特開2021-116987(P2021-116987A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人日本大学の特許一覧 ▶ 学校法人東京理科大学の特許一覧 ▶ 株式会社富士根産業の特許一覧

特開2021-116987発熱体の冷却装置およびそれを構成する成形体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-116987(P2021-116987A)
(43)【公開日】2021年8月10日
(54)【発明の名称】発熱体の冷却装置およびそれを構成する成形体
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/06 20060101AFI20210712BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20210712BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20210712BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20210712BHJP
【FI】
   F28D15/06 D
   F28D15/02 M
   F28D15/02 101L
   F28D15/02 101M
   H01L23/46 B
   H05K7/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2020-12055(P2020-12055)
(22)【出願日】2020年1月28日
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(71)【出願人】
【識別番号】393023581
【氏名又は名称】株式会社富士根産業
(74)【代理人】
【識別番号】100127339
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥井 政▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】上田 政人
(72)【発明者】
【氏名】大窪 聖也
(72)【発明者】
【氏名】松崎 亮介
(72)【発明者】
【氏名】金田 一世
(72)【発明者】
【氏名】味岡 保徳
(72)【発明者】
【氏名】持田 怜佑
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正道
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA02
5E322AB01
5E322BA03
5E322BB03
5E322DB02
5E322DB06
5E322FA01
5E322FA04
5F136CC11
5F136CC12
5F136CC17
5F136CC18
5F136CC20
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】作動流体が冷却装置内を円滑に循環し、発熱体を効果的に冷却することができる冷却装置、及び成形体を提供する。
【解決手段】第一循環流路34の下部に貯留された作動流体が扁平流路を介して表面張力により上昇し第一熱伝導部材7bに接触し加熱気化されることで圧力が高くなり圧力差p1が発生する。圧力差p1の発生に起因して第一循環流路の作動流体が第二循環流路35に供給されて第二熱伝導部材7cに接触し加熱気化されることで圧力が高くなり圧力差p2が発生する。圧力差p2の発生により作動流体が第二循環流路を流動して第二熱伝導部材に接触して加熱気化され、これによる昇圧に起因して第二循環流路における作動流体の流動循環と、この流動循環の過程での第二熱伝導部材による作動流体の加熱気化とが繰り返される。流動循環する過程で、第二熱伝導部材から作動流体への熱移動が行われ、この作動流体が冷却手段により冷却される。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体が発生した熱がそれぞれ伝導される第一熱伝導部および第二熱伝導部と、
第一接続流路により互いに接続連通されると共に真空に近い状態で気密に密閉された第一循環流路および第二循環流路と、
前記第一循環流路および前記第二循環流路の各下部に液体状態でそれぞれ貯留された作動流体と、
前記第一循環流路および前記第二循環流路のうち少なくとも前記第二循環流路を流れる前記作動流体を冷却する冷却手段と、
前記第一循環流路の一部を構成して上下方向に延び少なくとも上部領域が扁平の横断面形状に形成された扁平流路とを備え、
前記第一循環流路の上部に前記第一熱伝導部が配設されると共に前記第二循環流路の上部に前記第二熱伝導部が配設され、
前記第一循環流路の下部に貯留された作動流体が前記扁平流路を介して表面張力により上昇し前記第一熱伝導部に接触し加熱気化されることで前記第一熱伝導部の近傍の圧力がこれ以外の前記第一循環流路における部位の圧力より相対的に高くなって第一の圧力差が発生し、
前記第一の圧力差の発生に起因して前記第一循環流路の作動流体が前記第一接続流路を介して前記第二循環流路に供給されて前記第二熱伝導部に接触し加熱気化されることで前記第二熱伝導部の近傍の圧力がこれ以外の前記第二循環流路における部位の圧力より相対的に高くなって第二の圧力差が発生し、
前記第二の圧力差の発生により、前記第二循環流路の下部に貯留された作動流体が該第二循環流路を流動して前記第二熱伝導部に接触して加熱気化され、この加熱気化による昇圧に起因して前記第二循環流路における作動流体の流動循環と、この流動循環の過程での前記第二熱伝導部による作動流体の加熱気化とが繰り返され、
さらに、前記流動循環する過程で、前記第二熱伝導部から作動流体への熱移動が行われると共にこの熱移動が行われた作動流体が前記冷却手段により冷却されるようにした発熱体の冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発熱体の冷却装置において、
前記第一熱伝導部は複数備え、
前記第一循環流路は、昇圧循環流路と加圧循環流路とを備え、
前記昇圧循環流路では、前記扁平流路を介して表面張力により上昇した作動流体が前記昇圧循環流路に配設された第一熱伝導部に接触し加熱気化されて昇圧されることで前記第一の圧力差が発生し、
この第一の圧力差の発生に起因して、前記第一循環流路の下部に貯留された作動流体が前記加圧循環流路に供給され、
前記加圧循環流路に供給された作動流体は、前記加圧循環流路に配設された第一熱伝導部に接触し加熱気化されることで該第一熱伝導部の近傍の圧力がこれ以外の前記第一循環流路における部位の圧力より相対的に高くなって第三の圧力差が発生し、この第三の圧力差の発生に起因して、前記第一循環流路の作動流体が、前記第一接続流路を介して前記第二循環流路に供給されるようにしたことを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の発熱体の冷却装置において、
前記扁平流路の横断面は略矩形状に形成されていることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうち何れか一つに記載の発熱体の冷却装置において、
前記扁平流路は上方に延びたのち側方に屈曲形成されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項5】
請求項4に記載の発熱体の冷却装置において、
前記扁平流路が互いに離間して一対設けられ、
前記各扁平流路の上部がそれぞれ屈曲形成された各末端は互いに接近して末端同士が接続され、
前記末端同士が接続された部位に前記第一熱伝導部が配設されていることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうち何れか一つに記載の発熱体の冷却装置において、
前記扁平流路の下端は、該扁平流路の横断面より大きな面積の横断面を有する前記扁平流路以外の前記第一循環流路の上端にその端面内に包含されるように接続され、かつ、前記第一循環流路における液体状態の作動流体の貯留領域内に位置付けられていることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項7】
請求項5に記載の発熱体の冷却装置において、
前記一対の扁平流路は、複数で互いに同数の扁平流路を有する一群の扁平流路ずつからなり、
前記一対の扁平流路を構成する全ての扁平流路は、それらの扁平面が互いに平行に対向してその対向する方向に配列され、
前記各群の扁平流路において互いに対応する一対の扁平流路の上部同士は互いに接近するようにそれぞれ側方に屈曲形成されて末端同士が接続され、
一方の前記扁平流路群の各扁平流路と他方の前記扁平流路群の各扁平流路とのそれぞれの末端同士が接続された各部位に共通の前記第一熱伝導部が配設されていることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項8】
請求項7に記載の発熱体の冷却装置において、
前記各扁平流路の下端は、各群ごとに、前記扁平流路以外の一つの前記第一循環流路の上端に接続され、
一つの前記群における前記各扁平流路の下端が接続される前記第一循環流路の上端の端面は、一つの前記群における前記各扁平流路の下端面の合計面積より大きな面積を有し、かつ、前記第一循環流路の上端の端面内に一つの前記群における前記各扁平流路の下端面が全て包含され、
前記各群の各扁平流路の下端は、前記第一循環流路における液体状態の作動流体の貯留領域内に位置付けられていることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうち何れか一つに記載の発熱体の冷却装置において、
前記扁平流路の横断面の狭幅寸法は、0.1ミリメートルないし0.8ミリメートルに形成されていることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のうち何れか一つに記載の発熱体の冷却装置において、
前記第二循環流路は一定の方向に配列された複数の基準循環流路と、隣り合う前記基準循環流路同士を接続連通する第二接続流路とを備え、
前記複数の基準循環流路のうち特定の一つの基準循環流路と前記第一循環流路とが前記第一接続流路により互いに接続連通されていることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項11】
請求項10に記載の発熱体の冷却装置において、
前記複数の基準循環流路のうち隣り合う基準循環流路には共通の前記第二熱伝導部が跨って配設されていることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のうち何れか一つに記載の発熱体の冷却装置において、
前記第一循環流路と前記第二循環流路とは所定の+X方向に配列されると共に一つの成形体内に形成され、該成形体は、三次元印刷装置により前記+X方向に積層形成され、
前記扁平流路を除く前記第一循環流路および前記第二循環流路の大部分における横断面の周縁は、前記+X方向に平行に延び対向する2つの対向縁部と、これらの対向縁部の前記+X方向側の一端同士を連結する+X方向側縁部と、前記+X方向側とは逆方向側の他端同士を連結する−X方向側縁部とを有し、
