【実施例】
【0078】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0079】
製造実施例1
以下の反応式に従い、化合物(1a)と化合物(2a)から1シリーズの化合物1a〜1dを製造した。
【0080】
【化6】
【0081】
化合物1a〜1dの物性値を以下に記載する。
・化合物1a
物性値(MS、NMR):
;
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D3) δ 7.91 (s, 1 H), 7.44 (d, J = 6.9 Hz, 2 H), 7.38 (d, J = 7.4 Hz, 2 H), 7.28-7.31 (m, 2 H), 7.23 (t, J = 7.4 Hz, 1 H), 7.16 (d, J = 8.6 Hz, 2 H), 6.79 (d, J = 9.2 Hz, 2 H), 6.69 (dd, J = 8.9, 2.6 Hz, 2 H), 4.40 (s, 2H), 4.06 (s, 2 H), 2.97 (d, J = 12.0 Hz, 6 H)
;
13C-NMR (125 MHz, METHANOL-D3) δ 155.66, 151.51, 136.76, 129.47, 129.28, 128.45, 128.39, 127.26, 126.86, 114.85, 112.05, 105.63, 72.19, 60.92, 39.07
; HR-ESI-MS: m/z: [M+H]
+ calcd for C
28H
27N
4O
2, 451.2134; found, 451.2130, [M+Na]
+ calcd for C
28H
26N
4O
2Na, 473.1947; found, 473.1953.
【0082】
・化合物1b
物性値(MS、NMR):
;
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D3) δ 7.51 (s, 1 H), 7.37 (t, J = 7.7 Hz, 4 H), 7.30 (t, J = 7.4 Hz, 2 H), 7.23 (t, J = 7.2 Hz, 1 H), 7.14 (t, J = 8.3 Hz, 3 H), 6.68-6.73 (m, 5 H), 4.40 (s, 2 H), 4.04 (s, 2 H), 2.97 (s, 6 H)
; HR-ESI-MS: m/z: [M+H]
+ calcd for C
30H
29N
4O
2, 477.2291; found, 477.2287, [M+Na]
+ calcd for C
30H
28N
4O
2Na, 499.2104; found, 499.2094.
【0083】
・化合物1c
物性値(MS、NMR):
;
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D3) δ 7.47 (s, 1 H), 7.36 (d, J = 8.0 Hz, 2 H), 7.27-7.33 (m, 4 H), 7.23 (t, J = 7.4 Hz, 1 H), 7.14 (d, J = 8.6 Hz, 2 H), 7.02-7.09 (m, 1 H), 6.77 (dd, J = 15.2, 10.6 Hz, 1 H), 6.62-6.71 (m, 5 H), 6.33 (d, J = 15.5 Hz, 1 H), 4.38 (s, 2 H), 4.03 (s, 2 H), 3.87 (d, J = 14.9 Hz, 1 H), 2.95 (s, 6 H)
; HR-ESI-MS: m/z: [M+H]
+ calcd for C
32H
31N
4O
2, 503.2447; found, 503.2463, [M+Na]
+ calcd for C
32H
30N
4O
2Na, 525.2266; found, 525.2263.
【0084】
・化合物1d
物性値(MS、NMR):
;
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D3) δ 7.47 (s, 1H), 7.27-7.37 (comp., 7 H), 7.23 (t, J = 7.4 Hz, 1 H), 7.14 (d, J = 8.6 Hz, 2 H), 7.02-7.09 (m, 2 H), 6.77 (dd, J = 15.2, 10.6 Hz, 1 H), 6.62-6.71 (m, 6 H), 6.33 (d, J = 15.5 Hz, 1 H), 4.38 (s, 2 H), 4.03 (s, 2 H), 2.95 (s, 6 H)
; HR-ESI-MS: m/z: [M+H]
+ calcd for C
34H
33N
4O
2, 529.2604; found, 529.2637, [M+Na]
+ calcd for C
34H
32N
4O
2Na, 551.2423; found, 551.2409, [M+K]
+ calcd for C
34H
32N
4O
2K, 567.2162; found, 567.2144.
