【課題】密着性に優れ、好ましくはハロゲンを含まないことで焼却時の有害なハロゲン系分解ガスの発生を回避した、環状オレフィン重合体とポリイミドに代表される縮合系樹脂基材とそれらを接着する中間の接着層からなる積層体、積層フィルム、および金属張積層板を提供する。
【解決手段】接着層が酸変性ポリオレフィンを含有し、接着層を有機溶剤に溶解または分散されている酸変性ポリオレフィンから得られる塗膜とすることにより、上記の課題を解決する。
縮合型重合体が、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリルエーテルケトン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である、請求項3に記載の積層体。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。なお、本発明において「A〜B」とは、「A以上B以下」であることを示している。
【0016】
<環状オレフィン重合体>
本発明の環状オレフィン重合体は、環構造を有する単量体と炭素数2〜20のα−オレフィンとの付加型重合体である。炭素数2〜20のα−オレフィンに由来する構造単位の含有量は、半田耐熱性や強度が優れる環状オレフィン重合体が得られやすいという観点から、付加型重合体の全構造単位に対し、5〜50mol%であることが好ましく、10〜35mol%であることがより好ましい。
【0017】
また、本発明の積層体における環状オレフィン重合体層は、上記の環状オレフィン重合体を含有する。
【0018】
(環構造を有する単量体)
本発明の環状オレフィン重合体を構成する環構造を有する単量体は、下記一般式(I)で示されるものが挙げられる。
【0020】
(式(I)中、R1〜R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、
R9とR10、R11とR12は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、
R9又はR10と、R11又はR12とは、互いに環を形成していてもよい。
また、nは、0又は正の整数を示し、
nが2以上の場合には、R5〜R8は、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
ただし、n=0の場合、R1〜R4及びR9〜R12の少なくとも1個は、水素原子ではない。)
【0021】
R9とR10、又はR11とR12とが一体化して2価の炭化水素基を形成する場合の具体例としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等のアルキリデン基等を挙げることができる。
【0022】
R9又はR10と、R11又はR12とが、互いに環を形成する場合には、形成される環は単環でも多環であってもよく、架橋を有する多環であってもよく、二重結合を有する環であってもよく、またこれらの環の組み合わせからなる環であってもよい。また、これらの環はメチル基等の置換基を有していてもよい。
【0023】
環構造を有する単量体としては、ノルボルネン、テトラドデセンが挙げられる。後述するメタロセン触媒に対する反応性が高いという観点から、環構造を有する単量体としては、ノルボルネンが特に好ましい。
【0024】
環状オレフィン重合体における、環構造を有する単量体に由来する構造単位の含有量は、
13C−NMRを用いた方法で特定する。
【0025】
(α−オレフィン)
本発明の環状オレフィン重合体を構成する炭素数2〜20のα−オレフィンの炭素数としては特に限定されないが、有機溶剤または酸変性ポリオレフィンへの親和性、溶解性の高い環状オレフィン重合体が得られやすいという観点から、好ましくは炭素数3〜10、より好ましくは炭素数6〜10のα−オレフィンが挙げられる。
【0026】
α−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。上記のうち、炭素数6〜10のα−オレフィンが好ましく、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンがより好ましい。
【0027】
(α−オレフィンに由来する構造単位の含有量)
環状オレフィン重合体におけるα−オレフィン量は、
13C−NMRのα−オレフィンユニット由来炭素の積分値と、環構造を有する単量体由来の炭素の積分値とを用いて、各成分の導入量を算出し、その比率から重合体中の共重合組成比を算出することで特定される。
【0028】
具体的には、まず、本発明の環状オレフィン重合体において、1級炭素は全てα−オレフィンユニットに帰属する。そのため、1級炭素由来のピーク(14ppm近辺の最も高磁場に存在する)、及び、該ピークの隣に現れる、1級炭素由来のピークと同等の積分値を有する2級炭素のピークに基づき、α−オレフィンユニット由来の炭素の積分値を特定できる。
【0029】
一方、25ppmから55ppmには、α−オレフィンユニット由来の2級炭素及び3級炭素のピーク、並びに、環構造を有する単量体由来の2級炭素及び3級炭素のピークが重なり合った状態で発現する。
【0030】
