特開2021-153952(P2021-153952A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧 ▶ 国立大学法人北海道大学の特許一覧

特開2021-153952精度検証装置、放射線治療システム、精度検証方法及びコンピュータプログラム
<>
  • 特開2021153952-精度検証装置、放射線治療システム、精度検証方法及びコンピュータプログラム 図000009
  • 特開2021153952-精度検証装置、放射線治療システム、精度検証方法及びコンピュータプログラム 図000010
  • 特開2021153952-精度検証装置、放射線治療システム、精度検証方法及びコンピュータプログラム 図000011
  • 特開2021153952-精度検証装置、放射線治療システム、精度検証方法及びコンピュータプログラム 図000012
  • 特開2021153952-精度検証装置、放射線治療システム、精度検証方法及びコンピュータプログラム 図000013
  • 特開2021153952-精度検証装置、放射線治療システム、精度検証方法及びコンピュータプログラム 図000014
  • 特開2021153952-精度検証装置、放射線治療システム、精度検証方法及びコンピュータプログラム 図000015
  • 特開2021153952-精度検証装置、放射線治療システム、精度検証方法及びコンピュータプログラム 図000016
  • 特開2021153952-精度検証装置、放射線治療システム、精度検証方法及びコンピュータプログラム 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-153952(P2021-153952A)
(43)【公開日】2021年10月7日
(54)【発明の名称】精度検証装置、放射線治療システム、精度検証方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20210910BHJP
【FI】
   A61N5/10 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-58288(P2020-58288)
(22)【出願日】2020年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 康一
(72)【発明者】
【氏名】梅垣 菊男
(72)【発明者】
【氏名】宮本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】梅川 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 孝明
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AC02
4C082AC04
4C082AC05
4C082AE01
4C082AP07
4C082AP08
(57)【要約】
【課題】患者毎・透視角度毎に患部位置の算出精度を検証することを可能にする。
【解決手段】放射線治療システム100に適用され、患者2をX線透視により撮影した患者透視画像を取得し、患者透視画像から動体追跡装置60の追跡対象の位置を算出する精度検証装置10は、追跡対象を模擬した追跡対象模型をX線透視により撮影した模型透視画像と、患者透視画像と、を合成することで合成透視画像を作成し、合成透視画像に基づき動体追跡装置60の追跡対象の追跡位置精度を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療システムに適用され、患者をX線透視により撮影した患者透視画像を取得し、前記患者透視画像から動体追跡装置の追跡対象の位置を算出する精度検証装置であって、
前記追跡対象を模擬した追跡対象模型をX線透視により撮影した模型透視画像と、前記患者透視画像と、を合成することで合成透視画像を作成し、
前記合成透視画像に基づき前記動体追跡装置の前記追跡対象の追跡位置精度を算出することを特徴とする精度検証装置。
【請求項2】
前記患者体内におけるX線の減衰を表すパラメータと、前記追跡対象模型内におけるX線の減衰を表すパラメータと、を用いて前記合成透視画像を算出することを特徴とする請求項1に記載の精度検証装置。
【請求項3】
前記患者体内におけるX線の減衰を表すパラメータと、前記追跡対象模型内におけるX線の減衰を表すパラメータと、ビームハードニングの効果を表すパラメータと、を用いて前記合成透視画像を算出することを特徴とする請求項1に記載の精度検証装置。
【請求項4】
前記患者体内におけるX線の減衰を表すパラメータと、前記追跡対象模型内におけるX線の減衰を表すパラメータと、前記患者体内における前記追跡対象のX線の減衰を表すパラメータと、を用いて前記合成透視画像を算出することを特徴とする請求項1に記載の精度検証装置。
【請求項5】
前記合成透視画像にノイズ効果を付与することを特徴とする請求項1に記載の精度検証装置。
【請求項6】
前記追跡位置精度を透視パラメータごとに算出することを特徴とする請求項1に記載の精度検証装置。
【請求項7】
前記追跡対象模型は患者毎に作成されることを特徴とする請求項1に記載の精度検証装置。
【請求項8】
前記追跡対象模型は3D造形装置を用いて作成されることを特徴とする請求項1に記載の精度検証装置。
【請求項9】
患者をX線透視により撮影した患者透視画像を取得し、前記患者透視画像から動体追跡装置の追跡対象の位置を算出する精度検証装置を備えた放射線治療システムであって、
