【発明を実施するための形態】
【0012】
(アミン化合物の製造方法)
本発明のアミン化合物の製造方法は、水素ファインバブルを供給し、溶媒下でイミン化合物を水素化する工程を含む。本発明の製造方法は、下記式で表されるような、イミン化合物中の炭素原子−窒素原子二重結合を水素化(水添)してイミン化合物をアミン化合物に変換する反応を利用する。本発明の製造方法は、イミン化合物を効率良く水素化することができる。したがって、水素化反応時の圧力の穏和化、水素化率の向上、水素化触媒の使用量の削減、水素化反応時間の短縮化、および水素化反応温度の低温化の少なくとも一つ以上の効果が得られる。
【0014】
<製造物:アミン化合物>
本発明の製造方法で製造されるアミン化合物は、下記式で表される化合物である。
【0016】
式中、R
1は、水素原子または任意の置換基である。
【0017】
R
1で示される置換基としては、例えば、置換されていてもよい炭化水素基が挙げられる。アミン化合物は水素化反応で得られるので、置換基は、飽和置換基が好ましい。飽和置換基としては、例えば、置換されていてもよい飽和炭化水素基が挙げられる。置換されていてもよい飽和炭化水素基の「飽和炭化水素基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル等の直鎖状アルキル、イソプロピル、イソブチル、1−メチルペンチル、1−エチルペンチル、sec−ブチル、t−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、イソヘキシル等の分岐状アルキル、及びシクロプロピル、シクロブチル等の環状アルキルが挙げられる。「飽和炭化水素基」の炭素原子数は、1から20が好ましく、1から6がより好ましい。
置換されていてもよい飽和炭化水素基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基で置換されていてもよい飽和炭化水素基が挙げられる。
R
1は、ヒドロキシ基で置換された飽和炭化水素基が好ましく、ヒドロキシC1〜20アルキル基がより好ましく、ヒドロキシC1〜6アルキル基が更に好ましく、ヒドロキシC1〜6直鎖状アルキル基が更に好ましく、2−ヒドロキシエチル基が最も好ましい。
【0018】
式中、R
2及びR
3は、独立に水素原子または任意の置換基であってもよく、あるいは、共に環構造を形成してもよい。
【0019】
R
2及びR
3が独立に水素原子または任意の置換基である場合、置換基としては、例えば、置換されていてもよい炭化水素基が挙げられる。アミン化合物は水素化反応で得られるので、置換基は、飽和置換基が好ましい。飽和置換基としては、例えば、置換されていてもよい飽和炭化水素基が挙げられる。置換されていてもよい飽和炭化水素基の「飽和炭化水素基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル等の直鎖状アルキル、イソプロピル、イソブチル、1−メチルペンチル、1−エチルペンチル、sec−ブチル、t−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、イソヘキシル等の分岐状アルキル、及びシクロプロピル、シクロブチル等の環状アルキルが挙げられる。「飽和炭化水素基」の炭素原子数は、1から20が好ましく、1から6がより好ましい。
置換されていてもよい飽和炭化水素基としては、例えば、ヒドロキシ基で置換されていてもよい飽和炭化水素基が挙げられる。
【0020】
R
2及びR
3が共に環構造を形成する場合、R
2−C−R
3部分からなる環構造としては、例えば、置換されていてもよい炭化水素環が挙げられる。アミン化合物は水素化反応で得られるので、R
2−C−R
3部分からなる環構造は、飽和環構造が好ましい。飽和環構造としては、例えば、置換されていてもよい飽和炭化水素環が挙げられる。置換されていてもよい飽和炭化水素環の「飽和炭化水素環」としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン等のシクロアルカンが挙げられ、炭素原子数1から20のシクロアルカンが好ましく、炭素原子数1から6のシクロアルカンがより好ましい。
置換されていてもよい飽和炭化水素環としては、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基で置換されていてもよい飽和炭化水素環が挙げられる。
【0021】
R
2及びR
