特開2021-134656(P2021-134656A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クラレの特許一覧
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-134656(P2021-134656A)
(43)【公開日】2021年9月13日
(54)【発明の名称】土木用防水シート
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/38 20060101AFI20210816BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20210816BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20210816BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20210816BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20210816BHJP
【FI】
   E21D11/38 A
   C08L23/08
   C08L101/00
   B32B27/28 101
   B32B27/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2021-16931(P2021-16931)
(22)【出願日】2021年2月4日
(31)【優先権主張番号】特願2020-32143(P2020-32143)
(32)【優先日】2020年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠戸 一正
(72)【発明者】
【氏名】川井 弘之
(72)【発明者】
【氏名】片山 隆
(72)【発明者】
【氏名】頼光 周平
(72)【発明者】
【氏名】川島 則子
(72)【発明者】
【氏名】小西 大輔
(72)【発明者】
【氏名】矢口 直幸
(72)【発明者】
【氏名】小島 謙一
【テーマコード(参考)】
2D155
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
2D155BA01
2D155BA05
2D155CA04
2D155HA01
2D155HA02
2D155KB11
2D155LA02
4F100AA20B
4F100AA20H
4F100AK01C
4F100AK03A
4F100AK08A
4F100AK12A
4F100AK28A
4F100AK68A
4F100AK68B
4F100AL09A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100DE01B
4F100GB07
4F100JA07A
4F100JB07
4F100JB16A
4F100JJ04A
4F100JK07A
4F100JL11
4J002AA01X
4J002AC08X
4J002BB05X
4J002BB06W
4J002BB15X
4J002BB18X
4J002BP01X
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】−10℃程度の低温下においても十分な強度や伸びを有し、且つトンネル等の構造物に対して優れた接着性を有する土木用防水シートを提供する。
【解決手段】エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)及び前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)以外の熱可塑性樹脂(a2)を含有する組成物からなる層(A)と、シリカを含有するシリカ含有層とを有する土木用防水シートであって、
前記組成物中の前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)の含有量が30〜95質量%であり、前記熱可塑性樹脂(a2)の含有量が5〜70質量%であり、
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)のSP値と、前記熱可塑性樹脂(a2)のSP値との差の絶対値が0.70(cal/cm31/2未満である、土木用防水シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)及び前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)以外の熱可塑性樹脂(a2)を含有する組成物からなる層(A)と、シリカを含有するシリカ含有層とを有する土木用防水シートであって、
前記組成物中の前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)の含有量が30〜95質量%であり、前記熱可塑性樹脂(a2)の含有量が5〜70質量%であり、
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)のSP値と、前記熱可塑性樹脂(a2)のSP値との差の絶対値が0.70(cal/cm31/2未満である、土木用防水シート。
【請求項2】
前記層(A)を23℃のトルエンに1分間浸漬した場合の質量変化率が0.6〜5.0%である、請求項1に記載の土木用防水シート。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(a2)は、−10℃における引張伸度が500%以上である、請求項1又は2に記載の土木用防水シート。
【請求項4】
前記組成物中において、酢酸ビニルに由来する構造単位の含有率が5質量%以上、30質量%未満である、請求項1〜3のいずれかに記載の土木用防水シート。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂(a2)が熱可塑性エラストマー樹脂又はポリオレフィン系樹脂である、請求項1〜4のいずれかに記載の土木用防水シート。
