【解決手段】積層フィルム20Aは、オーバーコート層21、プラスティックフィルム層22、インクジェットプライマー層23、紫外線硬化型インクジェット印刷層24、透明プライマーニス硬化層25及び接着剤硬化層26がこの順に積層されている。そして、透明プライマーニス硬化層25が、(1)ポリエステル系ポリウレタン樹脂と、(2)イソシアヌレート/アロファネート混合型ヘキサメチレンジイソシアネートと、(3)塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂と、を含有する透明プライマーニス組成物の硬化層である。
オーバーコート層、プラスティックフィルム層、インクジェットプライマー層、紫外線硬化型インクジェット印刷層、透明プライマーニス硬化層及び接着剤硬化層がこの順に積層された積層フィルムであって、
前記透明プライマーニス硬化層が、
(1)ポリエステル系ポリウレタン樹脂と、
(2)イソシアヌレート/アロファネート混合型ヘキサメチレンジイソシアネートと、
(3)塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂と、を含有する透明プライマーニス組成物の硬化層である、積層フィルム。
前記透明プライマーニス組成物全体の樹脂分を100質量%とした場合に、前記イソシアヌレート/アロファネート混合型ヘキサメチレンジイソシアネートの含有量が1〜15質量%である、請求項1に記載の積層フィルム。
前記ポリエステル系ポリウレタン樹脂の全量に対する、反応原料として使用されるポリエステルポリオールの割合が、1〜50質量%である、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
前記熱硬化性接着剤組成物全体の樹脂分を100質量%とした場合に、前記(I)ガラス転移温度が30℃以上80℃未満のポリエステル樹脂の含有量が、10〜50質量%であり、前記(II)イソシアヌレート型イソホロンジイソシアネートの含有量が、0.1〜5質量%であり、前記(III)アダクト型イソホロンジイソシアネート及びイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネートのうちの一方又は双方の含有量が、1〜10質量%であり、前記(IV)ブロック剤の解離温度が130〜150℃の範囲であるブロック型イソホロンジイソシアネートの含有量が、0.5〜10質量%である、請求項5に記載の積層フィルム。
請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法であって、前記透明プライマーニス硬化層の原料であるポリオールと前記接着剤硬化層の接着剤組成物中のイソシアネートとを反応させる、積層フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
[フィルム貼着缶体の構成]
図1は、本実施形態に係る積層フィルムが貼着されたフィルム貼着缶体の構成の一例を示す側面図である。
図1において、フィルム貼着缶体1Aは、缶体10Aと、缶体10Aに貼着された積層フィルム20Aとを備える。缶体10Aは、一体成形された缶胴11A及び缶底12Aと、天蓋13Aとを有する金属製の缶体であり、所謂ツーピース缶(2P缶)である。ツーピース缶の素材としての金属板には、アルミニウム板、アルミニウム合金板などの表面処理鋼板、その他各種合金メッキ鋼板を用いることができる。また、金属板の少なくとも缶内面側となるべき面を配向性熱可塑性樹脂で被覆した素材を用いることもできる。缶体10Aとしては、例えば、絞り缶、再絞り缶、ストレッチ缶、絞りしごき缶、インパクト缶などの、缶底と缶胴とが一体に成形されたシームレス缶を挙げることができる。
【0022】
通常、この缶胴11Aの開口側一端部11aに、ネックイン加工およびフランジ加工が施されてネックイン部11Aa及びフランジ部11Abが形成され、最終的にフランジ部11Abに天蓋13Aが巻き締められる。
【0023】
また、この缶体10Aは、上記のようなツーピース缶の他に、ネックイン加工された開口端部にねじ部が形成され、そのねじ部にキャップが巻き締められるリシール缶やボトル型缶、あるいは、シームレス缶胴の底部にトップドーム成形が施されて口頸部と肩部とが成形され、口頸部に形成されたねじ部にキャップが巻き締められ、缶胴下端の開口部にネックイン加工およびフランジ加工が施されて底蓋が巻き締められる他のボトル型缶とすることもできる。
【0024】
[積層フィルムの構成]
本実施形態に係る積層フィルム20Aは、
図2に示すように、オーバーコート層21、プラスティックフィルム層22、インクジェットプライマー層23、紫外線硬化型インクジェット印刷層24、透明プライマーニス硬化層25及び接着剤硬化層26がこの順に積層されている。そして、透明プライマーニス硬化層25は、(1)ポリエステル系ポリウレタン樹脂と、(2)イソシアヌレート/アロファネート混合型ヘキサメチレンジイソシアネートと、(3)塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂と、を含有する透明プライマーニス組成物の硬化層である。
【0025】
[プラスティックフィルム層]
基材としてのプラスティックフィルム層22には、具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートとイソフタル酸との共重合体などよりなる共重合ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン共重合体などのうちから選ばれた透明な高分子樹脂単体、あるいは上記樹脂の複合体からなる熱可塑性樹脂フィルムが用いられる。これらのうち、貼着工程において147N/cm〜588N/cm(15kgf/cm〜60kgf/cm)の線圧力で缶体10Aの円周方向にある程度展延し、しかも耐熱性があるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いることが好ましい。その樹脂フィルムの厚さは適宜決定することができ、一例として10μm〜30μm程度の厚さの樹脂フィルムを使用することができる。また、インクジェットプライマー層23との密着性を考慮し、易接着性を有する樹脂フィルムが選択されるのが好ましい。
【0026】
プラスティックフィルム層22の一方の面には、予めクリアーコート層を形成しておくことができる。そのクリアーコートとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等にアミノ樹脂等の硬化剤を使用し、これに周知の滑剤を含有させたものをコーティング材として例示することができる。例えば上記のポリエステル系樹脂には、製膜時のフィルムの巻取り性や、フィルムの搬送性等を良くするため、必要に応じて滑剤としての有機または無機の微粒子を含有させることが好ましい。かかる微粒子としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子が例示される。また、微粒子以外にも着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、潤滑剤、触媒、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ポリマー、オレフィン系アイオノマーのような他の樹脂も透明性を損なわない範囲で任意に含有させることができる。
【0027】
オーバーコート層21は、本実施形態のツーピース缶において接着剤硬化層26とのラミネート接着性を考慮して形成される。オーバーコート層21には、グラビアラミネートを行う際に用いられる公知の材料を用いることができる。
【0028】
図3は、プラスティックフィルム層22にオーバーコート層21を形成する工程の一例を模式的に示す図である。同図に示すように、繰り出しロール31から繰り出されたプラスティックフィルム層22がグラビアロールコータ32を通過すると、ここでプラスティックフィルム層22の一方の面にクリアー塗料が連続的にあるいはスポット的にコートされ、次いでドライヤー33を通過し、クリアーコートが乾燥された後、巻取ロール34に巻き取られる。
クリアー塗料がスポット的にコートされるスポットコートは、長尺フィルムに対して1缶分の長さごとに行われるため、クリアーコート層はほぼ缶胴1周分の長さを1単位として繰り返し行われるが、塗装性の観点から、クリアー塗料が連続的にコートされる連続コートを選択するのが好ましい。また、ドライヤー35としては、温風乾燥機、熱風乾燥機や赤外線を照射して加熱する赤外線乾燥機などを用いることができる。なお、クリアーコートの付着量は、例えばその厚さが0.5μm〜3μmとなる量とする。また、クリアーコートを実施する方法は、グラビアロールコータに限らず、ロールコータ、ダイコータなどの公知の方法で塗装を実施してもよい。
【0029】
[インクジェットプライマー層]
インクジェットプライマー層23は、プラスティックフィルム層22との密着性向上や紫外線硬化型インクジェット印刷層24の再現性を目的として形成される。インクジェットプライマー層23には、後述のプライマーを用いることができる。また、印刷の再現性を向上しつつ更に帯電防止性付与が必要な場合には、プライマーと帯電防止性ポリマーとを組み合わせた二種類以上の混合物を用いることができる。
【0030】
プライマーとしては、ポリエチレンイミンやエチレンイミン・エチレン尿素共重合体などがアンカーコート剤として用いられる。これらのうち、インクジェット法によって着弾させた紫外線硬化型インクとの密着性を向上させ、更には着弾させたインクのドットが大きくならないように、またインクの滲みが生じないようにするために、熱硬化製ポリエステル樹脂と紫外線硬化型樹脂とをブレンドした易接着プライマーや、多孔質の材料からなるプライマーが用いられ、例えば、アルキル変性エチレンイミン系重合体のプライマー水溶液をプラスティックフィルム層22上に塗布して乾燥させ、皮膜層を形成することが好ましい。変性剤として使用するハロゲン化物としては、塩化メチル、臭化エチル、塩化n−ブチル、塩化ラウリル、ヨウ化ステアリル、塩化オレイル、塩化シクロヘキシル、塩化ベンジルなどが挙げられる。また、プライマーに用いる樹脂内に多孔質のシリカを添加させることにより、インクジェットのインクを滲ませないようにすることが可能になる。すなわち、インクはシリカ表面の小さな窪みや穴に入り込み滲みの発生を防ぐことができる。このプライマーには、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用され、その樹脂に、粒径0.3μm〜5μm、好ましくは0.8μm〜3μm程度のシリカを添加させる。添加させる量は、0.1%〜2%程度が好ましく、2%より多くなるとフィルムにプライマーコートを施すとフィルムの透明性が低下し印刷外観性の点で好ましくない。また、0.1%より少ないとインクの滲み発生の防止効果が薄い。
