特開2021-133362(P2021-133362A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-133362(P2021-133362A)
(43)【公開日】2021年9月13日
(54)【発明の名称】吸着剤の廃棄処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20210816BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20210816BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20210816BHJP
   G21F 9/32 20060101ALI20210816BHJP
【FI】
   B09B3/00 301K
   B09B3/00ZAB
   B01J20/10 C
   B01J20/28 Z
   G21F9/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2021-14843(P2021-14843)
(22)【出願日】2021年2月2日
(31)【優先権主張番号】特願2020-28325(P2020-28325)
(32)【優先日】2020年2月21日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】徳永 敬助
(72)【発明者】
【氏名】清水 要樹
(72)【発明者】
【氏名】土谷 和愛
(72)【発明者】
【氏名】大庭 悠輝
【テーマコード(参考)】
4D004
4G066
【Fターム(参考)】
4D004AA47
4D004AB05
4D004AB09
4D004AC04
4D004CA22
4D004CC11
4G066AA22B
4G066AA23B
4G066AA24B
4G066BA32
4G066BA36
4G066CA45
4G066DA07
4G066DA08
4G066FA03
4G066FA21
4G066FA37
(57)【要約】
【課題】 1000℃を超える高温処理や強アルカリの溶融助剤を使用しない簡便な方法にて、揮発、及び再溶出が無い状態に安定化する吸着剤の廃棄処理方法を提供する。
【解決手段】 吸着物を吸着した吸着剤を500℃以上の温度で加熱する工程を含むことを特徴とする吸着剤の廃棄処理方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着物を吸着した吸着剤を500℃以上の温度で加熱する工程を含むことを特徴とする吸着剤の廃棄処理方法。
【請求項2】
前記吸着剤が、シリコチタネート組成物を含有することを特徴とする請求項1に記載の吸着剤の廃棄処理方法。
【請求項3】
前記吸着剤が、シリコチタネート組成物と無機バインダーを含むシリコチタネート成形体を含有することを特徴とする請求項1に記載の吸着剤の廃棄処理方法。
【請求項4】
前記シリコチタネート組成物が、シチナカイト構造を有するシリコチタネート、及びニオブを含有し、なおかつ、少なくとも2θ=27.8±0.5°及び2θ=29.4±0.5°に回折ピークを有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の吸着剤の廃棄処理方法。
【請求項5】
前記シリコチタネート組成物が、以下のモル比を有し、なおかつ、表1に示す2θ及びピーク強度比を有するものであることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかの項に記載の吸着剤の廃棄処理方法。
Si/Tiモル比 0.40以上、2.0以下
M/Tiモル比 0.50以上、4.0以下
Nb/Tiモル比 0.35以上、0.60以下
(Mは、Li,Na、及びKの群から選ばれる1種のアルカリ金属である)
【表1】
(表1中、XRDピーク強度比とは、ピーク高さの比をいう。)
【請求項6】
前記シリコチタネート組成物が少なくとも2θ=27.8±0.5°及び2θ=29.4±0.5°に回折ピークを有する結晶性物質を含むことを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれかの項に記載の吸着剤の廃棄処理方法。
【請求項7】
前記結晶性物質がヴィノグラドバイト構造を有するシリコチタネートであることを特徴とする請求項6に記載の吸着剤の廃棄処理方法。
【請求項8】
前記吸着物がストロンチウム又はセシウムであることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかの項に記載の吸着剤の廃棄処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤の廃棄処理方法に関するものであり、より詳細にはシチナカイト構造を有するシリコチタネートを含む組成物を用いた吸着剤の廃棄処理方法に関する。本発明の吸着剤の廃棄処理方法は、例えば汚染水、海水、地下水中の有害イオン処理等の用途に有用である。
【背景技術】
【0002】
水溶液から有害イオンを除去できる吸着剤として、シリコチタネート、ゼオライト等の無機イオン交換体が知られている。しかしながら、適切な廃棄処理を行わなければ、有害イオンを吸着した後に他の金属とイオンと接触して逆交換がおき、吸着物が溶出する問題があった。また、処理後に高温にさらされると、吸着物が脱離、揮発する問題があった。そのため、元の結晶構造が無くなるような非晶質化、別の安定な構造に再結晶化する等の廃棄処理が必要であったが、それらの処理には例えば1000℃を超える高温や、強いアルカリを示す溶融助剤を併用した処理が必要であり、装置の熱劣化、腐食、及び吸着物の揮発等の問題があった。
【0003】
特許文献1には海水中の放射性物質の除去用イオン交換体としてニオブを含有したシリコチタネートおよびその製法が開示されている。さらに、特許文献1にはセシウム、ストロンチウムを吸着除去結果が開示されている。しかしながら、吸着剤を廃棄処理する方法は記載されていなかった。
【0004】
特許文献2には、吸着後のゼオライト吸着剤にホウ酸ナトリウムを溶融助剤として配合した後、1000〜1100℃の範囲における任意の温度で溶融した後、冷却固化させる廃棄物の処理方法が開示されている。しかしながら、溶融助剤を混合する工程が必要であり、温度も1000℃以上の高温が必要であった。そのため、耐熱性の高い高価な材質の装置が必要であり、高温のため吸着物が揮発する恐れがあった。
【0005】
特許文献3では、吸着後の結晶性シリコチタネート吸着剤にケイ酸アルカリ溶融助剤として配合した後1100℃で溶融した後、冷却固化する廃棄物の処理方法が記載されている。しかしながら、特許文献1と同様に1000℃以上の温度が必要であり、溶融助剤がなければ固化が不十分になるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−170440号公報