なお、環構造を有する単量体に由来する構造単位の含有量は、上記の全ピークの積分値と、α−オレフィンユニット由来の積分値との差から特定できる。
【0031】
(本発明の環状オレフィン重合体の製造方法)
本発明の環状オレフィン重合体は、付加型重合体の製造方法として知られる任意の手法を採用して製造することができる。
【0032】
重合触媒としては、メタロセン系触媒を特に好適に用いることができる。本発明で重合触媒として好適に用いられるメタロセン触媒の具体的な例としては、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジメチル、ラセミ−エチリデン−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ラセミ−ジメチルシリル−ビス(2−メチル−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド、ラセミ−イソプロピリデン−ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(1−インデニル)(3−イソプロピル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランジルコニウムジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランジルコニウムジクロリド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−(3,6−ジメチルフルオレニル)シランジルコニウムジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(i−プロピル)フルオレニル]シランジルコニウムジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランジルコニウムジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[2,7−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランジルコニウムジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−(2,3,6,7−テトラメチルフルオレニル)シランジルコニウムジメチル、ラセミ−エチリデン−ビス(インデニル)チタンジクロライド、ラセミ−ジメチルシリル−ビス(2−メチル−ベンゾインデニル)チタンジクロライド、ラセミ−イソプロピリデン−ビス(テトラヒドロインデニル)チタンジクロライド、イソプロピリデン(1−インデニル)(3−イソプロピル−シクロペンタジエニル)チタンジクロライド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジクロリド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−(3,6−ジメチルフルオレニル)シランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(i−プロピル)フルオレニル]シランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[2,7−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−(2,3,6,7−テトラメチルフルオレニル)シランチタンジメチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明の環状オレフィン重合体は、上記重合触媒とともに、助触媒を使用するとより容易に得られやすい。助触媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
助触媒としては、アルキルアルミノキサンが好ましく、本発明の環状オレフィン重合体を容易に製造するに際しては、少なくも1種類の助触媒を用いる必要がある。アルキルアルミノキサンは、触媒を反応中心の環境に変え、触媒を活性化させるために有効である。
【0035】
アルキルアルミノキサンの製造方法としては、特に限定されないが、通常、アルキルアルミニウムを適度に加水分解することで得られる。アルキルアルミノキサンとしては、市販品を用いてもよい。アルキルアルミノキサンの市販品としては、例えば、MMAO−3A、TMAO−200シリーズ、TMAO−340シリーズ(いずれも東ソー・ファインケム(株)製)やメチルアルミノキサン溶液(アルベマール社製)等が挙げられる。
【0036】
その他の助触媒としては、アルキルアルミニウムを用いてもよい。アルキルアルミニウムは触媒活性を低下させる水等と反応するため、スカベンジャー(捕捉剤)として有効である。アルキルアルミニウムの具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド;ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド;ジメチルアルミニウムメトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシドが挙げられる。これらの助触媒は単独で用いてもよく、これらの助触媒のうち1以上をアルキルアルミノキサンと組み合わせて用いてもよい。