【請求項6】
前記熱可塑性エラストマー樹脂は、スチレン系エラストマー又はオレフィン系エラストマーである、請求項5に記載の土木用防水シート。
【請求項7】
更に、合成樹脂を含有する層(B)を有し、前記層(B)と前記層(A)とが隣接している、請求項1〜6のいずれかに記載の土木用防水シート。
【請求項8】
前記合成樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体である、請求項7に記載の土木用防水シート。
【請求項9】
土木用防水シートの−10℃における引張破断伸度が480%以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の土木用防水シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等の土木工事に際して地盤からトンネル内部等への漏水を防止するための土木用防水シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市部の地下トンネル工事に際しては、地盤からトンネル内部への漏水を防止するために、ゴム製や合成樹脂製の防水シートが用いられてきた。具体的に特許文献1には塩化ビニル系やオレフィン系の熱可塑性樹脂で構成された防水シートが提案されている。また、特許文献2にはエチレン−酢酸ビニル共重合体で構成された防水シートが提案されており、特許文献3にはエチレン−プロピレンランダム共重合体で構成された防水シートが、それぞれ提案されている。
【0003】
しかしながら、これらの防水シートはいずれもその内側に構築されるコンクリート構造物とは密着しないため、地山や地盤から浸み出した水が防水シートとコンクリート構造物との間の空隙を伝って移動して、防水シートの接合不良部や破れ部からコンクリート構造物の亀裂を通じて、構造物内部へ浸入して漏水するという問題点があった。
【0004】
この問題に対して特許文献4には、コンクリート構造物と地盤との間に設置し、施工後にコンクリート構造物と化学的に密着することにより、防水シートとコンクリート構造物との間の水走りを防ぐ接着性防水シートが提案されており、防水シートを構成する材料として、エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が用いられている。
また、特許文献5には、二酸化珪素の含有量が90質量%以上のシリカを30〜200mg/cm3の割合で含有するシリカ含有表層を有する合成樹脂製の防水シートが提案されている。
なお、特許文献4及び特許文献5には、それぞれエチレン−酢酸ビニル共重合体等と他の樹脂とを混合して用いてもよいことが記載されているが、混合に際して各樹脂同士の相溶性が特定の関係を満たすように用いることについては記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3298306号公報
【特許文献2】特開2001−115791号公報
【特許文献3】特開平9−52330号公報
【特許文献4】特開2002−294015号公報
【特許文献5】国際公開第2007/142200号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献4及び特許文献5に記載された発明によれば、地盤から浸み出した水がコンクリート構造物の内部へ浸入して漏水することを防ぐことができる。しかしながら、近年、トンネル等の地下構造物は大深度に建設されることが多く、染み出す水の圧力が高いため、防水シートについてはより一層伸びや強度に優れていることが求められている。また、特に温度条件について厳しい基準を採用する道路用のトンネル等においては低温(例えば−10℃程度)の環境下でも従来と同等以上の性能を発揮することが求められているため、更なる改善が求められている。
【0007】
本発明は前記従来の課題を鑑みてなされたものであって、−10℃程度の低温下においても十分な強度や伸びを有し、且つトンネル等の構造物に対して優れた接着性を有する土木用防水シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、エチレン−酢酸ビニル共重合体と、エチレン−酢酸ビニル共重合体以外の熱可塑性樹脂とを特定の含有量で用い、且つ両者の相溶性の基準となるSP値の差の絶対値が特定の範囲内になるように調整することにより、前記課題を解決できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下[1]〜[9]に関する。
[1]エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)及び前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)以外の熱可塑性樹脂(a2)を含有する組成物からなる層(A)と、シリカを含有するシリカ含有層とを有する土木用防水シートであって、前記組成物中の前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)の含有量が30〜95質量%であり、前記熱可塑性樹脂(a2)の含有量が5〜70質量%であり、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)のSP値と、前記熱可塑性樹脂(a2)のSP値との差の絶対値が0.70(cal/cm31/2未満である、土木用防水シート。
[2]前記層(A)を23℃のトルエンに1分間浸漬した場合の質量変化率が0.6〜5.0%である、[1]に記載の土木用防水シート。
[3]前記熱可塑性樹脂(a2)は、−10℃における引張伸度が500%以上である、[1]又は[2]に記載の土木用防水シート。
[4]前記組成物中において、酢酸ビニルに由来する構造単位の含有率が5質量%以上、30質量%未満である、[1]〜[3]のいずれかに記載の土木用防水シート。
