【解決手段】被処理水を処理水と、前記処理水よりもシリカ濃度が高い濃縮水とに分離し、前記濃縮水を飲用水として家畜Cに供給する、水処理方法、及び被処理水を処理水と、前記処理水よりもシリカ濃度が高い濃縮水とに分離する分離手段20と、前記濃縮水を飲用水として家畜Cに供給する供給手段30とを備える、水処理装置1。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る水処理方法及び水処理装置の一実施形態を挙げ、
図1〜3を適宜参照しながら詳述する。
なお、以下の説明で用いる各図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
また、
図2、3において、
図1と同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0009】
<第一の態様>
(水処理装置)
図1に本発明の第一の態様の水処理装置の一例を模式的に示す。
図1に示す水処理装置1は、井戸等の水源100と、水源100から汲み上げられた被処理水(原水)である地下水を貯留する原水槽10と、被処理水を処理水と濃縮水とに分離する分離手段20と、濃縮水を飲用水として家畜に供給する供給手段30と、処理水を散布水として家畜に散布する散布手段40とを備える。
【0010】
水処理装置1は、さらに、水源100から汲み上げられた被処理水を原水槽10に供給する原水供給流路11と、原水供給流路11の始端に設けられた汲み上げポンプ11aと、原水槽10の被処理水を分離手段20に送液する原水流路12と、原水流路12の途中に設けられたポンプ12aと、濃縮水にpH調整剤を添加する第一の添加手段50と、処理水に消臭剤及び殺菌剤の少なくとも一方を添加する第二の添加手段60と、散布手段40に空気を供給する空気供給手段70と、被処理水の一部を散布手段40に直接供給するバイパス手段80とを備える。
なお、ポンプや後述の電磁弁、流量計等は、これらの動作を制御する制御部(図示略)に電気的に接続されている。
【0011】
この例の原水流路12は、ポンプ12aを挟んで第一の原水流路121と第二の原水流路122とで構成されている。第一の原水流路121はポンプ12aよりも上流側、すなわち原水槽10側である。第二の原水流路122はポンプ12aよりも下流側、すなわち分離手段20側である。本明細書において、第二の原水流路122を「加圧水供給流路」ともいう。
【0012】
分離手段20は、被処理水を、処理水と、処理水よりもシリカ濃度が高い濃縮水とに分離する手段である。
この例の分離手段20は、逆浸透膜モジュール21である。
逆浸透膜モジュール21は、逆浸透膜を備え、導入された被処理水を、逆浸透膜を透過した処理水と逆浸透膜を透過しない濃縮水とに分離するものであればよい。
逆浸透膜には、ナノろ過膜が包含される。
逆浸透膜の形態としては、スパイラル膜、中空糸膜、管状膜、平膜等が挙げられる。逆浸透膜の形態としては特に限定されないが、低コスト化の観点から、スパイラル膜を用いることが好ましい。
逆浸透膜の材質としては特に限定されないが、ポリアミド、酢酸セルロース等が挙げられる。
【0013】
逆浸透膜モジュール21としては、例えば、スパイラル型逆浸透膜エレメントの1個以上を、ベッセル等の耐圧容器に収納したものが挙げられる。スパイラル型逆浸透膜エレメントとしては、例えば、集水管のまわりに逆浸透膜を巻き回したものを円筒状のケーシングに収納し、ケーシングの両端面にテレスコープ防止部材を取り付けたものが挙げられる。
【0014】
供給手段30は、濃縮水を飲用水として家畜に供給する手段である。
