【解決手段】ポリエステル樹脂の原料モノマー又はポリエステルアミド樹脂の原料モノマーと、熱伝導性フィラーとの少なくとも2種の成分を混合して原料混合物を得る工程と、原料混合物を用いて原料モノマーの重縮合反応を行う工程と、を順次含む、高熱伝導性樹脂組成物の製造方法である。
前記重縮合反応を行う工程の前に、前記原料モノマーのうちの少なくとも1種に対してアシル化反応又はエステル化反応を行う、請求項1に記載の高熱伝導性樹脂組成物の製造方法。
前記熱伝導性フィラーが、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、窒化アルミニウム、カーボンナノチューブ、窒化ホウ素、グラフェン、セルロース、アラミド繊維、及びイミド繊維からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の高熱伝導性樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<高熱伝導性樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の高熱伝導性樹脂組成物の製造方法は、ポリエステル樹脂の原料モノマー又はポリエステルアミド樹脂の原料モノマーと、熱伝導性フィラーとの少なくとも2種の成分を混合して原料混合物を得る工程(以下、「工程A」と呼ぶ。)と、原料混合物を用いて原料モノマーの重縮合反応を行う工程(以下、「工程B」と呼ぶ。)と、を順次含むことを特徴としている。
本実施形態の製造方法においては、原料モノマーの重縮合反応をする前に原料モノマーと熱伝導性フィラーを混合し、当該熱伝導性フィラーとともに原料モノマーを重縮合反応する。そのようにすることで、熱伝導性フィラーが凝集して一定以上の大きさの凝集体が多数生成し、その結果、熱伝導性フィラーを大量に添加することなく熱伝導性を向上することができる。
以下、本実施形態の製造方法の各工程について説明する。
【0016】
[工程A]
工程Aにおいては、ポリエステル樹脂の原料モノマー又はポリエステルアミド樹脂の原料モノマーと、熱伝導性フィラーとの少なくとも2種の成分を混合して原料混合物を得る。以下にまず、各成分について説明する。
【0017】
(ポリエステル樹脂及びその原料モノマー)
ポリエステル樹脂としては種々のものが知られているが、例えば、芳香族ポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT樹脂」と呼ぶ。)、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。以下においては、芳香族ポリエステル樹脂、PBT樹脂について説明する。
【0018】
<芳香族ポリエステル樹脂>
芳香族ポリエステル樹脂としては、より具体的には、
(1)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上を原料モノマーとするポリエステル;
(2)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上とを原料モノマーとするポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とを原料モノマーとするポリエステル;を挙げることができる。
【0019】
芳香族ポリエステル樹脂の中でも、全芳香族ポリエステル樹脂は、溶融時に光学的異方性を示し、液晶性樹脂として知られている。液晶性樹脂であることは熱安定性と易加工性を併せ持つ上で好ましい。このような全芳香族ポリエステル樹脂の原料モノマーとしては、例えば、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(以下、「HNA」ともいう。)、4−ヒドロキシ安息香酸(以下、「HBA」ともいう。)、エチレンテレフタレート、4,4−ジヒドロキシビフェニル、テレフタル酸、ハイドロキノン、レゾルシン等が挙げられる。
【0020】
<PBT樹脂>
PBT樹脂は、少なくともテレフタル酸に由来する繰り返し単位と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4−ブタンジオール)に由来する繰り返し単位とを含む。PBT樹脂の原料モノマーとして一般に用いられるものは、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4−ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分が挙げられる。
【0021】
(ポリエステルアミド樹脂及びその原料モノマー)
ポリエステルアミド樹脂としては種々のものが知られているが、以下においては、芳香族ポリエステルアミド樹脂について説明する。
【0022】
