ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬が、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ラシジピン、ニルバジピン、バルニジピン、レルカニジピン、シルニジピン、ベニジピン、クレビジピン、エホニジピン、アゼルニジピン、レミルジピン、バタニジピン、ダロジピン、フロルジピン、テルジピン、レバムロジピン、およびキレニジピン、並びにその医薬上許容される塩、溶媒和物またはエステルから選択される、請求項13に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特に具体的な定めのない限り、本明細書で使用される用語は、有機化学、医学、薬学、分子生物学、微生物学等の分野における当業者に一般に理解されるとおりの意味を有する。以下にいくつかの本明細書で使用される用語についての定義を記載するが、これらの定義は、本明細書において、一般的な理解に優先する。
【0010】
肝内胆管癌は、肝臓内の胆管に発生する悪性腫瘍である。本開示では、肝内胆管癌の処置において、化学療法薬とカルシウム拮抗薬とを併用する。肝内胆管癌の処置において化学療法薬とカルシウム拮抗薬とを併用するとは、肝内胆管癌の処置を目的として、化学療法薬とカルシウム拮抗薬とを同一の対象に投与することを意味する。
【0011】
化学療法薬には、代謝拮抗薬、アルキル化薬、抗がん性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害薬、微小管阻害薬、白金製剤、分子標的薬が含まれる。
【0012】
ある実施形態において、化学療法薬は、代謝拮抗薬である。代謝拮抗薬としては、限定されないが、例えば、フルオロウラシル(本明細書中、5-フルオロウラシルまたは5-FUとも記載する)またはそのプロドラッグ(例えば、テガフール、ドキシフルリジン、カルモフール、およびカペシタビン)、ゲムシタビン(本明細書中、GEMとも記載する)、フルダラビン、クロファラビン、ネララビン、シタラビン、エノシタビン、メトトレキサート、プララトレキサート、ペメトレキセド、メルカプトプリン、クラドリビン、およびペントスタチン、並びにその医薬上許容される塩、溶媒和物またはエステルが挙げられる。ある実施形態において、代謝拮抗薬は、ゲムシタビンおよびフルオロウラシルまたはそのプロドラッグ、並びにその医薬上許容される塩、溶媒和物またはエステルから選択される。
【0013】
化学療法薬は、これと他の有効成分とを含む配合剤に含まれていてもよい。例えば、テガフールを含む配合剤として、テガフール・ウラシル(ユーエフティ(登録商標))およびテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(ティーエスワン(登録商標)、本明細書中、TS-1とも記載する)が挙げられる。
【0014】
別の実施形態において、化学療法薬は、白金製剤である。白金製剤としては、シスプラチン(本明細書中、CDDPとも記載する)、カルボプラチン、オキサリプラチンが挙げられる。ある実施形態において、白金製剤は、シスプラチンである。
【0015】
本開示の肝内胆管癌の処置においては、2種以上の化学療法薬を用いてもよい。ある実施形態において、2種以上の化学療法薬は、代謝拮抗薬と白金製剤とを含む。さらなる実施形態において、2種以上の化学療法薬は、ゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩およびフルオロウラシルまたはそのプロドラッグを含む。さらなる実施形態において、2種以上の化学療法薬は、ゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩、フルオロウラシルまたはそのプロドラッグ、およびシスプラチンを含む。
【0016】
カルシウム拮抗薬には、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬、ベンゾチアゼピン系カルシウム拮抗薬、フェニルアルキルアミン系カルシウム拮抗薬が含まれる。ある実施形態において、カルシウム拮抗薬は、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬である。ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬としては、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ラシジピン、ニルバジピン、バルニジピン、レルカニジピン、シルニジピン、ベニジピン、クレビジピン、エホニジピン、アゼルニジピン、レミルジピン、バタニジピン、ダロジピン、フロルジピン、テルジピン、レバムロジピン、およびキレニジピン、並びにその医薬上許容される塩、溶媒和物またはエステルが挙げられる。ある実施形態において、カルシウム拮抗薬は、アムロジピンまたはその医薬上許容される塩である。本開示においては、1種以上のカルシウム拮抗薬を用いてもよい。
