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特開2021-116211海洋製品用モルタル又はコンクリート、及び、海洋製品用モルタル又はコンクリートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-116211(P2021-116211A)
(43)【公開日】2021年8月10日
(54)【発明の名称】海洋製品用モルタル又はコンクリート、及び、海洋製品用モルタル又はコンクリートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20210712BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20210712BHJP
   C04B 18/10 20060101ALI20210712BHJP
【FI】
   C04B28/02
   C04B18/14 Z
   C04B18/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-11570(P2020-11570)
(22)【出願日】2020年1月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594018267
【氏名又は名称】株式会社中研コンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大野 晃
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕明
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA02
4G112PA26
4G112PA29
4G112PC11
(57)【要約】
【課題】波浪や海流の影響を受けにくく、かつ、初期材齢における強度発現性に優れた海洋製品用モルタル又はコンクリート、及び、海洋製品用モルタル又はコンクリートの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、海洋製品に用いられ、セメントと、塩化物イオンの含有量が1000mg/kg以上である有機材料燃焼灰と、単位容積質量が3.0g/cm以上である重量骨材と、を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋製品に用いられるモルタル又はコンクリートであって、
セメントと、
塩化物イオンの含有量が1000mg/kg以上である有機材料燃焼灰と、
単位容積質量が3.0g/cm以上である重量骨材と、
を含有する、海洋製品用モルタル又はコンクリート。
【請求項2】
前記有機材料燃焼灰の塩化物イオンの含有量が、2000mg/kg以上6000mg/kg以下である、請求項1に記載の海洋製品用モルタル又はコンクリート。
【請求項3】
前記有機材料燃焼灰が、木質バイオマス灰である、請求項1又は2に記載の海洋製品用モルタル又はコンクリート。
【請求項4】
単位有機材料燃焼灰量が、200kg/m以上1500kg/m以下である、請求項1〜3のいずれか一つに記載の海洋製品用モルタル又はコンクリート。
【請求項5】
単位重量骨材量が、200kg/m以上1800kg/m以下である、請求項1〜4のいずれか一つに記載の海洋製品用モルタル又はコンクリート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の海洋製品用モルタル又はコンクリートを製造する方法であって、
セメントと、塩化物イオンの含有量が1000mg/kg以上である有機材料燃焼灰と、単位容積質量が3.0g/cm以上である重量骨材と、水と、を練り混ぜてモルタル組成物又はコンクリート組成物を得る混練工程と、
前記モルタル組成物又はコンクリート組成物を型枠に打設する打設工程と、
打設したモルタル組成物又はコンクリート組成物を養生して硬化させる養生工程と、
を含む、海洋製品用モルタル又はコンクリートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋製品用モルタル又はコンクリート、及び、海洋製品用モルタル又はコンクリートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚礁ブロック、テトラポッド等の海洋製品は、波浪や海流の影響を受けて移動、転倒等する虞がある。そのため、海洋製品には、比重の高いモルタル又はコンクリートが用いられている。
【0003】
比重の高いモルタル又はコンクリートとしては、セメントと、鉄鉱石等の比重の高い骨材と、混和材としてフライアッシュ(石炭灰)と、を含むものが知られている。例えば、特許文献1及び2では、混和材としてフライアッシュを含むことによりコンクリートの粘性が向上し、その結果、比重の高い骨材が沈降することなく材料分離抵抗性に優れたコンクリートが得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−132442号公報
