【課題】バッファ層による基板への応力の影響を低減させることで、当該応力に起因して生じ得る基板に対するダメージや基板の特性劣化を防ぐことができる光導波路素子および光変調器を提供する。
【解決手段】光導波路素子1は、電気光学効果を有する基板5と、基板5に形成された光導波路10と、基板5上に設けられた上面バッファ層(第1バッファ層)9aと、基板5下に設けられた下面バッファ層(第2バッファ層)9bと、を備えており、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bが略同一の材料からなるとともに略同一の厚さを有し、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bがそれぞれ基板1の上面および下面に接触するように形成されていることを特徴とする。
前記第1バッファ層および前記第2バッファ層はそれぞれ、酸化シリコンと周期律表の三〜八族、一b族および二b族の金属元素およびシリコンを除く半導体元素から選ばれる1種またはそれ以上の元素の酸化物の少なくとも1種との混合物、またはシリコンと前記金属元素および半導体元素から選ばれる1種またはそれ以上の元素との酸化物の透明絶縁膜からなることを特徴とする請求項1に記載の光導波路素子。
前記第1バッファ層および前記第2バッファ層の材料は、電気光学効果を有する前記基板の材料よりも屈折率が低いことを特徴とする請求項1または2に記載の光導波路素子。
前記第1バッファ層および前記第2バッファ層のそれぞれの厚さが、0.3μm以上であり2.0μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
厚さが数μm以下の薄板リブ型の光導波路構造を有する光変調器では、電極による光吸収を抑制するために、薄板の厚さとほぼ同じ膜厚のバッファ層をスパッタや真空蒸着法によって形成する必要がある。しかしながら、ウェハは従来よりも厚さが薄いため、応力に対して敏感である。また、ウェハには、例えば電気光学効果を有するLNが用いられるのに対し、バッファ層にはSiO
2等が用いられる。
【0008】
ウェハ(基板)の材料とバッファ層の材料とは、熱膨張率(線膨張率)が異なっている。これにより、ウェハプロセスにおいてバッファ層を成膜する際やウェハまたはチップを加熱する際に、ウェハ(基板)とバッファ層との熱膨張率の差によって、バッファ層とウェハ(基板)とが接触する面に応力(内部応力または残留応力)が生じる。その結果、バッファ層による基板への応力によって基板がダメージを受け、基板にひび割れ等が発生してしまうという問題がある。
【0009】
また、基板はLN等の電気光学効果を有する材料で作られており、電気を印加して屈折率を変化させることで光変調が行われる。しかしながら、バッファ層による基板への応力が生じると、光弾性効果によって基板の屈折率が変化してしまい、光波の伝搬速度が変化してしまうという問題がある。その結果、例えばマッハツェンダー構造を有する光変調器では、マッハツェンダー構造における合波の際に位相差が生じてしまい、バイアス電圧の変動等の特性劣化が発生してしまうという問題がある。
【0010】
図8を参照しながら、バッファ層による基板への応力が生じた場合の問題について説明する。
図8には、次世代の光変調器に用いられる光導波路素子の断面構造が模式的に図示されている。
図8に示す断面構造では、補強基板101の上にLNからなる基板102が形成され、さらに基板102の上にバッファ層103が形成されている状態が示されている。
【0011】
今までのリブ型構造の光導波路素子では、基板はバッファ層の厚さ(例えば、0.5〜1.0μm)に対して十分に厚いため、バッファ層の材料と基板の材料との間に熱膨張率差があった場合でも、当該熱膨張率差に起因する応力の影響を受けにくかった。
【0012】
これに対して、次世代の光変調器に用いられる光導波路素子では、
図8に示すように、基板102がバッファ層103と同等の膜厚(例えば、1.0μm程度)に薄板化されている。薄板化された基板102は、バッファ層103による応力に敏感になっている。その結果、ウェハプロセスにおいてバッファ層103を成膜する際や加熱する際には、
図8のように、バッファ層103の材料と基板102の材料との間に熱膨張率差に起因する応力の影響を受けて基板102が変形してしまい(例えば、基板102が反ってしまう)、基板102がダメージを受けてひび割れたり、基板102の特性が劣化したりする等の問題が生じてしまう。
【0013】
特許文献1の開示技術は、バッファ層による基板への応力によって生じる問題を考慮して、バッファ層を形成せずにオーバークラッド層を直接接合法により接合させた構成を採用している。バッファ層は、基板表面の上に装荷される電極による光吸収を抑制するために形成される層であり、伝搬損失を効率良く低減させるために従来より広く用いられている。しかしながら、特許文献1の開示技術のようにバッファ層を形成しない構成を採用した場合には、バッファ層が果たしていた役割を別段の創意工夫で補わなければならないという問題や、光導波路素子の設計や作製工程等を大きく変更しなければならないという問題が新たに生じてしまう。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するため、バッファ層による基板への応力の影響を低減させることで、当該応力に起因して生じ得る基板に対するダメージや基板の特性劣化を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明に係る光導波路素子および光変調器は以下のような技術的特徴を有する。
