【課題】密着性に優れ、好ましくはハロゲンを含まないことで焼却時の有害なハロゲン系分解ガスの発生を回避した、環状オレフィン重合体とポリイミドに代表される縮合系樹脂基材とそれらを接着する中間の接着層からなる積層体、積層フィルム、および金属張積層板を提供する。
【解決手段】接着層が硬化されたエポキシ樹脂組成物を含有し、硬化されたエポキシ樹脂組成物を含有する接着層が、エポキシ基数が2以上のエポキシ化合物を50質量部を超える含有量で含むことにより、上記の課題を解決する。
エポキシ樹脂組成物の、数平均分子量が1,000以上であるエポキシ基数が2以上のエポキシ化合物の含有量が80質量部以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層体。
縮合型重合体が、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリルエーテルケトン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である、請求項5に記載の積層体。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。なお、本発明において「A〜B」とは、「A以上B以下」であることを示している。
【0016】
<環状オレフィン重合体>
本発明の環状オレフィン重合体は、環構造を有する単量体と炭素数2〜20のα−オレフィンとの付加型重合体である。炭素数2〜20のα−オレフィンに由来する構造単位の含有量は、半田耐熱性や強度が優れる環状オレフィン重合体が得られやすいという観点から、付加型重合体の全構造単位に対し、5〜50mol%であることが好ましく、10〜35mol%であることがより好ましい。
【0017】
また、本発明の積層体における環状オレフィン重合体層は、上記の環状オレフィン重合体を含有する。
【0018】
(環構造を有する単量体)
本発明の環状オレフィン重合体を構成する環構造を有する単量体は、下記一般式(I)で示されるものが挙げられる。
【0020】
(式(I)中、R1〜R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、
R9とR10、R11とR12は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、
R9又はR10と、R11又はR12とは、互いに環を形成していてもよい。
また、nは、0又は正の整数を示し、
nが2以上の場合には、R5〜R8は、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
ただし、n=0の場合、R1〜R4及びR9〜R12の少なくとも1個は、水素原子ではない。)
【0021】
R9とR10、又はR11とR12とが一体化して2価の炭化水素基を形成する場合の具体例としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等のアルキリデン基等を挙げることができる。
【0022】
R9又はR10と、R11又はR12とが、互いに環を形成する場合には、形成される環は単環でも多環であってもよく、架橋を有する多環であってもよく、二重結合を有する環であってもよく、またこれらの環の組み合わせからなる環であってもよい。また、これらの環はメチル基等の置換基を有していてもよい。
【0023】
環構造を有する単量体としては、ノルボルネン、テトラドデセンが挙げられる。後述するメタロセン触媒に対する反応性が高いという観点から、環構造を有する単量体としては、ノルボルネンが特に好ましい。
【0024】
環状オレフィン重合体における、環構造を有する単量体に由来する構造単位の含有量は、
13C−NMRを用いた方法で特定する。
【0025】
(α−オレフィン)
本発明の環状オレフィン重合体を構成する炭素数2〜20のα−オレフィンの炭素数としては特に限定されないが、有機溶剤またはエポキシ化合物への親和性、溶解性の高い環状オレフィン重合体が得られやすいという観点から、好ましくは炭素数3〜10、より好ましくは炭素数6〜10のα−オレフィンが挙げられる。
【0026】
α−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。上記のうち、炭素数6〜10のα−オレフィンが好ましく、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンがより好ましい。
【0027】
(α−オレフィンに由来する構造単位の含有量)
環状オレフィン重合体におけるα−オレフィン量は、
13C−NMRのα−オレフィンユニット由来炭素の積分値と、環構造を有する単量体由来の炭素の積分値とを用いて、各成分の導入量を算出し、その比率から重合体中の共重合組成比を算出することで特定される。
【0028】
具体的には、まず、本発明の環状オレフィン重合体において、1級炭素は全てα−オレフィンユニットに帰属する。そのため、1級炭素由来のピーク(14ppm近辺の最も高磁場に存在する)、及び、該ピークの隣に現れる、1級炭素由来のピークと同等の積分値を有する2級炭素のピークに基づき、α−オレフィンユニット由来の炭素の積分値を特定できる。
【0029】
一方、25ppmから55ppmには、α−オレフィンユニット由来の2級炭素及び3級炭素のピーク、並びに、環構造を有する単量体由来の2級炭素及び3級炭素のピークが重なり合った状態で発現する。
【0030】
なお、環構造を有する単量体に由来する構造単位の含有量は、上記の全ピークの積分値と、α−オレフィンユニット由来の積分値との差から特定できる。
【0031】
(本発明の環状オレフィン重合体の製造方法)
本発明の環状オレフィン重合体は、付加型重合体の製造方法として知られる任意の手法を採用して製造することができる。
【0032】