[5]前記熱可塑性樹脂(a2)が熱可塑性エラストマー樹脂又はポリオレフィン系樹脂である、[1]〜[4]のいずれかに記載の土木用防水シート。
[6]前記熱可塑性エラストマー樹脂は、スチレン系エラストマー又はオレフィン系エラストマーである、[5]に記載の土木用防水シート。
[7]更に、合成樹脂を含有する層(B)を有し、前記層(B)と前記層(A)とが隣接している、[1]〜[6]のいずれかに記載の土木用防水シート。
[8]前記合成樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体である、[7]に記載の土木用防水シート。
[9]土木用防水シートの−10℃における引張破断伸度が480%以上である、[1]〜[8]のいずれかに記載の土木用防水シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、−10℃程度の低温下においても十分な強度や伸びを有し、且つトンネル等の構造物に対して優れた接着性を有する土木用防水シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[土木用防水シート]
本発明の土木用防水シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)及び前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)以外の熱可塑性樹脂(a2)(以下、単に「熱可塑性樹脂(a2)」ともいう)を含有する組成物からなる層(A)と、シリカを含有するシリカ含有層とを有する土木用防水シートであって、前記組成物中の前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)の含有量が30〜95質量%であり、前記熱可塑性樹脂(a2)の含有量が5〜70質量%であり、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)のSP値と、前記熱可塑性樹脂(a2)のSP値との差の絶対値が0.70(cal/cm31/2未満であることを特徴とするものである。
なお、本発明においてSP値(溶解度パラメータ)は、D.W.Van Krevelenの推算法に基づき計算されるものであり、前記推算法は凝集エネルギー密度とモル分子容とを基に計算されるものである(D.W. Van Krevelen, Klaas te Nijenhuis, "Properties of Polymers, Fourth Edition" Elsevier Science, 2009)。
【0012】
本発明においては、層(A)を構成する組成物中、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)の含有量を30〜95質量%、前記熱可塑性樹脂(a2)の含有量を5〜70質量%にそれぞれ調整しているため、−10℃程度の低温下においても土木用防水シートの伸びが向上し、且つトンネル等の構造物に対する接着性も向上する。この観点から前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)の含有量は、35〜95質量%であることが好ましく、40〜90質量%であることが更に好ましく、42〜85質量%であることがより更に好ましい。
一方、前記熱可塑性樹脂(a2)の含有量は、5〜65質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、15〜58質量%であることが更に好ましい。
【0013】
また、本発明は前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)のSP値と、前記熱可塑性樹脂(a2)のSP値との差の絶対値が0.70(cal/cm31/2未満であることを特徴とする。SP値の差の絶対値が、0.70(cal/cm31/2以上であると、エチレン−酢酸ビニル共重合体と熱可塑性樹脂との相溶性が悪くなり、その結果−10℃程度の低温下での伸びが悪化する。低温下においても優れた伸びを示す土木用防水シートを得る観点から、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)のSP値と、前記熱可塑性樹脂(a2)のSP値との差の絶対値は、0.60(cal/cm31/2以下であることが好ましく、0.50(cal/cm31/2以下であることがより好ましく、0.40(cal/cm31/2以下であることが更に好ましく、0.35(cal/cm31/2以下であることがより更に好ましく、0.30(cal/cm31/2以下であることがより更に好ましい。SP値の差の絶対値が前記範囲内であると、エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)と熱可塑性樹脂(a2)との相溶性が向上し、微細な海島構造を形成するようになり、その結果、土木用防水シートの伸びが向上し、防水性も向上すると推測される。
なお、複数のエチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)、複数の熱可塑性樹脂(a2)をそれぞれ用いる場合は、各エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)と各熱可塑性樹脂(a2)との差の絶対値を全て計算し、その中から最も値が大きいものを前記「差の絶対値」とする。
【0014】
また本発明においては、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)における加重平均を考慮したSP値と、前記熱可塑性樹脂(a2)における加重平均を考慮したSP値との差の絶対値は、前記と同様の観点から、0.70(cal/cm31/2未満であることが好ましく、0.60(cal/cm31/2以下であることがより好ましく、0.50(cal/cm31/2以下であることが更に好ましく、0.10(cal/cm31/2以下であることがより更に好ましい。