前記+X方向側縁部と前記−X方向側縁部とは、前記各対向縁部の少なくとも何れか一方側から前記+X方向側に向かい、かつ、前記+X方向に対し所定の角度で交差するようにそれぞれ延設されていることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項13】
請求項12に記載の発熱体の冷却装置において、
前記所定の角度は45度ないし75度とすることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の発熱体の冷却装置において、
前記冷却手段は、前記+X方向に平行に冷却風を送る送風装置からなり、
前記成形体には、前記送風装置から送られた冷却風が前記+X方向に平行に通過可能な開口部を備え、
前記開口部は、その内周面が前記第一循環流路と第二循環流路との近傍に位置付けられるように形成され、
前記開口部の内周面には、前記+X方向に平行に面が拡がるフィンが前記成形体と一体に形成されていることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項15】
請求項12ないし請求項14のうち何れか一つに記載の発熱体の冷却装置を構成する前記成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体が発生した熱を作動流体に移動させて発熱体を冷却する発熱体の冷却装置およびそれを構成する成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されている従来の冷却装置としては、蒸発器と凝縮器の一端同士が蒸気管を介して接続されると共に凝縮器と蒸発器の他端同士が液管を介して接続されて循環流路が形成され、この循環流路を作動流体が循環することで発熱体を冷却するようにしたループ型ヒートパイプがある。詳述すると、発熱体において発生する熱が蒸発器内の作動流体に伝達され、熱を吸収した作動流体は蒸発器内で気化したのち蒸気管を通って凝縮器へ送られる。凝縮器へ送られた作動流体は、熱を放出して液化したのち液管を通って再び蒸発器へと送られる。蒸発器へと送られた液体の作動流体は、蒸発器内のウィックの内周面側から外周面に向けて浸透し移動したのち発熱体の熱により加熱され気化する。このようにして、作動流体が循環するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5636803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の冷却装置では、該装置内を作動流体が循環する際に、蒸発器内に配設されたウィックを必ず通過しなければならなかった。しかも、該ウィックは多孔質体で構成されているので、作動流体がウィックを通過する際に円滑に通過することができずウィックが、作動流体が循環する際の障害となっていた。そのため、従来の冷却装置では、発熱体を効果的に冷却することができなかった。
【0005】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、作動流体が冷却装置内を円滑に循環することができ、延いては発熱体を効果的に冷却することができる冷却装置およびそれを構成する成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明に係る発熱体の冷却装置は、発熱体が発生した熱がそれぞれ伝導される第一熱伝導部および第二熱伝導部と、第一接続流路により互いに接続連通されると共に真空に近い状態で気密に密閉された第一循環流路および第二循環流路と、前記第一循環流路および前記第二循環流路の各下部に液体状態でそれぞれ貯留された作動流体と、前記第一循環流路および前記第二循環流路のうち少なくとも前記第二循環流路を流れる前記作動流体を冷却する冷却手段と、前記第一循環流路の一部を構成して上下方向に延び少なくとも上部領域が扁平の横断面形状に形成された扁平流路とを備え、前記第一循環流路の上部に前記第一熱伝導部が配設されると共に前記第二循環流路の上部に前記第二熱伝導部が配設され、前記第一循環流路の下部に貯留された作動流体が前記扁平流路を介して表面張力により上昇し前記第一熱伝導部に接触し加熱気化されることで前記第一熱伝導部の近傍の圧力がこれ以外の前記第一循環流路における部位の圧力より相対的に高くなって第一の圧力差が発生し、前記第一の圧力差の発生に起因して前記第一循環流路の作動流体が前記第一接続流路を介して前記第二循環流路に供給されて前記第二熱伝導部に接触し加熱気化されることで前記第二熱伝導部の近傍の圧力がこれ以外の前記第二循環流路における部位の圧力より相対的に高くなって第二の圧力差が発生し、前記第二の圧力差の発生により、前記第二循環流路の下部に貯留された作動流体が該第二循環流路を流動して前記第二熱伝導部に接触して加熱気化され、この加熱気化による昇圧に起因して前記第二循環流路における作動流体の流動循環と、この流動循環の過程での前記第二熱伝導部による作動流体の加熱気化とが繰り返され、さらに、前記流動循環する過程で、前記第二熱伝導部から作動流体への熱移動が行われると共にこの熱移動が行われた作動流体が前記冷却手段により冷却されるようにしたものである。
【0007】
請求項2に記載した発明に係る発熱体の冷却装置は、請求項1に記載の発熱体の冷却装置において、前記第一熱伝導部は複数備え、前記第一循環流路は、昇圧循環流路と加圧循環流路とを備え、前記昇圧循環流路では、前記扁平流路を介して表面張力により上昇した作動流体が前記昇圧循環流路に配設された第一熱伝導部に接触し加熱気化されて昇圧されることで前記第一の圧力差が発生し、この第一の圧力差の発生に起因して、前記第一循環流路の下部に貯留された作動流体が前記加圧循環流路に供給され、前記加圧循環流路に供給された作動流体は、前記加圧循環流路に配設された第一熱伝導部に接触し加熱気化されることで該第一熱伝導部の近傍の圧力がこれ以外の前記第一循環流路における部位の圧力より相対的に高くなって第三の圧力差が発生し、この第三の圧力差の発生に起因して、前記第一循環流路の作動流体が、前記第一接続流路を介して前記第二循環流路に供給されるようにしたことを特徴とするとするものである。
【0008】
請求項3に記載した発明に係る発熱体の冷却装置は、請求項1または請求項2に記載の発熱体の冷却装置において、前記扁平流路の横断面は略矩形状に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載した発明に係る発熱体の冷却装置は、請求項1ないし請求項3のうち何れか一つに記載の発熱体の冷却装置において、前記扁平流路は上方に延びたのち側方に屈曲形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5に記載した発明に係る発熱体の冷却装置は、請求項4に記載の発熱体の冷却装置において、前記扁平流路が互いに離間して一対設けられ、前記各扁平流路の上部がそれぞれ屈曲形成された各末端は互いに接近して末端同士が接続され、前記末端同士が接続された部位に前記第一熱伝導部が配設されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6に記載した発明に係る発熱体の冷却装置は、請求項1ないし請求項5のうち何れか一つに記載の発熱体の冷却装置において、前記扁平流路の下端は、該扁平流路の横断面より大きな面積の横断面を有する前記扁平流路以外の前記第一循環流路の上端にその端面内に包含されるように接続され、かつ、前記第一循環流路における液体状態の作動流体の貯留領域内に位置付けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項7に記載した発明に係る発熱体の冷却装置は、請求項5に記載の発熱体の冷却装置において、前記一対の扁平流路は、複数で互いに同数の扁平流路を有する一群の扁平流路ずつからなり、前記一対の扁平流路を構成する全ての扁平流路は、それらの扁平面が互いに平行に対向してその対向する方向に配列され、前記各群の扁平流路において互いに対応する一対の扁平流路の上部同士は互いに接近するようにそれぞれ側方に屈曲形成されて末端同士が接続され、一方の前記扁平流路群の各扁平流路と他方の前記扁平流路群の各扁平流路とのそれぞれの末端同士が接続された各部位に共通の前記第一熱伝導部が配設されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項8に記載した発明に係る発熱体の冷却装置は、請求項7に記載の発熱体の冷却装置において、前記各扁平流路の下端は、各群ごとに、前記扁平流路以外の一つの前記第一循環流路の上端に接続され、一つの前記群における前記各扁平流路の下端が接続される前記第一循環流路の上端の端面は、一つの前記群における前記各扁平流路の下端面の合計面積より大きな面積を有し、かつ、前記第一循環流路の上端の端面内に一つの前記群における前記各扁平流路の下端面が全て包含され、前記各群の各扁平流路の下端は、前記第一循環流路における液体状態の作動流体の貯留領域内に位置付けられていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項9に記載した発明に係る発熱体の冷却装置は、請求項1ないし請求項8のうち何れか一つに記載の発熱体の冷却装置において、前記扁平流路の横断面の狭幅寸法は、0.1ミリメートルないし0.8ミリメートルに形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項10に記載した発明に係る発熱体の冷却装置は、請求項1ないし請求項9のうち何れか一つに記載の発熱体の冷却装置において、前記第二循環流路は一定の方向に配列された複数の基準循環流路と、隣り合う前記基準循環流路同士を接続連通する第二接続流路とを備え、前記複数の基準循環流路のうち特定の一つの基準循環流路と前記第一循環流路とが前記第一接続流路により互いに接続連通されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項11に記載した発明に係る発熱体の冷却装置は請求項10に記載の発熱体の冷却装置において、請求項10に記載の発熱体の冷却装置において、前記複数の基準循環流路のうち隣り合う基準循環流路には共通の前記第二熱伝導部が跨って配設されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項12に記載した発明に係る発熱体の冷却装置は、請求項1ないし請求項11のうち何れか一つに記載の発熱体の冷却装置において、前記第一循環流路と前記第二循環流路とは所定の+X方向に配列されると共に一つの成形体内に形成され、該成形体は、三次元印刷装置により前記+X方向に積層形成され、前記扁平流路を除く前記第一循環流路および前記第二循環流路の大部分における横断面の周縁は、前記+X方向に平行に延び対向する2つの対向縁部と、これらの対向縁部の前記+X方向側の一端同士を連結する+X方向側縁部と、前記+X方向側とは逆方向側の他端同士を連結する−X方向側縁部とを有し、前記+X方向側縁部と前記−X方向側縁部とは、前記各対向縁部の少なくとも何れか一方側から前記+X方向側に向かい、かつ、前記+X方向に対し所定の角度で交差するようにそれぞれ延設されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項13に記載した発明に係る発熱体の冷却装置は、請求項12に記載の発熱体の冷却装置において、前記所定の角度は45度ないし75度とすることを特徴とするものである。
