【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【課題】触媒反応後に回収でき、空気中での取り扱いが可能であり、触媒反応において多量の基質を必要とせず、かつ、トリアルコキシシラン類を用いたヒドロシリル化反応の触媒活性を有する触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子、表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子及び第1のヒドロシラン類を含有する混合物を加熱する加熱工程を含む、含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の製造方法。
表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子、表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子及び第1のヒドロシラン類を含有する混合物を加熱する加熱工程を含む、含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の製造方法。
前記第1の配位性有機溶媒及び前記第2の配位性有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)である、請求項1〜4の何れか1項に記載の含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の製造方法。
前記混合物において、前記表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子に対する前記表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子の金属換算での混合比(モル比)が、0.1以上10.0以下である、請求項1〜5の何れか1項に記載の含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の製造方法。
請求項1〜6の何れか1項に記載の製造方法により得られる含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の存在下で、第2のアルケン類と第2のヒドロシラン類とを反応させるヒドロシリル化工程を含む、有機ケイ素化合物の製造方法。
前記ヒドロシリル化工程において、前記第2のアルケン類に対する第2のヒドロシラン類の量が、1.0モル当量以上6.0モル当量未満である、請求項7〜11の何れか1項に記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の詳細を説明するにあたり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱し
ない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0014】
1.含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の製造方法
本発明の第1の実施形態は、含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の製造方法であり、表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子、表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子及び第1のヒドロシラン類を含有する混合物を加熱する加熱工程を含む。
【0015】
本実施形態に係る製造方法により得られる含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒は、アルキン類又はアルケン類のヒドロシリル化反応;ハロゲン化アリール類とヒドロシラン類とのカップリング反応;等の炭素−ケイ素結合形成反応の触媒として有効に利用し得る。また、含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒は、反応後に回収して触媒として再利用し得る。さらに、含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒は、酸素及び湿気に対する安定性が高く、空気雰囲気下で容易に取り扱うことができる。
【0016】
1−1.加熱工程
[表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子]
本明細書において、「鉄ナノ粒子」とは、鉄元素を構成元素として含む粒子を意味する。従って、鉄を含むものであれば具体的な組成は特に限定されず、鉄単体のナノ粒子の他、鉄合金のナノ粒子;鉄単体のナノ粒子に酸素原子、炭素原子等のその他の原子がドープされているナノ粒子;酸化鉄等の無機鉄化合物のナノ粒子;等も含まれる。
【0017】
鉄ナノ粒子は、鉄の他に酸素原子を含むことが好ましい。具体的には、酸素原子がドープされている鉄ナノ粒子、酸素原子がドープされている鉄ナノ粒子又は酸化鉄ナノ粒子が好ましく、α−Fe
2O
3粒子であることがより好ましい。
【0018】
鉄ナノ粒子の粒子径(累積中位径(Median径))は、0.3nm以上200nm以下の範囲であれば特に限定されないが、好ましくは0.5nm以上、さらに好ましくは1nm以上であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。なお、累積中位径(Median径)は、透過型電子顕微鏡(TEM)で測定することができる。
【0019】
また、「表面に第1の配位性有機溶媒が配位した」とは、鉄ナノ粒子の表面に第1の配位性有機溶媒の分子が配位していることを意味する。
鉄ナノ粒子に配位する第1の配位性有機溶媒は、目的の触媒反応に応じて適宜選択することができる。また、第1の配位性有機溶媒が鉄ナノ粒子に配位しているか否かについては、分散剤等による表面処理を施すことなく、鉄ナノ粒子触媒が第1の配位性有機溶媒中に安定的に分散するか否かで判断することができる。即ち、例えば第1配位性有機溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)が配位した鉄ナノ粒子触媒は、DMFと親和性のある配位性有機溶媒に安定的に分散させることができる。
【0020】
第1の配位性有機溶媒としては、例えばジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド系溶媒;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、DMFは、表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子の製造において、第1の配位性有機溶媒、反応溶媒及び還元剤として作用し、1ステップでの製造が可能であるため、特に好適である。
【0021】
表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子の製造方法は、特に限定されないが、公知の製造方法に従って製造することができる。公知の製造方法としては、例えば、特
開2015−129103、国際公開第2018/131430号等に記載されているように、鉄元素を含んだ前駆体を第1の配位性有機溶媒中で加熱還流する方法が挙げられる。
