(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-148455(P2021-148455A)
(43)【公開日】2021年9月27日
(54)【発明の名称】連続カラムクロマトグラフィーユニット
(51)【国際特許分類】
G01N 30/50 20060101AFI20210830BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20210830BHJP
G01N 30/04 20060101ALI20210830BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20210830BHJP
G01N 30/74 20060101ALI20210830BHJP
G01N 30/64 20060101ALI20210830BHJP
G01N 30/78 20060101ALI20210830BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20210830BHJP
G01N 30/46 20060101ALI20210830BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20210830BHJP
B01D 15/18 20060101ALI20210830BHJP
C07K 1/16 20060101ALI20210830BHJP
【FI】
G01N30/50
G01N30/86 V
G01N30/86 P
G01N30/04 P
G01N30/88 J
G01N30/86 B
G01N30/74 E
G01N30/74 Z
G01N30/64 A
G01N30/78
G01N30/26 N
G01N30/46 G
B01D15/00 K
B01D15/18
C07K1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-45506(P2020-45506)
(22)【出願日】2020年3月16日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2019年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業」「バイオ医薬品の高度製造技術の開発/バイオ医薬品連続生産等の基盤技術開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】516094456
【氏名又は名称】次世代バイオ医薬品製造技術研究組合
(71)【出願人】
【識別番号】390024442
【氏名又は名称】株式会社ワイエムシィ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河▲崎▼ 忠好
(72)【発明者】
【氏名】山子 知織
(72)【発明者】
【氏名】矢野 智弘
(72)【発明者】
【氏名】広田 潔憲
【テーマコード(参考)】
4D017
4H045
【Fターム(参考)】
4D017AA09
4D017BA07
4D017CA01
4D017CA11
4D017CB01
4D017DA03
4D017EA05
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA40
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA21
4H045GA23
4H045GA26
(57)【要約】
【課題】タンパク質の連続精製工程において、純度が高く安定な精製タンパク質を得るために、精製に用いるカラムの状態をモニターし、異常を生じたカラムを迅速に発見し交換する方法が望まれている。
【解決手段】2本の独立したカラムを用いるカラムスイッチング法において、一方のカラムが生体高分子の精製工程を行う場合に、他方のカラムで洗浄再生工程に続き評価用サンプルのカラム通過後の濃度のパターン解析を行うことを特徴とする連続精製方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入口が精製用サンプル供給管または洗浄液供給管と接続し、かつ対応する導出口が各々別個の導出管と接続する2本の独立したカラムAおよびカラムBを設けた精製システムを用いて、一方のカラムが生体高分子の精製工程を行う場合は、他方のカラムは洗浄再生工程を行うことを特徴とする生体高分子の連続精製方法において、洗浄再生工程において洗浄液供給管に設けられた評価用サンプル供給装置により供給された評価用サンプルのカラム通過後の濃度のパターン解析を行うことを特徴とする連続精製方法。
【請求項2】
導出管が、検出装置に接続され、精製サンプル排出管および洗浄廃液排出管に分岐することを特徴とする請求項1記載の連続精製方法。
【請求項3】
評価用サンプルのカラム通過後の濃度のパターン解析を工程管理に用いることを特徴とする請求項1または請求項2記載の連続精製方法
【請求項4】
評価用サンプルのカラム通過後の濃度のパターン解析により、カラムの交換時期が把握できる請求項1から請求項3いずれか1項に記載の連続精製方法。
【請求項5】
評価用サンプルのカラム通過後の濃度のパターン解析によりカラム状態の異常が検知された場合にシステムを自動停止することを特徴とする請求項4記載の連続精製方法。
【請求項6】
医薬品の連続生産において、カラム精製の個別結果および当該カラムの状況が自動的に記録されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載される連続精製方法。
【請求項7】
洗浄再生工程における評価用サンプルのカラム通過後の濃度のパターン解析による工程管理が、導出管に接続された検出装置によるクロマトグラムパターンの理論段数と分離されたピークの対称性の測定結果に基づくカラムの充填状態の評価により行われることを特徴とする請求項3記載の連続精製方法。
【請求項8】
精製工程が、精製用サンプルがカラムに添加された後にカラム中の樹脂に吸着される工程であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載された連続精製方法。
【請求項9】
精製工程が、1以上の精製条件から成り、精製用サンプルがカラムに添加されカラム中の樹脂に吸着される工程、未吸着の不純物や過剰な精製用サンプルが緩衝液により洗浄される工程、精製サンプルの溶出工程または洗浄溶出工程の少なくともひとつを組み合わせた工程であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載された連続精製方法。
【請求項10】
精製工程が、精製用サンプルがカラム通過中に不純物が樹脂に吸着される工程であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載された連続精製方法。
【請求項11】
洗浄再生工程が、カラムの未吸着の不純物や過剰な精製用サンプルが緩衝液により洗浄される工程、精製サンプルの溶出工程または洗浄溶出工程、注射用水または無菌精製水または緩衝液による洗浄工程、カラムの再生洗浄工程および樹脂の平衡化工程から選択されるひとつ以上の工程と、試験用サンプルによる試験工程を組み合わせた工程であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載された連続精製方法。
【請求項12】
洗浄再生工程が、カラムの洗浄溶出工程、注射用水または無菌精製水または緩衝液による洗浄工程、カラムの再生洗浄工程、樹脂の平衡化工程または試験用サンプルによる試験工程の少なくともひとつを組み合わせた工程であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載された連続精製方法。
【請求項13】