【0031】
[紫外線硬化型インクジェット印刷層]
紫外線硬化性インクジェット印刷層24は、インクジェットプライマー層23と協働して、密着性及び印刷再現性を発現する。プラスティックフィルム層22上にインクジェットを使用して印刷を行う場合、インクジェットに用いるインクは、一般的に水性溶媒に色材として染料を溶解した水系インク、オイルインク、紫外線硬化型インク等が用いられるが、紙への印刷とは異なり、インク吸収性のない媒体、とりわけ合成樹脂フィルムヘの印刷は、インク吸収が期待できないため紫外線硬化型インクが用いられる。また、インクジェット印刷用の紫外線硬化型インクは、低粘度で、気化しにくく、飛散しにくい物性に優れたものが使用される。インクの粘度を低下させてその流動性を高めるために、光重合性モノマーを反応性希釈剤として使用したり、紫外線硬化成分を溶解する有機溶剤を添加することもできるが、この発明に用いる紫外線硬化型インクは、インクジェットの際のインク着弾直後に仮硬化させ、全ての紫外線硬化型インクを着弾させた後に本硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。すなわち、溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤の揮発性有機化合物(VOC)の問題が生じる場合がある。そのため、分散媒体は溶剤ではなく、重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0032】
紫外線硬化型インクには、ラジカル重合タイプとカチオン重合タイプが知られているが、カチオン重合型のインクは、硬化収縮がないこと、臭気がないこと、酸素による重合阻害の影響がないことなどの理由から、飲料缶用に好適である。
【0033】
カチオン重合インクは、少なくともエポキシ、オキセタン、ビニルエーテル等のカチオン重合性物質、光重合開始剤及び色材を含み、紫外線にて硬化させてフィルムに定着させる。インクジェットによる画像形成方法は、一般のコーティングや印刷と違い、高精細な画像を得るには低粘度な微小液滴とすることが好ましい。
【0034】
紫外線硬化型インクの粘度は、25℃で30mPa・s以下、好ましくは20mPa・s以下が望ましい。また、紫外線硬化型インクは、顔料対樹脂バインダー比率の観点から、理想的な比率となるよう構成される。そのための樹脂バインダーとしては、エポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテルアクリレート樹脂、ポリブタジエン系アクリレート樹脂などが挙げられ、紫外線で重合反応を示すものであればよい。なお、上記の紫外線硬化型樹脂は、単体として、あるいは二種類以上の混合物として使用することもできる。
【0035】
光重合性モノマーによる反応性希釈剤の具体例としては、単官能モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレートなど、二官能モノマー;ジシクロベンテニルアクリレート、ジシクロベンテニアルオキシエチルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコール、ネオベンチルグリコールジアクリレート、トリプロピエングリコールジアクリレートなど、三官能以上のモノマー;トリメチロールプロパントリアクリレート、ベンタエリスリトールトリアクリレート、ジベンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。
【0036】
インク組成物中には、光重合開始剤を配合することが好ましい。その光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾイルイソブチルエーテル、ベンジンメチルケタール、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾヒスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジーtert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロフィルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメートなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は単独でも、二種類以上が併用されてもよい。
【0037】
また、インクは、シアン(C)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色を使用したカラー印刷を行うか、CMYKにマゼンタの薄い色(LM)、シアンの薄い色(LC)を加えた6色印刷でも良い。さらに、CMYKに橙、緑のインクを加えた6色印刷でも良い。そして、顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08μm〜0.5μmとすることが好まし<、最大粒径は0.3μm〜10μm、好ましくは0.3μm〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件等が適宜設定される。このような粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化の感度を維持することができる。
【0038】
紫外線硬化型インクには、上記に説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類などを添加することができる。
【0039】
紫外線硬化型インクの噴射条件としては、ヘッド及びインクを35〜100℃、好ましくは40〜80℃に加熱、加温し、インクの流動性を向上させて噴射することが噴射安定性の点で好ましい。紫外線硬化型インクは、温度変動による粘度変動幅が大きく、粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴噴射速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、紫外線硬化型インクの温度を上げながらできるだけ一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅は、設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0040】
また、紫外線の照射を2段階に分けること、すなわち、まず紫外線硬化型インクを着弾させた後、前述の方法で紫外線を照射して仮硬化させ、そして、後述するフィルム貼着終了後に、更に紫外線を照射して、本硬化させることによって、インクの硬化の際に生じる熱可塑性樹脂フィルムの収縮を抑えることが可能となる。
【0041】
紫外線硬化型インクの硬化時間は、印刷フィルムの厚さ、紫外線源、光重合開始剤、反応性希釈剤、および紫外線源と硬化されるべき塗膜面との間の距離、求める硬化状態などによって異なるが、0.001秒〜2.0秒の範囲の時間で適宜決定される。印刷フィルムを缶体に貼着させた後の、ネッキング加工やねじ成形などの後加工を行う際に、インクの追随性や印刷外観が良好となるように紫外線硬化型インクの硬化時間を調整し、着弾させたインクを仮硬化させてタックフリーの状態、すなわち、インクの表面はほぼ80%程度硬化させ、表面のべたつき状態をなくし、インクの中部は表面の硬化率より小さくし、例えばほぼ30%程度の硬化状態とすることにより、製造効率を向上させることもできる。
【0042】
また、印刷に使用するヘッドは、連続吐出方式とDOD(ドロップオンデマンド)方式とが知られているが、DOD型の方が広く採用されている。DOD型の中でも、サーマル方式とピエゾ(圧電)方式との2種類が知られているが、商業的にはインクを加圧してノズルから噴射するための圧力室の容積を変化させるピエゾヘッドを用いるピエゾ方式が望ましい。
【0043】
プラスティックフィルム層22の印刷が施される面には、その印刷性および加工性、あるいは印刷済みフィルム2の巻取保管時の際に発生しやすい印刷の転移性の観点から、インクジェットプライマー層23の形成によって下地処理が施され、その面にインクジェット印刷法によって模様や文字が形成される。この様な印刷が施される面の表面酸化処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理などの処理方法があり、好ましくはコロナ処理により、印刷が施される面に酸化処理が施される。
【0044】
[透明プライマーニス硬化層]
本実施形態の透明プライマーニス硬化層25は、透明プライマーニス組成物の硬化層である。透明プライマーニス組成物は、(1)ポリエステル系ポリウレタン樹脂と、(2)イソシアヌレート/アロファネート混合型ヘキサメチレンジイソシアネートと、(3)塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂と、を含有する混合体である。
【0045】
(透明プライマーニス組成物 (1)ポリエステル系ポリウレタン樹脂)
本実施形態で使用される透明プライマーニス組成物は、(1)ポリエステル系ポリウレタン樹脂、を必須成分の一つとする。ポリエステル系ポリウレタン樹脂は、少なくともポリエステルポリオールとポリイソシアネートを反応原料としたポリウレタン樹脂である。ポリエステル系ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、5000以上15000未満であるのが好ましい。ポリエステル系ポリウレタン樹脂の数平均分子量が5000以上15000未満であると、硬化剤であるイソシアネートと反応した際に紫外線硬化型インクジェット印刷層との密着性に優れ、且つ塗工する際に適性な溶液粘度が確保できる。
中でも、ポリエステル系ポリウレタン樹脂(1)の全量に対する、反応原料として使用されるポリエステルポリオールの割合が、1〜50質量%であるのが好ましい。ポリエステル系ポリウレタン樹脂(1)の全量に対する、反応原料として使用されるポリエステルポリオールの割合が1〜50質量%の範囲外であると、硬化剤であるイソシアネートと適性な反応が得られず、紫外線硬化型インクジェット層との密着不良や、金属板にラミネートした際に加工不良を引き起こす恐れがある。以後(1)数平均分子量5000以上、15000未満のポリエステル系ポリウレタン樹脂を「ポリウレタン樹脂(1)」と称する場合がある。
【0046】
本実施形態で使用するポリエステルポリオールとしては特に限定はなく、公知のポリエステルポリオールを使用することができる。