【0037】
<酸変性ポリオレフィンを含有する接着層>
(酸変性ポリオレフィン)
本発明の積層体に用いられる接着層の酸変性ポリオレフィンは、オレフィン構造を有する任意の単量体と酸性基またはその誘導体を含むオレフィン構造を有する任意のモノマーを重合することで得られる共重合体や、ポリオレフィンに対して酸性基またはその誘導体を含む任意の変性モノマーをグラフト重合させたものであれば特に限定されないが、特にポリオレフィンに変性モノマーとして、α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトすることにより得られるものであることが好ましい。
【0038】
前記ポリオレフィンとは、アルケンに代表されるオレフィン類をモノマーとして合成されるポリマーの総称である。モノマーとなるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2以上20以下、好ましくは2以上6以下のオレフィンであって、中でもこれら炭素数のα−オレフィンが好ましく、又、シクロペンテン、シクロヘキセン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンセン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン等の鎖状あるいは環状ポリエン、あるいはスチレン、置換スチレンなどの単独または共重合体もしくはこれらを水素添加した炭化水素骨格を主体とした重合体を指す。重合体中のこれらモノマーの割合は任意に選択できる。
【0039】
前記α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種としては、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、アコニット酸、フタル酸、トリメリット酸、ノルボルネンジカルボン酸等の不飽和ポリカルボン酸あるいはこれらの誘導体(例えば、酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、エステル等)である。これらの中でも酸無水物が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。これらのα,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物は1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
ポリオレフィンに対してグラフトできるその他の変性モノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル(以下、(メタ)アクリル酸エステルと表記)が挙げられる。これらは、下記一般式で示される化合物から選ばれる少なくとも1種である。
CH
2=CR1COOR2
(式中、R1=HまたはCH
3、R2=C
nH
2n+1、n=1〜18の整数。)
また、その他の(メタ)アクリル酸誘導体(シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソシアネート含有(メタ)アクリレート等)や、その他スチレン,シクロヘキシルビニルエーテル,ジシクロペンタジエン等の共重合可能な不飽和モノマーも適宜使用できる。なお、これら変性モノマーは、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらのモノマーを併用することで、密着性、溶剤溶解性や、変性モノマーのグラフト率を、さらに向上することができる。
【0041】
本発明の積層体に用いられる接着層の酸変性ポリオレフィンとしては、具体的には、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体などが挙げられ、中でもエチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸共重合体が好ましい。これら酸変性ポリオレフィンは1 種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
本発明の積層体に用いられる接着層は、有機溶剤に溶解または分散されている酸変性ポリオレフィンから得られる塗膜である。有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミドなどのアミド、ラクタム系溶剤あるいは前記の溶剤を任意に混合した混合溶剤を使用できる。環境負荷低減の観点からは、シクロヘキサン系の脂肪族溶剤と、エステル系溶剤あるいはケトン系溶剤の混合物を使用することが好ましく、メチルシクロヘキサン−酢酸ブチル、メチルシクロヘキサン−酢酸ブチル−2−ブタノール、メチルシクロヘキサン−メチルエチルケトンがより好ましい。酸変性ポリオレフィンは水系分散体の形態では、水の表面張力の高さからポリイミドに代表される縮合型重合体上では塗布液がはじかれ、一様に塗布ができないため不適であった。一方、本発明における有機溶剤に溶解または分散された酸変性ポリオレフィンであれば水系分散体に比べて表面張力を下げることができ、ポリイミドに代表される縮合型重合体上への一様な塗布が可能となる。