精製用サンプルが生体高分子を含有する溶液であることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載された連続精製方法。
【請求項14】
生体高分子が抗体であることを特徴とする請求項13記載の連続精製方法。
【請求項15】
評価用サンプルが塩化ナトリウム溶液または試験用高濃度緩衝液、または紫外部に吸収を持つ低分子化合物を含む溶液、または屈折率を測定することが出来る高濃度低分子溶液であることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載された方法。
【請求項16】
2本の独立したカラムAおよびカラムBを設けた精製装置において、一方のカラムの導入口が第一の四方切替バルブを介して、精製用サンプル供給管と接続し、他方のカラムが第一の四方切替バルブを介して評価用サンプル供給装置と接続可能な洗浄液供給管と接続し、かつ対応する導出口が各々第二の四方切替バルブを介して、精製サンプル排出管および洗浄廃液排出管へ分岐しかつ評価用サンプル濃度のパターン検出装置を設けた2つの導出管と別個に接続することを特徴とする精製装置。
【請求項17】
精製用サンプル供給管が、生体高分子含有溶液導入管、平衡化用緩衝液導入管、溶出液導入管、洗浄溶出工程用緩衝液導入管のいずれか一つ以上または組み合わせて接続可能な請求項16記載の精製装置。
【請求項18】
洗浄液供給管が、平衡化用緩衝液導入管、溶出液導入管、洗浄溶出用緩衝液導入管、注射用水又は無菌精製水または緩衝液導入管、カラムの再生洗浄液導入管および樹脂の平衡化緩衝液導入管のいずれか一つ以上または組み合わせて接続可能な請求項16または請求項17記載の精製装置。
【請求項19】
評価用サンプル導入装置が、サンプルインジェクションバルブにより洗浄液導入管と接続されていることを特徴とする請求項16から請求項18のいずれか1項に記載の精製装置。
【請求項20】
四方切替バルブが四方ロータリーバルブであることを特徴とする請求項16から請求項19のいずれか1項に記載された精製装置。
【請求項21】
評価用サンプル濃度のパターン検出装置が、電気伝導度測定装置、紫外部、可視部吸収測定装置または屈折率測定装置のいずれか一つ以上または組み合わせた検出手段を備えた装置であることを特徴とする請求項16から請求項20のいずれか1項に記載の精製装置。
【請求項22】
単回使用に適するように、カラム、インラインフィルターおよび検出装置がルアーロック型接続器で装置に結合されていることを特徴とする請求項16から請求項21のいずれか1項に記載の精製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のカラムを用いたクロマトグラフィーによるタンパク質の連続精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬品の精製においては一般的に遺伝子組換えにより目的物を発現させることが出来る動物細胞や酵母あるいは菌体などの宿主を培養し、宿主細胞内あるいは培養液中に分泌させた原料から細胞や沈殿物などの固形物を除去した後2〜3ステップのクロマトグラフィーによる精製工程を経て精製されることが多い。またこれらのクロマトグラフィー精製においては分離剤を充填したカラムの大きさにより1回の操作により精製される目的物の量には限度があることから複数回の回分処理により精製されることが多い。その為、大量に目的物を得るためには大型のカラムを用いる必要があることや回分処理による低効率や用いる分離剤の経済的な問題などからより効率的な方法が求められている。
【0003】
また、従来バイオ医薬品はその生産アップストリームである生産細胞の培養によるタンパク質の生産工程においても、バッチ法による培養法あるいはフェドバッチ培養法等、非連続方法により製造されて来たが、灌流培養法によるタンパク質の製造技術の進展により、連続生産法に切り替えるべきだとの要望がある。このためダウンストリームの精製法においてもそれに対応できる連続的な処理が求められている。
【0004】
しかしながら従来から行われているカラムクロマトグラフィーの単なる連続的な繰り返しによる分離精製法では工程の再現性及び精製された目的物の品質に対する担保が困難なである。そのような状況の中、次のような方法が新たな精製手法として着目されている。
【0005】
複数のカラムに連続的にプロセス液を流しながら分離・精製や洗浄再生などを連続的に行ういわゆる擬似移動床(SMB)型分離・精製法が知られている(非特許文献1)。SMBによる分離法はカラム本数を多くすることで大量のプロセス液を連続的に処理することが可能なことから培養液から目的物を回収するいわゆるダウンストリーム前半のキャプチャリングの目的で用いられているが、その工程の再現性及びカラムの安全性については疑問が残る。
【0006】
ダウンストリームの後半、いわゆるポリッシングにおいては、微量の不純物を分離できる高性能の分離能力が求められることから、高性能分離剤を細密充填したカラムを用いて精製する精製法が採用されている。この精製法の連続的な精密精製法としては高性能分離用カラムを複数用いて順次プロセス液を処理するカラムスイッチング法が開発され、分離・精製と洗浄を交互に繰り返して目的物を連続的に精製する装置は既に開発されている(非特許文献2、特許文献1)。
【0007】
また一本の分離カラムで分離された試料を再度同一の分離カラムへ再循環させる液体クロマトグラフィーにおいて、それぞれ分離カラムを有する2つの流路と、前記流路の連結と切り離しを行う2つの流路切替バルブとを備え、リサイクル分離時において、前記流路切替バルブの切り換えによって、2つの分離カラム間における試料の再導入の導入方向を切り換えることを特徴とする液体クロマトグラフィーが知られている(特許文献2)。
【0008】
しかしながら一般的にこのようなカラムスイッチング法に用いられているカラムは精製開始前に微生物やエンドトキシンの不活化処理の他、分離剤の充填状態の確認を行いその適格性を確認した後に使用されているが、一旦連続精製が開始された後においては精製と洗浄・再生が繰り返されても充填状態の確認はなされず繰り返しの精製においてその適格性の確認が行われることは無い。
【0009】
カラムに充填された分離剤の充填状態を確認し、その適格性を確認する方法として低分子サンプル(例えば高濃度塩溶液)をパルス状にカラムに添加し、その溶出位置や形からカラムの理論段数(N/m)やピーク対称性(Af)を測定する方法、またこれらの測定に対してモニターからの信号を一次微分してその一次微分曲線の集合から連続的に理論段数を測定する手法が知られている(非特許文献3)。当該技術を用いて、従来の非連続的なタンパク質の生産においては定期的に製造を停止して、理論段数及びピーク対称性の測定を行いカラム適格性の点検が行われているが、連続的な生産方法において、製造を停止せずにカラム適格性の点検を行うことはできない。
【0010】
このため連続的精製では、連続生産終了後の定期的な点検により異常が発見された場合に、いつの段階で異常が生じたか不明であり、大量の製品を出荷停止にしなければならないことが問題である。
【0011】
タンパク質の連続精製工程において、常に純度高く安定な精製タンパク質を得るために、精製に用いるカラムの状態をモニターし、異常を生じたカラムを迅速に発見して連続精製に用いる方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2014−001979
【特許文献2】特開2006−201039
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Rahul Godawat(ラウル ゴダワット)他、Journal of Biotechnology(ジャーナル オブ バイオテクノロジー)、2015年、213巻、13―19頁
【非特許文献2】杉山征樹 他、日本食品工学誌、2018年、19巻、1号、35−41頁