前記精度検証装置は、
前記追跡対象を模擬した追跡対象模型をX線透視により撮影した模型透視画像と、前記患者透視画像と、を合成することで合成透視画像を作成し、
前記合成透視画像に基づき前記動体追跡装置の追跡対象の追跡位置精度を算出する
ことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項10】
放射線治療システムに適用され、患者をX線透視により撮影した患者透視画像を取得し、前記患者透視画像から動体追跡装置の追跡対象の位置を算出する精度検証装置による精度検証方法であって、
前記追跡対象を模擬した追跡対象模型をX線透視により撮影した模型透視画像と、前記患者透視画像と、を合成することで合成透視画像を作成し、
前記合成透視画像に基づき前記動体追跡装置の前記追跡対象の追跡位置精度を算出することを特徴とする精度検証方法。
【請求項11】
放射線治療システムに適用され、患者をX線透視により撮影した患者透視画像を取得し、前記患者透視画像から動体追跡装置の追跡対象の位置を算出するコンピュータにより実行されるコンピュータプログラムであって、
前記追跡対象を模擬した追跡対象模型をX線透視により撮影した模型透視画像と、前記患者透視画像と、を合成することで合成透視画像を作成する機能と、
前記合成透視画像に基づき前記動体追跡装置の前記追跡対象の追跡位置精度を算出する機能と
を実現させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精度検証装置、放射線治療システム、精度検証方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線または陽子線をはじめとする粒子線等の各種放射線を患部に照射する放射線治療が広く実施されている。放射線治療では、患部に対して放射線を正確に照射する必要がある。呼吸や心拍などの体内の動きにより患部の位置や形状が変化する場合、それらの変化に応じて照射する放射線を制御することが求められる。放射線を高精度に照射する方法として、動体追跡放射線治療がある。
【0003】
動体追跡放射線治療では、X線等を用いて撮影した患者の透視画像から患部の位置を計測する。計測した患部の位置に応じて放射線の照射位置や照射タイミングを制御することで、患者体内の患部に対して放射線を正確に照射できる。
【0004】
透視画像から患部の位置を計測する方法として、患者体内に留置された金属マーカを追跡する方法がある。金属マーカは人体組織より密度が高く、透視画像に高コントラスト物体として映るため、テンプレートマッチング法などの手法により追跡できる。
また近年では金属マーカを用いずに透視画像から患部位置を算出するマーカレストラッキングと呼称される方法も提案されている。
【0005】
本技術分野の一般技術として、特許文献1に記載の技術がある。
【0006】
特許文献1には、「治療計画時に導出したターゲット位置を学習し、透視画像TIにおけるターゲット位置の導出時に用いる変換パラメータCPと逆変換パラメータRCP、および透視画像における尤度導出に用いる尤度計算パラメータLPを導出する学習装置110と、治療ビームB照射時に取得する透視画像TIと学習装置110の導出した各種パラメータを用いて、治療ビームB照射時に取得する透視画像TIにおける尤度を用いてターゲット位置の導出を行う動体追跡装置120とによって、放射線治療において、照射中の患者Pの透視画像TIからターゲットの位置を、高速・高精度に追跡することができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019−180799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、患者のCT画像を仮想投影したDRR画像(Digitally Reconstructed Radiograph)から機械学習により尤度計算パラメータを算出し、実際の患者の透視画像から尤度(患部が存在する位置であるという確からしさ)を算出する技術が記載されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された技術には以下のような課題が存在する。
【0010】
すなわち、特許文献1に記載の技術では、患者毎・透視角度毎に患部位置の算出精度を検証する方法がない、との問題がある。
【0011】
体型や患部位置は患者毎に異なるため、透視画像に写る人体構造のコントラストや画像中のノイズ量は患者毎に変化する。また、患者を透視する透視角度によっては、尤度の算出に寄与しない人体構造が主として透視画像に写ってしまい、患部位置を正しく算出できない可能性がある。また、DRR画像は患者のCT画像を物理モデルに基づき仮想投影したものであり、CT画像の解像度の制限や物理モデルの不完全性などから、実際の透視画像とは画質が異なる。そのため、DRR画像を使って学習したパラメータはDRR画像に対しては最適に近い値になっていると考えられるが、実際の患者の透視画像に対して最適でない可能性がある。このような理由から患部位置の算出精度は患者毎・透視角度毎に変化しうるが、その算出精度の変化量を知る方法はこれまで存在しなかった。