例えば、プロピオラクトン、ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、σ−バレロラクトン、β−メチル−σ−バレロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステルと、前記グリコール又は3官能若しくは4官能の脂肪族アルコールとの反応物であるポリエステルポリオール(1);
前記鎖状脂肪族グリコール、脂環式グリコール、ダイマージオール、ビスフェノール又は前記ポリエーテルポリオール等のポリオールと、多価カルボン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール(2);
前記3官能又は4官能の脂肪族アルコールと、多価カルボン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール(3);
2官能型ポリオールと、前記3官能又は4官能の脂肪族アルコールと、多価カルボン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール(4);
ジメチロールプロピオン酸、ヒマシ油脂肪酸等のヒドロキシル酸の重合体である、ポリエステルポリオール(5);等が挙げられる。
【0047】
ここで、前記ポリエステルポリオール(2)、(3)又は(4)の製造に用いられる多価カルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の非環状脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸等の芳香族系ジカルボン酸;これら脂肪族又は芳香族ジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体、ダイマー酸等の多塩基酸類が挙げられる。
【0048】
本実施形態で使用されるポリウレタン樹脂(1)は、本発明の効果を損なわない範囲でポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリオールを用いることができる。また1種または2種以上を併用してもよい。例えば、エチレングリコール、1,2―プロパンジオール、1,3―プロパンジオール、2メチル−1,3プロパンジオール、2エチル−2ブチル−1,3プロパンジオール、1,3―ブタンジオール、1,4―ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、1,4―ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトールなどの飽和または不飽和の低分子ポリオール類(b);前記低分子ポリオール類(b)などと、例えばジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られるポリカーボネートポリオール類(f);ポリブタジエングリコール類(g);ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類(h);1分子中に1個以上のヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られるアクリルポリオール(i)などが挙げられる。
【0049】
前記ポリウレタン樹脂(1)の反応原料である前記ポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、1,5―ナフチレンジイソシアネート、4,4’―ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’―ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’―ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3―フェニレンジイソシアネート、1,4―フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン―1,4―ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4―トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン―1,4―ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン―4,4’―ジイソシアネート、1,3―ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、mーテトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ビス−クロロメチル−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアネート−ベンジルクロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等があげられる。これらのジイソシアネート化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0050】
前記ポリウレタン樹脂(1)は、必要に応じて鎖伸長剤を使用してもよい。鎖伸長剤としては、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン―4,4’―ジアミンなどの他、2―ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2―ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2―ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシエチレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2―ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0051】
また、反応停止を目的とした末端封鎖剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としてはたとえば、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L−アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。これらの末端封鎖剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
前記ポリウレタン樹脂(1)は公知の方法で合成することができる。例えば、ポリエステルポリオールを含むポリオールとポリイソシアネート化合物とをイソシアネート基が過剰となる割合で反応させ、末端イソシアネート基のプレポリマーを得、得られるプレポリマーを、適当な溶剤中、例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどのアルコール系溶剤;メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤;あるいはこれらの混合溶剤の中で、鎖伸長剤及び/又は末端封鎖剤と反応させる二段法、あるいはポリエチレングリコールおよび併用ポリオール、ジイソシアネート化合物、鎖伸長剤及び/又は末端封鎖剤を上記のうち適切な溶剤中で一度に反応させる一段法により製造することができる。
【0053】
(透明プライマーニス組成物 (2)イソシアヌレート/アロファネート混合型ヘキサメチレンジイソシアネート)
本実施形態で使用される透明プライマーニス組成物は、(2)イソシアヌレート/アロファネート混合型ヘキサメチレンジイソシアネートを必須成分の一つとする。以後、ヘキサメチレンジイソシアネートをHDIと称する場合がある。
【0054】
本実施形態に係る積層フィルムにおいて透明プライマーニスを使用する目的は、基材へ接着するために使用する接着剤硬化層と紫外線硬化型インクジェット印刷層の密着性を更に高める目的である。
紫外線硬化型インクジェット印刷層との密着性を保持するには、紫外線硬化型インクジェット印刷層と透明プライマーニス組成物との濡れ性が重要になる。しかし、一般的に紫外線硬化型インクジェット印刷用インクにはインクの表面張力制御とレベリングを調整するため、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルアルキル共変性シロキサンなどのシリコン系界面活性剤が使用される場合が多い。インクジェット層の表面にこれらのシリコン成分が配向した際、層表面には強力な拡張力が生じ、同層上に塗剤を重ね塗りした場合にハジキ現象を発生させ、濡れ性が極端に劣ることが多い。
【0055】
本実施形態の透明プライマーニス組成物では、ハジキ現象を極力低減させるために、使用するイソシアネートとして特に高い反応性を有するイソシアネートであり、且つ熱硬化時に変色等問題の少ないイソシアネートとして、イソシアヌレート/アロファネート混合型ヘキサメチレンジイソシアネートが選択される。高い反応性を有するイソシアネートにはトルエンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネートもあるが、これら芳香族型イソシアネートは加熱で黄色に変色し、紫外線硬化型インクジェット印刷により設けられたデザイン外観を損ねる可能性がある。一方、環脂肪族のキシレンジイソシアネートは反応性が高すぎ、溶液状態で反応が進み、塗工時の粘度上昇により塗工性に劣る傾向にある。また脂肪族イソシアネートのイソホロンジイソシアネートは、反応性が低くハジキ抑制が困難な場合がある。これに対し、脂肪族イソシアネートのヘキサメチレンジイソシアネートは、ハジキを抑制できる高い反応性を有し、かつ、溶液状態での反応性は比較的緩やかであり、溶液の粘度上昇も少ない為、塗工性の低下も最低限に抑えることが可能である。
【0056】
上記ヘキサメチレンジイソシアネートの骨格がイソシアヌレート/アロファネート混合型である理由は、ハジキの抑制と耐水性の両立にある。一般的にヘキサメチレンジイソシアネートの骨格はアダクト型、ビュレット型、イソシアヌレート型の順で反応速度が速く、アダクト型やビュレット型の構造ではハジキを抑制するための十分な反応性が得られないが、イソシアヌレート型であれば反応性が高くハジキを抑制することができる。
【0057】
一方、積層フィルムを備えるフィルム貼着缶体に内容物が充填された後、高温・高圧熱水による殺菌処理されるが、プライマー塗膜にはこの加圧熱水によるダメージを防ぐ必要がある。この対応としてプライマーにヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート骨格を導入させる必要がある。アロファネート骨格はその構造から剛直な性質を持っており、優れた耐熱・耐水性を有することから、殺菌処理の加圧熱水による塗膜のダメージを防ぐ効果を発揮する。以上の理由から、本積層フィルムの透明プライマーニス組成物は、イソシアヌレート/アロファネート混合型ヘキサメチレンジイソシアネートを必須成分の一つとする。