【0019】
請求項14に記載した発明に係る発熱体の冷却装置は、請求項12または請求項13に記載の発熱体の冷却装置において、前記冷却手段は、前記+X方向に平行に冷却風を送る送風装置からなり、前記成形体には、前記送風装置から送られた冷却風が前記+X方向に平行に通過可能な開口部を備え、前記開口部は、その内周面が前記第一循環流路と第二循環流路との近傍に位置付けられるように形成され、前記開口部の内周面には、前記+X方向に平行に面が拡がるフィンが前記成形体と一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項15に記載した発明に係る成形体は、請求項12ないし請求項14のうち何れか一つに記載の発熱体の冷却装置を構成するものである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、幅狭な扁平流路を有する第一循環流路での圧力差の発生に起因して第二循環流路で作動流体の流動循環が行われ、この流動循環の過程で作動流体への熱移動が行われると共にこの熱移動が行われた作動流体が冷却手段により冷却されるようにした。このため、作動流体の冷却を主に行う第二循環流路には障害となる幅狭な扁平流路がないので、作動流体が第二循環流路を円滑に循環することができ、延いては発熱体を効果的に冷却することができる。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、第一循環流路は、昇圧循環流路と加圧循環流路とを備え、昇圧循環流路での圧力差の発生に起因して加圧循環流路での圧力差が発生し、この加圧循環流路での圧力差に起因して第二循環流路に作動流体が供給されるようにした。このため、第二循環流路での流動循環を開始させるのに必要な量の作動流体を第一循環流路から第二循環流路に供給すると共に第二熱伝導部に接触させることができる。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、扁平流路の横断面は略矩形状に形成されているので、横断面の周縁の全長が長円形状の流路より長くなるため、その分、扁平流路を作動流体が上昇する際に必要な表面張力を大きくすることができる。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、扁平流路は上方に延びたのち側方に屈曲形成されているので、屈曲形成した側方への長さを適宜選定することで、扁平流路を介して上昇した作動流体と第一熱伝導部とを接触させる位置を設定する際の設計自由度を増大させることができる。
【0025】
請求項5記載の発明によれば、一対の扁平流路の屈曲形成された末端同士が接続された部位に第一熱伝導部が配設されているので、一対の扁平流路を介して上昇したそれぞれの作動流体を共通の第一熱伝導部に接触させることができる。
【0026】
請求項6記載の発明によれば、扁平流路の下端は、扁平流路以外の第一循環流路の上端にその端面内に包含されるように接続されているので、第一循環流路の上端から扁平流路へと作動流体が円滑に流動することができる。
また、第一循環流路における液体状態の作動流体の貯留領域内に扁平流路の下端が位置付けられているので、表面張力が確実に作用して作動流体が扁平流路を上昇する。
【0027】
請求項7記載の発明によれば、一方の扁平流路群の各扁平流路と他方の扁平流路群の各扁平流路とのそれぞれの末端同士が接続された各部位に共通の第一熱伝導部が配設されているので、各扁平流路を介して上昇したそれぞれの作動流体を共通の第一熱伝導部に接触させることができる。
【0028】
請求項8記載の発明によれば、各群の扁平流路の下端は、群ごとに、扁平流路以外の一つの第一循環流路の上端にその端面内に包含されるようにそれぞれ接続されているので、第一循環流路の上端から各扁平流路へと作動流体が円滑に流動することができる。また、一対の扁平流路群において各群の各扁平流路の下端は、第一循環流路における液体状態の作動流体の貯留領域内に位置付けられているので、表面張力が確実に作用して作動流体が各扁平流路を上昇する。
【0029】
請求項9記載の発明によれば、扁平流路の横断面の狭幅寸法は、0.1ミリメートルないし0.8ミリメートルに形成されているので、表面張力が確実に作用して作動流体が扁平流路を上昇する。
【0030】
請求項10記載の発明によれば、第二循環流路は一定の方向に配列された複数の基準循環流路と、隣り合う基準循環流路同士を接続連通する第二接続流路とを備えているので、その分、第二循環流路で流動循環する作動流体の量が多くなり、作動流体への熱移動が効果的に行われる。
また、隣り合う基準循環流路同士が第二接続流路を介して接続連通されているので、特定の一つの基準循環流路と第一循環流路とが第一接続流路により互いに接続連通されるだけで、特定の基準循環流路だけでなく第二循環流路の全ての基準循環流路が第一循環流路と連通されることになる。
【0031】
請求項11記載の発明によれば、複数の基準循環流路のうち隣り合う基準循環流路には共通の第二熱伝導部が跨って配設されているので、各流路に個別に熱伝導部を配設する場合と比較して熱伝導部の個数を削減することができる。
【0032】
請求項12記載の発明によれば、第一循環流路および第二循環流路の大部分における横断面の特定の周縁部を、三次元印刷装置により積層形成する方向に所定の角度で交差するように形成したので、横断面を積層形成している途中でその途中の形状が変形することなく形成することができる。
【0033】
請求項13記載の発明によれば、所定の角度を45ないし75度としたので、横断面を積層形成している途中でその途中の形状が変形することなく適正に形成することができる。
【0034】
請求項14記載の発明によれば、成形体の開口部の内周面には、一定の方向に面が拡がるフィンが成形体と一体に形成され、かつ、同方向に送風装置から冷却風が送られるので、第二循環流路等を流れる作動流体を送風装置により効果的に冷却することができる。
請求項15記載の発明によれば、請求項12ないし請求項14のうち何れか一つに記載の発明に係る発熱体の冷却装置の構成に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施の形態に係る冷却装置を背面側から見た状態を示した外観図である。
図2】同冷却装置を左側方から見た状態を示した外観図である。
図3】同冷却装置を上方から見た状態を示した外観図である。
図4】同冷却装置を構成する固定具の一部品の外観図である。
図5】同冷却装置を構成する収容容器を前方斜め上方から見た状態を示した外観図である。
図6図5に示した収容容器を正面側から見た状態を示した外観図である。
図7図5に示した収容容器を背面側から見た状態を示した外観図である。
図8図1において送風装置を除いた状態での矢視A−A線に沿う断面図である。
図9】図(1)は、図8において二点鎖線で囲んだ2つの箇所のうち右側の方を拡大して示した図であり、図(2)は、図8において二点鎖線で囲んだ2つの箇所のうち左側の方を拡大して示した図である。
図10図1において送風装置を除いた状態での矢視B−B線に沿う断面図である。
【0036】
図11】図(1)は、図10において二点鎖線で囲んだ箇所を拡大して示した図であり、図(2)は、同図(1)の矢視C−C線に沿う位置で同冷却装置を破断してその一部を拡大して示した断面図である。
図12図3における矢視D−D線に沿う断面図である。
図13図12において二点鎖線で囲んだ箇所を拡大して示した図である。
図14図12の下の部分を拡大して示した図である。
図15】各流路の中心線を示して循環流路全体を前方斜め上方から見た状態を示した図である。
図16図15の循環流路の一部を構成する第一循環流路を拡大して示した図である。
図17】図(1)は、第一循環流路の一部を構成する扁平流路およびその近傍を正面側から見た状態を示した図であり、図(2)は、同図(1)における矢視Eに沿う方向から扁平流路およびその近傍を見た状態を示した図である。
図18】図(1)は、図17における矢視F−F線に沿う断面図であり、図(2)は、図17における矢視G−G線に沿う断面図であり、図(3)は、図17における矢視H−H線に沿う断面図である。
図19図15の循環流路の一部を構成する第二循環流路を拡大して示した図である。
図20図19における第二循環流路の一部およびその近傍を拡大して示した図である。
【0037】
図21図5に示した収容容器を上面側から見た状態を示した外観図である。
図22図5に示した収容容器を下面側から見た状態を示した外観図である。
図23図5に示した収容容器を右側面側から見た状態を示した外観図である。
図24図5に示した収容容器を左側面側から見た状態を示した外観図である。
図25図6における矢視J−J線に沿う断面図である。
図26図6における矢視K−K線に沿う断面図である。
図27図6における矢視M−M線に沿う断面図である。
図28】循環流路を構成する各流路の横断面の形状を示した図である。
図29】本発明の実施の形態に係る冷却装置の第1の変形例を示す図であって、図(1)は、第一循環流路の一部を構成する扁平流路およびその近傍を正面側から見た状態を示した図であり、図(2)は、同図(1)における矢視Nに沿う方向から扁平流路およびその近傍を見た状態を示した図である。
図30】図(1)は、図29における矢視P−P線に沿う断面図であり、図(2)は、図29における矢視Q−Q線に沿う断面図であり、図(3)は、図29における矢視R−R線に沿う断面図である。
図31】本発明の実施の形態に係る冷却装置の収容容器を変更した第2の変形例を示す図であって、その収容容器を正面側から見た状態を示した外観図である。
図32】本発明の実施の形態に係る冷却装置の収容容器を変更した第3の変形例を示す図であって、その収容容器を前方斜め上方から見た状態を示した外観図である。
図33図32に示した収容容器を、その4隅の部分を破断して正面側から見た状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態に係る冷却装置の一例を図1ないし図28を参照して詳細に説明する。図1において符号1で示すものは、本実施の形態に係る冷却装置である。以下の説明において、各方向は図1に基づいたものとし、図1において、手前側に向かう方向が+X方向で奥側に向かう方向が−X方向とし、左方向に向かう方向が+Y方向で右方向に向かう方向が−Y方向とし、上方に向かう方向が+Z方向で下方に向かう方向が−Z方向とする。冷却装置1を、各種機器の発熱体を冷却するために各種機器に組み付ける場合は、+Z方向が鉛直方向の上方で−Z方向が鉛直方向の下方を指向するように冷却装置1が設置される。以下の説明では、+Z方向が鉛直方向の上方を指向し−Z方向が鉛直方向の下方を指向しているものとする。なお、以下の説明で符号X,Y,Zをそれらの前に符号+または−を付与していない場合は、+方向および−方向の何れの場合も含む趣旨である。
【0039】
(冷却装置1の外観的な構成)
図1に示す冷却装置1は、その背面側から見た状態を示し、背面側の反対側が冷却装置1の正面側、上方から見た状態が上面側、下方から見た状態が下面側、正面側から見て左側が左側面側、正面側から見て右側が右側面側となる。また、以下の説明で述べる冷却装置1を構成する各構成部材およびそれらの内部の各方向についても図1に基づいたものとし、冷却装置1に組み付けられた状態の各構成部材を図1に示す状態で見たときの方向を指すものとする。