【0017】
医薬上許容される塩としては、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、または硫酸)との塩;有機酸(例えば、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸またはナフタレンジスルホン酸)との塩;アルカリ土類金属塩(例えばカルシウムまたはマグネシウム塩);アンモニアまたは有機アミン(例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、ジヒドロアビエチルアミンまたはメチルピペリジン)から誘導されるアンモニウム塩などが挙げられる。医薬上許容される溶媒和物としては、水(すなわち、水和物)、エタノールなどの溶媒との溶媒和物が挙げられる。医薬上許容されるエステルとしては、脂肪族カルボン酸とのエステル(例えば、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、ブチル酸エステル)およびリン酸エステルが挙げられる。
【0018】
例えば、ゲムシタビンの医薬上許容される塩としては、ゲムシタビン塩酸塩が挙げられる。アムロジピンの医薬上許容される塩としては、アムロジピンベシル酸塩が挙げられる。
【0019】
化学療法薬およびカルシウム拮抗薬は、肝内胆管癌の処置において、腫瘍の消失、縮小、または増大抑制もしくは再発防止などの、所望の効果を発揮しうる量(本明細書中、「有効量」という)および投与スケジュールで投与される。投与量および投与スケジュールは、対象の年齢、体重、症状、併用薬などに基づき決定される。当業者は、所定の対象の投与量および投与スケジュールを適宜決定することができる。
【0020】
化学療法薬の投与量および投与スケジュールは、肝内胆管癌の治療に通常用いられる量およびスケジュールでありうる。例えば、ゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩は、ゲムシタビンとして700 mg/m
2(体表面積)〜1250 mg/m
2(体表面積)(例えば、700、1000、または1250 mg/m
2(体表面積))が、1週間または数週間(例えば、2または3週間)の間隔をあけて投与されうる。テガフールは、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムの場合、テガフールとして60〜120 mg/日、80〜120 mg/日または60〜100 mg/日が、連日または数日(例えば、2または3日)毎に投与されうる。シスプラチンは、ゲムシタビンと併用される場合、25 mg/m
2(体表面積)が、1週間または数週間(例えば、2または3週間)の間隔をあけて投与されうる。
【0021】
カルシウム拮抗薬の投与量および投与スケジュールは、高血圧の治療に通常用いられる量およびスケジュールでありうる。ある実施形態において、カルシウム拮抗薬は、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬であり、1〜50 mg/日、2〜50 mg/日、2〜30 mg/日、2〜20 mg/日で投与される。ある実施形態において、カルシウム拮抗薬は、アムロジピンまたはその医薬上許容される塩であり、アムロジピンとして、1〜50 mg/日、2〜50 mg/日、2〜30 mg/日、2〜20 mg/日、または2.5〜10 mg/日で、投与される。1日量は、1回で投与してもよく、数回、例えば2、3、または4回に分けて投与してもよい。投与は、連日または数日(例えば、1、2、または3日)毎でありうる。
【0022】
化学療法薬とカルシウム拮抗薬の投与期間は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、化学療法薬とカルシウム拮抗薬とを同じ期間に投与してもよく、その前後にいずれか一方を投与する期間があってもよく、あるいは、化学療法薬の投与期間の前または後にカルシウム拮抗薬を投与してもよい。
【0023】
投与方法は、有効成分や対象の状態などに応じて適宜選択される。投与方法としては、例えば、経口投与および静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下投与などの非経口投与が挙げられる。
【0024】
