【実施例】
【0045】
以下に、実施例によって本発明を詳細に説明する。以下の実施例は例示であり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0046】
[微生物燃料電池の作製]
図3に示す微生物燃料電池1を作製した。より具体的には、まず、プロトン交換膜4を介して接続された1.8L容の第1槽2(負極槽)と、0.5L容の第2槽3(正極槽)とを準備した。次いで、第1槽2に初期濃度4g/Lの汚泥Sを1.8L投入し、この汚泥S中に負極5を1本配置した。第2槽3にも初期濃度4g/Lの汚泥Sを0.5L投入し、この汚泥S中に正極6を1本配置した。負極5と正極6とを10Ωの金属皮膜抵抗(負荷8)を介して導線9に各々接続させ、電気的に接続させた。
【0047】
また、第1槽2及び第2槽3の底部に設置したマグネットスターラー(図示省略)により、汚泥Sを各々撹拌させた。さらに、曝気装置7により第2槽3内に空気を曝気し、第2槽3内の汚泥S中に酸素を通気するようにした。
【0048】
なお、プロトン交換膜4は、φ75mmの一価陽イオン交換膜〔(株)アストム製、品名:ネオセプタ(登録商標)CMS〕を用いた。負極5は、長さ30cmのモール状炭素電極〔ティビーアール(株)製、品名:バイオコード〕を用いた。正極6は、長さ10cmのモール状炭素電極(同上)を用いた。また、汚泥Sは、東広島浄化センターの返送汚泥を用いた。
【0049】
以上のようにして得られた微生物燃料電池1を用い、約30日間、汚泥Sを燃料として発電させ、同時に、微生物による汚泥Sの分解処理を行なった。
【0050】
[発生電流の測定]
発生電流として、10Ωの金属皮膜抵抗に流れた電流をマルチメータ〔三和電気計器(株)製、品名:デジタルマルチメータPC20〕により3分毎に計測し、計測した電流値をパソコンで記録した。その結果を
図4(a)に示す。
【0051】
[総汚泥量の測定]
まず、実験前に規定量の汚泥試料を第1槽2又は第2槽3から抜き取り、それを乾燥させた乾燥重量(初期乾燥重量)を測定する。次いで、所定期間毎に同量の汚泥試料を第1槽2又は第2槽3から抜き取り、上記と同様にして、乾燥重量(経時乾燥重量)を測定する。測定した初期乾燥重量と経時乾燥重量と、実験前の総汚泥量(初期総汚泥量:第1槽2は7.2g、第2槽3は2.0g)とから、残存する総汚泥量(経時総汚泥量)を求めた。第1槽2の結果を
図5(a)に示し、第2槽3の結果を
図6に示す。
【0052】
[汚泥分解率の測定]
汚泥分解率は、以下の式に基づいて求めた。第1槽2の結果を
図5(a)に示し、第2槽3の結果を
図6に示す。
[数1]
汚泥の分解率(%)=〔初期総汚泥量(g)−経時総汚泥量(g)〕/初期総汚泥量(g)×100 (式)
【0053】
(実施例1)
図4(a)に示すように、25日間における発生電流の平均値は1.68mAであった。なお、
図4(a)において、第1槽(負極槽)における汚泥のpHの変動幅は7.5〜6.1であり、第2槽(正極槽)における汚泥のpHの変動幅は8.5〜5.8であった。実施例1では、後述する比較例1と異なり、第1槽(負極槽)及び第2槽(正極槽)のいずれにも水酸化ナトリウム(NaOH)溶液を添加していない。
【0054】
図5(a)に示すように、25日経過後において、第1槽(負極槽)における汚泥分解率は41.3%であった。また、
図6に示すように、25日経過後において、第2槽(正極槽)における汚泥分解率は63.9%であった。
【0055】
また、
図5(a)及び
図6に示す初期総汚泥量から経時総汚泥量(処理日数:25)を減算することにより、25日経過後における汚泥の分解量を求めた。その結果、第1槽(負極槽)における汚泥の分解量は3.0gであり、第2槽(正極槽)における汚泥の分解量は1.3gであった。従って、微生物燃料電池全体における汚泥の分解量は4.3gであった。
【0056】