【0085】
製造実施例2
以下の反応式に従い、化合物(1b)と化合物(2b)から2シリーズの化合物2a〜2dを製造した。
【0086】
【化7】
【0087】
化合物2a〜2dの物性値を以下に記載する。
・化合物2a
物性値(MS、NMR):
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D3): δ 7.95 (s, 1H), 7.64-7.79 (m, 3H), 7.53 (dt, J = 15.5, 7.0 Hz, 2H), 7.43-7.48 (m, 1H), 7.27-7.35 (m, 1H), 6.66-6.74 (m, 3H), 6.38-6.58 (m, 3H), 4.84 (s, 2H), 2.93 (s, 6H)
;ESI-MS: m/z: [M+H]
+421.20,
【0088】
・化合物2b
物性値(MS、NMR):
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D3): δ 7.93 (s, 1H), 7.83 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 7.47-7.62 (m, 4H), 7.33-7.42 (m, 3H), 7.14 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 7.06 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 6.92 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 2.94 (s, 6H)
;ESI-MS: m/z: [M+H]
+447.22
【0089】
・化合物2c
物性値(MS、NMR):
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D3) : δ 8.02 (1H), 7.88 (s, 4H), 7.71 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.53 (q, J = 7.4 Hz, 5H), 6.67-6.80 (m, 5H), 4.10 (s, 2H), 3.93 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 3.15 (s, 1H), 2.94 (s, 6H)
;ESI-MS: m/z: [M+H]
+473.23
【0090】
・化合物2d
物性値(MS、NMR):
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D3): δ 8.00 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 7.55-7.57(comp., 7 H), 7.30 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.22 (t, J = 7.7 Hz, 1H), 7.12 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 6.69-6.77 (m, 2H), 6.54-6.59 (m, 1H), 6.69-6.48 (m, 6H), 4.10 (s, 2H), 2.94 (s, 6H)
;ESI-MS: m/z: [M+H]
+499.29
【0091】
製造実施例3
以下の反応式に従い、化合物(1)と化合物(2c)から3シリーズの化合物3a〜3dを製造した。
【0092】
【化8】
【0093】
化合物3a〜3dの物性値を以下に記載する。
・化合物3a
物性値(MS、NMR):
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D3): δ 8.65 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 8.20 (d, J = 12.6 Hz, 3H), 7.88-7.94 (m, 1H), 7.59 (t, J = 3.2 Hz, 4H), 7.41 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 7.32 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 7.24 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 7.14 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 4.16 (s, 2H)
;ESI-MS: m/z: [M+H]
+379.15
【0094】
・化合物3b
物性値(MS、NMR):