【0022】
[表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子]
本明細書において、「白金ナノ粒子」とは、白金元素を構成元素として含む粒子を意味する。従って、白金を含むものであれば具体的な組成は特に限定されず、白金単体のナノ粒子の他、白金合金のナノ粒子;白金単体のナノ粒子に酸素原子、炭素原子等のその他の原子がドープされているナノ粒子;酸化白金等の無機白金化合物のナノ粒子;等も含まれる。
【0023】
白金ナノ粒子の粒子径(累積中位径(Median径))は、0.3nm以上200nm以下の範囲であれば特に限定されないが、好ましくは0.5nm以上、さらに好ましくは1nm以上であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。なお、累積中位径(Median径)は、透過型電子顕微鏡(TEM)で測定することができる。
【0024】
また、「表面に第2の配位性有機溶媒が配位した」とは、白金ナノ粒子の表面に第2の配位性有機溶媒の分子が配位していることを意味する。
白金ナノ粒子に配位する第2の配位性有機溶媒は、目的の触媒反応に応じて適宜選択することができる。また、第2の配位性有機溶媒が白金ナノ粒子に配位しているか否かは、第1の配位性有機溶媒が鉄ナノ粒子に配位しているか否かの判断と同様の手法により判断することができる。
【0025】
第2の配位性有機溶媒としては、第1の配位性有機溶媒と同様の溶媒が挙げられ、好ましい態様も同様である。第2の配位性有機溶媒は、第1の配位性有機溶媒と同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0026】
表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子の製造方法は、特に限定されないが、公知の製造方法に従って製造することができる。公知の製造方法としては、例えば、国際公開第2018/131430号に記載されているように、白金元素を含んだ前駆体を第2の配位性有機溶媒中で加熱還流する方法が挙げられる。
【0027】
[第1のヒドロシラン類]
第1のヒドロシラン類の具体的種類は、特に限定されず、例えば下記式(A)で表される化合物(以下、「ヒドロシラン類(A)」と称することがある。)が挙げられる。なお、第1のヒドロシラン類は、公知であるか、公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
【0029】
(R
1)
式(A)中、R
1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20の芳香族複素環基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基を表す。
【0030】
R
1で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子
が挙げられる。これらのうち、ハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子又は塩素原子である。
【0031】
R
1で表される炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基等の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等のシクロアルキル基;等が挙げられる。
これらのうち、脂肪族炭化水素基は、好ましくは直鎖又は分岐のアルキル基であり、より好ましくは直鎖アルキル基である。また、脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。
【0032】
R
1で表される炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。なお、芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは10以下である。
【0033】
R
1で表される炭素数3〜20の芳香族複素環基としては、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基等が挙げられる。なお、芳香族複素環基の炭素数は、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。
【0034】
R
1で表される炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−エイコシルオキシ基等の直鎖又は分岐のアルコキシ基が挙げられる。
これらのうち、アルコキシ基は、好ましくは直鎖アルキル基である。また、アルコキシ基の炭素数は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。
【0035】
R
1で表される炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数3〜20の芳香族複素環基又は炭素数1〜20のアルコキシ基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、重水素原子;ヒドロキシル基;カルボキシル基;ビニル基;メルカプト基;アミノ基;ウレイド基;イソシアネート基;チオイソシアネート基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、グリシジルオキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基等のアルケニルカルボニルオキシ基;オキシラニル基、オキセタニル基、テトラヒドロフリル基等の環状エーテル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルキルオ
キシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、カルバゾリル基等の炭素数3〜12の芳香族複素環基;等が挙げられる。
なお、R
1で表される炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数3〜20の芳香族複素環基又は炭素数1〜20のアルコキシ基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はアルコキシ基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
【0036】
(n)
式(A)中、nは、1〜3の整数を表す。nは、好ましくは2又は3であり、より好ましくは3である。
【0037】
含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒は、ヒドロシラン類とアルケン類、アルキン類、ハロゲン化アリール類等との反応において活性を示すものである。ここで、第1のヒドロシラン類は、触媒反応の基質であるヒドロシラン類と同一の化合物であってもよく、異なる化合物であってもよいが、同一の化合物を選択することが好ましい。
従って、具体的なヒドロシラン類(A)としては、例えば本発明の第2の実施形態に係る有機ケイ素化合物の製造方法の説明において例示する第2のヒドロシラン類と同様の化合物が挙げられる。
【0038】
[第1のアルケン類]