【0043】
前記有機溶剤に溶解または分散されている酸変性ポリオレフィンの市販例としては、例えば、日本製紙ケミカル製アウローレンシリーズ(100S,150S,200S,250S,350S,351S,353S,359S,500S,550Sなど)、東洋紡社製のハードレンシリーズ(TD−15B,NS−2002,NP−3002など)、日本ゼオン社製のQuintoneシリーズ、ジェンケム社製のGENPOLYなどが挙げられる。
【0044】
<樹脂基材層>
本発明の積層体に用いられる樹脂基材層は、縮合型重合体からなることが好ましい。縮合型重合体としては、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリルエーテルケトン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂が好ましく、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂がより好ましく、ポリイミド樹脂がさらに好ましい。
【0045】
<積層フィルム>
本発明の積層フィルムは、本発明の積層体からなる厚さが10μm〜500μmであるフィルムをいう。
【0046】
積層フィルムや積層体の作製に用いられる溶媒は、環状オレフィン重合体を溶解できるものであれば特に限定されず、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、p−メンタン、デカヒドロナフタレン等の脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系炭化水素溶媒等が挙げられる。これらのうち、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、p−メンタン、トルエン、及びキシレンが好ましい。溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0047】
この他、本発明の目的を阻害しない範囲で公知の添加剤、本発明の重合体以外の樹脂を適宜配合してもよい。添加剤としては、特に限定されないが、無機フィラー、酸化防止剤などのラジカルトラップ剤、紫外線吸収剤、可塑剤、密着剤等が挙げられる。
【0048】
積層フィルムや積層体の作製の方法としては特に限定されず、例えば、樹脂基材層上に、有機溶剤に溶解または分散されている酸変性ポリオレフィンを塗布し、塗布した溶液から溶媒を除去し、さらに上記の環状オレフィン重合体が溶解した溶媒を塗布し、塗布した溶液から溶媒を除去し、本発明の積層フィルムや積層体を得ることができる。
【0049】
溶液の塗布方法は特に限定されず、マイクログラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。
【0050】
<金属張積層板>
本発明の金属張積層板は、本発明の積層体と、積層体の片面又は両面に設けられる金属箔層とを含む。
【0051】
(積層体)
積層体の厚さは、特に限定されない。
【0052】
(金属箔層)
本発明の金属張積層板を構成する金属箔層の材料としては、特に限定されず、配線基板において通常使用される金属であってもよく、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、等が挙げられる。本発明の金属張積層板は、電気伝導度が高く、コストが低い等の観点から、CCL(copper clad laminate)として好適に使用できるため、金属箔層の材料としては、銅が好ましい。
【0053】
金属箔層として銅箔を採用する場合、圧延銅箔や電解銅箔等を好適に使用できる。
【0054】
金属箔層として銅箔を採用する場合、高速伝送技術に好適に使用できるという観点から、低粗度の銅箔を用いることが好ましい。高粗度(粗さの程度が大きい)であると、高周波信号を伝送する際に表皮効果で導体損失が大きくなるためである。なお、本発明において「粗度」は、「JIS C 6515:1998 プリント配線板用銅はく」で説明される定義が採用される。より具体的には、10点平均粗さの最大値Rzに基づく下記分類のうち、「VL」に相当するものを低粗度の銅箔として好適に使用できる。
「S」(Standard):Rzが14μm以下である
「LS」(Low Profile):Rzが10μm以下である
「VL」(Very Low Profile):Rzが5μm以下である
【0055】
金属箔層の厚さは、特に限定されず、市販の金属箔の厚さを任意に採用できる。
【0056】
(金属張積層板の製造方法)
金属張積層板の製造方法としては、ラミネート方式、スパッタリング方式、キャスト方式、ボンディングシート等を用いた接着方式を利用できる。
【0057】
金属張積層板の別の製造方法としては、金属箔層の表面に、本発明の積層体を配置する方法が挙げられる。
【0058】
積層体と金属箔層との間には、その他の層(接着層等)が存在していてもよいし、存在していなくてもよい。必要に応じて、金属箔層の表面をキレート剤で処理して金属箔層と積層体との密着性を改善させてもよい。本発明の金属張積層板においては、積層体と金属箔層との密着性が良好であるので、金属張積層板と金属箔層とは直接接触しており、積層体と金属箔層との間に他の層等が存在していないことが好ましい。
