMD)(x+y=3)、LnF(AMD)(x+y=3)(式中、x又はyは1又は2から選択される。)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるハロゲン化物不純物;(ii)低沸点の不純物LnO(AMD)、及び(iii)痕跡量の不揮発性の不純物Ln、Ln(OH)、又は組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の不純物を含み;
b.少なくとも1つの昇華器を含むゾーン1、少なくとも1つのコンデンサを含むゾーン2;及び少なくとも1つの冷却器を含むゾーン3;任意選択的に、前記ゾーン1及び前記ゾーン2の間に設置された分離ユニットを与えること、
前記分離ユニットは、回旋状の通路、ガラスウール、フィルタ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され;前記ゾーン2は前記ゾーン1と流体連通しており、前記ゾーン3は前記ゾーン2と流体連通している;
c.前記ゾーン1内の前記少なくとも1つの昇華器に含有される前記粗製のランタニドアミジナート材料を加熱して、前記ハロゲン化物不純物及び前記痕跡量の不揮発性の不純物から分離された粗製のランタニドアミジナート材料蒸気を得ること;
d.前記ゾーン1からの前記粗製のランタニドアミジナート材料蒸気を前記ゾーン2内の前記少なくとも1つのコンデンサへ渡すこと、及び前記粗製のランタニドアミジナート材料蒸気を凝縮して、前記少なくとも1つのコンデンサ内で精製されたランタニドアミジナート材料を形成させること;
e.前記ゾーン2からの凝縮していない低沸点の不純物LnO(AMD)を前記ゾーン3内の前記少なくとも1つの冷却器へ渡して、固体の低沸点の不純物を形成させること;
を含み、
前記精製されたランタニドアミジナート材料は、各々10.0ppm又はそれより少ない範囲のハロゲン化物不純物、及び50.0ppm又はそれより少ない範囲のすべてのハロゲン化物不純物の合計を含む、方法。
【請求項13】
温度が、ゾーン1において60℃〜200℃;ゾーン1において100℃〜180℃;ゾーン3において30℃未満に設定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ランタニドアミジナート化合物が、La(FAMD)、Ce(FAMD)、Pr(FAMD)、Nd(FAMD)、Pm(FAMD)、Sm(FAMD)、Eu(FAMD)、Gd(FAMD)、Tb(FAMD)、Dy(FAMD)、Ho(FAMD)、Er(FAMD)、Tm(FAMD)、Yb(FAMD)、及びLu(FAMD)からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ランタニドがランタンであり、Rが水素である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記精製されたランタニドアミジナート材料が、各々5.0ppm又はそれより少ない範囲のハロゲン化物不純物を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記分離ユニットが用いられ、前記精製されたランタニドアミジナート材料が、各々2.0ppm又はそれより少ない範囲のハロゲン化物不純物を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記分離ユニットが用いられ、前記精製されたランタニドアミジナート材料が、各々1.0ppm又はそれより少ない範囲のハロゲン化物不純物を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
式I
【化4】
(式中、Rは、水素、及びC〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から選択され;R及びR各々は、C〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から独立して選択され;Lnは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる群から選択されるランタニド金属である。)
を有するランタニドアミジナート化合物Ln(AMD)を含む組成物を含有するベッセルであって;
前記組成物は少なくとも1種のハロゲン化物不純物を含み、ハロゲン化物不純物の各々は10.0ppm又はそれより少ない範囲であり;すべてのハロゲン化物不純物の合計は50.0ppm又はそれより少ない範囲である、ベッセル。
【請求項20】