【0058】
(透明プライマーニス組成物 (3)塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂)
本実施形態で使用される透明プライマーニス組成物は、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を必須成分の一つとする。塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂の数平均分子量は、2000以上50000未満であるのが好ましい。塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂の数平均分子量が2000以上50000未満であると、柔軟性に富み、本積層フィルムを金属缶にラミネート・成型される際の塗膜のクラックの発生が防止され、また、透明プライマーニス硬化層上に塗工される接着剤硬化層と優れた密着性を示すことから、透明プライマーニス硬化層と接着剤硬化層との間の剥離の発生が防止される。
【0059】
前記の塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、二種類の方法で得ることができる。一つは塩化ビニルモノマー、酢酸ビニルモノマーおよびビニルアルコールを適当な割合で共重合して得られる。もう一つは、塩化ビニルと酢酸ビニルを共重合した後、酢酸ビニルを一部ケン化することにより得られる。水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、塩化ビニル、酢酸ビニルおよびビニルアルコールのモノマー比率により樹脂被膜の性質や樹脂溶解挙動が決定される。即ち、塩化ビニルは樹脂被膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルは接着性や柔軟性を付与し、ビニルアルコールは極性溶剤への良好な溶解性を付与する。
【0060】
前記塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、ハジキ抑制、接着性、加圧熱水性、加工性などの適性を得るために、適正なモノマー比率が存在する。即ち、水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂100質量部に対する、塩化ビニルの割合は80〜95質量部が好ましい。80質量部未満だと樹脂被膜の強靭さが劣り、加圧熱水性が低下する。95質量部を超えると樹脂被膜が硬くなりすぎ、加工性、接着性が低下する。また、ビニルアルコールから得られる水酸基価は50〜200mgKOH/gが好ましい。50mgKOH/g未満だと極性溶媒への溶解性が劣り、塗工適性が不良となる。200mgKOH/gを超えると耐水性が低下して、加圧熱水性が不良となる。
【0061】
(透明プライマーニス組成物 その他成分)
(エポキシ樹脂)
本実施形態で使用される透明プライマーニス組成物は、接着剤層との密着性を保持する目的でエポキシ樹脂を含有することができる。エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、特にビスフェノールA型が好適に使用される。上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールとを必要に応じて酸またはアルカリ触媒(燐酸系またはアンモニウム塩系触媒等)の存在下に高分子量まで縮合させてなる樹脂、エポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応させることにより得られた樹脂のいずれであってもよい。
前記エポキシ樹脂の分子量は特に限定されるものでは無いが、数平均分子量で2500を超えた場合、他樹脂との相溶性が低下する可能性が高くなることや溶液化した際の粘度が高くなり、塗工性、作業性に悪影響を及ぼす事が考えられる。
【0062】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば三菱ケミカル社製のJER1001、同1004、新日鉄住金化学社製YD−115、同115CA、同127、同128、同128G、同134、同011、同012、同013、同014、DIC社製エピクロン860、同1050、同1055、同2050、同3050、同4050等を挙げることができる。
【0063】
(シリカ)
本実施形態で使用される透明プライマーニス組成物は、フィルムに塗工後巻き取った際のブロッキングを防止する目的でシリカを含有することができる。このシリカは親水性シリカ、疎水性シリカの何れも使用することができるが、親水性シリカの方がより好ましい。
シリカの粒子径は2μm以上であれば、十分なブロッキング防止効果が得られる傾向にあり、10μm以下であれば、接着剤をリコートした際の界面密着性を阻害させ難い傾向にある。
【0064】
シリカの市販品としては富士シリシア化学社製サイリシア250、同256、同320、同350、同370、同420、同430、同550、同730、サイロホービック100、同200、同702、同704、同507、同505、同603などを挙げることができる。
【0065】
(透明プライマーニス組成物 各成分の組成比率)
本実施形態で使用する透明プライマーニス組成物全体の樹脂分を100質量%とした場合に、(1)ポリエステル系ポリウレタン樹脂の含有量は、75〜95質量%であることが好ましく、80〜90質量%であることがより好ましい。(2)イソシアヌレート/アロファネート混合型ヘキサメチレンジイソシアネートの含有量は、1〜15質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。(3)塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂の含有量は、1〜10質量%であることが好ましく、2〜7質量%であることがより好ましい。
また、本実施形態で使用する透明プライマーニス組成物全体の樹脂分を100質量%とした場合に、(1)数平均分子量5000以上15000未満のポリエステル系ポリウレタン樹脂の含有量は、75〜95質量%であることが好ましく、80〜90質量%であることがより好ましい。(2)イソシアヌレート/アロファネート混合型ヘキサメチレンジイソシアネートの含有量は、1〜15質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。(3)数平均分子量2000以上50000未満の塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂の含有量は、1〜10質量%であることが好ましく、2〜7質量%であることがより好ましい。
【0066】
[接着剤硬化層]
本実施形態の接着剤硬化層26は、接着剤組成物の硬化層である。接着剤硬化層に使用される接着剤組成物は、例えばイソシアネートを含有する熱硬化性接着剤組成物とすることができる。
接着剤硬化層は、
(I)ガラス転移温度が30℃以上80℃未満のポリエステル樹脂と、
(II)イソシアヌレート型イソホロンジイソシアネートと、
(III)アダクト型イソホロンジイソシアネート及びイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネートの一方又は双方と、
(IV)ブロック剤の解離温度が130〜150℃の範囲であるブロック型イソホロンジイソシアネートと、を含有する熱硬化性接着剤組成物の硬化層であるのがより好ましい。
【0067】
(熱硬化性接着剤組成物 (I)ガラス転移温度が30℃以上80℃未満のポリエステル樹脂)
熱硬化性接着剤組成物は、ガラス転移温度(以下Tgと称する場合がある)が30〜80℃の範囲であるポリエステル樹脂を含有することができる。ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は40〜60℃であればより好ましい。ガラス転移温度(Tg)が30℃を下回ると接着剤硬化後の凝集力が低下する傾向が見られ、反対に80℃を上回るとラミネート時に接着剤が溶融軟化し難くなり、ラミネート性が低下する傾向がある。
【0068】
前記ポリエステル樹脂は多塩基酸成分と多価アルコール成分とをエステル化反応させたものであればよい。多塩基酸成分としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、などの1種以上の二塩基酸及び、これらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて、安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。
【0069】
多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのニ価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、又は2種以上を混合して使用することが出来る。
【0070】
前記ポリエステル樹脂の市販品としては、例えば、東洋紡(株)社製のバイロン(VYLON)103、同200、同220、同226、同240、同245、同270、同280、同290、同296、同600、同660、同885、バイロン(VYLON)GK250、同360、同640、同780、同810、ユニチカ(株)社製エリーテル(ELITEL)UE−3500、同3200、同9200、同3201、同3203、同3600、同9600、同3660、同3210、同3215、同3216、同3620、同3240、同3250、同3370、同3380、同3350、同3300、東亞合成(株)社製アロンメルト(Aronmelt)PES−360、同316、SKケミカル社製スカイボン(SKYBON)ES−100、同110、同120、同160、同250、同403、同410、同420、同450、同460M、同600、同660、同710、同750、同850、同900M、同901、同910、同955などが挙げられる。
【0071】
(熱硬化性接着剤組成物 (II)イソシアヌレート型イソホロンジイソシアネートと(III)アダクト型イソホロンジイソシアネート及びイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネートのうちの一方又は双方)
熱硬化性接着剤組成物は、(II)イソシアヌレート型イソホロンジイソシアネートと、(III)アダクト型イソホロンジイソシアネート及びイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネートのうちの一方又は双方と、を含有するのが好ましい。これらを含有することで、接着剤塗工時の乾燥、ラミネート、焼き付けによる段階的な加熱工程に対応した硬化性が発現し、接着剤をフィルムに塗工し巻き取られた際のブロッキングが発生しにくくなると共に基材に対し良好な密着性が得られる。以後、イソホロンジイソシアネートをIPDIと称する場合がある。
