【解決手段】心膜開窓用カテーテル1は、シャフト10と、シャフト10の先端部に設けられる第1のバルーン20と、シャフト10のうち第1のバルーン20の基端側に隣接して設けられ、縮径した状態から拡径した状態に変形可能な拡張部材30と、を備える。拡張部材30は、20mm以上に拡径可能であることが好ましい。また、軸方向について、第1のバルーン20が膨張した状態でシャフト10の先端から第1のバルーン20の基端側の端部までの長さが30mm以下であることが好ましい。
軸方向について、前記第1のバルーンが膨張した状態で前記シャフトの先端から前記第1のバルーンの基端側の端部までの長さが30mm以下である請求項1又は2に記載の心膜開窓用カテーテル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、バルーン等の拡張具を備えるカテーテルを用いて心膜の開窓を行う場合には、心膜の開口部に拡張具(バルーン)を配置した状態で拡張(膨張)させる必要があり、拡張具の位置決めは、超音波やX線による透視下であっても困難である。また、拡張具(バルーン)が適切に配置されていないと、拡張(膨張)の途中で拡張具(バルーン)が心膜の開口部から外れてしまい、想定外の場所で拡張具(バルーン)を拡張(膨張)させてしまうおそれがある。
【0006】
従って、本発明は、位置決めが容易で心膜開窓の際の安全性が高い心膜開窓用カテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、心膜の開窓に用いられるカテーテルであって、シャフトと、前記シャフトの先端部に設けられる第1のバルーンと、前記シャフトのうち前記第1のバルーンの基端側に隣接して設けられ、縮径した状態から拡径した状態に変形可能な拡張部材と、を備え、前記拡張部材は、拡径した状態で軸方向の長さが5mm以上である心膜開窓用カテーテルに関する。
【0008】
また、前記拡張部材は、20mm以上に拡径可能であることが好ましい。
【0009】
また、軸方向について、前記第1のバルーンが膨張した状態で前記シャフトの先端から前記第1のバルーンの基端側の端部までの長さが30mm以下であることが好ましい。
【0010】
また、前記拡張部材としてバルーンを用いることが好ましい。
【0011】
また、前記第1のバルーン及び前記拡張部材としての前記バルーンは、膨張の仕方が異なる1つのバルーンで構成されることが好ましい。
【0012】
また、心膜開窓用カテーテルは、前記シャフトのうち前記拡張部材の基端側に隣接して設けられる第2のバルーンを更に備えることが好ましい。
【0013】
また、前記拡張部材としてバルーンを用い、前記第1のバルーン、前記拡張部材としての前記バルーン及び前記第2のバルーンは、膨張の仕方が異なる1つのバルーンで構成されることが好ましい。
【0014】
また、前記第1のバルーンは、少なくとも前記拡張部材の拡張可能径と同じ大きさに膨張可能であることが好ましい。
【0015】
また、前記カテーテルが前記第2のバルーンを備えない場合、前記拡張部材としてバルーンを用い、前記拡張部材としての前記バルーンは、軸方向に少なくとも10mmの長さを有することが好ましい。
【0016】
また、前記拡張部材の表面には、心膜の開窓を容易にするための刃が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の心膜開窓用カテーテルによれば、第1のバルーンを膨らませた状態でシャフトを基端側に引くことにより容易に拡張部材を心膜の開口部に位置決めすることができるので、開口部からの拡張部材の位置ずれを低減して安全に心膜の開窓を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の心膜開窓用カテーテルの好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の心膜開窓用カテーテルは、心膜腔内に貯留した心嚢液を排出するための経皮的な心膜の開窓に用いられる。本明細書では、心膜開窓用カテーテルのうち患者に挿入される側を先端側とし、先端側とは反対側を基端側とする。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態における心膜開窓用カテーテル1を示す模式図である。心膜開窓用カテーテル1は、シャフト10と、第1のバルーン20と、拡張部材30と、第2のバルーン40と、操作部50と、を備える。
【0021】