【非特許文献3】Yuanyuan Cui(ユアンユアン キュイ)他、”UsingDirect Transition Analysis in Chromatography(ユージング トランジション アナリーシス イン クロマトグラフィー)”、Bio Pharm International(バイオファーム インターナショナル、オンライン)、2018年 1月8日、31巻、1号、34−40頁(2020年1月21日検索)、インターネットhttp://www.biopharminternational.com/using-direct-transition-analysis-chromatography
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
精密分離精製法においては微量な不純物や目的対象物由来不純物など物理的、化学的特性が非常に似た物質を分離するなど高性能の分離能が求められるため比較的小さな粒子径の分離剤を最密充填したカラムを用いることが多い。そのためカラム中の分離剤の充填状態が変化した場合には分離性能が変化する。連続して繰り返しカラムを用いて精製する精製法においてはカラムの充填状態は、一定の規格の製品を得るうえで非常に重要な要素となる。特に医薬品の製造においては不純物の混入により重篤な副作用を引き起こすことも懸念されることから製造における再現性は非常に重要な要素となる。
【0015】
従来のカラムスイッチング法による連続分離精製法では、カラムの洗浄再生操作後に毎回分離剤の充填状態が確認されているわけでは無く、連続精製の最初と最後の精製処理後、あるいは連続精製処理を10回、20回等一定のインターバルで行った後に充填状態を確認していた。しかし、カラム内の分離剤の充填状態が変化する可能性があり、従来の連続精製におけるカラムの分離剤の充填剤の確認方法では、異常が発見された時点で、過去のどの時点から異常が生じたのか判定が困難となり、生産されたロット全てを廃棄する等大きな生産ロスを招いていた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、
〔1〕導入口が精製用サンプル供給管または洗浄液供給管と接続し、かつ対応する導出口が各々別個の導出管と接続する2本の独立したカラムAおよびカラムBを設けた精製システムを用いて、一方のカラムが生体高分子の精製工程を行う場合は、他方のカラムは洗浄再生工程を行うことを特徴とする生体高分子の連続精製方法において、洗浄再生工程において洗浄液供給管に設けられた評価用サンプル供給装置により供給された評価用サンプルのカラム通過後の濃度のパターン解析を行うことを特徴とする連続精製方法、
〔2〕導出管が、検出装置に接続され、精製サンプル排出管および洗浄廃液排出管に分岐することを特徴とする〔1〕記載の連続精製方法、
〔3〕評価用サンプルのカラム通過後の濃度のパターン解析を工程管理に用いることを特徴とする〔1〕または〔2〕記載の連続精製方法、
〔4〕評価用サンプルのカラム通過後の濃度のパターン解析により、カラムの交換時期が把握できる〔1〕から〔3〕いずれかひとつに記載の連続精製方法、
〔5〕評価用サンプルのカラム通過後の濃度のパターン解析によりカラム状態の異常が検知された場合にシステムを自動停止することを特徴とする〔4〕記載の連続精製方法、
〔6〕医薬品の連続生産において、カラム精製の個別結果および当該カラムの状況が自動的に記録されることを特徴とする〔1〕から〔5〕のいずれかひとつに記載される連続精製方法、
〔7〕洗浄再生工程における評価用サンプルのカラム通過後の濃度のパターン解析による工程管理が、導出管に接続された検出装置によるクロマトグラムパターンの理論段数と分離されたピークの対称性の測定結果に基づくカラムの充填状態の評価により行われることを特徴とする〔3〕記載の連続精製方法、
〔8〕精製工程が、精製用サンプルがカラムに添加された後にカラム中の樹脂に吸着される工程であることを特徴とする〔1〕から〔7〕のいずれかひとつに記載された連続精製方法、
〔9〕精製工程が、1以上の精製条件から成り、精製用サンプルがカラムに添加されカラム中の樹脂に吸着される工程、未吸着の不純物や過剰な精製用サンプルが緩衝液により洗浄される工程、精製サンプルの溶出工程または洗浄溶出工程の少なくともひとつを組み合わせた工程であることを特徴とする〔1〕から〔7〕のいずれかひとつに記載された連続精製方法、
〔10〕精製工程が、精製用サンプルがカラム通過中に不純物が樹脂に吸着される工程であることを特徴とする〔1〕から〔7〕のいずれかひとつに記載された連続精製方法、
〔11〕洗浄再生工程が、カラムの未吸着の不純物や過剰な精製用サンプルが緩衝液により洗浄される工程、精製サンプルの溶出工程または洗浄溶出工程、注射用水または無菌精製水または緩衝液による洗浄工程、カラムの再生洗浄工程および樹脂の平衡化工程から選択されるひとつ以上の工程と、試験用サンプルによる試験工程を組み合わせた工程であることを特徴とする〔1〕から〔10〕のいずれかひとつに記載された連続精製方法、
〔12〕洗浄再生工程が、カラムの洗浄溶出工程、注射用水または無菌精製水または緩衝液による洗浄工程、カラムの再生洗浄工程、樹脂の平衡化工程または試験用サンプルによる試験工程の少なくともひとつを組み合わせた工程であることを特徴とする〔1〕から〔10〕のいずれかひとつに記載された連続精製方法、
〔13〕精製用サンプルが生体高分子を含有する溶液であることを特徴とする〔1〕から〔12〕のいずれかひとつに記載された連続精製方法、
〔14〕生体高分子が抗体であることを特徴とする〔13〕記載の連続精製方法、および
〔15〕評価用サンプルが塩化ナトリウム溶液または試験用高濃度緩衝液、または紫外部に吸収を持つ低分子化合物を含む溶液、または屈折率を測定することが出来る高濃度低分子溶液であることを特徴とする〔1〕から〔14〕のいずれかひとつに記載された方法に関する。
【0017】
更に本発明は、
〔16〕2本の独立したカラムAおよびカラムBを設けた精製装置において、一方のカラムの導入口が第一の四方切替バルブを介して、精製用サンプル供給管と接続し、他方のカラムが第一の四方切替バルブを介して評価用サンプル供給装置と接続可能な洗浄液供給管と接続し、かつ対応する導出口が各々第二の四方切替バルブを介して、精製サンプル排出管および洗浄廃液排出管へ分岐しかつ評価用サンプル濃度のパターン検出装置を設けた2つの導出管と別個に接続することを特徴とする精製装置、
〔17〕精製用サンプル供給管が、生体高分子含有溶液導入管、平衡化用緩衝液導入管、溶出液導入管、洗浄溶出工程用緩衝液導入管のいずれか一つ以上または組み合わせて接続可能な〔16〕記載の精製装置、
〔18〕洗浄液供給管が、平衡化用緩衝液導入管、溶出液導入管、洗浄溶出用緩衝液導入管、注射用水又は無菌精製水または緩衝液導入管、カラムの再生洗浄液導入管および樹脂の平衡化緩衝液導入管のいずれか一つ以上または組み合わせて接続可能な〔16〕または〔17〕記載の精製装置、
〔19〕評価用サンプル導入装置が、サンプルインジェクションバルブにより洗浄液導入管と接続されていることを特徴とする〔16〕から〔18〕のいずれかひとつに記載の精製装置、
〔20〕四方切替バルブが四方ロータリーバルブであることを特徴とする〔16〕から
〔19〕のいずれかひとつに記載された精製装置、
〔21〕評価用サンプル濃度のパターン検出装置が、電気伝導度測定装置、紫外部、可視部吸収測定装置または屈折率測定装置のいずれか一つ以上または組み合わせた検出手段を備えた装置であることを特徴とする〔16〕から〔20〕のいずれかひとつに記載の精製装置、および
〔22〕単回使用に適するように、カラム、インラインフィルターおよび検出装置がルアーロック型接続器又はトライクランプ(TC)型接続器で装置に結合されていることを特徴とする〔16〕から〔21〕のいずれかひとつに記載の精製装置に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明による精製装置は洗浄および再生処理を毎回行った後理論段数の測定とピーク対称性を測定することでカラムスイッチング方式での繰返し操作による連続クロマトグラフィー精製法により、精製される目的対象物の品質を担保することが出来る。