前記少なくとも1種のハロゲン化物不純物が、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物及びこれらの組み合わせからなる群から選択され;各々のハロゲン化物不純物が、5.0ppm又はそれより少ない範囲である、請求項19に記載のベッセル。
【請求項21】
前記ランタニドアミジナート化合物が、La(FAMD)、Ce(FAMD)、Pr(FAMD)、Nd(FAMD)、Pm(FAMD)、Sm(FAMD)、Eu(FAMD)、Gd(FAMD)、Tb(FAMD)、Dy(FAMD)、Ho(FAMD)、Er(FAMD)、Tm(FAMD)、Yb(FAMD)、及びLu(FAMD)からなる群から選択される、請求項19に記載のベッセル。
【請求項22】
前記ランタニドがランタンであり、Rが水素である、請求項19に記載のベッセル。
【請求項23】
前記組成物が、≦1.0ppmの塩化物、≦1.0ppmの臭化物、≦1.0ppmのヨウ化物、及び≦1.0ppmのフッ化物を含む、請求項19に記載のベッセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は、全体が参照によって本開示に組み込まれる2018年11月28日に出願された米国仮出願第62/772,450号の通常の出願である。
【0002】
発明の背景
概して、本発明は、10.0ppm又はそれより少ない、好ましくは<5.0ppmのフッ素、塩素、臭素又はヨウ素等のハロゲン化物不純物を含有するランタン前駆体等のランタニドを含む組成物に関する。本発明は、さらに酸化ランタン、酸化ランタンによりドープされた金属酸化物、窒化ランタン及び窒化ランタンによりドープされた金属窒化物等のランタン含有膜の堆積方法に関する。ランタン含有膜は、電子産業用途において用いられる。
【発明の概要】
【0003】
希土類酸化物の薄膜は、マイクロエレクトロニクス用途での誘電体としてのその使用可能性のために興味がもたれる。特に、酸化ランタン(La)は、La/Siインターフェイスにてオフセットされるその好ましい伝導帯などの多くの理由で魅力的である。この及び他の特性は、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)及び容量性デバイスにおける高k材料として使用するためのLa又はLa含有酸化物の検討を幾らかもたらしている。先進のMOSFETにおける仕事関数を調節するために、Laを「キャッピング層」として使用することが見出されている。
【0004】
ランタンシクロペンタジエニル及びランタンアミジナート錯体等のランタニド錯体は、電子産業においてランタン含有膜の化学気相堆積又は原子層堆積の前駆体として広く用いられる。各種用途については、半導体産業は、金属について数ppm未満、ハロゲン化物について10.0ppm未満の痕跡量金属及びハロゲン化物不純物を含む高純度前駆体を要求する。これは、半導体集積回路の速度及び複雑さを増加させるためには、シリコンウェハの表面上で許容される汚染物のレベルを極端に制約した高度なプロセスが必要であるためである。
【0005】
ウェハ表面上の金属及びハロゲン化物汚染物は、CMOSに基づいた集積回路の歩留まり及び信頼性に対する重大な制限因子であることが知られている。係る汚染物は、個々のトランジスタの中心を形成する極薄のSiO2ゲート誘電体の性能を下げる。ハロゲン化物不純物は、デバイス中でマイグレートし、腐食をもたらす場合がある。鉄汚染による電界破壊欠陥に関して一般に報告されるメカニズムは、二酸化ケイ素に頻繁に浸透する、Si−SiO2インターフェイスにおける鉄の沈殿の形成である。さらに、ランタン前駆体中に存在するハロゲン化物不純物は、堆積ツールへランタン含有前駆体を輸送するために用いられるステンレス鋼コンテナの腐食、並びに鉄及び他のステンレス鋼金属不純物をランタン含有膜への移送引き起こし、デバイス障害を引き起こす場合がある。
【0006】
したがって、低レベルのハロゲン化物汚染物を含む前駆体が高度に望まれる。低ハロゲン化物汚染物を含む前駆体を製造する精製方法も望まれる。
【0007】
ランタン含有膜の堆積のために一般に用いられている前駆体は、例えばトリス(N,N’−ジ−イソプロピルホルムアミジナト)ランタン(III)又はLa(FAMD)等のランタンアミジナートすなわちLa(AMD)、例えばトリス(イソプロピルシクロペンタジエニルランタン(III)すなわちLa(iPrCp)3等のランタンシクロペンタジエニル錯体、及びランタンジケトナート錯体である。係るランタンの最も一般的な調製は、出発物質としてランタンハロゲン化物を含み、ハロゲン化物汚染物をもたらす。
【0008】