シャフト10は、軟質の樹脂材料で構成される可撓性を有する細管であり、先端部には、先端側から順に第1のバルーン20、拡張部材30及び第2のバルーン40が設けられており、基端部には、操作部50が設けられている。本実施形態では、拡張部材30としてバルーンが用いられており、シャフト10の内部には、カテーテル1を案内するガイドワイヤ(不図示)を挿通させるための貫通孔(不図示)と、第1のバルーン20、拡張部材30及び第2のバルーン40を膨張させるための流体が流通可能な3本の流路(不図示)とが形成されている。
【0022】
第1のバルーン20は、心膜を開窓する際の位置決めに用いられるバルーンであり、シャフト10の先端部に配置され、流体の流出入により膨張及び縮小が可能である。第1のバルーン20は、心膜腔内で膨張させた状態でシャフト10を基端側に引いた際に、心膜の開口部を通らない大きさに膨張できればよく、本実施形態では、一例として直径6mmの膨張径で膨張させるものとした。また、シャフト10の先端から膨張状態における第1のバルーン20の基端側の端部の長さは、30mm以内に構成される。これにより、心膜開窓の際にシャフト10の先端が心臓に接触するおそれを低減することができる。
【0023】
拡張部材30は、拡張させることにより心膜を開窓するための部材であり、シャフト10の先端部のうち第1のバルーン20の基端側に隣接して配置され、拡径した状態から縮径した状態に変形可能に構成されている。ここで、「隣接して配置される」とは、シャフト10の軸方向において、縮小状態の第1のバルーン20と縮径状態の拡張部材30との間に隙間が生じていない、又はこの隙間が非常に小さいことを意味する。具体的には、縮小状態の第1のバルーン20と縮径状態の拡張部材30との間の隙間は、1mm以下に設定されることが好ましい。
【0024】
拡張部材30としては、バルーンやステントを用いることができる。本実施形態では、拡張部材30は、バルーンにより構成され、流体の流出入により膨張(拡径)及び縮小(縮径)が可能となっている。拡張部材30は、心膜開窓後の時間経過に伴って開窓部が閉鎖しない程度の大きさに心膜を開窓するため、拡張径が20mm以上であることが好ましく、25mm以上であることが更に好ましい。また、一般的に心膜の厚さは2mm〜4mm程度であるため、拡張部材30の拡径状態における軸方向の長さは、5mm以上であることが好ましい。これにより、心膜開窓の際に、拡張部材30が心膜から外れるおそれを低減できる。また、拡張部材30は、その表面に、心膜の開窓を容易にするための刃が設けられていてもよい。拡張部材30は、心膜腔内や心膜腔外等の想定外の場所で拡張するおそれが小さいので、刃を設けることによる心臓周囲の損傷のおそれを低減して安全性を担保しつつ、心膜の開窓を容易にすることができる。
【0025】
第2のバルーン40は、第1のバルーン20と共に心膜を挟持するために用いられるバルーンであり、シャフト10の先端部のうち拡張部材30の基端側に隣接して配置され、流体の流出入により膨張及び縮小が可能である。第2のバルーン40は、心膜腔の外側に配置されるため、心臓周囲の臓器を圧迫しない膨張径に設定される。
【0026】
第1のバルーン20、拡張部材30としてのバルーン及び第2のバルーン40は、いずれも周知の材料を用いることができ、例えば、拡張収縮が可能であり、膨張収縮可能な柔軟性を有する材料で形成できる。このような材料としては、ポリウレタン、ポリアミド(ナイロン樹脂)、ポリアミドエラストマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シリコーン、ラテックス等のプラスチック樹脂を用いることができる。また、各バルーンに流出入させる流体としては、空気や生理食塩水の他、造影剤等を用いることができる。
また、第1のバルーン20及び拡張部材30、又は第1のバルーン20、拡張部材30及び第2のバルーン40を、それぞれの部材において膨張の仕方が異なる1つのバルーンで構成してもよい。場所によって膨らみやすさを変えることで流入させる流体の圧力によりバルーンの膨らむ場所を制御することができる。これにより、シャフトに形成される流路の本数を少なくすることができ、シャフトの外径を小さくすることができる。また、拡張部材の拡張途中で拡張部材が心膜の開口部から外れるおそれが更に低減される。
【0027】
操作部50は、シャフト10を操作する操作ハンドル51と、第1のバルーン20に流体を流出入させるための注入口52と、拡張部材30としてのバルーンに流体を流出入させるための注入口53と、第2のバルーン40に流体を流出入させるための注入口54と、を備える。
【0028】