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D3): δ 9.16 (s, 1H), 8.59 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 8.43 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 8.21 (d, J = 23.5 Hz, 2H), 7.88 (s, 4H), 7.31 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 7.24 (t, J = 7.7 Hz, 3H), 7.15 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 4.16 (s, 2H)
;ESI-MS: m/z: [M+H]
+379.11
【0095】
・化合物3c
物性値(MS、NMR):
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D3): δ 8.63 (d, J = 5.7 Hz, 2H), 8.32-8.21 (2H), 8.11 (d, J = 4.6 Hz, 2H), 7.88 (s, 1H), 7.56 (t, J = 3.4 Hz, 3H), 7.31 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 7.24 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 7.14 (s, 1H), 4.16 (s, 2H)
;ESI-MS: m/z: [M+H]
+379.13
【0096】
・化合物3d
物性値(MS、NMR):
1H-NMR (500 MHz, METHANOL-D3 with 0.49 %TFA): δ 8.76 (s, 1H), 8.13 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 8.03-8.04 (m, 2H), 7.51-7.66 (m, 6H), 7.23-7.31 (m, 6H), 4.30 (s, 2H)
;ESI-MS: m/z: [M+H]
+ 378.14
【0097】
実施例1:市販の生物発光酵素と本発明の新規発光基質間の発光反応による発光スペクトルを測定した。まず、生物発光酵素であるALuc(登録商標)をHEPESバッファーに希釈し1μM濃度に合わせる。また、新規開発した発光基質(1a、1b、1c、1d)とネイティブ発光基質(coelenterazine, nCTZ)をそれぞれHEPESバッファーに希釈して最終濃度の100μMになるようにした。前記発光酵素10μLをPCRチューブに移し、更に40μLの前述発光基質を添加したのち、すぐスペクトルフォトメーター(AB−1850、ATTO製)のサンプル台に移して発光スペクトルを30秒間測定した。
【0098】
その結果、1シリーズの発光基質を添加した場合、それぞれ、緑色(1a)、薄緑色(1b)、黄色(1c)、オレンジ色(1d)のスペクトルピークが観察できた(
図7)。同様に2シリーズの発光基質を添加した場合、それぞれ、緑色(2a)、薄緑色(2b)、黄色(2c)、オレンジ色(2d)のスペクトルピークが観察できた(
図8)。この結果は、添加した発光基質に依存して発光色がレッドシフトしている傾向が観察できた。一方、3シリーズの発光基質を添加した場合、その発光色のレッドシフトは観察できなかった。
【0099】
また、生体組織透過性の優れた600nm以上の波長領域における発光輝度を測定したところ、1c、1dおよび2c、2dは、従来の海洋生物由来の発光スペクトルとは大きく異なり、600nm以上の長波長発光の割合が約4〜5割に至ることが分かった。従来の一番汎用的に用いられているnCTZにおいてその600nm以上の長波長発光の割合が1〜2%に過ぎないことに比べると画期的な進歩である。
【0100】
実施例2:
図10の実施例は、実施例1で記述した発光反応を実際のマイクロチューブ内で実現した例である。まず、カラム精製済みのALuc(登録商標)16原液(蛋白質)を10μMになるようにHEPESバッファーにより希釈しその50μLをPCRチューブ(200μL容量)に入れる。別途、新規発光基質(1a,1b,1c,1d,2c,2d)をHEPESバッファーにより希釈し0.1μMになるように希釈する。その希釈基質溶液から50μLを分注し、前述したPCRチューブに添加したのち、直ちにデジタルカメラ(PowerShot G7X, Cannon)によりその発光写真を30秒露光時間で撮影した。その結果、実施例1より予測されたように、1d = 2d > 1c = 2c > 1b > 1a > nCTZの順でレッドシフトしていることが確認できる。その発光輝度においては、1c、2c、1d、2dあたりの輝度が比較的に弱いものの、これらの光は組織透過性の観点からすると、組織透過性が優れているため、生体試料中の発光イメージングに適している。
【0101】
実施例3:本実験では、新規発光基質の濃度と発光輝度との相関性に関する検討を行った(
図11)。まず、カラム精製した生物発光酵素16(ALuc(登録商標)16)をHEPESバッファーにより1μMに希釈した。一方、新規発光基質においては、その濃度を0.025、0.05、0.1、0.25、0.5、1、2.5、5、10、25、50、100 μMになるようにHEPESバッファーを用いて希釈した。次に、黒フレームの96穴マイクロプレートに、前述した濃度違いの新規発光基質を予め30μLずつ分注しておく。次にマルチチャンネルピペットを用いて、この96穴マイクロプレートに前述したALuc(登録商標)16溶液を30μLずつ同時に添加してから直ちにIVISイメージングシステムに移してその発光輝度を同時に測定した。