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたもので、患者毎・透視角度毎に患部位置の算出精度を検証することが可能な精度検証装置、放射線治療システム、精度検証方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決すべく、本発明の一つの観点に従う精度検証装置は、放射線治療システムに適用され、患者をX線透視により撮影した患者透視画像を取得し、患者透視画像から追跡対象の位置を算出する精度検証装置であって、追跡対象を模擬した追跡対象模型をX線透視により撮影した模型透視画像と、患者透視画像と、を合成することで合成透視画像を作成し、合成透視画像に基づき 動体追跡装置の追跡対象の追跡位置精度を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、患者毎・透視角度毎に患部位置の算出精度を検証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る放射線治療システムの全体概略構成を示す図である。
図2】実施形態に係る精度検証装置の概略の機能構成を示す図である。
図3】実施例に係る精度検証装置の造形部で作成した患部模型の一例を示す図である。
図4】実施形態に係る精度検証装置による合成透視画像の作成方法の概略を示す図である。
図5】実施例に係る精度検証装置の合成部で作成した合成透視画像と正解データの一例を示す図である。
図6】実施形態に係る精度検証装置の処理フローの一例を示す図である。
図7】実施形態に係る放射線治療システムによる動体追跡放射線治療の処理フローの一例を示す図である。
図8】実施形態に係る精度検証装置を用いた実験の一例を示す図である。
図9】実施形態に係る精度検証装置を用いた実験結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0017】
なお、実施例を説明する図において、同一の機能を有する箇所には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0018】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0019】
同一あるいは同様な機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0020】
実施形態に係る放射線治療システムについて、図1乃至図9を用いて説明する。
【0021】
最初に、放射線治療システム100の全体構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態における放射線治療システムの全体概略構成を示す図である。
【0022】
図1において、放射線治療システム100は、患者2内の患部3に対して炭素線等の重粒子線や陽子線からなる粒子線を照射するための装置である。この放射線治療システム100は、加速器101、ビーム輸送装置102、患者2の位置決めが可能な治療台1、加速器101から供給された粒子線を患者2内の患部3に照射する放射線照射装置7を備えている。
【0023】
粒子線は、加速器101にて必要なエネルギーまで加速された後、ビーム輸送装置102により放射線照射装置7まで導かれる。加速器101は、シンクロトロン型加速器やサイクロトロン型加速器、他の様々な加速器とすることができる。
【0024】
放射線照射装置7は2対の走査電磁石と、線量モニタと、位置モニタとを備えている(いずれも図示省略)。2対の走査電磁石は、互いに直行する方向に設置されており、患部3の位置においてビーム軸に垂直な面内の所望の位置に粒子線が到達するように粒子線を偏向することができる。線量モニタは照射された粒子線の量を計測する。位置モニタは粒子線が通過した位置を検出する。放射線照射装置7を通過した粒子線は患部3に到達する。
【0025】
粒子線の照射方法は特に限定されず、細い粒子線が形成する線量分布を並べて患部3の形状に合わせた線量分布を照射するラスタースキャニング法やラインスキャニング法を用いることができる。
【0026】
また、上述のようなスキャニング法の他に、ワブラー法や二重散乱体法など粒子線の分布を広げた後、コリメータやボーラスを用いて患部3の形状に合わせた線量分布を形成する照射方法にも本発明を適用することができる。
【0027】
なお、治療に用いる放射線として、炭素線や陽子線などの粒子線の代わりにX線を用いる場合は、加速器101やビーム輸送装置102の代わりにX線を発生させるX線照射装置を設ける。γ線を用いる場合は、加速器101やビーム輸送装置102の代わりにγ線を発生させるγ線照射装置を設ける。電子線を用いる場合は、加速器101やビーム輸送装置102の代わりに電子線を発生させる電子線照射装置を設ける。
【0028】
放射線治療システム100は、治療計画の策定に関わる構成要素として、CT撮影装置20、治療計画装置30、および患者データベース(DB)40を備えている。
【0029】
CT撮影装置20は、治療計画の策定のために予め患者2のCT画像を撮影する。治療計画装置30は、CT撮影装置20の撮像結果に基づいて治療計画を策定する。患者DB40は、患者2に関する情報を記憶する。なお、本実施形態においては、CT撮影装置20で撮影されたCT画像を用いた例を示すが、MRI(Magnetic Resonance Imaging)撮影装置で撮影されたMRI画像や、超音波撮影装置で撮影された超音波画像等、他の撮影装置で撮影された他の3次元画像を用いてもよい。
【0030】
放射線治療システム100は、患部3の位置測定に関わる構成要素として、X線撮影装置6Aおよび6B、動体追跡装置60、および精度検証装置10を備えている。