【0016】
(1) 本発明に係る光導波路素子は、上記の目的を達成するため、電気光学効果を有する基板と、前記基板に形成された光導波路と、前記基板上に設けられた第1バッファ層と、前記基板下に設けられた第2バッファ層と、を備える光導波路素子であって、前記第1バッファ層および前記第2バッファ層が略同一の材料からなるとともに略同一の厚さを有し、前記第1バッファ層および前記第2バッファ層がそれぞれ前記基板の上面および下面に接触するように形成されていることを特徴とする。
【0017】
この構成により、第1バッファ層により基板の上面に生じる応力と同程度の応力を、第2バッファ層により基板の下面に生じさせることができ、基板の上面および下面における応力のバランスを均一化することができる。その結果、基板の上面および下面における応力の偏りが緩和されて基板の変形を防ぐことができ、基板に対するダメージや基板の特性劣化を防ぐことができる。
【0018】
(2) 上記(1)に記載の光導波路素子において、前記第1バッファ層および前記第2バッファ層はそれぞれ、酸化シリコンと周期律表の三〜八族、一b族および二b族の金属元素およびシリコンを除く半導体元素から選ばれる1種またはそれ以上の元素の酸化物の少なくとも1種との混合物、またはシリコンと前記金属元素および半導体元素から選ばれる1種またはそれ以上の元素との酸化物の透明絶縁膜からなることを特徴とする。
【0019】
この構成により、例えばインジウムやチタン等の金属酸化物が添加された第1バッファ層および第2バッファ層を基板の上下に配置することで、添加された金属酸化物によって時間の経過に伴うDCドリフトの増加を平坦化でき、長期に渡ってDCドリフト特性を改善することができる。
【0020】
(3) 上記(1)または(2)のに記載の光導波路素子において、前記第1バッファ層および前記第2バッファ層の材料は、電気光学効果を有する前記基板の材料よりも屈折率が低いことを特徴とする。
【0021】
この構成により、基板の上下を基板より屈折率の低い材料とすることで、基板に形成される光導波路内に伝搬光を閉じ込める効果を増大させて、伝搬損失を効率良く低減させることができる。
【0022】
(4) 上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の光導波路素子において、前記第1バッファ層および前記第2バッファ層の材料は、電気抵抗率が10
8Ωcm以上であり、10
16Ωcm以下であることを特徴とする。
【0023】
この構成により、第1バッファ層および第2バッファ層の材料の電気抵抗率をコントロールすることで適切なDCドリフト特性を得ることができ、光導波路における光の伝搬を効率良く行うことができる。具体的には、第1バッファ層および第2バッファ層の抵抗値を10
8Ωcm以上および10
16Ωcmの以下の範囲とすることで、適切なDCドリフト量を安定して得ることができる。
【0024】
(5) 上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の光導波路素子において、前記第1バッファ層および前記第2バッファ層のそれぞれの厚さが、0.3μm以上であり2.0μm以下であることを特徴とする。
【0025】
この構成により、第1バッファ層および第2バッファ層の厚さをコントロールすることで適切なDCドリフト特性を得ることができ、光導波路における光の伝搬を効率良く行うことができる。具体的には、第1バッファ層および第2バッファ層の厚さを0.3μm以上および2.0μm以下の範囲とすることで、適切なDCドリフト量を安定して得ることができる。
【0026】
(6) 上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の光導波路素子において、前記第2バッファ層の下に配置される補強基板を有し、前記第2バッファ層の下面と前記補強基板の上面とが直接接合法によって直接接合されていることを特徴とする。
【0027】
この構成により、第2バッファ層と補強基板とを適切かつ確実に接合することができる。
【0028】
(7) 上記(6)に記載の光導波路素子において、前記第2バッファ層と前記補強基板とが接着層を介して接合されていることを特徴とする。
【0029】
この構成により、第2バッファ層と補強基板とを接着層を介して適切かつ確実に接合することができる。さらに、接着層の上に第2バッファ層が形成されることで、接着層による光導波路中の光吸収を第2バッファ層によって防ぐことができる。
【0030】
(8) 上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の光導波路素子において、前記基板上に突設されたリブ部が前記光導波路として用いられることを特徴とする。
【0031】
この構成により、リブ型の光導波路構造による基板の薄板化に伴って応力の影響が大きくなる場合であっても、基板の上面および下面における応力のバランスを均一化することができる。その結果、基板の上面および下面における応力の偏りが緩和されて基板の変形を防ぐことができ、基板に対するダメージや基板の特性劣化を防ぐことができる。
【0032】