芳香族ポリエステルアミド樹脂としては、より具体的には、
(1)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(c1)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c2)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とを原料モノマーとするポリエステルアミド;
(2)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c1)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c2)芳香族ジオール、脂環族ジオール、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とを原料モノマーとするポリエステルアミド等、を挙げることができる。
【0023】
芳香族ポリエステル樹脂の場合と同様に、芳香族ポリエステルアミド樹脂も、全芳香族ポリエステルアミド樹脂は、溶融時に光学的異方性を示し、液晶性樹脂として知られており、液晶性樹脂であることは熱安定性と易加工性を併せ持つ上で好ましい。
【0024】
全芳香族ポリエステルアミド樹脂の原料モノマーとしては、例えば、HNA、HBA、エチレンテレフタレート、4,4−ジヒドロキシビフェニル、テレフタル酸、ハイドロキノン、レゾルシン、4−アミノフェノール、1,4−フェニレンジアミン、4−アミノ安息香酸等が挙げられる。
【0025】
以上の原料モノマーの使用量及びそれらの比率は、製造しようとする樹脂及びその重縮合反応を勘案して適宜設定する。
【0026】
(熱伝導性フィラー)
本実施形態において、熱伝導性フィラーは、熱伝導率が300°K で1W/m・K以上のものを指す。当該熱伝導性フィラーの熱伝導率は、ISO/FDIS22007−3に準拠したTWA法(温度波熱分析法)により熱拡散率を測定し、次いで、得られた熱拡散率の数値に、密度及び比熱を乗じて求めることができる。TWA法による熱拡散率の測定には、熱拡散率・熱伝導率測定装置を用いることができる。
【0027】
本実施形態において用いられる熱伝導性フィラーのうち、無機系のものとしては、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、マグネシア、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、硫化亜鉛、金、銀、白金等の粒状フィラー、窒化ホウ素、タルク、マイカ、グラファイト、グラフェン等の板状フィラー、ガラス繊維、カーボンナノチューブ等の繊維状フィラー等が挙げられる。有機系のものとしては、セルロース、アラミド繊維、イミド繊維等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、窒化アルミニウム、カーボンナノチューブ、窒化ホウ素、グラフェン、セルロース、アラミド繊維、及びイミド繊維からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0028】
熱伝導性フィラーの形状としては、粒状、繊維状、板状が挙げられ、中でも、粒状が好ましい。
【0029】
熱伝導性フィラーが粒状の場合、その平均粒子径は、0.01〜50μmが好ましく、0.01〜20μmがより好ましく、0.01〜2μmがさらに好ましく、0.01〜1.0μmがよりさらに好ましく、0.01〜0.4μmが最も好ましい。なお、当該平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の平均粒子径(メジアン径)である。
【0030】
熱伝導性フィラーの添加量としては、原料混合物中において、0.01〜40質量%とすることが好ましく、0.01〜30質量%とすることがより好ましく、0.1〜20質量%とすることがさらに好ましい。
【0031】
なお、本実施形態においては、熱伝導性フィラーとしては多孔質のものではないことが好ましい。
【0032】
(他の成分)
原料混合物に添加する成分として、上記成分以外のものは、重縮合反応に際し必要に応じて用いる触媒が挙げられる。また、高熱伝導性の効果を損なわない限り、他の成分を添加してもよい。他の成分としては、その他の樹脂、酸化防止剤、安定剤、顔料、結晶核剤等の添加剤を挙げることができる。
【0033】
工程Aにおいては、以上の各成分を混合して原料混合物を得るのであるが、すべての成分を重合容器に仕込んで混合してもよいし、別途混合してから重合容器に仕込んでもよい。
【0034】
[工程B]
工程Bにおいては、工程Aで得られた原料混合物を用いて原料モノマーの重縮合反応を行う。重縮合反応は、厳密には所望する樹脂により異なるが、公知の重縮合反応を適用することができる。なお、工程Bにおいて、「原料混合物を用いて」とは、工程Aで得られた原料混合物全部を重縮合反応に供することを意味する。