【0031】
X線撮影装置6Aおよび6Bは、患者2のX線透視画像を撮影する。動体追跡装置60は、X線透視画像を取得し、予め作成した追跡用パラメータに基づき画像処理を実施し、患部3の位置を算出する。精度検証装置10は、動体追跡装置60が算出する患部3の位置の算出精度を検証する。精度検証装置10の詳細については後述する。
【0032】
X線撮影装置6Aおよび6Bは、患者2に向けてX線を発生させるX線発生装置5Aおよび5Bと、X線発生装置5Aおよび5Bから発生して患者2を透過したX線の2次元線量分布を検出する2次元X線検出器4Aおよび4Bと、信号処理回路(図示せず)とを備えている。
【0033】
2次元X線検出器4Aおよび4Bには、例えばフラットパネル検出器(FPD:Flat Panel Detector)やイメージ・インテンシファイヤ(I.I.:Image Intensifier)が用いられる。2次元X線検出器4Aおよび4Bは、2次元画像を取得するものであればよく、FPDやI.I.以外の2次元検出器であってもよい。
【0034】
なお、本実施形態では、X線撮影装置の台数は2台であるが、これに限定されない。X線撮影装置の台数は、1台以上であれば何台であってもよい。患部3の位置を治療室座標系に対する3次元位置として算出する場合、2台以上のX線撮影装置が用いられてよい。
【0035】
動体追跡装置60が実施する画像処理としては、例えばテンプレートマッチング法がある。この場合、動体追跡装置60は追跡用パラメータとして、DRR画像やX線透視画像から患部3が写っている範囲を切り抜いたテンプレート画像を予め作成する。
【0036】
動体追跡装置60は、X線撮影装置6Aおよび6Bで撮影したX線透視画像とテンプレート画像を比較し、もっとも類似度が高くなる位置を各X線透視画像上の患部3の位置として算出する。類似度としては、正規化相互相関(NCC:Normalized Cross Correlation)等が用いられる。その後、動体追跡装置60は三角測量の原理を用いて、各X線透視画像上の患部3の位置から、患部3の位置を治療室座標系に対する3次元位置として算出する。
【0037】
なお、本実施形態における動体追跡装置60は患部3の位置を治療室座標系に対する3次元位置として算出するが、これに限定されない。動体追跡装置60は患部3の位置として、X線撮影装置6Aおよび6Bで撮影した各X線透視画像上の2次元位置だけを算出してもよい。また、動体追跡装置60は患部3の位置として、X線透視画像上に写る患部3の輪郭を算出してもよい。さらに、動体追跡装置60は患部3の位置として、患部3が存在する位置であるという確からしさを表す尤度を算出してもよい。
【0038】
患部3の位置としてX線透視画像上の2次元位置を算出する場合、動体追跡装置60は、例えば前述のテンプレートマッチング法を用いた画像処理を実施してもよい。この場合、動体追跡装置60は追跡用パラメータとしてテンプレート画像を予め作成する。
【0039】
また、患部3の位置としてX線透視画像上に写る患部3の輪郭を算出する場合、動体追跡装置60は、例えば患部3を含む学習画像と患部特徴を含む教師画像に基づいて機械学習により識別器を作成し、作成した識別器にX線透視画像を入力することで、患部3の輪郭を算出する、という画像処理を実施してもよい。この場合、動体追跡装置60は追跡用パラメータとして、識別器のパラメータを機械学習により予め作成する。なお、ここでの機械学習手法としては、ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、SVM(Support Vector Machine)、決定木等が適用できる。
【0040】
さらに、患部3の位置として、患部3が存在する位置であるという確からしさを表す尤度を算出する場合、動体追跡装置60は、例えば特許文献1に記載の技術を使用した画像処理を実施してもよい。この場合、動体追跡装置60は追跡用パラメータとして、尤度計算パラメータとX線透視画像と学習装置の導出した各種パラメ―タを予め作成する。
【0041】
放射線治療システム100には、治療台1に乗った患者2の位置と、治療計画で定められた所定の位置と、を合わせるための仮想的な基準点が定められている。基準点は、X線撮影装置6Aおよび6BによってX線透視が撮影される平面に含まれていてよい。
【0042】
その他、放射線治療システム100は、各種装置を相互に通信接続するネットワーク50を備えている。
【0043】
図1、及び実施形態に係る精度検証装置10の概略の機能構成を示す図2を参照して、本実施形態の精度検証装置10について詳細に説明する。
【0044】
精度検証装置10は、演算部11、表示部12、入力部13、記憶部14、および通信部15を備えている。演算部11は、造形部110、調整部111、合成部112、検証部113を備えている。
【0045】
造形部110は、例えばCT撮影装置20により撮影されたCT画像上で定められた患部3の形状に基づき、患部模型を作成する。調整部111は、入力部13の入力結果に基づき、患部模型をX線透視により撮影した透視画像(以下、模型透視画像と呼称する)の位置を調整する。合成部112は、調整部111で調整した模型透視画像と、患者2をX線透視により撮影した透視画像(以下、患者透視画像と呼称する)と、を合成し、合成画像を作成する。検証部113は、合成部112で作成した合成透視画像を用いて動体追跡装置60の患部3の位置の算出精度を算出する。
【0046】