(9) 上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の光導波路素子において、複数のマッハツェンダー部により前記光導波路が形成されていることを特徴とする。
【0033】
この構成により、様々な変調方式に対応した光信号を生成することが可能な複数のマッハツェンダー型光導波路構造を有する光導波路素子において、基板の上面および下面における応力のバランスを均一化することができる。その結果、基板の上面および下面における応力の偏りが緩和されて基板の変形を防ぐことができ、基板に対するダメージや基板の特性劣化を防ぐことができる。
【0034】
(10) 本発明に係る光変調器は、上記の目的を達成するため、上記(1)から(9)のいずれか1つに記載の光導波路素子を構成する光導波路を少なくとも一部に用いたことを特徴とする。
【0035】
この構成により、基板の上面および下面における応力のバランスを均一化することができる。その結果、基板の上面および下面における応力の偏りが緩和されて基板の変形を防ぐことができ、基板に対するダメージや基板の特性劣化を防ぐことができる光変調器が実現される。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、光導波路素子および光変調器において、バッファ層による基板への応力の影響を低減させることで、当該応力に起因して生じ得る基板に対するダメージや基板の特性劣化を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態における光導波路素子および光変調器について説明する。
【0039】
図1は、本発明の実施の形態において、光導波路素子1を構成する基板5上に形成された光導波路10の一例を説明するための平面図である。なお、
図1では、光導波路素子1の幅方向が紙面の上下方向となり、光導波路素子1の長手方向が紙面の左右方向となり、光導波路素子1の厚さ方向が紙面に垂直な方向となるように、光導波路素子1が図示されている。
【0040】
図1に示す光導波路素子1は、複数のマッハツェンダー型光導波路が集積された光導波路素子1である。複数のマッハツェンダー型光導波路が組み合わされた光導波路は、ネスト型光導波路とも呼ばれる。複数のマッハツェンダー型光導波路が集積された光導波路素子1は、様々な変調方式に対応した光信号を生成することができる。
図1には一例として、複数のマッハツェンダー型光導波路が集積された光導波路素子1が図示されているが、本発明はこの構造に限定されるものではなく、例えば単一のマッハツェンダー型光導波路を有する光導波路素子1であってもよい。
【0041】
図1に示すように、本発明の実施の形態における光導波路素子1は、電気光学効果を有する材料で形成された基板5上に形成された光導波路10を備える。
図1に示す光導波路素子1は、外部から光信号が導入される入射導波路を分岐する第1分岐部2a、第1分岐部2aで分岐された光導波路10を更に分岐する第2分岐部2b、第2分岐部2bで分岐された光導波路10を更に分岐する第3分岐部2cを備えており、3段階の分岐を経て合計8本の並行導波路が形成されている。第1〜第3分岐部2a〜2cは光カプラ等により実現される。
【0042】
各並行導波路を伝搬する光波の位相は、例えば領域D1において調整される。領域D1には金属製の変調電極(
図1には不図示)が形成され、変調電極から各並行導波路に印加される電界によって屈折率を変化させ、光波の伝搬速度を調整することができる。
【0043】
各並行導波路を伝搬した光波は、上記の第1〜第3分岐部2a〜2cの各々に対応する第1〜第3合成部3a〜3cにおいて合波された後、出射導波路から外部へ出力される。具体的には、
図1に示す光導波路素子1は、第3分岐部2cで分岐された並行導波路を合成する第3合成部3c、第2分岐部2bで分岐された光導波路10を合成する第2合成部3b、第1分岐部2aで分岐された光導波路10を合成する第1合成部3aを備えており、3段階の合成を経て出射導波路から光信号が出力される。第1〜第3分岐部2a〜2cと同様に、第1〜第3合成部3a〜3cも光カプラ等により実現される。
【0044】
なお、
図1に示す光導波路素子1の光導波路10は一例であり、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、
図7を参照しながら後述する光変調器200の光導波路素子202のように、光導波路素子202から2本の光信号が出力され、偏波合成部228によって偏波合成される構成であってもよい。
【0045】
また、光導波路10には、動作点を設定するためのバイアス電圧が印加される。バイアス電圧は、位相変調後の光波に対して、例えば領域D2に形成されたバイアス電極によって印加される。
【0046】
図2は、本発明の実施の形態における光導波路素子1の断面構造の第1の例を示す図であり、
図1の線分P−Pの矢視断面図である。なお、
図2では、光導波路素子1の厚さ方向が紙面の上下方向となり、光導波路素子1の幅方向が紙面の左右方向となり、光導波路素子1の長手方向が紙面に垂直な方向となるように、光導波路素子1が図示されている。
【0047】
図2の断面構造に示すように、光導波路素子1は、補強基板7の上に下面バッファ層(第2バッファ層)9bが設けられており、下面バッファ層9bの上に基板5が設けられており、さらに基板5の上に上面バッファ層(第1バッファ層)9aが設けられた構造を有している。
