で測定した溶融粘度が80〜300Pa・sのポリアリーレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物を成形してなる、車載用光モジュール部品である。ポリアリーレンサルファイド樹脂の塩素含有量が1600ppm以上であり、温度310℃、せん断速度1200sec
前記無機充填剤が、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、炭酸カルシウム及びタルクからなる群より選ばれる1種又は2種以上である、請求項5に記載の車載用光モジュール部品。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態の車載用光モジュール部品 (以下、単に「光モジュール部品」とも呼ぶ。)は、温度310℃、せん断速度1200sec
−1で測定した溶融粘度が80〜300Pa・sのポリアリーレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物を成形してなることを特徴としている。
【0016】
光モジュール部品は、一般に、少なくとも1つの凹部又は貫通穴を有するため、必然的にウェルド部を生じる。それは、本実施形態の光モジュール部品にも当て嵌まり、本実施形態においては、ウェルド強度を向上させるため、所定の溶融粘度を有するPAS樹脂を含む樹脂組成物を用いる。当該PAS樹脂は分子量が高く、分子鎖同士の絡み合いが増加するためウェルド強度が向上する。
以下に、本実施形態のPAS樹脂組成物の各成分について説明する。
【0017】
[ポリアリーレンサルファイド樹脂]
PAS樹脂は、機械的性質、電気的性質、耐熱性その他物理的・化学的特性に優れ、且つ加工性が良好であるという特徴を有する。
PAS樹脂は、主として、繰返し単位として−(Ar−S)−(但しArはアリーレン基)で構成された高分子化合物であり、本実施形態では一般的に知られている分子構造のPAS樹脂を使用することができる。
【0018】
上記アリーレン基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’−ジフェニレンスルフォン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンエーテル基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基等が挙げられる。PAS樹脂は、上記繰返し単位のみからなるホモポリマーでもよいし、下記の異種繰返し単位を含んだコポリマーが加工性等の点から好ましい場合もある。
【0019】
ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp−フェニレン基を用いた、p−フェニレンサルファイド基を繰返し単位とするポリフェニレンサルファイド樹脂が好ましく用いられる。また、コポリマーとしては、前記のアリーレン基からなるアリーレンサルファイド基の中で、相異なる2種以上の組み合わせが使用できるが、中でもp−フェニレンサルファイド基とm−フェニレンサルファイド基を含む組み合わせが特に好ましく用いられる。この中で、p−フェニレンサルファイド基を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含むものが、耐熱性、成形性、機械的特性等の物性上の点から適当である。また、これらのPAS樹脂の中で、2官能性ハロゲン芳香族化合物を主体とするモノマーから縮重合によって得られる実質的に直鎖状構造の高分子量ポリマーが、特に好ましく使用できる。尚、本実施形態に用いるPAS樹脂は、異なる2種類以上の分子量のPAS樹脂を混合して用いてもよい。
【0020】
尚、直鎖状構造のPAS樹脂以外にも、縮重合させるときに、3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物等のモノマーを少量用いて、部分的に分岐構造又は架橋構造を形成させたポリマーや、低分子量の直鎖状構造ポリマーを酸素等の存在下、高温で加熱して酸化架橋又は熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも挙げられる。
【0021】
本実施形態に使用する基体樹脂としてのPAS樹脂の溶融粘度(310℃・せん断速度1200sec
−1)は、上記混合系の場合も含め、ウェルド強度向上の観点から、80〜300Pa・sのものを用いる。PAS樹脂は、80〜210Pa・sが好ましく、90〜200Pa・sがより好ましく、100〜190Pa・sが更に好ましく、100〜180Pa・sが特に好ましい。
【0022】
一方、本実施形態において使用するPAS樹脂は、塩素含有量が1600ppm以上であることが好ましい。塩素含有量が1600ppm以上のPAS樹脂を用いることで、滞留時間に対する溶融粘度の保持率が高くなる。本実施形態の光モジュール部品は、車載用であるためサイズが小さい。具体的には、本実施形態の光モジュール部品は、質量が10g以下の小型部品を対象とすることができ、8g以下でも、5g以下でも、3g以下でも、1g以下でもよい。そして、そのようなサイズが小さい成形品では、成形機内で樹脂が滞留する傾向にある。また、サイズが小さいが故に、金型のキャビティー内の狭い領域を樹脂が流れるため剪断発熱しやすい傾向にある。そこで、本実施形態においては、所定の塩素含有量を有するPAS樹脂を用いると、滞留時間に対する溶融粘度の保持率が高く、特に好ましい。
【0023】
