【実施例】
【0070】
(評価方法)
実施例および比較例においては、作製した磁歪発電デバイスの検出用コイルに誘起される交流電圧をデジタルオシロスコープで取り込み、電圧を測定した。測定した電圧波形のピーク電圧によって、磁歪発電デバイスの性能を評価した。
【0071】
(実施例1)
実施例1において、方向性電磁鋼板及び無方向性電磁鋼板をそれぞれ電磁鋼板121(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるCFRPを弾性材料122として用いて、
図1に示した構造を有する磁歪発電デバイス100を作製した。
【0072】
方向性電磁鋼板として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}[100]GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を[100]方向とし、長さ140mm、幅6mmにシャーリング切断した。それを
図1に示したようなU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部170に相当する長さは約80mm、上側の検出用コイル160、錘140をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、方向性電磁鋼板をU字型に曲げた後、歪みを除去するために、800℃、2時間、真空中で焼鈍した。
【0073】
無方向性電磁鋼板として、日本製鉄(株)の無方向性電磁鋼板35H210、被膜付き、を使用した。厚みは0.35mmだった。無方向性電磁鋼板を長さ140mm、幅6mmにシャーリング切断した。それを
図1に示したようにU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部120に相当する長さは約80mm、上側の検出用コイル160、錘140をつける部位の長さは約40mmである。
尚、無方向性電磁鋼板をU字型に曲げた後、歪を除去するために740℃、2時間、真空中で焼鈍した。
【0074】
弾性材料122としては、非磁性材料であるCFRP、厚み0.5mm、幅6mmを用いた。カーボン繊維の方向を長手方向として、U字型の電磁鋼板と一体化できるように長さを140mmよりも少し長めに切断し、熱プレスでU字形状に整えた。
【0075】
U字型に曲げた方向性または無方向性の電磁鋼板121と、U字型に曲げたCFRP(弾性材料122)とをエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて積層体120とし、磁歪素子110に相当する磁歪素子部とフレーム130全体(即ち、100%)との一体構成体を得た。得られた一体構成体の磁歪素子に対応する部位に5000ターンの検出用コイル160を装填してた。コイルの長さは15mmだった。次に、7gのタングステンの錘140を磁歪素子110のとなりに接着固定した。さらにU字形状の下側の固定部170の電磁鋼板121側にNdFeB磁石150を貼り付けて、フレーム130の全体が磁歪素子110と一体構成である磁歪発電デバイス100を得た。
【0076】
得られた磁歪発電デバイスのU字形状の下側の固定部170を接着剤で加振機の上に固定した。次に、バイアス磁場をNdFeB磁石150によって印加した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えてピーク電圧が最大になった時の磁石を使った。磁歪素子に印加される磁場の強さは、方向性電磁鋼板では約2800A/m(350e)、無方向性電磁鋼板では約3200A/m(400e)と推定した。加振機を0.5Gで加振させて、共振周波数におけるピーク電圧をオシロスコープで測定した。
【0077】
磁歪材料として方向性電磁鋼板を使用したデバイスの共振周波数は215Hz、無方向性電磁鋼板を使用したデバイスの共振周波数は227Hzであった。ピーク電圧は表1に示した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
【0080】
(実施例2)
実施例2において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板221(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるCFRPを弾性材料222として用いて、
図2に示した構造を有する磁歪発電デバイス200を作製した。
【0081】
磁歪素子210に相当する磁歪素子部について、弾性材料であるCFRPの厚みを0.3mmと薄くし、磁歪素子部以外のCFRPの厚みを0.5mmとする以外は、実施例1と同様に磁歪発電デバイスを組み立て、フレーム230の全体(即ち、100%)が磁歪素子210と一体構成である磁歪発電デバイス200を得た。本デバイスにおいては、応力制御部212の厚みを薄くすることで、磁歪素子部の振動をより生じ易くした。
【0082】
実施例1と同様に磁歪発電デバイス200を評価したところ、共振周波数は155Hzであった。ピーク電圧は表2に示した。
【0083】
【表2】
【0084】
表2の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。また、実施例1と比べて応力制御部212の厚みを薄くした分、共振周波数は低下したが、磁歪素子部の振幅が大きくなって発生電圧のピーク値は向上した。
【0085】
(実施例3)