本工程では、混合物は、さらに第1のアルケン類を含有していてもよい。例えば、アルケン類のヒドロシリル化反応に用いる含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒を製造する場合には、触媒活性の向上、反応中の触媒の安定化等の観点から、混合物に第1のアルケン類を含有させることが好ましい。
第1のアルケン類の具体的種類は、特に限定されず、例えば下記式(B)で表される化合物(以下、「アルケン類(B)」と称することがある。)が挙げられる。なお、第1のアルケン類は、公知であるか、公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
【0040】
(R
2〜R
5)
式(B)中、R
2〜R
5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数3〜20の芳香族複素環基を表す。
【0041】
R
2〜R
5で表されるハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の芳香族複素環基としては、それぞれ、R
1で表されるハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の芳香族複素環基と同様のものが挙げられる。
【0042】
R
2〜R
5が炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基である場合、その炭素数は、好ましく
は2以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは6以上、また、好ましくは18以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下である。
R
2〜R
5が炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である場合、その炭素数は、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは10以下である。
R
2〜R
5が炭素数3〜20の芳香族複素環基である場合、その炭素数は、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。
【0043】
R
2〜R
5で表される炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の芳香族複素環基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、R
1で表される炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数3〜20の芳香族複素環基又は炭素数1〜20のアルコキシ基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
なお、R
2〜R
5で表される炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の芳香族複素環基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
【0044】
含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒を、アルケン類のヒドロシリル化反応に用いる場合、第1のアルケン類は、基質であるアルケン類と同一の化合物であってもよく、異なる化合物であってもよいが、同一の化合物であることが好ましい。
従って、具体的なアルケン類(B)としては、例えば本発明の第2の実施形態に係る有機ケイ素化合物の製造方法の説明において例示する第2のアルケン類と同様の化合物が挙げられる。
【0045】
[有機溶媒]
本工程では、混合物は、さらに有機溶媒を含有していてもよい。ここで、有機溶媒とは、加熱工程における加熱温度において液体の状態で存在する有機化合物であって、第1のヒドロシラン類及び第1のアルケン類を含まないものとする。
第1のヒドロシラン類及び第1のアルケン類が、何れも加熱工程において液体の状態で存在しない場合は、混合物に有機溶媒を含有させることが好ましい。
【0046】
有機溶媒は、特に限定されず、加熱温度等に応じて適宜選択することができる。有機溶媒は、例えば不活性溶媒であってよく、第3の配位性有機溶媒であってもよい。
不活性溶媒としては、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒が挙げられる。
第3の配位性有機溶媒としては、第1の配位性有機溶媒又は第2の配位性有機溶媒と同様の有機溶媒が挙げられ、好ましい態様も同様である。第3の配位性有機溶媒は、第1の配位性有機溶媒又は第2の配位性有機溶媒と同一であってもよく、異なっていてもよいが、各ナノ粒子の分散性の観点から、第1〜第3の配位性有機溶媒が全て同一の配位性有機溶媒であることが好ましい。
なお、これらの有機溶媒は、1種類に限られず、2種類以上を組み合わせた混合溶媒であってもよい。
【0047】
[混合割合]
表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子と表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子との混合比は、特に限定されないが、表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子に対する表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子の金属換算での混合比(モル比)は、通常0.1以上10.0以下である。混合比は、前記範囲内において、目的の触媒反応、基質等に応じて適宜選択すればよい。例えば0.2以上、0.5以上又は1.0以上であってよく、5.0以下、3.0以下又は2.0以下であっ
てもよい。
【0048】
第1のヒドロシラン類の混合量は、表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子及び表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子の表面の一部又は全体に第1のヒドロシラン類又は第1のヒドロシラン類由来の含ケイ素化合物が物理的又は化学的に結合し得る限り特に制限されない。通常、表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子及び表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子の総金属換算(鉄換算及び白金換算の合計)に対して等量、好ましくは過剰量、例えば10モル当量以上、100モル当量以上、200モル当量又は300モル当量以上の第1のヒドロシラン類を混合する。或いは、第1のヒドロシラン類を基準に、表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子及び表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子が、総金属換算(鉄換算及び白金換算の合計)で、通常1.7mmol%以上、好ましくは5.0mmol%以上、より好ましくは8.3mmol%以上、さらに好ましくは17mmol%以上、また、通常833mmol%以下、好ましくは333mmol%以下、より好ましくは167mmol%以下、さらに好ましくは83mmol%以下となるよう混合する。