PAS樹脂の塩素含有量は、1650ppm以上が好ましく、1700ppm以上がより好ましい。また、塩素含有量が5000ppmを超えると、射出成形時に用いる金型が腐食することがあるため、塩素含有量の上限は5000ppmであることが好ましく、4000ppm以下であることがより好ましく、3000ppm以下であることが特に好ましい。
【0024】
尚、本実施形態のPAS樹脂組成物は、その効果を損なわない範囲で、上述の所定のPAS樹脂に加えて、当該所定のPAS樹脂以外の一般のPAS樹脂を含有してもよい。また、本実施形態のPAS樹脂組成物は、その効果を損なわない範囲で、樹脂成分として、上述の所定のPAS樹脂(一般のPAS樹脂を含有する場合も含む)に加えて、その他の樹脂成分を含有してもよい。その他の樹脂成分としては、特に限定はなく、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶樹脂、弗素樹脂、環状オレフィン系樹脂(環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー等)、熱可塑性エラストマー、シリコーン系ポリマー、各種の生分解性樹脂等が挙げられる。また、2種類以上の樹脂成分を併用してもよい。その中でも、機械的性質、電気的性質、物理的・化学的特性、加工性等の観点から、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、液晶樹脂等が好ましく用いられる。
【0025】
[無機充填剤]
本実施形態においては、機械的物性の向上を図る観点から、PAS樹脂組成物中に無機充填剤を含むことが好ましい。無機充填剤としては、繊維状無機充填剤、板状無機充填剤、粉粒状無機充填剤が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
繊維状無機充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、酸化亜鉛繊維、酸化チタン繊維、ウォラストナイト、シリカ繊維、シリカ−アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化ケイ素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、等の鉱物繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、銅繊維、真鍮繊維等の金属繊維状物質が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。中でも、ガラス繊維が好ましい。
【0027】
ガラス繊維の上市品の例としては、日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維(ECS03T−790DE、平均繊維径:6μm)、オーウェンスコーニング製造(株)製、チョップドガラス繊維(CS03DE 416A、平均繊維径:6μm)、日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維(ECS03T−747H、平均繊維径:10.5μm)、日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維(ECS03T−747、平均繊維径:13μm)、日東紡績(株)製、異形断面チョップドストランド CSG 3PA−830(長径28μm、短径7μm)、日東紡績(株)製、異形断面チョップドストランド CSG 3PL−962(長径20μm、短径10μm)等が挙げられる。
【0028】
繊維状無機充填剤は、一般的に知られているエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物、脂肪酸等の各種表面処理剤により表面処理されていてもよい。表面処理により、PAS樹脂との密着性を向上させることができる。表面処理剤は、材料調製の前に予め繊維状無機フィラーに適用して表面処理又は収束処理を施しておくか、又は材料調製の際に同時に添加してもよい。
【0029】
繊維状無機フィラーの繊維径は、特に限定されないが、初期形状(溶融混練前の形状)において、例えば5μm以上30μm以下とすることができる。ここで、繊維状無機フィラーの繊維径とは、繊維状無機フィラーの繊維断面の長径をいう。
【0030】
粉粒状無機充填剤としては、タルク(粒状)、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土等のケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ(粒状)等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩、その他炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、各種金属粉末等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。中でも、ガラスビーズ、炭酸カルシウムが好ましい。
炭酸カルシウムの上市品の例としては、東洋ファインケミカル(株)製、ホワイトンP−30(平均粒子径(50%d):5μm)等が挙げられる。また、ガラスビーズの上市品の例としては、ポッターズ・バロティーニ(株)製、EGB731A(平均粒子径(50%d):20μm)、ポッターズ・バロティーニ(株)製、EMB−10(平均粒子径(50%d):5μm)等が挙げられる。