実施例3において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板321(磁歪材料)として用い、磁性材料であるSUS304を弾性材料322として用いて、
図3に示した構造を有する磁歪発電デバイス300を作製した。
【0086】
電磁鋼板321として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}[100]GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を[100]方向とし、長さ100mm、幅6mmにシャーリング切断した。それを
図3に示したようにU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部370に相当する長さは約40mm、上側の検出用コイル360、錘340をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、方向性電磁鋼板をU字型に曲げた後、歪を除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍した。
【0087】
弾性材料322として、非磁性材料であるSUS304、厚み0.5mm、幅6mmを用いた。U字型の電磁鋼板と一体化できるように長さを140mmよりも少し長めに切断し、U字形状に成型して形状を整えた。
尚、U字状に成型したSUS304を真空中で1050℃、1分間保持後をガス急冷よる溶体化処理を行って、切断歪による影響を取り除いた。
【0088】
U字型に曲げた方向性電磁鋼板321と、U字型に曲げたSUS304(弾性材料322)をエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて積層体320とし、フレームの一部(100mm/140mm=約71%)が上記積層体で構成され、磁歪素子310の応力制御部312から延びた弾性材料322とフレーム330の全体とが一体構成である、一体構成体を得た。得られた一体構成体を使用し、実施例1と同様に磁歪発電デバイス300を作製した。
【0089】
実施例1と同様に磁歪発電デバイス300を評価したところ、共振周波数は98Hzであった。ピーク電圧は表3に示した。
【0090】
【表3】
【0091】
表3の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した
【0092】
(実施例4)
実施例4において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板421(磁歪材料)として用い、磁性材料であるSS400を弾性材料422として用いて、
図4に示した構造を有する磁歪発電デバイス400を作製した。
【0093】
電磁鋼板421としては、実施例3と同じ方向性電磁鋼板を使用し、U字形状に整えた。
【0094】
弾性材料422としては、磁性材料であるSS400、厚み0.5mm、幅6mmを用いた。U字型の電磁鋼板と一体化できるように長さを140mmよりも少し長めに切断し、U字形状に成型して形状を整えた。
尚、U字状に成型したSS400を真空中で800℃、30分保持後炉冷して、切断歪による影響を取り除いた。
【0095】
U字型に曲げた方向性電磁鋼板とU字型に曲げたSS400をエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて積層体420とし、フレームの一部(100mm/140mm=約71%)が上記積層体で構成され、磁歪素子410の応力制御部412から延びた弾性材料422とフレーム430の全体とが一体構成である、一体構成体を得た。得られた一体構成体を使用し、実施例1と同様に磁歪発電デバイス400を作製した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えてピーク電圧が最大になった時の磁石を使った。磁歪素子に印加される磁場の強さは約4000A/m(500e)と推定した。
【0096】
実施例1と同様に磁歪発電デバイス400を評価したところ、共振周波数は104Hzであった。ピーク電圧は表4に示した。
【0097】
【表4】
【0098】
表4の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。ただし、応力制御部412を形成する弾性材料が磁性材料(SS400)であるこのデバイスでは、バイアス磁場が応力制御部412にも流れる。そのため、実施例3よりも大きくて強い磁石を使用したが、応力制御部312を形成する弾性材料322が非磁性材料である実施例3と比べて、バイアス磁場の調整が容易ではなく、結果的に実施例3と比べてピーク電圧は若干低下した。
【0099】
(実施例5)
実施例5において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板521(磁歪材料)として用い、磁性材料であるSUS304を弾性材料522として用いて、
図5に示した構造を有する磁歪発電デバイス500を作製した。
【0100】
電磁鋼板の長さを70mmにし、磁石を発電用磁歪素子510の両側に配置したこと以外は、実施例3と同様に磁歪発電デバイス500を作製した。作製したデバイスのフレームの一部(70mm/140mm=50%)が積層体で構成され、フレームの残りの部分は、磁歪素子510の応力制御部512から延びた弾性材料522と一体構成であった。尚、磁石を2つ使用し、磁歪素子内で磁場が打ち消し合わないように、二つの磁石の極性が反対となるように貼り付けた。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えてピーク電圧が最大になった時の磁石を使った。磁歪素子に印加される磁場の強さは約2800A/m(350e)と推定した。