重縮合反応は、原料モノマーに応じた公知の重縮合反応を適用することができる。以下に、一例として、全芳香族ポリエステル樹脂及びPBT樹脂の重縮合反応について説明する。
【0035】
(全芳香族ポリエステル樹脂)
全芳香族ポリエステル樹脂は、直接重合法やエステル交換法等を用いて重縮合(重合)される。重合に際しては、溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等、又はこれらの2種以上の組み合わせが用いられ、溶融重合法、又は溶融重合法と固相重合法との組み合わせが好ましく用いられる。
【0036】
これらの重合に際しては種々の触媒の使用が可能であり、代表的なものとしては、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、トリス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト(III)等の金属塩系触媒、N−メチルイミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン等の有機化合物系触媒を挙げることができる。触媒の使用量は一般にはモノマーの全質量に基づいて約0.001〜1質量%、特に約0.003〜0.2質量%が好ましい。また、重縮合する際の温度は300〜400℃とすることが好ましい。
【0037】
溶融重合の後に、さらに固相重合させる工程を有していてもよい。固相重合により、原料樹脂の分子量の増加を図ることができ、強度や耐熱性に優れた樹脂を得ることができる。
【0038】
固相重合は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、減圧又は真空下、窒素ガス等の不活性ガス気流中で、原料樹脂の液晶形成温度よりも10〜120℃低い温度で加熱することにより行うことができる。なお、液晶性樹脂は固相重合が進むにしたがってその融点も上昇するので、原料樹脂の元も融点以上で固相重合することも可能である。固相重合は、一定の温度で実施してもよいし段階的に高温にしてもよい。加熱方法は、特に限定されず、マイクロ波加熱、ヒータ加熱等を用いることができる。
【0039】
(PBT樹脂)
PBT樹脂は、原料モノマーを直接エステル化法又はエステル交換法により重縮合して得ることができる。
【0040】
直接エステル化法とは、主原料としてテレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを用いて、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとをエステル化反応触媒の存在下で反応させる方法である。一方、エステル交換法は主原料としてテレフタル酸ジアルキルと1,4−ブタンジオールとを用いて、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとをエステル交換反応触媒の存在下で反応させる方法である。
【0041】
本実施形態において、反応温度、反応圧力、反応時間等の反応条件も特に限定されず、所望する樹脂の分子量等に応じて適宜設定すればよい。
【0042】
本実施形態において、以上のようにして重縮合して得られる樹脂中においては、熱伝導性フィラーが凝集し、一定以上の大きさの多数の凝集体を生じる。例えば、熱伝導性フィラーを5質量%含むLCP樹脂の場合、断面積0.1mm
2当たり、円相当径5μm超の凝集体の個数を10個以上とすることができ、その結果、熱伝導性を高めることができる。
【0043】
円相当径5μm超の凝集体の数は、具体的には、以下の通りに計測される。熱伝導性フィラーを含む樹脂組成物ペレットを、ミクロトームを用いてトリミングし、得られた試料から無作為に選択した断面について、走査型電子顕微鏡で観察して、円相当径5μm超の凝集体の数を計測し、この数を、観察対象となった断面の面積で除することで、断面積0.1mm
2当たりの上記凝集体の数を求める。
【0044】
本実施形態の製造方法においては、ポリエステル樹脂及びポリエステルアミド樹脂のいずれの樹脂においてもその骨格によらず熱伝導性を向上させることができる。
また、本実施形態の製造方法で得られた、樹脂と熱伝導性フィラーとを含む樹脂組成物に他の成分を添加して溶融混練したとしても、高い熱伝導性は保持される。
【0045】
本実施形態の製造方法においては、以上の工程Bで実行する重縮合反応の前に、以下の工程Cを実行してもよい。
【0046】
[工程C]
工程Cにおいては、原料モノマーのうちの少なくとも1種に対してアシル化反応又はエステル化反応を行う。以下、各反応について説明する。
【0047】
(アシル化反応)