【特許文献2】特開平10−291851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モルタル又はコンクリートには、長期材齢における強度発現性だけでなく、初期材齢における強度発現性にも優れることが期待されている。初期材齢において優れた強度発現性を有することにより、養生期間を短くすることができ、その結果、生産性の向上につながる。しかしながら、混和材としてフライアッシュを含むモルタル又はコンクリートは、長期材齢における強度発現性に優れるものの、初期材齢における強度発現性の点でさらなる向上が求められている。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、波浪や海流の影響を受けにくく、かつ、初期材齢における強度発現性に優れた海洋製品用モルタル又はコンクリート、及び、海洋製品用モルタル又はコンクリートの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、海洋製品に用いられるモルタル又はコンクリートであって、セメントと、塩化物イオンの含有量が1000mg/kg以上である有機材料燃焼灰と、単位容積質量が3.0g/cm以上である重量骨材と、を含有する。
【0008】
前記海洋製品用モルタル又はコンクリートは、単位容積質量が3.0g/cm以上である重量骨材を含有するため、波浪や海流の影響を受けにくい。また、前記海洋製品用モルタル又はコンクリートは、前記有機材料燃焼灰と前記重量骨材とを併用するため、初期材齢における強度発現性に優れる。
【0009】
さらに、前記海洋製品用モルタル又はコンクリートは、前記有機材料燃焼灰を含むことにより粘性が向上するため、前記重量骨材が沈降することなく材料分離抵抗性に優れる。
【0010】
本発明に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、前記有機材料燃焼灰の塩化物イオンの含有量が、2000mg/kg以上6000mg/kg以下であってもよい。
【0011】
斯かる構成により、前記海洋製品用モルタル又はコンクリートは、初期材齢における強度発現性をより向上させる。
【0012】
本発明に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、前記有機材料燃焼灰が、木質バイオマス灰であってもよい。
【0013】
斯かる構成により、前記海洋製品用モルタル又はコンクリートは、初期材齢における強度発現性をより向上させる。また、前記海洋製品用モルタル又はコンクリートでは、従来、産業廃棄物として処理されている木質バイオマス灰を再利用することができる。
【0014】
本発明に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、単位有機材料燃焼灰量が、200kg/m以上1500kg/m以下であってもよい。
【0015】
斯かる構成により、前記海洋製品用モルタル又はコンクリートは、初期材齢における強度発現性をより向上させる。
【0016】
本発明に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、単位重量骨材量が、200kg/m以上1800kg/m以下であってもよい。
【0017】
斯かる構成により、前記海洋製品用モルタル又はコンクリートは、初期材齢における強度発現性をより向上させる。
【0018】
本発明に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートの製造方法は、上述の海洋製品用モルタル又はコンクリートを製造する方法であって、セメントと、塩化物イオンの含有量が1000mg/kg以上である有機材料燃焼灰と、単位容積質量が3.0g/cm以上である重量骨材と、水と、を練り混ぜてモルタル組成物又はコンクリート組成物を得る混練工程と、前記モルタル組成物又はコンクリート組成物を型枠に打設する打設工程と、打設したモルタル組成物又はコンクリート組成物を養生して硬化させる養生工程と、を含む。
【0019】
斯かる構成により、前記海洋製品用モルタル又はコンクリートの製造方法は、波浪や海流の影響を受けにくく、かつ、初期材齢における強度発現性に優れた海洋製品用モルタル又はコンクリートを得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、波浪や海流の影響を受けにくく、かつ、初期材齢における強度発現性に優れた海洋製品用モルタル又はコンクリート、及び、海洋製品用モルタル又はコンクリートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る海洋製品用モルタル又はコンクリート、及び、海洋製品用モルタル又はコンクリートの製造方法について説明する。
【0022】
<海洋製品用モルタル又はコンクリート>
本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、セメントと、塩化物イオンの含有量が1000mg/kg以上である有機材料燃焼灰と、単位容積質量が3.0g/cm以上である重量骨材と、を含有する。
【0023】
(セメント)
セメントとしては、例えば、JIS R 5210で規定される普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメント;高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメント;超速硬セメント、アルミナセメント等の公知のセメントを用いることができる。これらの中でも、普通ポルトランドセメントであることが好ましい。なお、セメントは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
セメントの単位容積質量は、波浪や海流の影響をより受けにくくする観点から、3.0g/cm以上であることが好ましく、3.1g/cm以上であることがより好ましい。一方、セメントの単位容積質量は、材料分離抵抗性を向上させる観点から、3.4g/cm以下であることが好ましく、3.3g/cm以下であることがより好ましい。