【0015】
更に本発明においては、前記組成物中において最大のSP値を有する樹脂と最小のSP値を有する樹脂とのSP値の差の絶対値は、前記と同様の観点から、0.70(cal/cm31/2未満であることが好ましく、0.60(cal/cm31/2以下であることがより好ましく、0.50(cal/cm31/2以下であることが更に好ましく、0.40(cal/cm31/2以下であることがより更に好ましい。
【0016】
<層(A)を構成する組成物>
本発明の土木用防水シートを構成する層(A)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)と、エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)以外の熱可塑性樹脂(a2)とを含有する組成物からなる。
【0017】
〔エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)〕
層(A)に用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)としては、共重合体中の酢酸ビニル由来の構造単位の含有率(VA率)が、5〜55質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル由来の構造単位の含有率が前記範囲内であると、低温下における引張伸度が向上する。
【0018】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)のSP値は、4.0〜10.0(cal/cm31/2であることが好ましく、5.0〜9.5(cal/cm31/2であることがより好ましく、6.0〜9.0(cal/cm31/2であることが更に好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)のSP値が前記範囲内であると、前記SP値の差の絶対値を前記範囲内に調整しやすくなり、熱可塑性樹脂(a2)との相溶性を向上させやすくなる。
【0019】
エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)のMFR(メルトフローレート)は、0.5〜20.0g/10分であることが好ましく、1.0〜10.0g/10分であることがより好ましく、1.2〜5.0g/10分であることが更に好ましい。MFRが前記範囲内であると、低温下においても優れた応力を有する土木用防水シートを得ることができる。
【0020】
エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)の−10℃における引張伸度は200%以上であることが好ましい。−10℃における引張伸度が前記下限値以上であると、低温下においても十分な伸度を有することになり、施工中にエチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)を含有する土木用防水シートが破れにくくなる。この観点から、−10℃における引張伸度は、250%以上であることがより好ましく、300%以上であることが更に好ましい。
なお、本明細書におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)の引張伸度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0021】
なお、本発明で用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)には、エチレンと酢酸ビニルの他、酢酸ビニルの一部を加水分解して生成したビニルアルコールを含む共重合体も本願のエチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)に含まれる。この場合の酢酸ビニル含有率は、共重合体中の酢酸ビニルとビニルアルコールとの合計の量と定義し、酢酸ビニル含有率を規定する。
【0022】
本発明に用いることができるエチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)の市販品としては、例えば、三井・デュポンポリケミカル株式会社製「エバフレックス」(商品名、登録商標)、東ソー株式会社製「ウルトラセン」(商品名、登録商標)、宇部興産株式会社製「UBEポリエチレン」(商品名、登録商標)、旭化成ケミカルズ株式会社製「サンテック」(商品名、登録商標)、株式会社NUC製「エチレン酢酸ビニルコポリマー NUC」(銘柄)等が挙げられる。
【0023】
〔エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)以外の熱可塑性樹脂(a2)〕
本発明における層(A)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)以外の熱可塑性樹脂(a2)としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体との相溶性を向上させる観点から、熱可塑性エラストマー樹脂又はポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
前記熱可塑性エラストマー樹脂としては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ジエン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、フッ素樹脂系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
本発明においては、これらの熱可塑性エラストマーの中でも、物性及び加工性のバランス等の観点から、特にスチレン系エラストマー又はオレフィン系エラストマーが好ましい。