この例の供給手段30は、分離手段20で得られた濃縮水を貯留する受水槽31と、濃縮水を分離手段20から受水槽31へ供給する濃縮水供給流路32と、濃縮水供給流路32の途中から分岐し、第一の原水流路121の途中に合流することによって濃縮水の一部を第一の原水流路121に返送する返送流路33と、濃縮水供給流路32の開閉を行い、濃縮水の圧力を調整する2つの電磁弁34と、各電磁弁34に接続された流量計35と、返送流路33の開閉を行い、第一の原水流路121に返送される濃縮水の圧力を調整する電磁弁36と、電磁弁36に接続された流量計37とを備える。
【0015】
散布手段40は、処理水を散布水として家畜に散布する手段であり、家畜Cの上部に設置される。
この例の散布手段40は、複数のノズルヘッダー41と、各ノズルヘッダー41に設けられた噴射ノズル42と、処理水を分離手段20からノズルヘッダー41へ供給する処理水供給流路43と、処理水供給流路43の途中に設けられたポンプ43aと、処理水供給流路43の開閉を行い、処理水の圧力を調整する電磁弁44と、電磁弁44に接続された流量計45とを備える。
【0016】
この例の処理水供給流路43は、ポンプ43aを挟んで第一の処理水供給流路431と第二の処理水供給流路432とで構成されている。第一の処理水供給流路431はポンプ43aよりも上流側、すなわち分離手段20側である。第二の処理水供給流路432はポンプ43aよりも下流側、すなわちノズルヘッダー41側である。
【0017】
この例のノズルヘッダー41は、主管41aと主管41aの途中で下向きに枝分かれした分岐管41bとからなる。複数のノズルヘッダー41のうち、最下流、すなわち分離手段20から最も離れた場所に位置するノズルヘッダー41の主管41aは、一端が開口され、他端が閉塞されている。残りのノズルヘッダー41の主管41aは、両端が開口されている。
噴射ノズル42は、各ノズルヘッダー41の分岐管41bの下端に設けられている。
噴射ノズル42としては、ドライミストノズル等が挙げられる。
【0018】
第一の添加手段50は、濃縮水にpH調整剤を添加する手段である。
この例の第一の添加手段50は、pH調整剤を収容する第一の収容タンク51と、pH調整剤を濃縮水供給流路32に供給する第一の薬剤供給流路52と、第一の薬剤供給流路52の途中に設けられたポンプ52aとを備える。
本実施形態においては、第一の薬剤供給流路52は濃縮水供給流路32の途中で合流しており、濃縮水供給流路32中で濃縮水にpH調整剤が供給されるようになっている。
【0019】
第二の添加手段60は、処理水に消臭剤及び殺菌剤の少なくとも一方を添加する手段である。
この例の第二の添加手段60は、消臭剤を収容する第二の収容タンク61と、消臭剤を第一の処理水供給流路431に供給する第二の薬剤供給流路62と、第二の薬剤供給流路62の途中に設けられたポンプ62aと、殺菌剤を収容する第三の収容タンク63と、殺菌剤を第一の処理水供給流路431に供給する第三の薬剤供給流路64と、第三の薬剤供給流路64の途中に設けられたポンプ64aとを備える。
本実施形態においては、第二の薬剤供給流路62は第一の処理水供給流路431の途中で合流しており、第一の処理水供給流路431中で処理水に消臭剤が供給されるようになっている。また、第三の薬剤供給流路64は第一の処理水供給流路431の途中で合流しており、第一の処理水供給流路431中で処理水に殺菌剤が供給されるようになっている。
【0020】
空気供給手段70は、散布手段40に空気を供給する手段である。
この例の空気供給手段70は、コンプレッサ71と、コンプレッサ71から吐出された空気を一旦貯留する空気タンク72と、空気をノズルヘッダー41に供給する空気供給流路73と、空気タンク72内のドレンを排出する排出流路74とを備える。
本実施形態においては、空気供給流路73は途中で分岐して各ノズルヘッダー41に合流しており、各ノズルヘッダー41中で処理水に空気が供給され、処理水をミスト状に散布できるようになっている。
【0021】
バイパス手段80は、被処理水の一部を分離手段20を通過させることなく散布手段40に直接供給する手段である。