【0049】
第1のアルケン類の混合量は、特に限定されず、例えば第1のアルケン類を基準に、表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子及び表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子が、総金属換算(鉄換算及び白金換算の合計)で、通常0.01mol%以上、好ましくは0.03mol%以上、より好ましくは0.05mol%以上、さらに好ましくは0.1mol%以上、また、通常5.0mol%以下、好ましくは2.0mol%以下、より好ましくは1.0mol%以下、さらに好ましくは0.5mol%以下となる量である。なお、第1のアルケン類が加熱条件下において気体として存在する場合は、反応系内に第1のアルケン類を流通させることで、混合物に含有させればよい。
【0050】
[加熱温度及び加熱時間]
加熱温度は、混合物の組成、加熱時間等に応じて適宜選択すればよく、通常70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、また、通常150℃以下、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
加熱時間は、混合物の組成、加熱温度等に応じて適宜選択すればよく、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上、さらに好ましくは15時間以上、また、通常48時間以下、好ましくは42時間以下、より好ましくは36時間以下、さらに好ましくは30時間以下である。
加熱温度及び加熱時間を上記範囲内とすることにより、表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子と表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子との混合物とは異なる触媒活性種を効率よく生じさせることができる。
【0051】
[雰囲気ガス等]
本工程は、常圧下で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。
また、本実施形態においては、表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子及び表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子だけでなく、製造される含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒もまた、酸素及び湿気に対する安定性が高いため、本工程は、空気雰囲気下で行うことができる。本工程は、空気雰囲気以外にも、酸素又は湿気を含む雰囲気下で行ってもよく、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行ってもよい。
【0052】
1−2.その他工程
本実施態様に係る含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の製造方法においては、上記触媒加熱工程の他、精製工程等の任意の工程を含んでいてもよい。具体的な精製方法としては、ろ過、洗浄、減圧乾燥等により有機溶媒、未反応の第1のヒドロシラン類、第1のヒドロシ
ラン類の不均化物等を除去する方法が挙げられる。
【0053】
2.有機ケイ素化合物の製造方法
次に、本発明の第2の実施形態に係る有機ケイ素化合物の製造方法について説明する。本実施形態に係る有機ケイ素化合物の製造方法は、本発明の第1の実施形態に係る製造方法により得られるケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の存在下で、第2のアルケン類と第2のヒドロシラン類とを反応させるヒドロシリル化工程を含む。
本実施形態に係る製造方法は、本発明の第1の実施形態に係る製造方法によりケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒を得る触媒製造工程を含んでいてもよい。
【0054】
2−1.有機ケイ素化合物
本実施形態に係る製造方法により製造される有機ケイ素化合物は、アルケン類とヒドロシラン類とを反応させて得られる化合物であって、分子中の少なくとも1つのケイ素原子に少なくとも1つのアルキル基が結合した化合物であれば、具体的な構造は特に限定されず、幅広い有機ケイ素化合物であってよい。具体的には、式(E1)又は(E2)で表される有機ケイ素化合物(以下、「有機ケイ素化合物(E1)」又は「有機ケイ素化合物(E2)」と称することがある。)が挙げられる。
【0056】
(R
6〜R
9)
式(E1)及び(E2)中、R
6〜R
9は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数3〜20の芳香族複素環基を表す。
【0057】
R
6〜R
9で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらのうち、ハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子又は塩素原子である。
【0058】
R
6〜R
9で表される炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基等の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等のシクロアルキル基;等が挙げられる。
これらのうち、脂肪族炭化水素基は、好ましくは直鎖又は分岐のアルキル基であり、より好ましくは直鎖アルキル基である。また、脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは6以上、また、好ましくは18以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下である。
【0059】
R
6〜R
9で表される炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基
、ペリレニル基等が挙げられる。なお、芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは10以下である。
【0060】
R
6〜R
9で表される炭素数3〜20の芳香族複素環基としては、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基等が挙げられる。なお、芳香族複素環基の炭素数は、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。
【0061】
R
6〜R
9で表される炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の芳香族複素環基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、重水素原子;ヒドロキシル基;カルボキシル基;ビニル基;メルカプト基;アミノ基;ウレイド基;イソシアネート基;チオイソシアネート基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、グリシジルオキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基等のアルケニルカルボニルオキシ基;オキシラニル基、オキセタニル基、テトラヒドロフリル基等の環状エーテル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルキルオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、カルバゾリル基等の炭素数3〜12の芳香族複素環基;等が挙げられる。