【0101】
実施例1と同様に磁歪発電デバイス500を評価したところ、共振周波数は108Hzであった。ピーク電圧は表5に示した。
【0102】
【表5】
【0103】
表5の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
【0104】
(実施例6)
実施例1において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板621(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるCFRPを弾性材料622として用いて、
図6に示した構造を有する磁歪発電デバイス600を作製した。
【0105】
実施例1と同じ方向性電磁鋼板およびCFRPをそれぞれ長さ80mmに切断し、U字型には曲げずに板状のまま、エポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて積層体620とし、磁歪素子610に相当する磁歪素子部とフレーム630の全体(即ち、100%)との一体構成体を得た。得られた一体構成体を使用し、実施例1と同様に磁歪発電デバイス600を作製した。
【0106】
実施例1と同様に磁歪発電デバイス600を評価したところ、共振周波数は248Hzであった。ピーク電圧は表6に示した。
【0107】
【表6】
【0108】
表6の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
【0109】
(実施例7)
実施例7において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板721(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるCFRPを弾性材料722として用いて、
図7に示した構造を有する磁歪発電デバイス700を作製した。
【0110】
方向性電磁鋼板として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}[100]GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を[100]方向とし、長さ140mm、幅6mmにシャーリング切断した。それを
図7に示したようなU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部770に相当する長さは約80mm、上側の検出用コイル760、錘740をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、方向性電磁鋼板をU字型に曲げた後、歪みを除去するために、800℃、2時間、真空中で焼鈍した。
【0111】
弾性材料722としては、非磁性材料であるCFRP、厚み0.3mm、幅6mmを用いた。カーボン繊維の方向を長手方向として、長さ40mmに切断した。
【0112】
図7に示すように、切断したCFRPをU字型に曲げた方向性電磁鋼板にエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り付けて積層体720とし、フレーム730の一部(40mm/140mm=約29%)が上記積層体で構成され、磁歪素子710の磁歪部711から延びた電磁鋼板とフレーム730の全体とが一体構成である、一体構成体を得た。さらにSUS304のブロックを支柱780として方向性電磁鋼板にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けた。得られた構造体を使用し、実施例1と同様に磁歪発電デバイス700を作製した。
【0113】
実施例1と同様に磁歪発電デバイス700を評価したところ、共振周波数は165Hzであった。ピーク電圧は表7に示した。
【0114】
【表7】
【0115】
表7の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。さらに振動が生じやすいため、類似した構成である実施例1のデバイスよりもピーク電圧が向上した。
【0116】
(実施例8)
磁石を2つの磁石850に変更する以外は実施例7と同様に、磁歪発電デバイス800を作製した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えてピーク電圧が最大になった時の磁石を使った。磁歪素子に印加される磁場の強さは約2800A/m(350e)と推定した。
【0117】
実施例1と同様に磁歪発電デバイス800を評価したところ、共振周波数は157Hzであった。ピーク電圧は表8に示した。
【0118】
【表8】
【0119】
表8の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
【0120】
(比較例1)
比較例1において、方向性電磁鋼板を磁歪部911として用い、磁性材料であるSS400を弾性材料922として用いて、
図9に示した構造を有する磁歪発電デバイス900を作製した。
【0121】
方向性電磁鋼板として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}[100]GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板を長さ20mm、幅6mmにシャーリング切断し、さらに、歪を除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍して、磁歪部911とした。