表示部12は患者透視画像や模型透視画像、合成透視画像等を表示装置(図示せず)に表示する。入力部13は、マウス、キーボード、スイッチ等のインターフェースを備えており、ユーザの操作に応じて精度検証装置10に情報を入力する。記憶部14は、合成部112で用いる合成パラメータや、合成部112で作成した合成透視画像等を記憶する。通信部15は、動体追跡装置60やCT撮影装置20などと相互通信する。
【0047】
精度検証装置10の各構成要素が実行する処理を以下に具体的に説明する。
【0048】
造形部110は、まずCT撮影装置20によって撮影したCT画像と、治療計画装置30によって作成した治療計画を患者DB40から読み出す。その後、治療計画によってCT画像上に指定された患部領域の構造情報に基づき、患部3と同様の構造を持つ患部模型を造形する。
【0049】
図3に、造形部110が作成した患部模型の一例として、肺がん患者の治療計画とCT画像に基づき作成した患部模型200を示す。
【0050】
患部模型200の造形には、例えば3Dプリンターが用いられる。以下に、患部模型200の造形に3Dプリンターを用いた場合の作成手順を示す。まず治療計画によってCT画像上に指定された患部領域の構造情報に基づき、CT画像中の患部領域だけを抽出した、患部抽出CT画像を作成する。その後、患部抽出CT画像を3Dプリンターの入力データ形式(例えばSTL形式:Stereolithography)に変換し、患部抽出造形データを作成する。最終的に変換した患部抽出造形データを3Dプリンターに入力し、患部模型200を作成する。
【0051】
なお、本実施形態では、患部模型200の造形に3Dプリンターを用いたが、これに限定されない。例えば患部模型200は、患部3と同様の構造となるよう樹脂塊を削り出すことで作成してもよい。また、本実施形態では、患部模型200を患者毎に作成するとしたが、これに限定されない。例えば患部模型200は、患者毎に患部模型200を作成せず、予め作成しておいた数種類の患部模型200を使いまわすことも可能である。
【0052】
調整部111は、入力部13でユーザが入力した位置情報に基づき、造形部110で作成した患部模型200をX線透視により撮影した模型透視画像を平行移動することで、模型透視画像上に投影された患部模型200の位置を調整した、調整後模型透視画像を作成する。
【0053】
合成部112は、調整部111が作成した調整後模型透視画像と、患者2をX線透視により撮影した患者透視画像とを合成し、合成透視画像を作成する。合成透視画像は、動体追跡装置60の患部3の位置の算出精度を測定するために用いられる。
【0054】
図4に、合成透視画像の作成方法を概念的に示す。合成透視画像の作成では、以下の4つの状況(状況300、320、340,360)で撮影された4つの透視画像(透視画像304、324、344、364)を考える。
【0055】
状況300は被写体がないケースである。入射X線301は空気中を通過し、透過X線302となる。この場合、2次元X線検出器4Aまたは4Bで検出された透視画像304には明確な物体が投影されず、入射X線301の二次元強度分布が直に反映された画像になる。
【0056】
状況320は、被写体として患者2が存在するケースである。入射X線321は患者2を通過し、透過X線322となる。この場合、2次元X線検出器4Aまたは4Bで検出された透視画像324には患者2の体内構造と、患者2内にある患部3の投影像である患部投影像3'が投影される。
【0057】
状況340は、被写体として患部模型200が存在するケースである。入射X線341は患部模型200を通過し、透過X線342となる。この場合、2次元X線検出器4Aまたは4Bで検出された透視画像344には、患部模型200の投影像である患部模型投影像200'が投影される。
【0058】
最後に、状況360は被写体として患者2と患部模型200が存在するという仮想的に想定したケースである。入射X線361は患者2と患部模型200を通過し、透過X線362となる。この場合、2次元X線検出器4Aまたは4Bで検出された透視画像364には、患者2の体内構造と、患者2内にある患部3の投影像である患部投影像3'と、患部模型200の投影像である患部模型投影像200'が投影される。
【0059】
合成部112は、透視画像304と透視画像324と透視画像344から、状況360を仮想的に想定した状況で得られる透視画像364を、下記の数式に基づき算出する。
【数1】
【数2】
【数3】
【0060】
ここで、I0は透視画像304の画素値、I1は透視画像324の画素値、I2は透視画像344の画素値、μ1は患者2内でのX線の線減弱係数、T1は患者2の厚み、μ2は患部模型200内でのX線の線減弱係数、T2は患部模型200の厚みを表す。つまり各透視画像から各物体の線減弱係数と厚みの積をそれぞれ算出し、それらの和を用いてX線の減衰を推定することで、2つの物体を別々に撮影した透視画像から、2つの物体を同時に撮影した透視画像を合成できる。
【0061】
また、透視画像364を、下記の数式に基づき算出することもできる。
【数4】
【0062】
ここで、αはX線のビームハードニングの影響により、後方にある物体ほどX線減衰が低下する効果を表すパラメータである。αの値は0〜1を取り、入力部13がユーザの操作に基づき決定する。
【0063】
また、透視画像364を、下記の数式に基づき算出することもできる。
【数5】
【0064】
ここで、βは患部模型200と患者2内にある患部3の密度の違いによるX線減衰量の差を補正するパラメータである。