【0019】
本発明による精製装置では従来1本のカラムを用いて開発した精製条件をそのまま用いることが出来るばかりでなく、カラムの洗浄や再生条件に付いても同様であることから分離剤の寿命に関しても従来の方法と同様に考えることが可能である。更に、2本のカラムを切り替えて再生洗浄を行う度毎に毎回カラムの充填状況を確認することが出来ることから異常を生じたカラムを用いて精製を開始する前に運転を停止することが出来ることから精製された目的物の品質についても同等性を担保することが出来る。
【0020】
本発明の効果として以下の事項が挙げられる。
(1)本発明の装置は、複数のクロマトグラフィーカラムを接続して連続的にプロセス液を処理することが出来ると同時にプロセス液を処理していない他のカラムは洗浄、再生及びカラム効率(理論段数及びピーク対称性)の測定ができる装置である。
(2)本発明は(1)の機能を遂行するため、プロセス液の分離精製を行うポンプ及びモニターを含む送液系とカラムの洗浄、再生、カラム効率の測定を行う送液系は別々に備えられてバルブで切り替えることが出来る。
(3)本発明の装置においては、予め洗浄、再生、平衡化が図られたカラムに所定量のプロセス液を添加して分離精製操作が終了した後はバルブを切り替えることにより洗浄、再生及びカラム効率(理論段数及びピーク対称性)の測定をする送液系に切り替えることが出来る。一方、予め洗浄、再生、平衡化が図られ新たに切り替えられたカラムには分離精製を行う為の送液系に切り替えて所定量のプロセス液を添加して分離精製操作を行うことができる。
(4)本発明の装置においては、(3)の機能を遂行するため、カラムの洗浄、再生の為の送液系にはカラム効率(理論段数及びピーク対称性)を測定することが出来るためのサンプル注入用バルブを備えており、洗浄が終了した後カラム効率を測定することが出来る。
(5)更に本発明の装置は(3)の機能を遂行するため、カラム効率(理論段数及びピーク対称性)の測定には所定量のサンプルを添加するためのサンプルループを備えたバルブを経由して添加することもできるが添加するサンプルの量が多い場合にはバルブを経由して直接ポンプからサンプルを添加することができる。
(6)本発明の装置においては、分離精製に供したカラムは毎回洗浄、再生、平衡化を行った後にカラム効率(理論段数及びピーク対称性)の測定を自動的に測定することができる。
(7)本発明の装置に接続するカラムは分離モードにより異なり、アフィニティー、イオン交換、疎水性、逆相、順相、ヒドロキシアパタイトやマルチモードなどの他、活性炭や珪藻土吸着剤などを充填したカラム及び膜型クロマトグラフィー分離媒体などどのような分離媒体でも用いることができる。
(8)分離精製モードは目的対象物を一旦充填剤などの分離媒体に結合させた後、各種溶出条件を変化させることにより目的物と不純物を分離する吸着・分離型(B/E型)の分離法の他目的対象物は充填剤などの分離媒体に吸着させず、不純物を吸着させるフロースルー型(FT型)分離法などどのような分離手法にも用いることができる。
(9)吸着・分離型(B/E型)の分離法においては溶出液中の塩濃度や吸着阻害物質の濃度或いはpHや温度など溶出条件を段階的に変化させて分離精製する段階的溶出法や連続的に変化させるグラジエント(勾配型)型溶出法など基本的にはどのような分離法にも用いることが出来る。
(10)本発明の装置は固形物を除去した不純物を多く含む清澄化プロセス液や目的物を部分的に精製した粗精製プロセス液或いは最終精製プロセス液など何れの分離精製工程においても連続的な精製法として用いることができる。
(11)本発明の複数のカラムを用いた装置は1本のカラムを用いて至適化した条件を忠実に再現することが出来ることからカラムの洗浄条件やカラムの再生条件、プロセス液の添加量、分離条件の設定及びカラムの寿命など従来のプロセス開発法を生かした連続精製法を確立することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、B/E型陽イオン交換カラムを用いた2−カラムスイッチング法による精製装置である。
【
図2】
図2は、FT型陰イオン交換カラムを用いた2−カラムスイッチング法による精製装置である。
【
図3】
図3は、B/E型プロテインAアフィニティーカラムを用いたカラムスイッチング法による精製装置であり、シングルユース対応に設計されている。
【
図4】
図4は、抗体のプロテインAアフィニティーカラムを用いた連続6サイクル精製における、カラムスイッチングによる6サイクル工程の以下の(a)〜(f)に関する結果を示したものである。(a)精製工程におけるUV280吸収測定、(b)洗浄工程でのUV280吸収測定による理論段数測定、(c)精製工程でのpH測定、(d)洗浄工程でのpH測定、(e)精製工程における電気伝導度測定、(f)洗浄工程における電気伝導度測定により理論段数測定
【
図5】
図5は、抗体の陽イオン交換カラムを用いた連続6サイクル精製における、カラムスイッチングによる6サイクル工程の以下の(a)〜(f)に関する結果を示した。(a)精製工程におけるUV280吸収測定、(b)洗浄工程でのUV280吸収測定による理論段数測定、(c)精製工程でのpH測定、(d)洗浄工程でのpH測定、(e)精製工程における電気伝導度測定、(f)洗浄工程における電気伝導度測定により理論段数測定
【
図6】
図6は抗体の陰イオン交換カラムを用いた連続3サイクル精製における、カラムスイッチングによる3サイクル工程の以下の(a)〜(f)に関する結果を示した。(a)精製工程におけるUV280吸収測定、(b)洗浄工程でのUV280吸収測定による理論段数測定、(c)精製工程でのpH測定、(d)洗浄工程でのpH測定、(e)精製工程における電気伝導度測定、(f)洗浄工程における電気伝導度測定により理論段数測定
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の生体高分子の連続精製法における生体高分子とは、糖質、タンパク質、核酸等を示し、とりわけタンパク質の精製に用いることが好ましい。また、連続精製法とは、バッチ単位の精製法では無く、連続的に精製用サンプルを精製する方法であればどのようなものでも良いが、例えばバイオ医薬品の生産において、灌流培養等培養工程の連続生産と組み合わせて行うインテグレート方式であっても、ストックした大量の精製用サンプルを連続的な精製により処理する方法でもどちらでも良い。
【0023】
本発明の方法において、導入口が精製用サンプル供給管または洗浄液供給管と接続し、かつ対応する導出口が精製サンプル排出管または洗浄廃液排出管と接続する2本の独立したカラムAおよびカラムBを設けた精製システムとは、2本の独立したカラムAおよびカラムBの導入口が、第一の四方切替バルブを介して精製用サンプル供給管または洗浄液供給管と流体連結することが可能であり、かつ当該カラムAおよびカラムBの導出口が第二の四方切替バルブを介して精製サンプル排出管または洗浄廃液排出管と接続するシステムを示す。なお四方切替バルブとしては四方ロータリーバルブを用いることが好ましい。
【0024】
当該精製システムを用いると、一方のカラムが生体高分子の精製工程を行う場合に、他方のカラムが洗浄再生工程を行うことが可能であり、生体高分子の連続生産を円滑に遂行することが可能になる。
【0025】
本発明において精製用サンプル供給管とは、本発明の精製手段により精製するサンプルを供給する手段を意味し、当該サンプルを生産する培養槽または培養槽で生産されたサンプルの粗精製を行った精製手段と流体連結している配管を示す。また、本発明の態様によっては精製用サンプル供給管にバルブを介して各種洗浄液、精製用サンプルの溶出液等を流体連結し、必要によりカラムにこれらの溶液を供給しても良い。具体的には、精製用サンプル供給管が、生体高分子含有溶液導入管、平衡化用緩衝液導入管、溶出液導入管、洗浄溶出工程用緩衝液導入管のいずれか一つ以上または組み合わせて接続可能であればよい。