【0122】
弾性材料922として、幅6mm、長さ140mmのSS400を用いた。厚みは、上記磁歪部911を貼り付ける部分(応力制御部912に相当する部分)を0.5mmとし、それ以外の部位を0.8mmとした。それを
図9に示したようなU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部970に相当する長さは約80mm、上側の検出用コイル960、錘940をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、U字状に成型したSS400を真空中で800℃、30分保持後炉冷して、切断歪による影響を取り除いた。
【0123】
U字型に曲げた弾性材料の応力制御部912に相当する部分に、磁歪部911をエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて磁歪素子910に相当する部分を形成し、磁歪素子910の応力制御部912から延びた弾性材料922とフレーム930の全体とが一体構成である一体構成体を得た。この一体構成体においてフレームは、磁歪部から延びた電磁鋼板と応力制御部から延びた弾性材料とを含む積層体で構成された部分を有していない。得られた一体構成体を使用し、実施例1と同様に磁歪発電デバイス900を作製した。磁歪発電デバイス900は、さらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘940およびバイアス磁場を印加するための磁石950を有し、固定部970で加振機の上に固定することができた。
【0124】
実施例1と同様に磁歪発電デバイス900を評価したところ、共振周波数は118Hzであった。ピーク電圧は表9に示した。
【0125】
【表9】
【0126】
表9の結果から明らかなように、比較例のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示したものの、バイアス磁場が弾性材料であるSS400にも流れた。また、フレームに磁歪部から延びた前記電磁鋼板と、応力制御部から延びた弾性材料とを含む積層体で構成された部分が存在しないため、磁歪部の両端を応力制御部に密着させることが容易ではなかった。そのため、磁気的なギャップが生じてしまい、磁石によるバイアス磁場の調整が容易ではなく、類似した構成である実施例4のデバイスよりもピーク電圧が低かった。
【0127】
(実施例10および比較例2)
実施例1〜8および比較例1で作成したデバイスのそれぞれに対して、加振機を用いて連続的に振動を与えた。
【0128】
その結果、フレームの少なくとも一部が、磁歪部から延びた電磁鋼板と、応力制御部から延びた弾性材料とを含む積層体で構成されている実施例1〜8のデバイスは、いずれも、24時間経過した後でも問題なく動作していた。一方、接合部が磁歪素子中に存在する比較例1デバイスは、振動開始から約3時間後には磁歪部と弾性材料の剥離が生じた。これは、振動によって連続的な歪が磁歪素子に加えられ、接合部に応力集中が起こり、剥離が生じたと考えられる。
【0129】
(実施例11)
実施例11において、方向性電磁鋼板または無方向性電磁鋼板を電磁鋼板1021(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるCFRPを弾性材料1022として用いて、
図10に示した構造を有する磁歪発電デバイス1000を作製した。
【0130】
方向性電磁鋼板として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}[100]GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を[100]方向とし、長さ140mm、幅6mmにシャーリング切断した。それを
図10に示したようにU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部1070に相当する長さは約80mm、上側の検出コイル1060、錘1040をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、方向性電磁鋼板をU字型に曲げた後、歪を除去するために、800℃、2時間、真空中で焼鈍した。
【0131】
無方向性電磁鋼板として、日本製鉄(株)の無方向性電磁鋼板35H210、被膜付き、を使用した。厚みは0.35mmである。無方向性電磁鋼板を長さ140mm、幅6mmにシャーリング切断した。それを
図10に示したようにU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部1070に相当する長さは約80mm、上側の検出コイル1060、錘1040をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、無方向性電磁鋼板をU字型に曲げた後、歪を除去するために、740℃、2時間、真空中で焼鈍した。
【0132】
弾性材料1022としては、非磁性材料であるCFRP、厚み0.5mm、幅6mmを用いた。カーボン繊維の方向を長手方向として、U字型の電磁鋼板と一体化できるように長さを140mmよりも少し短めに切断し、熱プレスでU字形状に整えた。
【0133】