前記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレンが挙げられる。これらの中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)との相溶性を向上する観点から、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0024】
スチレン系エラストマーは、芳香族ビニル系重合体ブロック(ハードセグメント)とゴムブロック(ソフトセグメント)とを有し、芳香族ビニル系重合体部分が物理架橋を形成し、一方、ゴムブロックが弾性を付与するものである。
芳香族ビニル系重合体ブロックを形成する芳香族ビニル系化合物の例としては、スチレン;α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、o−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−シクロヘキシルスチレン等の核アルキル置換スチレン;o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、2−メチル−4−クロロスチレン等の核ハロゲン化スチレン;1−ビニルナフタレン等のビニルナフタレン誘導体;インデン誘導体;ジビニルベンゼン等が挙げられる。
これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレン、及びp−メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
このスチレン系エラストマーは、その中のソフトセグメントの配列様式により、(β−ファルネセン)−スチレン−ブタジエン−スチレン−(β−ファルネセン)共重合体(FSBSF)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−ブロック共重合体(SEPS)、ポリブタジエンとブタジエン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体を水添して得られる結晶性ポリエチレンとエチレン/ブチレン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体、ポリブタジエン又はエチレン−ブタジエンランダム共重合体とポリスチレンとのブロック共重合体を水添して得られる、例えば、結晶性ポリエチレンとポリスチレンとのジブロック共重合体等がある。
【0026】
これらの中で、機械的強度、耐熱安定性、耐候性、耐薬品性、ガスバリア性、柔軟性、加工性等の点から、(β−ファルネセン)−スチレン−ブタジエン−スチレン−(β−ファルネセン)共重合体(FSBSF)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、及びスチレン−エチレン/プロピレン−ブロック共重合体(SEPS)が好ましく、(β−ファルネセン)−スチレン−ブタジエン−スチレン−(β−ファルネセン)共重合体(FSBSF)、及びスチレン−エチレン/プロピレン−ブロック共重合体(SEPS)がより好ましい。また、トンネル等の構造物に対して優れた接着性を有する観点から、スチレン系エラストマーは、(β−ファルネセン)−スチレン−ブタジエン−スチレン−(β−ファルネセン)共重合体(FSBSF)及びスチレン−エチレン/プロピレン−ブロック共重合体(SEPS)の混合物であってもよい。これらのスチレン系エラストマーにおけるスチレンブロックの含有量は、10〜70質量%であることが好ましく、12〜40質量%であることがより好ましい。
【0027】
オレフィン系エラストマーとしては、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリプロピレン(PP)の中に、エチレン−プロピレンゴム(EPDM,EPM)を微分散させた熱可塑性エラストマー等が好ましい。
【0028】
前記熱可塑性樹脂(a2)の重量平均分子量については特に制限はないが、機械的特性、及び成形性等の面から、5,000以上であることが好ましく、7,000以上であることが好ましい。また、前記熱可塑性樹脂(a2)の重量平均分子量は250,000以下であることが好ましく、200,000以下であることがより好ましく、150,000以下であることが更に好ましく、120,000以下であることが特に好ましい。
なお、本明細書において重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。具体的には、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0029】
前記熱可塑性樹脂(a2)のSP値は、6.0〜10.0(cal/cm31/2であることが好ましく、7.0〜9.5(cal/cm31/2であることがより好ましく、8.0〜9.0(cal/cm31/2であることが更に好ましい。熱可塑性樹脂(a2)のSP値が前記範囲内であると、エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)との相溶性が向上する。
【0030】
前記熱可塑性樹脂(a2)の−10℃における引張伸度は500%以上であることが好ましい。−10℃における引張伸度が前記下限値以上であると、低温下においても十分な伸度を有することになり、施工中に熱可塑性樹脂(a2)を含有する土木用防水シートが破れにくくなる。この観点から、−10℃における引張伸度は、520%以上であることがより好ましく、540%以上であることが更に好ましく、560%以上であることがより更に好ましい。
なお、本明細書における熱可塑性樹脂(a2)の引張伸度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0031】
〔その他の成分〕