重合触媒としては、メタロセン系触媒を特に好適に用いることができる。本発明で重合触媒として好適に用いられるメタロセン触媒の具体的な例としては、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジメチル、ラセミ−エチリデン−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ラセミ−ジメチルシリル−ビス(2−メチル−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド、ラセミ−イソプロピリデン−ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(1−インデニル)(3−イソプロピル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランジルコニウムジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランジルコニウムジクロリド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−(3,6−ジメチルフルオレニル)シランジルコニウムジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(i−プロピル)フルオレニル]シランジルコニウムジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランジルコニウムジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[2,7−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランジルコニウムジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−(2,3,6,7−テトラメチルフルオレニル)シランジルコニウムジメチル、ラセミ−エチリデン−ビス(インデニル)チタンジクロライド、ラセミ−ジメチルシリル−ビス(2−メチル−ベンゾインデニル)チタンジクロライド、ラセミ−イソプロピリデン−ビス(テトラヒドロインデニル)チタンジクロライド、イソプロピリデン(1−インデニル)(3−イソプロピル−シクロペンタジエニル)チタンジクロライド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジクロリド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−(3,6−ジメチルフルオレニル)シランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(i−プロピル)フルオレニル]シランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[2,7−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−(2,3,6,7−テトラメチルフルオレニル)シランチタンジメチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明の環状オレフィン重合体は、上記重合触媒とともに、助触媒を使用するとより容易に得られやすい。助触媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
助触媒としては、アルキルアルミノキサンが好ましく、本発明の環状オレフィン重合体を容易に製造するに際しては、少なくも1種類の助触媒を用いる必要がある。アルキルアルミノキサンは、触媒を反応中心の環境に変え、触媒を活性化させるために有効である。
【0035】
アルキルアルミノキサンの製造方法としては、特に限定されないが、通常、アルキルアルミニウムを適度に加水分解することで得られる。アルキルアルミノキサンとしては、市販品を用いてもよい。アルキルアルミノキサンの市販品としては、例えば、MMAO−3A、TMAO−200シリーズ、TMAO−340シリーズ(いずれも東ソー・ファインケム(株)製)やメチルアルミノキサン溶液(アルベマール社製)等が挙げられる。
【0036】
その他の助触媒としては、アルキルアルミニウムを用いてもよい。アルキルアルミニウムは触媒活性を低下させる水等と反応するため、スカベンジャー(捕捉剤)として有効である。アルキルアルミニウムの具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド;ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド;ジメチルアルミニウムメトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシドが挙げられる。これらの助触媒は単独で用いてもよく、これらの助触媒のうち1以上をアルキルアルミノキサンと組み合わせて用いてもよい。
【0037】
<硬化されたエポキシ樹脂組成物を含有する接着層>
【0038】
本発明の積層体に用いられる接着層のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ化合物、エポキシ樹脂は特に限定されるものでないが、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などのエポキシ化合物、エポキシ樹脂が広範に使用できる。ここでいうエポキシ化合物とは、エポキシ基(3員環のエーテルであるオキサシクロプロパン(オキシラン))を構造式中に持つ化合物の総称であり、エポキシ樹脂とは、高分子内に残存させたエポキシ基で架橋ネットワーク化させることで硬化させることが可能な熱硬化性樹脂およびこれらを硬化させて得られる樹脂の総称である。エポキシ化合物、エポキシ樹脂は、1種単独で又は2種以上組み合わせた組成物として使用することができる。付着付与性、耐熱性の観点からは、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物のいずれかが含まれることが好ましい。
【0039】