(比較例1)
第2槽(正極槽)に、初期濃度4g/Lの汚泥Sを0.5L投入する代わりに、20mMのフェリシアン化カリウム(K
3Fe(CN)
6)溶液を0.5L投入したこと以外は、実施例1と同様にして微生物燃料電池を作製した。なお、比較例1では、上述のごとく、第2槽に汚泥が収容されていないため、第2槽における総汚泥量及び汚泥分解率の測定は行なっていない。
【0057】
図4(b)に示すように、約30日間における発生電流の平均値は1.67mAであった。なお、
図4(b)において、pHと記載の矢印は、第1槽(負極槽)における汚泥のpHの低下により、発生電流が著しく低下したため、第1槽(負極槽)に水酸化ナトリウム(NaOH)溶液を添加し、汚泥のpHが7近傍になるように調整した時点を示す。また、交換と記載の矢印は、第2槽(正極槽)内のフェリシアン化カリウム溶液を交換した時点を示す。
【0058】
図5(b)に示すように、30日経過後において、第1槽(負極槽)における汚泥分解率は48.2%であった。
【0059】
また、実施例1と同様にして、30日経過後における汚泥の分解量を求めた結果、第1槽(負極槽)における汚泥の分解量は3.5gであった。
【0060】
図4に示された結果から、実施例1は、比較例1と対比して、発生電流が比較的安定しており、汚泥のpHを調整する必要がないことが分かる。また、第2槽(正極槽)にも汚泥が投入され、フェリシアン化カリウム溶液が使用されていないため、当該溶液を交換する必要もない。従って、実施例1の微生物燃料電池は、比較例1の微生物燃料電池と対比して、作業性に優れることが分かる。
【0061】
図5及び
図6に示された結果から、実施例1は、比較例1と対比して、第1槽(負極槽)のみならず、第2槽(正極槽)においても汚泥を分解して減少させることができるため、一度に処理可能な汚泥の分解量が多いことが分かる。従って、実施例1の微生物燃料電池は、比較例1の微生物燃料電池と対比して、多くの量の汚泥を一度に分解処理できることが分かる。
【0062】
以上のことから、実施例1の微生物燃料電池は、比較例1の微生物燃料電池と対比して、作業性及び汚泥の分解処理性能に優れている。
【0063】
[その他の実施形態]
第1槽2及び第2槽3には、発生した二酸化炭素や水等を排出するための排気口や排気装置を設けてもよい。また、汚泥Sを投入するための投入口を設けてもよい。
【0064】
上記実施形態では、電極は、負極5及び正極6ともに1本ずつ用いているが、電極表面に付着する微生物を増やすことにより発生電流を増やすことができるため、複数本用いてもよい。例えば、負極5どうし又は正極6どうしを並列に接続した場合、電流を加算して高電流化が可能となる。また、負極5と正極6とを順次直列に接続して、複数台の微生物燃料電池1を直列接続することもできる。この場合、電圧を加算して高電圧化が可能となる。
【0065】
上記実施形態の微生物燃料電池1は、回分式(バッチ式)であるが、例えば、微生物により分解されて減少した分と同量の汚泥Sを第1槽2又は第2槽3に再度投入する連続式で構成することもできる。また、回分式と連続式とを組み合わせて構成してもよい(半回分式、半連続式)。
【0066】
上記実施形態では、第1槽2と第2槽3とはプロトン交換膜4を介して接続されているが、第1槽2内で発生したプロトンが第2槽3内に移動可能に構成されていればよい。より具体的には、プロトン交換膜4の代わりに、イオンが移動でき、かつ汚泥Sを負極5側と正極6側に分離できるもの、例えば、化学電池等に用いられる塩橋等を用いてもよい。この場合、例えば、
図1に示す下水処理場の沈殿槽を負極槽として沈殿槽内に負極5を配置し、浄化槽を正極槽として浄化槽内に正極6を配置し、負極5と正極6とを電気的に接続する。そして、負極槽と正極槽とを塩橋により接続することで、上記実施形態に係る汚泥分解処理方法を使用して、汚泥Sを分解して減少させることが可能となる。