U字型に曲げた方向性または無方向性の電磁鋼板1021と、U字型に曲げたCFRP(弾性材料1022)とをエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて積層体1020とし、磁歪素子1010に相当する磁歪素子部とフレーム1030全体(即ち、100%)との一体構成体を得た。得られた一体構成体の磁歪素子に対応する部位に5000ターンの検出用コイル1060を装填した。コイルの長さは15mmだった。次に7gのタングステンの錘1040を磁歪素子1010のとなりに接着固定した。さらにU字形状の下側固定部1070の弾性材料1022側にNdFeB磁石1050を貼り付けて、フレーム1030の全体が磁歪素子1010と一体構成である磁歪発電デバイス1000を得た。
【0134】
得られた磁歪発電デバイスのU字形状の下側の固定部1070を接着剤で加振機の上に固定した。次に、バイアス磁場をNdFeB磁石1050によって印加した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えて電圧を測定し、比較的発生電圧が大きくなる磁石を用いた。磁歪素子に印加される磁場の強さは、方向性電磁鋼板では約2800A/m(350e)、無方向性電磁鋼板では3200A/m(400e)と推定した。加振機を0.5Gで加振させて共振周波数におけるピーク電圧をオシロスコープで測定した。
【0135】
磁歪材料として方向性電磁鋼板を使用したデバイスの共振周波数は226Hz、無方向性電磁鋼板を使用したデバイスの共振周波数は239Hzであった。ピーク電圧は表10に示した。
【0136】
【表10】
【0137】
表10の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
【0138】
(実施例12)
実施例12において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1121(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるCFRPを弾性材料1122として用い、SUS304のブロックを支柱1180として設けた、
図11に示した構造を有する磁歪発電デバイス1100を作製した。
【0139】
図11のデバイスは、実施例11と実質的に同様に作製したが、但し、フレーム1130を形成した後に、SUS304のブロックを支柱1180として、弾性材料1122(CFRP)にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けた。
【0140】
実施例11と同様に磁歪発電デバイス1100を評価したところ、共振周波数は384Hzであった。ピーク電圧は表11に示した。
【0141】
【表11】
【0142】
表11の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。本実施例においては、SUS304のブロックを支柱としてCFRPにエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けたため、振動させる積層体の長さが短くなって、共振周波数を
図10のデバイスの226Hzから384Hzに大きくすることができた。さらに共振周波数が大きくなって振幅が小さくなったため、発生電圧のピーク値は表10の方向性電磁鋼板の829mVに比べて746mVと小さくなったが、500mV以上の発電性能を示した。
【0143】
また、デバイス1100では、支柱の右側の積層体が振動するため、この支柱を貼り付ける位置によって振動させる積層体の長さの調整が可能であり、共振周波数を調整することも可能である。
【0144】
(実施例13)
実施例13において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1221(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるSUS304を弾性材料1222として用いて、
図12に示した構造を有する磁歪発電デバイス1200を作製した。
【0145】
方向性電磁鋼板として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}[100]GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を[100]方向とし、長さ130mm、幅6mmにシャーリング切断した。それを
図12に示したようにU字部とL部を有する型に曲げて形状を整えた。下側の固定部1270に相当する長さは約40mm、上側の検出コイル1260、錘1240をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、U字部とL部を有する形状に曲げた後、歪を除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍した。
【0146】
弾性材料1222としては、非磁性材料であるSUS304、厚み0.5mm、幅6mmを用いた。U字部とL部を有する電磁鋼板と一体化できるように長さを130mmよりも少し短めに切断し、U字部とL部を有する形状に成型して形状を整えた。
U字部とL部を有する形状に成型したSUS304を真空中で1050℃、1分間保持後、ガス急冷よる溶体化処理を行って、切断歪による影響を取り除いた。
【0147】