本発明の積層体に用いられる接着層のエポキシ樹脂組成物は、密着性の観点から、各被接着層との親和性(官能基・相溶性)とともに、目的用途に適用できる機械的靭性や耐熱性を付与することができる。さらに環状オレフィン重合体ならびに環状オレフィン重合体を溶解する溶剤との親和性を高め、界面での樹脂間相溶が発生しやすし、機械的靭性と耐熱性を付与するため、数平均分子量が1,000以上であるエポキシ基数が2以上のエポキシ化合物を含むことが好ましい。加えて、数平均分子量が1,000以上であるエポキシ基数2以上のエポキシ化合物は、エポキシ樹脂組成物におけるエポキシ化合物、エポキシ樹脂の80質量部以上とすることが、環状オレフィン重合体ならびに環状オレフィン重合体を溶解する溶剤との親和性を高め、界面での樹脂間相溶を発生しやすくし、機械的靭性や耐熱性を付与する上で好ましい。なお、数平均分子量は、エポキシ化合物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解してゲル浸透クロマトグラフ(GPC)により測定し、ポリスチレン換算して求めることができる。
【0040】
本発明の積層体に用いられる接着層のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ化合物、エポキシ樹脂としてエポキシ基数1のエポキシ樹脂、エポキシ化合物を使用することができる。エポキシ基数1のエポキシ樹脂、エポキシ化合物はその化学構造に由来する各種機能(環状オレフィン重合体ならびに環状オレフィン重合体を溶解する溶剤、その他組み合わされる組成物の内容物への親和性、相溶性の向上、電気特性の調整、接着層としての表面エネルギーの調整、耐熱性の調整など)を接着層へ付与する場合に効果的に使用することができる。エポキシ基数1のエポキシ化合物は、エポキシ樹脂組成物におけるエポキシ化合物、エポキシ樹脂の50質量部未満とすることが、接着層の架橋構造の形成が阻害されることなく接着層として機能し得る強度の接着層を形成し、さらに環状オレフィン重合体との界面での樹脂間相溶が発生しうる環状オレフィン重合体ならびに環状オレフィン重合体を溶解する溶剤との親和性を得る上で好ましい。
【0041】
(芳香族エポキシ化合物)
本発明の積層体に用いられる接着層のエポキシ樹脂組成物に含有される芳香族エポキシ化合物としては構造に芳香族とエポキシ構造を有するものであれば特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フロログルシノール型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、フェニル−1,3−ジグリシジルエーテル、ビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N−[2−メチル−4−(オキシラニルメトキシ)フェニル]−N−(オキシラニルメチル)オキシランメタンアミン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0042】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”825、“jER(登録商標)”826、“jER(登録商標)”827、“jER(登録商標)”828、“jER(登録商標)”834、“jER(登録商標)”1001、“jER(登録商標)”1002、“jER(登録商標)”1003、“jER(登録商標)”1004、“jER(登録商標)”1004K、“jER(登録商標)”1004AF、“jER(登録商標)”1007、“jER(登録商標)”1009(以上三菱ケミカル社製)、“エピクロン(登録商標)”850(DIC社製)、“エポトート(登録商標)”YD−128(日鉄ケミカル&マテリアル社製)“、DER(登録商標)”−331、“DER(登録商標)”−332(ダウケミカル社製)などが挙げられる。
【0043】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては“jER(登録商標)”806、“jER(登録商標)”807、“jER(登録商標)”1750、“jER(登録商標)”4004P、“jER(登録商標)”4007P、“jER(登録商標)”4009P(以上三菱ケミカル社製)、“エピクロン(登録商標)”830(DIC社製)、“エポトート(登録商標)”YDF−170、“エポトート(登録商標)”YDF2001、“エポトート(登録商標)”YDF2004(以上日鉄ケミカル&マテリアル社製)などが挙げられる。また、アルキル置換体であるテトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、“エポトート(登録商標)”YSLV−80XY(日鉄ケミカル&マテリアル社製)などが挙げられる。
【0044】
ビスフェノールS型エポキシ樹脂としては、“エピクロン(登録商標)”EXA−1515(DIC社製)などがあげられる。
【0045】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては“jER(登録商標)”152、“jER(登録商標)”154(以上三菱ケミカル社製)、“エピクロン(登録商標)”N−740、“エピクロン(登録商標)”N−770、“エピクロン(登録商標)”N−775(以上DIC社製)などが挙げられる。
【0046】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピクロン(登録商標)”N−660、“エピクロン(登録商標)”N−665、“エピクロン(登録商標)”N−670、“エピクロン(登録商標)”N−673、“エピクロン(登録商標)”N−695(以上DIC社製)、EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−104S(以上日本化薬社製)などが挙げられる。
【0047】
その他、ビフェニル型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”XY4000、“jER(登録商標)”XY4000H、“jER(登録商標)”YL6121HA、“jER(登録商標)”YL6677(以上三菱ケミカル社製)など、ビナフチル型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピクロン(登録商標)”HP−4710(DIC社製)など、フルオレン型エポキシ樹脂の市販品としては、“OGSOL(登録商標)”PG−100、“OGSOL(登録商標)”CG−500、“OGSOL(登録商標)”EG−200、OGSOL(登録商標)”EG−280(以上大阪ガスケミカル社製)などが挙げられる。
【0048】
(脂環式エポキシ化合物)