3は、共に環構造を形成することが好ましい。R
2−C−R
3部分からなる環構造は、置換されていてもよい炭化水素環が好ましく、置換されていてもよい飽和炭化水素環がより好ましく、置換されていてもよいシクロアルカンが更に好ましく、置換されていてもよい炭素原子数1から20のシクロアルカンが更に好ましく、置換されていてもよい炭素原子数1から6のシクロアルカンが更に好ましく、置換されていてもよいシクロペンタンが更に好ましく、シクロペンタンが最も好ましい。
【0022】
アミン化合物は、ヒドロキシアルキルアミン化合物が好ましく、アミノエタノール化合物がより好ましく、炭化水素環−アミノエタノール化合物が更に好ましく、飽和炭化水素環−アミノエタノール化合物が更に好ましく、シクロアルキルアミノエタノールが更に好ましく、C1〜20シクロアルキル−アミノエタノールが更に好ましく、C1〜6シクロアルキル−アミノエタノールが更に好ましく、シクロペンチルアミノエタノールが最も好ましい。
【0023】
本発明の製造方法は、高い水素化率(反応収率)で行われることが好ましい。水素化率は、特に限定されることはないが、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、99%以上であることが更に好ましい。なお、水素化反応における水素化率は、例えば、クロマトグラフィ(例、GC−FID)、NMR、またはIRを利用した方法(具体例として、本明細書の実施例に記載の方法)により測定することができる。
【0024】
<原料:イミン化合物>
本発明の製造方法において原料となるイミン化合物は、下記式で表される化合物である。
【0026】
式中、R
1’、R
2’、及びR
3’は、それぞれ、R
1、R
2、及びR
3と同じであってもよく、R
1、R
2、及びR
3中の飽和結合が不飽和結合に置換された基であってもよい。製造されるアミン化合物の品質、純度、収量等の製造効率向上の観点から、R
1’、R
2’、及びR
3’は、それぞれ、R
1、R
2、及びR
3と同じであることが好ましい。
【0027】
アミン化合物がヒドロキシアルキルアミン化合物である場合、イミン化合物は、対応するヒドロキシアルキルイミン化合物であることが好ましい。アミン化合物がアミノエタノール化合物である場合、イミン化合物は、対応するイミノエタノール化合物であることが好ましい。アミン化合物が炭化水素環−アミノエタノール化合物である場合、イミン化合物は、対応する炭化水素環−イミノエタノール化合物であることが好ましい。アミン化合物が飽和炭化水素環−アミノエタノール化合物である場合、イミン化合物は、対応する飽和炭化水素環−イミノエタノール化合物であることが好ましい。アミン化合物がシクロアルキルアミノエタノールである場合、イミン化合物は、対応するシクロアルキルイミノエタノールであることが好ましい。アミン化合物がC1〜20シクロアルキル−アミノエタノールである場合、イミン化合物は、対応するC1〜20シクロアルキル−イミノエタノールであることが好ましい。アミン化合物がC1〜6シクロアルキル−アミノエタノールである場合、イミン化合物は、対応するC1〜6シクロアルキル−イミノエタノールであることが好ましい。アミン化合物がシクロペンチルアミノエタノールである場合、イミン化合物は、シクロペンチルイミノエタノールであることが好ましい。
【0028】
イミン化合物(原料)の溶媒中の濃度は、例えば0.1%(g/L)以上、好ましくは0.5%(w/v)以上、より好ましくは1.0%(w/v)以上であってもよく、例えば30%(w/v)以下、好ましくは20%(w/v)以下、より好ましくは15%(w/v)以下であってもよい。
【0029】
<溶媒>
溶媒としては、イミン化合物(原料)及びアミン化合物(製造物)の溶解性により適宜選択することができ、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等の含窒素系炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類などを用いることができ、アルコール類が好ましく、メタノールがより好ましい。また、原料(イミン化合物)または製造物(アミン化合物)が溶媒に溶解した溶液を、便宜上「反応液」と包括的に呼ぶ。
【0030】
<水素ファインバブル>
「ファインバブル」とは、直径100μm以下の気泡をいう。ファインバブルの形成は、単位体積の液体中に含まれる気泡数を指標として定義することもできる。例えば、液体1mL当たりの気泡数が1.0×10