幾つかの方法では、ランタン化合物の精製、例えば結晶化及び昇華について以前に検討がなされた。
【0009】
Hecker(US2,743,169A)は、金属塩化物の分離及び精製に用いることができる昇華方法を教示した。典型的に、昇華は、生産性を高めることができる減圧で操作され、操作温度が低減される。製品は、コールドウォール上で通常形成され、ほとんどの金属ハロゲン化物が空気及び湿気感受性であるため、不活性環境中の精製プロセスの終わりに採取される。
【0010】
よりよい固体生成物の均一性のために、流動床が用いられることが多い。流動床を用いるという別の利点は、減圧昇華プロセスで実施するのが難しい固体取り扱いの自動化を可能にすることである。Schoenerら(US4,478,600)は、制御された製品粒子サイズを生み出す塩化アルミニウム精製プロセスの一部として流動化を用いる方法を教示した。この技術において、原料塩化アルミニウムは、最初に気相において、高温の塩素化反応を通じて発生し、次いでほとんどの固体不純物を除去する凝縮するステージが続く。次いで、蒸気は流動化チャンバへ供給され、生成物粒子が形成される。塩素、二酸化炭素等の凝縮可能でない含有物、及び流動化ガスは、温度制御のための冷却フィンを通過する。ガスの一部はポンプによって再利用されるが、残りはスクラバーを通して放出される。この作業において、製品凝縮及び粒子形成のための冷たい流動化ゾーンが与えられる。
【0011】
したがって、本発明の目的は、10.0ppm未満の塩化物、臭化物及びフッ化物、好ましくは5.0ppm未満のハロゲン化物、より好ましくは1.0ppm未満のハロゲン化物を含有するランタニドシクロペンタジエニル又はランタニドアミジナート錯体を与えることである。
【0012】
本発明の別の目的は、50.0ppm若しくはより少ない、30.0ppm若しくはより少ない、20.0ppm若しくはより少ない、10.0ppm若しくはより少ない、5.0ppm若しくはより少ない、又は2.0ppm若しくはより少ないすべてのハロゲン化物化合物の合計を含有するランタニドホルムアミジナートすなわちLa(FAMD)与えることである。
【0013】
本発明の別の目的は、低ハロゲン化物ランタニドホルムアミジナートの製造のための実践的で拡張可能な方法を与えることである。
【0014】
発明の概要
したがって、本発明は低ハロゲン化物組成物;ランタニドアミジナートを含む粗製の材料を精製する方法及び装置、又はより具体的には、ランタンアミジナート化合物を含む高純度組成物を得るためのランタンアミジナート化合物、及びランタニドアミジナート化合物を含む高純度組成物を輸送するための輸送装置を提供する。
【0015】
1つの側面において、式Iを有するランタニドアミジナート化合物Ln(AMD)が与えられる。
【化1】
(式中、Rは、水素、及びC〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から選択され;R及びRは、C〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から独立して選択され;;Lnは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる群から選択されるランタニドである。);
ランタニドアミジナート化合物は、塩化物、臭化物、フッ化物、ヨウ化物及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン化物不純物を含み;各々のハロゲン化物不純物は、10.0ppm若しくはより少ない、5.0ppm若しくはより少ない、2.5ppm若しくはより少ない、又は1.0ppm若しくはより少ない範囲であり;すべてのハロゲン化物不純物の合計は、質量により50.0ppm若しくはより少ない、30.0ppm若しくはより少ない、20.0ppm若しくはより少ない、10.0ppm若しくはより少ない、5.0ppm若しくはより少ない、又は2.0ppm若しくはより少ない範囲である、
【0016】
ハロゲン化物不純物は、フッ化物、塩化物、ヨウ化物及び/又は臭化物を含む。ハロゲン化物不純物は、膜の上に堆積し、誘電率に負の影響を及ぼす揮発性化合物を形成する。
【0017】
別の側面において、以下を含む高純度ランタニドアミジナート化合物の製造のための実践的で拡張可能な方法が与えられる;
a.式Iを有するランタニド化合物を含む粗製のランタニドアミジナート材料を与えること、
【化2】