本発明の積層体に用いられる接着層のエポキシ樹脂組成物に含有される脂環式エポキシ化合物は、分子内(一分子中)に脂環(脂肪族環)構造とエポキシ基(オキシラニル基)とを少なくとも有する化合物であれば特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物、(ii)脂環に直接単結合で結合しているエポキシ基を有する化合物等が挙げられる。
【0049】
上述の(i)脂環エポキシ基を有する化合物としては、公知乃至慣用のものの中から任意に選択して使用することができる。中でも、上記脂環エポキシ基としては、シクロヘキセンオキシド基が好ましい。
【0050】
上述の(i)脂環エポキシ基を有する化合物としては、硬化物の透明性、耐熱性の観点で、シクロヘキセンオキシド基を有する化合物が好ましく、特に、下記式(II)で表される化合物(脂環式エポキシ化合物)が好ましい。
【化2】
【0051】
上記式(II)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、炭素−炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、これらが複数個連結した基等が挙げられる。なお、式(II)におけるシクロヘキサン環(シクロヘキセンオキシド基)を構成する炭素原子の1以上には、アルキル基等の置換基が結合していてもよい。
【0052】
上記式(II)中のXが単結合である化合物としては、(3,4,3',4'−ジエポキシ)ビシクロヘキシル等が挙げられる。
【0053】
上記二価の炭化水素基としては、炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の二価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。
【0054】
上記炭素−炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基(「エポキシ化アルケニレン基」と称する場合がある)におけるアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基2−ブテニレン基ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素数2〜8の直鎖又は分岐鎖状のアルケニレン基等が挙げられる。特に、上記エポキシ化アルケニレン基としては、炭素− 炭素二重結合の全部がエポキシ化されたアルケニレン基が好ましく、より好ましくは炭素− 炭素二重結合の全部がエポキシ化された炭素数2〜4のアルケニレン基である。
【0055】
上記連結基Xとしては、特に、酸素原子を含有する連結基が好ましく、具体的には、−CO−、−O−CO−O−、−COO−、−O−、−CONH−、エポキシ化アルケニレン基;これらの基が複数個連結した基;これらの基の1又は2以上と二価の炭化水素基の1又は2以上とが連結した基等が挙げられる。二価の炭化水素基としては上記で例示したものが挙げられる。
【0056】
上記式(II)で表される化合物の代表的な例としては、下記式(II−1)〜(II−10)で表される化合物、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)エタン、1,2−エポキシ−1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)エタン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)プロパン等が挙げられる。なお、下記式(II−5)、(II−7)中のl、mはそれぞれ1〜30の整数を表す。下記式(II−5)中のRは炭素数1〜8のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。下記式(II−9)、(II−10)中のn1〜n6は、それぞれ1〜30の整数を示す。
【化3】
【化4】
【0057】
上述の(ii)脂環に直接単結合で結合しているエポキシ基を有する化合物としては、例えば、下記式(III)で表される化合物等が挙げられる。
【化5】
【0058】
式(III)中、R'は構造式上、p価のアルコールからp個の水酸基(−OH)を除いた基(p価の有機基)であり、p、nはそれぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R'(OH)p]としては、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノール等の多価アルコール(炭素数1〜15のアルコール等)等が挙げられる。pは1〜6が好ましく、nは1〜30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの( )内(外側の括弧内)の基におけるnは同一でもよいし、異なっていてもよい。上記式(III)で表される化合物としては、具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物[例えば、商品名「EHPE3150」((株)ダイセル製)等]等が挙げられる。
【0059】
本発明の積層体に用いられる接着層のエポキシ樹脂組成物に含有される脂環式エポキシ化合物は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。また、脂環式エポキシ化合物は、公知乃至慣用の方法により製造することもできるし、例えば、商品名「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2081」、「エポリードGT−401」(以上、(株)ダイセル製)等の市販品を入手することもできる。
【0060】
本発明の積層体に用いられる接着層のエポキシ樹脂組成物に含有される脂環式エポキシ化合物として、このほかにも、“エポトート(商標登録)”ST−2004、“エポトート(商標登録)”ST−2007、“エポトート(商標登録)”ST−3000(以上、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製)等の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、HP−7200、HP−7200H、HP−7200HH(以上、DIC(株)製)などのジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂や、“エポカリック(登録商標)”THI−DE、“エポカリック(登録商標)”DE−102、“エポカリック(登録商標)”DE−10(以上、JXTGエネルギー(株)製)、リモネンジオキサイド等も使用することができる。