化学療法薬とカルシウム拮抗薬とは、単一の組成物に含まれていても、別の組成物に含まれていてもよい。有効成分が単一の組成物に含まれる場合、その配合比は有効成分に応じて適宜選択される。医薬組成物は、キットとして提供されてもよい。例えば、キットは、化学療法薬を含む医薬組成物とカルシウム拮抗薬を含む医薬組成物とを含む。医薬組成物およびキットは、化学療法薬とカルシウム拮抗薬との併用における用法・用量等を記載した添付文書、包装容器、取扱説明書等とともに提供されうる。
【0025】
医薬組成物は、常法により製剤化することができる。医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤、注射剤などの剤形でありうる。剤形に応じて、医薬組成物は、有効成分に加えて、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、安定化剤、緩衝化剤、界面活性剤、防腐剤、甘味剤などの医薬上許容される添加剤、および/または水、生理食塩水、油、アルコールなどの医薬上許容される媒体を含んでもよい。
【0026】
対象は、外科治療、放射線治療などの他の肝内胆管癌に対する処置を受けていても、受けていなくてもよい。例えば、本開示の肝内胆管癌の処置は、切除不能肝内胆管癌の処置、癌組織の切除後の再発防止のための処置、再発また転移後の肝内胆管癌の処置でありうる。ある実施形態において、化学療法薬とカルシウム拮抗薬とは、癌組織の切除後に(術後補助化学療法において)に用いられる。
【0027】
本開示の例示的実施形態を以下に記載する。
[1]
肝内胆管癌を処置するための、化学療法薬および/またはカルシウム拮抗薬を含む医薬組成物であって、
化学療法薬を含み、カルシウム拮抗薬と併用される;
カルシウム拮抗薬を含み、化学療法薬と併用される;または
化学療法薬およびカルシウム拮抗薬を含む、
医薬組成物。
[2]
化学療法薬を含み、カルシウム拮抗薬と併用される、前記1に記載の医薬組成物。
[3]
カルシウム拮抗薬を含み、化学療法薬と併用される、前記1に記載の医薬組成物。
[4]
化学療法薬およびカルシウム拮抗薬を含む、前記1に記載の医薬組成物。
[5]
化学療法薬が、代謝拮抗薬である、前記1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
[6]
代謝拮抗薬が、ゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩である、前記5に記載の医薬組成物。
[7]
さらに、少なくとも1種の化学療法薬と併用されるか、少なくとも1種の化学療法薬を含む、前記6に記載の医薬組成物。
[8]
少なくとも1種の化学療法薬が、フルオロウラシルまたはそのプロドラッグを含む、前記7に記載の医薬組成物。
[9]
少なくとも1種の化学療法薬が、シスプラチンを含む、前記7または8に記載の医薬組成物。
[10]
少なくとも1種の化学療法薬が、フルオロウラシルまたはそのプロドラッグおよびシスプラチンを含む、前記7〜9のいずれかに記載の医薬組成物。
[11]
代謝拮抗薬が、フルオロウラシルまたはそのプロドラッグである、前記5に記載の医薬組成物。
[12]
さらに、少なくとも1種の化学療法薬と併用されるか、少なくとも1種の化学療法薬を含む、前記11に記載の医薬組成物。
[13]
少なくとも1種の化学療法薬が、ゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩を含む、前記12に記載の医薬組成物。
[14]
少なくとも1種の化学療法薬が、シスプラチンを含む、前記12または13に記載の医薬組成物。
[15]
少なくとも1種の化学療法薬が、ゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩およびシスプラチンを含む、前記12〜14のいずれかに記載の医薬組成物。
[16]
化学療法薬が、白金製剤である、前記1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
[17]
白金製剤が、シスプラチンである、前記16に記載の医薬組成物。
[18]
さらに、少なくとも1種の化学療法薬と併用されるか、少なくとも1種の化学療法薬を含む、前記17に記載の医薬組成物。
[19]
少なくとも1種の化学療法薬が、ゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩を含む、前記18に記載の医薬組成物。
[20]
少なくとも1種の化学療法薬が、フルオロウラシルまたはそのプロドラッグを含む、前記18または19に記載の医薬組成物。
[21]
少なくとも1種の化学療法薬が、ゲムシタビンまたはその医薬上許容される塩およびフルオロウラシルまたはそのプロドラッグを含む、前記18〜20のいずれかに記載の医薬組成物。
[22]