【0102】
その結果、nCTZの場合、2.5μMの基質濃度から発光輝度が急速に増加することが分かる。1シリーズの発光基質を添加した場合、基質の種類によって発光輝度の変化が大きく異なった。1aの場合、25μMの濃度から急激な発光輝度の上昇がみられた。1bの場合、5μMの濃度から発光輝度の上昇がみられた。2シリーズの場合、2c>2d>2a>2bの順番で発光輝度が高かった。とりわけ2cの場合、5μMの濃度から発光輝度が大きく上昇することが分かる。一方、3シリーズの場合、その発光輝度が3c=3d>3a>3bの順で発光輝度が良かった。3cと3dの場合、他の発光基質と同様に約5μMの濃度から発光輝度の上昇がみられた。
【0103】
実施例4:本発明で開発した発光基質は、特定発光酵素に選択性を持つことを実証するために以下の実験を実施した。
【0104】
具体的にはMDA−MB−231 細胞を予め黒フレームの96ウェルオプティカルマイクロプレート(Thermo Fisher)に培養し、ウェル底面積の90%が埋まるまで細胞培養した。その後、それぞれの海洋生物由来の発光酵素(GLuc、RLuc、RLuc8.6−535、RLuc8.6−535SG、ALuc(登録商標)16、ALuc(登録商標)23、ALuc(登録商標)49など)をコードするプラスミドを細胞にトランスフェクションし、発光酵素を一過性発現させた。トランスフェクション後、1日間CO
2インキュベーター内でインキュベーションした後、マイクロプレートを(1)生細胞測定用と(2)ライセート測定用に分けて実験を進める。(1)生細胞測定の場合、まず細胞が剥がれないように注意深く液体培地を吸い取り除いた後、各ウェルの底に付着している細胞に、マルチチャンネルマイクロピペット(Gilson)を用いて40μLの発光基質(濃度:0.1mM)を同時に添加した後、そのマイクロプレートを直ちにIVISイメージングシステム(Caliper Life Sciences)に入れて、発光輝度を測定した。一方、(2)ライセート測定の場合、まず、液体培地を除去し、マイクロプレートの各ウェルに50μLのプロメガ製の細胞溶解試薬(ライシスバッファー)を添加し、20分間インキュベーションした。その後、細胞溶解液を10μLずつ取り、黒フレームの96ウェルオプティカルマイクロプレート(Thermo Fisher)に移した。更に発光測定をするために、マルチチャンネルマイクロピペット(Gilson)を用いて40μLの発光基質(濃度:0.1mM)を各ウェルに同時に添加した後、そのマイクロプレートを直ちにIVISイメージングシステム(Caliper Life Sciences)に入れて、発光輝度を測定した。
【0105】
その結果、
図12の結果を得た。即ち、生細胞イメージングを行った時には(
図12(A))、基質1aを添加した場合、主にRLucシリーズの発光酵素が選択的に発光することが分かる。また、3aを添加した場合、NanoLucに一定の選択性を示した。一方、3dを添加した場合、NanoLucに高い選択性を示した。一方、nCTZを加えた場合、とりわけALuc(登録商標)シリーズの発光酵素が高い発光輝度を示した。
【0106】
一方、細胞ライセートイメージングを行った時には(
図12(B))、生細胞のケースと同じ傾向の選択性結果を示したが、ライセートの方がより鮮明にその選択性が確認できた(バックグラウンド発光が低かった)。また、nCTZを加えた場合、ALuc(登録商標)シリーズの発光輝度が生細胞のケースに比べて比較的に明るかった。
【0107】
実施例5: 新規発光基質の発光輝度の経時変化を測定した(
図13)。まず、前述した新規発光基質をHEPESバッファーより希釈して濃度が25μM、50μM、100μMになるように準備し、それぞれの発光基質希釈液を40μL取り、黒フレームの96ウェルオプティカルマイクロプレート(Thermo Fisher)に移した。更にこのマイクロプレートをベルトールド製のマイクロプレートリーダーにセットした。一方、発光酵素側においては、精製済みのALuc(登録商標)16をHEPESバッファーに希釈して1μMになるように調整した。更にこの発光酵素溶液を前述したマイクロプレートリーダーのインジェクターにプライムした。発光測定においては、発光酵素溶液インジェクト後0.1秒刻みで発光輝度測定を行った。
【0108】
その結果、1シリーズにおいては、1a添加においてその発光輝度の上昇が著しく、とりわけ基質の濃度が50μM、100μMになった場合においてその輝度の上昇が高かった(
図13(A))。2シリーズの場合、2Cの添加による発光輝度の上昇が著しく、その基質濃度が50μM、100μMである場合、とりわけ発光輝度が高かった(
図13(B))。3シリーズの場合、3cと3dの濃度が50μMや100μMである場合、比較的に発光輝度が高かった(
図13(C))。nCTZの場合、発光基質のいずれの濃度においても発光輝度が高かった(
図13(D))。
【0109】
実施例6:新規発光基質の生体試料の中での化学的な安定性を検証した(