【0061】
脂環式エポキシ化合物としては、上記式(II−1)で表される化合物[3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート;例えば、商品名「セロキサイド2021P」((株)ダイセル製)等]が特に好ましい。
【0062】
(脂肪族エポキシ化合物などその他のエポキシ樹脂、エポキシ化合物)
本発明の積層体に用いられる接着層のエポキシ樹脂組成物に含有される脂肪族エポキシ化合物などその他のエポキシ樹脂、エポキシ化合物としては特に限定されず、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、トリス(グリシジルオキシメタン)、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、グリシジルメタクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0063】
本発明の積層体に用いられる接着層のエポキシ樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で公知の硬化剤、硬化促進剤、硬化触媒、各種添加剤、溶剤を適宜配合してもよい。
【0064】
(硬化剤)
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化剤は、エポキシ化合物と反応することにより、硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させる働きを有する化合物である。硬化剤としては、エポキシ樹脂用硬化剤として公知ないし慣用の硬化剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、酸無水物類(酸無水物系硬化剤)、アミン類(アミン系硬化剤)、ポリアミド樹脂、イミダゾール類(イミダゾール系硬化剤)、ポリメルカプタン類(ポリメルカプタン系硬化剤)、フェノール類(フェノール系硬化剤)、ポリカルボン酸類、ジシアンジアミド類、有機酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0065】
(硬化促進剤)
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化促進剤は、エポキシ基を有する化合物が硬化剤と反応する際に、その反応速度を促進する機能を有する化合物である。硬化促進剤としては、公知ないし慣用の硬化促進剤を使用でき、特に限定されない。
【0066】
(硬化触媒)
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化触媒(F)は、脂環式エポキシ化合物(A)イソシアヌル酸誘導体(B)、エポキシ化合物(C)等のカチオン重合性化合物の硬化反応(重合反応)を開始及び/又は促進させることにより、硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させる働きを有する化合物である。硬化触媒(F)としては、特に限定されないが、例えば、光照射や加熱処理等を施すことによりカチオン種を発生して、重合を開始させるカチオン重合開始剤(光カチオン重合開始剤、熱カチオン重合開始剤等)や、ルイス酸・アミン錯体、ブレンステッド酸塩類、イミダゾール類等が挙げられる。
【0067】
本発明の積層体に用いられる接着層のエポキシ樹脂組成物の硬化に用いられるカチオン発生剤としては、活性エネルギー線照射または加熱によりカチオン重合を開始させる物質を放出させることが可能な化合物であれば特に限定されない。好ましくは、活性エネルギー線の照射または加熱によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩、またはその誘導体である。かかる化合物の代表的なものとしては、下記一般式、
[A]
r+[B]
r−
で表される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。ここで陽イオン[A]
r+はオニウムであることが好ましい。
【0068】
本発明の積層体に用いられる接着層のエポキシ樹脂組成物の硬化に用いられるカチオン発生剤としては、例えば、熱カチオン発生剤としては、アリールジアゾニウム塩(例えば、「PP−33」((株)ADEKA製))、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩(例えば、「FC−509」(3M社製)、「UVE1014」(GE社製)、「CP−66、CP−77」((株)ADEKA製)、「SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L」(三新化学工業社製)、アレン−イオン錯体(例えば、「CG−24−61」(BASFジャパン(株)製)等が挙げられる。その他、アルミニウムやチタンなど金属とアセト酢酸エステルまたはジケトン類とのキレート化合物とシラノールまたはフェノール類との系であってもよい。上記キレート化合物としては、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスアセト酢酸エチル等がある。シラノールまたはフェノール類としては、トリフェニルシラノールやビスフェノールS等が挙げられる。