【0048】
基板5は、電気光学効果を有する材料により形成されている。従来の基板は厚さが8〜10μm程度であるのに対し、本発明の実施の形態における基板5は、例えば厚さが2.0μm以下、好適には1.0μm以下の極めて薄い薄板を用いることが可能である。このように基板5の厚さを極めて薄くすることで(例えば従来の約1/10の厚さ)、駆動電圧の更なる低減化を実現することが可能となる。基板5には、電気光学効果を有する材料として、例えばLNを用いることが可能であるが、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)やジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)等が用いられてもよい。
【0049】
基板5上にはリブ部6が設けられている。リブ部6は、基板5の表面に対して突設されており、光波を閉じ込める作用を有することから光導波路10として利用される。従来の拡散型の光導波路構造では光を閉じ込める作用が弱く、曲線部等で光導波路10からの伝搬光の漏れが生じてしまうことがある。これに対して、リブ型の光導波路構造を採用した場合には、光を閉じ込める作用が強化され、光導波路10を曲げて折り返し構造とすることができ、光導波路素子1の短尺化を実現することが可能となる。リブ部6の高さは、例えば基板5の表面から2.0μm以下、好適には1.0μm以下である。
【0050】
以下、リブ型基板の寸法についてより詳細に説明する。本発明の実施の形態におけるリブ型基板において、例えば、リブ部6を含めた基板5の厚さAの最大値は4.0μm、リブ部6の幅Bの最大値は4.0μm、リブ部6の高さCの最大値は2.0μmであり、厚さAと幅Bとの比率は1:1である。リブ部6や基板5等は設計上小さければ小さいほど良いため、上記の厚さA、幅B、高さCの最小値は、製造プロセスにおける最小化の限界値となる。また、光の閉じ込めの観点からも、光のシングルモード条件が維持される範囲内の寸法であれば、厚さAおよび幅Bの各々の寸法は小さければ小さいほど光が閉じ込められるため好ましい。
【0051】
図2には一例として、基板5上にリブ部6が形成されたリブ型基板を有する光導波路素子1が図示されている。ただし、本発明では、光導波路10としてリブ部6が形成されたリブ型基板を有する構造とすることが好適であるが、これに限定されるものではなく、例えば金属の熱拡散により基板5内に光導波路10が形成された光導波路素子1が用いられてもよい。
【0052】
補強基板7は、極めて薄い基板5の強度を補い、下面バッファ層9b、基板5、上面バッファ層9a、さらには基板5上に形成される電極等を安定して支持可能とする部材である。補強基板7は、後述するように、下面バッファ層9bと直接接合法によって直接接合される。補強基板7の材料には、例えば基板5の材料(例えばLN)より誘電率の低い材料、または、基板5と同一の材料(例えばLN)を用いることが可能である。
【0053】
また、基板5上には上面バッファ層9aが設けられている。本発明の実施の形態における上面バッファ層9aは基板5と同等の厚さを有しており、例えば厚さが2.0μm以下、好適には1.0μm以下である。上面バッファ層9aに用いられる材料は、特に限定されるものではないが、LNより屈折率が低く、光透過性に優れた材料であることが好ましい。上面バッファ層9aに用いられる材料は、バッファ層として一般的に用いられている材料であってもよく、例えばSiO
2や、Al
2O
3、MgF
3、La
2O
3、ZnO、HfO
2、MgO、CaF
2、Y
2O
3等を用いることができる。
【0054】
従来の基板の厚さは8.0〜10.0μmであったのに対し、本発明の実施の形態では、上述したようにリブ型基板の厚さを2.0μm以下と極めて薄くすることができ、マイクロ波と光波との速度整合や駆動電圧の更なる低減化を図ることが可能となる。ただし、このように極めて薄い基板5は、応力に対して特に敏感である。
【0055】
また上述したように、基板5には例えばLNが用いられるのに対し、基板の上に設けられる上面バッファ層9aには例えばSiO
2が用いられるが、基板5の材料であるLNおよび上面バッファ層9aの材料であるSiO
2は、熱膨張率が異なっている。これにより、特に温度変化を伴うウェハプロセスにおいて、上面バッファ層9aを成膜する際やウェハ(基板5)またはチップを加熱する際に、基板5と上面バッファ層9aとの熱膨張率の差によって、上面バッファ層9aと基板5とが接触する面に応力(内部応力または残留応力)が生じる。
【0056】
その結果、上面バッファ層9aの材料と基板5の材料との間に熱膨張率差に起因する応力の影響を受けて、基板5が変形してしまうという問題や、バイアス電圧の変動等の特性劣化が発生してしまうという問題がある。
【0057】
このような問題に対処するため、本発明の実施の形態における光導波路素子1では、
図2に示すように、補強基板7と基板5との間に下面バッファ層9bが設けられている。本発明の実施の形態における下面バッファ層9bは上面バッファ層9aと略同一の厚さを有しており、例えば厚さが2.0μm以下、好適には1.0μm以下である。また、下面バッファ層9bには、上面バッファ層9aと略同一の材料が用いられる。
【0058】
