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特開2020-89826有機溶媒混合液の分離方法及び有機溶媒混合液の分離装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-89826(P2020-89826A)
(43)【公開日】2020年6月11日
(54)【発明の名称】有機溶媒混合液の分離方法及び有機溶媒混合液の分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/02 20060101AFI20200515BHJP
   B01D 61/06 20060101ALI20200515BHJP
   B01D 61/08 20060101ALI20200515BHJP
   B01D 61/36 20060101ALI20200515BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20200515BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20200515BHJP
   C07C 15/04 20060101ALN20200515BHJP
   C07C 15/06 20060101ALN20200515BHJP
【FI】
   B01D61/02 500
   B01D61/06
   B01D61/08
   B01D61/36
   B01D61/58
   B01D71/02
   C07C15/04
   C07C15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-227841(P2018-227841)
(22)【出願日】2018年12月5日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム/有機溶剤の超ろ過膜法開発による化学品製造プロセス革新」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100196380
【弁理士】
【氏名又は名称】森 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】都留 稔了
(72)【発明者】
【氏名】金指 正言
(72)【発明者】
【氏名】長澤 寛規
【テーマコード(参考)】
4D006
4H006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA25
4D006JA66Z
4D006JA70Z
4D006KA14
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA54
4D006KA55
4D006KA56
4D006KA57
4D006KA72
4D006KB18
4D006KE07P
4D006KE07R
4D006MA06
4D006MB06
4D006MC03
4D006PA02
4D006PB20
4D006PB32
4D006PB68
4H006AA02
4H006AD19
4H006BC52
(57)【要約】
【課題】少ない消費エネルギーで、複数の有機溶媒を含む有機溶媒混合液から特定の有機溶媒を分離することができる有機溶媒混合液の分離方法及び有機溶媒混合液の分離装置を提供する。
【解決手段】有機溶媒の分離方法は、逆浸透法によって有機溶媒の混合液Msから所定の有機溶媒を分離濃縮する第1分離工程と、第1分離工程で分離濃縮された濃縮液Cs1から、浸透気化法によって所定の有機溶媒を分離濃縮する第2分離工程と、を含む。また、第1分離工程では、50〜1000barの操作圧力で所定の有機溶媒を分離濃縮する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透法によって有機溶媒混合液から所定の有機溶媒を分離濃縮する第1分離工程と、
前記第1分離工程で分離濃縮された有機溶媒混合液から、浸透気化法によって前記所定の有機溶媒を分離濃縮する第2分離工程と、を含み、
前記第1分離工程では、
50〜1000barの操作圧力で前記所定の有機溶媒を分離濃縮する、
ことを特徴とする有機溶媒混合液の分離方法。
【請求項2】
逆浸透法によって有機溶媒混合液から所定の有機溶媒を分離濃縮する第1分離工程と、
前記第1分離工程で分離濃縮された有機溶媒混合液から、蒸留法によって前記所定の有機溶媒を分離濃縮する第2分離工程と、を含み、