【0025】
単位セメント量は、強度を発現させる観点から、100kg/m以上350kg/m以下であることが好ましく、120kg/m以上300kg/m以下であることがより好ましい。なお、セメントが2種以上含まれる場合、前記単位セメント量は、セメントの合計量である。
【0026】
(有機材料燃焼灰)
有機材料燃焼灰としては、例えば、木質バイオマス灰、もみ殻灰、ペーパースラッジ灰等が挙げられる。これらの中でも、有機材料燃焼灰は、初期材齢における強度発現性をより向上させる観点から、木質バイオマス灰であることが好ましい。なお、有機材料燃焼灰は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
有機材料燃焼灰の塩化物イオンの含有量は、1000mg/kg以上である。前記塩化物イオンの含有量は、初期材齢における強度発現性をより向上させる観点から、2000mg/kg以上6000mg/kg以下であることが好ましい。
【0028】
なお、本発明において、有機材料燃焼灰の塩化物イオンの含有量は、モルタル又はコンクリートに含まれる塩化物イオンの含有量に相当する。モルタル又はコンクリートに含まれる塩化物イオンの含有量は、JIS A 1154「硬化コンクリート中に含まれる塩化物イオンの試験方法」により測定される塩化物イオン濃度の値を意味する。具体的には、モルタル又はコンクリートに含まれる塩化物イオンの含有量は、JIS A 1154「硬化コンクリート中に含まれる塩化物イオンの試験方法」に規定された「サプレッサ方式のイオンクロマトグラフ法」によって測定することができる。
【0029】
有機材料燃焼灰の粉末度は、充填性及び材料分離抵抗性を良好にする観点から、網ふるい方法(JIS A 6201)により測定される45μmふるい残分が10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、ブレーン方法(JIS A 6201)により測定される比表面積が2000cm/g以上10000cm/g以下であることが好ましい。
【0030】
有機材料燃焼灰の単位容積質量は、材料分離抵抗性を良好にする観点から、2.0g/cm以上であることが好ましく、2.2g/cm以上であることがより好ましい。一方、有機材料燃焼灰の単位容積質量は、材料分離抵抗性を良好にする観点から、3.5g/cm以下であることが好ましく、3.0g/cm以下であることがより好ましい。
【0031】
単位有機材料燃焼灰量は、初期材齢における強度発現性をより向上させる観点から、200kg/m以上1500kg/m以下であることが好ましく、250kg/m以上1400kg/m以下であることがより好ましい。なお、有機材料燃焼灰が2種以上含まれる場合、前記単位有機材料燃焼灰量は、有機材料燃焼灰の合計量である。
【0032】
(重量骨材)
重量骨材としては、例えば、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ細骨材、重晶石、磁鉄鉱等が挙げられる。これらの中でも、海洋生物との親和性を考慮すると、銅スラグ細骨材であることが好ましい。銅スラグ細骨材としては、特に限定されるものではなく、JIS A 5011−3(コンクリート用スラグ骨材−第3部:銅スラグ骨材)で規定される細骨材を用いることができる。なお、前記重量骨材は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
重量骨材の単位容積質量は、3.0g/cm以上である。重量骨材の単位容積質量は、波浪や海流の影響を受けにくくする観点から、3.2g/cm以上であることが好ましく、材料分離抵抗性を良好にする観点から、4.0g/cm以下であることが好ましい。
【0034】
単位重量骨材量は、初期材齢における強度発現性をより向上させる観点から、200kg/m以上1800kg/m以下であることが好ましく、250kg/m以上1500kg/m以下であることがより好ましい。なお、重量骨材が2種以上含まれる場合、前記単位重量骨材量は、重量骨材の合計量である。
【0035】
(細骨材)
本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、さらに、細骨材を含んでいてもよい。なお、細骨材とは、10mm網ふるいを全部通過し、5mm網ふるいを質量で85%以上通過する骨材のことをいう(JIS A 0203:2014)。
【0036】
細骨材としては、例えば、JIS A 5308附属書Aレディミクストコンクリート用骨材で規定される川砂、陸砂、山砂、海砂、砕砂、石灰石砕砂等の天然物由来の砂、高炉スラグ等が挙げられる。なお、これらの細骨材は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0037】
細骨材の単位容積質量は、充填性及び材料分離抵抗性を良好にする観点から、1.9g/cm以上であることが好ましく、2.0g/cm以上であることがより好ましい。一方、細骨材の単位容積質量は、充填性及び材料分離抵抗性を良好にする観点から、3.1g/cm以下であることが好ましく、3.0g/cm以下であることがより好ましい。
【0038】
単位細骨材量は、150kg/m以上800kg/m以下であることが好ましく、200kg/m以上750kg/m以下であることがより好ましい。なお、細骨材が2種以上含まれる場合、前記単位細骨材量は、細骨材の合計量である。
【0039】