また、光カチオン発生剤としては、例えば、ヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルセネート塩等が挙げられ、より具体的には、例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(例えば、p−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等)、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のスルホニウム塩(特に、トリアリールスルホニウム塩);ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルロフェニル) ボレート、ヨードニウム[4−(4−メチルフェニル−2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェート等のヨードニウム塩;テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等のホスホニウム塩;N−ヘキシルピリジニウムテトラフルオロボレート等のピリジニウム塩等が挙げられる。また、光カチオン発生剤としては、例えば、「UVACURE1590」(ダイセル・オルネクス(株)製)、「CD−1010」、「CD−1011」、「CD−1012」(以上、米国サートマー社製)、「イルガキュア264」(BASF社製)、「CPI−100P」(サンアプロ(株)製)、「CIT−1682」(日本曹達(株)製)等の市販品を好ましく使用することもできる。
【0069】
(各種添加剤)
この他、本発明の積層体に用いられる接着層のエポキシ樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で公知の添加剤、本発明の重合体以外の樹脂を適宜配合してもよい。添加剤としては、特に限定されないが、無機フィラー、酸化防止剤などのラジカルトラップ剤、紫外線吸収剤、可塑剤、密着剤等が挙げられる。
【0070】
(溶剤)
この他、本発明の目的を阻害しない範囲で溶剤を適宜配合してもよい。溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミドなどのアミド、ラクタム系溶剤あるいは前記の溶剤を任意に混合した混合溶剤を使用できる。環境負荷低減の観点からは、シクロヘキサン系の脂肪族溶剤と、エステル系溶剤あるいはケトン系溶剤の混合物を使用することが好ましく、メチルシクロヘキサン−酢酸ブチル、メチルシクロヘキサン−酢酸ブチル−2−ブタノール、メチルシクロヘキサン−メチルエチルケトンが特に好ましい。
【0071】
本発明の積層体に用いられる接着層のエポキシ樹脂組成物は、加熱、光照射、活性エネルギー照射などの公知ないし慣用の手段で適宜硬化させることができる。
【0072】
<樹脂基材層>
本発明の積層体に用いられる樹脂基材層は、縮合型重合体からなることが好ましい。縮合型重合体としては、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリルエーテルケトン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂が好ましく、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂がより好ましく、ポリイミド樹脂がさらに好ましい。
【0073】
<積層フィルム>
本発明の積層フィルムは、本発明の積層体からなる厚さが10μm〜500μmであるフィルムをいう。
【0074】
積層フィルムや積層体の作製に用いられる溶媒は、環状オレフィン重合体を溶解できるものであれば特に限定されず、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、p−メンタン、デカヒドロナフタレン等の脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系炭化水素溶媒等が挙げられる。これらのうち、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、p−メンタン、トルエン、及びキシレンが好ましい。溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0075】
この他、本発明の目的を阻害しない範囲で公知の添加剤、本発明の重合体以外の樹脂を適宜配合してもよい。添加剤としては、特に限定されないが、無機フィラー、酸化防止剤などのラジカルトラップ剤、紫外線吸収剤、可塑剤、密着剤等が挙げられる。
【0076】
積層フィルムや積層体の作製の方法としては特に限定されず、例えば、樹脂基材層上に、有機溶剤に溶解または分散されている酸変性ポリオレフィンを塗布し、塗布した溶液から溶媒を除去し、さらに上記の環状オレフィン重合体が溶解した溶媒を塗布し、塗布した溶液から溶媒を除去し、本発明の積層フィルムや積層体を得ることができる。
【0077】
溶液の塗布方法は特に限定されず、マイクログラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。
【0078】
<金属張積層板>
本発明の金属張積層板は、本発明の積層体と、積層体の片面又は両面に設けられる金属箔層とを含む。
【0079】
(積層体)
積層体の厚さは、特に限定されない。
【0080】
(金属箔層)
本発明の金属張積層板を構成する金属箔層の材料としては、特に限定されず、配線基板において通常使用される金属であってもよく、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、等が挙げられる。本発明の金属張積層板は、電気伝導度が高く、コストが低い等の観点から、CCL(copper clad laminate)として好適に使用できるため、金属箔層の材料としては、銅が好ましい。
【0081】
金属箔層として銅箔を採用する場合、圧延銅箔や電解銅箔等を好適に使用できる。
【0082】
金属箔層として銅箔を採用する場合、高速伝送技術に好適に使用できるという観点から、低粗度の銅箔を用いることが好ましい。高粗度(粗さの程度が大きい)であると、高周波信号を伝送する際に表皮効果で導体損失が大きくなるためである。なお、本発明において「粗度」は、「JIS C 6515:1998 プリント配線板用銅はく」で説明される定義が採用される。より具体的には、10点平均粗さの最大値Rzに基づく下記分類のうち、「VL」に相当するものを低粗度の銅箔として好適に使用できる。
「S」(Standard):Rzが14μm以下である