【特許文献2】特許第6157857号公報
【特許文献3】特許第6557416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のイオン吸着剤の廃棄物処理方法よりも簡便な方法を提供するものである。具体的には従来よりも低い加熱温度で非結晶化、再結晶化できるため、高耐熱性の装置が必要でなく、吸着物の揮発がおこりにくい。また、溶融助剤の併用も必須ではないため、工程も簡略化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、吸着剤を簡便に処理できる方法を見出し、本発明を完成したものである。すなわち、本発明は、吸着物を吸着した吸着剤を500℃以上の温度で加熱する工程を含むことを特徴とする吸着剤の廃棄処理方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸着剤の廃棄処理方法は、吸着剤を1000℃を超える高温処理や強アルカリの溶融助剤を使用しない簡便な方法にて、揮発、及び再溶出が無い状態に安定化することができる。特に、吸着剤が含有するシリコチタネート組成物は、低温にて非晶質化、再結晶化しやすいため、装置の腐食、熱劣化、吸着物の揮発による脱離を抑えながら、逆交換によるイオンの溶出が無い状態に安定化して廃棄処理することができる。
【0010】
さらに、シリコチタネート組成物は、特にCs、Srの吸着性能が高いため、Cs、Sr吸着後に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】110℃焼成品のシリコチタネート組成物(吸着剤)のXRD図を示す。
図2】実施例1〜3、比較例1のシリコチタネート組成物(吸着剤)の加熱後のXRD図を示す。
図3】実施例4〜6、比較例2のシリコチタネート成形体の加熱後のXRD図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明は、吸着物を吸着した吸着剤を500℃以上の温度で加熱する工程を含む吸着剤の廃棄処理方法である。
【0014】
500℃以上の温度で加熱する工程を行うことで、非晶質化、再結晶化が進み吸着物を固定化できるようになるため、吸着物の溶出が起きないように廃棄することができる。500℃未満では非晶質化が不十分となり、イオン交換により吸着物の溶出が起こる。ここに、500℃以上の温度で加熱する工程とは、例えば、500℃以上の温度で焼成する工程等をいう。吸着物の揮発、脱離を抑えられるため、500℃以上、990℃以下で加熱することが好ましい。500℃以上、800℃以下がより好ましく、500℃以上、600℃以下がさらに好ましい。
【0015】
本発明の廃棄処理方法の対象となる吸着剤は、吸着物を吸着するものであれば特に限定するものではなく、例えば、シリコチタネート組成物、アルミノシリケート組成物(ゼオライト)、フェロシリケート組成物等を含有するものがあげられるが、これらのなかで、低い温度で非晶質化が起きやすいため、シリコチタネート組成物を含有するものであることが好ましい。
【0016】
シリコチタネート組成物は、より低温で非晶質化することができるため、シチナカイト構造を有するシリコチタネート、及びニオブを含有し、なおかつ、少なくとも2θ=27.8±0.5°及び2θ=29.4±0.5°に回折ピークを有するものであることが好ましく、さらに、以下のモル比を有し、なおかつ、以下の表1に示す2θ及びXRDピーク強度比を有することが好ましい。
【0017】
Si/Tiモル比 0.40以上、2.0以下
M/Tiモル比 0.50以上、4.0以下
Nb/Tiモル比 0.35以上、0.60以下
(Mは、Li,Na、及びKの群から選ばれる1種のアルカリ金属である)
【0018】
【表1】
(表1中、XRDピーク強度比とは、ピーク高さの比をいう。)
シリコチタネート組成物は、低温で非晶質化し易くするため、少なくとも2θ=27.8±0.5°、及び2θ=29.4±0.5°に回折ピークを有する結晶性物質を含むことが好ましい。当該結晶性物質は、例えば、ヴィノグラドバイト構造を有するシリコチタネート、シチナカイト構造を有するシリコチタネート等があげられるが、より低温で非晶質化し易くするため、ヴィノグラドバイト構造を有するシリコチタネートを含むことが好ましい。
【0019】
ここに、吸着剤が吸着する吸着物は、例えば、ストロンチウム、セシウム等があげられる。
【0020】
また、焼成後のイオン交換能は10%以下であることが好ましい。5%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。焼成後のイオン交換能を低くすることで、逆イオン交換による吸着物の溶出を抑制することができる。
【0021】
本発明の廃棄処理方法は、500℃以上の温度で加熱する工程のほかに、吸着剤にアルカリ物質等の溶融助剤、セメント、ガラス等の固化剤を混合する工程、吸着剤を成形する固定、加熱後に吸着剤を冷却する工程等を有してもよい。
【0022】
よって、吸着剤を500℃以上の温度で加熱処理を行うことで再溶出が起こらない状態で廃棄することができる。従来より低温で安定化できるため、耐熱性の高くない装置でも処理可能であり、吸着物の揮発も抑えることができる。
【0023】
以下には、本発明に用いるシリコチタネート組成物について説明する。
【0024】
本発明に用いるシリコチタネート組成物は、シチナカイト構造を有するシリコチタネート、及びニオブを含有し、なおかつ、少なくとも2θ=27.8±0.5°及び2θ=29.4±0.5°に回折ピークを有することが好ましい。
【0025】
本明細書において、2θは、CuKα線(波長λ=1.5405Å)を線源とした粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンにおけるX線回折角の値(°)である。更には、2θに回折ピークを有するとは、前述の線源を用いた測定により得られたXRDパターンにおける回折ピークを意味する。
【0026】
本発明に用いるシリコチタネート組成物は、シチナカイト構造を有するシリコチタネートを含み、Csの吸着量が大きい。更には、シリコチタネート組成物は海水成分共存下でSr吸着量及びCsの吸着量が大きく、また選択的にSrを吸着する効果を有する。
【0027】
シチナカイト構造を有するシリコチタネート(以下、「S型シリコチタネート」ともいう。)とは、American Mineralogist Crystal Structure Database(http://ruff.geo.arizona.edu./AMS/amcsd.php、検索日:2014年7月1日以下、「参照HP」とする。)におけるsitinakiteに記載されたXRDピークで特定される結晶構造を有する結晶性シリコチタネートである。