(粗骨材)
本実施形態に係る海洋製品用コンクリートは、さらに、粗骨材を含んでいてもよい。なお、粗骨材とは、5mm網ふるいに質量で85%以上とどまる骨材のことをいう(JIS A 0203:2014)。
【0040】
粗骨材としては、例えば、川砂利、山砂利、海砂利等の天然骨材、砂岩、硬質石灰岩、玄武岩、安山岩等の砕石等の人工骨材、再生骨材等が挙げられる。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
単位粗骨材量は、150kg/m以上1200kg/m以下であることが好ましく、200kg/m以上1000kg/m以下であることがより好ましい。なお、粗骨材が2種以上含まれる場合、前記単位粗骨材量は、粗骨材の合計量である。
【0042】
(水)
水としては、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等を使用することができる。水には、コンクリート組成物の水和反応及びコンクリート硬化体に悪影響を及ぼす有機物、塩化物イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が含まれないか、含まれていても極めて微量であることが好ましい。水としては、品質の安定した水道水又は工業用水であることがより好ましい。
【0043】
単位水量は、150kg/m以上450kg/m以下であることが好ましく、160kg/m以上400kg/m以下であることがより好ましい。
【0044】
セメントに対する水の比(水セメント比)は、強度及び流動性を良好にする観点から、20質量%以上100質量%以下であることが好ましく、30質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
【0045】
本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、さらに、上述の有機材料燃焼灰以外の混和材を含んでいてもよい。混和材としては、例えば、フライアッシュ、シリカフューム、セメントキルンダスト、高炉フューム、高炉水砕スラグ微粉末、高炉除冷スラグ微粉末、転炉スラグ微粉末、半水石膏、膨張材、石灰石微粉末、生石灰微粉末、ドロマイト微粉末等の無機質微粉末、ナトリウム型ベントナイト、カルシウム型ベントナイト、アタパルジャイト、セピオライト、活性白土、酸性白土、アロフェン、イモゴライト、シラス(火山灰)、シラスバルーン、カオリナイト、メタカオリン(焼成粘土)、合成ゼオライト、人造ゼオライト、人工ゼオライト、モルデナイト、クリノプチロライト等の無機物系フィラーが挙げられる。なお、混和材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートが混和材としてフライアッシュを含有する場合、単位フライアッシュ量は、初期材齢における強度を向上させる観点から、1400kg/m以下であることが好ましく、1200kg/m以下であることがより好ましく、フライアッシュを含まないことがさらに好ましい。
【0047】
本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、さらに、混和剤を含んでいてもよい。混和剤としては、例えば、AE剤、AE減水剤、流動化剤、分離低減剤、凝結遅延剤(例えば、酒石酸等)、凝結促進剤(例えば、硫酸アルミニウム等)、急結剤、収縮低減剤、起泡剤、発泡剤、防水剤等が挙げられる。なお、混和剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
本実施形態に係る海洋製品用モルタルは、波浪や海流の影響を受けにくくする観点から、単位容積質量が2.0g/cm以上であることが好ましい。また、本実施形態に係る海洋製品用コンクリートは、波浪や海流の影響を受けにくくする観点から、単位容積質量が2.6g/cm以上であることが好ましい。一方、前記海洋製品用モルタル及びコンクリートは、製造を容易にする観点から、単位容積質量が3.5g/cm以下であることが好ましい。
【0049】
本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、海洋製品に用いられる。海洋製品としては、特に限定されるものではないが、例えば、魚礁ブロック、テトラポッド等が挙げられる。
【0050】
本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、単位容積質量が3.0g/cm以上である重量骨材を含有するため、波浪や海流の影響を受けにくい。また、本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、塩化物イオンの含有量が1000mg/kg以上である有機材料燃焼灰と前記重量骨材とを併用するため、初期材齢における強度発現性に優れる。
【0051】
本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、前記有機材料燃焼灰を含むことにより粘性が向上するため、前記重量骨材が沈降することなく材料分離抵抗性に優れる。
【0052】
本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、前記有機材料燃焼灰の塩化物イオンの含有量が2000mg/kg以上6000mg/kg以下であることにより、初期材齢における強度発現性をより向上させる。
【0053】