前記第1分離工程では、
50〜1000barの操作圧力で前記所定の有機溶媒を分離濃縮する、
ことを特徴とする有機溶媒混合液の分離方法。
【請求項3】
前記第1分離工程は、
セラミック基材上に形成された無機多孔膜を用いて分離濃縮する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機溶媒混合液の分離方法。
【請求項4】
前記第1分離工程は、
複数段の逆浸透分離工程を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の有機溶媒混合液の分離方法。
【請求項5】
前記第1分離工程では、
阻止される成分の阻止率90%以上100%以下の分離特性である高分離性膜による高分離処理と、
前記高分離処理の後段で、阻止される成分の阻止率30%以上90%以下の分離特性の低分離性膜による低分離処理と、を行う、
請求項4に記載の有機溶媒混合液の分離方法。
【請求項6】
前記第1分離工程では、
エネルギー回収処理を行う、
請求項1から5のいずれか一項に記載の有機溶媒混合液の分離方法。
【請求項7】
逆浸透法によって有機溶媒混合液から所定の有機溶媒を分離濃縮する第1分離手段と、
前記第1分離手段で分離濃縮された有機溶媒混合液から、浸透気化法によって前記所定の有機溶媒を分離濃縮する第2分離手段と、を備え、
前記第1分離手段は、
50〜1000barの操作圧力で前記所定の有機溶媒を分離濃縮する、
ことを特徴とする有機溶媒混合液の分離装置。
【請求項8】
逆浸透法によって有機溶媒混合液から所定の有機溶媒を分離濃縮する第1分離手段と、
前記第1分離手段で分離濃縮された有機溶媒混合液から、蒸留法によって前記所定の有機溶媒を分離濃縮する第2分離手段と、を備え、
前記第1分離手段は、
50〜1000barの操作圧力で前記所定の有機溶媒を分離濃縮する、
ことを特徴とする有機溶媒混合液の分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒混合液の分離方法及び有機溶媒混合液の分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶媒を含む溶液から有機溶媒を分離する方法として、蒸留法、浸透気化法等様々な方法が開発されている。例えば、特許文献1の分離方法では、複数の蒸留工程を組み合わせて、有機溶媒と不純物とを分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−99455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の分離方法では、蒸留法を用いて、有機溶媒と不純物とを分離する。しかしながら、蒸留法では、消費エネルギーが大きいため、環境負荷が大きい。また、共沸点を有する複数の有機溶媒を含む有機溶媒混合液から特定の有機溶媒を分離する場合、蒸留法により分離することは困難である。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、少ない消費エネルギーで、複数の有機溶媒を含む有機溶媒混合液から特定の有機溶媒を分離することができる有機溶媒混合液の分離方法及び有機溶媒混合液の分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の第1の観点に係る有機溶媒混合液の分離方法は、
逆浸透法によって有機溶媒混合液から所定の有機溶媒を分離濃縮する第1分離工程と、
前記第1分離工程で分離濃縮された有機溶媒混合液から、浸透気化法によって前記所定の有機溶媒を分離濃縮する第2分離工程と、を含み、
前記第1分離工程では、
50〜1000barの操作圧力で前記所定の有機溶媒を分離濃縮する。
【0007】
この発明の第2の観点に係る有機溶媒混合液の分離方法は、
逆浸透法によって有機溶媒混合液から所定の有機溶媒を分離濃縮する第1分離工程と、
前記第1分離工程で分離濃縮された有機溶媒混合液から、蒸留法によって前記所定の有機溶媒を分離濃縮する第2分離工程と、を含み、
前記第1分離工程では、
50〜1000barの操作圧力で前記所定の有機溶媒を分離濃縮する。
【0008】
また、前記第1分離工程は、
セラミック基材上に形成された無機多孔膜を用いて分離濃縮する、
こととしてもよい。
【0009】
また、前記第1分離工程は、
複数段の逆浸透分離工程を含む、
こととしてもよい。
【0010】
また、前記第1分離工程では、