粉粒状無機充填剤も、繊維状無機充填剤と同様に表面処理されていてもよい。
【0031】
板状無機充填剤としては、例えば、ガラスフレーク、タルク(板状)、マイカ、カオリン、クレイ、アルミナ(板状)、各種の金属箔等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。中でも、ガラスフレーク、タルクが好ましい。
ガラスフレークの上市品の例としては、日本板硝子(株)製、REFG−108(平均粒子径(50%d):623μm)、(日本板硝子(株)製、ファインフレーク(平均粒子径(50%d):169μm)、日本板硝子(株)製、REFG−301(平均粒子径(50%d):155μm)、日本板硝子(株)製、REFG−401(平均粒子径(50%d):310μm)等が挙げられる。
タルクの上市品の例としては、松村産業(株)製 クラウンタルクPP、林化成(株)製 タルカンパウダーPKNN等が挙げられる。
板状無機フィラーも、繊維状無機充填剤と同様に表面処理されていてもよい。
【0032】
本実施形態においては、以上の無機充填剤の中でも、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、炭酸カルシウム及びタルクからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。また、耐ヒートショック性及び機械的物性の向上の観点から、無機充填剤は、PAS樹脂100質量部に対して20〜150質量部含むことが好ましく、30〜110質量部含むことがより好ましく、35〜90質量部含むことが更に好ましい。なお、耐ヒートショック性は、成形品が高温と低温とに交互に晒される場合における耐久性(耐高低温衝撃性)である。
【0033】
[アルコキシシラン化合物]
本実施形態において、靭性の向上及びバリの発生を抑制する目的でアルコキシシラン化合物を用いてもよい。
【0034】
アルコキシシラン化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、エポキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン等のアルコキシシランが挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。尚、アルコキシ基の炭素数は1〜10が好ましく、特に好ましくは1〜4である。
【0035】
エポキシアルコキシシランの例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
アミノアルコキシシランの例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ジアリルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ジアリルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0037】
ビニルアルコキシシランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0038】
メルカプトアルコキシシランの例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、エポキシアルコキシシランとアミノアルコキシシランが好ましく、特に好ましいものはγ−アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0040】
本実施形態において、バリの発生を十分に抑制する観点から、アルコキシシラン化合物は、PAS樹脂100質量部に対して0.1〜2.0質量部含有することが好ましく、0.2〜1.8質量部含有することがより好ましく、0.3〜1.6質量部含有することがさらに好ましく、0.4〜1.5質量部含有することが特に好ましい。
【0041】
本実施形態のPAS樹脂組成物は、耐ヒートショック性を向上させるため、エラストマー(オレフィン系共重合体)を添加してもよい。
【0042】
[他の成分]
本実施形態においては、その効果を害さない範囲で、上記各成分の他、その目的に応じた所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂に添加される公知の添加剤、即ちバリ抑制剤(但し、アルコキシシラン化合物を除く)、離型剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、結晶化促進剤、結晶核剤、各種酸化防止剤、熱安定剤、耐候性安定剤、腐食防止剤等を配合してもよい。バリ抑制剤(但し、アルコキシシランを除く)としては、例えば、国際公開第2006/068161号や国際公開第2006/068159号等に記載されているような、溶融粘度が非常に高い分岐型ポリフェニレンサルファイド系樹脂等を挙げることができる。
【0043】
本実施形態の光モジュール部品は、インサート成形品とすることもでき、その場合、以上のPAS樹脂組成物は、当該インサート成形品の樹脂部分に用いられる。インサート成形品は薄肉部分が存在する傾向にあり、薄肉部分においても良好な成形性を確保するため、成形時において高い流動性を有することが好ましい。そのような観点から、本実施形態のPAS樹脂組成物は、温度310℃、せん断速度1000sec
−1で測定した溶融粘度が80〜500Pa・sであることが好ましく、100〜490Pa・sであることがより好ましく、150〜480Pa・sであることが更に好ましく、200〜470Pa・sであることが特に好ましい。