(式中、Rは、水素、及びC〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から選択され;R及びR各々は、C〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から独立して選択され;Lnは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる群から選択されるランタニドである。);
粗製のランタニドアミジナート材料は、(i)LnCl(AMD)(x+y=3)、LnBr(AMD)(x+y=3)、LnF(AMD)(x+y=3)、LnI(AMD)(x+y=3)(式中、x又はyは、1又は2から選択される。)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるハロゲン化物不純物;(ii)低沸点の不純物LnO(AMD)、(iii)痕跡量金属、及び(iv)痕跡量の不揮発性の不純物Ln、Ln(OH)、又は組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の不純物を含む;
b.少なくとも1つの昇華器を含むゾーン1、少なくとも1つのコンデンサを含むゾーン2;及び少なくとも1つの冷却器を含むゾーン3;任意選択的に、ゾーン1及びゾーン2の間に設置され、回旋状の通路、ガラスウール、フィルタ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される分離ユニットを与えること;
ゾーン2はゾーン1と流体連通しており、ゾーン3はゾーン2と流体連通している;
c.ゾーン1内の少なくとも1つの昇華器に含有される粗製のランタンアミジナート材料を加熱して、ハロゲン化物不純物及び痕跡量の不揮発性の不純物から分離された粗製のランタンアミジナート材料蒸気を得ること;
d.ゾーン1からの粗製のランタニドアミジナート材料蒸気をゾーン2内の少なくとも1つのコンデンサへ渡すこと、及び粗製のランタニドアミジナート材料蒸気を凝縮して、少なくとも1つのコンデンサ内で精製されたランタニドアミジナート材料を形成させること;
e.ゾーン2からの凝縮していない低沸点の不純物LnO(AMD)をゾーン3内の少なくとも1つの冷却器へ渡して、固体の低沸点の不純物を形成させること;
精製されたランタニドアミジナート材料は、各々10.0ppmから又はそれより少ない範囲のハロゲン化物不純物、及び50.0ppm又はそれより少ない範囲のすべてのハロゲン化物不純物の合計を含む。
【0018】
さらに別の側面において、以下を含む気相堆積のための粗製のランタニドアミジナート材料を精製するための装置が与えられる:
a)粗製のランタニドアミジナート材料は、式Iを有するランタニドアミジナート化合物を含む、
【化3】
(式中、Rは、水素、及びC〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から選択され;R及びR各々は、C〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から独立して選択され;Lnは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる群から選択されるランタニドである。);
b)少なくとも1つの昇華器を含むゾーン1;粗製のランタニドアミジナート材料は少なくとも1つの昇華器の内部に配される;
c)少なくとも1つのコンデンサを含むゾーン2;ゾーン2はゾーン1と流体連通している;及び
d)少なくとも1つの冷却器を含むゾーン3;ゾーン3はゾーン2と流体連通している;及び任意選択的に、
e)回旋状の通路、ガラスウール、フィルタ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、ゾーン1及びゾーン2の間に設置される分離ユニット;
粗製のランタニドアミジナート材料は、50ppm又はそれより多くの、(i)LnCl(AMD)(x+y=3)、LnBr(AMD)(x+y=3)、LnF(AMD)(x+y=3)、LnI(AMD)(x+y=3)(式中、x又はyは1又は2から選択される。)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるハロゲン化物不純物;(ii)低沸点の不純物LnO(AMD)、(iii)痕跡量金属、及び(iv)痕跡量の不揮発性の不純物Ln、Ln(OH)、又は組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の不純物を含み、;
精製されたランタニドアミジナート材料は、ゾーン2内の少なくとも1つのコンデンサの内部にあり;精製されたランタニドアミジナート材料は、各々10.0ppm又はそれより少ない範囲のハロゲン化物不純物、及び50.0ppm又はそれより少ない範囲のすべてのハロゲン化物不純物の合計を含む。