【0040】
冷却装置1は、作動流体Fを収容した収容容器3と、発熱体5が結着された熱伝導体7と、該熱伝導体7を収容容器3に固定するための固定具9と、収容容器3に冷却風を送るための送風装置11とを備えている。収容容器3は、本発明でいう「成形体」を構成し、送風装置11は、本発明でいう「冷却手段」を構成する。作動流体Fとしては、例えば、エチレングリコールが一定の割合で水に溶解された混合液体、水またはフロンを挙げることができる。収容容器3は、合成樹脂または金属の材料を使用して三次元印刷装置により+X方向に積層形成され、単一の成形体として一体に形成され、略直方体の形状に形成されている。合成樹脂の材料としては、例えば、無数の短い炭素繊維をナイロンに含有させた炭素粉末入りナイロン素材が挙げられる。金属の材料としては、例えば、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とするアルミニウム合金や、銅または銅を主成分とする銅合金等の熱伝導性の良好な材料が挙げられる。
【0041】
合成樹脂により収容容器3を三次元印刷装置により積層形成する場合は、形成された収容容器3内の液密性を確保するために、収容容器3の外表面をエポキシ樹脂で被覆するようにするとよい。
また、アルミニウムやアルミニウム合金により収容容器3を構成する場合でその内部に水等の作動流体Fを収容するときは、作動流体Fによる腐食を防止するために、後述する収容容器3の循環流路33等の内表面を酸化被膜で予め被覆しておくとよい。
また、発熱体5の例としては、半導体集積回路装置等の電子機器、プロジェクタの光学系装置やX線発生装置が挙げられる。発熱体5は、その4隅の部位に穿設された4つの貫通孔に4本の第一ネジ部材13がそれぞれ挿入されて熱伝導体7に刻設された雌ネジ部に螺着されることで熱伝導体7に結着されている。
【0042】
固定具9は、2つの板状部材15と、6本の第二ネジ部材17とからなる。板状部材15は、図4に示すように、一定の間隙を隔てて互いに平行に配列された3つの挿入部15a…と、これらの各一端部が一体に結着された基部15bとを備えている。3つの挿入部15a…の各他端部と、基部15bの長手方向両端部および中央部とには、6本の第二ネジ部材17が挿入される貫通孔15cがそれぞれ穿設されている。
【0043】
図5ないし図7に示すように、収容容器3は、Y方向に一定の間隙を隔て、かつ、開口縁の形状がZ方向に長くX方向に貫通した5つの開口部19…と、背面側の4隅の部位に一体に突設された、それぞれ一対の第一ボス部21a,21aおよび第二ボス部21b,21bとを備えている。収容容器3の背面側の4隅のうち対角に位置する2箇所に一対の第一ボス部21a,21aがそれぞれ突設され、残りの対角に位置する2箇所に一対の第二ボス部21b,21bがそれぞれ突設されている。各開口部19の内周面には、複数のフィン19a…が収容容器3と一体にそれぞれ形成されている。各フィン19aは、X方向およびY方向に平行で、かつ、X方向に長い面を有し、収容容器3をX方向から見て、各開口部19においてそれぞれY方向で対向する各内周面から各開口部19のY方向中央に向かってそれぞれ延設されている。各内周面において各フィン19aはZ方向に等間隔を隔てて配列されている上、各開口部19において、対向する一方の内周面から延びる各フィン19aと他方の内周面から延びる各フィン19aとはZ方向の配列位置が互いに一致している。また、対向する内周面からそれぞれ延びる各フィン19aの先端部同士の間にはY方向で一定の間隙が設けられている。この間隙にも送風装置11のファン23aからの冷却風が容易に通過するため、その分、各フィン19aの冷却性能が向上する。
【0044】
Y方向両側に位置する2つの開口部19を除くY方向中央部に位置する3つの開口部19…の各上部は、それらを除くY方向両側に位置する2つの開口部19の上部より大きな空隙19bをそれぞれ有している。これらの空隙19bに一対の板状部材15,15の3つの挿入部15a…がそれぞれ挿入される。このとき、一対の板状部材15,15のうち一方の板状部材15の各挿入部15aが正面側から+X方向に各空隙19bに挿入され、他方の板状部材15の各挿入部15aが背面側から−X方向に各空隙19bに挿入されて一対の板状部材15,15が互いに逆向きに重なるようにする。開口部19から露出した各板状部材15の貫通孔15cに下方から+Z方向に第二ネジ部材17を挿入したのち該第二ネジ部材17の雄ネジ部を収容容器3の上面に設置された熱伝導体7の雌ネジ部に螺着することで収容容器3と熱伝導体7とが結着される。
【0045】
なお、本実施の形態では、各板状部材15の6つの貫通孔15cにそれぞれ6本の第二ネジ部材17を挿入して熱伝導体7の雌ネジ部に螺着するようにした。しかし、これに替えて、各板状部材15の3つの挿入部15a…のうち中央に位置する貫通孔15cと、基部15bの長手方向中央に位置する貫通孔15cとを残してそれら以外の貫通孔15cを廃止する。そして、残した貫通孔15cに2本の第二ネジ部材17をそれぞれ挿入して熱伝導体7の雌ネジ部に螺着するようにしてもよい。そうすることで、その分、冷却装置1を安価に提供することができる。また、板状部材15を一対組み付けたが、これに替えて1つだけ組み付けて収容容器3と熱伝導体7とを結着するようにしてもよい。また、発熱体5の熱伝導体7への結着は、収容容器3と熱伝導体7とが結着される前または後の何れのタイミングでもよい。
【0046】
送風装置11は、電動モータ23と、該電動モータ23が長手方向中途部に結着されたステー25とを備えている。電動モータ23の回転軸の一端部にはファン23aが結着され、回転軸が回転することでファン23aにより収容容器3の背面側から−X方向に冷却風が送られる。なお、ファン23aの周囲をダクトで覆い、該ダクトの取入れ開口から空気を取り入れ、該ダクトの送風口から冷却風を−X方向に送るようにしてもよい。
ファン23aにより送られた冷却風は、収容容器3の各開口部19を通過する際に複数のフィン19a…の表面から熱を奪う。収容容器3の一対の第一ボス部21a,21aには雌ネジ部26がそれぞれ刻設されている一方、送風装置11のステー25の両端部にそれぞれ穿設されたネジ孔に一対の第三ネジ部材27,27がそれぞれ挿通されて各第一ボス部21aの雌ネジ部26に螺着されることで送風装置11が収容容器3の背面側に固定されている。ステー25は、樹脂または金属で製造され、電動モータ23が結着された部位と両端部にそれぞれ穿設されたネジ孔との間には冷却風が通過可能な開口25a(図1参照)が形成されている。
【0047】
(作動流体Fの収容空間の構成)
図5に示すように、収容容器3の上面部には、それぞれ円形状の3個の第一貫通孔29a…と6個の第二貫通孔29b…とがそれぞれZ方向に穿設されている。各第一貫通孔29aはY方向に等間隔を隔てて一列に位置付けられ、各第二貫通孔29bは各第一貫通孔29aに対して+X方向に等間隔を隔てて一列配置され、さらにその一列に対して+X方向に等間隔を隔ててもう一列配置されている。各第一貫通孔29aおよび各第二貫通孔29bは、収容容器3の上面からそれぞれ深さD1およびD2(図9の図(1)および(2)参照)まで穴開け装置により穿設されている。深さD1は深さD2より大きな値に設定されている。収容容器3の内部には作動流体Fが循環するための循環流路が形成されており、該循環流路の上部と各貫通孔29a,29bとは連通している。
【0048】
一方、熱伝導体7の熱伝導体本体7aの下面部には、円柱状の3個の第一熱伝導部材7b…と6個の第二熱伝導部材7c…とが結着されている。第一熱伝導部材7bは、本発明でいう「第一熱伝導部」を構成し、第二熱伝導部材7cは、本発明でいう「第二熱伝導部」を構成する。本実施の形態では、各第一熱伝導部材7bと各第二熱伝導部材7cとは同一の外径に設定されているが、互いに異ならせてもよい。熱伝導体本体7a、各第一熱伝導部材7bおよび各第二熱伝導部材7cの材質としては、例えば銅または銅を主成分とする銅合金等の熱伝導性の良好な材料が挙げられる。各第一熱伝導部材7bは各第二熱伝導部材7cよりZ方向に長尺に形成され、これらの熱伝導部材7b,7cは、熱伝導体本体7aの下面部に同一の内径で一定の深さに穿設された凹穴にそれぞれ圧入されることで熱伝導体本体7aに結着されている。なお、各熱伝導部材7b,7cの圧入部分の外周面には細かな無数の突状の打痕が予め一体に形成されており、各熱伝導部材7b,7cが熱伝導体本体7aの凹穴に圧入される際に無数の突状の打痕が圧潰されて凹穴の内周面と各熱伝導部材7b,7cの外周面とが強固に結着される。
【0049】
熱伝導体本体7aにおける各熱伝導部材7b,7cと収容容器3の各貫通孔29a,29bとのX方向およびY方向の配列間隔は一致している。熱伝導体7が収容容器3の上面部に組み付けられることで、各第一熱伝導部材7bは収容容器3の各第一貫通孔29aに挿入され、各第二熱伝導部材7cは各第二貫通孔29bに挿入される。これにより、収容容器3内の循環流路における上部に各熱伝導部材7b,7cの下端部が位置付けられるため、循環流路を通過する作動流体Fは各熱伝導部材7b,7cの熱が伝播されることになる。なお、各第二熱伝導部材7cの外径と各第二貫通孔29bの内径とは略同一の寸法に設定されているが、各第一貫通孔29aの内径は各第一熱伝導部材7bの外径より大きな寸法に形成されている。
【0050】
3個の第一貫通孔29a…のうちY方向中央に位置する第一貫通孔29aの内周面と第一熱伝導部材7bの外周面との間には環状の間隙R1が設けられている(図9の図(1)参照)。残りの2個の第一貫通孔29aの内周面と第一熱伝導部材7bの外周面との間には環状の間隙R2が設けられている(図11の図(1),(2)参照)。なお、本実施の形態では間隙R2は間隙R1と同一の寸法および形状に形成されているが、間隙R1と異ならせてもよい。また、各熱伝導部材7b,7cのZ方向中途部の外周面に対応する熱伝導体本体7aの凹穴の内周面には環状の溝30がそれぞれ形成され、該溝30には環状のシール部材31がそれぞれ装着されて液密にシールされる。これにより、収容容器3内の作動流体Fが各貫通孔29a,29bの何れかから外部に漏洩することが防止される。
【0051】
収容容器3の背面側に突設された各第二ボス部21bには、収容容器3内の循環流路と連通する貫通孔32がそれぞれ穿設されており、該貫通孔32を利用して収容容器3内に作動流体Fが封入される。具体的には、一対の第二ボス部21b,21bのうち何れか一方の貫通孔32に作動流体Fを封入する充填機器(図示せず)を装着した状態で他方の第二ボス部21bの貫通孔32を介して収容容器3の循環流路に存在する空気を吸引機器により吸引する。真空に近い状態まで吸引したタイミングで充填機器を作動させて所定量の作動流体Fを封入したのち両方の第二ボス部21bの貫通孔32をそれぞれ密栓する。これにより、収容容器3内で閉空間となった循環流路33に作動流体Fのみが封入される。なお、作動流体Fが循環流路33を循環していないときは、収容容器3の下部内の循環流路33に作動流体Fが液体の状態で貯留され、その液面は、図12に示す液面Lの位置に位置付けられている。
【0052】