「LS」(Low Profile):Rzが10μm以下である
「VL」(Very Low Profile):Rzが5μm以下である
【0083】
金属箔層の厚さは、特に限定されず、市販の金属箔の厚さを任意に採用できる。
【0084】
(金属張積層板の製造方法)
金属張積層板の製造方法としては、ラミネート方式、スパッタリング方式、キャスト方式、ボンディングシート等を用いた接着方式を利用できる。
【0085】
金属張積層板の別の製造方法としては、金属箔層の表面に、本発明の積層体を配置する方法が挙げられる。
【0086】
積層体と金属箔層との間には、その他の層(接着層等)が存在していてもよいし、存在していなくてもよい。必要に応じて、金属箔層の表面をキレート剤で処理して金属箔層と積層体との密着性を改善させてもよい。本発明の金属張積層板においては、積層体と金属箔層との密着性が良好であるので、金属張積層板と金属箔層とは直接接触しており、積層体と金属箔層との間に他の層等が存在していないことが好ましい。
【0087】
本発明の金属張積層板は、耐熱性、金属への接着性、及び高周波特性が要求される用途に好適に使用できる。例えば、本発明の金属張積層板は、種々の基板(プリント基板、フレキシブルプリント基板等)、金属張積層板を複数重ね合わせた多層基板、高周波用配線基板)、半導体パッケージ用配線フィルム等として好適に使用できる。
【実施例】
【0088】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0089】
用いた材料は以下の通りである。
樹脂基材:ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、Kapton 500H、125μm厚)
環状オレフィン重合体1の20%トルエン溶液(ワニス):環状オレフィン重合体1は、以下のようにして作製した。
乾燥した300mLの2口フラスコ内を窒素ガスで置換した後、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート8.1mg、トルエン235.7mL、7.5モル/Lの濃度で2−ノルボルネンを含有するトルエン溶液7.0mL、1−ヘキセン4.8mL、トリイソブチルアルミニウム2 mLを添加して、反応溶液を25℃に保持した。この溶液とは別個に、グローブボックス中で、触媒として、92.9mgの(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジメチル[(t−BuNSiMe2Flu)TiMe
2]をフラスコに入れ、5mLのトルエンに溶解させた。この触媒溶液2mLを300mLフラスコに加えて重合を開始した。2分後に2mLのメタノールを添加して反応を終了させた。次いで、得られた反応混合物を塩酸で酸性に調整した大量のメタノール中に放出して沈殿物を析出させ、濾別、洗浄後、乾燥して、2−ノルボルネン・1−ヘキセン共重合体(Nb/Hex)を4.3g得た。得られた共重合体の数平均分子量Mnは31,600、ガラス転移温度Tgは300℃、動的貯蔵弾性率(E’)は−20℃付近に転移点を有し、2−ノルボルネンの含有量は、12mol%であった。この得られた2−ノルボルネン・1−ヘキセン共重合体(Nb/Hex)に共重合体濃度が20重量%となるようにトルエンを加えて60℃で5時間加温攪拌することで、目的の環状オレフィン重合体1の20%トルエン溶液(ワニス)を得た。
【0090】
<実施例1〜8、比較例5>
表2に示す重量比で混合(実施例1、2、4は単独で使用)した付着付与剤100重量部に対して0.05質量部の光酸発生剤(CPI−100P(サンアプロ(株)製))を添加し、さらにこれを酢酸エチルで付着付与剤の濃度が30質量%となるように希釈することで得られた塗布液をポリイミドフィルムにバーコーターを用いて表2に記載の膜厚となるように塗布し、乾燥(100℃×1分)した。UV照射(100〜300mJ/cm
2)により硬化させることで、接着層/ポリイミドフィルム積層体を得た。得られた接着層/ポリイミドフィルム積層体の密着性(接着層/ポリイミドフィルム間)を後述する密着性評価試験1、2にて評価した。結果を表3に示す。なお、表2中、密着性1は密着性評価試験1の結果を、密着性2は密着性評価試験2の結果を示している。
【0091】
環状オレフィン重合体1のワニスを上記で得られた接着層/ポリイミドフィルム積層体の接着層側にバーコーターを用いて表2に記載の膜厚となるように塗布し、大気下、60〜100℃で乾燥させることで、目的の環状オレフィン重合体層/接着層/ポリイミドフィルム積層体を得た。得られた環状オレフィン重合体層/接着層/ポリイミドフィルム積層体の密着性(環状オレフィン重合体層/接着層間)後述する密着性評価試験1、2にて評価した。結果を表3に示す。なお、表3中、密着性1は密着性評価試験1の結果を、密着性2は密着性評価試験2の結果を示している。
【0092】
<比較例1>
付着付与剤分散液または溶液をポリイミドフィルムに塗布せず、直接、環状オレフィン重合体1のワニスをポリイミドフィルムにバーコーターを用いて表2に記載の膜厚となるように塗布し、大気下、60〜100℃で乾燥させることで、目的の環状オレフィン重合体層/ポリイミドフィルム積層体を得た。得られた環状オレフィン重合体層/ポリイミドフィルム積層体の密着性(環状オレフィン重合体層/ポリイミドフィルム間)を後述する密着性評価試験1、2にて評価した。結果を表3に示す。なお、表3中、密着性1は密着性評価試験1の結果を、密着性2は密着性評価試験2の結果を示している。
【0093】
<比較例2〜3>
表2に示す付着付与剤分散液をポリイミドフィルムにバーコーターを用いて表2に記載の膜厚となるように塗布し、乾燥(100℃×30秒)した。UV照射(100〜300mJ/cm
2)により硬化させることで、接着層/ポリイミドフィルム積層体を得た。得られた接着層/ポリイミドフィルム積層体の密着性(接着層/ポリイミドフィルム間)を後述する密着性評価試験1、2にて評価した。結果を表3に示す。なお、表3中、密着性1は密着性評価試験1の結果を、密着性2は密着性評価試験2の結果を示している。
【0094】