【0028】
本発明に用いるシリコチタネート組成物は、S型シリコチタネート、及びニオブを含有し、なおかつ、少なくとも2θ=27.8±0.5°及び2θ=29.4±0.5°に回折ピークを有する。当該回折ピークを有することにより、本発明のシリコチタネート組成物が、より高いSrの吸着特性を有する。
【0029】
本発明に用いるシリコチタネート組成物は、当該組成物中にニオブを含有していれば、ニオブの状態は特に限定されない。例えば、ニオブはニオブ含有化合物、更にはニオブ酸塩、ニオブシリケート、ニオブチタネート及びNb−Si−Ti系酸化物からなる群のいずれかであってもよい。また、S型シリコチタネートにニオブが含まれていてもよい。
【0030】
本発明に用いるシリコチタネート組成物は、少なくとも表2に示す2θ、及び、XRDピーク強度比を有する。シリコチタネート組成物が、このような2θ、及び、XRDピーク強度比を有することにより、本発明に用いるシリコチタネート組成物が、より高いSrの吸着特性を有する。
【0031】
【表2】
なお、表2におけるXRDピーク強度比とは、2θ=11.3±0.5のピーク強度を100とした場合、当該XRDピーク強度に対する各2θにおけるXRDピークの強度の相対値である。
【0032】
本発明に用いるシリコチタネート組成物は、2θ=27.8±0.5°及び2θ=29.4±0.5°に回折ピークを有する結晶性物質(以下、単に「結晶性物質A」ともいう。)と、S型シリコチタネートを含むシリコチタネート組成物である。ここで、結晶性物質Aとして、S型シリコチタネート以外の結晶性シリコチタネート、チタン酸塩、ニオブ酸塩、ケイ酸塩、ニオブシリケート、ニオブチタネート、及びNb−Si−Ti系酸化物からなる群の少なくとも1種を挙げることができ、好ましくは、S型シリコチタネート以外の結晶性シリコチタネート、更に好ましくはヴィノグラドバイト構造を有するシリコチタネート(以下、「V型シリコチタネート」ともいう。)を挙げることができる。なお、V型シリコチタネートは、American Mineralogist Crystal Structure Database(http://ruff.geo.arizona.edu./AMS/amcsd.php、検索日:2015年3月20日)におけるvinogradoviteに相当するXRDピークを有する結晶性シリコチタネートである。V型シリコチタネートは、少なくとも2θ=27.8±0.5°及び2θ=29.4±0.5°に特徴的なXRDピークを有する。
【0033】
本発明に用いるシリコチタネート組成物がS型シリコチタネートと、S型シリコチタネート以外の結晶性シリコチタネート(以下、「非S型シリコチタネート」ともいう。)を含む場合、シリコチタネート組成物は、S型シリコチタネートと非S型シリコチタネートを含んでいればよく、S型シリコチタネートと非S型シリコチタネートとの混合物、又は、S型シリコチタネートと非S型シリコチタネートの混晶からなるシリコチタネートの少なくともいずれかであればよい。
【0034】
本発明に用いるシリコチタネート組成物のNb/Tiモル比は、0.35以上、0.60以下である。より高いSr吸着性能を有することから、Nb/Tiモル比は0.35以上、0.50以下、又は0.40以上、0.60以下であることが好ましい。
【0035】
本発明に用いるシリコチタネート組成物のM/Tiモル比は、0.50以上、4.0以下、更には0.50以上、3.0以下、また更には1.00以上、3.00以下、また更には1.36以上、3.0以下であることが好ましい。シリコチタネート組成物のM/Tiモル比が0.50以上、4.0以下であることで、当該シリコチタネート組成物はより高いSr吸着性能を有する。
【0036】
本発明に用いるシリコチタネート組成物のSi/Tiモル比は、0.40以上、2.0以下、更には0.50以上、1.8以下、また更には0.60以上、1.60以下、また更には0.74以上、1.20以下であることが好ましい。シリコチタネート組成物のSi/Tiモル比が0.40以上、2.00以下であることで、本発明のシリコチタネート組成物はより高いSr吸着性能を有する。
【0037】
本発明に用いるシリコチタネート組成物は、高いSrの吸着特性を有することが好ましい。
【0038】
本発明に用いるシリコチタネート組成物は、シリコチタネート組成物と無機バインダーを含む成形体(シリコチタネート成形体)として使用することができる。成形体であることにより、本発明のシリコチタネート組成物は強度が向上し、特に耐摩耗性に優れる。このため、例えば、被処理媒体として液体を用い、本発明のシリコチタネート組成物と無機バインダーを含む成形体を含有する吸着剤の充填層に連続的に流通させて、Cs及びSrの吸着処理を行っても成形体の磨耗が抑制されるため、吸着剤を長期間使用することができる。
【0039】
本発明に用いるシリコチタネート組成物が成形体である場合、成形体が含有する好ましい無機バインダーとしては、例えば、粘土、シリカゾル、アルミナゾル及びジルコニアゾルからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。更には、好ましい無機バインダーとして粘土を挙げることができる。また更には、好ましい粘土としてカオリン、セピオライト及びアパタルジャイトからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。
【0040】
本発明に用いるシリコチタネート組成物が成形体である場合、成形体が含有する好ましい増粘剤としては、例えば、カルボキシルメチルセルロース(以下、CMCともいう。)、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、セルロースナノファイバーなどの水溶性又は非水溶性セルロース;グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムなどのグアーガム誘導体;バイオガムに属するキサンタンガム、ウエランガム、ジェランガムなどの多糖類;ポリエチレンイミン誘導体;ポリビニルビニリドン(以下、PVPともいう。);グリセリン、ポリビニルアルコール、エチレングリコール誘導体などのアルコール類;カチオン系、アニオン系、又はノニオン系界面活性剤;水性ウレタン;ポリアクリル酸誘導体などが例示でき、これらは、1種単独のみならず、2種以上が混合されてもよい。CMCとしては、ナトリウム型カルボキシメチルセルロース(以下、Na−CMCともいう。)であってもよい。また、更には、好ましい増粘剤としてNa−CMC、ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0041】