アシル化反応は、原料モノマー中のフェノール性水酸基又はアミノ基をアシル化する反応である。アシル化反応は、上記酸触媒等の存在下で行うことが好ましい。アシル化剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2−エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸等が挙げられるが、特に限定されるものでない。これらから選択される少なくとも1種を用いることができる。価格と取り扱い性の観点から好適なものとしては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸等の無水カルボン酸等を挙げることができる。中でも、入手の容易さの点で、無水酢酸が好ましい。アシル化剤の使用量は、反応制御の容易さの点で、反応に用いる原料モノマーの水酸基総量中、1.0〜1.1当量であることが好ましく、1.01〜1.05当量であることがより好ましい。
【0048】
アシル化は、公知の方法により行うことができる。例えば、原料モノマーを、アシル化剤と混合し、120〜160℃の温度範囲で、0.5〜5時間程度加熱してアシル化反応させ、アシル化物を含む反応生成物を得る。
【0049】
(エステル化反応)
エステル化反応は、工程BのPBT樹脂の製造において、エステル交換反応の前に行う反応である。エステル交換反応は、テレフタル酸ジアルキル等のジカルボン酸ジアルキル成分と、1,4−ブタンジオール等のジオール成分とを用いるが、エステル交換反応に先立ち、本工程のエステル化反応によりジカルボン酸ジアルキル成分を得る。当該ジカルボン酸ジアルキル成分は、ジカルボン酸を、炭素原子数1〜4の低級アルコールを用いてエステル化することにより得る。
エステル化反応は、PBT樹脂の合成における公知の条件で行うことができる。
【0050】
以上、本実施形態の製造方法により得られる高熱伝導性樹脂組成物は、熱伝導性に優れることから、自動車用の電装部品、スマートフォン用の電気電子部品等の用途として好適である。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例により本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
[実施例1]
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた(アシル化反応)。その後、更に325℃まで3.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら重縮合を行った(重縮合反応)。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズして樹脂ペレットを得た。なお、シリカ1の使用量は5質量%であった。
(原料)
4−ヒドロキシ安息香酸(HBA);1660g(73モル%)
2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸(HNA);837g(27モル%)
シリカ1;(株)アドマテックス製、SO−C1(平均粒子径:0.2μm、表面未処理品、無孔質)、使用量:115.8g
金属塩系触媒(酢酸カリウム触媒);165mg
アシル化剤(無水酢酸);1714g
【0053】
[実施例2]
シリカ1の使用量を244.4g(10質量%)としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂ペレットを得た。
【0054】
[実施例3]
シリカ1の使用量を388.2g(15質量%)としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂ペレットを得た。
【0055】
[比較例1]
シリカ1を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして樹脂ペレットを得た。
【0056】
[比較例2]
重縮合においてシリカ1を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして樹脂ペレットを得た。次いで、得られた樹脂ペレットとシリカ1とを、シリカ1が5質量%となるように混合し、二軸押出機(商品名「TEX30α」、(株)日本製鋼所製)を用いて溶融混練して再ペレタイズし、樹脂ペレットを得た。
【0057】
[比較例3]
重縮合においてシリカを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして樹脂ペレットを得た。次いで、得られた樹脂ペレットとシリカ1とを、シリカ1が15質量%となるように混合し、二軸押出機(商品名「TEX30α」、(株)日本製鋼所製)を用いて溶融混練して再ペレタイズし、樹脂ペレットを得た。