成形した方向性電磁鋼板とSUS304をエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて積層体1220とし、磁歪素子1210に相当する磁歪素子部とフレーム1230全体(即ち、100%)との一体構成体を得た。得られた一体構成体の磁歪素子に対応する部位に5000ターンの検出コイルを装填した。コイル長さは15mmだった。次に7gのタングステンの錘1240を磁歪素子1210のとなりに接着固定した。さらに得られた磁歪発電デバイスのL字形状に曲げた部分の先の先端部分の内側(弾性材料1222側)にNdFeB磁石1250を貼り付けて、フレーム1230全体が磁歪素子1210と一体構成である磁歪発電デバイス1200を得た。
【0148】
得られた磁歪発電デバイスのU字形状の下側の固定部1270を接着剤で加振機の上に固定した。次に、バイアス磁場をNdFeB磁石1250によって印加した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えて電圧を測定し、比較的発生電圧が大きくなる磁石を用いた。磁歪素子に印加される磁場の強さは、方向性電磁鋼板では約2800A/m(350e)と推定した。加振機を0.5Gで加振させて共振周波数におけるピーク電圧をオシロスコープで測定した。
【0149】
磁歪材料として方向性電磁鋼板を使用したデバイスの共振周波数は104Hzであった。ピーク電圧は表12に示した。
【0150】
【表12】
【0151】
表12の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
【0152】
(実施例14)
実施例14において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1321(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるSUS304を弾性材料1322として用い、SUS304のブロックを支柱1380として設けた、
図13に示した構造を有する磁歪発電デバイス1300を作製した。
【0153】
図13のデバイスは、実施例13と実質的に同様に作製したが、但し、フレーム1330を形成した後に、SUS304のブロックを支柱1380として弾性材料1322(SUS304)にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けた。
【0154】
実施例13と同様に磁歪発電デバイス1300を評価したところ、共振周波数は177Hzであった。ピーク電圧は表13に示した。
【0155】
【表13】
【0156】
表13の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。本実施例においては、SUS304のブロックを支柱として弾性材料(SUS304)にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けたため、振動させる積層体の長さが短くなって、共振周波数を
図12のデバイスの104Hzから177Hzに大きくすることができた。共振周波数が大きくなって振幅が小さくなったため、発生電圧のピーク値は表12の987mVに比べて886mVと小さくなったが、500mV以上の発電性能を示した。
【0157】
また、デバイス1300では、支柱の右側の積層体が振動するため、この支柱を貼り付ける位置によって振動させる積層体の長さの調整が可能であり、共振周波数を調整することも可能である。
【0158】
(実施例15)
実施例15において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1421(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるSUS304を弾性材料1422として用いて、
図14に示した構造を有する磁歪発電デバイス1400を作製した。
【0159】
図14のデバイスは、実施例12と実質的に同様に作製したが、但し、フレーム1430を形成する際に、NdFeB磁石1450を設置する部位に弾性材料1422がない状態とするために、方向性電磁鋼板と張り合わせるSUS304の長さを短くした。さらにNdFeB磁石1450を方向性電磁鋼板1421に直接貼り付けた。
【0160】
得られた磁歪発電デバイスのU字形状の下側の固定部1470を接着剤で加振機の上に固定した。次に、バイアス磁場をNdFeB磁石1450によって印加した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えて電圧を測定し、比較的発生電圧が大きくなる磁石を用いた。磁歪素子に印加される磁場の強さは、方向性電磁鋼板では約2800A/m(350e)と推定した。加振機を0.5Gで加振させて共振周波数におけるピーク電圧をオシロスコープで測定した。
【0161】
磁歪材料として方向性電磁鋼板を使用したデバイスの共振周波数は101Hzであった。ピーク電圧は表14に示した。
【0162】
【表14】
【0163】
表14の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
【0164】
また、デバイス1400は、実施例13のデバイス1200に比べて、磁石と方向性電磁鋼板との間に弾性材料(非磁性材料であるSUS304)が無いため、磁気的なギャップの影響が小さくなる。そのため、デバイス1200で使用したNdFeB磁石に比べてサイズの小さな磁石を使用することができた。
【0165】
(実施例16)
実施例16において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1521(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるSUS304を弾性材料1522として用い、SUS304のブロックを支柱1580として設けた、