【0026】
本発明における精製用サンプルとしては、カラムを用いた精製を必要とする化学物質のうち、連続精製を必要とする生体高分子であればどのようなものでも良いが、タンパク質が好ましく、例えばアンジオテンシン、ブラジキニン、エンドセリン等のオータコイド、インターロイキン、造血因子、インターフェロン、腫瘍壊死因子、増殖因子、ケモカイン等のサイトカインとその受容体および抗体、その他免疫グロブリンおよびそのヒト化抗体、ヒト型抗体、FABや(FAB)
2などのフラグメント抗体、二官能性抗体等の改変体が挙げられる。
【0027】
また、本発明の連続精製方法には、緩衝液を用いることが好ましく、生体高分子の精製に用いる緩衝液であればどのようなものでも良いが、各種濃度のリン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム酢酸緩衝液、クエン酸ナトリウム緩衝液、トリス塩酸緩衝液またはトリス酢酸緩衝液、或いはこれらの緩衝液に塩化カルシウムや炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどの金属塩やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)やグリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)などの金属キレート剤を含む緩衝液の他タンパク質の安定性を確保するためにグリシンやアルギニンなどのアミノ酸やエチレングリコールや各種チオエーテル類などを混合した緩衝液などを用いる。
【0028】
本発明において、洗浄液供給管とは、本発明の精製工程および洗浄再生工程に用いられる各種洗浄液、精製用サンプルの溶出液が供給できるように、バルブを介してこれらの溶液と流体連結している配管を示す。洗浄液供給管には、評価用サンプル供給装置がサンプルインジェクションバルブを介して接続され、再生洗浄工程において評価用サンプルを供給しカラムの状況を検出できる機能を持たせたのが本発明の特徴の一つである。具体的には洗浄液供給管は、平衡化用緩衝液導入管、溶出液導入管、洗浄溶出用緩衝液導入管、注射用水または無菌精製水、または緩衝液導入管、カラムの再生洗浄液導入管および樹脂の平衡化緩衝液導入管のいずれか一つ以上または組み合わせて接続可能であれば良い。
【0029】
本発明において、導出管とは2本のカラムの導出口と別々に流体連結できる2本の配管を示し、これらの導出管は必要に応じて分岐して精製サンプル排出管、洗浄液排出管等へ流体連結できる構造を持つ。なお精製サンプル排出管は次の精製手段と流体連結可能な構造をしている。2本の導出管のうち少なくとも一つには評価用サンプルの検出装置が接続され、カラムの状況を検出できる機能を持たせたのが本発明の特徴の一つである。
【0030】
本発明の方法において、洗浄再生工程において洗浄液供給管に設けられた試験用サンプル供給装置により供給された評価用サンプルのカラム通過後の濃度のパターンの解析を行うとは、洗浄再生工程において洗浄液供給管に設けられた評価用サンプル供給装置により供給された評価用サンプルが、洗浄液供給管と接続したカラムの導入口からカラム内に入り、当該カラムの導出口から溶出された際の評価用サンプルの濃度に関して、前記導出管に設けられた検出装置により測定されたクロマトグラムパターンの理論段数と分離されたピークの対称性の測定値から、カラムの充填状態の評価を行うことを示す。
【0031】
上記方法により測定されたクロマトグラムパターンの理論段数と分離されたピークの対称性の測定値等、カラムの充填状態の評価値は自動的に記録されると共に、オペレーターが常に画面で確認できるため、精製の工程管理に用いることができる。更に、経験的に測定されたクロマトグラムパターンの理論段数と分離されたピークの対称性の測定値等、カラムの充填状態の評価値が乱れる連続精製回数を把握すれば、カラムの交換時期を予め把握することができる。更に、クロマトグラムパターンの理論段数と分離されたピークの対称性の測定値等が予め設定された基準値の範囲から外れた場合は、これを異常として検知することが可能である。当該検出装置は異常を検知した場合に、前記精製システムが組み込まれた精製工程の作業を中止させる信号を送信する。評価用サンプル供給装置とは、評価用サンプルである0.5M〜2.0M程度の高濃度NaCl溶液や高濃度緩衝液等の試験用サンプルを貯留した容器から洗浄液導入管とバルブを介して流体連結されているもので、所定量のサンプルを添加するためのサンプルループを備えたバルブを経由して添加することもできるが添加するサンプルの量が多い場合にはバルブを経由して直接ポンプからサンプルを添加することができる。
【0032】
本発明の別の態様として、精製用サンプル供給管と流体連結した一方のカラムにおいて精製工程として、精製用サンプルがカラムに添加された後にカラム中の樹脂に吸着される工程が行われ、他方のカラムにおいては洗浄再生工程として、カラムの未吸着の不純物や過剰な精製用サンプルが緩衝液により洗浄される工程、樹脂に吸着する精製サンプルの溶出工程または洗浄兼溶出工程、注射用水または無菌精製水または緩衝液による洗浄工程、カラムの再生洗浄工程、樹脂の平衡化工程または試験用サンプルによる試験工程の少なくともひとつの工程が他の工程と組み合わされて連続的に行われていればよい。
【0033】
また、本発明の別の態様として、精製用サンプル供給管と流体連結した一方のカラムにおいて精製工程として、精製用サンプルがカラムに添加されカラム中の樹脂に吸着される工程、未吸着の不純物や過剰な精製用サンプルが緩衝液により洗浄される工程、精製サンプルの溶出工程または洗浄溶出工程の少なくともひとつを組み合わせた工程を連続的に行う場合に、他方のカラムは、洗浄再生工程として、カラムの洗浄兼溶出工程、注射用水または無菌精製水または緩衝液による洗浄工程、カラムの再生洗浄工程、樹脂の平衡化工程または試験用サンプルによる試験工程の少なくともひとつ他の工程と組み合わせた工程を連続的に行えば良い。
【0034】
本発明のタンパク質の精製工程における精製手法は、分離モードにより異なり、アフィニティー、イオン交換、疎水性、逆相、順相、ヒドロキシアパタイトやマルチモードなどの他、活性炭や珪藻土吸着剤などを充填したカラム及び膜型クロマトグラフィー分離媒体などどのような分離媒体でも用いることができる。分離モードは目的対象物を一旦充填剤などの分離媒体に結合させた後、各種溶出条件を変化させることにより目的物と不純物を分離する吸着・分離型(B/E型)の分離法の他目的対象物は充填剤などの分離媒体に吸着させず、不純物を吸着させるフロースルー型(FT型)分離法などどのような分離手法にも用いることができる。吸着・分離型(B/E型)の分離法においては溶出液中の塩濃度や吸着阻害物質の濃度或いはpHや温度など溶出条件を段階的に変化させて分離精製する段階的溶出法や連続的に変化させるグラジエント(勾配型)型溶出法など基本的にはどのような分離法にも用いることが出来る。
【0035】
本発明に用いる洗浄液は、デキストランやアガロース、セルロースなどの多糖類を基材とした分離剤にあっては緩衝液に0.1M〜1.0M程度のNaOHやKOH水溶液及びそれらに各種濃度のNaClや硫酸ナトリウムなどの塩の他、メチルアルコールやエチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコールなどの有機溶媒やイオン性及び非イオン性各種界面活性剤を混合した溶液などをポンプでカラムに通液して洗浄される。一方、シリカゲルやガラスビーズ或いは破砕状ガラス及びコントロールドポアガラスなどの無機基材を用いた分離剤においては塩酸やリン酸などの酸の他、酢酸やクエン酸などの有機酸が用いられると共にそれらの酸に各種塩やアルコールを始めとした各種有機溶媒、或いは各種界面活性剤などを混合した溶液等が用いられる。