【0059】
本発明の金属張積層板は、耐熱性、金属への接着性、及び高周波特性が要求される用途に好適に使用できる。例えば、本発明の金属張積層板は、種々の基板(プリント基板、フレキシブルプリント基板等)、金属張積層板を複数重ね合わせた多層基板、高周波用配線基板)、半導体パッケージ用配線フィルム等として好適に使用できる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0061】
用いた材料は以下の通りである。
樹脂基材:ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、Kapton 500H、125μm厚)
環状オレフィン重合体1の20%トルエン溶液(ワニス):環状オレフィン重合体1は、以下のようにして作製した。
乾燥した300mLの2口フラスコ内を窒素ガスで置換した後、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート8.1mg、トルエン235.7mL、7.5モル/Lの濃度で2−ノルボルネンを含有するトルエン溶液7.0mL、1−ヘキセン4.8mL、トリイソブチルアルミニウム2 mLを添加して、反応溶液を25℃に保持した。この溶液とは別個に、グローブボックス中で、触媒として、92.9mgの(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジメチル[(t−BuNSiMe2Flu)TiMe
2]をフラスコに入れ、5mLのトルエンに溶解させた。この触媒溶液2mLを300mLフラスコに加えて重合を開始した。2分後に2mLのメタノールを添加して反応を終了させた。次いで、得られた反応混合物を塩酸で酸性に調整した大量のメタノール中に放出して沈殿物を析出させ、濾別、洗浄後、乾燥して、2−ノルボルネン・1−ヘキセン共重合体(Nb/Hex)を4.3g得た。得られた共重合体の数平均分子量Mnは31,600、ガラス転移温度Tgは300℃、動的貯蔵弾性率(E’)は−20℃付近に転移点を有し、2−ノルボルネンの含有量は12mol%であった。この得られた2−ノルボルネン・1−ヘキセン共重合体(Nb/Hex)に共重合体濃度が20重量%となるようにトルエンを加えて60℃で5時間加温攪拌することで、目的の環状オレフィン重合体1の20%トルエン溶液(ワニス)を得た。
【0062】
<実施例1〜5>
表1に示す付着付与剤分散液または溶液(製品として固体のもの(実施例3〜5)は、有機溶剤に溶解させて溶液を調製)をポリイミドフィルムにバーコーターを用いて表1に記載の膜厚となるように塗布し、乾燥(100〜120℃×1分)させることで、接着層/ポリイミドフィルム積層体を得た。得られた接着層/ポリイミドフィルム積層体の密着性(接着層/ポリイミドフィルム間)を後述する密着性評価試験1、2にて評価した。結果を表2に示す。なお、表2中、密着性1は密着性評価試験1の結果を、密着性2は密着性評価試験2の結果を示している。
【0063】
環状オレフィン重合体1のワニスを上記で得られた接着層/ポリイミドフィルム積層体の接着層側にアプリケーターを用いて表1に記載の膜厚となるように塗布し、大気下、60〜100℃で乾燥させることで、目的の環状オレフィン重合体層/接着層/ポリイミドフィルム積層体を得た。得られた環状オレフィン重合体層/接着層/ポリイミドフィルム積層体の密着性(環状オレフィン重合体層/接着層間)を後述する密着性評価試験1、2にて評価した。結果を表1に示す。なお、表1中、密着性1は密着性評価試験1の結果を、密着性2は密着性評価試験2の結果を示している。
【0064】
<比較例1>
付着付与剤分散液または溶液をポリイミドフィルムに塗布せず、直接、環状オレフィン重合体1のワニスをポリイミドフィルムにアプリケーターを用いて表1に記載の膜厚となるように塗布し、大気下、60〜100℃で乾燥させることで、目的の環状オレフィン重合体層/ポリイミドフィルム積層体を得た。得られた環状オレフィン重合体層/ポリイミドフィルム積層体の密着性(環状オレフィン重合体層/ポリイミドフィルム間)を後述する密着性評価試験1、2にて評価した。結果を表1に示す。なお、表2中、密着性1は密着性評価試験1の結果を、密着性2は密着性評価試験2の結果を示している。
【0065】
<比較例2、3>
表1に示す付着付与剤分散液をポリイミドフィルムにバーコーターを用いて表1に記載の膜厚となるように塗布し、乾燥(100℃×30秒)した後、UV照射(100〜300mJ/cm
2)により、接着層/ポリイミドフィルム積層体を得た。得られた接着層/ポリイミドフィルム積層体の密着性(接着層/ポリイミドフィルム間)を後述する密着性評価試験1、2にて評価した。結果を表2に示す。なお、表1中、密着性1は密着性評価試験1の結果を、密着性2は密着性評価試験2の結果を示している。
【0066】