【0058】
[実施例4]
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた(アシル化反応)。その後、更に340℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら重縮合を行った(重縮合反応)。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出した。その後、ストランドをペレタイズして樹脂ペレットを得た。
(原料)
4−ヒドロキシ安息香酸(HBA);1380g(60モル%)
2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸(HNA);157g(5モル%)
テレフタル酸(TA);484g(17.5モル%)
4,4’−ジヒドロキシビフェニル(BP);388g(12.5モル%)
4−アセトキシアミノフェノール(APAP);160g(5モル%)
シリカ2;(株)アドマテックス製、SC1500−SQ(平均粒子径:0.2μm、表面処理品、無孔質)、使用量:244.4g
金属塩系触媒(酢酸カリウム触媒);110mg
アシル化剤(無水酢酸);1659g
【0059】
[比較例4]
シリカ2を使用しなかったこと以外は実施例4と同様にして樹脂ペレットを得た。
【0060】
[比較例5]
重縮合においてシリカ2を使用しなかったこと以外は実施例4と同様にして樹脂ペレットを得た。次いで、得られた樹脂ペレットとシリカ2とを、シリカ2が10質量%となるように混合し、二軸押出機(商品名「TEX30α」、(株)日本製鋼所製)を用いて溶融混練して再ペレタイズし、樹脂ペレットを得た。
【0061】
[実施例5]
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で2時間反応させた(アシル化反応)。その後、更に360℃まで5.3時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら重縮合を行った(重縮合反応)。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出した。その後、ストランドをペレタイズして樹脂ペレットを得た。
(原料)
4−ヒドロキシ安息香酸(HBA);37g(2モル%)
2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸(HNA);1218g(48モル%)
テレフタル酸(TA);560g(25モル%)
4,4’−ジヒドロキシビフェニル(BP);628g(25モル%)
シリカ2;(株)アドマテックス製、SC−1500SQ(平均粒子径:0.2μm、表面処理品)、使用量:244.4g
金属塩系触媒(酢酸カリウム触媒);330mg
アシル化剤(無水酢酸);1432g
【0062】
[実施例6]
シリカ1を、シリカ3((株)アドマテックス製、SO−C2(平均粒子径:0.5μm、表面未処理品、無孔質))、使用量:115.8gに代えたこと以外は実施例1と同様にして樹脂ペレットを得た。
【0063】
[実施例7]
シリカ1を、シリカ4((株)アドマテックス製、SO−C5(平均粒子径:1.5μm、表面未処理品、無孔質))、使用量:115.8gに代えたこと以外は実施例1と同様にして樹脂ペレットを得た。
【0064】
[実施例8]
シリカ1を、シリカ5((株)アドマテックス製、FE975A(平均粒子径:6.1μm、表面未処理品、無孔質))、使用量:115.8gに代えたこと以外は実施例1と同様にして樹脂ペレットを得た。
【0065】
[比較例6]
シリカ2を使用しなかったこと以外は実施例5と同様にして樹脂ペレットを得た。
【0066】
[比較例7]
重縮合においてシリカ2を使用しなかったこと以外は実施例5と同様にして樹脂ペレットを得た。次いで、得られた樹脂ペレットとシリカ2とを、シリカ2が10質量%となるように混合し、二軸押出機(商品名「TEX30α」、(株)日本製鋼所製)を用いて溶融混練して再ペレタイズし、樹脂ペレットを得た。
【0067】
<評価>
各実施例・比較例において得られたペレットを、小型真空加熱プレス(商品名「IMC−11FA型」、(株)井元製作所)を用いて以下の条件にてプレスし、直径100mm、厚み0.1mmの円盤状のフィルムを得た。得られたフィルムについて、ISO/FDIS22007−3に準拠したTWA法(温度波熱分析法)により、熱拡散率・熱伝導率測定装置(商品名「アイフェイズモバイル」、(株)アイフェイズ)を用いて熱拡散率を測定した。次いで、得られた熱拡散率の数値に、密度及び比熱を乗じて熱伝導率を求めた。熱拡散率及び熱伝導率を表1及び表2に示す。
[条件]
プレス温度:
実施例1〜3、比較例1〜3、実施例6〜8:300℃
実施例4、比較例4、5:350℃