【0036】
本発明における洗浄再生工程においては、連続的に毎回カラムの充填状況を確認する手段として、カラム効率(理論段数及びピーク対称性)の測定を自動的に行うシステムを有する。具体的には洗浄液を導入する洗浄液供給配管系にカラムの充填状態を試験するための評価用サンプル供給装置を配置している。当該評価用サンプル供給装置は、洗浄液導入管とサンプルインジェクションバルブを介して流体連結されている。かかる評価用サンプル供給装置の設置によりカラムの洗浄が終了した後、カラムに評価用サンプルを注入することでカラム効率を測定することが出来る。更に注入されたサンプルのカラム導出後の評価用サンプルの濃度を測定するため、本発明の装置においては分岐した導出管の洗浄廃液排出管にサンプルの検出装置が設けられている。当該検出装置により評価用サンプルのクロマトグラムパターンから理論段数と分離されたピークの対称性が測定されるとともに、カラムの充填状態が評価される。検出装置がカラムの充填状態が悪いと評価すると、自動信号を、連続精製工程を管理する装置に送信し、生体高分子の連続精製操作は中断される。この中断中に評価が悪いと判断されたカラムは新しいカラムに交換することが出来る。
【0037】
本発明におけるサンプルの検出装置とは、試験用サンプルのクロマトグラムパターンから理論段数と分離されたピークの対称性が測定できるものであればどのようなものでもよく、かつ繰り返し検出された理論段数やピークの対称性に異常が見られた場合に、異常を認めた信号を発信できるものであれば良い。このような装置を用いることによりカラムの充填状態が自動的かつ連続的に評価される。具体的には、検出装置がカラムの充填状態が悪いと評価すると、自動信号を連続精製工程を管理する装置に送信できるものであればどのようなものでも良いが高濃度塩溶液や高濃度緩衝液を試験用サンプルとして用いる場合には東亜DDK社製電気伝導度計(品名:MM−43X−2−1A00)、堀場製作所製導電率計(品名:HE−960HS)などが適している。
【0038】
本発明は、2本の独立したカラムAおよびカラムBを設け、一方のカラムの導入口が第一の四方切替バルブ、好ましくは四方ロータリーバルブを介して、精製用サンプル供給管と接続し、他方のカラムが第一の四方切替バルブを介して評価用サンプル供給装置と接続可能な洗浄液供給管と接続し、かつ対応する導出口が各々第二の四方切替バルブ好ましくは四方ロータリーバルブを介して、精製サンプル排出管および洗浄廃液排出管へ分岐しかつ評価用サンプル濃度のパターン検出装置を設けた2つの導出管と別個に接続することを特徴とする精製装置に関する。
【0039】
前記本発明の精製装置において、精製用サンプル供給管は、精製の目的である生体高分子をカラムに導入する目的だけではなく、平衡化用緩衝液、溶出液、洗浄溶出工程用緩衝液等カラムにおける生体高分子の精製操作に必要な全ての溶液をカラムに移送する機能を持つ。このため精製用サンプル供給管は、生体高分子含有溶液導入管、平衡化用緩衝液導入管、溶出液導入管、洗浄溶出工程用緩衝液導入管のいずれか一つ以上または組み合わせて接続するためにこれらの導入管と接続したロータリーバルブまたは複数の導入口と1つの導出口を持ち任意に導入口を選択できるタイプの分岐バルブに接続されている。
【0040】
本発明の精製装置において、洗浄液供給管は、カラムの洗浄に用いる平衡化用緩衝液、溶出液、洗浄溶出用緩衝液、注射用水、無菌精製水、緩衝液、再生洗浄液等カラムの洗浄に用いる溶液をカラムに供給する機能を持つ。このため、平衡化用緩衝液導入管、溶出液導入管、洗浄溶出用緩衝液導入管、注射用水又は無菌精製水または緩衝液導入管、カラムの再生洗浄液導入管および樹脂の平衡化緩衝液導入管のいずれか一つ以上または組み合わせて接続するためにこれらの導入管と接続したロータリーバルブまたは複数の導入口と1つの導出口を持ち任意に導入口を選択できるタイプの分岐バルブに接続されている。
【0041】
本発明の特徴である評価用サンプル導入装置は、精製サンプル排出管および洗浄廃液排出管へ分岐しかつ評価用サンプル濃度のパターン検出装置を設けた2つの導出管と別個に接続することを特徴とする精製装置に関する。評価用サンプル貯留槽と洗浄液導入管と接続されているサンプルインジェクションバルブに接続されている。このため、評価用サンプルは洗浄液導入管を通してカラムに導入される。
【0042】
本発明の精製装置において、カラムの導出口と四方切替バルブ好ましくは四方ロータリーバルブを介して接続している2つの導出管のうち精製サンプル導出管は、カラムにより精製された生体高分子が次の精製工程の装置に接続され、洗浄廃液排出管はそのまま排出口と接続される。これらの導出管には前記評価用サンプル濃度のパターン検出装置が接続している。当該評価用サンプル濃度のパターン検出装置は、電気伝導度測定装置、紫外部、可視部吸収測定装置または屈折率測定装置のいずれか一つ以上または組み合わせた検出手段を備えた装置である。
【0043】
本発明の装置により、生体内高分子の連続精製の過程の中で、リアルタイムでカラムの充填状態の確認および時間軸に沿った充填状態の記録およびその保存が可能になる。
【0044】
更に、本発明の装置は、各部材が単回使用に適するように、安全管理単回使用が要請される構成部材が目的に適した継手で結合され、簡単に交換することが可能になるように設計されている。具体的には、カラム、フィルターまたは検出器等精製操作およびその測定等で重要な装置の継手に関しては、ルアーロック型接続具や無菌的シングルユース接続具などにより無菌的或いは清浄な状態のままで接続や交換が可能な接続具をジョイントとして用いる。カラム、フィルターまたは検出器に関しては、いずれかひとつの装置の継手にルアーロック型接続具やサニタリー継手(TCクランプ)あるいは無菌的シングルユース接続具を用いても良いし、これら全てを装置に用いても良い。それ以外の装置の継手に関しては、無菌状態が保てるものであればどのようなものでも良く、タケノコ型インシュロックバンド締め等を用いても良い。
【実施例】
【0045】
[実施例1]
〔B/E型陽イオン交換カラムを用いた2−カラムスイッチング法による精製装置〕
B/E型陽イオン交換カラムを用いた2−カラムスイッチング法による精製装置を作製した(
図1)。本装置は、2つのカラムのうち一方のカラムでタンパク質の吸着、洗浄、溶出を含む精製工程を行い、他方でカラムの再生洗浄工程を行うことができる。以下に、本装置の概要を、図面中の装置番号を示しながら、説明する。
【0046】
図1において、精製用サンプルとして用いられる抗体は、精製システムの上流工程から、分岐バルブ(1)を介して精製用サンプル供給管(2)に供給される。精製用サンプルを含むプロセス液はB/E型クロマトグラフィーカラムに吸着する条件に調節された後、エアートラップ(12)を経由してポンプ(13)で吸い込まれ、第一の四方切り替えバルブ(3)に繋がれる。カラム切り替えバルブは第一の四方切り替えバルブ(3)と第二の四方切り替えバルブ(4)の2台からなり、2台のバルブ間に2本のカラム、カラムA(5)とカラムB(6)が接続されている。
【0047】