図2を参照して、心膜開窓用カテーテル1が備える各バルーンを膨張させた状態の形態について詳しく説明する。
図2において、左側に心膜開窓用カテーテルの先端側から見た場合のバルーンの正面図を示し、右側に心膜開窓用カテーテルの側面図を示す。
最初に、心膜の位置決めに用いられる第1のバルーン20を膨張させた状態では、
図2(a)のようになり、次に、心膜を第1のバルーン20と共に挟持するための第2のバルーン40を膨張させると
図2(b)のようになる。最後に、拡張部材30としてのバルーンを膨張させると
図2(c)のように、拡張部材30(バルーン)は、第1のバルーン20及び第2のバルーン40に覆い被さった状態となる。
【0029】
図3〜
図7を参照して、本実施形態に係る心膜開窓用カテーテル1を用いた心膜の開窓方法について具体的に説明する。心膜の開窓に先立って行われる心嚢穿刺による心膜の開口部の形成や心膜腔内へのガイドワイヤの挿入については説明を省略する。
【0030】
まず、
図3に示すように、心膜開窓用カテーテル1を、ガイドワイヤ(不図示)に沿って挿入し、シャフト10の先端部及び第1のバルーン20を心膜腔PA内に配置する。このとき、ガイドワイヤを挿通させるための貫通孔を介して、心嚢液の排出を行ってもよい。
【0031】
次いで、
図4に示すように、心膜腔PA内で第1のバルーン20を膨張させ、その後、シャフト10を基端側に引く。これにより、拡張前の拡張部材30が心膜Pの開口部に配置される。ここで、シャフト10の先端から膨張状態における第1のバルーン20の基端側の端部の長さが30mm以内に構成されているので、シャフト10の先端が心臓Hに接触するおそれを低減できる。
【0032】
次いで、
図5に示すように、第2のバルーン40を膨張させて、第1のバルーン20及び第2のバルーン40で心膜Pを挟持する。これにより、拡張前の拡張部材30が心膜Pの開口部に固定される。
【0033】
次いで、
図6に示すように、拡張部材30としてのバルーンが心膜Pの開口部に固定された状態で、拡張部材30を膨張(拡径)させ、心膜Pを開窓する。ここで、拡張部材30は、膨張(拡張)した状態での軸方向の長さが心膜Pの厚さ以上となる5mm以上に構成されているので、拡張の途中で拡張部材30が心膜Pの開口部から外れるおそれを低減できる。このとき、ガイドワイヤを挿通させるための貫通孔を介して、心嚢液の排出を行ってもよい。
【0034】
その後、
図7に示すように、各バルーンを萎ませた状態で心膜開窓用カテーテル1を抜去する。尚、拡張部材30としてステントを用いる場合は、拡径されたステントを心膜の開窓部に留置し、心膜開窓用カテーテルを抜去する。
【0035】
以上説明した第1実施形態に係る心膜開窓用カテーテル1によれば、以下のような効果を奏する。
【0036】
(1)心膜開窓用カテーテル1を、シャフト10と、シャフト10の先端部に設けられる第1のバルーン20と、シャフト10のうち第1のバルーン20の基端側に隣接して設けられ、縮径した状態から拡径した状態に変形可能な拡張部材30と、含んで構成し、拡張部材30を、拡径した状態で軸方向の長さが5mm以上とした。これにより、第1のバルーン20を膨らませた状態でシャフト10を基端側に引くことにより容易に拡張部材30を心膜Pの開口部に位置決めすることができるので、開口部からの拡張部材30の位置ずれを低減して安全に心膜Pの開窓を行うことができる。
【0037】
(2)拡張部材30を、20mm以上に拡張可能とした。これにより、心膜開窓後の閉鎖を低減して、心膜Pが開窓した状態を保つことができる。
【0038】
(3)第1のバルーン20が膨張した状態で、シャフト10の先端から第1のバルーン20の基端側の端部までの軸方向の長さを30mm以下とした。これにより、心膜開窓の際にシャフト10の先端が心臓Hに接触するおそれを低減することができる。
【0039】
(4)第1のバルーン20及び拡張部材30としてのバルーンを、膨張の仕方が異なる1つのバルーンで構成するものとした場合には、シャフトに形成されるバルーンのための流路の本数を少なくすることができ、シャフトの外径を小さくすることができる。また、拡張部材の拡張途中で拡張部材が心膜の開口部から心膜腔内に外れるおそれが更に低減される。
【0040】
(5)心膜開窓用カテーテル1を、シャフト10のうち拡張部材30の基端側に隣接して設けられる第2のバルーン40を含んで構成した。これにより、シャフト10を基端側に引かなくても拡張前の拡張部材30が心膜Pの開口部に固定され、拡張部材30の位置決めが更に容易になる。
【0041】