また、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bが略同一の厚さを有するとは、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bが同一またはほぼ同じ膜厚を有することを意味する。具体的には、本発明では、製造時のプロセスばらつきに起因する誤差を含んで、上面バッファ層9aと下面バッファ層9bとの厚さの差が上面バッファ層9aまたは下面バッファ層9bの厚さに対して±20%以内である場合に、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bが略同一の厚さを有すると定義する。
【0059】
上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bが略同一の材料からなるとは、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bが同一の材料またはほぼ同じ材質を有する材料からなることを意味する。具体的には、本発明では、製造時のプロセスばらつきに起因する誤差を含んで、上面バッファ層9aと下面バッファ層9bとの電気抵抗率の差が上面バッファ層9aまたは下面バッファ層9bの電気抵抗率に対して±20%以内であり、かつ、上面バッファ層9aと下面バッファ層9bとの屈折率の差が上面バッファ層9aまたは下面バッファ層9bの屈折率に対して±20%以内である場合に、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bが略同一の材料からなると定義する。
【0060】
なお、膜厚の測定、電気抵抗率の測定、屈折率の測定に係る方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法で各パラメータを測定することができる。例えば、膜厚については、多数枚のウェハにダミーウェハを仕込んで構成されたバッチに対して、一般的な触針式段差系を用いて膜厚を測定することができる。電気抵抗率については、ダミーウェハを含む上記バッチに対して、水銀プローブ法を用いたIV測定(電流電圧測定)を行い、その測定結果から電気抵抗率を算出することができる。屈折率の測定については、ダミーウェハを含む上記バッチに対して、プリズムカプラ(例えば、測定波長:1550nm)を用いて屈折率を測定することができる。
【0061】
本発明の実施の形態における光導波路素子1では、略同一の材料からなり略同一の厚さを有する上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bが形成されている。また、上面バッファ層9aは基板5の上面に接触し、下面バッファ層9bは基板5の下面に接触するように形成されている。このように、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bが基板5を挟み込む構造とすることで、上面バッファ層9aにより基板5の上面に生じる応力と同程度の応力を、下面バッファ層9bにより基板5の下面にも生じさせることができ、基板5の上面および下面における応力のバランスを均一化することができる。その結果、基板5の上面および下面における応力の偏りが緩和されて基板5の変形を防ぐことができ、基板5に対するダメージや基板の特性劣化を防ぐことができる。
【0062】
なお、基板5の上に設けられるバッファ層(上面バッファ層9a)に、例えばインジウムやチタン等の金属酸化物を添加することで、添加された金属酸化物によって時間の経過に伴うDCドリフトの増加を平坦化でき、長期に渡ってDCドリフト特性を改善することができることが知られている(特許文献2および特許文献3を参照)。この技術を応用して、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bの両方に金属酸化物を添加して、ドリフト特性をより改善させてもよい。
【0063】
より詳細には、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bの両方が、酸化シリコンと周期律表の三〜八族、一b族および二b族の金属元素およびシリコンを除く半導体元素から選ばれる1種またはそれ以上の元素の酸化物の少なくとも1種との混合物、またはシリコンと前記金属元素および半導体元素から選ばれる1種またはそれ以上の元素との酸化物の透明絶縁膜によって形成されてもよい。具体的には、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bには、例えば、インジウム、チタン、亜鉛、スズ、クロム、アルミニウム、ゲルマニウム等の金属酸化物をSiO
2に添加(ドープ)した材料が用いられる。
【0064】
なお、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bに添加される添加物の元素種は、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bで同一であってもよく、異なっていてもよい。本発明に係る上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bは略同一の材料からなり、上述したように、製造時のプロセスばらつきに起因する誤差を含んで、上面バッファ層9aと下面バッファ層9bとの電気抵抗率の差が上面バッファ層9aまたは下面バッファ層9bの電気抵抗率に対して±20%以内であり、かつ、上面バッファ層9aと下面バッファ層9bとの屈折率の差が上面バッファ層9aまたは下面バッファ層9bの屈折率に対して±20%以内であればよい。この条件を満たすことができるものであれば、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bのそれぞれに添加される添加物は異なっていてもよい。