プロセス液が一方のカラムA(5)に流れるように接続されている時には、カラムAにおいて精製工程の精製用サンプルの、吸着、洗浄、溶出等の操作が連続して行われる。この時もう一方のカラムB(6)は、洗浄液供給管(14)とサンプルインジェクションバルブ(7)を介して接続させているカラム効率測定の為の評価用サンプル供給槽(15)に接続される。またポンプ(13)にはバルブ付きマニホールド(8)を経由して複数の異なる溶液が接続され。溶出条件に従ってそれぞれのバルブが開閉されることでカラムに送液されて吸着、洗浄、溶出等の精製工程に供される。一方、サンプルインジェクションバルブ(7)にはカラム効率測定の為の評価用サンプルが評価用サンプル供給槽(15)からサンプル添加ポンプ(9)によりサンプルループ(22)に添加される。また洗浄液供給管(14)には、このサンプルインジェクションバルブ(7)を経由して分岐バルブ付きマニホールド(16)から洗浄再生工程に用いる洗浄液や再生液、平衡化緩衝液などがエアートラップ(20)やポンプ(21)を介して供給され、カラムB(6)の洗浄が行われる。カラムが洗浄された後、カラム効率測定の為の評価用サンプルが前述の流路によりカラムに添加され測定される。第二の四方切替えバルブ(4)の出口には2系統の導出管(10)(11)が接続され、各々精製用サンプルおよび評価用サンプルの検出装置〔UVモニター(17)、pHモニター(18)、電気伝導度計(19)〕が接続され、分離精製の状況及び洗浄再生カラム効率測定の状況がモニターされ、分離精製工程に繋がれた流路(10)から排出される溶液は次工程へ送られるが、洗浄再生カラム効率測定の流路(11)から排出される溶液は廃液となる。
【0048】
[実施例2]
〔FT型陰イオン交換カラムを用いた2−カラムスイッチング法による精製装置〕
FT型陰イオン交換カラムを用いた2−カラムスイッチング法による精製装置を作成した(
図2)。
本装置は、2つのカラムのうち一方のカラムでタンパク質の吸着を行う精製工程を行い、他方のカラムで、タンパク質の洗浄、溶出および再生洗浄工程を行うことができる。以下に、本装置の概要を、図面中の装置番号を示しながら、説明する。
【0049】
図2において、精製用サンプルとして用いられる抗体は、精製システムの上流工程から、精製用サンプル供給管(2)に供給される。精製用サンプルを含むプロセス液はFT型クロマトグラフィーカラムに吸着する条件に調節された後、エアートラップ(12)を経由してポンプ(13)で吸い込まれ、第一の四方切り替えバルブ(3)に繋がれる。カラム切り替えバルブは第一の四方切り替えバルブ(3)と第二の四方切り替えバルブ(4)の2台からなり、2台のバルブ間に2本のカラム、カラムA(5)とカラムB(6)が接続されている。
【0050】
プロセス液が一方のカラムA(5)に流れるように接続されている時には、カラムAにおいて精製工程の精製用サンプルの、吸着操作が連続して行われる。この時もう一方のカラムB(6)は、洗浄液供給管(14)とサンプルインジェクションバルブ(7)を介して接続させているカラム効率測定の為の評価用サンプル供給槽(15)に接続される。
【0051】
一方、サンプルインジェクションバルブ(7)にはカラム効率測定の為の評価用サンプルがサンプル添加ポンプ(9)によりサンプルループ(22)に添加される。また洗浄液供給管(14)には、このサンプルインジェクションバルブ(7)を経由して分岐バルブ付きマニホールド(16)からタンパク質の洗浄、溶出に用いる溶液、洗浄再生工程に用いる洗浄液や再生液、平衡化緩衝液などがエアートラップ(20)およびポンプ(21)を介して供給され、カラムB(6)の洗浄が行われる。
【0052】
カラムが洗浄された後、カラム効率測定の為の評価用サンプルが前述の流路によりカラムに添加され測定される。第二の四方切替えバルブ(4)の出口には2系統の導出管(10)(11)が接続され、各々精製用サンプルおよび評価用サンプルの検出装置〔UVモニター(17)、pHモニター(18)、電気伝導度計(19)〕が接続され、分離精製の状況及び洗浄再生カラム効率測定の状況がモニターされ、分離精製工程に繋がれた流路(10)から排出される溶液は次工程へ送られるが、洗浄再生カラム効率測定の流路(11)から排出される溶液は廃液となる。
【0053】
[実施例3]
〔シングルユース用装置〕
図3に、連続精製においてもバイオ医薬品生産機器のシングルユース化に対応できるように、接続器具を工夫した装置の図面を示した。具体的には、接続継手のうち長期間の使用において汚れが蓄積する恐れがある部分、2本のカラムやインラインフィルター及び各種センサーの接液部分などの接続部分に関しては無菌的或いは比較的清浄な状態で部品交換が可能なHFC39ルアーロック型接続器(Colder Products Company (CPC)社製)を採用した。また、バッファーインレット継手や廃液アウトレット継手にはID3/8”,TC3/4”型サニタリー継手(Ultrapharma社製)を用いその他の接続にはタケノコ型継手を用いてインシュロックバンドにより固定した。
【0054】
[実施例4]
実施例1に記載したB/E型分離モードによるプロテインAアフィニティーカラムを装着した2−カラムスイッチング法精製装置(
図1に変更点があれば教えて下さい)を用いて、2本のカラムを交互に精製用として用いて6サイクルの連続抗体精製(約37時間の連続運転)及びカラム効率(N/M、Af)測定によるカラム適格性の確認試験を行った。なお、使用するサンプル等の容量および各種操作に要する時間は、カラム容量(CV)を基準として表現した。
【0055】
サンプルとしてCHO細胞を培養して生産した遺伝子組み換え型IgG1抗体を含む培養上清(ロット番号:M−L006、40Mg、33.3CV/回)を用い、2本のカラムはプロテインAアフィニティーカラム(商品名:HiTrap MabSelect SuRe、1mL、GEヘルスケア株式会社製)を用いた。抗体サンプルの精製工程の操作としては、前記抗体サンプルをカラムに注入し、吸着させた後カラムに吸着したサンプルを0.05M NaCl含有50mM酢酸Naバッファー(pH3.5)10CV/回で平衡化した後、0.1MグリシンHClバッファー(pH2.5)10CV/回で溶出した。更に0.15M NaCl20mMリン酸Naバッファー(pH7.0)、10CV/回でカラムを洗浄した。
【0056】
一方のカラムで上記抗体サンプルの精製工程を行っている間に、他方のカラムは洗浄を行い、再生及びカラム適格性の確認の為の理論段数の測定及びピーク対称性の測定を行った。具体的には、0.05M NaCl含有50mM酢酸Naバッファー(pH3.5)3CV/回でカラムを洗浄した後、0.1M NaOH、1CV/回で洗浄し、0.15M NaCl含有20mMリン酸Naバッファー(pH7.0)、10CV/回でカラムを平衡化した。理論段相当高(HETP)測定サンプルとして2%アセトン+0.4M NaCl含有20mMリン酸Naバッファー(pH7.0)100μL/回を加えた、HETP測定用20mMリン酸Naバッファー(pH7.0)でカラムを洗浄した後、0.15M NaCl含有20mMリン酸Naバッファー(pH7.0)、17.3CV/回でカラムを再平衡化した。上記工程を6サイクル、即ち2本のカラムで交互に12回の精製工程を繰り返した。本方法はサンプルの処理及び精製は間歇型になるがバッチ精製法を連続的に繰り返す方法を示している。
【0057】
図4に抗体のプロテインAアフィニティーカラムを用いた連続6サイクル(合計12回)精製における、カラムスイッチングによる6サイクル(合計12回)の工程における以下の(a)〜(f)の結果を示した。
(a)精製工程におけるUV280吸収測定、
(b)洗浄工程でのUV280吸収測定による理論段数測定、
(c)精製工程でのpH測定、
(d)洗浄工程でのpH測定、
(e)精製工程における電気伝導度測定、
(f)洗浄工程における電気伝導度測定により理論段数測定
【0058】
図4(b)の洗浄工程でのUV280吸収測定では理論段数または理論段相当高(HETP)測定サンプルとしてアセトンのピークが観測され、
図4(f)の洗浄工程における電気伝導度測定からは、理論段数または理論段相当高さ(HETP)測定サンプルとしてのNaClのピークが観測された。両者のピークパターンを対比すると、同じインターバルで同じ形状のピークが、ほぼ同じ位置で確認されたため、工程中にカラムの充填状態には変化が生じて居ないことが示された。
図4(a)の 精製工程におけるUV280吸収測定結果からは、精製された抗体のシャープなピークが一定のインターバルで確認された。このUV280吸収測定結果に対して変曲点解析を行ったところ、連続した工程での精製の再現性が確認された。変曲点解析の機能も装置に付加すると、正確な連続精製のモニタリング可能になる。