(6)第1のバルーン20、拡張部材30としてのバルーン及び第2のバルーン40を、膨張の仕方が異なる1つのバルーンで構成した場合には、シャフトに形成されるバルーンのための流路の本数を1本にすることができ、シャフトの外径を更に小さくすることができる。また、拡張部材の拡張途中で拡張部材が心膜の開口部から心膜腔PC内外に外れるおそれを更に低減できる。
【0042】
(7)拡張部材30の表面に心膜の開窓を容易にするための刃を設けた場合には、拡張部材30は、心膜腔内や心膜腔外等の想定外の場所で拡張するおそれが小さいので、刃を設けることによる心臓周囲の損傷のおそれを低減して安全性を担保しつつ、心膜の開窓を容易にすることができる。
【0043】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態に係る心膜開窓用カテーテル1Aついて説明する。第2実施形態については、第1実施形態で説明したものと同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
図8は、本発明の第2実施形態における心膜開窓用カテーテル1Aを示す模式図である。心膜開窓用カテーテル1Aは、シャフト10Aと、第1のバルーン20Aと、拡張部材30Aと、操作部50Aと、を備える。
【0044】
シャフト10Aは、軟質の樹脂材料で構成される可撓性を有する細管であり、先端部には、先端側から順に第1のバルーン20A及び拡張部材30Aが設けられており、基端部には、操作部50Aが設けられている。本実施形態では、第1実施形態と同様に拡張部材30Aはバルーンにより構成されている。また、シャフト10Aの内部にはガイドワイヤを挿通させるための貫通孔(不図示)と、第1のバルーン20A及び拡張部材30Aのバルーンを膨張させるための流体が流通可能な2本の流路(不図示)とが形成されている。
【0045】
第1のバルーン20Aは、心膜を開窓する際の位置決めに用いられるバルーンであり、シャフト10Aの先端部に配置され、流体の流出入により膨張及び縮小が可能である。本実施形態では、第1のバルーン20Aを、次に説明する拡張部材30Aの拡張径と同じ大きさ以上まで膨張可能に構成した。これにより、心膜開窓の際に、拡張部材30Aが心膜の開口部から心膜腔内に外れるおそれを更に低減できる。また、シャフト10Aの先端から膨張状態における第1のバルーン20Aの基端側の端部の長さは、30mm以内に構成される。これにより、心膜開窓の際にシャフト10の先端が心臓に接触するおそれを低減することができる。
【0046】
拡張部材30Aは、拡張させることにより心膜を開窓するための部材であり、シャフト10Aの先端部のうち第1のバルーン20Aの基端側に隣接して配置され、拡径した状態から縮径した状態に変形可能に構成されている。拡張部材30Aとしては、バルーンやステントを用いることができる。本実施形態では、拡張部材30Aとして、第1実施形態と同様にバルーンを用い、流体の流出入により膨張(拡径)及び縮小(縮径)が可能な構成とした。拡張部材30Aは、心膜開窓後の時間経過に伴って心膜の開窓部が閉鎖しない程度の大きさに心膜を開窓するため、拡張径が直径20mm以上であることが好ましく、直径25mm以上であることが更に好ましい。また、拡張部材30Aの拡径状態における軸方向の長さは、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることが更に好ましい。これにより、心膜開窓の際に、拡張部材30Aが心膜の開口部から心膜腔外に外れるおそれを低減できる。
【0047】
第1のバルーン20A及び拡張部材30Aとしてのバルーンは、第1実施形態で説明したものと同様の材料を用いることができる。また、各バルーンへ流出入させる流体としては、空気や生理食塩水の他、造影剤等を用いることができる。
また、第1のバルーン20A及び拡張部材30Aを、それぞれの部材において膨張の仕方が異なる1つのバルーンで構成してもよい。場所によって膨らみやすさを変えることで流入させる流体の圧力によりバルーンの膨らむ場所を制御することができる。これにより、シャフト10Aに形成されるバルーンのための流路の本数を1本にすることができ、シャフト10Aの外径を小さくすることができる。また、拡張部材30Aの拡張途中で拡張部材が心膜の開口部から外れるおそれが更に低減される。
【0048】
操作部50Aは、シャフト10Aを操作する操作ハンドル51と、第1のバルーン20Aに流体を流出入させるための注入口52と、拡張部材30Aとしてのバルーンに流体を流出入させるための注入口53と、を備える。
【0049】