なお、R
6〜R
9で表される炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の芳香族複素環基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
【0062】
R
6〜R
9は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
また、R
6〜R
9の特に好適な態様としては、R
7〜R
9が何れも水素原子である態様;及びR
6が炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、かつ、R
7〜R
9が何れも水素原子である態様;が挙げられる。
【0063】
(R
10)
式(E1)及び(E2)中、R
10は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20の芳香族複素環基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基を表す。
【0064】
R
10で表されるハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の芳香族複素環基としては、それぞれ、R
6〜R
9で表されるハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の芳香族複素環基と同様のものが挙げられる。
【0065】
R
10が炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基である場合、その炭素数は、好ましくは1
0以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。
R
10が炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である場合、その炭素数は、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは10以下である。
R
10が炭素数3〜20の芳香族複素環基である場合、その炭素数は、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。
【0066】
R
10で表される炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−エイコシルオキシ基等の直鎖又は分岐のアルコキシ基が挙げられる。
これらのうち、アルコキシ基は、好ましくは直鎖アルキル基である。また、アルコキシ基の炭素数は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。
【0067】
R
10で表される炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数3〜20の芳香族複素環基又は炭素数1〜20のアルコキシ基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、R
6〜R
9で表される炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の芳香族複素環基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
なお、R
10で表される炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数3〜20の芳香族複素環基又は炭素数1〜20のアルコキシ基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はアルコキシ基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
【0068】
R
10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜20のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜20のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1〜20のアルコキシ基であることがさらに好ましい。
また、式(E1)及び(E2)中にR
10が複数ある場合、R
10は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0069】
(m)
式(E1)及び(E2)中、mは、1〜3の整数を表す。mは、好ましくは2又は3であり、より好ましくは3である。
【0070】
本実施形態において、ヒドロシリル化反応の触媒として用いる含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒は、従来触媒(例えば非特許文献2に記載の触媒)では活性が得られにくかったアルケン類とジアルコキシシラン類やトリアルコキシシラン類との反応においても高い触媒活性を示す。従って、本実施形態に係る製造方法は、mが2、かつ、2つのR
10がアルコキシ基である有機ケイ素化合物(E1)若しくは(E2);mが3、かつ、3つのR
10がアルコキシ基である有機ケイ素化合物(E1)若しくは(E2);又はmが3、かつ、R
10のうち2つがアルコキシ基であり1つがアルキル基である有機ケイ素化合物(E1)若しくは(E2);の製造に適している。工業的には、ジアルコキシ型又はトリアルコキシ型のシランカップリング剤の製造に有用である。本実施形態に係る製造方法により、シランカップリング剤、その原料又はその中間体を製造する場合には、好ましいR
10として、メチル基、メトキシ基又はエトキシ基が挙げられる。
【0071】
2−2.触媒製造工程
触媒製造工程は、本発明の第1の実施形態に係る製造方法により、含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒を製造する工程である。
本工程において、含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の製造に用いる第1のアルケン類又は第1のヒドロシラン類は、それぞれ、後述する第2のアルケン類又は第2のヒドロシラン類と同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0072】
本実施形態においては、表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子に対する表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子の金属換算での混合比(モル比)は、通常0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1.0以上、また、通常10.0以下、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下である。