循環流路33およびそれを構成する各部分の流路については、図3図6図7図15図16図19ないし図24ではその中心線のみを示しているが、説明の都合上、循環流路そのものと見做して符号を付与している。循環流路33は、第一循環流路34と、第二循環流路35と、それらの循環流路34,35を接続連通する接続流路36,37とを備え、それらのY方向中央を通りX方向およびY方向に平行な仮想平面V(図15参照)に対して左右対称に形成されている。したがって、第一循環流路34および第二循環流路35の各構成の詳細な説明は、Y方向中央部の流路以外は+Y方向側のみについて説明し、−Y方向側については+Y方向側の流路と同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
第一循環流路34と第二循環流路35との上部同士は上側接続流路36により接続され、下部同士は下側接続流路37により接続されている。上側接続流路36および下側接続流路37は、それぞれ本発明でいう「第一接続流路」を構成する。前記液面Lの高さは、第一循環流路34と第二循環流路35とが下側接続流路37で連通しているので、作動流体Fが循環流路33を循環していないときは両循環流路34,35間で同一である。作図の都合上、図15では、両接続流路36,37の中間部で分断して両循環流路34,35を離間して図示している。
【0053】
(第一循環流路34の構成)
図16に示すように第一循環流路34は、以下の流路を備えている。
・第一循環流路34のY方向中央部の前部下部に配設された前下中央流路39a
・前下中央流路39aのY方向の両端部に下端がそれぞれ接続されて+Z方向に延設された左右一対の前中央下部流路39b,39b
・各前中央下部流路39bの上端部に連なり+Z方向にそれぞれ延設された左右一対の前中央上部流路39c,39c
・各前中央上部流路39cの上端部同士を接続する前上中央流路39d
・前上中央流路39dの+Y方向の端部に前上接続流路39eを介して−Y方向の端部が接続され+Y方向に延設された前上中間流路39f
・前上中間流路39fの+Y方向の端部に接続され+Y方向に延設された前上外側流路39g
・前下中央流路39aに対して+X方向に離間して平行に配設された後下中央流路39h
【0054】
・前中央下部流路39bおよび前中央上部流路39cに対して+X方向に離間して平行に配設された後中央流路39i
・前上中央流路39dに対して+X方向に離間して平行に配設された後上中央流路39j
・前上中間流路39fに対して+X方向に離間して平行に配設された後上中間流路39k
・前上外側流路39gに対して+X方向に離間して平行に配設された後上外側流路39m
・前上中間流路39fに対して−Z方向に離間して平行に配設された前下中間流路39n
・前下中間流路39nに対して+X方向に離間して平行に配設された後下中間流路39o
・前上外側流路39gに対して−Z方向に離間して平行に配設された前下外側流路39p
・前下外側流路39pに対して+X方向に離間して平行に配設された後下外側流路39q
【0055】
・前下中央流路39aおよび前中央下部流路39bの接続部と前下中間流路39nの−Y方向側の端部とを接続する前下接続流路39r
・後下中央流路39hおよび後中央流路39iの接続部と後下中間流路39oの−Y方向側の端部とを接続する後下接続流路39s
・前上中間流路39fおよび前上外側流路39gの接続部と前下中間流路39nおよび前下外側流路39pの接続部とを接続する前中間縦向流路39t
・後上中間流路39kおよび後上外側流路39mの接続部と後下中間流路39oおよび後下外側流路39qの接続部とを接続する後中間縦向流路39u
・前上外側流路39gと前下外側流路39pとの+Y方向側の端部同士を接続する前外側縦向流路39v
・後上外側流路39mと後下外側流路39qとの+Y方向側の端部同士を接続する後外側縦向流路39w
【0056】
・前下中央流路39a,前中央下部流路39b,前下接続流路39rの接続部と後下中央流路39h,後中央流路39i,後下接続流路39sの接続部とを接続する中央接続流路41a
・前上中間流路39f,前上外側流路39g,前中間縦向流路39tの接続部と後上中間流路39k,後上外側流路39m,後中間縦向流路39uの接続部とを接続する上中間接続流路41b
・前下中間流路39n,前下外側流路39p,前中間縦向流路39tの接続部と後下中間流路39o,後下外側流路39q,後中間縦向流路39uの接続部とを接続する下中間接続流路41c
・前上外側流路39gおよび前外側縦向流路39vの接続部と後上外側流路39mおよび後外側縦向流路39wの接続部とを接続する上外側接続流路41d
・前下外側流路39pおよび前外側縦向流路39vの接続部と後下外側流路39qおよび後外側縦向流路39wの接続部とを接続する下外側接続流路41e
【0057】
(前中央上部流路39cおよび前上中央流路39dの構成)
次に、前中央上部流路39cおよび前上中央流路39dの構成について図17および図18を参照して詳述する。図17の図(1)および図(2)は、各流路39c,39dの外縁形状と、これらの流路39c,39dに連なる近傍の流路の外縁形状とを示しており、図18の図(1)および図(2)は図17に矢視で示す各部位で破断した断面図である。なお、図18の図(1)において符号43bについては、作図の都合上、部材の一部が他の部材に隠されて描かれたことで、それが同じ部材であることが分かり難いので、同じ部材であることを明確にするために括弧書きで同一の符号を記している。左右一対の前中央上部流路39c,39cは、横断面形状が扁平に形成された3つを一群とする第一扁平流路43a,第二扁平流路43b,第三扁平流路43cでそれぞれ構成されている。各扁平流路43a,43b,43cは、それぞれ本発明でいう「扁平流路」を構成する。各一群の扁平流路43a,43b,43cはそれらの下端が各前中央下部流路39bの上端にそれぞれ接続され、各上端から+Z方向にそれぞれ延びている。
【0058】
各一群の扁平流路43a,43b,43cは、各扁平面がX方向と平行になり、かつ、Y方向に等間隔を隔てて配列されている。各前中央下部流路39bの上端から+Z方向にそれぞれ延びた各一群の扁平流路43a,43b,43cは、+Z方向に延びたのち各一群の対応する扁平流路43a,43b,43c同士が接近するY方向にそれぞれ屈曲形成されて各末端同士が接続されている。これらのY方向に延びる扁平流路43a,43b,43cの部分が前上中央流路39dを構成している。この部分の各扁平流路43a,43b,43cに共通の第一熱伝導部材7bが配設されているので、各扁平流路43a,43b,43cを介して上昇したそれぞれの作動流体Fを共通の第一熱伝導部材7bに接触させることができる。
【0059】
各扁平流路43a,43b,43cは、図18の図(2)に示すように、それらの狭幅寸法S1は、各扁平流路43a等を作動流体Fが上昇移動する際に必要な表面張力を発生させることができる値に設定され、幅寸法がS2に設定されている。狭幅寸法S1としては、例えば0.1ミリメートルないし0.8ミリメートルを挙げることができる。このような寸法に形成することで、表面張力が確実に作用して作動流体Fが各扁平流路43a,43b,43cを上昇する。また、幅寸法S2としては、例えば1ミリメートルないし5ミリメートルを挙げることができる。各扁平流路43a,43b,43cの下端は、前中央下部流路39bの上端にその端面内に包含されるように接続されている。このため、前中央下部流路39bの上端から各扁平流路43a,43b,43cへと作動流体Fが円滑に流動することができる。また、図12に示すように、第一循環流路34における液体状態の作動流体Fの貯留領域内に各扁平流路43a,43b,43cの下端がそれぞれ位置付けられているので、表面張力が確実に作用して作動流体Fが各扁平流路43a,43b,43cを上昇する。
【0060】
その一方、各扁平流路43a,43b,43cは狭幅寸法S1に形成されているので、それらの横断面の面積を合わせた合計面積でも小さいため、これらの領域をも作動流体Fの貯留領域とすることはあまり期待できない。しかし、扁平流路43a等が液面Lより下方に位置付けられているのは、それらの下部だけである。また、扁平流路43a等の下端にはそれらの合計面積より大きな横断面の面積を有する前中央下部流路39bが接続され、該前中央下部流路39b全体が液面Lより下方に位置付けられている。このため、必要な量の作動流体Fを貯留する上で、各扁平流路43a等の小さな横断面が支障となることはない。
【0061】
なお、各扁平流路43a,43b,43cの屈曲部は、図17の図(1)に示すように、直角に屈曲しているが、狭幅寸法S1を屈曲部も維持すべく滑らかな円弧上に屈曲部をそれぞれ形成してもよい。そうすることで、各扁平流路43a等に沿って作動流体Fを上昇移動させる際に必要な表面張力を屈曲部も含めて安定させることができ、前中央上部流路39cを構成する各扁平流路43a等から前上中央流路39dを構成する各扁平流路43a等に作動流体Fが円滑に流れる。
また、図18の図(3)および図28の図(6)に示すように、各前中央下部流路39bは、その横断面の形状が平行四辺形を逆向きに2つ接合したような形状に形成されている。この形状は+Z方向の上端まで同一の形状で形成されているが、その上端から+Z方向に前中央上部流路39cに移行するとき、図18の図(2)および図(3)に示すように横断面形状が幅狭な扁平に形成された3つの扁平流路43a,43b,43cに急変している。このように横断面形状が急変するような流路は、三次元印刷装置により+X方向に積層形成することで容易に一体に形成することができる。
【0062】
一方の屈曲された部位から他方の屈曲された部位までのY方向に延設された部位の一群の扁平流路43a,43b,43cが前上中央流路39dを構成する。第一扁平流路43aの屈曲された各部位には、左右一対の前上接続流路39e,39eの一端がそれぞれ接続されている。
なお、図17および図18の図(1)において符号Tで示すものはシール部材31の外周面下部の一部と第一熱伝導部材7bの外周面とによって規定される環状の間隙であり、該間隙Tは、第一貫通孔29aと第一熱伝導部材7bとの間隙R1に連なっている。後上中央流路39jおよび扁平流路43a,43b,43cは、間隙R1と重なっており、これにより間隙R1および間隙Tと連通している。間隙Tは、同様に他の第一熱伝導部材7bと、第一貫通孔29aおよびシール部材31の間隙R2とでも形成されている。なお、間隙Tは、間隙R1,R2に比べて容積が非常に小さいので作動流体Fの流路としては無視することにする。また、間隙R1は、その寸法が各扁平流路43a,43b,43cの狭幅寸法S1と略同一の寸法に形成されている。
【0063】
前記前中央下部流路39b,前中央上部流路39c,前上中央流路39d,間隙R1,後上中央流路39j,後中央流路39i,中央接続流路41aで構成され、これらの順に連なる循環流路は、本発明でいう「昇圧循環流路」を構成する。
また、前記前上中間流路39f,前上外側流路39g,前外側縦向流路39v,前下外側流路39p,前中間縦向流路39tで構成され、これらの順に連なる循環流路と、前記後上中間流路39k,後上外側流路39m,後外側縦向流路39w,後下外側流路39q,後中間縦向流路39uで構成され、これらの順に連なる循環流路とは、本発明でいう「加圧循環流路」を構成する。
【0064】
(第二循環流路35の構成)