この例のバイパス手段80は、第二の原水流路122と第一の処理水供給流路431とをつなぐバイパス流路81と、バイパス流路81の開閉を行い、散布手段40に供給される被処理水の圧力を調整する電磁弁82と、電磁弁82に接続された流量計83とを備える。
【0022】
この例のバイパス流路81は、電磁弁82を挟んで第一のバイパス流路811と第二のバイパス流路812とで構成されている。第一のバイパス流路811は電磁弁82よりも上流側であり、一端が第二の原水流路122に接続され、他端が電磁弁82に接続されている。第二のバイパス流路812は電磁弁82よりも下流側であり、一端が電磁弁82に接続され、他端が第一の処理水供給流路431に接続されている。本明細書において、バイパス流路81を「加圧水分岐流路」ともいう。
【0023】
第一のバイパス流路811は、ポンプ12aにて加圧され第二の原水流路122内を流れる被処理水の一部を分流させる流路である。第二の原水流路122から分岐して第一のバイパス流路811内を流れる被処理水の流量は電磁弁82により決定される。被処理水の一部は、第一のバイパス流路811及び第二のバイパス流路812を経て第一の処理水供給流路431に供給される。
【0024】
(水処理方法)
水処理装置1を用いた水処理方法の一例について説明する。
まず、汲み上げポンプ11aを駆動させて水源100から被処理水を汲み上げる。汲み上げられた被処理水は、原水供給流路11を通って原水槽10に供給される。
電磁弁34及び電磁弁44を開き、ポンプ12a及びポンプ43aを駆動させることによって、原水槽10の被処理水が、原水流路12を通って分離手段20の逆浸透膜モジュール21に供給される。
逆浸透膜モジュール21に導入された被処理水は、逆浸透膜を透過した処理水と、逆浸透膜を透過しない濃縮水とに分離される。逆浸透膜により被処理水中のシリカが濃縮処理されるため、濃縮水のシリカ濃度は、処理水のシリカ濃度よりも高い。被処理水がカルシウムを含む場合は、逆浸透膜によりカルシウムも濃縮処理されるため、濃縮水のカルシウム濃度も、処理水のカルシウム濃度よりも高くなる。
【0025】
被処理水は、濃縮水が処理水よりも多く得られるように分離されるのが好ましい。濃縮水が処理水よりも多く得られるように被処理水を分離するには、電磁弁34に接続された流量計35及び電磁弁44に接続された流量計45をモニタリングしながら、逆浸透膜に対する被処理水の圧力や水量をポンプ12a及びポンプ43aにて調節すればよい。
濃縮水と処理水の比率は、家畜Cの種類に応じて決定すればよい。例えば、家畜Cが牛の場合、逆浸透膜モジュール21の良好かつ安定的な運転の観点から、濃縮水と処理水が質量比で濃縮水:処理水=3:1〜7:1となるように被処理水を処理水と濃縮水とに分離するのが好ましい。濃縮水と処理水の比率は濃縮水:処理水=4:1〜6:1がより好ましい。
【0026】
逆浸透膜モジュール21で得られた濃縮水は、濃縮水供給流路32を通って受水槽31に供給される。必要に応じて、電磁弁36を開くことによって、濃縮水の一部が返送流路33を通って第一の原水流路121に返送されてもよい。
受水槽31に供給された濃縮水は飲用水として家畜Cに供給される。
家畜Cとしては特に限定されず、牛、豚、羊、馬、鶏などが挙げられる。図示例の家畜Cは牛である。
【0027】
ところで、家畜の消化器系においては、体内での微生物活動が重要であり、多くの微生物群は一般的には中性域であることが好適であるとされている。その一方で、消化液や微生物反応などによる飼料の分解物の多くは酸性を示す傾向にあり、微生物活動に好適なpH領域から外れることがある。
よって、第一の添加手段50によってpH調整剤を濃縮水に供給し、pH調整剤が供給された濃縮水を家畜Cに供給することが好ましい。pH調整剤は、ポンプ52aを駆動させることによって、第一の薬剤供給流路52を通って濃縮水供給流路32に供給される。