実施例5、比較例6、7:360℃
【0068】
以下の表1及び表2において、シリカ1〜5の下の括弧書きは各シリカの平均粒子径を示している。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
表1及び表2より、実施例1〜8のいずれも、シリカ1又は2を添加しなかった比較例(比較例1、4及び6)及び溶融混練時にシリカ1又は2を用いた比較例(比較例2、3、5及び7)よりも熱伝導率が高いことが分かる。また、それぞれ平均粒子径が異なるシリカを用いた実施例1及び実施例6〜8を比較すると、シリカの平均粒子径にかかわらず熱伝導率が高いことが分かる。
【0072】
ここで、実施例1及び7並びに比較例2における樹脂ペレットそれぞれについて、生じた凝集体の円相当径別の個数を既述の手法により計測した。円相当径5μm超の凝集体の個数を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
表3より、実施例1及び7においては、円相当径5μm超の凝集体の個数が10個以上存在するのに対し、比較例2は存在しないことが分かる。
一方、樹脂ペレット中の凝集体の個数は、実施例1の方が実施例7よりも多い。また、表1より、各樹脂ペレットを用いて得られたフィルムの熱伝導率は、実施例1の方が実施例7よりも高い。すなわち、凝集体の個数が多いと、熱伝導率が高くなることが分かる。
【0075】
また、実施例1及び比較例2の樹脂ペレットの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
図1は実施例1の樹脂ペレットの断面を示し、
図2は比較例2の樹脂ペレットの断面を示す。
図1及び
図2より、実施例1においては熱伝導性フィラーの大きな凝集体が多数確認できるのに対し、比較例2においては実施例1のような大きな凝集体は1つも確認できず、熱伝導性フィラーはほぼ均一に分散していることが分かる。
【0076】
[実施例9]
実施例1で得られた、シリカ1を5質量%含む樹脂ペレット50質量%と、黒鉛50質量%とを混合し、二軸押出機(商品名「TEX30α」、(株)日本製鋼所製)を用いて溶融混練して再ペレタイズし、樹脂ペレットを得た。
【0077】
[比較例8]
比較例1で得られた、シリカを含まない樹脂ペレットを47.5質量%、シリカ1を2.5質量%、及び黒鉛を50質量%混合し、二軸押出機(商品名「TEX30α」、(株)日本製鋼所製)を用いて溶融混練して再ペレタイズし、樹脂ペレットを得た。
【0078】
実施例9及び比較例8において得られたペレットを、射出成形機(商品名「J55AD−60H」、(株)日本製鋼所製)を用いて以下の条件で射出成形し、直径30mm、厚み2mmの円盤状の成形体を得た。得られた成形体について、ISO22007−2に準拠したホットディスク法により、ホットディスク法熱物性測定装置(商品名「TPA−501」、京都電子工業(株)製)を用いて熱伝導率を測定した。熱伝導率を表4に示す。なお、表4においては、溶融混練前の樹脂ペレット、及び溶融混練後の樹脂ペレット双方の熱伝導率を示す。
[条件]
シリンダー温度:300℃
【0079】
【表4】
【0080】
表4より、実施例9は、溶融混練前及び溶融混練後のいずれも熱伝導率が比較例8より高い。このことから、本実施形態の製造方法により得られた樹脂ペレットを他の成分を添加して溶融混練しても高い熱伝導率は保持されることが分かる。
【0081】
[実施例10]
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を210℃まで2時間かけて昇温し、エステル化反応を進行させた。その後、更に250℃まで30分かけて昇温し、そこから20分かけて0.5Torr(即ち66.5Pa)まで減圧して、メタノール、過剰の1,4−ブタンジオール、及びその他の低沸分を留出させながら重縮合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出した。その後、ストランドをペレタイズして樹脂ペレットを得た。
(原料)
テレフタル酸ジメチル;2204g(40モル%)
1,4−ブタンジオール;1535g(60モル%)
セルロース;Whatman社製、CC−31 25.25g(1質量%)
金属塩系触媒(チタン酸ブチル触媒);1250mg
【0082】
[実施例11]
セルロースを、シリカ1((株)アドマテックス製、SO−C1)131.58g(5質量%)に代えたこと以外は実施例10と同様にして樹脂ペレットを得た。
【0083】
[比較例9]
セルロースを用いなかったこと以外は実施例10と同様にして樹脂ペレットを得た。
【0084】
【表5】
【0085】
表5より、実施例10及び11のいずれにおいても、熱伝導性フィラーを添加しなかった比較例9よりも熱伝導率が高いことが分かる。