図15に示した構造を有する磁歪発電デバイス1500を作製した。
【0166】
図15のデバイスは、実施例15と実質的に同様に作製したが、但し、フレーム1530を形成した後に、SUS304のブロックを支柱1580として弾性材料1522(SUS304)にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けた。
【0167】
実施例15と同様に磁歪発電デバイス1500を評価したところ、共振周波数は172Hzであった。ピーク電圧は表15に示した。
【0168】
【表15】
【0169】
表15の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。本実施例においては、SUS304のブロックを支柱として弾性材料(SUS304)にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けたため、振動させる積層体の長さが短くなって、共振周波数を
図14のデバイス1400の101Hzから172Hzに大きくすることができた。共振周波数が大きくなって振幅が小さくなったため、発生電圧のピーク値は表14の989mVに比べて890mVと小さくなったが、500mV以上の発電性能を示した。
【0170】
また、デバイス1500では、支柱の右側の積層体が振動するため、この支柱を貼り付ける位置によって振動させる積層体の長さの調整が可能であり、共振周波数を調整することも可能である。
【0171】
(実施例17)
実施例17において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1621(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるSUS304を弾性材料1622として用いて、
図16に示した構造を有する磁歪発電デバイス1600を作製した。
【0172】
方向性電磁鋼板として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}[100]GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を[100]方向としで、長さ110mm、幅6mmにシャーリング切断した。それを
図16に示したようにU字部と二つのL部を有する型に曲げて形状を整えた。下側の固定部1670に相当する長さは約35mm、上側の検出コイル1660、錘1640をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、U字部と二つのL部を有する形状に曲げた後、歪を除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍した。
【0173】
弾性材料1622としては、非磁性材料であるSUS304、厚み0.5mm、幅6mmを用いた。U字部と二つのL部を有する電磁鋼板と一体化できるように長さを110mmよりも少し短めに切断し、U字部と二つのL部を有する形状に成型して形状を整えた。
U字部と二つのL部を有する形状に成型したSUS304を真空中で1050℃、1分間保持後、ガス急冷よる溶体化処理を行って、切断歪による影響を取り除いた。
【0174】
成形した方向性電磁鋼板とSUS304をエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて積層体1620とし、磁歪素子1610に相当する磁歪素子部とフレーム1630全体(即ち、100%)との一体構成体を得た。得られた一体構成体の磁歪素子に対応する部位に5000ターンの検出コイルを装填した。コイル長さは15mmだった。次に7gのタングステンの錘1640を磁歪素子1610のとなりに接着固定した。さらに末端に近いL字形状の上側の弾性材料1622側にNdFeB磁石1650を貼り付けて、フレーム1630全体が磁歪素子1610と一体構成である磁歪発電デバイス1600を得た。
【0175】
得られた磁歪発電デバイスのU字形状の下側の固定部1670を接着剤で加振機の上に固定した。次に、バイアス磁場をNdFeB磁石1250によって印加した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えて電圧を測定し、比較的発生電圧が大きくなる磁石を用いた。磁歪素子に印加される磁場の強さは、方向性電磁鋼板では約2800A/m(350e)と推定した。加振機を0.5Gで加振させて共振周波数におけるピーク電圧をオシロスコープで測定した。
【0176】
磁歪材料として方向性電磁鋼板を使用したデバイスの共振周波数は105Hzあった。ピーク電圧は表16に示した。
【0177】
【表16】
【0178】
表16の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
また、デバイス1600は、実施例11のデバイス1000に比べて、磁石と磁歪素子部とを近づけることができるため、磁気的なギャップが狭くなり、デバイス1000で使用したNdFeB磁石に比べてサイズの小さな磁石を使用することができた。
【0179】
(実施例18)
実施例18において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1721(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるSUS304を弾性材料1722として用い、SUS304のブロックを支柱1780として設けた、