【0019】
さらに別の側面において、前駆体として上に開示されるような精製されたランタニドアミジナート化合物を含有する輸送装置又はベッセルが与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面についてのいくつかの見方の簡単な説明
【0021】
図1図1は、ハロゲン化物を除去する例示的な精製装置である。
図2図2は、本発明のある実施態様による、原材料及び精製された材料の間で(フィルタ等の)物理的障壁を有する例示的な精製装置である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明に記載された方法及び装置は、概してランタニドアミジナート化合物から相変化プロセスにより不純物を除去するものである。
【0023】
式Iを有する、精製されたランタニドアミジナート化合物Ln(AMD)
【化4】
(式中、Rは、水素、及びC〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から選択され;R及びRは、C〜Cの直鎖又は分岐鎖アルキルからなる群から独立して選択され;;Lnは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる群から選択されるランタニドである。);
ランタニドアミジナート化合物は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン化物不純物を含み;各々のハロゲン化物不純物は、10.0ppm若しくはより少ない、5.0ppm若しくはより少ない、2.5ppm若しくはより少ない、又は1.0ppm若しくはより少ない範囲であり;すべてのハロゲン化物不純物の合計は、質量により50.0ppm若しくはより少ない、30.0ppm若しくはより少ない、20.0ppm若しくはより少ない、10.0ppm若しくはより少ない、5.0ppm若しくはより少ない、又は2.0ppm若しくはより少ない範囲である。
【0024】
未加工か粗製のランタン材料等のランタニドは、主として最大99.8質量%の一次ターゲットランタニドアミジナート、及び1ppm又はそれより多くの、2ppm又はそれより多くの、5ppm又はそれより多くの、10ppm又はそれより多くの、50ppm又はそれより多くの、以下に制限されるものではないが、(i)LaCl(AMD)(x+y=3)、LaBr(AMD)(x+y=3);LaI(AMD)(x+y=3);LaF(AMD)(x+y=3)(x及びyは1又は2から選択される。)等の不純物;(ii)LaO(AMD)等の低沸点の不純物、(iii)痕跡量金属、及び(iv)痕跡量の不揮発性の不純物、例えば La3、La(OH)、又は組み合わせを含む。
【0025】
概して、未加工又は粗製の材料は、ランタニド化合物が気化チャンバ内で気相へ気化するある温度に加熱される。次いで、ランタニド化合物蒸気は、チャンバのうちの1つが、純粋なランタニドアミジナート化合物が集められ、採取される主留分コレクタである捕集チャンバへ凝縮される。不揮発性の不純物は残渣として気化チャンバ内に残されるが、低沸点の不純物は低沸点の不純物捕集のためのチャンバへ集められる。
【0026】
純粋なランタニドアミジナート化合物を調製する1つの側面は、原材料から揮発性に乏しいランタニド臭化物、塩化物、ヨウ化物及びフッ化物を除去することである。精製された最終製品は、50.0ppm若しくはより少ない、30.0ppm若しくはより少ない、20.0ppm若しくはより少ない、10.0ppm若しくはより少ない、5.0ppm若しくはより少ない、2.0ppm若しくはより少ない、又は1.00ppm若しくはより少ない不純物を含有する。
【0027】
Thiele−McCabe方法によれば、ppmレベルでの二成分系の分離は、多くの理論段を要求し、それは、減圧昇華又は流動床装置において利用可能でない。
【0028】
純粋なランタニドアミジナート化合物を調製する別の側面は、ランタニドホルムアミジナートに匹敵する、より低い沸点を有する不純物を除去することである。これらの不純物は、少なくとも2つの温度領域を与えることによって生成物及び不純物の沸点の差を利用することにより、昇華を介して分離することができる。同様に、係る分離は、固定温度にて異なる蒸気圧を利用し、不活性ガスで低沸点不純物を運び去ることによって達成することができる。不活性ガスの適当量を与えることによって、Ln不純物を気相において維持することができ、一方でほとんどのLn(FAMD)を凝縮することができ、したがって分離が達成される。