【0044】
本実施形態の光モジュール部品がインサート成形品である場合、以上のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を含む樹脂部材と、金属、合金又は無機固体物を含むインサート部材とを有する。そして、成形用金型に金属等をあらかじめ装着し、その外側に上記配合のPAS樹脂組成物を充填して複合成形品としたものである。樹脂を金型に充填するための成形法としては射出、押出圧縮成形法等があるが、射出成形法が一般的である。また、樹脂にインサートする素材は、その特性を生かし且つ樹脂の欠点を補う目的で使用されるため、成形時に樹脂と接触したとき、形が変化したり溶融したりしないものが使用される。このため、主としてアルミニウム、マグネシウム、銅、鉄、真鍮及びそれらの合金等の金属類やガラス、セラミックスのような無機固体物であらかじめ平板状、棒、ピン、ネジ等に成形されているものが使用される。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例により本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、原料は市販品を用いた。
【0046】
[実施例1〜2、比較例1]
各実施例・比較例において、表1に示す各原料成分をドライブレンドした後、シリンダー温度320℃の二軸押出機に投入して(ガラス繊維は押出機のサイドフィード部より別添加)、溶融混練し、ペレット化した。尚、表1において、各成分の数値は質量部を示す。
また、使用した各原料成分の詳細を以下に示す。
【0047】
(1)PAS樹脂
・PPS樹脂1:溶融粘度130Pa・s(せん断速度:1200sec
−1、310℃)、塩素量:1200ppm
・PPS樹脂2:溶融粘度130Pa・s(せん断速度:1200sec
−1、310℃)、塩素量:1900ppm
・PPS樹脂3:溶融粘度30Pa・s(せん断速度:1200sec
−1、310℃)、塩素量:4000ppm
【0048】
(PPS樹脂の塩素量の測定)
粒状PAS樹脂中のハロゲン含有量として、塩素含有量を燃焼イオンクロマト法により測定した。
(測定条件)
イオンクロマトグラフ: DIONEX製 DX320
燃焼用前処理装置: 三菱化学(株)製 AQF-100, ABC, WS-100, GA-100
試料: 10mg
ヒーター: Inlet Temp/ 900℃ , Outlet Temp/ 1000℃
吸収液: H
2O
2900ppm, 内標準PO
43− 25ppm
【0049】
(PPS樹脂の溶融粘度の測定)
上記PPS樹脂の溶融粘度は以下のようにして測定した。
(株)東洋精機製作所製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmLのフラットダイを使用し、バレル温度310℃、せん断速度1200sec
−1での溶融粘度を測定した。
【0050】
(2)無機充填剤
・ガラス繊維1:日本電気硝子(株)製、チョップドストランドECS 03 T−717、直径13μm、長さ3mm
【0051】
【表1】
【0052】
[評価]
得られた各実施例・比較例のペレットを用いて以下の評価を行った。
【0053】
(1)ウェルド部の引張強さ及び引張ひずみ
各実施例・比較例で得られたペレットを用い、射出成形にてシリンダー温度320℃、金型温度145℃で、
図1に示す、ISO多目的試験片A形に準拠した厚み4mmのダンベル片型引張試験片10を作製した。
図1に示すように、試験片10の2箇所のつかみ部の側面(試験片10の長手方向と直交する面)のそれぞれにゲートGが位置している。そして、試験片10の射出成形時において、溶融樹脂は2箇所のつかみ部それぞれのゲートGから充填され、
図1の標線間中央部において合流して対向流ウェルドWが形成されている。この試験片10についてISO527−1,2に記載の方法に従って、23℃、引張試験速度10mm/分で引張試験を行い、ウェルド部の引張強さ及び引張ひずみを測定した。測定結果を表1に示す。
【0054】
表1より、所定の溶融粘度のPPS樹脂を用いた実施例1〜4においては、いずれもウェルド強度に優れていることが分かる。これに対して、実施例1〜4において用いたPAS樹脂とは異なるPAS樹脂を用いた比較例1、2はウェルド強度に劣っていた。
【0055】
(2)溶融粘度保持率
実施例1及び2において使用したPPS樹脂1、2について、310℃での滞留時間に対する溶融粘度の保持率を評価した。具体的には、310℃に加熱した各PPS樹脂の5分後、15分後、30分後のそれぞれの溶融粘度を以下のようにして測定した。測定結果を
図1に示す。
〜溶融粘度の測定〜
(株)東洋精機製作所製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmLのフラットダイを使用し、バレル温度310℃、せん断速度1000sec
−1での溶融粘度(MV)を測定した。測定結果を
図1に示す。
【0056】
図1より、塩素含有量が多いPPS樹脂2の方が滞留時間に対する溶融粘度の保持率に優れることが分かる。すなわち、塩素含有量が多いと、滞留時間に対する溶融粘度の保持率に優れることが示された。既述の通り、サイズが小さい成形品では、成形機内で樹脂が滞留する傾向にあり、金型のキャビティー内の狭い領域を樹脂が流れるため剪断発熱しやすい傾向にある。従って、塩素含有量が多いPPS樹脂2は、滞留時間に対する溶融粘度の保持率が高く、例えば10g以下のサイズが小さい成形品には特に好ましいと考えられる。