pH調整剤は、濃縮水の25℃におけるpHが6.5〜8.5となるように濃縮水に供給されることが好ましく、pH調整剤の供給量はポンプ52aによって調節できる。濃縮水の25℃におけるpHは7.0〜8.0がより好ましい。濃縮水のpHが、上記下限値以上であれば家畜Cが胃酸過多になるのを抑制でき、上記上限値以下であれば家畜Cの胃への影響が少ない。
pH調整剤としては、例えば炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。濃縮水を酸性化する場合は、pH調整剤として塩酸、クエン酸などを用いてもよい。これらの中でも取り扱いが容易である観点から炭酸水素ナトリウムが好ましい。
【0028】
逆浸透膜モジュール21で得られた処理水は、処理水供給流路43を通って各ノズルヘッダー41に供給される。
さらに、電磁弁82を開いて、第二の原水流路122内を流れる被処理水の一部をバイパス流路81を介して第一の処理水供給流路431に供給する。分離手段20から第一の処理水供給流路431に供給される処理水と、バイパス流路81を介して第一の処理水供給流路431に供給される被処理水との割合は、被処理水の水質及び受水槽31の要求水質などから決定される。例えば受水槽31に供給される濃縮水の濃度を確保する観点では、処理水100質量部に対して被処理水の割合は50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、5質量部以下が特に好ましい。
【0029】
各ノズルヘッダー41に供給された処理水は、散布水として噴射ノズル42から家畜Cに散布される。処理水が家畜Cに散布されることで、家畜Cの体温を下げることができる。
【0030】
本実施形態において、散布水はドライミストである。すなわち、処理水をドライミストにして家畜Cへ散布する。処理水をドライミストにして家畜Cへ散布すれば、床面が水で濡れて家畜Cが滑ったり転倒したりすることを防止できる。
ここで、「ドライミスト」とは、水を微細な粒子にして噴射することにより形成される霧のことである。ドライミストが蒸発する際の気化熱の吸収を利用して、ドライミストが付着した局所を冷却することができる。
ドライミストの平均粒子径は、素早く蒸発し、ドライミストが付着した箇所が濡れにくい観点から、1〜50μmが好ましく、1〜30μmがより好ましい。
【0031】
処理水をドライミストにするには、空気供給手段70から空気を処理水に供給し、処理水と空気とを衝突させればよい。
空気は、コンプレッサ71を駆動させることによって、空気供給流路73を通って各ノズルヘッダー41に供給される。空気の供給量はコンプレッサ71によって調節でき、圧力が高いほど平均粒子径が小さいドライミストが得られる。
空気タンク72内のドレンを排出流路74から定期的に排出することが好ましい。
また、家畜Cの近辺に送風ファン(図示略)を設置して、家畜Cに風を吹き付けることが好ましい。処理水をドライミストにして家畜Cへ散布する際に風を家畜Cに吹き付ければ、処理水の気化を促進できる。
【0032】
処理水を家畜Cへ散布する際には、第二の添加手段60によって消臭剤及び殺菌剤の少なくとも一方を処理水に供給することが好ましい。消臭剤が供給された処理水を家畜Cへ散布することで、悪臭を低減できる。また、殺菌剤が供給された処理水を家畜Cへ散布することで、空気浮遊菌などの細菌を殺菌できる。
【0033】
消臭剤を処理水に供給する場合、消臭剤は、ポンプ62aを駆動させることによって、第二の薬剤供給流路62を通って第一の処理水供給流路431に供給される。消臭剤の供給量はポンプ62aによって調節できる。
消臭剤としては、例えば二酸化塩素、次亜塩素酸、臭素酸、各種芳香剤、銀などの金属イオン系材料などが挙げられる。これらの中でも安価であり、かつ劣化しにくい観点から二酸化塩素、次亜塩素酸が好ましく、二酸化塩素がより好ましい。