【0029】
さらに、本発明の別の側面は、昇華残渣に蓄積された痕跡量の不揮発性の不純物による製品汚染を防止することである。フィルターメディアは、ダスティング又は他のメカニズムによりアミジナート蒸気からランタンへ持ち越す可能性がある痕跡量の揮発性に乏しい固体粒状物からアミジナート化合物の蒸気をろ過するために用いられる。他の金属及びハロゲン化物の不純物も同じメカニズムによって持ち越される可能性がある。
【0030】
ほとんどの実施態様において、精製装置は、以下の3つの一連の接続されたチャンバを含む:原材料が気化する昇華器、生成物が集められるコンデンサ、及び低沸点の不純物が集められる冷却器。
【0031】
典型的には、70〜99.5質量%のランタニドアミジナート化合物を有し、残りは他の不純物である粗製か未加工のランタニドアミジナート化合物を昇華器に入れ、加熱してランタニドアミジナート化合物を気化させる。蒸気は、ヒートトレース連結パイプを通してコンデンサ内へ入る。ランタニドアミジナート蒸気は、コンデンサ内で冷却され、生成物が形成される。気相における低沸点の不純物は、さらにヒートトレース連結パイプを通して冷却器に入り、冷却され、冷却器において凝縮される。
【0032】
ある実施態様において、蒸気は、減圧の適用により強制的にチャンバを通過する。ある実施態様において、蒸気は、不活性ガス流により強制的にチャンバを通過する。さらにある実施態様において、減圧及び不活性ガス流の両方を同時に適用して、蒸気流を追い出すことができる。
【0033】
ある実施態様において、生成物及び低沸点の不純物は冷たい表面によって凝縮される。他の実施態様において、生成物及び低沸点の不純物は冷たい不活性ガスによって凝縮される。冷たい不活性ガスによって凝縮される場合、コンデンサを流動床にすることができ、したがってガスストリームにおいて凝縮する生成物は核生成の種となり、成長することができる。流動床内の滞留時間の制御によって、均一な生成物粒子サイズ及び均一な固体生成物純度を達成することができる。
【0034】
すべての実施態様において、以下に制限されないが、回旋状の通路、ガラスウール、(媒介フィルタ等の)フィルタ、及びこれらの組み合わせなどの分離ユニット又は粒子の捕捉器を、コンデンサに入る通路に設置することができる。
【0035】
ある実施態様において、精製装置のチャンバは固定された温度にて維持される。他の実施態様において、幾つかのチャンバは、低沸点の不純物のよりよい分離を可能にするように、精製プロセス中に温度を変更することができる。
【0036】
上記の特徴のうちのいずれも、1つ又はそれより多くの他の特徴のうちのいずれとも組み合わせることができる。本開示の他の利点、新規の特徴、及び使用は、概略であり、縮尺通り、又は正確な形状で描かれることが意図されない添付の図面と共に検討された場合、非限定的な実施態様の以下の詳細な説明からより明白になるであろう。図において、種々の図において示される同一の、又は実質的に同様の各要素は、典型的には単一の数字又は表記法によって表わされる。明確性のために、当業者が本発明を理解することを可能にするために説明が必要でない場合、すべての要素をすべての図面でラベル付けするわけではなく、各実施態様のすべての要素が示されるわけでもない。
【0037】
本発明の一例は図1に示される。
【0038】
幾つかの実施態様において、図1に示される精製装置100は、少なくとも1の昇華器(101)、少なくとも1つのコンデンサ(104)、及び少なくとも1つの冷却器(105)を含む。
【0039】
昇華器(101)は、未加工のアミジナート化合物材料(201A)で充填される。昇華器を所定温度に加熱し、原材料を気化させて原材料蒸気(202)生成させる。蒸気は次いで生成物(204)捕集コンデンサ(104)に入る。次いで、凝縮していない低沸点の不純物(205)は冷却器(105)へ渡され、そこで凝縮され、固体の低沸点の不純物(205)が形成される。
【0040】
本発明の別の例は図2に示される。
【0041】
幾つかの実施態様において、図2に示される精製装置100Aは、少なくとも1つの昇華器(101)、少なくとも1つの媒介フィルタ(103)、少なくとも1つのコンデンサ(104)、及び少なくとも1つの冷却器(105)を含む。
【0042】
昇華器(101)は、未加工のアミジナート化合物材料(201A)で充填される。昇華器を所定温度に加熱し、原材料を気化させて原材料蒸気(202)生成させる。次いで、蒸気は、ヒートトレースパイプ(106)に導かれ、原材料及び精製された材料の間の物理的障壁として働く媒介フィルタ(103)を通され、次いで生成物(204)捕集のためのコンデンサ(104)に入る。次いで、凝縮していない低沸点の不純物(205)は冷却器(105)へ渡され、そこで凝縮され、固体の低沸点の不純物(205)が形成される。