【0065】
例えば患者2内にある患部3が肺腫瘍だとすると、肺腫瘍のCT値(CT画像上での肺腫瘍の画素値で、凡そ物体の密度に比例する値)は−100前後の値をとる。一方で患部模型200を例えば一般的な樹脂材料を用いて作成したとすると、患部模型200のCT値は100前後の値をとる。βはこのような患部模型200のCT値と患者2内の患部3のCT値の違いを補正するためのパラメータであり、患部模型200と患部3のCT値が異なる場合でも、より患部模型200のCT値が患部3に近い状況での追跡精度を算出することができる。βは任意の値をとり、例えば患部模型200と患部3のCT値の比などを用いて算出することができる。またはβは、入力部13がユーザの操作に基づき決定してもよい。
【0066】
さらに、数式(1)、数式(4)または数式(5)で作成した合成透視画像に対し、下記の数式に基づきノイズ効果を付与することもできる。
【数6】
【0067】
ここで、I1+2は数式(1)、数式(4)または数式(5)により算出した合成透視画像であり、I'1+2はノイズ効果を付与したノイズ合成透視画像であり、η(0、σ2)は平均0、分散σのガウス分布に従う確率変数である。σの値は任意の大きさをとり、入力部13がユーザの操作に基づき決定する。数式(6)により、合成透視画像にノイズ効果を付与することで、より追跡が困難な状況での追跡精度を算出することができる。
【0068】
合成透視画像に投影された患部模型200の正解データは、例えば閾値を使って透視画像344を患部模型200が投影された領域と、患部模型200が投影されていない領域の2値に分離することで作成できる。閾値の算出方法には大津の2値化法などが適用できる。
【0069】
図5に、合成部112で作成した合成透視画像と正解データの一例を示す。
【0070】
合成透視画像には、患者2の体内構造と、患部3の投影像である患部投影像3'と、患部模型200の投影像である200'が投影されている。また、正解データは、患部模型200が投影された領域401と、患部模型200が投影されていない領域402に2値化されている。なお正解データは2つの領域として作成したが、これに限定されない。例えば患部模型200が投影された領域と、患部模型200が投影されていない領域と、それらの境界領域などの3つの領域として正解データを作成してもよい。また、患部模型200が投影された領域の重心位置などの二次元情報として正解データを作成してもよい。
【0071】
検証部113は、まず、合成部112が作成した合成透視画像を動体追跡装置60に送信する。検証部113は動体追跡装置60を操作し、動体追跡装置60は合成透視画像上の患部模型200を追跡し、合成透視画像上での患部模型200の2次元位置を算出する。その後、検証部113は、動体追跡装置60が算出した追跡位置と合成部112が作成した正解データの比較結果を算出する。比較結果としては、例えば動体追跡装置60が算出した合成透視画像上での患部模型200の2次元位置と、正解データ上での患部模型200が投影された領域401の重心位置との二乗誤差などが用いられる。
【0072】
表示部12は、患者透視画像や合成透視画像など各種画像や、検証部113が算出した比較結果などを表示装置(図示せず)に表示する。入力部13は、マウス、キーボード、スイッチ等のインターフェースを備えており、ユーザの操作に応じて精度検証装置10に情報を入力する。入力部13は、ユーザの操作に応じて調整部111で模型透視画像を平行移動する際の位置情報を決定する。入力部13が決定する位置情報は、例えば2次元位置が用いられる。この場合、調整部111が作成する調整後模型透視画像は1種類になる。
【0073】
また、入力部13が決定する位置情報は、複数の2次元位置などであってもよい。この場合、調整部111は、投影される患部模型200の位置が異なる複数種類の調整後模型透視画像を作成し、同時に合成部112が作成する合成透視画像も複数種類作成される。
【0074】
記憶部14は、合成部112で用いる合成パラメータや、合成部112で作成した合成透視画像等を記憶する。通信部15は、動体追跡装置60やCT撮影装置20などと相互通信する。
【0075】
精度検証装置10や動体追跡装置60等は、演算装置である演算部11にプログラムを実行させることで実現されてよい。この演算装置は、CPUやメモリ、インターフェース等を備えたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラム可能な演算デバイスであってよい。演算装置に読み込まれるプログラムは、内部記録媒体や外部記録媒体MM(図1参照)に記憶されており、演算装置によって読み出される。
【0076】
また、精度検証装置10や動体追跡装置60等に対する動作指令は、1つのプログラムにまとめられていても、複数のプログラムに分かれていてもよく、それらの組み合わせでもよい。また、プログラムの一部または総ては専用のハードウェアで実現されてもよく、モジュール化されていてもよい。さらには、各種プログラムは、プログラム配布サーバや内部記憶媒体や外部記憶媒体MMから各装置にインストールされてもよい。また、精度検証装置10や動体追跡装置60等は独立している必要はなく、2つ以上を一体化、共通化して処理のみを分担してもよい。
【0077】
精度検証装置10が備える複数の構成要素のうちの一部は、外部のコンピュータによって構成されてもよい。外部のコンピュータは、精度検証装置10に直接接続されたものでもよいし、インターネット等の通信回線に接続されたものでもよい。精度検証装置10が備える複数の構成要素のうちの一部または全部は、ハードウェアとしての電子回路によって個別に構成されてもよい。