環状オレフィン重合体1のワニスを上記で得られた接着層/ポリイミドフィルム積層体の接着層側にバーコーターを用いて表2に記載の膜厚となるように塗布し、大気下、60〜100℃で乾燥させることで、目的の環状オレフィン重合体層/接着層/ポリイミドフィルム積層体を得た。得られた環状オレフィン重合体層/接着層/ポリイミドフィルム積層体の密着性(環状オレフィン重合体層/接着層間)後述する密着性評価試験1、2にて評価した。結果を表3に示す。なお、表3中、密着性1は密着性評価試験1の結果を、密着性2は密着性評価試験2の結果を示している。
【0095】
<比較例4>
実施例1〜8と同様にして表2に示す付着付与剤から得られた塗布液をポリイミドフィルムにバーコーターを用いて塗布したが、塗布液が揮発してしまい製膜できなかった。
【0096】
<密着性評価試験>
(密着性評価試験1)
温度23±5℃、相対湿度50±10%の条件下で、積層体の表面(表面が環状オレフィン重合体層の場合は環状オレフィン重合体層表面、表面が接着層の場合は接着層表面)に、30mmを超える長さのテープ(ニチバン(株)製、セロテープ(登録商標)CT405AP−24)を重ね、十分に接触させるために、指先でしっかりとテープをこすって押しつけた。テープ全体が均一に積層体表面に付着しているか確認後、5分以内に、積層体の表面に対して、できるだけ170度に近い角度でテープの端をつかみ、0.5〜1秒間で引き離した。積層体表面のテープを付着した部分を観察し、密着性を以下の基準で評価した。
【0097】
(密着性評価試験2、密着性評価試験1に比べてより厳しい試験法)
温度23±5℃、相対湿度50±10%の条件下で、積層体の表面(表面が環状オレフィン重合体層の場合は環状オレフィン重合体層表面、表面が接着層(B)の場合は接着層表面)から基材表面までの深さまで、カッターで表面に30mmの切れ目を入れ、その中央を90度で直行するように同様の切れ目を入れた。テープ(ニチバン(株)製、セロテープ(登録商標)CT405AP−24)をその表面に、切れ目の線分に対して45度になる角度で重ね、積層体表面に接触させるために、指先でしっかりとテープをこすって押しつけた。テープ全体が均一に積層体表面に付着しているか確認後、5分以内に、積層体の表面に対して、できるだけ170度に近い角度でテープの端をつかみ、0.5〜1秒間で引き離した。積層体表面のテープを付着した部分を観察し、密着性を以下の基準で評価した。
【0098】
(評価基準)
塗膜のテープ付着面積に対する残存面積の比率の範囲を目視で確認した。
◎:塗膜が90%以上残存、〇:塗膜が50%以上90%未満残存、×:塗膜が0%以上50%未満残存
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
表3に示す通り、実施例1〜8のいずれにおいても、エポキシ基数が2以上のエポキシ化合物を含み、エポキシ基数が1以下のエポキシ化合物の含有量が50質量部未満である、(有機溶剤に溶解または分散されるか無溶剤の)エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られるエポキシ樹脂を接着層とすると、密着性2の試験結果が比較例に対して改善した。特に、実施例4、5に示されている通り、数平均分子量が1,000以上であるエポキシ基数が2以上のエポキシ化合物の含有量が80質量部以上であるエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られるエポキシ樹脂を接着層とすると、密着性2の試験に耐え得る密着性が発現した。これは、数平均分子量1,000未満のエポキシ化合物を20質量部以上含むエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られるエポキシ樹脂からなる接着層に比べ、数平均分子量1,000以上であるエポキシ基数が2以上のエポキシ化合物の含有量が80質量部以上であるエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られるエポキシ樹脂を接着層とすることで、環状オレフィン重合体ならびに環状オレフィン重合体を溶解する溶剤との親和性が高くなり、界面での樹脂間相溶が発生しやすくなるためと考えられる。さらに、このことで機械的靭性と耐熱性も付与することができる。また、実施例8は、エポキシ基数1のエポキシ化合物が50質量部未満であるエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られるエポキシ樹脂を接着層とした実施例である。エポキシ基数1のエポキシ化合物が50質量部未満の組成物からなるエポキシ樹脂であれば、接着層の架橋構造の形成が阻害されることなく接着層として機能し得る強度の接着層を形成し、さらに環状オレフィン重合体との界面での樹脂間相溶が発生し得る環状オレフィン重合体ならびに環状オレフィン重合体を溶解する溶剤との親和性が得られるためと考えられる。なお、エポキシ基数1のエポキシ化合物はエポキシ基数1のエポキシ化合物の化学構造に由来する各種機能を接着層へ付与する場合に効果的な使用が期待できる。
【0103】
一方、接着層の無い比較例1においては、環状オレフィン重合体層/ポリイミドフィルム間の密着性は不良であった。これは、環状オレフィン重合体には、ポリイミドフィルムに代表される縮合型重合体に含まれる官能基と化学結合や分子間相互作用、静電相互作用等の接着要因となる結合の生成ならびに相互作用が生じないだけでなく、界面での樹脂間相溶が発生しにくいためであると考えられた。
【0104】
また、比較例2、3で示されているように、市販の環状オレフィン重合体用プライマー剤(本発明のエポキシ樹脂、エポキシ化合物に該当しないアクリル樹脂系)では、環状オレフィン重合体/接着層間の密着性1には耐え得るが、密着性2の試験に耐え得る密着性が発現されなかった。これは、アクリル樹脂系の環状オレフィン重合体用プライマー剤は、環状オレフィン重合体やポリイミド基材への親和性が低く、特に環状オレフィン重合体との界面における樹脂間相溶が発生しにくいからであると考えられた。
【0105】
さらに、比較例4、5で示されているように、エポキシ基数が1であるエポキシ化合物を50質量部以上含む組成物からなるエポキシ樹脂は、製膜できないか(比較例4:揮発)、密着性1および2の試験に耐えうる密着性が発現されなかった(比較例5:硬化処理後の接着剤層の塗膜強度が不充分のため接着剤層が脆性破壊された)。