【0043】
幾つかの実施態様において、精製装置100又は100Aは減圧下で操作される。装置は、係る目的のための減圧源(図示せず)に接続することができる。
【0044】
他の実施態様において、精製装置100又は100Aはキャリヤーガスを用いて操作され、若干の正圧の下にある。これは装置へのN2等の不活性ガスの供給により行うことができる(図示せず)。
【0045】
さらに他の実施態様において、装置に減圧及びキャリヤーガスを同時に供給することができる場合、精製装置100又は100Aは減圧下でキャリヤーガスを用いて操作される。
【0046】
幾つかの実施態様において、コンデンサに供給された生成物蒸気は、コンデンサ表面によって冷却される。他の実施態様において、コンデンサに供給された生成物蒸気は、冷たい不活性ガス(121)のストリーム(図示せず)によって冷却される。さらに、冷たい不活性ガスのストリームを分散板を通して導入して流動床を形成することができる。どちらにしても、精製された生成物(204)は、コンデンサに集められる。
【0047】
幾つかの実施態様において、低沸点の不純物蒸気(205)は、プロセスの初めの高温、すなわち昇華器と同じ温度でコンデンサを維持することにより、コンデンサを通ることができる。低沸点の不純物がすべて気化し、コンデンサを通過したならば、コンデンサ温度を下げて生成物を堆積させる。
【0048】
他の実施態様において、冷却ガスが生成物を凝縮させるために用いられる場合、コンデンサ温度を、不純物蒸気圧が気相中の不純物濃度より高くなるフィックスレベルに維持することができ、したがって、不純物はコンデンサにおいて凝縮しない。
【0049】
幾つかの実施態様において、冷却器に供給された不純物蒸気(205)は、冷却器表面によって冷却される。他の実施態様において、冷却器に供給された不純物蒸気は、冷たい不活性ガス(122)のストリーム(図示せず)によって冷却される。どちらにしても、低沸点の不純物(205)は冷却器に集められる。
【0050】
幾つかの実施態様において、操作に関し、深い減圧(<1tоrr abs)が用いられる。ゾーン1(図1を参照)のための典型的な操作温度は、60℃〜200℃、100℃〜180℃、又は120℃〜160℃である。ゾーン2のための典型的な起動操作温度は、低沸点の不純物を除去するために、80℃〜200℃、100℃〜180℃、又は120℃〜160℃である。低沸点の不純物が除去された後のゾーン2のための典型的な操作温度は、20℃〜100℃、20℃〜80℃、又は20℃〜60℃である。ゾーン3のための典型的な操作温度は、任意の所与の時間において30℃未満である。
【0051】
幾つかの実施態様において、よりよい固体生成物均一性のために、流動床がコンデンサにおいて用いられる。上述の歩留まり及び経済性を達成する1つの重要な要素は、コンデンサの底の入口流動化ガス対入口アミジナート化合物蒸気の比を制御することである。比を低く保つことは重要であり、したがってガスによるキャリーオーバー又は生成物が制限される。このガスストリームは、入口蒸気のための冷却源でもあるため、マス及び熱バランスによる比の下限がある。一般に、流動化ガスは、結晶化により放出された潜熱によって主に加熱される。理想的には、上述の温度範囲において、環境温度のNガスが用いられる。
【0052】
しかし、よい結晶成長及び高歩留まりを達成する別のかぎは、高濃度の蒸気をコンデンサに与えることである。これは昇華器に高温を提供すること、又は昇華器に供給されるキャリーガスを制限することにより達成することができる。両方の選択肢の組み合わせが好ましい。操作において、キャリーガスと蒸気ボイルアップ比をモル単位において<10:1、好ましくは<5:1、より好ましくは<2:1であるように維持することが好ましい。昇華器は、操作圧力に依存する、上述の上限に加熱されるのがよい。そのように、供給中の高い蒸気濃度により同じ量の原材料についてより少ないプロセス滞留時間が達成され、通過するガスの総量が低減されるため、材料のより少ないキャリーオーバーがもたらされる。別の実施態様において、ランタニドホルムアミジナートは、不活性溶媒に溶かされ、溶液は、ハロゲン化物に対して高親和性を有する不活性吸着剤で充填された吸着剤床を介して溶出される。溶媒は、精製されたランタニドホルムアミジナートから除去され、ランタニドホルムアミジナートは、さらに上記の方法によって精製される。
【0053】