層(A)を構成する組成物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)、エチレン−酢酸ビニル共重合体以外の熱可塑性樹脂(a2)の他に、炭酸カルシウム等の無機充填物、顔料、難燃剤、及び可塑剤等のその他の成分を含んでもよい。
層(A)を構成する組成物がその他の成分を含有する場合、その含有量は組成物中、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
その他の成分の含有量が前記上限値以下であると、相対的にエチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体以外の熱可塑性樹脂(a2)の量が多くなるため、低温下における引張伸度を向上させやすくなる。
【0032】
<層(A)の製造方法>
本発明において層(A)を製造する方法は特に限定されない。一般的には、熔融押出ししてTダイでシート状にする方法やカレンダーロールでシート化する方法が挙げられる。
【0033】
<層(A)の特性>
前記層(A)に用いる組成物中の酢酸ビニルに由来する構造単位の含有率(VA率)は、5〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましく、5質量%以上、30質量%未満であることが更に好ましく、7質量%以上、30質量%未満であることがより更に好ましい。前記組成物中の酢酸ビニルに由来する構造単位の含有率が前記範囲内であると、低温下における引張伸度が向上する。
【0034】
前記層(A)を23℃のトルエンに1分間浸漬した場合の質量変化率は0.6〜5.0%であることが好ましい。前記質量変化率が前記範囲内であるとモルタル接着性を向上できる。この観点から、前記質量変化率は、0.7〜4.0%であることが好ましく、0.8〜3.0%であることがより好ましく、0.8〜2.0%であることが更に好ましい。
なお、前記質量変化率は実施例に記載の方法で測定することができる。
【0035】
前記層(A)の厚みは、0.01〜0.8mmであることが好ましい。層(A)の厚みが前記範囲内であると、強度を維持しつつ引張応力や伸びも向上させることができる。これらの観点から、層(A)の厚みは、0.05〜0.5mmであることが好ましく、0.07〜0.4mmであることがより好ましい。
【0036】
<シリカ含有層>
本発明の土木用防水シートは、前記層(A)の他に、シリカを含有するシリカ含有層を有するものである。シリカ含有層は、本発明の土木用防水シートにおいて、コンクリート構造物との接着面に設けられるものであり、土木用防水シートとコンクリート構造物との貼り合わせに際して、コンクリート中の水硬化反応により強固に密着させることが可能になる。
シリカ含有層に用いるシリカとしては、シリカ含有層とコンクリート構造物との接着性を向上させる観点から、二酸化珪素の含有量が90質量%以上であるものが好ましく、92質量%以上であるものがより好ましい。
また、シリカとしては、BET比表面積が80m2/g以上であることが好ましく、90m2/g以上であることがより好ましい。シリカのBET比表面積が80m2/g以上であると、シリカ含有層とコンクリート構造物との接触面積が向上するため接着力が向上する。
【0037】
また、シリカ含有層中のシリカの含有割合は、0.1〜20g/m2であることが好ましく、0.15〜10g/m2であることがより好ましく、0.25〜3g/m2であることが更に好ましい。シリカ含有層中のシリカの含有割合が前記範囲内であると、シリカ含有層とコンクリート構造物との接点が増加するため、土木用防水シートとコンクリート構造物とがより強固に接着するようになる。
なお、シリカ含有層を構成する樹脂の量に対するシリカの量の質量比[シリカの量/樹脂の量]は、10/90〜90/10であることが好ましく、30/70〜70/30であることがより好ましい。
【0038】
本発明に用いるシリカは、湿式法、乾式法、電弧法等により製造したシリカを用いることができるが、シリカ含有層とコンクリート構造物との接着性を向上させる観点から、湿式法で製造されたものが好ましい。
【0039】
シリカ含有層を構成する樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体を用いる場合、酢酸ビニルに由来する構造単位の含有割合は、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは35質量%以上である。酢酸ビニルに由来する構造単位の量が前記下限値以上であると、コンクリート構造物との密着性が向上する。
【0040】
本発明の土木用防水シートの製造方法としては、前記層(A)を構成する樹脂に対して溶解作用を示す有機溶媒に対して前記シリカを分散させたシリカ分散液を調製した後、これを前記層(A)に塗布し、その後、加熱乾燥することにより形成する方法を挙げることができる。
前記シリカ分散液の調製に用いる有機溶媒としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0041】
前記層(A)に対する前記分散液の塗布量は、通常、2〜200g/m2であることが好ましく、3〜100g/m2であることがより好ましく、5〜30g/m2であることが更に好ましい。塗布量が前記範囲内であると、加工性及びシリカ含有層の強度が確保される。
【0042】
また、他の製造方法としては、シリカ含有層を構成する樹脂組成物と、層(A)を構成する樹脂組成物とを共押出成形又は共カレンダー成形することにより製造する方法も挙げることができる。
【0043】
シリカ含有層の厚みは、2〜100μmであることが好ましい。シリカ含有層の厚みが前記範囲内であるとシリカ含有層の強度が向上し、コンクリート構造物との接着強度が向上する。この観点から、シリカ含有層の厚みは、5〜50μmであることが好ましく、8〜20μmであることが更に好ましい。
【0044】
<層(B)>