阻止される成分の阻止率90%以上100%以下の分離特性である高分離性膜による高分離処理と、
前記高分離処理の後段で、阻止される成分の阻止率30%以上90%以下の分離特性の低分離性膜による低分離処理と、を行う、
こととしてもよい。
【0011】
また、前記第1分離工程では、
エネルギー回収処理を行う、
こととしてもよい。
【0012】
この発明の第3の観点に係る有機溶媒混合液の分離装置は、
逆浸透法によって有機溶媒混合液から所定の有機溶媒を分離濃縮する第1分離手段と、
前記第1分離手段で分離濃縮された有機溶媒混合液から、浸透気化法によって前記所定の有機溶媒を分離濃縮する第2分離手段と、を備え、
前記第1分離手段は、
50〜1000barの操作圧力で前記所定の有機溶媒を分離濃縮する。
【0013】
この発明の第4の観点に係る有機溶媒混合液の分離装置は、
逆浸透法によって有機溶媒混合液から所定の有機溶媒を分離濃縮する第1分離手段と、
前記第1分離手段で分離濃縮された有機溶媒混合液から、蒸留法によって前記所定の有機溶媒を分離濃縮する第2分離手段と、を備え、
前記第1分離手段は、
50〜1000barの操作圧力で前記所定の有機溶媒を分離濃縮する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の有機溶媒混合液の分離方法及び有機溶媒混合液の分離装置によれば、所定の操作圧力で行う逆浸透法と、浸透気化法又は蒸留法とを組み合わせて有機溶媒を分離するので、有機溶媒の分離に掛かるエネルギーを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係る分離装置の構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係るRO分離膜の構成を示す拡大断面図である。
図3】実施の形態1に係る有機溶媒の分離処理の流れを示すフローチャートである。
図4】実施の形態1に係るベンゼンとトルエンとの分離量の例を示す概念図である。
図5】蒸留法によるベンゼンとトルエンとの分離量の例を示す概念図である。
図6】本発明の実施の形態2に係る分離装置の構成を示す図である。
図7】第1分離工程での分離量と第2分離工程での分離量とを示す概念図である。
図8】第1分離工程での分離量と分離装置全体の消費エネルギーとの関係を示すグラフである。
図9】第2分離工程の非透過側から供給ポンプへの返送ラインを備える分離装置の構成を示す図である。
図10】第2分離工程の透過側から供給ポンプへの返送ラインを備える分離装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る有機溶媒混合液の分離方法及び有機溶媒混合液の分離装置について説明する。
【0017】
(実施の形態1)
本実施の形態に係る分離装置1は、複数の有機溶媒を含む有機溶媒混合液から所定の有機溶媒を分離する装置である。有機溶媒混合液は、アルコール、芳香族炭化水素、飽和炭化水素などの混合物であり、たとえばメタノールとベンゼン、ベンゼンとトルエン、トルエンとメチルシクロヘキサン、キシレン異性体等が挙げられる。本実施の形態では、有機溶媒混合液として、ベンゼン(Benzene)とトルエン(Toluene)との混合液Msから、トルエンを分離濃縮する分離装置1を例として説明する。
【0018】
図1に示すように、分離装置1は、逆浸透部11、供給ポンプ12、圧力制御部13、浸透気化部21、加熱器22、凝縮器23を備える。
【0019】
供給ポンプ12は、逆浸透部11へ混合液Msを流入させるポンプである。供給ポンプ12の流量を調整することにより、逆浸透部11の操作圧力が制御される。供給ポンプ12の構造は特に限定されないが、浸透圧の高い有機溶媒に対応するため、また、分離効率を高めるため、混合液Msを高圧で送出できることが好ましい。
【0020】
圧力制御部13は、逆浸透部11の圧力センサ112から受信したRO分離膜111に掛かる操作圧力が、設定された圧力範囲となるように、供給ポンプ12の流量を制御する。
【0021】
逆浸透部11は、第1分離手段であり、RO分離膜111、圧力センサ112を備える逆浸透装置である。逆浸透部11は、RO分離膜111を用いて流入した混合液Msから所定の有機溶媒を分離濃縮して濃縮液Cs1を生成し、加熱器22へ送出する。
【0022】