【0072】
前記透明プライマーニス組成物でも述べた通り、イソシアネートとして芳香族系イソシアネートは黄変等を生じる可能性があり、環脂肪族のキシレンジイソシアネートは反応性が高すぎて、基材への接着の際に接着剤組成物の溶融・軟化が不十分となり接着不良を引き起こす。また、脂肪族のヘキサメチレンジイソシアネートは反応性が高すぎるため基材への接着後、後加工時に加工不良を引き起こす恐れがある。一方、脂肪族のイソホロンジイソシアネートは適切な骨格の選定によって接着剤組成物を塗工した後にブロッキングをしない程度まで硬化する高い反応性を有し、且つラミネートする際に十分に溶融・軟化させることを可能とし、その柔軟な構造から、接着後の加工にも十分に基材に追従することを可能とする。
【0073】
イソホロンジイソシアネートの骨格がイソシアヌレート型単体とした場合には接着剤組成物の硬化が過剰となり、ラミネート不良が発生する恐れがある。一方、アダクト型イソホロンジイソシアネート単体とした場合には接着剤の硬化が不十分であり、フィルムへの塗工・巻取り後にブロッキングを発生させる恐れがある。
以上の理由により、接着剤硬化物層にイソシアヌレート型イソホロンジイソシアネートとアダクト型イソホロンジイソシアネートを併用することでこれらの問題を解決しうる性能を得ることが可能となる。また、アダクト型イソホロンジイソシアネートをイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネートで代用し、イソシアヌレート型イソホロンジイソシアネートとイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネートを併用した場合や、イソシアヌレート型イソホロンジイソシアネートと、アダクト型イソホロンジイソシアネート及びイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネートを併用した場合にも、同様の性能が得られる。
【0074】
(熱硬化性接着剤組成物 (IV)ブロック剤の解離温度が130〜150℃の範囲であるブロック型イソホロンジイソシアネート)
熱硬化性接着剤組成物は、(IV)ブロック剤の解離温度が130〜150℃の範囲であるブロック型イソホロンジイソシアネートを含有するのが好ましい。尚、解離温度とは、ブロック剤がイソシアネート基から脱離する温度のことをいう。
一般的に、熱硬化性接着剤は、ポリエステル樹脂などのベース樹脂とイソシアネート樹脂などの硬化性樹脂を十分に反応させることで皮膜が架橋し、強固な接着性や耐久性を保持するに至る。一方、基材にラミネートされる際には接着剤が熱により十分に溶融・軟化していないと基材に均一に付着せず接着面がムラになり、接着不良に繋がる。よって、接着剤を塗工する乾燥工程では巻き取られたフィルムがブロッキングしない程度に適度に半硬化し、その後の加熱工程で更に反応を進め、最終的に十分に反応させた強度に優れる接着剤が理想となる。このような性能を発現させるため、接着剤塗工時の乾燥温度である100〜120℃では前記したノンブロックタイプのイソホロンジイソシアネートが反応し、ラミネート時の加熱温度である160〜200℃ではこのブロック型イソホロンジイソシアネートが順次段階的に反応するため、塗工時のブロッキング性とラミネート時の溶融・軟化性及び硬化性の発現を可能とする。
【0075】
(熱硬化性接着剤組成物 その他の成分)
(酸化チタン)
熱硬化性接着剤組成物は、必要に応じて酸化チタンを好適に含有することができる。本実施形態に係る積層フィルムの接着剤に使用可能な酸化チタンとしては硫酸法で製造された粒径が0.1μm〜0.4μmの範囲であり、表面処理剤としてシリカもしくはアルミナ処理されたものが好適に使用される。また、配合量としては接着剤の性能を損なわない範囲であれば特に制限されるものでは無いが、接着剤成分の合計を100質量部とした場合に、酸化チタンとして30〜200質量部が好ましく、より好ましくは、50〜100質量部の範囲である。酸化チタンとして塩素法で製造されたものは硫酸法で製造されたものよりも一般的にモース硬度が大きく、印刷時にドクターブレードを摩耗させ易いことから作業性を低下させる傾向がある。酸化チタンの粒子径は0.1μm以上であれば、隠蔽性が低下し難い傾向にあり、0.4μm以下であれば練肉阻害を引き起こし難い傾向にある。
【0076】
酸化チタンの市販品としては、テイカ社製JR−600A、同602、同901、同301、同403、同701、同800、石原産業社製R−630、同670、同830、CR−58、同85、同90、堺化学社製R−42、同45、同46などが挙げられる。
【0077】
(シリカ)
熱硬化性接着剤組成物は、必要に応じてシリカを含有することができる。シリカとしては、親水性シリカ、疎水性シリカの何れも使用することができるが、親水性シリカの方がより好ましい。シリカの粒子径は2μm以上であれば、十分なブロッキング防止効果が得られる傾向にあり、10μm以下であれば、接着剤をリコートした際の界面密着性を阻害させ難い傾向にある。
【0078】
シリカの市販品としては富士シリシア化学社製サイリシア250、同256、同320、同350、同370、同420、同430、同550、同730、サイロホービック100、同200、同702、同704、同507、同505、同603などを挙げることができる。
【0079】
(熱硬化性接着剤組成物 各成分の組成比率)
本実施形態で使用する熱硬化性接着剤組成物全体の樹脂分を100質量%とした場合に、(I)ガラス転移温度が30℃以上80℃未満のポリエステル樹脂の含有量は、10〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。(II)イソシアヌレート型イソホロンジイソシアネートの含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましい。(III)アダクト型イソホロンジイソシアネート及びイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネートのうちの一方又は双方の含有量は、1〜10質量%であることが好ましく、3〜7質量%であることがより好ましい。(IV)ブロック剤の解離温度が130〜150℃の範囲であるブロック型イソホロンジイソシアネートの含有量は、0.5〜10質量%であることが好ましく、2〜6質量%であることがより好ましい。
【0080】
[その他の層]
積層フィルム20Aは、オーバーコート層21、プラスティックフィルム層22、インクジェットプライマー層23、紫外線硬化型インクジェット印刷層24、透明プライマーニス硬化層25及び接着剤硬化層26を備えるが、これらの層以外に、公知の他の層の一又は複数を有することができる。
【0081】
[フィルム貼着缶体の製造方法]
図4は、
図1のフィルム貼着缶体の製造方法の一例を示す工程図である。
図4に示すように、プラスティックフィルムを巻き出し(プロセスP1)、プラスティックフィルムの片面にクリアー塗料などの塗料をコートして熱風乾燥し、これによりプラスティックフィルム層上にオーバーコート層を形成し(プロセスP2)、その後ロール状に巻き取る(プロセスP3)。
【0082】
次に、オーバーコート層が形成されたプラスティックフィルム層を巻き出しロールから繰り出し、プラスティックフィルム層のオーバーコート層が形成されていない面に紫外線硬化型塗料などのプライマーを塗布し(プロセスP5)、紫外線照射装置を用いて紫外線照射によって半硬化させ(プロセスP6)、これによりプラスティックフィルム層上にインクジェットプライマー層を形成する。次いで、インクジェットプライマー層が形成された面に、インクジェットプリンタヘッドからイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)などの各紫外線硬化型インクを着弾させてインクジェット印刷を行い(プロセスP7)、紫外線照射によってプライマー及び紫外線硬化型インクを完全硬化させ(プロセスP8)、これによりインクジェットプライマー層上に絵柄などの紫外線硬化型インクジェット印刷層を形成し、その後ロール状に巻き取る(プロセスP9)。紫外線硬化型インクを用いてインクジェット印刷を行った後、紫外線照射に因ってインク表面は粘着性を失い、インクが不完全に硬化した仮硬化状態で紫外線硬化型インクジェット印刷層が形成される。そして、その後の完全硬化により、インクジェットプライマー層及び紫外線硬化型インクジェット印刷層に均一に分散している組成物が硬化し、プラスティックフィルムへの密着性が向上し、紫外線硬化型インクジェット印刷層自体も強靭な被膜を形成する。
【0083】
プラスティックフィルム層に印刷が施される面には、着弾されたインクの滲みを防止すると共に密着性を向上させるために、前処理として紫外線硬化型のアンカーコート(下地処理)が施され、上述のインクジェットプライマー層が形成される。このインクジェットプライマー層とプラスティックフィルム層との密着性を向上させるため、塗装前処理としてインクジェットプライマー層にコロナ処理を施してもよい(プロセスP4)。
【0084】
その後、紫外線硬化型インクジェット印刷層が形成された面に、紫外線硬化型インクジェット印刷層と接着剤硬化層との密着性を向上させるための透明プライマーニス組成物をコートし(プロセスP10)、熱風乾燥させる(プロセスP11)。透明プライマーニス組成物の塗布量は、7mg/dm
2〜12mg/dm
2であるのが好ましい。
【0085】
次いで、透明プライマーニス硬化層上に、例えば熱硬化性接着剤組成物を塗布し(プロセスP12)、熱風乾燥させ(プロセスP13)、これにより積層フィルムを得る。このとき、透明プライマーニス硬化層の反応原料であるポリオールと接着剤硬化層の熱硬化性接着剤組成物中のイソシアネートとが加熱によって反応し、ウレタン結合が生成される。これにより、透明プライマーニス硬化層と接着剤硬化層の密着性が向上する。熱硬化性接着剤組成物の塗布量は、80mg/dm
2〜120mg/dm
2であるのが好ましい。そして、得られた積層フィルムをロール状に巻き取る(プロセスP14)。
【0086】
次に、積層フィルムを1缶分の列にスリットし、単列毎に巻き取る(プロセスP15)。また、ツーピース缶の製造工程で製缶する(プロセスP16)。そして、積層フィルムが、図示しないフィード装置により搬送され、缶胴1周分に対応した長さ毎に切断されて、積層フィルムのガラス転移点以上であって且つ融点未満の温度範囲内の所定温度で加熱された缶体に貼着される(プロセスP17)。
【0087】