本発明の土木用防水シートは前記層(A)及びシリカ含有層のみからなってもよいが、土木用防水シートの強度を高くすると共に、防水性を向上させることを目的として、前記層(A)及びシリカ含有層以外に、更に合成樹脂を含有する層(B)を有することが好ましく、土木用防水シートの防水性をより向上させる観点から、前記層(B)と前記層(A)とが隣接していることが好ましく、前記層(B)、前記層(A)、及び前記シリカ含有層をこの順に有していることがより好ましい。
層(B)を構成する合成樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ECB(エチレン・コポリマー・ビチューメン)、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂等から選ばれる1種以上を用いることができるが、低温下における引張伸度を向上させる観点、押出し機やカレンダーロール等での加工が容易である観点、酢酸ビニル基の含有量での物性を調整しやすい観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。
【0045】
層(B)の厚みは、0.1〜2.0mmであることが好ましい。層(B)の厚みが前記範囲内であると土木用防水シートの強度及び防水性が向上する。これらの観点から、層(B)の厚みは、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.3〜0.8mmであることが更に好ましい。
【0046】
<土木用防水シートの引張伸度>
本発明の土木用防水シートは、−10℃における引張伸度が480%以上であることが好ましい。−10℃における引張伸度が前記下限値以上であると、低温下においても十分な伸度を有することになり、施工中に土木用防水シートが破れにくくなる。この観点から、−10℃における引張伸度は、500%以上であることがより好ましく、520%以上であることが更に好ましく、540%以上であることがより更に好ましい。
なお、本明細書における土木用防水シートの引張伸度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0047】
<土木用防水シートの引張応力>
本発明の土木用防水シートは、−10℃における引張応力が25MPa以上であることが好ましい。−10℃における引張応力が前記下限値以上であると、低温下においても十分な強度を有することになり、土木用防水シートの防水性が向上すると共に、施工中に破れにくくなる。この観点から、−10℃における引張応力は、30MPa以上であることがより好ましく、35MPa以上であることが更に好ましく、40MPa以上であることがより更に好ましい。
なお、本明細書における土木用防水シートの引張応力は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
<熱可塑性樹脂(a2)の重量平均分子量の測定方法>
熱可塑性樹脂(a2)の重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求めた。測定装置及び条件は、以下の通りである。
・装置 :東ソー株式会社製 GPC装置「HLC−8320GPC」
・分離カラム :東ソー株式会社製 カラム「TSKgelSuperHZ4000」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :0.7mL/min
・サンプル濃度:5mg/10mL
・カラム温度 :40℃
【0050】
<エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)及び熱可塑性樹脂(a2)の−10℃条件下における引張伸度>
エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)又は熱可塑性樹脂(a2)からなる縦10m、横30cm、厚み0.8mmのシートを作製した。得られたシートを用いてJIS K7161−1:2014に記載の方法に基づいて伸びを測定した。
【0051】
<層(A)のトルエン浸漬時の質量変化率>
JIS K7114:2001に記載の方法に基づいて測定した。具体的には、得られた層(A)を23℃のトルエンに1分間浸漬し、その後、乾燥させた層(A)の質量と処理前の層(A)とから質量変化率を算出した。
【0052】
<土木用防水シートの−10℃条件下における引張試験>
JIS K7161−1:2014に記載の方法に基づいて応力及び伸度を測定した。
【0053】
<土木用防水シートのモルタル接着性>
(i)普通ポルトランドセメント〔太平洋セメント株式会社製の普通ポルトランドセメント〕と、乾燥させた豊浦標準砂を、砂:セメント=2:1(質量比)の割合でよく混合し、それに水0.5質量部を加えてよく撹拌してモルタル液を調製した。
(ii)防水シートから、長さ方向に沿って幅×長さ=4cm×16cmの長方形の試験片を切断・採取し、この試験片を、幅×長さ×深さ=4cm×16cm×4cmの型枠の底に、モルタルを接着させる面を上に向けて敷設し、その上から上記(i)で調製したモルタル液を流し込み、撹拌・振動によりモルタル中の気泡を抜いた後、水分が蒸発しないように金型ごと密閉容器内に入れて、20℃にて28日間養生した。
(iii)養生完了後、防水シートの接着したモルタル片を金型から取り出して、防水シートの接着した面を上にし、防水シートの長さ方向の一方の端部をモルタル片から2cm剥がし、その剥がした端部の幅方向に沿ってポリエステル製帆布(株式会社クラレ製)「E5基布」よりなる片(幅×長さ=4cm×20cm)をホッチキスで外れないように強固に接続した。その後、180°の角度で、10mm/minの速度で、シートの長さ方向に2cm剥離が進むまで剥がし(但しポリエステル製帆布片を接続するために剥離した長さ部分は除く)、その際に応力を継続して測定し、2cmの剥離が終了した後に平均剥離強力(N)をチャートから算出した。試験片の幅が4cmであることから前記で算出した値を4で除して幅1cm当たりの剥離時の応力(N/cm)を求めた。1つの防水シートにつき3枚の試験片を切断・採取して、上記と同じ試験を行って、3枚の試験片の平均値をモルタル接着力とした。