【0078】
精度検証装置10が備える記憶部14には、例えばRAM、ROM、ハードディスク、USBメモリ、SDカード等が用いられてよい。記憶部14は、インターネット等の通信回線上にあるストレージであってもよい。精度検証装置10が備える1つの構成要素は、分散処理を実行する複数のコンピュータによって構成されてもよい。
【0079】
次に、本実施例に係る放射線治療システム100の精度検証装置10の処理についての詳細を説明する。図6は、精度検証装置10の処理手順を示すフローチャートである。
【0080】
精度検証装置10が処理を開始すると、通信部15は患者DB40からCT画像と治療計画を読み出し、記憶部14に保存する(S501)。
【0081】
次に、造形部110は、記憶部14に保存されたCT画像と治療計画から、治療計画によってCT画像上に指定された患部領域の構造情報に基づき、患部3と同様の構造を持つ患部模型200を造形する(S502)。
【0082】
その後、通信部15は動体追跡装置60と通信し、患部模型200をX線撮影装置6Aおよび6Bで撮影するための撮影パラメータを設定する(S503)。撮影パラメータとは、X線発生装置5Aおよび5Bの管電圧や管電流や、X線透視の角度などのことを指す。
【0083】
続いて、通信部15は動体追跡装置60と通信し、患部模型200のX線透視を撮影し、模型透視画像を取得し、記憶部14に保存する(S504)。さらに、入力部13は、ユーザの操作により模型透視画像を平行移動する際の位置情報を決定する(S505)。続いて、調整部111は、記憶部14から模型透視画像を読み出し、S505で決定した位置情報に基づいて、調整後模型透視画像を作成する(S506)。
【0084】
S502乃至S506と並行し、通信部15は動体追跡装置60と通信し、治療台1に乗った患者2の位置決めを実施する(S507)。患者2の位置決めは放射線照射装置7に備え付けられた墨出しレーザー光(図示せず)に基づいて、治療計画上で定められた所定の位置と患者2の位置を合わせてもよい。
【0085】
次に、通信部15は動体追跡装置60と通信し、患部模型200をX線撮影装置6Aおよび6Bで撮影するための撮影パラメータを設定する(S508)。撮影パラメータとは、X線発生装置5Aおよび5Bの管電圧や管電流などのことを指す。続いて、通信部15は動体追跡装置60と通信し、患者2のX線透視を撮影し、患者透視画像を取得し、記憶部14に保存する(S509)。
【0086】
S506乃至S509の後、入力部13は必要に応じてユーザの操作を受け付け、合成パラメータを決定する(S510)。合成パラメータとは、例えば数式(4)にあるαの値である。
【0087】
次に、合成部112は記憶部14に保存された調整後模型透視画像と患者透視画像を読み出し、合成透視画像と正解データを作成し、記憶部14に保存する(S511)。続いて、通信部15は動体追跡装置60と通信し、予め作成された追跡パラメータを読出し(S512)、記憶部14に保存した合成透視画像を動体追跡装置60に送信し、合成透視画像上の患部模型200の投影像を追跡する(S513)。
【0088】
その後、検証部113は、動体追跡装置60が算出した追跡結果と記憶部14に保存された正解データを比較し、比較結果を表示部12に表示する(S514)。
【0089】
さらに、通信部15は動体追跡装置60と通信し、他の撮影パラメータで撮影するかどうかを判定する(S515)。複数の透視角度で治療するなどの理由で他の撮影パラメータで撮影する場合(S515においてYES)、S503およびS508に戻り、撮影パラメータを変更して再度処理を進める。
【0090】
本実施例に係る放射線治療システム100による動体追跡放射線治療の処理についての詳細を説明する。図7は、放射線治療システム100による動体追跡放射線治療の処理手順を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、治療前に実行される治療前フローF600と、患者2が来院し、実際に放射線を照射する際に実行される治療時フローF650に分かれている。
【0091】
放射線治療システム100が処理を開始すると、CT撮影装置20は患者2のCT画像を撮影する(S601)。次に、治療計画装置30はCT画像に基づき治療計画を作成し、患者DB40へ保存する(S602)。
【0092】
続いて、動体追跡装置60は、治療計画とCT画像に基づき、追跡用パラメータを作成する(S603)。さらに、精度検証装置10は、動体追跡装置60が算出した患部3の追跡結果と正解データを比較し、追跡精度を検証する(S604)。
【0093】
その後、放射線治療システム100は、S604で算出した追跡精度が予め設定された所定の範囲内であるかを判定し(S605)、所定の範囲内であれば(S605においてYES)治療時フローF650へと進む。所定の範囲外と判定した場合(S605においてNO)、S603に戻り、動体追跡装置60は追跡用パラメータを再度作成しなおす。
【0094】
なお、S604において複数回追跡精度の検証を行ってもなおS605において追跡精度が所定の範囲内に収まらない場合、治療時フローF650において患者2の患部3に例えば金属製のマーカを用いた治療を提案してもよい。
【0095】