RO分離膜111は、逆浸透法による分離に対応可能な高耐圧の膜であり、耐有機溶媒性を有する。具体的には、RO分離膜111は、図2に示すように、支持層111a、中間層111b、分離層111cを有する多層構造の膜である。支持層111aは、多孔質の無機多孔体、有機多孔体のいずれでもよく、例えば、アルミナ(α−Al2O3(α−アルミナ)、γ−Al2O3(γ−アルミナ))、ムライト、ジルコニア、チタニア、或いはこれらの複合物からなるセラミックスなどである。本実施の形態に係る支持層111aの材質は、セラミックスであり、セラミック基材上に中間層111b及び分離層111cが形成される。RO分離膜111は、支持層111aを備えることにより、高い操作圧力での分離を行うことができる。
【0023】
分離層111cはゼオライト、シリカ、オルガノシリカなどのマイクロ孔を有する無機多孔膜であり、例えばオルガノシリカ膜である。オルガノシリカ膜は、膜形成時における細孔径の制御が比較的容易であるため、分離対象となる有機溶媒の透過性がよいRO分離膜111を製造することができる。また、オルガノシリカ膜は、耐有機溶媒性に優れているので、本実施の形態に係る有機溶媒混合液の分離に適している。
【0024】
圧力センサ112は、逆浸透部11に取り付けられたセンサであり、RO分離膜111に掛かる操作圧力を計測し、計測データを圧力制御部13へ送信する。
【0025】
加熱器22は、逆浸透部11から送出された濃縮液Cs1を加熱して、浸透気化部21へ送出する。加熱器22は、浸透気化部21において気化熱により冷却される濃縮液Cs1の熱を補う。
【0026】
浸透気化部21は、第2分離手段であり、PV分離膜211を備える浸透気化装置である。具体的には、PV分離膜211の下流側を減圧し、加熱器22から送出された濃縮液Cs1をPV分離膜211の透過側と非透過側とに分けることにより、所定の有機溶媒を分離濃縮する。
【0027】
凝縮器23は、PV分離膜211を透過した蒸気を冷却凝縮する。本実施の形態では、濃縮液Cs1から選択透過されたベンゼンが、凝縮器23で冷却凝縮される。
【0028】
続いて、本実施の形態に係る分離装置1を用いた有機溶媒混合液の分離方法について、図3のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0029】
本実施の形態では、有機溶媒混合液として、ベンゼンとトルエンとがモル比1:1で混合された混合液Msを用いる。分離装置1に供給された混合液Msは、供給ポンプ12によって加圧され、第1分離工程を行う逆浸透部11へ送出される(ステップS11)。
【0030】
逆浸透部11のRO分離膜111は、ベンゼン選択性であり、ベンゼンを透過させる。また、本実施の形態に係るRO分離膜111の特性は、細孔径0.65ナノメートル、トルエンの阻止率90%である。また、操作圧力は最大750barであり、膜面積は82mである。
【0031】
このRO分離膜111によって、逆浸透部11は、流入した混合液Msからトルエンを濃縮した濃縮液Cs1を、非透過側より送出する(ステップS12)。本実施の形態に係る濃縮液Cs1では、ベンゼン/トルエン=0.1/0.9程度のモル比で、トルエンが濃縮されている。
【0032】
また、逆浸透部11は、ベンゼンを選択濃縮した透過液Ts1を、透過側より送出する。送出される透過液Ts1は、ベンゼン/トルエン=0.95/0.05のモル比である。
【0033】
圧力センサ112は、第1分離工程の逆浸透部11での分離が行われている間、所定の間隔、例えば1分ごとに、RO分離膜111に掛かる操作圧力を計測して、圧力制御部13へ操作圧力を示すデータを送信する。圧力制御部13は、計測された操作圧力が、所定の圧力範囲内であるか否かを判定し、操作圧力が所定の圧力範囲内になるよう供給ポンプ12の出力を制御する。所定の圧力範囲は、50〜1000barであり、これにより、圧力制御部13は、分離効率を保持するとともに、RO分離膜111に掛かる圧力が過大とならないよう調整する。
【0034】
逆浸透部11は、単独のRO分離膜111によって混合液Msを分離する1段構成に限られず、複数のRO分離膜111を用いて、2段以上の分離を行うこととしてもよい。すなわち、複数段の逆浸透分離工程を行うこととしてもよい。これにより、それぞれのRO分離膜111に掛かる圧力を、低減することができる。
【0035】
逆浸透部11から送出された濃縮液Cs1は、加熱器22へ流入する。加熱器22は、流入した濃縮液Cs1を加熱する(ステップS13)。加熱器22で加熱された濃縮液Cs1は、第2分離工程を行う浸透気化部21へ送出される(ステップS14)。
【0036】