7個以上であれば、反応に供されるに有利なファインバブルが形成されていると見なすことができる。液体1mLの当たりの気泡数は、1.0×10
7個以上であればよく、好ましくは2.0×10
7個以上、より好ましくは3.0×10
7個以上であればよい。気泡数は、例えば、カンタムデザイン社製ナノサイトを用いて測定することができる。
【0031】
水素ガスをファインバブルの形態にすることは、直径が100μmより大きい気泡(非ファインバブル)の形態にすることに比べて以下の点で有利である。ファインバブルは、非ファインバブルに比して同体積の水素ガスの気液界面の表面積が大きいため、気液接触の面積が増大する。また、非ファインバブルは、液体中で上昇して液体外に放出したり、容器等の壁面に付着する等により、液体から分離しやすい挙動を示すのに対して、ファインバブルは、Stokesの式で説明されるように液体中での上昇速度が極めて遅く、液体中で長時間滞留する挙動を示すため、気液接触の時間が増大する。これらの効果により、水素ガスの反応への消費率が増大するため、反応効率が向上し、未反応水素ガスの発生による圧力増大が抑制される。さらに、ファインバブルは自己圧潰してエネルギーを放出するため、反応を局所的に促進するエネルギーが得られると言われている。さらにまた、水素ガスをファインバブルの形態にすることにより、反応系に高圧力を付与する必要がなく、また気泡の放出による反応系の圧力上昇も抑制されることから、高圧力による反応装置の劣化も抑制することができる。
【0032】
<水素ファインバブルの供給>
水素ファインバブルは、連続流動型ファインバブル発生装置を用いて発生させることができる。連続流動型ファインバブル発生装置とは、加圧減圧発生法/気液二相流剪断法を利用して、反応液と水素ガスを連続的に流入させて、水素ファインバブルを含有する反応液を連続的に排出させる装置である。連続流動型ファインバブル発生装置は、外部からの機械的動力を用いずに、流体の流速を利用した剪断力によりファインバブルを発生させる装置であることが好ましい。連続流動型ファインバブル発生装置としては、例えば、マイクロミキサーが挙げられる。
マイクロミキサーは、液体と気体が均等に混合できるように、2流路以上が均等に衝突できる形状を有するものが好ましい。
反応液のマイクロミキサーへの流量は、例えば0.1mL/min以上、好ましくは0.5mL/min以上、より好ましくは1.0mL/min以上であってもよく、例えば20mL/min以下、好ましくは15mL/min以下、より好ましくは10mL/min以下であってもよい。
水素ガスのマイクロミキサーへの流量は、例えば0.1mL/min以上、好ましくは0.2mL/min以上、より好ましくは0.5mL/min以上であってもよく、例えば10mL/min以下、好ましくは5mL/min以下、より好ましくは3mL/min以下であってもよい。
反応液流量に対する水素ガス流量の体積比は、例えば0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上であってもよく、例えば15以下、好ましくは10以下、より好ましくは5以下であってもよい。
ファインバブル発生圧は、例えば0.1MPa以上、好ましくは0.2MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上であってもよく、例えば10MPa以下、好ましくは8MPa以下、より好ましくは5MPa以下であってもよい。
マイクロミキサーを用いたファインバブル生成は、例えば、渦巻きポンプ型気泡発生装置(特開2006−159187号公報)を用いた気泡生成に比して、高圧力等の過酷な条件を要しない点、循環型反応系への適用性が高い点等で有利である。また、循環型反応系は、一度の水素供給量に限界があるバッチ式反応系に比して多量の水素を逐次供給することが可能である点、水素化率をモニタリングしながらの操作が可能である点等の利点を有する。
【0033】
<水素化反応>
水素化反応は、水素ファインバブルを含有する反応液を水素化反応に適した条件下におくことにより行われる。好ましくは、水素化反応は、水素ファインバブルを含有する反応液を、水素化反応に適した条件下にある水素化反応容器に移送することにより行われる。水素化反応とは、下記式で表されるように、原料であるイミン化合物中の炭素原子−窒素原子二重結合を水素化(水添)して、製造物であるアミン化合物に変換する反応である。水素化反応は、水素化触媒の存在下で行われることが好ましい。