積層フィルムが缶体に貼着された後、缶体の底蓋のリブ部を、熱硬化性の塗料により塗装し(プロセスP18)、その後オーブン内で加熱し(プロセスP19)、これにより、潤滑剤を含有する保護塗膜層をリブ部に形成する。
【0088】
そして、缶体の内面を所定の塗料により塗装し、加熱乾燥する(プロセスP20)。このとき、積層フィルムを缶体に貼着させる際に用いられた透明プライマーニス硬化層及び接着剤硬化層も併せて加熱乾燥され、積層フィルムと缶体との密着性が更に向上する。その後、ネック成型などの後工程を順次行い(プロセスP21)、フィルム貼着缶体を得る。
【0089】
[フィルム貼着缶体製造装置の構成]
図5は、フィルム貼着缶体製造装置の一例を概略的に示す模式図である。
図5に示すように、積層フィルム20Aを挟み込んで缶胴1周分に対応する長さ毎に切断するカッターロール41と固定刃42とが貼着ロール43に接近して配置されている。このカッターロール41は、1回転毎に缶胴1周分に対応する長さに長尺フィルムを切断するカッターを備えており、印刷画面のつなぎの部分で切断するように、長尺フィルムの走行と同期して回転するように構成されている。
【0090】
貼着ロール43は、複数缶分の周長を備えたロールであって、缶胴1周分に対応する長さに切断された積層フィルム20Aを、その外周面に複数枚所定間隔をあけて吸着して保持するようになっている。この貼着ロール43は、缶体10Aを嵌合させて旋回移動する複数のマンドレル44の旋回サークルに接近した所定箇所に配置されている。その旋回サークルにおけるマンドレル44の旋回方向でのいわゆる上流側には、供給ステーション45が設けられており、この供給ステーション45に向けて供給コンベア46が配置されている。この供給コンベア46は、アルミニウム板などの金属板を素材として絞り加工あるいは絞りしごき加工などによって形成された缶体10Aを一列に並べて搬送するものであって、その最先端部において供給ステーション45のマンドレル44に缶体10Aを受け渡して嵌合させるようになっている。
【0091】
この供給ステーション45に対してマンドレル44の旋回方向での上流側および下流側であって、上記の貼着ロール43との間には、マンドレル44の表面を加熱する誘導加熱装置47aと、マンドレル44に嵌合された缶体10Aを加熱する誘導加熱装置47bとが配置されている。この誘導加熱装置47a,47bは、積層フィルム20Aの加熱接着のために充分な温度となるように缶体10A及びマンドレル44を加熱昇温するものであって、誘導加熱装置47bだけの加熱でもその加熱温度を、例えば150〜170℃に設定することは可能であるが、缶体10Aの加熱昇温を均一にする上では、マンドレル44に嵌合される前の缶体10Aを加熱した上で供給すること、また両方の加熱装置で加熱することが好ましく、この貼着工程で接着剤の硬化反応を進行させるようにすることが積層フィルム20Aの熱履歴を最小限に抑えるために好ましい。
【0092】
マンドレル44の旋回サークルのうち、貼着ロール43に接近した箇所が接着ステーション48であって、切断された積層フィルム20Aは、接着剤硬化層を外向きにして、すなわち接着ステーション48において接着剤硬化層を缶体10Aに相対する向きにして貼着ロール43に吸着保持されている。貼着ロール43に吸着保持されている1缶分の長さのフィルムが、加熱昇温された缶体10Aに押し付けられることにより、缶体10Aに巻き付けられる。また、その際の保持力は、例えば線圧力で294N/cm(30kgf/cm)に設定されている。
【0093】
接着ステーション48に連続して、押圧ステーション49が設けられており、この押圧ステーション49には押圧ロール50が配置されている。この押圧ロール50は回転しながら缶体10Aに接触することにより、缶体10Aの表面に接着されている積層フィルム20Aを押圧して接着剤組成物の密着度を高めるものであって、その押圧力は、マンドレル44との間隔を調整することにより、例えば392N/cm〜588N/cm(40〜60kgf/cm)に設定されている。なお、缶胴1周分に対応する長さに切断した積層フィルム20Aは、その積層フィルム20Aの両端部が重ね合わされて缶体10Aに接着される。
【0094】
図6は、本実施形態に係る積層フィルムが貼着されたフィルム貼着缶体の構成の他の一例を示す側面図である。
図6において、フィルム貼着缶体1Bは、缶体10Bと、缶体10Bに貼着された積層フィルム20Bとを備える。缶体10Bは、缶胴11Aと、底蓋12Bと、天蓋13Bとを有する金属製の缶体であり、所謂スリーピース缶(3P缶)である。スリーピース缶の素材としての金属板には、ティンフリースチールなどの表面処理鋼板、ブリキ、クロムメッキ鋼板、アルミメッキ鋼板、ニッケルメッキ鋼板、その他各種合金メッキ鋼板を用いることができる。また、金属板の少なくとも缶内面側となるべき面を配向性熱可塑性樹脂で被覆した素材を用いることもできる。
【0095】
通常、この缶胴11Bの開口側一端部11baに、ネックイン加工およびフランジ加工が施されてネックイン部11Ba及びフランジ部11Bbが形成され、また、開口側他端部11bbにネックイン加工およびフランジ加工が施されてネックイン部11Bc及びフランジ部11Bdが形成され、最終的にフランジ部11Bb及びフランジ部11Bdに、それぞれ天蓋13B及び底蓋12Bが巻き締められる。
【0096】
また、この缶体10Bは、上記のようなスリーピース缶の他に、ネックイン加工された開口端部にねじ部が形成され、そのねじ部にキャップが巻き締められるリシール缶とすることもできる。
【0097】
積層フィルム20Bの構成は、
図2の積層フィルム20Aの構成と基本的に同一である。但し、接着剤硬化層26に使用される接着剤組成物は、例えばイソシアネートを含有する電子線(EB)硬化型接着剤組成物とすることができる。この場合、接着剤硬化層26は、(V)ガラス転移温度が30℃以上80℃未満のポリエステル樹脂と、(VI)アダクト型イソホロンジイソシアネート及びイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネートの一方又は双方と、(VII)ブロック剤の解離温度が130〜150℃の範囲であるブロック型イソホロンジイソシアネートと、(VIII)(メタ)アクリレート化合物を含有する電子線硬化型接着剤組成物の硬化層であるのが好ましい。
【0098】
本実施形態で使用される電子線硬化型接着剤組成物全体の樹脂分を100質量%とした場合に、(V)ガラス転移温度が30℃以上80℃未満のポリエステル樹脂は、10〜60質量%であるのが好ましく、20〜40質量%であるのがより好ましい。(VI)アダクト型イソホロンジイソシアネート及びイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネートの一方又は双方の含有量は、0.1〜10質量%であるのが好ましく、1〜4質量%であるのがより好ましい。(VII)ブロック剤の解離温度が130〜150℃の範囲であるブロック型イソホロンジイソシアネートの含有量は、1〜10質量%であるのが好ましく、4〜8質量%であるのがより好ましい。(VIII)(メタ)アクリレート化合物の含有量は、1〜10質量%であるのが好ましく、3〜7質量%であるのがより好ましい。
【0099】
[フィルム貼着缶体の製造方法]
図7は、
図6のフィルム貼着缶体の製造方法の一例を示す工程図である。
図7に示すように、プラスティックフィルムを巻き出し(プロセスP1)、プラスティックフィルムの片面にクリアー塗料などの塗料をコートして熱風乾燥し、これによりプラスティックフィルム層上にオーバーコート層を形成し(プロセスP2)、その後ロール状に巻き取る(プロセスP3)。
【0100】
次に、オーバーコート層が形成されたプラスティックフィルム層を巻き出しロールから繰り出し、プラスティックフィルム層のオーバーコート層が形成されていない面に紫外線硬化型塗料などのプライマーを塗布し(プロセスP5)、紫外線照射装置を用いて紫外線照射によって半硬化させ(プロセスP6)、これによりプラスティックフィルム層上にインクジェットプライマー層を形成する。次いで、インクジェットプライマー層が形成された面に、インクジェットプリンタヘッドからイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)などの各紫外線硬化型インクを着弾させてインクジェット印刷を行い(プロセスP7)、紫外線照射によってプライマー及び紫外線硬化型インクを完全硬化させ(プロセスP8)、これによりインクジェットプライマー層上に絵柄などの紫外線硬化型インクジェット印刷層を形成し、その後ロール状に巻き取る(プロセスP9)。紫外線硬化型インクを用いてインクジェット印刷を行った後、紫外線照射に因ってインク表面は粘着性を失い、インクが不完全に硬化した仮硬化状態で紫外線硬化型インクジェット印刷層が形成される。そして、その後の完全硬化により、インクジェットプライマー層及び紫外線硬化型インクジェット印刷層に均一に分散している組成物が硬化し、プラスティックフィルムへの密着性が向上し、紫外線硬化型インクジェット印刷層自体も強靭な被膜を形成する。
【0101】
プラスティックフィルム層に印刷が施される面には、着弾されたインクの滲みを防止すると共に密着性を向上させるために、前処理として紫外線硬化型のアンカーコート(下地処理)が施され、上述のインクジェットプライマー層が形成される。このインクジェットプライマー層とプラスティックフィルム層との密着性を向上させるため、塗装前処理としてインクジェットプライマー層にコロナ処理を施してもよい(プロセスP4)。
【0102】
その後、紫外線硬化型インクジェット印刷層が形成された面に、紫外線硬化型インクジェット印刷層と接着剤硬化層との密着性を向上させるための透明プライマーニス組成物をコートし(プロセスP10)、熱風乾燥させる(プロセスP11)。透明プライマーニス組成物の塗布量は、7mg/dm
2〜12mg/dm
2であるのが好ましい。
【0103】
次いで、乾燥させた透明プライマーニス硬化層上に、例えば電子線硬化型接着剤組成物を塗布し(プロセスP12)、熱風乾燥させ(プロセスP13)、これにより積層フィルムを得る。このとき、透明プライマーニス硬化層の反応原料であるポリオールと接着剤硬化層の電子線硬化型接着剤組成物中のイソシアネートとが熱によって反応し、ウレタン結合が生成される。これにより、透明プライマーニス硬化層と接着剤硬化層の密着性が向上する。電子線硬化性接着剤組成物の塗布量は、60mg/dm
2〜100mg/dm
2であるのが好ましい。そして、得られた積層フィルムをロール状に巻き取る(プロセスP14)。
【0104】