浸透気化部21は、流入した濃縮液Cs1を、PV分離膜211によって、さらに分離濃縮する。本実施の形態に係る浸透気化部21の特性は、操作温度100℃、透過性2kg/(mh)、分離係数α(Benzene/Toluene)=1000、膜面積20mである。
【0037】
PV分離膜211は、RO分離膜111と同様にベンゼン選択性の膜であり、濃縮液Cs1中に残留するベンゼンを透過させる。透過されたベンゼンを主とする透過液Ts2は、浸透気化部21から凝縮器23へと送られ、凝縮器23で凝縮される。透過液Ts2のモル比は、ベンゼン/トルエン=0.99/0.01である。
【0038】
また、浸透気化部21は、PV分離膜211の非透過液である濃縮液Cs2を非透過側から送出する(ステップS15)。濃縮液Cs2は、ベンゼン/トルエン=0.01/0.99程度のモル比であり、トルエンが濃縮分離される。
【0039】
図4は、本実施の形態でベンゼンとトルエンとの混合液Msからトルエンを分離濃縮した場合の一例を示す概念図である。この例では、図4に示すように、10kmol/hの混合液Msを処理する。この場合、逆浸透部11の消費エネルギーWROは、12.8MJ/h、浸透気化部21の消費エネルギーQPVは32.0MJ/hであり、分離装置1全体の消費エネルギーQtotalは、44.8MJ/hである。
【0040】
図5は、図4と同量の混合液Msを、蒸留法によって分離した場合の例を示す概念図である。蒸留塔の特性を表す各パラメータは、操作圧力=1bar、還流比R=3、理論段数=16段、原料供給段=上から9段目、段間隔=0.6m、塔高さ=10.6m、塔径=2.0mである。この場合の消費エネルギーQtotalは、1400MJ/hである。すなわち、本実施の形態に係る有機溶媒混合液の分離方法では、蒸留法による分離方法と比較して、消費エネルギーを約31分の1に低減することができる。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態に係る有機溶媒混合液の分離方法では、第1分離工程として逆浸透法によって所定の有機溶媒を分離濃縮した後に、第2分離工程として浸透気化法による分離濃縮を行うので、逆浸透法に必要な操作圧力を低減するとともに、分離濃縮に掛かるエネルギーを低減することが可能である。
【0042】
また、図5に示す蒸留法によってトルエンを分離濃縮する場合、装置体積は約66mとなる。一方、本実施の形態に係る逆浸透法と浸透気化法との組み合わせの装置体積は、約2.5mである。すなわち、本実施の形態に係る有機溶媒混合液の分離装置1は、蒸留法の場合と比較して小さな空間に設置することができる。
【0043】
本実施の形態では、第1分離工程の非透過側から送出される溶液である濃縮液Cs1を第2分離工程で、さらに分離濃縮することとしたが、これに限られない。例えば、第1分離工程の透過側から送出される溶液を第2分離工程で、さらに分離濃縮することとしてもよい。これにより、様々な有機溶媒を分離濃縮することができる。
【0044】
また、本実施の形態では、第1分離工程の逆浸透部11は、1段であることとしたが、これに限られない。例えば、逆浸透部11は、前段として高分離性膜による高分離処理を行い、高分離処理の後段で低分離性膜による低分離処理を行うこととしてもよい。また、この場合の高分離性膜は、阻止される成分の阻止率90%以上100%以下の分離特性であり、低分離性膜は、阻止される成分の阻止率30%以上90%以下、好ましくは50%以上80%以下の分離特性である。これにより、それぞれのRO分離膜111に掛かる操作圧力を低減することができる。
【0045】
また、第1分離工程では、エネルギー回収処理を行うこととしてもよい。例えば、第1分離工程の透過液Ts1の排出圧力によって、逆浸透部11に供給される混合液Msを昇圧する圧力変換型エネルギー回収装置を用いてエネルギー回収処理を行う。これにより、供給ポンプ12の消費エネルギーを低減することができるので、分離装置1全体の消費エネルギーを低減することが可能である。
【0046】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2に係る有機溶媒混合液の分離方法について説明する。本実施の形態では、図6に示すように、第2分離工程に係る分離方法が蒸留法であり、分離装置2が蒸留部31を備える点で、上記実施の形態1と異なる。その他の構成は上記実施の形態1と同様であるので同じ符号を付す。
【0047】
蒸留部31は、逆浸透部11から流入した濃縮液Cs1を分離濃縮する蒸留装置である。