【0065】
また、基板5の上に設けられるバッファ層(上面バッファ層9a)の材料として適切な電気抵抗率を有する材料を用いることで、バッファ層による光吸収を抑制できることや、正のDCドリフトの発生を抑制できることが知られている(例えば、特許文献3を参照)。この技術を応用して、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bの両方の材料として、適切な電気抵抗率を有する材料を用いてもよい。
【0066】
より詳細には、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bの材料として、電気抵抗率が10
8Ωcm以上であり、10
16Ωcm以下である材料を用いてもよい。上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bに用いられる材料の電気抵抗率を10
8Ωcm以上とすることで、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bによる光吸収を防ぐことができるようになる。また、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bに用いられる材料の電気抵抗率を10
16Ωcm以下とすることで、時間経過の初期において負のDCドリフト量を安定して得ることができるようになる。
【0067】
また、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bの材料として、電気光学効果を有する基板5の材料(例えばLN)よりも屈折率が低い材料を用いてもよい。基板5の上下に配置される上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bを基板5より屈折率の低い材料とすることで、基板5に形成される光導波路10内に伝搬光を閉じ込める効果を増大させて、伝搬損失を効率良く低減させることができる。
【0068】
また、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bの厚さをコントロールすることで、適切なDCドリフト特性を得て、光導波路10における光の伝搬を効率良く行えるようにしてもよい。具体的には、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bの厚さを0.3μm以上および2.0μm以下の範囲とすることで、適切なDCドリフト量を安定して得ることができるようになる。
【0069】
次に、変調電極が形成される位相変調部における断面構造について説明する。
【0070】
図3は、本発明の実施の形態における光導波路素子1の断面構造の第2の例を示す図であり、基板5上に変調電極が形成された状態を示す図である。
図3は、
図1の線分Q−Qの矢視断面図である。なお、
図3では、光導波路素子1の厚さ方向が紙面の上下方向となり、光導波路素子1の幅方向が紙面の左右方向となり、光導波路素子1の長手方向が紙面に垂直な方向となるように、光導波路素子1が図示されている。
【0071】
図3には、基板5上に変調電極(信号電極Sおよび接地電極G)が形成され、基板5のリブ部6を光導波路10として用いるように構成された光導波路素子1の断面構造が示されている。
図3に示す基板5は、光導波路10の間に信号電極Sが配置された構造を有している。
【0072】
変調電極である信号電極Sおよび接地電極Gは、例えば、上面バッファ層9a上にTi/Auを蒸着した後、フォトリソグラフィプロセスによって電極のパターニングを行うことで形成される。変調電極は適切な金属であればよく、また、上面バッファ層9a上に変調電極を形成する方法も特に限定されるものではない。変調電極の厚さは、例えば20μm以上である。なお、本明細書では説明および図示を省略するが、バッファ層9a上に変調電極を形成する場合には、上面バッファ層9aと変調電極との間にSi等からなる帯電防止用の導電膜層を形成してもよい。
【0073】
信号電極Sは、光導波路10に電界を印加するための電極であり、例えば、光導波路10と並行して延在するように配置されている。不図示であるが、信号電極Sは信号源および終端抵抗に接続されており、信号源から高周波電気信号が供給されて終端抵抗で終端されるようになっている。
【0074】
接地電極Gは、基準電位点に接続された電極であり、例えば、信号電極Sと同様に光導波路10と並行して延在するように配置されている。信号電極Sと接地電極Gとは離隔して設けられており、信号電極Sと接地電極Gとの間に電界が形成される。信号電極Sおよび接地電極Gは、例えばコプレーナ線路を構成している。
【0075】
信号電極Sと接地電極Gとの間に形成される電界は、リブ部6内に形成された光導波路10に印加される。信号源から供給する電気信号を制御して電界強度を調整することで、光導波路10内を伝搬する光波が適切に変調されるようになっている。