本発明に用いるシリコチタネート組成物が成形体である場合、その形状は球状、略球状、楕円状、円柱状、多面体状及び不定形からなる群の少なくとも1種の形状とすることができる。
【0042】
本発明に用いるシリコチタネート組成物が成形体である場合、その大きさは0.1mm以上2.0mm以下の径を有することが好ましい。
【0043】
本発明に用いるシリコチタネート組成物が成形体である場合、本発明のシリコチタネート組成物と無機バインダーを混練した後、混練物を成形する成形工程、及び、成形工程で得られる成形体を焼成する焼成工程を含む製造方法により、シリコチタネート組成物と無機バインダーを含むシリコチタネート成形体を得ることができる。
【0044】
成形工程において、混練物の成形性を改善するために適宜成形助剤、又は水の少なくともいずれかを使用することができる。好ましい成形助剤として、カルボキシメチルセルロースを挙げることができる。
【0045】
焼成工程において、成形体を焼成する温度として、100℃以上、400℃以下を挙げることができる。焼成温度が100℃以上であることで、得られる成形体の強度がより向上する。焼成温度が400℃以下であれば、吸着性能を保持できる。好ましくは300℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
【0046】
本発明に用いるシリコチタネート組成物は、Csの吸着剤として使用することができる。本発明に用いるシリコチタネート組成物をCsの吸着剤として使用する場合、当該吸着剤はシリコチタネート組成物を含んでいればよく、シリコチタネート組成物粉末、又はシリコチタネート組成物成形体の少なくともいずれかで含んでいればよい。更には、本発明に用いるCs吸着剤は、イオン交換樹脂、粘土鉱物、ゼオライト、フェロシアン化合物、及び金属有機錯体からなる群の少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0047】
本発明に用いるシリコチタネート組成物は、Srの吸着性能に優れることから、Srの吸着剤としても使用することができる。本発明に用いるシリコチタネート組成物をCs又はSrの少なくともいずれかの吸着方法に用いる場合、当該シリコチタネート組成物とCs又はSrの少なくともいずれかを含む被処理媒体を接触させればよい。被処理媒体として、液体、又は固体の少なくともいずれかを挙げることができ、例えば、土壌、廃棄物、海水、又は地下水を挙げることができる。なお、シリコチタネート組成物と被処理媒体とを24時間以上接触させた状態を、吸着平衡時とすればよい。
【0048】
本発明に用いるシリコチタネート組成物は、Cs以外の1種類以上の金属イオンを含有する被処媒体と接触させても選択的にCsを吸着する。そのため、本発明のシリコチタネート組成物はCsを含有する被処理媒体だけでなく、Cs以外の1種以上の金属イオンを含有する被処理媒体に対しても、Csの吸着処理に用いることができる。
【0049】
本発明の用いるシリコチタネート組成物を用いたCs又はSrの少なくともいずれかの吸着方法において、シリコチタネート組成物と被処理媒体を含む系の温度は、−30℃以上、60℃以下、更には0℃以上、50℃以下、また更には10℃以上、30℃以下、また更には20℃以上、30℃以下を挙げることができる。系の温度が上記の範囲であれば、本発明のシリコチタネート組成物は十分なCs及びSr吸着特性を有する。
【0050】
本発明に用いるシリコチタネート組成物は、Cs及びSrを含有する被処媒体と接触させても、Cs及びSrの両方を吸着する。更には、本発明のシリコチタネート組成物はCs及びSr以外の1種類以上の金属イオンを含有する被処媒体と接触させても選択的にCs及びSr両方を吸着する。そのため、本発明のシリコチタネート組成物はCs及びSrを含有する被処理媒体だけでなく、Cs及びSr以外の1種以上の金属イオンを含有する被処理媒体に対しても用いることができる。
【0051】
本発明に用いるシリコチタネート組成物はCs又はSrの少なくともいずれかの吸着剤として使用することができる。本発明に用いるシリコチタネート組成物はCs又はSrの少なくともいずれかの吸着方法に用いることができる。
【0052】
以下には、本発明に用いるシリコチタネート組成物の製造方法を示す。
【0053】
無機系チタン化合物、無機系ケイ素化合物、水、及び、アルカリ金属水酸化物を混合してシリコチタネートゲルを得るゲル工程、当該シリコチタネートゲルを結晶化する結晶化工程、を有するシチナカイト構造を有するシリコチタネートを含む組成物の製造方法である。
【0054】
ゲル工程では、無機系チタン化合物、無機系ケイ素化合物、水、及び、アルカリ金属水酸化物を混合して無定形のシリコチタネートゲルを得る。
【0055】
ゲル工程では、チタン源として無機系チタン化合物、及び、ケイ素源として無機系ケイ素化合物を使用する。これらのチタン源及びケイ素源は、有機系アルコキシ金属化合物をはじめとする、危険物又は劇物のいずれも含まない。さらに、無機系チタン化合物、及び、無機系ケイ素化合物は、アルカリ金属水酸化物水溶液に可溶である。また、無機系チタン化合物と無機系ケイ素化合物とを混合しても、アルコール等の有機物は発生しない。そのため、チタン源及びケイ素源は、有機系アルコキシチタン化合物又は有機系アルコキシケイ素化合物などの有機系アルコキシ金属化合物に比べてハンドリングが容易である。更には安価であることから、無機系チタン化合物及び無機系ケイ素化合物はより工業的な使用に適している。
【0056】
無機系チタン化合物として、硫酸チタン、オキシ硫酸チタン、メタチタン酸ソーダ、及び、塩化チタンからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。より好ましい無機系チタン化合物として、硫酸チタン又はオキシ硫酸チタンの少なくともいずれか、更にはオキシ硫酸チタンを挙げることができる。
【0057】
無機系ケイ素化合物として、珪酸ソーダ、シリカゾル、ヒュームドシリカ、及びホワイトカーボンからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。アルカリ金属水酸化物の水溶液に溶解させることが比較的容易であるため、無機系ケイ素化合物は珪酸ソーダ、又はシリカゾルの少なくともいずれかであることが好ましく、珪酸ソーダであることが更に好ましい。
【0058】
アルカリ金属水酸化物として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。安価であるため、アルカリ金属水酸化物は水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムの少なくともいずれかであることが好ましく、水酸化ナトリウムであることが好ましい。
【0059】
水は、各原料を水溶液とした場合に含まれる水分であってもよく、各原料とは別に水を加えて混合してもよい。