ある実施態様において、<10.0ppm、好ましくは<5.0ppm、より好ましくは<2.5ppmのBr;及び<20.0ppm、好ましくは<10.0ppmのすべてのハロゲン化物不純物の合計を含有するランタニドシクロペンタジエニル又はランタニドアミジナート錯体を含むランタニド含有膜を堆積させるための輸送装置又はベッセルが提供される。
【0054】
ベッセルは、有弁のクロージャー及びシール可能な出口接続の使用によって当分野において知られている堆積装置に接続されることができる。
【0055】
最も好ましくは、ステンレス鋼、ガラス、溶融石英、ポリテトラフルオロエチレン、PFA(登録商標)、FEP(登録商標)、Tefzel(登録商標)などの高純度材料でベッセルを構築することができる。ベッセルは1つ又はそれより多くの弁で密閉されてもよい。ベッセルのヘッドスペースは、窒素、アルゴン、ヘリウム又は一酸化炭素等の適当なガスで好ましくは充填される。
【0056】
実施例
例1
精製装置100を用いた、R水素、R=R=iso−プロピルを有する未加工のランタンホルムアミジナートLa(FAMD)による減圧昇華
図1に示される精製装置100が用いられた。
【0057】
600グラムの未加工のランタンホルムアミジナートLa(FAMD)材料をStrem Chemicals Inc.,7Muliken Way,Newburyport,MAから購入し、昇華器101へ入れた。原材料中のハロゲン化物及び痕跡量の金属はイオンクロマトグラフィー(IC)によって測定され、表Iに示された。
【0058】
装置を<0.5torr abs圧力に減圧した。
【0059】
昇華器は70℃に加熱された。コンデンサは最初の5時間70℃に加熱された。5時間後、昇華器は160℃に加熱され、コンデンサは室温(RT 20〜25℃)で作動し、アミジナート化合物が凝縮された。冷却器は、室温で終始維持された。
【表1】
【0060】
そのプロセスは24時間後に停止された。
【0061】
197グラムの生成物が集められた。
【0062】
生成物中のハロゲン化物及び痕跡量の金属はイオンクロマトグラフィー(IC)によって測定され、表Iに示された。
【0063】
結果は、昇華がハロゲン化物含有量を低減することを示した。しかしながら、塩化物は約1ppmであり、臭化物濃度は50ppm超だった。
【0064】
結果は、装置が痕跡量金属を低減するのには効率的でなかったことをさらに示した。原材料に当初に含有されていた痕跡量金属の低レベルに注目されたい。
【0065】
例2
精製装置100Aを用いた、R=水素、R=R=iso−プロピルを有する未加工のランタンホルムアミジナートLa(FAMD)の減圧昇華
図2に示される精製装置100Aが用いられた。
【0066】
193グラムの未加工のLa(FAMD)3材料を、Strem Chemicals Inc.,7Muliken Way,Newburyport,MAから購入し、昇華器へ入れた。原材料中のハロゲン化物及び痕跡量の金属はイオンクロマトグラフィー(IC)によって測定され、表2に示された。
【表2】
【0067】
気孔率40〜60ミクロンを有するガラス粗フリットディスクはChemglass Life Science LLC,3800N Mill Rd,Vineland,NJ08360から購入され、媒介フィルタ103として用いられた。
【0068】
装置を<0.5torr abs圧力に減圧した。
【0069】
昇華器は140℃に加熱された。フィルタは200℃に加熱された。コンデンサは最初の24時間は140℃に加熱され、次いで、室温に下げられ、アミジナート化合物が凝縮された。冷却器は、室温で終始維持された。
【0070】
フィルタが目詰まりした際、通常48時間後にプロセスは停止された。
【0071】
40グラムの生成物が集められた。生成物中のハロゲン化物及び痕跡量の金属は表IIにおいてイオンクロマトグラフィー(IC)によって測定された。
【0072】
結果は、塩化物が図2に記載された装置の使用によって1ppm未満に効率よく除去され、臭化物も同様に1ppmに減らされたことを示した。
【0073】
結果は、原材料に当初に含有されていた痕跡量金属の低レベルを考慮し、痕跡量金属の低減の整合性があったことをさらに示した。この例において用いられる装置は痕跡量金属を低減するのにより有効だった。
【0074】
特許請求の範囲に記載された発明の原理が好ましい実施態様に関して上に記載される一方、この説明は、特許請求の範囲に記載された発明の範囲の制限としてではなく単に例として作られていることを明確に理解されたい。
図1
図2
【外国語明細書】
2020083895000001.pdf