【0034】
殺菌剤を処理水に供給する場合、殺菌剤は、ポンプ64aを駆動させることによって、第三の薬剤供給流路64を通って第一の処理水供給流路431に供給される。殺菌剤の供給量はポンプ64aによって調節できる。
殺菌剤としては、例えば二酸化塩素、次亜塩素酸、臭素酸、アルコール類、各種有機系農薬類などが挙げられる。これらの中でも安価であり、取り扱いが容易である観点から二酸化塩素、次亜塩素酸が好ましく、持続性にも優れる点で二酸化塩素がより好ましい。
【0035】
(作用効果)
上述したように、従来、被処理水を水道水水質基準となるように処理水と濃縮水とに分離し、処理水を人間用や家畜用の飲用水として用いる一方で、濃縮水は下水などに放流して処分していたが、被処理水を浄化しすぎると、被処理水中に存在する、家畜にとって有用な栄養成分も除去しすぎてしまう。そのため、処理水に栄養成分を添加したものを飲用水として家畜に供給したり、飼料に栄養成分を添加して家畜に供給したりしていた。このように、従来法では、栄養成分を被処理水から除去し廃棄する一方、飲用水や飼料に栄養成分を混合させる等の無駄が生じており、効率が悪い。また、例えば気温が高くなると、一般的に家畜は飼料の摂取量が減少するため、安定的な栄養成分の供給が困難となる傾向にある。
【0036】
しかし、本発明の第一の態様の水処理装置及び水処理方法では、被処理水を処理水と、処理水よりもシリカ濃度が高い濃縮水とに分離し、得られた濃縮水を家畜に供給する。被処理水中のシリカは家畜にとって有用な栄養成分であり、本発明ではシリカ濃度の高い濃縮水を家畜に供給するので、本発明の第一の態様の水処理装置及び水処理方法によれば、栄養成分を含む水を効率よく、かつ安価に家畜に供給できる。
このように、本発明によれば、被処理水中に存在する、家畜にとって有用な栄養成分を廃棄することなく家畜に供給できるので、従来の無駄を削減できる。また、気温が高くなると家畜は水分を通常より多く摂取することから、本発明によれば栄養成分の補給にも適しており、極めて効率的かつ効果的に栄養成分を家畜に供給できる。
【0037】
(他の態様)
本発明の第一の態様の水処理装置及び水処理方法は、上述した実施形態に限定されない。
第一の態様では被処理水が地下水であるが、被処理水は地下水に限定されず、例えば河川水や沢水などの表流水、或いはこれを水処理した水道水などであってもよい。ただし、地下水は表流水と比較しミネラル成分が多く溶解されていることから、被処理水に地下水を用いて濃縮水を得ることは、家畜への栄養成分を効率よく供給できる点で好ましい。
また、第一の態様では水源から汲み上げた被処理水を原水槽に一旦貯留しているが、水源から汲み上げた被処理水を直接、分離手段に供給してもよい。
【0038】
第一の態様では処理水を散布水として家畜に散布しているが、処理水を家畜に散布することなく下水などに放流して処分してもよい。ただし、処理水を散布水として用いることは、飼料の消費量のみならず飲用水の補給量も安定する傾向にある点で好ましい。特に気温が高くなると家畜の体温も上昇するが、処理水を散布水として用いれば体温の上昇を抑えることができる。加えて、被処理水を余すことなく利用できるので、水資源を有効活用できる。
また、第一の態様では処理水をドライミストにして家畜に散布しているが、例えば処理水をシャワーやホースで散布してもよい。ただし、散布水がドライミストであることは、床面が水で濡れて家畜が滑ったり転倒したりすることを防止できる点で好ましい。
さらに、第一の態様では処理水に消臭剤及び殺菌剤の少なくとも一方を添加したものを家畜に散布しているが、これらの薬剤は処理水に添加しなくてもよい。ただし、消臭剤を処理水に添加して家畜に散布することは悪臭を低減できる点で好ましく、殺菌剤を処理水に添加して家畜に散布することは空気浮遊菌などの細菌を殺菌できる点で好ましい。