【0060】
ゲル工程では、無機系チタン化合物、無機系ケイ素化合物、水、およびアルカリ金属水酸化物を混合することにより、無定形のシリコチタネートゲル(以下、単に「シリコチタネートゲル」ともいう。)が生じる。無機系チタン化合物、無機系ケイ素化合物、水、および、アルカリ金属水酸化物は、以下の混合モル比となるように混合することが好ましい。
【0061】
Si/Tiモル比 0.5以上、2.0以下
O/Tiモル比 20以上、150以下
M/Tiモル比 1.0以上、5.0以下
(Mは、Li,Na、及びKの群から選ばれる1種のアルカリ金属であり、MはNaであることが好ましい)
更に混合モル比は以下の割合であることがより好ましい。
【0062】
Si/Tiモル比 1.0以上、2.0以下
O/Tiモル比 20以上、150以下
M/Tiモル比 1.0以上、5.0以下
(Mは、Li,Na、及びKの群から選ばれる1種のアルカリ金属であり、MはNaであることが好ましい)
Si/Tiモル比は、0.5以上、2.0以下であればよく、好ましくは0.8以上、1.7以下、より好ましくは1.0以上、1.5以下である。Si/Tiモル比が0.5以上、2.0以下であることで、シリコチタネート組成物が効率よく得られる。
【0063】
O/Tiモル比は、20以上、150以下、更には40以上、100以下であることが好ましい。HO/Tiモル比が20以上であることで、得られるシリコチタネートゲルの粘度が下がり撹拌しやすくなる。HO/Tiモル比が150以下であることで、シリコチタネート組成物の収率が高くなりやすい。
【0064】
M/Tiモル比は、1.0以上、5.0以下、更には1.5以上、4.5以下、また更には2.5以上、4.5以下であることが好ましい。混合物のM/Tiモル比が1.0以上、5.0以下であることで、シリコチタネート組成物が効率よく得られる。
【0065】
シリコチタネートゲルは、ニオブを含む。ニオブを含むシリコチタネートゲルは、無機系チタン化合物、無機系ケイ素化合物、水、アルカリ金属水酸化物及びニオブ源を混合する方法、又は、シリコチタネートゲルにニオブ源を添加する方法、の少なくともいずれかの方法で得られる。
【0066】
ニオブ源は、ニオブを含む金属、合金及び化合物からなる群の少なくとも一種であることが好ましい。ニオブを含む化合物は、ニオブを含む水酸化物、塩化物、硝酸塩及び硫酸塩からなる群の少なくとも一種が挙げられる。シリコチタネート組成物のCsの吸着特性がより向上するため、ニオブ源は、ニオブを含む化合物、更にはニオブを含む水酸化物又は硝酸塩の少なくともいずれか、また更にはニオブの水酸化物を挙げることができる。
【0067】
本発明に用いるシリコチタネート組成物の製造方法は、以下のモル比を有するシリコチタネートゲルを結晶化する結晶化工程を有する。
【0068】
Si/Tiモル比 0.5以上、2.0以下
O/Tiモル比 20以上、100以下、好ましくは50以上、100以下、さらに好ましくは50以上、90以下
M/Tiモル比 1.0以上、5.0以下
Nb/Tiモル比 0.36以上、0.65以下、好ましくは0.36以上、0.55以下
または、
Si/Tiモル比 0.5以上、1.29以下
O/Tiモル比 100超、150以下
M/Tiモル比 1.0以上、5.0以下
Nb/Tiモル比 0.36以上、0.65以下
または、
Si/Tiモル比 1.40以上、2.0以下
O/Tiモル比 100超、150以下
M/Tiモル比 1.0以上、5.0以下
Nb/Tiモル比 0.36以上、0.65以下
結晶化工程において、このような混合モル比を有するシリコチタネートゲルを結晶化することで、本発明に用いるシリコチタネート組成物を得ることができる。
結晶化工程において結晶化されるシリコチタネートゲルは、好ましくは以下の組成を有する。
【0069】
Si/Tiモル比 0.5以上、1.29以下
O/Tiモル比 100超、150以下
M/Tiモル比 1.0以上、5.0以下
Nb/Tiモル比 0.45以上、0.65以下
または、
Si/Tiモル比 1.40以上、2.0以下
O/Tiモル比 100超、150以下
M/Tiモル比 1.0以上、5.0以下
Nb/Tiモル比 0.45以上、0.65以下
これにより、より短時間でシリコチタネートゲルを結晶化することができる。
【0070】
当該シリコチタネートゲルを結晶化することでシリコチタネート組成物が得られる。
【0071】
結晶化工程では、無機系チタン化合物、無機系ケイ素化合物、水、およびアルカリ金属水酸化物を混合することにより得られるシリコチタネートゲルを結晶化する。すなわち、シリコチタネート組成物の製造方法では、危険物又は劇物に該当しないケイ素源及びチタン源を使用するだけでなく、構造指向剤を使用しない。構造指向剤は、通常、高価な化合物である。構造指向剤を使用しないシリコチタネート組成物の製造方法により、より安価にシリコチタネート組成物を製造することができる。
【0072】
結晶化温度は150℃以上、230℃以下であればよく、好ましくは160℃以上、220℃以下、より好ましくは170℃以上、200℃以下である。結晶化温度が150℃以上であれば、得られるシリコチタネートの結晶性が高くなりやすい。230℃以下であれば汎用の反応容器等を使用するのに十分な温度となる。
【0073】
結晶化時間は24時間以上120時間以下であればよい。結晶化時間が24時間以上であれば得られるシリコチタネート組成物に含まれるシリコチタネートの結晶性が高くなりやすい。一方、120時間以下であれば、十分なCs又はSrの吸着特性を有するシリコチタネート組成物が得られる。
【0074】
本発明に用いるシリコチタネート組成物の製造方法は結晶化工程において、シリコチタネートゲルを結晶化することでシリコチタネート組成物を得ることができる。さらに本発明に用いるシリコチタネート組成物の製造方法は結晶化で得られた結晶化物であるシリコチタネート組成物を冷却、ろ過、洗浄、及び乾燥する各工程をいずれか1種以上含んでいてもよい。
【0075】
結晶化したシリコチタネート組成物を冷却する場合は、特に限定する冷却条件は無いが、10℃/分で加熱炉冷却、または加熱炉より取り出し強制又は放冷することが挙げられる。
【0076】
結晶化したシリコチタネート組成物をろ過する場合は、任意のろ過方法で行うことができる。例えば、ヌッチェを用いるろ過方法、又はベルトフィルター等のフィルターを用いるろ過方法を挙げることができる。フィルター等を用いるろ過方法では、当該フィルターは1μm程度の目開きのものを用いることが好ましい。
【0077】
結晶化したシリコチタネート組成物を洗浄する場合は、当該シリコチタネート組成物に対して5倍〜10倍の重量の純水を洗浄水として用いることができる。また更には、当該純水を60℃〜90℃の温水とし、これを洗浄水として用いることが好ましい。これと当該シリコチタネート組成物とを混合することで洗浄することが挙げられる。