本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、前記有機材料燃焼灰が木質バイオマス灰であることにより、初期材齢における強度発現性をより向上させる。また、本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートでは、従来、産業廃棄物として処理されている木質バイオマス灰を再利用することができる。
【0054】
本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、単位有機材料燃焼灰量が200kg/m以上1500kg/m以下であることにより、初期材齢における強度発現性をより向上させる。
【0055】
本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートは、単位重量骨材量が200kg/m以上1800kg/m以下であることにより、初期材齢における強度発現性をより向上させる。
【0056】
<海洋製品用モルタル又はコンクリートの製造方法>
本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートの製造方法は、本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートを製造する方法であって、セメントと、塩化物イオンの含有量が1000mg/kg以上である有機材料燃焼灰と、単位容積質量が3.0g/cm以上である重量骨材と、水と、を練り混ぜてモルタル組成物又はコンクリート組成物を得る混練工程と、前記モルタル組成物又はコンクリート組成物を型枠に打設する打設工程と、打設したモルタル組成物又はコンクリート組成物を養生して硬化させる養生工程と、を含む。
【0057】
本実施形態に係る海洋製品用モルタル又はコンクリートの製造方法は、波浪や海流の影響を受けにくく、かつ、初期材齢における強度発現性に優れた海洋製品用モルタル又はコンクリートを得ることができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
<試験1>海洋製品用モルタル
(モルタル組成物の作製)
表1に示す各成分を練り混ぜて各実施例及び比較例のモルタル組成物を作製した。
【0060】
表1に示す各成分の詳細を以下に示す。
セメント:普通ポルトランドセメント、単位容積質量 3.14g/cm、住友大阪セメント社製
水:水道水
海砂:単位容積質量 2.59g/cm、志布志産
なお、石炭灰及び木質バイオマス灰の詳細は表2に、銅スラグ細骨材の詳細は表3に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
(単位容積質量の測定)
各モルタル組成物について、JIS A 1116 フレッシュコンクリートの単位容積質量試験方法に基づき、単位容積質量を測定した。結果を表4に示す。
【0065】
(圧縮強度の測定)
各モルタル組成物について、JIS A 1108 コンクリートの圧縮強度試験方法に基づき、圧縮強度を測定した。なお、供試体の寸法は、直径10cm、高さ20cmとした。材齢1日及び28日の圧縮強度を表4に示す。
【0066】
【表4】
【0067】
表4の結果から分かるように、実施例1のモルタルは、重量骨材の代わりに細骨材を含む比較例3のモルタルと比較して単位容積質量の値が大きいことから、波浪や海流の影響を受けにくいと言える。また、実施例1のモルタルは、塩化物イオンの含有量が1000mg/kg以上である有機材料燃焼灰と単位容積質量が3.0g/cm以上の重量骨材とを併用するため、初期材齢における強度発現性に優れる。
【0068】
一方、比較例1及び2のモルタルは、塩化物イオンの含有量が1000mg/kg以上である有機材料燃焼灰を含まないため、初期材齢における強度が劣る。また、比較例3のモルタルは、単位容積質量が3.0g/cm以上の重量骨材を含まないため、細骨材の代わりに重量骨材を含む実施例1のモルタルと比較して単位容積質量の値が小さいことから、波浪や海流の影響を受けやすいと言える。
【0069】
<試験2>海洋製品用コンクリート
(コンクリート組成物の作製)
表5に示す各成分を練り混ぜて各実施例及び比較例のコンクリート組成物を作製した。
【0070】
表5に示す各成分の詳細を以下に示す。
セメント:普通ポルトランドセメント、単位容積質量 3.14g/cm、住友大阪セメント社製
水:水道水
川砂:単位容積質量 2.62g/cm、野洲川産
砕石:単位容積質量 2.71g/cm、兵庫県産
なお、石炭灰、木質バイオマス灰及び銅スラグ細骨材は試験1と同様のものを用いた。
【0071】
【表5】
【0072】
単位容積質量及び圧縮強度は、試験1と同様の方法で測定した。結果を表6に示す。
【0073】
【表6】
【0074】
表6の結果から分かるように、実施例2のコンクリートは、重量骨材の代わりに細骨材を含む比較例6のコンクリートと比較して単位容積質量の値が大きいことから、波浪や海流の影響を受けにくいと言える。また、実施例2のコンクリートは、塩化物イオンの含有量が1000mg/kg以上である有機材料燃焼灰と単位容積質量が3.0g/cm以上の重量骨材とを併用するため、初期材齢における強度発現性に優れる。
【0075】
一方、比較例4及び5のコンクリートは、塩化物イオンの含有量が1000mg/kg以上である有機材料燃焼灰を含まないため、初期材齢における強度が劣る。また、比較例6のコンクリートは、単位容積質量が3.0g/cm以上の重量骨材を含まないため、細骨材の代わりに重量骨材を含む実施例1のコンクリートと比較して単位容積質量の値が小さいことから、波浪や海流の影響を受けやすいと言える。