【0039】
なお、第一の態様の水処理装置では、
図1に示すように1つのノズルヘッダー41に対して1つの噴射ノズル42が設けられているが、例えば
図2に示すように、1つのノズルヘッダー41に対して複数の噴射ノズル42が設けられていてもよい。
図2に示す散布手段40では、各ノズルヘッダー41の分岐管41bの下端に分岐ヘッダー46が設けられている。分岐ヘッダー46の周囲には、複数のフレキホース47が取り付けられている。フレキホース47の先端には、噴射ノズル42が取り付けられている。フレキホース47により噴射ノズル42を任意の方向に配置することができる。これにより、1つのノズルヘッダー41から広範囲の場所に処理水を散布したり、特定の場所に目掛けて処理水を散布したりできる。
【0040】
また、第一の態様の水処理装置では、
図1に示すように処理水供給流路43から供給された処理水は、並列に配置されたノズルヘッダー41に順次供給されるが、例えばノズルヘッダー41の個数が多くなった場合、空気供給流路73と同様に第二の処理水供給流路432は途中で分岐して、各ノズルヘッダー41に合流していてもよい。すなわち、処理水は第二の処理水供給流路432の途中で分流して各ノズルヘッダー41に供給されてもよい。処理水を分流して各ノズルヘッダー41に供給する方法は、ノズルヘッダーの数が5個以上の場合に採用することが好ましく、10個以上の場合に採用することがより好ましい。
【0041】
第一の態様では濃縮水にpH調整剤を添加しているが、pH調整剤は添加しなくてもよい。ただし、pH調整剤を濃縮水に添加して家畜に供給することは、家畜の体内での微生物活動を活性化できる点で好ましい。
【0042】
第一の態様では膜分離により被処理水を処理水と濃縮水とに分離しているが、分離方法は膜分離に限定されず、例えば蒸発法、電気式分離法などであってもよい。ただし、低コストの観点では、膜分離により被処理水を処理水と濃縮水とに分離するのが好ましい。
また、第一の態様では逆浸透膜を用いて被処理水を処理水と濃縮水とに膜分離しているが、膜分離に用いられる膜は逆浸透膜に限定されず、例えば限外ろ過膜、精密ろ過膜などであってもよい。ただし、膜分離に逆浸透膜を用いることは、シリカ等の高度な分離が可能となる点で好ましい。加えて、処理水をドライミストにして散布する場合、膜分離に逆浸透膜を用いることは、噴射ノズルの閉塞を防止できる点でも好ましい。
【0043】
第一の態様の水処理装置では、
図1に示すようにバイパス手段80により被処理水の一部を散布手段40に直接供給しているが、被処理水の一部を散布手段40に直接供給しなくてもよい。ただし、バイパス手段80により被処理水の一部を散布手段40に直接供給することは、以下の点で好ましい。通常、散布手段40に一定の量の処理水を供給する場合、逆浸透膜モジュール21の処理量が決定される。バイパス手段80により被処理水の一部を散布手段40に直接供給することにより、分離手段20にて処理される処理水の水量を低くすることが可能となり、分離手段20のコストダウン(サイズダウン)が図れる。
【0044】
第一の態様では、必要に応じて濃縮水に栄養成分を添加して家畜に供給してもよい。栄養成分としては、シリカ、カルシウム、微量必須ミネラル類などが挙げられる。
また、第一の態様では濃縮水の一部を第一の原水流路に返送しているが、濃縮水の一部を第一の原水流路に返送しなくてもよい。
【0045】
<第二の態様>
(水処理装置)
図3に本発明の第二の態様の水処理装置の一例を模式的に示す。
第二の態様の水処理装置2は、原水槽10と分離手段20との間に、被処理水からマンガンを除去する除去手段90を設けたこと以外は第一の態様の水処理装置と同様である。
すなわち、