図14)。そのために、濃度違いの血清を用いた実験系をセットした。まず、20μLのHEPESバッファーのみ(血清0%)またはHEPESバッファーと牛胎児血清(fetal bovine serum、FBS)の混合液(血清30%、血清60%、血清100%)を予め96ウェルオプティカルマイクロプレート(Thermo Fisher)に導入する。その後、各発光基質(1シリーズ、2シリーズ、3シリーズ)を0.1μMになるように調整した後、マルチチャンネルマイクロピペット(Gilson)を用いてそれぞれ20μLずつの発光基質液を前述した血清混合液入りのマイクロプレートに同時に添加する。その結果、各血清の最終濃度は、それぞれ0%、15%、30%、50%になる。このマイクロプレートを直ちにIVISイメージングシステム(Caliper Life Sciences)に入れて、発光輝度を測定した。
【0110】
その結果、全般的に、血清の割合が高ければ高いほど、自家発光の傾向が激しく表れた。1シリーズ、2シリーズ、3シリーズの中では、1シリーズにおいて自家発光の傾向が著しかった。
【0111】
実施例7:本新規発光基質と生物発光酵素間の組み合わせに基盤した発光システムが実際にバイオアッセイに使用できるかどうかを検証するために、本発光システムを発光プローブのバイオアッセイに適用してみた(
図15)。
【0112】
本実験は、免疫抑制物質・長寿要因物質として知られているラパマイシンを測定するバイオアッセイ系の構築に関するものである。まず、金らの既開発の発光イメージングプローブ(分子歪みセンサー、TP2.4)を用いて、ラパマイシン活性の測定実験を行った(
図15)。このプローブの作動原理は、まずラパマイシンに応答してその発光プローブ内の蛋白質―蛋白質間の相互作用(PPI)が起こり、その結果、分子歪みがその蛋白質の間に挟まれた発光酵素に及ぶ。分子歪みを受けた生物発光酵素23(ALuc(登録商標)23)は、発光輝度を上昇させる特徴があり、その程度も濃度依存的であるため、バイオアッセイが可能である。
【0113】
TP2.4をコードするプラスミドを安定発現するCOS−7細胞(アフリカミドリサル腎臓由来細胞)を6ウェルマイクロスライド(ibidi社、Germany)に培養し、ウェル底面の80%が埋まるまで培養した。その後、マイクロスライドを(1)生細胞測定用と(2)ライセート測定用に分けて次の実験を進める。(1)生細胞測定の場合、まず細胞が流されないように注意深く液体培地を吸い取り除いた後、各ウェルの底に付着している細胞に、マルチチャンネルマイクロピペット(Gilson)を用いて60μLの発光基質(濃度:0.1M)を同時に添加した後、そのマイクロスライドを直ちにIVISイメージングシステム(Caliper Life Sciences)に入れて、発光輝度を測定した。一方、(2)ライセート測定の場合、6ウェルマイクロスライドの培地を除いた後、プロメガ製のライシスバッファーを50μL添加して20分間放置した。その後、マルチチャンネルマイクロピペット(Gilson)を用いて50μLの発光基質(濃度:0.1mM)を同時に添加した後、そのマイクロスライドを直ちにIVISイメージングシステム(Caliper Life Sciences)に入れて、発光輝度を測定した。
【0114】
その結果、ラパマイシン無し(w/o rapa)に比べて、ラパマイシン有り(w/ rapa)の条件で、発光輝度が全般的にラパマイシン刺激依存的に上昇する現象が確認できた。そのレベルはnCTZの場合が一番著しいが、新規発光基質を加えた場合も、同様に発光輝度がラパマイシン依存的に上昇した。
【0115】
実施例7:新規開発した生物発光基質と生物発光酵素(ALuc(登録商標))間の組み合わせによる輝度変化の検証(
図16)。この実験を実施するために、まず、MDA−MB−231細胞を黒フレームの96穴マイクロプレートに培養した。その後、代表的なALuc(登録商標)類をコードするプラスミドを細胞にトランスフェクションしてから1日間インキュベーションした。その後、ラパマイシン有り無しの培地に培地交換を行い更に5時間インキュベーションした。一方、新規発光基質は、原液からHEPESバッファー希釈により0.1μMになるように調整した。
【0116】
その後、マイクロプレートの培地を除去した後、マルチチャンネルマイクロピペットを用いて、前述した発光基質を一気に添加してからそのプレートを直ちにIVISイメージングシステム(Caliper Life Sciences)に入れて、発光輝度を測定した。
【0117】
その結果、全般的に良い発光輝度を示すことが分かったが、とりわけ高い発光輝度を示したのは、A16−DEVD−MLSであった。この発光酵素は、ALuc(R)16にMLSを繋げたため、細胞膜に局在するようにデザインされた発光酵素である。A16−DEVD−MLSがとりわけ高い輝度を示した理由としては、この発光酵素が細胞膜に局在するため、発光基質が細胞膜を透過しなくても容易に発光酵素と発光反応を示すことができるためである。一般的に、ALuc(登録商標)シリーズは、小胞体に局在するため発光基質が細胞膜を透過したのち、更に小胞体膜も透過しないとならず、発光基質が2回細胞膜を通るため、どうしても発光基質のサプライに停滞が起こり、その分、発光輝度が弱まったと思われる。