【0048】
図7は、ベンゼン/トルエン=1:1のモル比である混合液Msから、第1分離手段としての逆浸透部11で、ベンゼンをxモル回収する第1分離工程と、第2分離手段としての蒸留部31で、ベンゼンを(1−x)モル分離する第2分離工程とを表す概念図である。また、図8は、図7の場合のxと消費エネルギーとの関係を表したグラフである。図8には、比較のため、実施の形態1の構成、すなわち第2分離工程を浸透気化法とした場合の消費エネルギーも示している。
【0049】
ここで、例えば、図7に示すベンゼンの回収率xを0.9とした場合の蒸留部31の構成は、操作圧力=1bar、還流比R=15、理論段数=16段、原料供給段=上から10段目、段間隔=0.6m、塔高さ=10.6m、塔径=0.5mである。
【0050】
図8に示すように、全てを蒸留法によって分離した場合、すなわちx=0の場合、消費エネルギーは、280kJ/molである。
【0051】
また、第1分離工程の逆浸透法でx=0.9までトルエンを分離濃縮し、第2分離工程を蒸留法とした場合の消費エネルギーは、28.1kJ/molであり、全てを蒸留法で処理した場合の約10%である。実施の形態1のように第2分離工程を浸透気化法とした場合の消費エネルギーは、9.0kJ/molであり、全てを蒸留法で処理した場合の約3.2%である。
【0052】
上記のように第1分離工程の逆浸透法でx=0.9までトルエンを分離濃縮する場合の最大の操作圧力は725barである。
【0053】
また、第1分離工程の逆浸透法でx=0.8までトルエンを分離濃縮し、第2分離工程を蒸留法とした場合の消費エネルギーは、55.9kJ/molであり、全てを蒸留法で処理した場合の約20%である。実施の形態1のように第2分離工程を浸透気化法とした場合の消費エネルギーは、15.5kJ/molであり、全てを蒸留法で処理した場合の約5.5%である。
【0054】
上記のように第1分離工程の逆浸透法でx=0.8までトルエンを分離濃縮する場合の最大の操作圧力は705barである。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態に係る有機溶媒混合液の分離方法では、第1分離工程として逆浸透法によって有機溶媒を分離濃縮した後に、第2分離工程として蒸留法による分離濃縮を行う。これにより、第1分離工程の逆浸透法に掛かる操作圧力を低減するとともに、分離濃縮に掛かるエネルギーを低減することが可能である。
【0056】
上記実施の形態1では、第2分離工程のPV分離膜211は、ベンゼン選択性の膜であり、分離の目的となるトルエンが非透過側から濃縮液Cs2として排出され、透過側からベンゼンが透過液Ts2として排出されることとしたが、これに限られない。例えば、PV分離膜211として逆選択膜を用いて、透過側からトルエンを排出することとしてもよい。
【0057】
またこの場合、図9に示すように、トルエンが選択分離された後の濃縮液Cs2は、返送ライン35を介して供給ポンプ12に送られることとしてもよい。これにより第1分離工程での浸透圧が下がり,操作圧力を低下させることができる。
【0058】
上記実施の形態1のように、第2分離工程のPV分離膜211はベンゼン選択性の膜であり、分離の目的となるトルエンが非透過側から濃縮液Cs2として排出される場合、透過液Ts2を供給ポンプ12へ返送してもよい。具体的には、図10に示すように、第2分離工程で分離濃縮された、目的の有機溶媒以外の溶液、すなわち上記各実施の形態におけるベンゼンを、返送ライン36を介して供給ポンプ12に送ることとしてもよい。これにより、濃縮ベンゼン及び濃縮トルエンの回収率を高めることができる。また、返送ライン35又は返送ライン36によるベンゼンの返送とともに、第1分離工程の透過液Ts1を供給ポンプ12へ返送することとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、複数の有機溶媒が混合された溶液から、所定の有機溶媒を分離濃縮する場合の分離方法に好適である。特に、省エネルギーが求められる有機溶媒の分離装置に好適である。
【符号の説明】
【0060】
1,2 分離装置、11 逆浸透部、111 RO分離膜、112 圧力センサ、12 供給ポンプ、13 圧力制御部、21 浸透気化部、211 PV分離膜、22 加熱器、23 凝縮器、31 蒸留部、35,36 返送ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10