次に、第二循環流路35について、図19および図20を参照して詳細に説明する。第二循環流路35は、X方向に等間隔を隔てて配列された4つの基準循環流路45aないし45dと、これらの基準循環流路45aないし45dを接続する複数の上接続流路53aないし57aおよび複数の下接続流路53bないし57bとを備えている。4つの基準循環流路45aないし45dは互いに同一の流路構成からなり、−X方向側端部の第一基準循環流路45aから+X方向側へと順に第二基準循環流路45b、第三基準循環流路45cおよび第四基準循環流路45dが配列されている。第一基準循環流路45aは、本発明でいう「特定の一つの基準循環流路」を構成する。4つの基準循環流路45aないし45dのうち第一基準循環流路45aがX方向において第一循環流路34に最も近接し、かつ、接続流路36,37を介して第一循環流路34と接続連通している。
【0065】
第一基準循環流路45aと第二基準循環流路45bとはそれぞれ6つの第一上接続流路53a…および第一下接続流路53b…によって接続され、第二基準循環流路45bと第三基準循環流路45cとはそれぞれ6つの第二上接続流路55a…および第二下接続流路55b…によって接続され、第三基準循環流路45cと第四基準循環流路45dとはそれぞれ6つの第三上接続流路57a…および第三下接続流路57b…によって接続されている。各第一上接続流路53a、各第一下接続流路53b、各第二上接続流路55a、各第二下接続流路55b、各第三上接続流路57aおよび各第三下接続流路57bは、それぞれ本発明でいう「第二接続流路」を構成する。第一基準循環流路45aは、図20に示すように以下の流路を備えている。
【0066】
・第一基準循環流路45aのY方向中央部の下部に配設された下中央流路59a
・下中央流路59aのY方向の両端に下端が接続されて+Z方向にそれぞれ延設された左右一対の中央縦流路59b,59b
・各中央縦流路59b,59bの上端部同士を接続する上中央流路59c
・上中央流路59cの+Y方向側の端部に−Y方向側の端部が接続され+Y方向に延設された上中間流路59d
・上中間流路59dの+Y方向側の端部に接続され+Y方向に延設された上外側流路59e
・上中間流路59dに対して−Z方向に離間して平行に配設された下中間流路59f
・上外側流路59eに対して−Z方向に離間して平行に配設された下外側流路59g
・上中間流路59dおよび上外側流路59eの接続部と下中間流路59fおよび下外側流路59gの接続部とを接続する中間縦向流路59h
・上外側流路59eと下外側流路59gとの+Y方向側の端部同士を接続する外側縦向流路59i
【0067】
また、その他の基準循環流路45b,45c,45dについては第一基準循環流路45aと同様の流路構成からなるので詳細な説明は省略し、上述した第一基準循環流路45aの各流路に対応する第二基準循環流路45b等の各流路に符号を付与して表した下記の表のみの説明とする。この表では、例えば、第一基準循環流路45aの下中央流路59aと対応する位置にある第二基準循環流路45bの流路は下中央流路61aとなる。
【0068】
【表1】
【0069】
また、循環流路33の一部の流路については、収容容器3の3か所をそれぞれ破断して示した図25ないし図27の断面図で示している。
さらにまた、循環流路33を構成する各流路の横断面の形状を図28に纏めて示しており、この図では各横断面を同一の縮尺比率で示している。この図において、各上側接続流路36については図(1)に示し、各前上接続流路39eについては図(2)に示し、各下側接続流路37、各前下接続流路39rおよび各後下接続流路39sについては図(3)に示し、各前中央上部流路39cおよび前上中央流路39dを構成する各扁平流路43a,43b,43cについては図(4)に示し、図16および図19においてそれぞれX方向に延びる接続流路41aないし41e、上接続流路53aないし57aおよび下接続流路53bないし57bの各流路については図(5)に示し、それら以外の、第一循環流路34および第二循環流路35の大部分を占める各流路については図(6)に示している。
【0070】
横断面の形状は、図(6)に示したような平行四辺形を逆向きに2つ接合したような形状に形成すると共に、横断面の周縁は、+X方向に平行に延び対向する2つの対向縁部67a,67bと、これらの対向縁部67a,67bの+X方向側の一端同士を連結する+X方向側縁部69aと、前記+X方向側とは逆方向側の他端同士を連結する−X方向側縁部69bとを有している。+X方向側縁部69aと−X方向側縁部69bとは、各対向縁部67a,67bの両方から+X方向側に向かい、かつ、+X方向に対し所定の角度θで交差するようにそれぞれ延設されている。所定の角度θとしては、例えば45度ないし75度を挙げることができる。+X方向は、三次元印刷装置により積層形成する方向でもある。このため、+X方向に対し所定の角度θで交差するようにそれぞれ延設することで、横断面を+X方向に積層形成している途中でその途中の形状が変形することなく適正に形成することができ、かつ、図9の図(2)に示した厚さUを薄く形成することができる。
なお、このような形状に限らず、図(7)ないし図(9)の何れかの形状に形成しても、三次元印刷装置により+X方向に積層して流路を形成する際に同様に、その途中の形状が変形することなく適正な形状で薄く形成することができる。これらの場合は、+X方向側縁部69aと−X方向側縁部69bとは、各対向縁部67a,67bの一方側から+X方向側に向かい、かつ、+X方向に対し所定の角度θで交差するようにそれぞれ延設されている。
【0071】
(冷却装置1の動作)
次に、冷却装置1の動作について説明する。この動作は大きく区分して、熱交換工程を行うために必要な前段階の工程である熱交換前工程と、該熱交換前工程が終了した後に行われる熱交換工程との2つの工程に分類される。そして、熱交換前工程はさらに昇圧工程と加圧工程との2つの工程に分類され、これらの工程がこれらの順に行われたのち熱交換工程が行われることで発熱体5が効果的に冷却される。
熱交換前工程の昇圧工程と加圧工程とは第一循環流路34において行われ、その後の熱交換工程は第二循環流路35において行われる。なお、第一循環流路34および第二循環流路35と、それらに配設された第一熱伝導部材7bおよび第二熱伝導部材7cとは、前記仮想平面Vに対して左右対称に形成されているので各動作も左右で略同じタイミングで行われ同様に進行する。したがって、各動作の説明は主に+Y方向側のみについて説明し−Y方向側については省略する。
【0072】
(昇圧工程の動作)
まず、昇圧工程の動作について説明する。冷却装置1が動作する前は、循環流路33の下部に液体の状態で貯留された作動流体Fの液面Lが前中央上部流路39cの下端より上方に位置している。前中央上部流路39cは、横断面形状が扁平に形成された3つの扁平流路43a,43b,43cで構成されているため、作動流体Fが表面張力の作用により扁平流路43a,43b,43cを+Z方向に上昇する。上昇した作動流体Fは各扁平流路43a,43b,43cが−Y方向に屈曲形成された各部位をそれらの−Y方向に向かって表面張力の作用により移動する。この移動した作動流体Fは、各扁平流路43a,43b,43cの上部に配設された第一熱伝導部材7bの外周面と、それを囲繞する第一貫通孔29aの内周面との間の間隙R1を介して後上中央流路39jに流入する。このとき、間隙R1の寸法が各扁平流路43a,43b,43cの狭幅寸法S1と略同一の寸法に形成されているので、各扁平流路43a,43b,43cを表面張力の作用により移動して第一熱伝導部材7bの外周近傍まで到達した作動流体Fは、同様に前記間隙R1も表面張力の作用により移動して後上中央流路39jに流入する。
【0073】
一方、発熱体5で高熱が発生するとその高熱が各第一熱伝導部材7bにも伝播され、後上中央流路39jに位置する第一熱伝導部材7bも高温になると、該第一熱伝導部材7bの高熱が後上中央流路39jに流入した作動流体Fに伝播して該作動流体Fが昇温させられ蒸発して気化する。蒸発して気化すると、そこでの圧力が、後上中央流路39j以外の流路の圧力と比較して相対的に高くなり圧力差p1が発生する。この圧力差p1は、本発明でいう「第一の圧力差」を構成し、後述する圧力差p2およびp3より小さな値である。この圧力差p1の発生により相対的に高圧となった圧力が、気化した作動流体Fと共に後中央流路39iを介して相対的に低圧側の−Z方向に伝播し、第一循環流路34の下部に液体の状態で貯留された作動流体Fに作用する。なお、後中央流路39iを介して圧力が伝わるのは、各扁平流路43a,43b,43cおよび前上接続流路39eに比べて後中央流路39iの横断面の面積が大きいので、その分、流動抵抗が少ないため、後中央流路39iに圧力が伝わり易いからである。後中央流路39iを介して−Z方向に流動する気体状態の作動流体Fは、流動している最中に送風装置11のファン23aから供給されている冷却風により温度が低下して液化したり、第一循環流路34の下部に到達したときに、循環流路33の下部に液体の状態で貯留されていた作動流体Fに接触して冷却され液化し該作動流体Fに混入される。
【0074】
第一循環流路34の下部に貯留された作動流体Fに圧力が作用すると、該作動流体Fを、前中央下部流路39bおよび各扁平流路43a,43b,43cを介して+Z方向に押し上げて前記間隙R1を介して後上中央流路39jに再び流入させる。各扁平流路43a,43b,43cを作動流体Fが通過するとき、それらの横断面の面積が小さいので、その分、流動抵抗を受けるが、各扁平流路43a等に到達する直前の前中央下部流路39bは大きな面積の横断面をを有するので、その分、流動抵抗を受けずに済む。
後上中央流路39jに再び流入した作動流体Fが第一熱伝導部材7bの高熱により昇温させられ蒸発して気化することで圧力が相対的に高くなり圧力差が発生する。この圧力差の発生により相対的に高圧となった圧力が、気化した作動流体Fと共に後中央流路39iを介して第一循環流路34の下部の作動流体Fに再び作用する。このような作動流体Fの循環動作が何回か繰り返されるうちに、前記圧力差がp1より大きな圧力差P1まで上昇する。この圧力差P1は、後述する圧力差P2およびP3より小さな値である。圧力差P1の発生により相対的に高圧となった圧力が第一循環流路34の下部の作動流体Fに作用し、該作動流体Fを液体の状態で前上接続流路39eを介して前上中間流路39fに流入させる。これにより、次の加圧工程に移行する。
【0075】
(加圧工程の動作)
前上中間流路39fに流入した作動流体Fは、前上中間流路39fと後上中間流路39kとに跨って配設された第一熱伝導部材7bの熱が伝播される。また、前上中間流路39fに流入した作動流体Fは、第一熱伝導部材7bの外周面と、それを囲繞する第一貫通孔29aの内周面との間の間隙R2を介して後上中間流路39kにも流入する。後上中間流路39kに流入した作動流体Fは、ここでも第一熱伝導部材7bの熱が伝播される。該第一熱伝導部材7bの熱の伝播により作動流体Fは昇温させられ蒸発して気化する。すると、該第一熱伝導部材7bが配設された前上中間流路39fおよび後上中間流路39kの圧力が、それら以外の流路の圧力と比較して相対的に高くなり圧力差p2が発生する。この圧力差p2は、本発明でいう「第三の圧力差」を構成し、前記圧力差p1より大きく、後述する圧力差p3より小さな値である。この圧力差p2の発生により相対的に高圧となった圧力が、気化した作動流体Fと共に前上中間流路39fから前上外側流路39gおよび前外側縦向流路39vを介する経路と、後上中間流路39kから後上外側流路39mおよび後外側縦向流路39wを介する経路とでそれぞれ−Z方向に伝播し、第一循環流路34の下部に液体の状態で貯留された作動流体Fに作用する。