図4(e)の精製工程における電気伝導度測定からは溶出液のイオン強度が測定できるが、一定のインターバルで溶出されていることが確認された。この電気伝導度測定結果に対しても変曲点解析を行ったところ、連続した工程での精製の再現性が確認された。このように変曲点解析の機能も装置に付加することにより正確な連続精製のモニタリング可能になる。
【0059】
以上、
図4に示した各種測定結果から、本発明の装置において連続的な精製が高い再現性のもとに行われ、自動的に測定できることが確認された。
【0060】
[実施例5]
B/E型分離モードによる陽イオン交換カラムを装着した2−カラムスイッチング法精製装置を用いて、2本のカラムを交互に精製用として用いて6サイクルの連続抗体精製(約37時間の連続運転)及びカラム効率(N/m、Af)測定によるカラム適格性の確認試験を行った。なお、使用するサンプル等の容量および各種操作に要する時間は、カラム容量(CV)を基準として表現した。
【0061】
サンプルとして前記CHO細胞を培養して生産した遺伝子組み換え型IgG1抗体をプロテインAアフィニティークロマトで精製し、0.05M NaCl含有50mM酢酸Naバッファー(pH5.0)で希釈し、抗体約30Mg/回、30CVとしたものを用いた。2本のカラムは陽イオン交換カラム(商品名:HiTrap Capto Q、1mL、GEヘルスケア株式会社製)を用いた。
【0062】
抗体サンプルの精製工程の操作としては、前記抗体サンプルをカラムに注入し、吸着させた後カラムに吸着したサンプルを0.05M NaCl含有50mM酢酸Naバッファー(pH5.0)10CV/回で平衡化した後、0.2M NaCl含有50mM酢酸Naバッファー(pH5.0)10CV/回で溶出した。更に1.0M NaCl含有50mM酢酸Naバッファー(pH5.0)10CV/回で洗浄溶出し、20mMリン酸Naバッファー(pH7.0)、10CV/回でカラムを平衡化した。
【0063】
一方のカラムで上記抗体サンプルの精製工程を行っている間に、他方のカラムは洗浄を行い、再生及びカラム適格性の確認の為の理論段数の測定及びピーク対称性の測定を行った。具体的には、0.05M NaCl含有50mM酢酸Naバッファー(pH5.0)3CV/回でカラムを洗浄した後、0.1M NaOH、1CV/回で洗浄し、0.15M NaCl含有20mMリン酸Naバッファー(pH7.0)、10CV/回でカラムを平衡化した。理論段相当高(HETP)測定サンプルとして2%アセトン+0.4M NaCl含有20mMリン酸Naバッファー(pH7.0)100μL/回を加えた、HETP測定用20mMリン酸Naバッファー(pH7.0)でカラムを洗浄した後、0.05M NaCl含有50mM酢酸Naバッファー(pH5.0)、14CV/回でカラムを再平衡化した。上記工程を6サイクル、即ち2本のカラムで交互に12回この工程を繰り返した。本方法はサンプルの処理及び精製は間歇型になるがバッチ精製法を連続的に繰り返す方法を示している。
【0064】
図5に抗体の陽イオン交換カラムを用いた連続 6サイクル(合計12回)精製における、カラムスイッチングによる6サイクル(合計12回のクロマトグラフィー)の工程における以下の(a)〜(f)の結果を示した。
(a)精製工程におけるUV280吸収測定、
(b)洗浄工程でのUV280吸収測定による理論段数測定、
(c)精製工程でのpH測定、
(d)洗浄工程でのpH測定、
(e)精製工程における電気伝導度測定、
(f)洗浄工程における電気伝導度測定により理論段数測定
【0065】
図5(B)の洗浄工程でのUV280吸収測定では理論段相当高(HETP)測定サンプルとしてのアセトンのピークが観測され、
図5(f)の洗浄工程における電気伝導度測定からは、理論段相当高(HETP)測定サンプルとしてのNaClのピークが観測された。両者のピークパターンを対比すると、同じインターバルで同じ形状のピークが、ほぼ同じ位置で確認されたため、6サイクル合計12回のクロマトグラフィー精製工程中にカラムの充填状態には大きな変化が生じていないことが判る。
【0066】
[実施例6]
実施例2に記載したFT型分離モードのフロースルー型2−カラムスイッチング精製装置を用いて以下の試験を行った。
【0067】
FT型分離モードによる陰イオン交換カラムを装着した2−カラムスイッチング法精製装置を用いて、2本のカラムを交互に精製用として用いて3サイクル6回の連続抗体精製(約7時間の連続運転)及びカラム効率(N/m、Af)測定によるカラム適格性の確認試験を行った。なお、使用するサンプル等の容量および各種操作に要する時間は、カラム容量(CV)を基準として表現した。
【0068】
サンプルとして前記CHO細胞を培養して生産した遺伝子組み換え型IgG1抗体をプロテインAアフィニティークロマトで精製し、1.0M NACl含有25mM、トリスHClバッファー(pH8.5)で希釈し、抗体約70mg/回、70CVとしたものを用いた。
【0069】
2本のカラムは陰イオン交換カラム(商品名:HiTrap Capto Q、1mL、GEヘルスケア株式会社製)を用いた。
【0070】
抗体サンプルの精製工程の操作としては、前記抗体サンプルをカラムに流速1.0mL/minで注入した。
【0071】
一方のカラムで上記抗体サンプルの精製工程を行っている間に、他方のカラムは洗浄を行い、再生及びカラム適格性の確認の為の理論段数の測定及びピーク対称性の測定を行った。具体的には、1.0M NaCl含有50mMトリスHClバッファー(pH8.5)10CV/回でカラムを洗浄した後、0.1M NaOH、1CV/回で洗浄し、0.15M NaCl含有20mMリン酸Naバッファー(pH7.0)、10CV/回でカラムを洗浄した。理論段相当高(HETP)測定サンプルとして2%アセトン+0.4M NaCl含有20mMリン酸Naバッファー(pH7.0)100μL/回を加えた、HETP測定用20mMリン酸Naバッファー(pH7.0)35CV+10CVでカラムを洗浄した後、25mMトリスHClバッファー(pH8.5)、14CV/回でカラムを再平衡化した。上記工程を3サイクル、即ち2本のカラムで交互に6回この工程を繰り返した。
【0072】
図6に抗体の陰イオン交換カラムを用いた連続 3サイクル(合計6回)精製における、カラムスイッチングによる3サイクル(合計6回)の工程における以下の(a)〜(f)の結果を示した。
(a)精製工程におけるUV280吸収測定、
(b)洗浄工程でのUV280吸収測定による理論段数測定、
(c)精製工程でのpH測定、
(d)洗浄工程でのpH測定、
(e)精製工程における電気伝導度測定、
(f)洗浄工程における電気伝導度測定により理論段数測定
【0073】
図6(B)の洗浄工程でのUV280吸収測定では理論段相当高(HETP)測定サンプルとしてのアセトンアセトンのピークが観測され、
図6(f)の洗浄工程における電気伝導度測定からは、理論段相当高(HETP)測定サンプルとしてのNaClのピークが観測された。両者のピークパターンを対比すると、同じインターバルで同じ形状のピークが、ほぼ同じ位置で確認されたため、一連の精製工程及び洗浄工程においてカラムの充填状態には変化が生じて居ないことが示された。
【符号の説明】
【0074】
(1)分岐バルブ、(2)精製用サンプル供給管、(3)第一の四方切り替えバルブ、(4)第二の四方切り替えバルブ、(5)カラムA、(6)カラムB、(7)サンプルインジェクションバルブ、(8)バルブ付きマニホールド、(9)サンプル添加ポンプ、(10)導出管、(11)導出管、(12)エアートラップ、(13)ポンプ、(14)洗浄液供給管、(15)評価用サンプル供給槽、(16)分岐バルブ付きマニホールド、(17)UVモニター、(18)pHモニター、(19)電気伝導度計、(20)エアートラップ、(21)ポンプ、(22)サンループ(50)ルアーロック継手