治療時フローF650では、放射線治療システム100は、治療台1に乗った患者2の位置決めを実施する(S651)。患者2の位置決めは放射線照射装置7に備え付けられた墨出しレーザー光(図示せず)に基づいて、治療計画上で定められた所定の位置と患者2の位置を合わせてもよい。
【0096】
次に、動体追跡装置60は、S603で作成した追跡用パラメータを読出す(S652)。さらに、動体追跡装置60は、X線撮影装置6Aおよび6Bと通信し、患者2をX線透視により撮影した透視画像を取得する(S653)。
【0097】
続いて、動体追跡装置60は、S653で取得した透視画像から患部位置を算出し(S654)、患部位置が予め設定された所定の範囲内であるかを判定する(S655)。所定の範囲内である場合(S655においてYES)、放射線治療システム100は患者2内の患部3へ向けて粒子線を照射する(S656)。S655にて、患部位置が所定の範囲外にある場合(S655においてNO)、S653へと戻る。
【0098】
さらに、放射線治療システム100は照射した粒子線量が所定の値に達したかを判定する(S657)。S657にて、照射した粒子線量が所定の値に達した場合(S657においてYES)、治療を終了する。S657にて、照射した粒子線量が所定の値に達しない場合(S657においてNO)、S653へと戻る。
【0099】
本実施例に係る放射線治療システム100及び精度検証装置10の作用について以下に説明する。
【0100】
図8は、本実施形態に係る放射線治療システム100の実験例の説明図を示す。図8に示す実透視画像、実施例および比較例の3つの透視画像を使用して動体追跡装置60の追跡精度の検証について実験を実施した。実透視画像は、実際にX線透視により撮影された画像であり、患部3の位置は既知である。実施例は、本実施形態における放射線治療システム100を用いて、実透視画像中に患部模型200の透視画像を合成して作成した画像である。比較例は、CT画像を仮想的にX線透視することで算出した画像である。
【0101】
実透視画像と比較例では、画像中に投影された患部3をテンプレートマッチング法により追跡し、追跡精度を算出した。実施例では、本実施形態における放射線治療システム100を用いて、画像中に合成した患部模型200の投影像をテンプレートマッチング法により追跡し、追跡精度を算出した。
【0102】
図9には、実験例の実験結果の説明図を示す。図9において、実透視画像での追跡誤差は平均5.8(ピクセル)で最大22.1(ピクセル)となった。実施例での追跡誤差は平均6.0(ピクセル)で最大20.0(ピクセル)となり、実透視画像での追跡誤差と同等の結果が得られた。比較例での追跡誤差は平均5.2(ピクセル)で最大14.1(ピクセル)となり、実透視画像や実施例での追跡誤差より最大値が小さい結果となった。
【0103】
つまり、DRR画像での追跡誤差は、実透視画像での追跡誤差より過少に評価される傾向にある。一方で、実施例では、DRR画像より実透視画像に近い追跡誤差を算出できる。これにより、従来であれば算出できなかった実透視画像での追跡誤差を、本実施形態では合成透視画像を用いて算出することができる。
【0104】
また、本実施形態では、患者毎に患部模型200を作成することで、患者毎に変化する動体追跡装置60の追跡誤差を評価することができる。
【0105】
さらに、本実施形態では、患者2をX線透視する角度毎に合成透視画像を作成し、各合成透視画像において追跡誤差を算出することで、透視角度毎に変化する動体追跡装置60の追跡誤差を評価することができる。
【0106】
また、本実施形態では、ビームハードニングの効果を補正したうえで合成透視画像を作成することで、患部模型200のコントラストをより現実的にすることができ、動体追跡装置60の追跡誤差をより正確に評価することができる。
【0107】
さらに、本実施形態では、患部模型200と患者2内の患部3のCT値の違いを補正したうえで合成透視画像を作成することで、患部模型200のコントラストをより現実的にすることができ、動体追跡装置60の追跡誤差をより正確に評価することができる。
【0108】
また、本実施形態では、合成透視画像にノイズの効果を付与することで、撮影パラメータが低下した状態での、より追跡が困難な状況での追跡精度を評価することができる。
さらに本実施形態では、患者毎に患部模型200を作成することで、患者毎に変化する患者体内の患部3の形状に合わせた合成透視画像を作成することができ、動体追跡装置60の追跡誤差をより正確に評価することができる。
【0109】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0110】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0111】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1…治療台 2…患者 3…患部 3'…患部が透視画像上に投影された投影像 4A、4B…2次元X線検出器 5A、5B…X線発生装置 6A、6B…X線撮影装置 7…粒子線照射装置 10…精度検証装置 11…演算部 12…表示部 13…入力部 14…記憶部 15…通信部 20…CT撮影装置 30…治療計画装置 40…患者DB 50…ネットワーク 100…放射線治療システム 110…造形部 111…調整部 112…合成部 113…検証部 200…患部模型

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9