【0035】
<水素化触媒>
水素化触媒は、均一系触媒、不均一系触媒等、特に限定されることはなく、不飽和結合を有する化合物の水素化反応に用いられる既知のものを使用することができる。水素化触媒は、固体触媒が好ましい。
【0036】
均一系触媒としては、例えば、酢酸コバルトとトリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナートとトリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリドとn−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリドとsec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネートとジメチルマグネシウム等の組み合わせからなるチーグラー系触媒;ルテニウムカルベン錯体触媒;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);特開平7−2929号公報、特開平7−149823号公報、特開平11−158256号公報、特開平11−193323号公報等に記載されているルテニウム化合物からなる貴金属錯体触媒;などが挙げられる。
不均一系触媒としては、活性成分のみを含む触媒、および、活性成分と該活性成分を担持させる担体とを含む触媒のいずれも用いることができる。
活性成分としては、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の金属が挙げられる。
担体としては、カーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどが挙げられる。
活性成分のみを含む触媒の具体例としては、ラネーニッケル、ラネーパラジウム、ラネー白金等のラネー触媒などが挙げられる。
活性成分と担体とを含む触媒の具体例としては、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどが挙げられる。
これらの水素化触媒は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
水素化触媒としては、ラネーニッケルおよび金属ニッケル担持触媒(例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ)等の金属ニッケルを含む触媒を用いることが好ましく、金属ニッケル担持触媒を用いることがより好ましい。金属ニッケルを含む触媒を水素化触媒として使用すれば、不飽和結合を有する化合物を更に効率良く水素化することができる。
【0038】
水素化反応工程における水素化触媒の使用量は、原料であるイミン化合物100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることが更に好ましく、50質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。
なお、触媒の使用量は、担体も含めた触媒の乾燥状態での使用量を指す。
【0039】
水素化触媒の装填量(体積)は、水素化反応容器の容積に対して、0.01%以上であることが好ましく、0.05%以上であることがより好ましく、0.1%以上であることが更に好ましく、5%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましい。
【0040】
<水素化反応の条件>
水素化反応は、水素ファインバブルを含有する反応液を所定の条件下におくこと、好ましくは、水素ファインバブルを含有する反応液を水素化反応容器に移送することにより行われる。水素化反応容器は、連続式水素化反応容器及びバッチ式水素化反応容器のいずれであってもよいが、効率性の観点から連続式反応器が好ましい。連続式反応器としては、水素化触媒が固定された管(触媒固定管)が挙げられる。
【0041】
水素化反応を行う温度(すなわち、水素化反応容器の温度)は、水素化反応に適した温度、溶媒の融点及び沸点等を考慮して適宜設定することができる。水素化反応を行う温度は、溶媒の融点以上が好ましい。水素化反応を行う温度は、例えば10℃以上、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上であってもよい。水素化反応を行う温度は、溶媒の沸点以下が好ましい。水素化反応を行う温度は、例えば100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下であってもよい。