【0073】
本工程で製造される含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒は、アルケン類のヒドロシリル化反応において高い触媒活性を示し、ヒドロシラン類としてトリアルコキシシラン類を使用した場合においても反応も円滑に進行させることができる。本発明者等は、トリアルコキシシラン類を用いた場合に十分な活性の得られない従来触媒と含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒との触媒活性の違いについて、以下のように推測している。すなわち、表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子及び表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子の表面にヒドロシラン類が物理的又は化学的に結合することによって、表面に第1の配位性有機溶媒が配位した鉄ナノ粒子及び表面に第2の配位性有機溶媒が配位した白金ナノ粒子の単なる混合物とは異なる触媒活性種が生じているものと推測される。
【0074】
2−3.ヒドロシリル化工程
ヒドロシリル化工程は、含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の存在下、第2のアルケン類と第2のヒドロシラン類とを反応させることにより、有機ケイ素化合物を得る工程である。
以下に、本工程におけるヒドロシリル化反応の基質及び反応条件について詳細に述べる。
【0075】
[含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒]
含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒は、本発明の第1の実施形態に係る製造方法により得られるものであり、その詳細な説明は、本発明の第1の実施形態に係る製造方法の説明及び本実施形態における触媒製造工程の説明を援用する。
【0076】
[第2のアルケン類]
基質として用いられるアルケン類の具体的種類は、特に限定されず、製造目的である有機ケイ素化合物に応じて適宜選択することができる。第2のアルケン類としては、例えば下記式(C)で表される化合物(以下、「アルケン類(C)」と称することがある。)が挙げられる。なお、第2のアルケン類は、公知であるか、公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
【0078】
式(C)中、R
6〜R
9は、式(E1)又は(E2)におけるR
6〜R
9と同様に定義され、好ましい態様も同様である。
【0079】
具体的なアルケン類(C)としては、1−プロペン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、4−フェニル−1−ブテン、6,6−ジメチル−1−ヘプテン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、スチレン、アリルグリシジルエーテル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、アリルアミン、アリル尿素、アリルメルカプタン等のα−オレフィンが挙げられる。これらのうち、1−ドデセンが好ましい。また、アリルグリシジルエーテル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、アリルアミン、アリル尿素、アリルメルカプタン等のシランカップリング剤の原料となり得るアルケン類も好ましい。
なお、上述のアリルグリシジルエーテル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル等のように、一分子中に複数のアルケニル基を有するアルケン類(C)に関しては、何れのアルケニル基においてもヒドロシリル化は進行し得るが、含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の高い触媒活性に起因して、相当程度の収率で目的のヒドロシリル化生成物(アリル基のみがヒドロシリル化された化合物)が得られる。
【0080】
[第2のヒドロシラン類]
基質として用いられる第2のヒドロシラン類の具体的種類は、特に限定されず、製造目的である有機ケイ素化合物に応じて適宜選択することができる。第2のヒドロシラン類としては、例えば下記式(D)で表される化合物(以下、「ヒドロシラン類(D)」と称することがある。)が挙げられる。なお、第2のヒドロシラン類は、公知であるか、公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
【0082】
式(D)中、R
10及びmは、それぞれ、式(E1)又は(E2)におけるR
10及びmと同様に定義され、好ましい態様も同様である。
【0083】
具体的なヒドロシラン類(D)としては、メチルシラン、エチルシラン、プロピルシラン等のモノアルキルシラン類;ジメチルシラン、ジエチルシラン、エチルメチルシラン等のジアルキルシラン類;トリメチルシラン、トリエチルシラン等のトリアルキルシラン類;フェニルシラン、ナフチルシラン等のモノアリールシラン類;ジフェニルシラン、ジナフチルシラン等のジアリールシラン類;トリフェニルシラン、トリナフチルシラン等のトリアリールシラン類;メトキシシラン、エトキシシラン、プロポキシシラン等のモノアルコキシシラン類;ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、エトキシメトキシシラン、ジプロポキシシラン等のジアルコキシシラン類;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジエトキシメトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン等のアルキルジアルコキシシラン類;ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン等のジアルキルアルコキシシラン類;等が挙げられる。
【0084】
これらのうち、ヒドロシラン類(D)は、ジアルコキシシラン類、トリアルコキシシラン類又はアルキルジアルコキシシラン類であることが好ましく、トリアルコキシシラン類であることがより好ましい。すなわち、ヒドロシラン類(D)は、mが2、かつ、2つのR
10がアルコキシ基である態様;mが3、かつ、3つのR
10がアルコキシ基である態様;又はmが3、かつ、R
10のうち2つがアルコキシ基であり1つがアルキル基である態様;であることが好ましく、3つのR
10がアルコキシ基である態様であることがより好ましい。
【0085】
[含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の量]
ヒドロシリル化反応に用いる含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の量は、特に限定されないが、アルケン類に対して総金属換算(鉄換算及び白金換算の合計)で通常0.01mol%以上、好ましくは0.03mol%以上、より好ましくは0.05mol%以上、さら
に好ましくは0.1mol%以上、また、通常5.0mol%以下、好ましくは2.0mol%以下、より好ましくは1.0mol%以下、さらに好ましくは0.5mol%以下で