【0076】
なお、前中間縦向流路39tや後中間縦向流路39uではなく前外側縦向流路39vおよび後外側縦向流路39wを介して圧力が伝わるのは、前者より後者の流路の方の圧力が相対的に低くなっているからである。また、前外側縦向流路39vおよび後外側縦向流路39wを介して−Z方向に流動する気体状態の作動流体Fは、流動している最中に送風装置11のファン23aから供給されている冷却風により温度が低下して液化したり、循環流路33の下部に液体の状態で貯留されていた作動流体Fに接触して冷却され液化し該作動流体Fに混入される。
【0077】
第一循環流路34の下部に貯留された作動流体Fに圧力が作用すると、該作動流体Fを、前中間縦向流路39tおよび後中間縦向流路39uを介して+Z方向に押し上げて前上中間流路39fおよび後上中間流路39kに再び流入させる。これらの流路に流入した作動流体Fが第一熱伝導部材7bの高熱により昇温させられ蒸発して気化することで圧力が相対的に高くなり圧力差が発生する。この圧力差の発生により相対的に高圧となった圧力が、気化した作動流体Fと共に前上外側流路39g、前外側縦向流路39v、後上外側流路39mおよび後外側縦向流路39wを介して第一循環流路34の下部の作動流体Fに再び作用する。このような作動流体Fの循環動作が何回か繰り返されるうちに、前記圧力差がp2より大きな圧力差P2まで上昇する。この圧力差P2は、後述する圧力差P3より小さな値である。圧力差P2の発生により相対的に高圧となった圧力が第一循環流路34の下部の作動流体Fに作用し、該作動流体Fを後上中間流路39k、上側接続流路36、後下中間流路39oおよび下側接続流路37を介して第二循環流路35に流入させる。これにより、次の熱交換工程に移行する。このとき、後下中間流路39oおよび下側接続流路37を介して第二循環流路35に流入する作動流体Fは液体の状態のものである。一方、後上中間流路39kおよび上側接続流路36を介して第二循環流路35に流入する作動流体Fは、その一部が第一熱伝導部材7bの熱で気化した気体状態のものと、熱の伝播が少なく気化しなかった液体状態のものとが混在したものとなる。
【0078】
(熱交換工程の動作)
上側接続流路36を介して第二循環流路35に流入した作動流体Fは、第一基準循環流路45aの上中間流路59dおよび上中央流路59cに流入し、さらに第一上接続流路53aを介して第二基準循環流路45bの上中央流路61cおよび上中間流路61dに流入し、さらに第二上接続流路55aを介して第三基準循環流路45cの上中央流路63cおよび上中間流路63dに流入し、さらに第三上接続流路57aを介して第四基準循環流路45dの上中央流路65cおよび上中間流路65dにそれぞれ流入する。
【0079】
一方、下側接続流路37を介して第二循環流路35に流入した作動流体Fは、第一基準循環流路45aの下中間流路59f,中央縦流路59bおよび中間縦向流路59hを介して上中央流路59cおよび上中間流路59dに流入し、さらに第一下接続流路53bを介して第二基準循環流路45bの下中間流路61f,中央縦流路61bおよび中間縦向流路61hを介して上中央流路61cおよび上中間流路61dに流入し、さらに第二下接続流路55bを介して第三基準循環流路45cの下中間流路63f,中央縦流路63bおよび中間縦向流路63hを介して上中央流路63cおよび上中間流路63dに流入し、さらに第三上接続流路57aを介して第四基準循環流路45dの下中間流路65f,中央縦流路65bおよび中間縦向流路65hを介して上中央流路65cおよび上中間流路65dにそれぞれ流入する。
【0080】
上側接続流路36および下側接続流路37を介して上述した各流路に流入した作動流体Fは、これらの流路に跨って配設された各第二熱伝導部材7cの熱が伝播されることで昇温させられ蒸発して気化する。各第二熱伝導部材7cは、そのZ方向の長さが短く、かつ、それらの下端部は上中央流路59c,61c、上中間流路59d,61d等の各流路の上部に位置付けられているので各第二熱伝導部材7cの近傍を作動流体Fが通過する際に、各第二熱伝導部材7cによって作動流体Fが妨げられることはない。このため、作動流体Fは上中央流路59c等を円滑に流動することができる。
【0081】
上中央流路59c等の各流路に流入した作動流体Fが蒸発して気化すると、これらの流路の圧力がこれら以外の流路の圧力と比較して相対的に高くなり圧力差p3が発生する。この圧力差p3は、本発明でいう「第二の圧力差」を構成し、前記圧力差p1およびp2より大きな値である。この圧力差p3の発生により相対的に高圧となった圧力が、気化した作動流体Fと共に第一基準循環流路45aの上中間流路59dから上外側流路59eおよび外側縦向流路59iを介する経路と、第二基準循環流路45bの上中間流路61dから上外側流路61eおよび外側縦向流路61iを介する経路と、第三基準循環流路45cの上中間流路63dから上外側流路63eおよび外側縦向流路63iを介する経路と、第四基準循環流路45dの上中間流路65dから上外側流路65eおよび外側縦向流路65iを介する経路とでそれぞれ−Z方向に伝播し、第二循環流路35の下部に液体の状態で貯留された作動流体Fに作用する。
【0082】
なお、各中間縦向流路59h,61h,63h,65h等ではなく各外側縦向流路59i,61i,63i,65iを介して圧力が伝わるのは、前者より後者の流路の方の圧力が相対的に低くなっているからである。また、各外側縦向流路59i,61i,63i,65iを介して−Z方向に流入した気体状態の作動流体Fは、流動している最中に送風装置11のファン23aから供給されている冷却風により温度が低下して液化したり、循環流路33の下部に液体の状態で貯留されていた作動流体Fに接触して冷却され液化し該作動流体Fに混入される。
【0083】
第二循環流路35の下部に貯留された作動流体Fに圧力が作用すると、該作動流体Fを、第一基準循環流路45aの中間縦向流路59h,中央縦流路59b、第二基準循環流路45bの中間縦向流路61h,中央縦流路61b、第三基準循環流路45cの中間縦向流路63h,中央縦流路63bおよび第四基準循環流路45dの中間縦向流路65h,中央縦流路65bを介して+Z方向に押し上げて第一基準循環流路45aの上中間流路59d,上中央流路59c、第二基準循環流路45bの上中間流路61d,上中央流路61c、第三基準循環流路45cの上中間流路63d,上中央流路63cおよび第四基準循環流路45dの上中間流路65d,上中央流路65cに再び流入させる。これらの流路に流入した作動流体Fが各第二熱伝導部材7cの高熱により昇温させられ蒸発して気化することで圧力が相対的に高くなり圧力差が発生する。この圧力差の発生により相対的に高圧となった圧力が、気化した作動流体Fと共に第一基準循環流路45aの上中間流路59d,上外側流路59e,外側縦向流路59iと、第二基準循環流路45bの上中間流路61d,上外側流路61e,外側縦向流路61iと、第三基準循環流路45cの上中間流路63d,上外側流路63e,外側縦向流路63iと、第四基準循環流路45dの上中間流路65d,上外側流路65e,外側縦向流路65iとを介して第二循環流路35の下部の作動流体Fに再び作用する。
【0084】
このような作動流体Fの循環動作が繰り返されるうちに、前記圧力差がp3より大きな圧力差P3まで上昇し、この圧力差P3の発生により相対的に高圧となった圧力が第二循環流路35の下部の作動流体Fに作用する。作動流体Fが水の場合の圧力差P3の値としては、約0.2MPa(メガパスカル)を挙げることができる。そして、前記圧力差はP3で安定し作動流体Fの循環動作が繰り返され、該循環動作の過程で、第二循環流路35を流れる作動流体Fにより各第二熱伝導部材7cが冷却される。これにより、発熱体5で発生した高熱が各第二熱伝導部材7cを介して作動流体Fに移動し発熱体5が効果的に冷却される。この場合、送風装置11は、第一循環流路34側ではなく第二循環流路35側に配設されているので、ファン23aからの冷却風が第二循環流路35側に直接的に供給され第二循環流路35を流れる作動流体Fが効果的に冷却される。冷却装置1としては、少なくとも第二循環流路35の作動流体Fが適正に冷却されれば足りることから、送風装置11のファン23aによる冷却風は、第一循環流路34および第二循環流路35のうち第二循環流路35側のみに供給するようにしてもよい。
なお、上述した昇圧工程から加圧工程を経て熱交換工程が安定して行われるまでに要する時間は数分と比較的短時間である。
また、上述した各工程で、第一循環流路34や第二循環流路35の下部に貯留された作動流体Fに圧力が作用して該作動流体Fが各流路に圧送されると、その分、図12に示した液面Lが−Z方向に変位するのは言うまでもない。
【0085】
上述した実施の形態によれば、幅狭な各扁平流路43a,43b,43cを有する後上中央流路39jでの圧力差の発生に起因して第二循環流路35で作動流体Fの流動循環が行われ、この流動循環の過程で作動流体Fへの熱移動が行われると共にこの熱移動が行われた作動流体Fが送風装置11のファン23aにより冷却されるようにした。このため、作動流体Fの冷却を主に行う第二循環流路35には障害となる幅狭な各扁平流路43a,43b,43cが存在しないので、作動流体Fが第二循環流路35を円滑に循環することができ、延いては発熱体5を効果的に冷却することができる。
【0086】
また、第一循環流路34では、まず、前記前中央下部流路39b,前中央上部流路39c,前上中央流路39d,間隙R1,後上中央流路39j,後中央流路39i,中央接続流路41aを作動流体Fが循環する過程で発生した圧力差に起因して前上中間流路39fおよび後上中間流路39kに作動流体Fが流動するようにした。そして、それに続き、前上中間流路39f,前上外側流路39g,前外側縦向流路39v,前下外側流路39p,前中間縦向流路39tと、後上中間流路39k,後上外側流路39m,後外側縦向流路39w,後下外側流路39q,後中間縦向流路39uとを作動流体Fが循環する過程で発生した圧力差に起因して第二循環流路35に作動流体が供給されるようにした。このため、第二循環流路35での流動循環を開始させるのに必要な量の作動流体Fを第一循環流路34から第二循環流路35に供給することができ、かつ、各第二熱伝導部材7cに接触させることができる。
また、各扁平流路43a,43b,43cはそれぞれ上方に延びたのち側方に屈曲形成されているので、屈曲形成した側方への長さを適宜選定することで、各扁平流路43a,43b,43cを介して上昇した作動流体Fと第一熱伝導部材7bとを接触させる位置を設定する際の設計自由度を増大させることができる。
【0087】
また、第二循環流路35は一定の方向(X方向)に配列された4つの基準循環流路45aないし45dと、隣り合う基準循環流路同士を接続する各上接続流路53a,55a,57aおよび各下接続流路53b,55b,57bとを備えているので、その分、第二循環流路35で流動循環する作動流体Fの量が多くなり、作動流体Fへの熱移動が効果的に行われる。
また、隣り合う基準循環流路同士が各上接続流路53a,55a,57aおよび各下接続流路53b,55b,57bを介して接続連通されているので、第一基準循環流路45aと第一循環流路34とが各接続流路36,37により互いに接続連通されるだけで、第一基準循環流路45aだけでなく第二循環流路35の全ての基準循環流路45aないし45dが第一循環流路と連通されることになる。
【0088】