環状オレフィン重合体1のワニスを上記で得られた接着層/ポリイミドフィルム積層体の接着層側にアプリケーターを用いて表2に記載の膜厚となるように塗布し、大気下、60〜100℃で乾燥させることで、目的の環状オレフィン重合体/接着層/ポリイミドフィルム積層体を得た。得られた環状オレフィン重合体/接着層/ポリイミドフィルム積層体の密着性(環状オレフィン重合体/接着層間)を後述する密着性評価試験1、2にて評価した。結果を表2に示す。なお、表2中、密着性1は密着性評価試験1の結果を、密着性2は密着性評価試験2の結果を示している。
【0067】
<比較例4〜5>
表1に示す付着付与剤分散液をポリイミドフィルムにバーコーターを用いて塗布したが、ポリイミドフィルム上で付着付与剤分散液がはじかれて一様に塗布できなかった。
【0068】
<比較例6>
特許文献2に記載の方法で製造したエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体の付着付与剤分散液「E−1」をポリイミドフィルムにバーコーターを用いて塗布したが、ポリイミドフィルム上で付着付与剤分散液がはじかれて一様に塗布できなかった。
【0069】
<密着性評価試験>
(密着性評価試験1)
温度23±5℃、相対湿度50±10%の条件下で、積層体の表面(表面が環状オレフィン重合体層の場合は環状オレフィン重合体層の表面、表面が接着層の場合は接着層の表面)に、30mmを超える長さのテープ(ニチバン(株)製、セロテープ(登録商標)CT405AP−24)を重ね、十分に接触させるために、指先でしっかりとテープをこすって押しつけた。テープ全体が均一に積層体表面に付着しているか確認後、5分以内に、積層体の表面に対して、できるだけ170度に近い角度でテープの端をつかみ、0.5〜1秒間で引き離した。積層体表面のテープを付着した部分を観察し、密着性を以下の基準で評価した。
【0070】
(密着性評価試験2、密着性評価試験1に比べてより厳しい試験法)
温度23±5℃、相対湿度50±10%の条件下で、積層体の表面(表面が環状オレフィン重合体層の場合は環状オレフィン重合体層の表面、表面が接着層の場合は接着層の表面)から基材表面までの深さまで、カッターで表面に30mmの切れ目を入れ、その中央を90度で直行するように同様の切れ目を入れた。テープ(ニチバン(株)製、セロテープ(登録商標)CT405AP−24)をその表面に、切れ目の線分に対して45度になる角度で重ね、積層体表面に接触させるために、指先でしっかりとテープをこすって押しつけた。テープ全体が均一に積層体表面に付着しているか確認後、5分以内に、積層体の表面に対して、できるだけ170度に近い角度でテープの端をつかみ、0.5〜1秒間で引き離した。積層体表面のテープを付着した部分を観察し、密着性を以下の基準で評価した。
【0071】
(評価基準)
塗膜のテープ付着面積に対する残存面積の比率の範囲を目視で確認した。
◎:塗膜が90%以上残存、〇:塗膜が50%以上90%未満残存、×:塗膜が0%以上50%未満残存
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
表2に示す通り、実施例1〜5のいずれにおいても、接着層/ポリイミドフィルム間の密着性、および環状オレフィン重合体層/接着層間の密着性は良好であった。特に、本発明における環状オレフィン重合体が、環構造を有する単量体(A1)と、炭素数3〜10、より好ましくは炭素数6〜10のα−オレフィン(A2)との付加型重合体からなるものであれば、環構造を有する単量体と、炭素数3未満、より好ましくは6未満のα−オレフィンとの付加型重合体と比較して、有機溶剤への親和性、溶解性が高い特徴を有することから、接着層が、有機溶剤に溶解または分散された酸変性ポリオレフィンから形成されたものであれば、特に、ポリイミドフィルムに対して一様な塗布が可能であり、さらに、有機溶剤をキャリヤーとして、環状オレフィン重合体と接着層の界面で樹脂間相溶を生じることができ、密着性1、2の試験に耐え得る密着性を与えることができるものと考えられた。
【0075】
一方、接着層の無い比較例1においては、環状オレフィン重合体層/ポリイミドフィルム間の密着性は不良であった。これは、環状オレフィン重合体には、ポリイミドフィルムに代表される縮合型重合体に含まれる官能基と化学結合や分子間相互作用、静電相互作用等の接着要因となる結合の生成ならびに相互作用が生じないだけでなく、界面での樹脂間相溶が発生しにくいためであると考えられた。
【0076】
また、比較例2、3で示されているように、市販の環状オレフィン重合体用プライマー剤(本発明の酸変性ポリオレフィンに該当しないアクリル樹脂系)では、環状オレフィン重合体層/接着層間の密着性1には耐え得るが、密着性2の試験に耐え得る密着性が発現されなかった。これは、アクリル樹脂系の環状オレフィン重合体用プライマー剤は、環状オレフィン重合体やポリイミド基材への親和性が低く、特に環状オレフィン重合体との界面における樹脂間相溶が発生しにくいからであると考えられた。
【0077】
さらに、比較例4〜6で示されているように、酸変性ポリオレフィンを水系分散体の形態で塗布すると、水の表面張力の高さから、ポリイミドに代表される縮合型重合体上では塗布液がはじかれ、一様に塗布ができないため不適であった。一方、有機溶剤に溶解または分散された酸変性ポリオレフィンであれば水系分散体に比べて表面張力を下げることができ、ポリイミドに代表される縮合型重合体上への一様な塗布が可能となる。