【0078】
結晶化したシリコチタネート組成物を乾燥する場合は、当該シリコチタネート組成物を大気中で、50℃以上、120℃以下、更には70℃以上、90℃以下で乾燥することが挙げられる。乾燥後、シリコチタネート組成物が凝集している場合は乳鉢、粉砕機などで適宜解砕すればよい。
【0079】
結晶化後にこれらの工程を経ることで、シリコチタネート組成物を粉末とすることができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
(粉末X線回折測定)
X線回折装置(試料水平型多目的X線回折装置:UltimaIV、Rigaku社製)を使用して試料のXRDパターンを測定した。測定条件は以下のとおりとした。
【0082】
線源 :CuKα線(λ=1.5405Å)
管電圧 :40kV
管電流 :40mA
検出器 :高速一次元X線検出器 D/teX Ultra2
測定モード :連続
開始角度 :3.0°
終了角度 :43.0°
サンプリング幅 :0.020°
スキャンスピード :40°/分
発散スリット :1.0°
発散縦制限スリット:10mm
得られたXRDパターンと、参照HPに記載されたシチナカイト構造のシリコチタネートのXRDピークとを比較することで、シチナカイト構造の同定を行った。
【0083】
(シリコチタネート組成物の組成分析)
結晶化物の組成分析は一般的なICP法により測定した。測定には、ICP−AES(装置名:OPTIMA3000DV、PERKIN−ELMER社製)を使用した。
【0084】
(Sr、Csイオン濃度の測定)
被処理媒体として、Cs、Srの少なくともいずれかを含有し、海水と類似した組成を有する金属イオン含有水溶液(以下、「模擬海水」ともいう。)を調製し、当該水溶液に対して吸着処理を行った。水溶液中のSrイオン濃度は適宜、希釈してICP法により測定した。測定には、ICP−AES(装置名:OPTIMA3000DV、PERKIN−ELMER社製)を使用した。
【0085】
また、水溶液中のCs濃度はICP−MASS(装置名:NExION300S、PERKIN−ELMER社製)で測定した。
【0086】
(Cs、Srのイオン交換能)
吸着処理による各金属のイオン交換能は以下の式(2)より求めた。
【0087】
イオン交換能=(C。−C)/C。×100 (2)
C。:吸着処理前の金属イオン含有水溶液中の金属イオン濃度(ppm)
C :吸着平衡時の金属イオン含有水溶液中の金属イオン濃度(ppm)
実施例1
ケイ酸ソーダ(SiO;29.1重量%)20g、オキシ硫酸チタン水溶液(TiO;7.8重量%)71gを混合、洗浄し、以下の組成からなる無定形シリコチタネートゲルを得た。
【0088】
Si/Tiモル比=1.40
Na/Tiモル比=0.54
得られた無定形シリコチタネートゲルに、水酸化ニオブ粉末(Nb換算;72.0重量%)10g、及び水酸化ナトリウム水溶液(NaOH;48.0重量%)20g、純水を添加し、以下の組成を有するスラリー状のNb含有無定形シリコチタネートゲルを得た。
【0089】
Si/Tiモル比=1.46
Na/Tiモル比=4.00
Nb/Tiモル比=0.58
O/Tiモル比=112
当該Nb含有無定形シリコチタネートゲルを撹拌しながらステンレス製オートクレーブ(商品名:KH−02、HIRO COMPANY製)に充填した。これを180℃で48時間加熱して無定形シリコチタネートゲルを結晶化させて結晶化物を得た。
【0090】
結晶化時の圧力は0.8MPaであり180℃での水蒸気圧に該当した。結晶化後の結晶化物を、冷却、ろ過、洗浄、及び乾燥してシリコチタネート組成物を得た。得られたシリコチタネート組成物の組成は以下のとおりであった。
【0091】
Si/Tiモル比=0.95
Na/Tiモル比=0.67
Nb/Tiモル比=0.58
XRD測定の結果、得られたシリコチタネート組成物は表3に示すX線回折角、及び回折ピーク強度比を有することを確認した。XRDパターンを図1に示す。得られたXRDパターンと、参照HPに記載されたXRDピークとを比較した結果、得られたシリコチタネート組成物は、S型シリコチタネート、及び、V型シリコチタネートを含むことを確認した。
【0092】
【表3】
被処理媒体としてSr及びCsを含む模擬海水を用いて、得られたシリコチタネート組成物(吸着剤)のSr及びCsの選択的吸着特性の評価を行った。模擬海水として、NaCl、MgCl、CaCl、NaSO、KCl、Sr標準液、及びCs標準液を用い、以下の組成を含む水溶液を調製した。
【0093】
Na:870重量ppm(NaCl由来)
Mg:118重量ppm
Ca:41重量ppm
Na:126重量ppm(NaSO由来)
K :32重量ppm
Cs:1重量ppm
Sr:1重量ppm
(ここで、Naの合計の濃度は996重量ppmであった)
1Lの模擬海水に対し、得られたシリコチタネート組成物(吸着剤)を0.05g添加し、この模擬海水を25℃、800rpmの条件下で24時間攪拌し、シリコチタネート組成物(吸着剤)のSr、及びCs吸着特性の評価とした。なお、シリコチタネート組成物(吸着剤)は、前処理として大気中、100℃で1時間加熱した。
【0094】
吸着特性の評価後の模擬海水中のCs濃度は0.020重量ppm、Sr濃度は0.40重量ppmであった。これより、Cs、Srの交換能は以下のとおりであった。
【0095】
Cs交換能:98%
Sr交換能:60%
高いCs、Srの選択吸着能を有することを確認し、シリコチタネート組成物(吸着剤)はCs及びSr吸着剤として使用できることを確認した。
【0096】
シリコチタネート組成物(吸着剤)2gをるつぼに入れ電気炉にて600℃、3時間焼成を行った。
【0097】
XRD測定の結果、焼成を行った後のシリコチタネート組成物(吸着剤)のXRDパターンを図2に示す。
【0098】
S型シリコチタネートのメインピークである11.3±0.5°のピークは消失しており、確認されなかった。V型シリコチタネートの一部ピークである27.5±0.5°のピークは消失しており、確認されなかった。S型シリコチタネート、V型シリコチタネートの結晶構造を維持しておらず、非晶質化していることが確認された。
【0099】
600℃焼成後のシリコチタネート組成物(吸着剤)のSr選択的吸着特性の評価を行った。吸着特性の評価後の模擬海水中のSr濃度は1.00重量ppmであった。これより、Sr交換能は以下のとおりであった。
【0100】
Sr交換能:0%
このことから、焼成後のシリコチタネート組成物(吸着剤)のイオン交換性能は消失しており、逆交換によるイオンの脱離がおこらず、吸着物を固定化できることが確認された。
【0101】
XRDピーク強度比とSr交換能を表4に示す。
【0102】
【表4】