図9を参照して、心膜開窓用カテーテル1Aが備える各バルーンを膨張させた状態の形態について詳しく説明する。
図9において、左側に心膜開窓用カテーテルの先端側から見た場合のバルーンの正面図を示し、右側に心膜開窓用カテーテルの側面図を示す。
最初に、心膜の位置決めに用いられる第1のバルーン20Aを膨張させた状態では、
図9(a)のようになり、次に拡張部材30Aとしてのバルーンを膨張させると
図9(b)に示す状態となる。
【0050】
本実施形態では、拡張状態における拡張部材30Aの軸方向の長さは、拡張状態における第1のバルーン20Aの軸方向の長さよりも長く構成される。また、拡張状態における拡張部材30Aの形状は、
図9(b)に示すように、軸方向の中央部の径が、軸方向の両端部の径よりも若干小さい形状に形成される。
【0051】
図10〜
図14を参照して、本実施形態に係る心膜開窓用カテーテル1Aを用いた心膜の開窓方法について具体的に説明する。心膜の開窓に先立って行われる心嚢穿刺や心膜腔内へのガイドワイヤの挿入については説明を省略する。
【0052】
まず、
図10に示すように、心膜開窓用カテーテル1Aを、ガイドワイヤに沿って挿入し、シャフト10Aの先端部及び第1のバルーン20Aを心膜腔PA内に配置する。このとき、ガイドワイヤを挿通させるための貫通孔を介して、心嚢液の排出を行ってもよい。
【0053】
次いで、
図11に示すように、心膜腔PA内で第1のバルーン20Aを膨張させた後、シャフト10Aを基端側に引く。これにより、拡張前の拡張部材30Aが心膜Pの開口部に配置される。ここで、シャフト10Aの先端から膨張状態における第1のバルーン20の基端側の端部の長さが30mm以内に構成されているので、シャフト10の先端が心臓Hに接触するおそれを低減できる。
【0054】
次いで、
図12に示すように、拡張部材30Aとしてのバルーンを心膜Pの開口部に配置した後、膨張(拡径)させ、
図13に示すように、更に拡張部材30Aを拡張させて、心膜Pを開窓する。ここで、第1のバルーン20Aの拡張径は、拡張部材30Aと同程度の大きさであるので、拡張の途中で拡張部材30Aが心膜Pの開口部から心膜腔PA内に外れるおそれを低減できる。
【0055】
その後、
図14に示すように、各バルーンを萎ませた状態で心膜開窓用カテーテル1Aを抜去する。
【0056】
以上説明した第2実施形態に係る心膜開窓用カテーテル1Aによれば、上述の効果(1)〜(4)及び(7)に加えて、以下のような効果を奏する。
【0057】
(8)心膜開窓用カテーテル1Aが備える第1のバルーン20Aを、少なくとも拡張部材30Aの拡張可能径と同じ大きさに膨張可能とした。これにより、心膜開窓の際に、拡張部材30Aが心膜Pの開口部から心膜腔内に外れるおそれを更に低減できる。
【0058】
(9)心膜開窓用カテーテル1Aが備える拡張部材30Aをバルーンにより構成し、このバルーンを軸方向に少なくとも10mmの長さに構成した。これにより、拡張部材30Aとしてのバルーンを膨張させる途中で、バルーンが心膜Pから心膜腔外に外れる可能性を更に低減できる。
【0059】
以上、本発明の心膜開窓用カテーテルの好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、上述の第1実施形態では、第1のバルーン20の膨張径を直径6mmとしたが、第2の実施形態の場合と同様に、第1のバルーンの膨張径を少なくとも拡張部材の拡張径と同じ大きさとしてもよい。これにより、心膜の開窓の際に拡張部材が心膜の開口部から心膜腔内に外れるおそれを低減できる。
【0060】
また、第1のバルーン、第2のバルーン、拡張部材としてのバルーンの形状は、第1実施形態及び第2実施形態に開示された形状に限らない。即ち、拡張状態のバルーンの軸方向の断面形状を円形ではなく、四角形形状等の多角形形状に形成してもよい。
【0061】
また、第1実施形態では、操作部50を、第1のバルーン20に流体を流出入させる注入口52と、拡張部材30に流体を流出入させる注入口52と、第2のバルーン40に流体を流出入させる注入口53と、を含んで構成したが、これに限らない。即ち、操作部を、拡張部材に流体を流出入させる注入口、及び第1のバルーン及び第2のバルーンに流体を流出入させる注入口の2つの注入口を含んで構成してもよい。これにより、注入口の数を減らすことができるため、誤操作を抑制できる。尚、この場合、第1のバルーン及び第2のバルーンの膨張、収縮の調整は、例えば、第1のバルーン及び第2のバルーンの伸縮性を異ならせると共に、注入する流体の圧力を調整すること等で行える。