【0042】
水素化反応を行う時間(連続式反応器の場合は、反応液が反応器を通過する時間)は、例えば0.1h以上、好ましくは1h以上、より好ましくは3h以上であってもよく、例えば24h以下、好ましくは18h以下、より好ましくは12h以下であってもよい。
【0043】
水素化反応容器として連続式反応器を用いる場合、水素ファインバブルを含有する反応液の流量は、例えば0.1mL/min以上、好ましくは0.5mL/min以上、より好ましくは1mL/min以上であってもよく、例えば20mL/min以下、好ましくは18mL/min以下、より好ましくは15mL/min以下であってもよい。
【0044】
水素化反応容器には、水素化触媒が装填されていてもよい。水素化触媒は、水素化反応容器に充填されていてもよく、水素化反応容器内に固定されていてもよい。水素化反応容器は、水素化触媒の流出を防止するためにフィルターを有していてもよい。
【0045】
触媒の体積当たりの水素ファインバブルを含有する反応液の時間あたりの流量比(液空間線速度hr
−1)は、例えば0.1hr
−1以上、好ましくは0.2hr
−1以上、より好ましくは0.5hr
−1以上であってもよく、例えば300hr
−1以下、好ましくは200hr
−1以下、より好ましくは150hr
−1であってもよい。
【0046】
<水素化反応系>
本発明の製造方法は、例えば、循環型反応系、バッチ型反応系、及びセミバッチ型反応系等のいずれの反応系を用いて行ってもよい。ファインバブルを用いた水素化は、水素化効率が高いために望ましくない水素化が過度に進行してしまう場合がある。望ましくない水素化を抑制するためには、水素化率を監視して水素化率から水素化を制御することができることが好ましい。この観点から、反応系は、循環型反応系が好ましい。循環型反応系としては、例えば、反応液が流れる循環流路上に、ファインバブル発生装置、及び水素化反応容器(例、触媒固定管)が配置された反応系が挙げられる。循環型反応系の具体例としては、例えば、
図1の模式図に示す構成を有する反応系が挙げられる。
図1の模式図では、容器1に保持された反応液が、反応液排出部2から排出され、ポンプ3、水素ガス合流部4、加熱オーブン5、ファインバブル発生装置6(例、マイクロミキサー)、反応液背圧調整器7、水素化反応容器8(例、触媒固定管)の順に循環し、反応液回収部9にて容器1に回収される。
図1の模式図ではさらに、水素ガス供給部10から供給された水素ガスが、水素ガス流量調整器11を経て、水素ガス合流部4にて反応液と合流する。循環型反応系は、任意の箇所に流量計、圧力計、水素化率監視手段をさらに含んでもよい。以下、
図1に示される循環型反応系の各構成要素について説明する。
【0047】
容器1は、反応液を保持するための容器である。容器1の形状としては、閉鎖系容器及び開放系容器が挙げられる。好ましくは、不純物混入防止及び反応制御の観点から、容器1は、閉鎖系容器であってもよい。容器1の材質としては、例えば、金属、ガラス、樹脂が挙げられる。容器1が閉鎖系容器である場合、耐圧性の観点から、容器1は、金属製が好ましい。容器1が閉鎖系容器である場合、反応液は、容器1に満充填されていてもよく、空隙を有して充填されていてもよいが、未反応の水素ガスの蓄積の観点から、空隙を有して充填されることが好ましい。意図せぬ反応を抑制する観点から、容器1は、充分に乾燥していることが好ましい。また、同観点から、容器1は、不活性ガス(例、窒素;ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガス)で置換されていることが好ましい。
【0048】
反応液排出部2は、反応液を容器1から排出するための部分である。反応液排出部2は、固体不純物の混入を抑制するために、フィルターを含んでいてもよい。
【0049】
ポンプ3は、反応液の循環流れを発生させるための装置である。機械的刺激による反応液からの水素ファインバブルの損失を抑制する観点から、ポンプ3は、水素ガス合流部4よりも上流側に接続されていることが好ましい。
【0050】
反応液背圧調整器7は、反応液の背圧を一定化させる装置である。反応液背圧調整器7は、反応液の背圧を一定化させることにより、反応液の流量を一定化させ、反応条件を一定に保持する役割を担う。反応液背圧調整器7としては、例えば、背圧弁、圧力調節弁等の一般的な液体用背圧調整器を用いることができる。