図3に示す水処理装置2は、井戸等の水源100と、水源100から汲み上げられた被処理水(原水)である地下水を貯留する原水槽10と、被処理水を処理水と濃縮水とに分離する分離手段20と、濃縮水を飲用水として家畜に供給する供給手段30と、処理水を散布水として家畜に散布する散布手段40と、分離前の被処理水からマンガンを除去する除去手段90とを備える。
【0046】
水処理装置2は、さらに、水源100から汲み上げられた被処理水を原水槽10に供給する原水供給流路11と、原水供給流路11の始端に設けられた汲み上げポンプ11aと、原水槽10の被処理水を除去手段90に送液する前段の原水流路13と、前段の原水流路13の途中に設けられたポンプ13aと、除去手段90にてマンガンが除去された被処理水を分離手段20に送液する後段の原水流路14と、後段の原水流路14の途中に設けられたポンプ14aと、濃縮水にpH調整剤を添加する第一の添加手段50と、処理水に消臭剤及び殺菌剤の少なくとも一方を添加する第二の添加手段60と、散布手段40に空気を供給する空気供給手段70と、被処理水の一部を散布手段40に直接供給するバイパス手段80とを備える。
【0047】
この例の後段の原水流路14は、ポンプ14aを挟んで第三の原水流路141と第四の原水流路142とで構成されている。第三の原水流路141はポンプ14aよりも上流側、すなわち原水槽10側である。第四の原水流路142はポンプ14aよりも下流側、すなわち分離手段20側である。本明細書において、第四の原水流路142を「加圧水供給流路」ともいう。
【0048】
分離手段20、供給手段30、散布手段40、第一の添加手段50、第二の添加手段60、空気供給手段70及びバイパス手段80は第一の態様と同じであるため、これらの説明は省略する。
なお、
図1に示す水処理装置1では、返送流路33は第一の原水流路121の途中に合流しているが、
図3に示す水処理装置2では、返送流路33は第三の原水流路141の途中に合流している。
【0049】
除去手段90は、分離前の被処理水からマンガンを除去する手段である。
この例の除去手段90は、酸化剤を収容する第四の収容タンク91と、酸化剤を原水槽10に供給する第四の薬剤供給流路92と、第四の薬剤供給流路92の途中に設けられたポンプ92aと、凝集剤を収容する第五の収容タンク93と、凝集剤を原水槽10に供給する第五の薬剤供給流路94と、第五の薬剤供給流路94の途中に設けられたポンプ94aと、酸化剤及び凝集剤が添加された被処理水をろ過処理する砂ろ過塔95とを備える。
【0050】
砂ろ過塔95は、原水槽10から供給された被処理水をろ過し、被処理水中のマンガンを除去するものである。
砂ろ過塔95には、砂が充填されている。砂としては、ろ過砂、ろ過砂利、マンガン砂、二酸化マンガン粒等が挙げられる。
【0051】
(水処理方法)
水処理装置2を用いた水処理方法の一例について説明する。
まず、汲み上げポンプ11aを駆動させて水源100から被処理水を汲み上げる。汲み上げられた被処理水は、原水供給流路11を通って原水槽10に供給される。
被処理水には、家畜Cにとって飲用に適さない物質であるマンガンが含まれていることがある。そのような場合には、被処理水を分離手段20で処理する前に、除去手段90にて被処理水からマンガンを除去しておくことが好ましい。
具体的には、まず、酸化剤を原水槽10中の被処理水に添加する。被処理水に酸化剤を添加することで、被処理中のマンガンと酸化剤とが反応して水酸化物や酸化物を形成する。被処理水中に鉄やヒ素が含まれている場合は、鉄やヒ素も酸化剤と反応する。酸化剤の供給量はポンプ92aによって調節できる。
酸化剤としては、コスト、反応速度、非金属酸化剤、流通性の観点から次亜塩素酸ナトリウムが用いられる。
【0052】
次いで、凝集剤を原水槽10中の被処理水に添加する。酸化剤が添加された被処理水に凝集剤をさらに添加することで、マンガン又はマンガンの水酸化物や酸化物が凝集し、凝集フロックを形成する。被処理水中に鉄やヒ素が含まれている場合は、鉄やヒ素又はこれらの水酸化物や酸化物も凝集して凝集フロックを形成する。凝集剤の供給量はポンプ94aによって調節できる。