ある。触媒量を上記範囲内とすることにより、基質の転化率、有機ケイ素化合物の収率、有機ケイ素化合物精製の容易性等を向上させることができる。
【0086】
[基質のモル比]
ヒドロシリル化工程において、第2のアルケン類に対する第2のヒドロシラン類の量は、特に制限されないが、通常1.0モル当量以上6.0モル当量未満である。シランガスの生成量抑制の観点からは、第2のアルケン類に対する第2のヒドロシラン類の量は、好ましくは5.0モル当量以下、より好ましくは4.0モル当量以下、さらに好ましくは3.0モル当量以下である。また、有機ケイ素化合物の収率向上の観点からは、第2のアルケン類に対する第2のヒドロシラン類の量は、好ましくは1.5モル当量以上、より好ましくは2.0モル当量以上である。
本実施形態においては、ヒドロシリル化反応の触媒として含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒を用いることにより、従来触媒を用いる場合よりもヒドロシラン類の量(仕込み量)が少なくても円滑にヒドロシリル化反応を進行させることができ、効率よく有機ケイ素化合物を製造することができる。
【0087】
[雰囲気ガス等]
ヒドロシリル化工程は、常圧下で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。
また、ヒドロシリル化反応の従来触媒(特許文献1に記載の触媒)は、活性化に酸素を要し、不活性雰囲気下では十分な触媒活性が得られないところ、含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒は、不活性雰囲気下でも高い触媒活性を示す。従って、本実施形態に係る製造方法では、ヒドロシリル化反応は、酸素、空気等の酸素含有雰囲気下で行うことができるのは勿論のこと、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下でも行うことができる。
本実施形態においては、ヒドロシリル化反応は、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。不活性雰囲気下でヒドロシリル化反応を行うことにより、ヒドロシラン類の不均化が抑制される結果、シランガスの発生が抑制されるという利点がある。
【0088】
[反応溶媒]
ヒドロシリル化工程は、無溶媒で行ってもよく、反応溶媒中で行ってもよいが、無溶媒で行うことが好ましい。なお、本明細書において「無溶媒」とは、反応溶媒を意図的に反応系内に加えないことを意味し、反応系内に一切の溶媒が存在しないことを意味するものではない。
反応溶媒としては、特に限定されず、例えばヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジグリム、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒;1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;酢酸、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリン等のプロトン性極性溶媒;アセトン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒;等が挙げられる。これらの反応溶媒は、1種類に限られず、2種類以上を組み合わせた混合溶媒であってもよい。また、反応溶媒は、脱水脱酸素化して用いることが好ましい。
【0089】
[反応温度]
反応温度は、触媒の種類、基質の反応性、反応溶媒の種類、反応時間等の反応条件に応
じて適宜選択すればよく、通常70℃以上150℃以下である。反応温度の下限は、反応速度の観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。また、反応温度の上限は、ヒドロシラン類の不均化抑制の観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
【0090】
[反応時間]
反応時間は、触媒の種類、基質の反応性、反応溶媒の種類、反応温度等の反応条件に応じて適宜選択すればよく、通常1時間以上48時間以下である。有機ケイ素化合物の収率向上の観点から、反応時間の下限は、好ましくは4時間以上、より好ましくは10時間以上、さらに好ましくは15時間以上である。また、精製が容易となる点で、反応時間の上限は、好ましくは42時間以下、より好ましくは36時間以下、さらに好ましくは30時間以下である。
【0091】
2−4.その他工程
本実施態様に係る有機ケイ素化合物の製造方法においては、上記触媒製造工程及びヒドロシリル化工程の他、任意の工程を含んでいてもよい。任意の工程としては、有機ケイ素化合物の純度を高めるための精製工程が挙げられる。精製工程においては、ろ過、吸着、カラムクロマトグラフィー、蒸留等の有機合成分野で通常行われる精製方法を採用することができる。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、実施例におけるガスクロマトグラフィー(GC)の測定方法は、以下の通りである。
【0093】
<GC測定条件>
装置名:GC−2025(株式会社島津製作所)
カラム:BP−5(Trajan Scientific and Medical)
キャリアガス:窒素
【0094】
<含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の合成>
(合成例1:表面にDMFが配位した鉄ナノ粒子の分散液の調製)
スクリュー管にFe(OAc)
2 0.1mmol及びエタノール1mLを加え、Fe
(OAc)
2が高分散状態になるまで静置することで、Fe(OAc)
2分散液を得た。次いで、DMFで共洗いした三ツ口丸底フラスコに、空気雰囲気下で量り取ったDMF50mLを加え、1500rpmで攪拌しながらDMFを140℃で10分間予備加熱した。続いて、この三ツ口丸底フラスコにFe(OAc)
2分散液500μLを加え、8時間加熱還流することにより、表面にDMFが配位した鉄ナノ粒子(以下、「FeNPs」と称することがある。)の分散液を得た。
Fe(OAc)
2が全て酸化鉄ナノ粒子に変換されたと仮定すると、得られた分散液の鉄元素の濃度は、1.0mmol/Lとなる。
【0095】
(合成例2:表面にDMFが配位した白金ナノ粒子の分散液の調製)
スクリュー管にH
2PtCl
6・6H
2O 0.1mmol及びDMF1mLを加え、
H
2PtCl
6・6H
2Oが高分散状態になるまで静置することで、H
2PtCl
6・6H
2O分散液を得た。次いで、DMFで共洗いした三ツ口丸底フラスコに、空気雰囲気下で量り取ったDMF50mLを加え、1500rpmで攪拌しながらDMFを140℃で
10分間予備加熱した。続いて、この三ツ口丸底フラスコにH
2PtCl
6・6H
2O分散液500μLを加え、10時間加熱還流することにより、表面にDMFが配位した白金ナノ粒子(以下、「PtNPs」と称することがある。)の分散液を得た。
H
2PtCl
6が全て金属白金ナノ粒子に変換されたと仮定すると、得られた分散液の白金元素の濃度は、1.0mmol/Lとなる。
【0096】
(合成例3:含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の合成)