次に、積層フィルムを、缶胴1列分に対応した巾毎に切断しながら、所定温度に加熱されたスチール金属板に貼着する(プロセスP31)。積層フィルムがスチール金属板に貼着された後、水冷し、電子線照射装置で電子線を照射し(プロセスP32)、その後ロール状に巻き取る(プロセスP33)。この際、電子線の照射により(メタ)アクリレート化合物がラジカル重合することで接着剤が架橋し、金属下地層との密着性が向上する。そして、コイル状に作製した積層フィルム貼着板を、所定の大きさの切り板に剪断し(プロセスP34)、大板の積み付けを行う(プロセスP35)。
【0105】
尚、予め鋼板をコイル状に作製し(プロセスP30−1)、及び/又は鋼板の内面にフィルムを貼着し(プロセスP30−2)、その後、積層フィルムを、コイル状に作製した所定温度の鋼板に貼着してもよい(プロセスP31)。
【0106】
次いで大板を1缶分のブランクに切り分けた後(プロセスP36)、スリーピース缶の製造工程で製缶する。具体的には、1缶分に切断されたブランクを筒状になるようにフォーミング成型し(プロセスP37)、その両端を溶接して(プロセスP38)、缶胴を作製する。缶胴溶接部に補修塗料を塗装し(プロセスP39)、オーブン内で加熱乾燥する(プロセスP40)。このとき、前述の積層フィルムを缶体に貼着させる際に用いられた透明プライマーニス硬化層及び接着剤硬化層も併せて加熱乾燥され、積層フィルムと缶体との密着性が更に向上する。その後、ネック成型(プロセスP41)、底蓋及び天蓋の作製(プロセスP42)、並びに底蓋及び天蓋の巻締め(プロセスP43)等の後工程を順次行い、フィルム貼着缶体を得る。
【実施例】
【0107】
以下、本発明の実施例を説明する。例中「部」及び「%」は、「質量部」、「質量%」を各々表す。本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0108】
(透明プライマーニス組成物の作製)
(調製例1〜13)
表1に示した調整例A−1〜A−7及び表2に示した調製例B−1〜B−6の割合(表中の数字は固形分質量比率を示す)で下記の原料を電子天秤にて計量・混合後、分散攪拌機を用いて25℃の温度下、3000rpmの回転数で1分間攪拌し、透明プライマーニス組成物を作製した。
【0109】
(1)ポリエステル系ポリウレタン樹脂(A)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、3−メチル−1,5ペンタンジオールとアジピン酸の縮合物、およびイソホロンジイソシアネートを仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、ウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチルを加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。3−メチル−1,5ペンタンジオールとアジピン酸の縮合物は、ポリエステル系ポリウレタン樹脂(A)の全量に対して35質量%の割合となるように使用した。次いで、イソホロンジアミン、酢酸エチルおよびイソプロピルアルコールからなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリエステル系ポリウレタン樹脂溶液を得た。この樹脂溶液は、樹脂固形分濃度30.5%、樹脂固形分の数平均分子量は9500であった。
【0110】
(2)イソシアネート(B)
(B−1)「スミジュールN3300」住化コベストロウレタン社製(イソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネート)
(B−2)「デスモジュールXP2580」住化コベストロウレタン社製(アロファネート型ヘキサメチレンジイソシアネート)
(B−3)「デスモジュールN3200」住化コベストロウレタン社製(ビュレット型ヘキサメチレンジイソシアネート)
(B−4)「デスモジュールZ4470BA」住化コベストロウレタン社製(イソシアヌレート型イソホロンジイソシアネート)
【0111】
(3)塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(C)
「ソルバインA」日信化学工業社製 数平均分子量:35000(メチルエチルケトン/酢酸エチル=50/50の混合溶液で溶解し、樹脂固形分濃度を30.3%に調整)
(4)エポキシ樹脂(D)
「EPICLON1055」DIC社製 (ビスフェノールA型エポキシ樹脂メチルエチルケトン/酢酸エチル=質量比50/50の混合溶液で溶解)
(5)シリカ(E)
「サイリシア350D」 富士シリシア社製
(6)ポリエステル樹脂(F)
「バイロン500」 東洋紡社製 数平均分子量:23000 ガラス転移温度:4℃
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
(熱硬化性接着剤の作製)
表3に示した調整例C−I〜C−V及び表4に示した調製例D−I〜D−VIIIの割合(表中の数字は固形分質量比率を示す)で下記の原料を電子天秤にて計量・混合後、バスケットミルにて酸化チタンを練肉後、分散攪拌機を用いて25℃の温度下、3000rpmの回転数で1分間攪拌し、接着剤組成物を作製した。
【0115】
(I)ポリエステル樹脂(a)
(a−1)「バイロン600」東洋紡社製、ガラス転移温度47℃、30%溶液(メチルエチルケトン/酢酸エチル=50/50の混合溶液で溶解)
ポリエステル樹脂(a−2)
(a−2)「バイロンGK150」東洋紡社製、ガラス転移温度20℃、30%溶液(メチルエチルケトン/酢酸エチル=50/50の混合溶液で溶解)
(a−3)「バイロンGK880」東洋紡社製、ガラス転移温度84℃、30%溶液(メチルエチルケトン/酢酸エチル=50/50の混合溶液で溶解)
【0116】
(II)ブロックシソシアネート(b)
(b−1)「デスモジュールZ4470BA」住化コベストロウレタン社製、イソシアヌレート型イソホロンジイソシアネート
(b−2)「タケネートD−140N」 三井化学社製、アダクト型イソホロンジイソシアネート
(b−3)「スミジュールN3300」 住化コベストロウレタン社製、イソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネート
(b−4)「スミジュールHT」住化コベストロウレタン社製、アダクト型ヘキサメチレンジイソシアネート
(b−5)「デスモジュールN3200」住化コベストロウレタン社製、ビュレット型ヘキサメチレンジイソシアネート
【0117】
(III)ブロックイソシアネート(c)
(c−1)「VestanatB1370」ダイセルヒュルス社製、解離温度140℃のブロック型イソホロンジイソシアネート
(c−2)「デスモジュールPL340」住化コベストロウレタン社製、の解離温度120℃のブロック型イソホロンジイソシアネート
(c−3)「デスモジュールVP LS2078/2」住化コベストロウレタン社製、解離温度170℃のブロック型イソホロンジイソシアネート
【0118】
(IV)酸化チタン(d)
「R−42」堺化学工業製、アルミナ処理品粒子径:0.29μm
【0119】
(V)シリカ(e)
「サイリシア350D」富士シリシア社製
【0120】
(分子量測定)
GPCによる数平均分子量(何れもポリスチレン換算)の測定は、東ソー社製HLC8220システムを用い、以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー社製、TSKgelGMHHR−Nを4本使用
カラム温度:40℃
移動層:和光純薬工業社製、テトラヒドロフラン、流速:1.0ml/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100マイクロリットル
検出器:示差屈折計
ガラス転移温度(Tg)の測定は、示差雰囲気下、冷却装置を用い温度範囲−80〜450℃、昇温温度10℃/分の条件下、DMA法で実施した。
【0121】
【表3】
【0122】
【表4】
【0123】
(試験パネルの作製)
(実施例1〜13)
オーバーコート層が塗布された厚み16μmのPETフィルムの裏側にインクジェットプライマー層、紫外線硬化型インクジェット印刷層が予め形成された印刷フィルムの印刷層側に表1に示す組成の透明プライマーニス組成物(調製例A−1〜A−7)を乾燥膜厚1.0μmになるようにバーコーターにて塗布しドライヤー等で乾燥後、表3に示す組成の接着剤組成物(調製例C−I〜C−V))を乾燥膜厚が8.0μmになるようにバーコーターにて重ね塗りし120℃、8秒間乾燥処理し、積層フィルムを得た。但し、実施例2では、透明プライマーニス組成物の塗布量を他の実施例よりも少なくし、乾燥膜厚0.7μmになるようにバーコーターにて塗布した。
得られた積層フィルムをアルミニウム製シームレス缶に185℃、100m/minで曲面ラミネートした後、220℃60秒間加熱して、テストピースを得た。
【0124】
(実施例13)
ポリエステル樹脂(a−1)に代えて表4に示す組成のポリエステル樹脂(a−2)を含有する接着剤組成物(調製例D−I)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテストピースを得た。
【0125】
(実施例14)
ポリエステル樹脂(a−1)に代えて表4に示す組成のポリエステル樹脂(a−3)を含有する接着剤組成物(調製例D−II)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテストピースを得た。
【0126】
(実施例15)
アダクト型イソホロンジイソシアネート(b−2)に代えて表4に示す組成のアダクト型ヘキサメチレンジイソシアネート(b−4)を含有する接着剤組成物(調製例D−III)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテストピースを得た。
【0127】
(実施例16)
アダクト型イソホロンジイソシアネート(b−2)に代えて表4に示す組成のビュレット型ヘキサメチレンジイソシアネート(b−5)を含有する接着剤組成物(調製例D−IV)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテストピースを得た。
【0128】
(実施例17)
ブロック型イソホロンジイソシアネート(c−1)を含有しない接着剤組成物(調製例D−V)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテストピースを得た。
【0129】
(実施例18)
イソシアヌレート型イソホロンジイソシアネート(b−1)を含有しない接着剤組成物(調製例D−VI)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテストピースを得た。
【0130】
(実施例19)
ブロック型イソホロンジイソシアネート(c−1)に代えてブロック型イソホロンジイソシアネート(c−2)(ブロック剤の解離温度:120℃)を含有する接着剤組成物(調製例D−VII)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテストピースを得た。