凝集剤としては、例えばポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、有機高分子凝集剤、有機凝結剤などが挙げられる。これらの中でも凝集効果やコストの観点からポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムが好ましく、ポリ塩化アルミニウムがより好ましい。
【0053】
次いで、ポンプ13aを駆動させることによって、酸化剤及び凝集剤が添加された被処理水が、前段の原水流路13を通って砂ろ過塔95に供給される。
被処理水が砂ろ過塔95を通過することにより被処理水がろ過され、被処理水中のマンガンが除去される。被処理水中に鉄やヒ素が含まれている場合は、鉄やヒ素も除去される。
砂ろ過塔95を通過した被処理水中のマンガンの濃度は、0.05mg/L以下が好ましい。また、砂ろ過塔95を通過した被処理水中のヒ素の濃度は、0.01mg/L以下が好ましい。砂ろ過塔95を通過した被処理水中のマンガンやヒ素の濃度は、酸化剤や凝集剤の添加量によって制御できる。一回の処理で被処理水中のマンガンを除去しきれない場合は、砂ろ過塔95を通過した被処理水を原水槽10又は前段の原水流路13に返送して、繰り返しろ過処理を行ってもよい。
また、砂ろ過塔95を被処理水が通過することで、被処理水中のゴミ等も除去される。
なお、砂ろ過塔95を被処理水が通過しても、被処理水中のシリカは除去されにくい。被処理水がカルシウムを含む場合、砂ろ過塔95を被処理水が通過しても、被処理水中のカルシウムは除去されにくい。
【0054】
引き続き、砂ろ過塔95を通過し、マンガンが除去された被処理水を分離手段20にて処理する。
具体的には、電磁弁34及び電磁弁44を開き、ポンプ14a及びポンプ43aを駆動させることによって、砂ろ過塔95を通過した被処理水が、後段の原水流路14を通って分離手段20の逆浸透膜モジュール21に供給される。これ以降の処理は第一の態様と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
(作用効果)
本発明の第二の態様の水処理装置及び水処理方法によれば、第一の態様の水処理装置及び水処理方法と同様、栄養成分を含む水を効率よく、かつ安価に家畜に供給できる。
しかも、被処理水にマンガン等の家畜にとって飲用に適さない物質が含まれている場合、本発明の第二の態様の水処理装置及び水処理方法であれば、被処理水を処理水と濃縮水とに分離する前に、被処理水からマンガンを除去しておくので、家畜にとってより適した飲用水を供給できる。
【0056】
(他の態様)
本発明の第二の態様の水処理装置及び水処理方法は、上述した実施形態に限定されない。
なお、第二の態様において、第一の態様と共通部分についての他の態様は第一の態様と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
第二の態様では原水槽中の被処理水に酸化剤を添加して、被処理水中のマンガンと酸化剤とを反応させているが、被処理水に空気をバブリングまたは圧入してマンガンを空気酸化してもよい。
また、第二の態様では被処理水中のマンガンをフロック化した後に、被処理水を砂ろ過塔に通過させてマンガンを除去しているが、マンガンの除去方法は砂ろ過塔を用いた方法に限定されない。例えば、活性炭等の吸着剤を用いた吸着法によりマンガンを除去してもよい。さらに、砂ろ過塔と分離手段との間に、吸着剤を充填した吸着塔を設け、砂ろ過塔を通過した被処理水を吸着塔でさらにろ過処理してもよい。
【0058】
上述したように、被処理水中に鉄が含まれる場合、除去手段により鉄も除去される。除去された鉄はそのまま廃棄されてもよいし、飲用水や散布水に混ぜてもよい。