よって、シリコチタネート組成物(吸着剤)は600℃で焼成を行うことで安定化して廃棄できることが示された。
【0103】
実施例2
シリコチタネート組成物(吸着剤)を800℃、3時間で焼成した以外は実施例1と同様にして、焼成後のシリコチタネート組成物(吸着剤)を得た。
【0104】
XRD測定の結果、焼成を行った後のシリコチタネート組成物(吸着剤)のXRDパターンを図2に示す。
【0105】
S型シリコチタネートのメインピークである11.3±0.5°のピークは消失しており、確認されなかった。V型シリコチタネートの一部ピークである27.5±0.5°のピークは消失しており、確認されなかった。S型シリコチタネート、V型シリコチタネートの結晶構造を維持しておらず、非晶質化していることが確認された。また、実施例1では微量であった22.5±0.5°の安定なシリカ化合物であるクリストバライトと考えられるピークが大きく発達していることが確認された。
【0106】
800℃焼成後のシリコチタネート組成物(吸着剤)のSr選択的吸着特性の評価を行った。吸着特性の評価後の模擬海水中のSr濃度は1.00重量ppmであった。これより、Sr交換能は以下のとおりであった。
【0107】
Sr交換能:0%
このことから、焼成後のシリコチタネート組成物(吸着剤)のイオン交換性能は消失しており、逆交換によるイオンの脱離がおこらず、吸着物を固定化できることが確認された。
【0108】
XRDピーク強度比とSr交換能を表4に示す。
【0109】
よって、シリコチタネート組成物(吸着剤)は800℃で焼成を行うことで安定化して廃棄できることが示された。
【0110】
実施例3
シリコチタネート組成物(吸着剤)を990℃、3時間で焼成した以外は実施例1と同様にして、焼成後のシリコチタネート組成物(吸着剤)を得た。
【0111】
XRD測定の結果、焼成を行った後のシリコチタネート組成物(吸着剤)のXRDパターンを図2に示す。
【0112】
S型シリコチタネートのピークである11.3±0.5°のピークは消失しており、確認されなかった。V型シリコチタネートのピークである27.5±0.5°のピークは消失しており、確認されなかった。S型シリコチタネート、V型シリコチタネートの結晶構造を維持しておらず、非晶質化していることが確認された。また、実施例1では極微量であった22.5±0.5°の安定なシリカ化合物であるクリストバライトと考えられるピークが大きく発達していることが確認された。800℃の熱処理後は大きな構造変化が起こっておらず、熱に対しても安定化していることが確認された。
【0113】
990℃焼成後のシリコチタネート組成物(吸着剤)のSr選択的吸着特性の評価を行った。吸着特性の評価後の模擬海水中のSr濃度は1.00重量ppmであった。これより、Sr交換能は以下のとおりであった。
【0114】
Sr交換能:0%
このことから、焼成後のシリコチタネート組成物(吸着剤)のイオン交換性能は消失しており、逆交換によるイオンの脱離がおこらず、吸着物を固定化できることが確認された。
【0115】
XRDピーク強度比とSr交換能を表4に示す。
【0116】
よって、シリコチタネート組成物(吸着剤)は990℃で焼成を行うことで安定化して廃棄できることが示された。
【0117】
比較例1
シリコチタネート組成物(吸着剤)を400℃、3時間で焼成した以外は実施例1と同様にして、焼成後のシリコチタネート組成物(吸着剤)を得た。
【0118】
XRD測定の結果、焼成を行った後のシリコチタネート組成物(吸着剤)のXRDパターンを図2に示す。
【0119】
S型シリコチタネートのメインピークである11.3±0.5°のピーク強度は焼成前のシリコチタネート組成物の11.3°のピーク強度と比較して63%であった。V型シリコチタネートの一部ピークである27.5±0.5°のピーク強度は焼成前のシリコチタネート組成物の11.3°のピーク強度と比較して48%であった。ピーク強度は低下したものの、S型シリコチタネート、V型シリコチタネートの結晶構造を維持していることが確認された。
【0120】
400℃焼成後のシリコチタネート組成物(吸着剤)のSr選択的吸着特性の評価を行った。吸着特性の評価後の模擬海水中のSr濃度は0.70重量ppmであった。これより、Sr交換能は以下のとおりであった。
【0121】
Sr交換能:30%
このことから、400℃の焼成ではシリコチタネート組成物(吸着剤)の非結晶化、安定化が不十分であって、焼成後のシリコチタネート組成物のイオン交換性能は消失しておらず、逆交換によるイオンの脱離がおこり、吸着物を完全に固定化できていないことが確認された。
【0122】
XRDピーク強度比とSr交換能を表4に示す。
【0123】
よって、シリコチタネート組成物(吸着剤)は400℃で焼成を行うことでは安定化が不十分であり、廃棄できないことが示された。
【0124】
実施例4
実施例1のシリコチタネート組成物100g(無水換算)を、無機バインダー(コロイダルシリカ、商品名:スノーテックス、日産化学株式会社製)12(無水換算)gや増粘剤(商品名:サンローズF−20HC、日本製紙製)6g(無水換算)とともに混合機(商品名:Model 2P−03、プライミクス製)に入れ混練した後、小型一軸押し出し成形機(商品名:MG−55−1型、ダルトン製)に投入し、各種ダイス径(1.0mmφドーム型)を用い、回転数25rpmで押し出し成形を行い、円柱状に成形した後に、110℃、24時間焼成を行い、シリコチタネート成形体を得た。
【0125】
被処理媒体としてSr及びCsを含む模擬海水を用いて、得られたシリコチタネート成形体(吸着剤)のSr及びCsの選択的吸着特性の評価を行った。模擬海水として、NaCl、MgCl、CaCl、NaSO、KCl、Sr標準液、及びCs標準液を用い、以下の組成を含む水溶液を調製した。
【0126】
Na:870重量ppm(NaCl由来)
Mg:118重量ppm
Ca:41重量ppm
Na:126重量ppm(NaSO由来)
K :32重量ppm
Cs:1重量ppm
Sr:1重量ppm
(ここで、Naの合計の濃度は996重量ppmであった)
1Lの模擬海水に対し、得られたシリコチタネート成形体(吸着剤)を0.05g添加し、この模擬海水を25℃、800rpmの条件下で24時間攪拌し、シリコチタネート成形体(吸着剤)のSr、及びCs吸着特性の評価とした。なお、シリコチタネート成形体(吸着剤)は、前処理として大気中、100℃で1時間加熱した。
【0127】
吸着特性の評価後の模擬海水中のCs濃度は0.09重量ppm、Sr濃度は0.45重量ppmであった。これより、Cs、Srの交換能は以下のとおりであった。
【0128】
Cs交換能:91%
Sr交換能:55%
シリコチタネート成形体(吸着剤)のイオン交換性能を評価した。
【0129】
シリコチタネート成形体(吸着剤)2gをるつぼに入れ電気炉にて600℃、3時間焼成を行った。