【0076】
図3に示すように、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bが基板5を挟み込む構造とすることで、基板5の上面および下面における応力のバランスを均一化することができる。その結果、基板5の上面および下面における応力の偏りが緩和されて基板5の変形を防ぐことができ、基板5に対するダメージや基板の特性劣化を防ぐことができる。
【0077】
図4は、本発明の実施の形態における光導波路素子1の断面構造の第3の例を示す図であり、基板5上に変調電極が形成された状態を示す図である。
図4は、
図1の線分Q−Qの矢視断面図である。なお、
図4では、光導波路素子1の厚さ方向が紙面の上下方向となり、光導波路素子1の幅方向が紙面の左右方向となり、光導波路素子1の長手方向が紙面に垂直な方向となるように、光導波路素子1が図示されている。
【0078】
図4には、基板5上に変調電極(信号電極Sおよび接地電極G)が形成され、基板5のリブ部6を光導波路10として用いるように構成された光導波路素子1の断面構造が示されている。
図4に示す基板5は、光導波路10の上に信号電極Sが配置された構造を有している。
【0079】
上述した
図3と同様、
図4に示すように、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bが基板5を挟み込む構造とすることで、基板5の上面および下面における応力のバランスを均一化することができる。その結果、基板5の上面および下面における応力の偏りが緩和されて基板5の変形を防ぐことができ、基板5に対するダメージや基板の特性劣化を防ぐことができる。
【0080】
図3および
図4の断面構造を例に挙げて説明したように、本発明は、光導波路10の間に信号電極Sが配置された構造を有する基板5、および、光導波路10の上に信号電極Sが配置された構造を有する基板5のいずれに対しても、基板5の上面および下面における応力の偏りを緩和することができる。また、下面バッファ層9bは、変調電極(信号電極Sおよび接地電極G)の位置や光導波路10の位置によらず、基板5の下面全面にわたって配置することができる。
【0081】
次に、
図5を参照しながら、本発明の実施の形態における光導波路素子1の製造工程について説明する。なお、
図5には、
図3の断面構造を有する光導波路素子1の製造工程が一例として図示されている。
【0082】
第1ステップにおいて、基板5となる層(例えばLN層)に対して下面バッファ層9bとなる層(例えばSiO
2等)を形成する。
図5(a)に第1ステップ後の状態を示す。
【0083】
第2ステップにおいて、下面バッファ層9bとなる層の下面および補強基板7の上面を直接接合法により直接接合する。
図5(b)に第2ステップ後の状態を示す。
【0084】
第3ステップにおいて、基板5となる電気光学効果を有する材料からなる層を適切な厚さとなるよう加工する。
図5(c)に第3ステップ後の状態を示す。
【0085】
第4ステップにおいて、例えばドライエッチング等によりリブ部6以外の部分を除去して、リブ部6を備えた基板5を形成する。
図5(d)に第4ステップ後の状態を示す。
【0086】
第5ステップにおいて、例えばスパッタ等により基板5の上に上面バッファ層9aを成膜する。
図5(e)に第5ステップ後の状態を示す。
【0087】
第6ステップにおいて、例えば上面バッファ層9aの上に電極(例えば、信号電極および接地電極)を形成する。
図5(f)に第6ステップ後の状態を示す。
【0088】
なお、上記の第2ステップで用いられている直接接合法は、異種材料を接合するために好適な手法である。バッファ層9bとなる層と補強基板7とは異なる材料で構成されているが、直接接合法を用いることで、両者を適切かつ確実に接合することができる。
【0089】
直接接合法は、プラズマ活性化接合法と、FAB(Fast Atom Beam:高速原子ビーム)方式の2つの方式に大別される。
【0090】
プラズマ活性化接合法は、プラズマ等によって接合させる2つの面を親水処理して接合性を向上させた後、2つの面同士を重ね合わせることで直接接合を行う方式である。プラズマ活性化接合法を用いた場合、バッファ層9bとなる層および補強基板7のそれぞれの面の分子鎖が互いに絡み相溶した界面層(結合層)が形成される。
【0091】
一方、FAB方式は、接合させる2つの面のそれぞれに薄いSi層や金属酸化物層を形成し、2つの面のそれぞれに常温下で中性子原子ビームを照射して活性化させた後、2つの面同士を貼り合わせることで直接接合を行う方式である。FAB方式を用いた場合、バッファ層9bとなる層と補強基板7との間には、薄いSi層や金属酸化物層等の接着層が形成される。
【0092】
FAB方式を用いてバッファ層9bと補強基板7とを直接接合した場合には、
図6に示すように、バッファ層9bと補強基板7との間に10〜500nm程度の極めて薄い接着層20が形成される。接着層20には、Si、Al
2O
3、Ta
2O
5、TiO
2、Nb
2O
5、Si
3N
4、AlN、SiO
2等が用いられる。
【0093】
図6は、本発明の実施の形態における光導波路素子の断面構造の第4の例を示す図であり、
図1の線分P−Pの矢視断面図である。なお、
図6は、
図2と同様の視点から見た断面構造を図示したものである。なお、