シュレンク管に合成例1で得た分散液250μL(Fe換算で0.25μmol)及び合成例2で得た分散液250μL(Pt換算で0.25μmol)を加え、真空下でDMFを留去した。次いで、シュレンク管に1−ドデセン0.5mmol及びトリエトキシシラン3.0mmolを入れ、空気雰囲気下、100℃で24時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した。続いて、シュレンク管にヘキサン8mL及びDMF2mLを加えて撹拌し、静置した後に上澄み液をパスツールピペットで取り除いた。さらにシュレンク管にヘキサン8mLを加えて撹拌し、静置した後に上澄み液をパスツールピペットで取り除いた。沈殿物を真空下で乾燥することにより、含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒(以下、「Fe−Pt−Si」と称することがある。)を得た。
【0097】
得られた含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒を走査型透過電子顕微鏡(STEM)により観察した。結果を
図1に示す。また、含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒におけるケイ素(Si)、鉄(Fe)及び白金(Pt)の元素マッピング像を、それぞれ、
図2〜4に示した。
【0098】
(合成例4:含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の合成)
シュレンク管に合成例1で得た分散液500μL(Fe換算で0.5μmol)及び合成例2で得た分散液500μL(Pt換算で0.5μmol)を加え、真空下でDMFを留去した。次いで、シュレンク管にトリエトキシシラン3.0mmolを加え、空気雰囲気下、100℃で10時間撹拌した。その後、真空下で、反応液から未反応のトリエトキシシラン等の揮発性成分を留去することにより、含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒(以下、「Fe−Pt−[Si]」と称することがある。)を得た。
【0099】
<有機ケイ素化合物の製造1>
【化10】
【0100】
(実施例1)
合成例3で得た含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒(Fe換算で0.25μmol、Pt換算で0.25μmol)が入ったシュレンク管内をアルゴンで置換した。シュレンク管に1−ドデセン1.0mmol(0.168g)及びトリエトキシシラン1.0mmol(0.164g)を加え、100℃に設定したオイルバスで加熱しながら、24時間攪拌した。反応液を氷浴にて冷却した後、反応液にヘキサン約10mL及び内部基準物質としてノナンを加え、GC測定を行った。GC測定結果より算出した基質の転化率及び生成物の収率を表1に示す。
【0101】
(実施例2)
反応条件を表1の通りとした以外は、実施例1と同様の方法でヒドロシリル化反応を行った。GC−MSの測定結果より算出した基質の転化率及び生成物の収率を表1に示す。
【0102】
(比較例1)
シュレンク管に合成例1で得た分散液250μL(Fe換算で0.25μmol)及び合成例2で得た分散液250μL(Pt換算で0.25μmol)を加え、真空下で攪拌しながら分散媒を留去することで、FeNPs−PtNPs混合触媒を得た。
触媒をFeNPs−PtNPs混合触媒(Fe換算で0.25μmol、Pt換算で0.25μmol)に代えた以外は実施例1と同様の方法でヒドロシリル化反応を行った。GC−MSの測定結果より算出した基質の転化率及び生成物の収率を表1に示す。
【0103】
(比較例2)
反応条件を表1の通りとした以外は、比較例1と同様の方法でヒドロシリル化反応を行った。GC−MSの測定結果より算出した基質の転化率及び生成物の収率を表1に示す。
なお、表1には、参考のため、国際公開第2018/131430号の実施例18の結果を併せて示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示した結果から、触媒としてFeNPs−PtNPs混合触媒を用いた場合(比較例1、2)には、アルケン類に対するヒドロシラン類の量を1.0モル当量又は2.0モル当量とすると、目的の有機ケイ素化合物は低収率でしか得られなかった。従って、高収率で有機ケイ素化合物を得るためには、国際公開第2018/131430号の実施例18に示されるように、アルケン類に対して6モル当量程度の多量のヒドロシラン類を使用する必要があるといえる。
【0106】
一方、触媒として含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒を用いた場合(実施例1、2)には、アルケン類に対するヒドロシラン類の量を1.0モル当量とすると、33%の収率で有機ケイ素化合物が得られ、2.0モル当量とすると、82%の高収率で有機ケイ素化合物が得られることがわかった。すなわち、含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒の存在下では、ヒドロシラン類の使用量を、従来の触媒を用いた場合の6分の1〜3分の1程度としても、アルケン類のヒドロシリル化反応が円滑に進行することが示された。
また、触媒として含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒を用いることで、不活性雰囲気下でもヒドロシリル化は円滑に進行することも示された。
さらに、実施例1、2では、GC測定においてシランガスは検出されなかった。
【0107】
<有機ケイ素化合物の製造2>
【化11】
【0108】
(実施例3)
合成例4で得た含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒(Fe換算で0.25μmol、Pt換算で0.25μmol)が入ったシュレンク管内をアルゴンで置換した。シュレンク管に1−ドデセン0.5mmol(0.084g)及びトリエトキシシラン3.0mmol(0.493g)を加え、100℃に設定したオイルバスで加熱しながら、14時間攪拌した。反応液を氷浴にて冷却した後、反応液にヘキサン約10mL及び内部基準物質としてノナンを加え、GC測定を行った。GC測定結果より算出した基質の転化率及び生成物の収率を表2に示す。
【0109】
(実施例4)
トリエトキシシランの量を表2の通りとした以外は、実施例3と同様の方法でヒドロシリル化反応を行った。GC−MSの測定結果より算出した基質の転化率及び生成物の収率を表2に示す。
【0110】
【表2】
【0111】
実施例3及び4において用いた含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒は、第1のアルケン類の非存在下で合成された点において、実施例1及び2で用いた触媒とは異なるものである。実施例3及び4より、この含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒を用いることによっても、不活性雰囲気下でアルケン類のヒドロシリル化が速やかに進行することがわかった。
また、当該含ケイ素鉄−白金ナノ粒子触媒を用いることで、アルケン類に対するヒドロシラン類の量を6.0モル当量とした場合(実施例3)は勿論のこと、5.0モル当量に低減した場合(実施例4)であっても、高収率で目的の有機ケイ素化合物が得られることが示された。