フルオロウラシルのプロドラッグが、テガフール、ドキシフルリジン、カルモフール、およびカペシタビンから選択される、前記8〜21に記載の医薬組成物。
[23]
フルオロウラシルのプロドラッグが、テガフールである、前記22に記載の医薬組成物。
[24]
カルシウム拮抗薬が、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬である、前記1〜23のいずれかに記載の医薬組成物。
[25]
ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬が、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ラシジピン、ニルバジピン、バルニジピン、レルカニジピン、シルニジピン、ベニジピン、クレビジピン、エホニジピン、アゼルニジピン、レミルジピン、バタニジピン、ダロジピン、フロルジピン、テルジピン、レバムロジピン、およびキレニジピン、並びにその医薬上許容される塩、溶媒和物またはエステルから選択される、前記24に記載の医薬組成物。
[26]
ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬が、アムロジピンまたはその医薬上許容される塩である、前記25に記載の医薬組成物。
[27]
カルシウム拮抗薬が、1〜50 mg/日で投与される、前記1〜26のいずれかに記載の医薬組成物。
【0028】
[28]
肝内胆管癌を処置する方法であって、処置を必要する対象に、有効量の化学療法薬および有効量のカルシウム拮抗薬を投与することを含む方法。
[29]
化学療法薬とカルシウム拮抗薬とが別の組成物に含まれる、前記28に記載の方法。
[30]
化学療法薬とカルシウム拮抗薬とが同じ組成物に含まれる、前記28に記載の方法。
[31]
さらに、少なくとも1種の化学療法薬を対象に投与することを含む、前記28〜30のいずれかに記載の方法。
【実施例】
【0029】
2005年1月から2017年9月までに肝切除または生検により肝内胆管癌の病理診断が得られた93例を対象とし、背景因子と治療成績を検討した。切除可能な肝内胆管癌に対しては肝切除を行い、その一部に術後補助化学療法を行った。術後補助化学療法には、ゲムシタビン(GEM)およびテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)(本明細書中、GEM+TS-1と記載する)を用いた。切除不能肝内胆管癌に対しては、肝外転移合併例に、GEMおよびシスプラチン(CDDP)(本明細書中、GEM+CDDPと記載する)もしくはGEM+TS-1による全身化学療法を行い(24症例)、肝外転移非合併例に、GEMの全身化学療法と5-フルオロウラシル(5-FU)およびCDDPの肝動注化学療法(Hepatic Arterial Infusion Chemotherapy, HAIC)(本明細書中、GEM+HAIC (5-FU+CDDP)と記載する)を行った(7症例)。
【0030】
術後補助化学療法では、GEM 700 mg/m
2をday1に、TS-1 60-100 mg/bodyをday1-7に投与し、その後1週間休薬する2週1クールのレジメンを10クール施行した。全身化学療法では、GEM 1000 mg/m
2とCDDP 25 mg/m
2をday1およびday8に投与し、その後4週休薬する6週1クールのレジメン、または、GEM 1000 mg/m
2をday1に、TS-1 60-120 mg/bodyをday1-14投与し、その後4週休薬する6週1クールのレジメンを施行した。肝外転移非合併例には、GEM 1000 mg/m
2をday1に全身投与し、CDDP 25g/m
2をday1およびday8に、併せて5-FU 330 mg/m
2/dayをday1-5およびday8-12に投与する肝動注化学療法を施行し、その後4週間休薬する6週1クールのレジメンを施行した。
【0031】
背景因子として、男性57例、女性36例、年齢中央値68歳、HBs抗原陽性5例、HCV抗体陽性15例であった。生活習慣病は、糖尿病29例、高血圧症38例、高脂血症20例であった。腫瘍因子は、主腫瘍径中央値50 mm、肝内多発32例、Stage I 6例、Stage II 36例、Stage III 12例、Stage IVa 10例、Stage IVb 29例であった。
【0032】
治療別の成績では、手術症例(48例)の生存中央値(MST)は52か月、非切除症例のうちGEM+CDDP(10例)のMSTは18か月、GEM+TS-1(14例)のMSTは5か月、GEM+HAIC (5-FU+CDDP)(7例)のMSTは19か月であった。
【0033】