【0130】
XRD測定の結果、焼成を行った後のシリコチタネート成形体(吸着剤)のXRDパターンを図3に示す。
【0131】
S型シリコチタネートのメインピークである11.3±0.5°のピークは消失しており、確認されなかった。V型シリコチタネートの一部ピークである27.5±0.5°のピークは消失しており、確認されなかった。S型シリコチタネート、V型シリコチタネートの結晶化構造を維持しておらず、非晶質化されていることが確認された。
【0132】
600℃焼成後のシリコチタネート成形体(吸着剤)のSr選択的吸着特性の評価を行った。吸着特性の評価後の模擬海水中のSr濃度は1.00重量ppmであった。これより、Sr交換能は以下のとおりであった。
【0133】
Sr交換能:0%
このことから、焼成後のシリコチタネート成形体(吸着剤)のイオン交換能は消失しており、逆交換によるイオンの脱離がおこらず、吸着物を固定化できることが確認された。
【0134】
XRDピーク強度とSr交換能を表4に示す。
【0135】
XRDピーク強度比は、110℃焼成品の11.3°のピーク強度を100として、実施例4の2θ=11.3°、27.8°、22.5°のピーク強度を計算した。
【0136】
よって、シリコチタネート成形体(吸着剤)は600℃で焼成を行うことで安定化して廃棄できることが示された。
【0137】
実施例5
シリコチタネート成形体(吸着剤)を800℃、3時間で焼成した以外は実施例4と同様にして、焼成後のシリコチタネート成形体(吸着剤)を得た。
【0138】
XRD測定の結果、焼成を行った後のシリコチタネート成形体(吸着剤)のXRDパターンを図3に示す。
【0139】
S型シリコチタネートのメインピークである11.3±0.5°のピークは消失しており、確認されなかった。V型シリコチタネートの一部ピークである27.5±0.5°のピークは消失しており、確認されなかった。S型シリコチタネート、V型シリコチタネートの結晶化構造を維持しておらず、非晶質化されていることが確認された。また、安定なシリカ化合物であるクリストバライトが生成していることが確認された。
【0140】
800℃焼成後のシリコチタネート成形体(吸着剤)のSr選択的吸着特性の評価を行った。吸着特性の評価後の模擬海水中のSr濃度は1.00重量ppmであった。これより、Sr交換能は以下のとおりであった。
【0141】
Sr交換能:0%
このことから、焼成後のシリコチタネート成形体(吸着剤)のイオン交換能は消失しており、逆交換によるイオンの脱離がおこらず、吸着物を固定化できることが確認された。
【0142】
XRDピーク強度とSr交換能を表4に示す。
【0143】
XRDピーク強度比は、110℃焼成品の11.3°のピーク強度を100として、実施例5の2θ=11.3°、27.8°、22.5°のピーク強度を計算した。
【0144】
よって、シリコチタネート成形体(吸着剤)は800℃で焼成を行うことで安定化して廃棄できることが示された。
【0145】
実施例6
シリコチタネート成形体(吸着剤)を990℃、3時間で焼成した以外は実施例4と同様にして、焼成後のシリコチタネート成形体(吸着剤)を得た。
【0146】
XRD測定の結果、焼成を行った後のシリコチタネート成形体(吸着剤)のXRDパターンを図3に示す。
【0147】
S型シリコチタネートのメインピークである11.3±0.5°のピークは消失しており、確認されなかった。V型シリコチタネートの一部ピークである27.5±0.5°のピークは消失しており、確認されなかった。S型シリコチタネート、V型シリコチタネートの結晶化構造を維持しておらず、非晶質化されていることが確認された。また、実施例4ではクリストバライトが生成していることが確認された。800℃の熱処理後は大きな構造変化が起こっておらず、熱に対しても安定化していることが確認された。
【0148】
990℃焼成後のシリコチタネート成形体(吸着剤)のSr選択的吸着特性の評価を行った。吸着特性の評価後の模擬海水中のSr濃度は1.00重量ppmであった。これより、Sr交換能は以下のとおりであった。
【0149】
Sr交換能:0%
このことから、焼成後のシリコチタネート成形体(吸着剤)のイオン交換能は消失しており、逆交換によるイオンの脱離がおこらず、吸着物を固定化できることが確認された。
【0150】
XRDピーク強度とSr交換能を表4に示す。
【0151】
XRDピーク強度比は、110℃焼成品の11.3°のピーク強度を100として、実施例6の2θ=11.3°、27.8°、22.5°のピーク強度を計算した。
【0152】
よって、シリコチタネート成形体(吸着剤)は990℃で焼成を行うことで安定化して廃棄できることが示された。
【0153】
比較例2
シリコチタネート成形体(吸着剤)を400℃、3時間で焼成した以外は実施例4と同様にして、焼成後のシリコチタネート成形体(吸着剤)を得た。
【0154】
XRD測定の結果、焼成を行った後のシリコチタネート成形体(吸着剤)のXRDパターンを図3に示す。
【0155】
XRDピーク強度比は、110℃焼成品の11.3°のピーク強度を100として、比較例2の2θ=11.3°、27.8°、22.5°のピーク強度を計算した。
【0156】
S型シリコチタネートのメインピークである11.3±0.5°のピーク強度は焼成前のシリコチタネート成形体の11.3°のピークと比較して56%であった。V型シリコチタネートの一部ピークである27.5±0.5°のピーク強度は110℃焼成品のシリコチタネート成形体の11.3°のピークと比較して29%であった。ピーク強度は低下したものの、S型シリコチタネート、V型シリコチタネートの結晶構造を維持していることが確認された。
【0157】
400℃焼成後のシリコチタネート成形体(吸着剤)のSr選択的吸着特性の評価を行った。吸着特性の評価後の模擬海水中のSr濃度は0.84重量ppmであった。これより、Sr交換能は以下のとおりであった。
【0158】
Sr交換能:16%
このことから、400℃の焼成ではシリコチタネート成形体(吸着剤)の非晶質化、安定化が不十分であって、焼成後のシリコチタネート成形体(吸着剤)のイオン交換能は消失しておらず、逆交換によるイオンの脱離がおこり、吸着物を完全に固定化できていないことが確認された。
【0159】
XRDピーク強度とSr交換能を表4に示す。
【0160】
よって、シリコチタネート成形体(吸着剤)は400℃で焼成を行うことでは安定化が不十分であり、廃棄できないことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は安価な原料を用いて、安全に生産、かつ汎用のオートクレーブを用いることができる吸着剤の廃棄処理方法を提供するものである。本発明により海水、地下水、汚染水に共存するCs、Srなどの有害イオンを吸着した吸着剤を効率よく処理できる。
図1
図2
図3