図17に示した構造を有する磁歪発電デバイス1700を作製した。
【0180】
図17のデバイスは、実施例17と実質的に同様に作製したが、但し、フレーム1730を形成した後に、SUS304のブロックを支柱1780として、弾性材料1722(SUS304)にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けた。
【0181】
実施例17と同様に磁歪発電デバイス1700を評価したところ、共振周波数は173Hzであった。ピーク電圧は表17に示した。
【0182】
【表17】
【0183】
表17の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。本実施例においては、SUS304のブロックを支柱としてSUS304にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けたため、振動させる積層体の長さが短くなって、共振周波数を
図16のデバイス1600の105Hzから173Hzに大きくすることができた。さらに共振周波数が大きくなって振幅が小さくなったため、発生電圧のピーク値は表16の985mVに比べて892mVと小さくなったが、500mV以上の発電性能を示した。
【0184】
(実施例19)
実施例19において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1821(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるSUS304を弾性材料1822として用いて、
図18に示した構造を有する磁歪発電デバイス1800を作製した。
【0185】
図18のデバイスは、実施例16と実質的に同様に作製したが、但し、フレーム1830を形成する際に、NdFeB磁石1850を設置する部位に弾性材料1822がない状態とするために、方向性電磁鋼板と張り合わせるSUS304の長さを短くした。さらにNdFeB磁石1850を方向性電磁鋼板1821に直接貼り付けた。
【0186】
得られた磁歪発電デバイスのU字形状の下側の固定部1870を接着剤で加振機の上に固定した。次に、バイアス磁場をNdFeB磁石1850によって印加した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えて電圧を測定し、比較的発生電圧が大きくなる磁石を用いた。磁歪素子に印加される磁場の強さは、方向性電磁鋼板では約2800A/m(350e)と推定した。加振機を0.5Gで加振させて共振周波数におけるピーク電圧をオシロスコープで測定した。
【0187】
磁歪材料として方向性電磁鋼板を使用したデバイスの共振周波数は103Hzであった。ピーク電圧は表18に示した。
【0188】
【表18】
【0189】
表18の結果から明らかなように、本発明の磁歪素子を用いたデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
【0190】
また、デバイス1800は、実施例17のデバイス1600に比べて、磁石と方向性電磁鋼板との間に弾性材料(非磁性材料であるSUS304)が無いため、磁気的なギャップの影響が小さくなる。そのため、デバイス1600で使用したNdFeB磁石に比べてサイズの小さな磁石を使用することができた。
【0191】
(実施例20)
実施例20において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1921(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるSUS304を弾性材料1922として用い、SUS304のブロックを支柱1980として設けた、
図19に示した構造を有する磁歪発電デバイス1900を作製した。
【0192】
図19のデバイスは、実施例19と実質的に同様に作製したが、但し、フレーム1930を形成した後に、SUS304のブロックを支柱1980として弾性材料1922(SUS304)にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けた。
【0193】
実施例19と同様に磁歪発電デバイス1900を評価したところ、共振周波数は169Hzであった。ピーク電圧は表19に示した。
【0194】
【表19】
【0195】
表19の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。本実施例においては、SUS304のブロックを支柱としてSUS304にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けたため、振動させる積層体の長さが短くなって、共振周波数を
図18のデバイス1800の103Hzから169Hzに大きくすることができた。共振周波数が大きくなって振幅が小さくなったため発生電圧のピーク値は表18の992mVに比べて897mVと小さくなったが500mV以上の発電性能を示した。
【0196】
(実施例21)
実施例11〜実施例20で作製したデバイスのそれぞれに対して、加振機を用いて連続的に振動を与えた。
【0197】
その結果、フレームの少なくとも一部が、磁歪部から延びた電磁鋼板と、応力制御部から延びた弾性材料とを含む積層体で構成されている実施例11〜20のデバイスは、いずれも、24時間経過した後でも問題なく動作していた。