【0051】
反応液回収部9は、循環した反応液を容器1に回収するための部分である。
【0052】
水素ガス供給部10は、循環型水素化反応装置への水素ガスの供給源である。水素ガス供給部10としては、例えば、水素ガスボンベが挙げられる。
【0053】
水素ガス流量調整器11は、水素ガス供給部10から供給される水素ガスの背圧を一定化させる装置である。水素ガス流量調整器11は、水素ガスの背圧を一定化させることにより、水素ガスの供給量を一定化させ、反応条件を一定に保持する役割を担う。水素ガス流量調整器11としては、例えば、背圧弁、圧力調節弁等の一般的なガス用背圧調整器を用いることができる。
【0054】
反応液の循環流量は、ポンプ3及び反応液背圧調整器7によって調節することができる。反応液の循環流量は、例えば0.1mL/min以上、好ましくは0.5mL/min以上、より好ましくは1.0mL/min以上であってもよく、例えば20mL/min以下、好ましくは18mL/min以下、より好ましくは15mL/min以下であってもよい。
【0055】
反応液の循環回数は、例えば1回以上、好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上であってもよく、例えば10000回以下、好ましくは5000回以下、より好ましくは3000回以下であってもよい。
【実施例】
【0056】
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量(重量)基準である。
【0057】
(実施例1)
<イミン化合物の調製>
試験管中に溶媒としてのメタノール(20mL)、シクロペンタノン(6.686mmol、592μL)、及び2−アミノエタノール(6.647mmol、402μL)を添加して反応液とした。反応液をタッチミキサーで攪拌後、室温で3時間静置し、イミン化をして、イミン化合物であるシクロペンチル−2−イミノエタノール(CPIE)を反応液中に生成させた。イミン化反応を下記式に示す。
【0058】
【化5】
【0059】
<水素化反応によるアミン化合物の生成>
その後、CPIEを含む反応液を、
図1に示すように構成された循環型水素化反応装置に導入した。CPIEの調製に用いた試験管を、そのまま容器1として用いた。ファインバブル発生装置6として、マイクロミキサーを用いた。液流量5mL/min、水素供給量2.5mL/minとし、FB発生圧を4.0MPaとし、水素ファインバブル(H2−FB)を含有させた反応液をカラムオーブン(CTO−10AC、SHIMAZU)で60℃に制御した触媒管(Pd/C NX type 5wt%(170mg))へ送液してCPIEを水素化反応させて、アミン化合物であるシクロペンチルアミノエタノール(CPAE)を反応液中に生成させた。水素化反応を下記式に示す。反応後のサンプル中のCPAE及びCPIEの量はGC−FIDで測定し、収率と転換率を決定した。ファインバブルは5.8×10
7個であった。
【0060】
【化6】
【0061】
(比較例1)
<イミン化合物の調製>
ステンレス製耐圧容器に溶媒としてのメタノール(5mL)、シクロペンタノン(0.49mmol、43μL)、及び2−アミノエタノール(0.53mmol、32μL)を添加して反応液とした。反応液を室温で30分間撹拌し、イミン化をして、イミン化合物であるCPIEを反応液中に生成させた。
【0062】
<水素化反応>
その後、CPIEを含む反応液に、水素化触媒としてのPd/C NX typeを5wt%(10.6mg、0.5mol%)添加した。反応液を減圧脱気し、ステンレス製耐圧容器を
図2に示すように構成された水素化反応装置に導入してCPIEを水素化反応させて、アミン化合物であるCPAEを反応液中に生成させた。3回水素置換した後、水素圧0.5MPa、1500rpm、反応温度(60℃)で反応した。反応後のサンプル中のCPAE及びCPIEの量はGC−FIDで測定し、反応収率を決定した。ファインバブルは、0.6×10
7個であった。
【0063】
(結果)
実施例及び比較例の結果を表1に示す。これらの結果から、本発明の製造方法を用いることにより、有機化合物を高反応収率で水素化できることが示された。
【0064】
【表1】
【0065】
表1中の略称は以下を意味する。
CPIE:シクロペンチル−2−イミノエタノール
F.B.:ファインバブル循環法