【0054】
<製造例1>
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)61.1g(sec−ブチルリチウム6.42g)を仕込み、50℃に昇温した後、スチレン0.81kgを加えて1時間重合させ、引き続いてイソプレン10.87kgを加えて2時間重合を行い、更にスチレン0.81kgを加えて1時間重合することにより、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、重量平均分子量が7,900のスチレン−イソプレン−スチレン−トリブロック共重合体の水素添加物である、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン−トリブロック共重合体(a−I)を得た。
また(a−I)と同様に、窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)420.0g(sec−ブチルリチウム44.1g)を仕込み、50℃に昇温した後、スチレン2.83kgを加えて1時間重合させ、引き続いてイソプレン19.81kgを加えて2時間重合を行い、スチレン−イソプレン ジブロック共重合体を含む反応液を得た。この反応液に、(a1)と同様に水素添加を行い、重量平均分子量が39,000のスチレン−イソプレン−ジブロック共重合体の水素添加物である、スチレン−エチレン/プロピレン−ジブロック共重合体(a−II)を得た。
上記で得られた(a−I)および(a−II)をコぺリオン社製に軸押出機ZSK26MagaCopounder(L/D=54)を用いてスクリュー300rpm、混練温度200℃にて溶融混練してスチレン−エチレン/プロピレン−ブロック共重合体の組成物(以下「SEPS」、又は「スチレン系エラストマー1」ともいう。)を得た。
得られたスチレン系エラストマー1について、物性を測定した。結果を表1に表す。
【0055】
<製造例2>
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)0.1905kg、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン0.40kgを仕込み、50℃に昇温した後、β−ファルネセン6.34kgを加えて2時間重合を行い、引き続いてスチレン2.50kgを加えて1時間重合させ、更にブタジエン3.66kgを加えて1時間重合を行った。続いてこの重合反応液にカップリング剤としてジクロロジメチルシラン0.02kgを加え1時間反応させることで、ポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン−ポリ(β−ファルネセン)ペンタブロック共重合体を含む反応液を得た。
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、重量平均分子量が102,000のポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン−ポリ(β−ファルネセン)ペンタブロック共重合体の水素添加物(以下「FSBSF」、又は「スチレン系エラストマー2」ともいう。)を得た。
得られたスチレン系エラストマー2について、物性を測定した。結果を表1に表す。
【0056】
実施例及び比較例で使用した原料は以下のとおりである。
【表1】
【0057】
<実施例1>
層(A)として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)と熱可塑性樹脂(a2)とを表2に記載の配合にしたがって混練し、エチレン−酢酸ビニル共重合体(a1)は、シリンダー温度190℃、スクリュー回転80rpmでGM30−28単軸押出機(GMエンジニア社製)、熱可塑性樹脂(a2)は、シリンダー温度190℃、スクリュー回転数40rpmでGM25−25単軸押出機(GMエンジニア社製)により溶融させ、T型ダイス T300(ハンガーコートダイ、リップ面長300mm、GMエンジニア社製)より押出して、厚さ0.16mmの層(A)及び厚さ0.64mmの層(B)が積層された、幅30cm、厚さ0.8mmの積層シートを得た。続いて、該積層シートを引取りロール(株式会社東洋精機製作所製、バックロール:直径110、L350mm、タッチロール:直径130、L350mm)で巻き取った。
シリカ5質量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体6質量部、トルエン89質量部、を混合し、十分に撹拌して、シリカ分散液を調製した。シリカとしては、東ソー・シリカ株式会社製「ニップシールE200A」(二酸化珪素の含有量=93質量%、BET比表面積=140m2/g)を用いた。エチレン−酢酸ビニル共重合体としては三井・ダウ ポリケミカル株式会社製「エバフレックスEV45LX」(メルトマスフローレート=2.5g/10min、酢酸ビニル含量=46質量%、)を用いた。
層(A)及び層(B)を有する積層シートの層(A)側の表面に、前記シリカ分散液を10g/m2の割合でグラビアロールにて塗布した後、130℃で1分間加熱して乾燥した。この塗布・乾燥操作を3回繰り返し、層(B)/層(A)/シリカ含有層(厚さ12μm)の順で積層された厚さ0.8mmの土木用防水シートを作製した。
【0058】
<実施例2〜13、比較例1〜2>
各層の配合を表2に記載のとおり変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で土木用防水シートを得た。各評価結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2の結果からわかるように本発明の土木用防水シートは、−10℃程度の低温下においても十分な強度や伸びを有し、且つトンネル等の構造物に対して優れた接着性を有することが分かる。