【0131】
(実施例20)
ブロック型イソホロンジイソシアネート(c−1)に代えてブロック型イソホロンジイソシアネート(c−3)(ブロック剤の解離温度:170℃)を含有する接着剤組成物(調製例D−VIII)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテストピースを得た。
【0132】
(比較例1)
イソシアヌレート/アロファネート混合型ヘキサメチレンジイソシアネートに代えて表2に示す組成のアロファネート型ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する透明プライマーニス組成物(調製例B−1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテストピースを得た。
【0133】
(比較例2)
イソシアヌレート/アロファネート混合型ヘキサメチレンジイソシアネートに代えて表2に示す組成のイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する透明プライマーニス組成物(調製例B−2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテストピースを得た。
【0134】
(比較例3)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を含有しない透明プライマーニス組成物(調製例B−3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテストピースを得た。
【0135】
(比較例4)
ポリエステル系ポリウレタン樹脂(A−1)に代えて表2に示す組成のポリエステル樹脂(F)を含有する透明プライマーニス組成物(調製例B−4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテストピースを得た。
【0136】
(比較例5)
イソシアヌレート/アロファネート混合型ヘキサメチレンジイソシアネートに代えて表2に示す組成のイソシアヌレート/ビュレット混合型ヘキサメチレンジイソシアネートを含有する透明プライマーニス組成物(調製例B−5)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテストピースを得た。
【0137】
(比較例6)
イソシアヌレート/アロファネート混合型ヘキサメチレンジイソシアネートに代えてイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソシアヌレート型イソホロンジイソシアネートを含有する透明プライマーニス組成物(調製例B−6)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテストピースを得た。
【0138】
(比較例7)
透明プライマーニス硬化層を設けず、接着剤硬化層の単層を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテストピースを得た。
【0139】
[評価方法]
上記実施例及び比較例について、以下に示す評価試験方法に従って測定、評価した。
【0140】
以下の項目1〜8にて評価し、何れの項目でも評点「○」以上を合格とした。
【0141】
1.透明プライマーニス組成物塗工時のハジキ性
紫外線硬化型インクジェット印刷層上に透明プライマーニス組成物を塗工した際のハジキ状態について目視で評価した。
(評点)
◎:ハジキが全く無い状態
○:ハジキ部の面積が全体の5%未満である状態
△:ハジキ部の面積が全体の5%以上20%未満である状態
×:ハジキ部の面積が全体の20%以上である状態
【0142】
2.ブロッキング性
上記テストピースの作製過程で得られた積層フィルムを8cm×8cmにカットしたサンプルフィルムの接着剤硬化層と裏面のオーバーコート層を貼り合わせ、0.3MPaの圧力で40℃の雰囲気に72時間保持した後に、貼り合わせたフィルム同士を剥離速度1000mm/minで180°の角度でピールした際の剥離強度を測定した。
(評点)
◎:0.5N/8cm未満
○:0.5N/8cm以上、1.0N/8cm未満
△:1.0N/8cm以上、1.5N/8cm未満
×:1.5N/8cm以上
【0143】
3.ラミネート性
上記テストピースの作製過程において積層フィルムとシームレス缶の金属下地層とをラミネートした際、気泡などを巻き込むことなく平滑にラミネートされているか目視評価した。
(評点)
◎:全面が平滑にラミネートされた状態
○:不均一な部分の面積が全体の5%未満である状態
△:不均一な部分の面積が全体の5%以上20%未満である状態
×:不均一な部分の面積が全体の20%以上である状態
【0144】
4.積層フィルムと金属下地層との剥離強度
得られたテストピースをJIS K6854−2に準拠して15mm幅にカットしたサンプルを100mm/minのスピードで剥離した際の剥離強度を測定した。
(評点)
◎:2.5N/15mm以上
○:1.5N/15mm以上、2.5N/15mm未満
△:0.5N/15mm以上、1.5N/15mm未満
×:0.5N/15mm未満
また、剥離した際の剥離界面を下記の通りに表5、表7及び表8に記載した。
a.PETフィルム/UVインキプライマー層間
b.インクジェットプライマー層/紫外線硬化型インクジェット印刷層間
c.紫外線硬化型インクジェット印刷層/透明プライマーニス硬化層間
d.透明プライマーニス硬化層/接着剤硬化層間
e.接着剤硬化層/金属下地層間
【0145】
5.加圧熱水性(レトルト白化性)
得られたテストピースを水道水中に半浸漬させ、125℃、30分加圧熱水処理後の白化状態を目視で評価した。
(評点)
◎:白化が全く無い
○:白化部の面積が全体の5%未満である状態
△:白化部の面積が全体の5%以上20%未満である状態
×:白化部の面積が全体の20%以上である状態
【0146】
6.熱水処理加工性(加工ホットパック性)
得られたテストピースにおいて、積層フィルムがオーバーラップしていない部分(非オーバーラップ部)の高さを7mm、オーバーラップした部分(オーバーラップ部)の高さを4mmのキャップに成形し、非オーバーラップ部及びオーバーラップ部のそれぞれについて、80℃30分加圧熱水処理後のフィルムの剥離を目視により4段階で評価した。
(評点)
◎:全く剥離無し
○:剥離面積が10%未満
△:剥離面積が10%以上50%未満
×:剥離面積が50%以上
【0147】
7.オーバーラップ部の剥離強度
得られたテストピースのオーバーラップ部のオーバーコート層と接着剤硬化層の界面を、JIS K6854−2に準拠して15mm幅にカットしたサンプルを用いて100mm/minのスピードで剥離した際の剥離強度を測定した。
(評点)
◎:1.5N/15mm以上
○:1.0N/15mm以上、1.5N/15mm未満
△:0.5N/15mm以上、1.0N/15mm未満
×:0.5N/15mm未満
【0148】
8.接着剤組成物の再溶解性
接着剤組成物をグラビア塗工する際のシリンダ洗浄性の代用試験として、以下の評価を実施した。
(1)厚さ0.2mmのブリキ薄板上に接着剤組成物を乾燥塗膜で6μmの厚みで塗布し、常温で6時間放置する。
(2)2ポンドハンマーの先端部に脱脂綿を巻き付け、2ccのトルエンを満遍なく脱脂綿に浸透させる。
(3)上記(2)のトルエンが浸透した脱脂綿部を接着剤組成物の塗布面と垂直になるよう接触させ、ハンマーを約20cmの幅でスライドさせ、塗布面を擦る。
(4)擦った面の接着剤組成物が溶解し、10%の面積で下地が露出した際の往復回数を測定する。
(評点)
◎:5回未満
○:5回以上、10回未満
△:10回以上、15回未満
×:15回以上
【0149】
各実施例及び比較例について、上記方法にて測定、評価した結果を表5〜表8に示す。
【0150】
【表5】
【0151】
【表6】
【0152】
【表7】
【0153】
【表8】
【0154】
表5〜表7の結果から、実施例1〜20のいずれでも、ハジキ性、ブロッキング性、剥離強度、非オーバーラップ部/オーバーラップ部の熱水処理加工性、オーバーラップ部の剥離強度及び接着剤の溶解性の全ての評価項目で合格(「〇」以上)となり、紫外線硬化型インクジェット印刷層と金属下地層との密着性に優れていることが分かった。
特に、実施例1,4,6,10,12では、剥離強度が2.5N/15mm以上(◎)となり、密着性がより優れていた。また、実施例1〜12のいずれでも、剥離界面が接着剤硬化層と金属下地層との間(e.)に発生していることから、紫外線硬化型インクジェット印刷層と透明プライマーニス硬化層が強固に密着していると共に透明プライマーニス硬化層と接着剤硬化層が強固に密着しており、紫外線硬化型インクジェット印刷層と接着剤硬化層との密着性に優れていることが分かった。
【0155】
一方、比較例1では、透明プライマーニス組成物がイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネートを含有しておらず(調整例B−1)、ハジキ性、ブロッキング性、剥離強度、オーバーラップ部の熱水処理加工性及びオーバーラップ部の剥離強度が劣った。比較例2では、透明プライマーニス組成物がアロファネート型ヘキサメチレンジイソシアネートを含有しておらず(調製例B−2)、加圧熱水性及びオーバーラップ部の熱水処理加工性が劣った。比較例3では、透明プライマーニス組成物が塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を含有しておらず(調製例B−3)、ブロッキング性、剥離強度、非オーバーラップ部の熱水処理加工性及びオーバーラップ部の剥離強度が劣った。比較例4では、透明プライマーニス組成物がポリエステル系ポリウレタン樹脂を含有しておらず(調製例B−4)、ハジキ性、ブロッキング性、剥離強度及びオーバーラップ部の剥離強度が劣った。比較例5では、透明プライマーニス組成物がビュレット型ヘキサメチレンジイソシアネートを含有するものの、アロファネート型ヘキサメチレンジイソシアネートを含有しておらず(調製例B−5)、加圧熱水性及び非オーバーラップ部の熱水処理加工性が劣った。比較例6では、透明プライマーニス組成物がイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネートを含有するものの、アロファネート型ヘキサメチレンジイソシアネートを含有しておらず(調製例B−6)、加圧熱水性及び非オーバーラップ部/オーバーラップ部の熱水処理加工性が劣った。
【0156】
比較例7では、積層フィルムに透明プライマーニス硬化層を設けておらず、ブロッキング性、剥離強度、加圧熱水性及びオーバーラップ部の剥離強度が劣った。