また、各第一熱伝導部材7bが各流路(例えば、前上中央流路39dと後上中央流路39j、前上中間流路39fと後上中間流路39k等)に跨って配設され、各第二熱伝導部材7cが各流路(例えば、上中央流路59cと上中央流路61c、上中間流路59dと上中間流路61d等)に跨って配設されている。このため、各流路に個別に各熱伝導部材7b,7cが配設される場合と比較して各熱伝導部材7b,7cの個数を削減して冷却装置1を安価に提供することができる。
さらにまた、収容容器3の開口部19の内周面には、一定の方向に面が拡がるフィン19aが収容容器3と一体に形成され、かつ、送風装置11のファン23aから冷却風が−X方向に送られるので、第二循環流路35等を流れる作動流体Fをファン23aにより効果的に冷却することができる。
【0089】
次に、上述した実施の形態を変更する変形例として3つの変形例について図29ないし図33を参照して以下に説明する。なお、これらの変形例については前記実施の形態とは異なる点を主に説明するものとし、説明しない点については前記実施の形態と同様とする。また、各変形例で参照する図において、前記実施の形態で説明したものと同一または同等の物、部位および方向については同一の符号を付し詳細な説明は省略する。これらの変形例においても、上述した本発明の実施の形態と同一または同等の構成や工程については、同様の作用・効果を奏することができるのは言うまでもない。
【0090】
(第1の変形例)
上述した実施の形態では、各前中央上部流路39cおよび前上中央流路39dを構成する一群の扁平流路を3つで構成したが、これに限らず、1つもしくは2つまたは4つ以上で構成してもよい。
また、各前中央上部流路39cを構成する一群の扁平流路を2つ以上で構成した場合は、前上中央流路39dを構成する複数の扁平流路のうち最も上方に位置する扁平流路(本実施の形態では、前上中央流路39dの一部を構成する扁平流路43a)を廃止してもよい。具体的には、Y方向で互いに最も離間する左右一対の扁平流路(本実施の形態では、左右一対の前中央上部流路39c,39cの各一部を構成する左右一対の扁平流路43a,43a)は、それらの上端同士を互いに接続連通させずに各前上接続流路39eのみにそれぞれ接続連通させるようにする。そうすることで、冷却装置1が動作する前に、第一循環流路34に貯留された作動流体Fが表面張力の作用により各扁平流路を上昇移動するが、Y方向で互いに最も離間する左右一対の扁平流路にも上昇してそれらの流路に作動流体Fが貯留された状態となる。
【0091】
このため、上述した昇圧工程の動作で上昇した前記圧力差P1により作動流体Fを前上接続流路39eを介して前上中間流路39fに流入させる際に、Y方向で互いに最も離間する左右一対の扁平流路に貯留されていた作動流体Fが前上中間流路39fに先に流入させられる。そして、それに続いて、第一循環流路34に貯留された作動流体Fが前記圧力差P1の作用により前上中間流路39fに流入させられる。このように、第一循環流路34に貯留された作動流体Fを流入させる前に、前記左右一対の扁平流路に貯留されていた作動流体Fを先に流入させるので、その分、前上中間流路39fに流入させる作動流体Fの量を多くすることができる。
図29および図30には、第1の変形例として、各前中央上部流路39cを構成する一群の扁平流路を3つで構成した例を示しており、図29は、前記図17に相当する図であり、図30は、前記図18に相当する図である。この第1の変形例では、Y方向で互いに最も離間する左右一対の扁平流路が扁平流路43a,43aであり、それらの上端同士を互いに接続連通させることなく各前上接続流路39eのみにそれぞれ接続連通させている。
【0092】
(第2の変形例)
上述した実施の形態では、収容容器3の各開口部19において、対向する一方の内周面から延びる各フィン19aと他方の内周面から延びる各フィン19aとはZ方向の配列位置が互いに一致している例を示した。これに替えて、図31に示すように、対向する一方の内周面から延びる各フィン19aと他方の内周面から延びる各フィン19aとのZ方向の配列位置を一致させずに交互にY方向に延び、Z方向から見て重なるようにした収容容器3'としてもよい。収容容器3'は、本発明でいう「成形体」を構成する。こうすることで、フィン19aの1個当たりの表面積が増加し、その分、冷却性能が向上する。また、上述した実施の形態における収容容器3の各フィン19aは、それらの先端同士が一定の間隙を隔てて対向するように配列されていたため、三次元印刷装置により積層形成された合成樹脂製の収容容器3の外表面をエポキシ樹脂で被覆する際に各フィン19aの部位を好適に被覆することができなかった。これに対して、本変形例の収容容器3'におけるフィン19aのように交互に延びて重なるように形成すれば、フィン19aをも含めて収容容器3全体の外表面をエポキシ樹脂で均一に被覆させることができる。
【0093】
(第3の変形例)
上述した実施の形態では、収容容器3を略直方体の形状に形成する例を示したが、これに替えて、図32および図33に示すように収容容器3の4隅の角部を斜面状に形成した収容容器3"としてもよい。収容容器3"は、本発明でいう「成形体」を構成する。なお、図33において作図の都合上、部材が破断されて一部が隠されて描かれたことで、それが同じ部材であることが分かり難い部位には、同じ部材であることを明確にするために括弧書きで同一の符号を記している。この変形例では、4隅の角部における収容容器3内の循環流路33も図33に示すように斜面状に形成している。こうすることで、4隅の角部の循環流路33を通過する際の流動抵抗が低減され作動流体Fが円滑に流れる。
【0094】
上述した実施の形態および各変形例(以下「本実施の形態等」という。)は、本発明を説明するための一例であり、本発明は、本実施の形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲と明細書との全体から読み取れる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜、追加や変更が可能であり、そのような追加や変更後の発熱体の冷却装置およびそれを構成する成形体もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
例えば、本実施の形態等では、送風装置11のファン23aからの冷却風により収容容器3内の作動流体Fを冷却するようにしたが、これに限らず、圧縮空気を供給する装置により冷却風を送るようにしてもよいし、収容容器3内の循環流路33の近傍に冷却液を循環させて作動流体Fを冷却する液冷機構にしてもよい。
【0095】
また、本実施の形態等では、循環流路33の第一循環流路34を、図16に示すような1つの纏まった循環流路で構成したが、これに限らず、このような1つの纏まった循環流路を2つ以上X方向に配列して第一循環流路34を構成するようにしてもよい。
また、本実施の形態等では、第二循環流路35の基準循環流路を4つの基準循環流路45a,45b,45c,45dで構成したが、これに限らず、1ないし3つまたは5つ以上の基準循環流路を配列すると共に、該配列に応じて接続流路53a,53b等を適宜増減するようにしてもよい。
また、本実施の形態等では、循環流路33は図15に示す仮想平面Vに対して左右対称に形成されているが、左右のうち何れか一方のみの流路とし他方の流路を省略してもよい。
また、本実施の形態等では、各扁平流路43a,43b,43cの横断面形状を扁平な長円形状としたが、これに限らず、扁平な略矩形状としてもよい。そうすることで、各扁平流路43a等の狭幅寸法S1および幅寸法S2を同じ条件で比較した場合、横断面の周縁の全長が長円形状の流路より略矩形状の方が長くなるので、その分、各扁平流路43a等を作動流体Fが上昇する際に必要な表面張力を大きくすることができる。
【0096】
また、本実施の形態等では、第一循環流路34の前中央上部流路39cを構成する一群の扁平流路43a,43b,43cが延びる方向をZ方向(鉛直方向)とするように冷却装置1を配設するようにしたが、これに限らず、作動流体Fが表面張力の作用により扁平流路43a,43b,43cを+Z方向に上昇させることができる角度の範囲内で冷却装置1を傾斜させて配設するようにしてもよい。
また、本実施の形態等では、各前中央上部流路39cを構成する各扁平流路43a,43b,43cを各前中央下部流路39bの上端から+Z方向に延設したが、これに限らず、各前中央下部流路39bを廃止してそれらの下端があった部位から扁平流路43a,43b,43cを+Z方向に延設してもよい。
【0097】
さらにまた、本実施の形態等では、第一循環流路34を作動流体Fが循環する過程で昇圧工程と加圧工程との2つの工程を行うようにした。しかし、これに限らず、加圧工程を行う循環流路を廃止する一方、前中央上部流路39cおよび前上中央流路39dを構成する扁平流路の個数を増加して扁平流路を通過する作動流体Fの分量を増加すると共に、その作動流体Fが流入する後上中央流路39jの容量も増大する。そして、そこに配設する第一熱伝導部材7bも大きくして、後上中央流路39jでの作動流体Fの蒸発気化および昇圧の能力を増大させることで昇圧工程と加圧工程とを混成し、そこで発生した圧力を利用して第一循環流路34の作動流体Fを直接、第二循環流路35に流入させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 冷却装置
3 収容容器(成形体)
3' 収容容器(成形体)
3" 収容容器(成形体)
5 発熱体
7b 第一熱伝導部材(第一熱伝導部)
7c 第二熱伝導部材(第二熱伝導部)
11 送風装置(冷却手段)
19 開口部
19a フィン
34 第一循環流路
35 第二循環流路
36 上側接続流路(第一接続流路)
37 下側接続流路(第一接続流路)
39b 前中央下部流路(昇圧循環流路)
39c 前中央上部流路(昇圧循環流路)
39d 前上中央流路(昇圧循環流路)
39f 前上中間流路(加圧循環流路)
39g 前上外側流路(加圧循環流路)
39i 後中央流路(昇圧循環流路)
39j 後上中央流路(昇圧循環流路)
39k 後上中間流路(加圧循環流路)
39m 後上外側流路(加圧循環流路)
39p 前下外側流路(加圧循環流路)
39q 後下外側流路(加圧循環流路)
39t 前中間縦向流路(加圧循環流路)
39u 後中間縦向流路(加圧循環流路)
39v 前外側縦向流路(加圧循環流路)
39w 後外側縦向流路(加圧循環流路)
41a 中央接続流路(昇圧循環流路)
43a 第一扁平流路(扁平流路)
43b 第二扁平流路(扁平流路)
43c 第三扁平流路(扁平流路)
45a 第一基準循環流路(特定の一つの基準循環流路)
45b 第二基準循環流路(基準循環流路)
45c 第三基準循環流路(基準循環流路)
45d 第四基準循環流路(基準循環流路)
53a 第一上接続流路(第二接続流路)
53b 第一下接続流路(第二接続流路)
55a 第二上接続流路(第二接続流路)
55b 第二下接続流路(第二接続流路)
57a 第三上接続流路(第二接続流路)
57b 第三下接続流路(第二接続流路)
67a 対向縁部
67b 対向縁部
69a +X方向側縁部
69b −X方向側縁部
F 作動流体
p1 圧力差(第一の圧力差)
p2 圧力差(第三の圧力差)
p3 圧力差(第二の圧力差)
R1 間隙(昇圧循環流路)
S1 狭幅寸法
θ 所定の角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33