表1に、治療開始時の背景因子および腫瘍因子の、単変量解析および多変量解析の結果を示す。単変量解析はlogrank検定、多変量解析はCox比例ハザード回帰分析により解析を行った。生存に寄与する因子として、多変量解析により、遠隔転移(HR 4.74 95%CI 2.26-9.94 p<0.001)、主腫瘍径>50mm(HR 1.82 95%CI 1.03-3.21 p=0.03)、肝内多発(HR 3.27 95%CI 1.78-6.02 p<0.001)、カルシウム拮抗薬内服(HR 0.29 95%CI 0.14-0.56 p=0.0003)が抽出された。なお、カルシウム拮抗薬内服群は、原則として治療開始後もカルシウム拮抗薬の内服を継続していたが、医師の判断により内服を中止した症例もあった。
【表1】
【0034】
カルシウム拮抗薬内服の有無別に、背景因子と腫瘍因子を比較した(表2)。名義変数はFisherの正確検定、連続変数はMann-Whitney U検定により解析を行なった。カルシウム拮抗薬内服群において、年齢が有意に高かった(70 vs 64 p=0.0006)が、その他の背景因子および腫瘍因子は両群で差を認めなかった。
【表2】
【0035】
手術症例(48症例)のうち、カルシウム拮抗薬を内服していたのは18症例であり、そのうち術後補助化学療法を受けたのは8症例であった。8症例のカルシウム拮抗薬および術後補助化学療法の詳細を表3示す。
【表3】
【0036】
非切除症例(45症例)のうち、カルシウム拮抗薬を内服していたのは9症例であり、そのうち化学療法を受けたのは以下の6症例であった。6症例のカルシウム拮抗薬および化学療法の詳細を表4示す。
【表4】
【0037】
化学療法とカルシウム拮抗薬の併用の効果を調べるため、ログランク検定により全生存期間(Overall Survival; OS)の比較を行った。
図1〜5に症例に対する処置の内訳を示し、表5に解析1〜10の内容を示す。
【表5】
【0038】
解析1
降圧薬からカルシウム拮抗薬を選び、全症例において、カルシウム拮抗薬の内服群および非内服群のOSを比較した。カルシウム拮抗薬内服群では、有意なOSの改善が認められた(表6、
図6)。
【表6】
【0039】
解析2
降圧薬からACE阻害薬およびARBを選び、全症例において、ACE阻害薬またはARBの内服群および非内服群のOSを比較した。ACE阻害薬またはARB内服群では、OSの改善は認められなかった(表7、
図7)。
【表7】
【0040】
解析3
手術症例において、カルシウム拮抗薬を内服しており、かつ術後補助化学療法を受けた群と、それ以外の症例の群のOSを比較した。カルシウム拮抗薬内服と術後補助化学療法とを併用した群では、有意なOSの改善が認められた(表8、
図8)。
【表8】
【0041】
解析4
術後補助化学療法を受けた症例において、カルシウム拮抗薬内服群と非内服群のOSを比較した。カルシウム拮抗薬内服群では、有意なOSの改善が認められた(表9、
図9)。
【表9】
【0042】
解析5
術後補助化学療法を受けた症例において、アムロジピン内服群と非内服群のOSを比較した。症例数が少なく、有意差はないが、アムロジピン内服群のOSが延長されている傾向が認められた(表10、
図10)。
【表10】
【0043】
解析6
化学療法を受けた非切除症例において、カルシウム拮抗薬内服群と非内服群のOSを比較した。カルシウム拮抗薬を内服群では、有意なOSの改善が認められた(表11、
図11)。
【表11】
【0044】
解析7
GEM+TS-1を受けた非切除症例において、カルシウム拮抗薬内服群と非内服群のOSを比較した。症例数が少なく、有意差はないが、カルシウム拮抗薬内服群のOSが延長されている傾向が認められた(表12、
図12)。
【表12】
【0045】
解析8
GEM+HAIC (5-FU+CDDP)を受けた非切除症例において、カルシウム拮抗薬内服群と非内服群のOSを比較した。症例数が少なく、有意差はないが、カルシウム拮抗薬内服群のOSが延長されている傾向が認められた(表13、
図13)。
【表13】
【0046】
解析9
化学療法を受けた非切除症例において、アムロジピン内服群と非内服群のOSを比較した。アムロジピン内服群では、有意なOSの改善が認められた(表14、
図14)。
【表14】
【0047】
解析10
GEM+TS-1を受けた非切除症例において、アムロジピン内服群と非内服群のOSを比較した。症例数が少なく、有意差はないが、アムロジピン内服群のOSが延長されている傾向が認められた(表15、
図15)。
【表15】
【0048】
以上の解析から、肝内胆管癌患者において、カルシウム拮抗薬内服群は非内服群よりも予後が良好であること、また、手術症例においても、非切除症例においても、カルシウム拮抗薬の内服により化学療法の効果が改善していることがわかった。