図6では、光導波路素子1の厚さ方向が紙面の上下方向となり、光導波路素子1の幅方向が紙面の左右方向となり、光導波路素子1の長手方向が紙面に垂直な方向となるように、光導波路素子1が図示されている。
【0094】
接着層20として用いることができる材料の中には光吸収性が高いものもある。しかしながら、接着層20と基板5との間には下面バッファ層9bが存在し、下面バッファ層9bによって、接着層20による光吸収を抑えることができる。換言すると、FAB方式を用いてバッファ層9bと補強基板7とを直接接合した場合には、下面バッファ層9bは、基板5の上面および下面における応力の偏りを緩和する役割を果たすとともに、接着層20による伝搬光の吸収を抑える役割も同時に果たす。
【0095】
本実施の形態では、基板5上にリブ部6が形成されたリブ型基板を一例に挙げて説明している。しかしながら上述したように、本発明は、リブ型基板に限定されず、例えば金属の熱拡散により基板5内に光導波路10が形成される基板に対しても適用することができる。拡散型光導波路を有する基板においても同様に、上面バッファ層9aおよび下面バッファ層9bが基板5を挟み込む構造とすることで、基板5の上面および下面における応力の偏りを緩和することができる。
【0096】
また、本実施の形態では、1つの信号電極Sの両側に接地電極Gが1つずつ配置されたコプレーナ線路構造を一例に挙げて説明している。しかしながら、本発明はこのようなコプレーナ線路構造に限定されず、例えば、並行する2つの信号電極Sの両側に接地電極Gが1つずつ配置された差動線路を有するコプレーナ線路構造が採用されてもよい。
【0097】
本発明は、本実施の形態で説明した光導波路素子を構成する光導波路を少なくとも一部に用いた光変調器を提供することができる。
【0098】
図7は、本発明の実施の形態に係る光変調器200の構成の一例を示す平面図である。
図7に示す光変調器200は、光導波路素子202と、光導波路素子202を収容する筐体204と、光導波路素子202に光を入射するための入力光ファイバ208と、光導波路素子202から出力される光を筐体204の外部へ導く出力光ファイバ210とを備える。なお、
図7に示す光変調器200の構成は一例にすぎず、本発明は、この構成に限定されるものではない。任意の構成を有する光変調器に対して、本発明に係る特徴を有する光導波路素子を組み込むことが可能である。
【0099】
図7に示す光変調器200は、長手方向一端部(図面左側)に入力光ファイバ208を備え、長手方向他端部(図面右側)に出力光ファイバ210を備えているが、光変調器200における光の入力位置および出力位置は任意に設定可能である。
【0100】
光導波路素子202は、例えば、基板上に設けられた光導波路206と、光導波路206内を伝搬する光波を変調するために基板上に形成された複数の電極212a〜212dとを有する。光導波路素子202は、例えば
図7に示すように、複数のマッハツェンダー型光導波路が組み合わされた光導波路206を有する。
【0101】
図7に示す光変調器200は、一例として、光導波路素子202から2つの光が出力されて偏波合成部228により偏波合成された光を、出力光ファイバ210を介して筐体204の外部へ出力するように構成されている。ただし、本発明に係る光変調器200は、このような構成に限定されるものではない。例えば、上述した
図1に示す光導波路素子1のように、第1合成部3aを備えて出射導波路から1つの光信号を出力する構成であってもよい。
【0102】
また、光導波路素子202も上述した光導波路素子1と同様に、略同一の材料からなり略同一の厚さを有する上面バッファ層および下面バッファ層がそれぞれ基板の上面および下面に接触するように形成された構成を有する。この構成により、上面バッファ層および下面バッファ層が基板を挟み込み、基板の上面および下面における応力バランスの均一化が実現される。
【0103】
筐体204は、光導波路素子202が固定されるケースおよびカバーにより構成されている。カバーは、ケース全体を覆うように配置され、これにより、筐体204の内部が気密封止される。なお、筐体204内にドライバや受光素子(PD:Photo Detector)等の電子部品が収容されてもよい。
【0104】
筐体204のケースには、高周波信号を入力するための導体である複数のリードピン240a〜240dが設けられている。リードピン240a〜240dは、中継基板218を介して、光導波路素子202のマッハツェンダ型光導波路に設けられた複数の電極212a〜212dのそれぞれの一端が接続されている。また、複数の電極212a〜212dのそれぞれの他端は、インピーダンス素子である終端基板250により終端されている。なお、
図7では詳細な構成について図示省略しているが、複数の電極212a〜212dは信号電極Sおよび接地電極Gを含み、光導波路206を伝搬する光波を変調できるようになっている。
【0105】
以上説明したように、本発明によれば、略同一の材料からなり略同一の厚さを有する上面バッファ層および下面バッファ層がそれぞれ基板の上面および下面に接触するように形成された構成を有する光導波路素子を含んだ光変調器を提供することができる。
【0106】
本発明は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例および設計変更等をその技術的範囲内に包含するものである。