【課題】温度調整用ベース部材と静電チャック部材に、それらの熱膨張の差に起因するせん断変位やせん断応力が発生することを抑制し、かつ静電チャック部材上に固定された板状試料の温度を均一にすることが可能な静電チャック装置を提供する。
【解決手段】静電チャック部材2、温度調整用ベース部材3および接合層4に、その厚さ方向に貫通する冷却ガス導入孔17が設けられ、温度調整用ベース部材3を厚さ方向に貫通する収容孔18内に、接合層4を介して碍子21が接合され、碍子21の静電チャック部材2側の端面21aが、収容孔18内にあり、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の厚さが0.05mm以上かつ0.20mm以下、碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4の収容孔18内にある部分の厚さが0.0mm以上かつ0.2mm以下である静電チャック装置1。
前記収容孔内において、前記碍子と前記温度調整用ベース部材の間における前記接合層の厚さが0.00mm超かつ0.05mm以下である請求項1に記載の静電チャック装置。
前記静電チャック部材と前記温度調整用ベース部材の間における前記接合層は、硬化後のヤング率が8MPa以下の高分子材料からなる請求項1または2に記載の静電チャック装置。
前記静電チャック部材と前記温度調整用ベース部材の間における前記接合層の厚さは、前記碍子と前記静電チャック部材の間における前記接合層の前記収容孔内にある部分の厚さ以上、かつ、前記収容孔内において、前記碍子と前記温度調整用ベース部材の間における前記接合層の厚さより大きい請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
前記碍子と前記静電チャック部材の間における前記接合層は、フィラーを含有するシリコーン系樹脂組成物からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
前記静電チャック部材と前記温度調整用ベース部材の間における前記接合層は、シリコーン樹脂およびフィラーを含有するシリコーン系樹脂組成物からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の静電チャック装置の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0018】
<静電チャック装置>
以下、
図1〜
図3を参照しながら、本実施形態に係る静電チャック装置について説明する。
なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率等は適宜異ならせてある。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態の静電チャック装置を示す断面図である。
図1に示すように、静電チャック装置1は、円板状の静電チャック部材2と、静電チャック部材2を所望の温度に調整する円板状の温度調節用ベース部材3と、これら静電チャック部材2および温度調整用ベース部材3を接合・一体化する接合層4と、を有している。
以下の説明においては、載置板11の載置面11a側を「上」、温度調整用ベース部材3側を「下」として記載し、各構成の相対位置を表すことがある。
【0020】
[静電チャック部材]
静電チャック部材2は、上面が半導体ウエハ等の板状試料を載置する載置面11aとされたセラミックスからなる載置板11と、載置板11の載置面11aとは反対の面側に設けられた支持板12と、これら載置板11と支持板12との間に挟持された静電吸着用電極13と、載置板11と支持板12とに挟持され静電吸着用電極13の周囲を囲む環状の絶縁材14と、静電吸着用電極13に接するように支持板12の固定孔15内に設けられた給電端子16と、を有している。
【0021】
これら載置板11、支持板12および静電吸着用電極13には、その厚さ方向に貫通する冷却ガス導入孔17が中心軸に対して回転対称となる位置に計4個形成されている。
【0022】
[載置板]
載置板11の載置面11aには、半導体ウエハ等の板状試料を支持するための多数の突起が立設され(図示略)ている。さらに、載置板11の載置面11aの周縁部には、ヘリウム(He)等の冷却ガスが漏れないように、高さが上記の突起と同じ高さの周縁壁が形成され(図示省略)ている。この周縁壁の内側は、板状試料を静電吸着する吸着領域とされている。上記の冷却ガス導入孔17を介して、載置板11の載置面11aと突起頂面に載置された板状試料との隙間に、冷却ガスが供給されるようになっている。
【0023】
載置板11を構成するセラミックスとしては、誘電体材料であり、機械的な強度を有し、しかも腐食性ガスおよびそのプラズマに対する耐久性を有するものであれば特に制限されるものではない。このようなセラミックスとしては、例えば、酸化アルミニウム(Al
2O
3)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体、酸化アルミニウム(Al
2O
3)−炭化ケイ素(SiC)複合焼結体等が好適に用いられる。
【0024】
載置板11の厚さは、0.3mm以上かつ3.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上かつ1.5mm以下であることがより好ましい。載置板11の厚さが0.3mm以上であれば、耐電圧性に優れる。一方、載置板11の厚さが3.0mm以下であれば、静電チャック部材2の静電吸着力が低下することがなく、載置板11の載置面11aに載置される板状試料と温度調整用ベース部材3との間の熱伝導性が低下することもなく、処理中の板状試料の温度を好ましい一定の温度に保つことができる。
【0025】
[支持板]
支持板12は、載置板11と静電吸着用電極13を下側から支持している。
【0026】
支持板12は、載置板11を構成するセラミックスと同様の材料からなる。
支持板12の厚さは、0.3mm以上かつ3.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上かつ1.5mm以下であることがより好ましい。支持板12の厚さが0.3mm以上であれば、充分な耐電圧を確保することができる。一方、支持板12の厚さが3.0mm以下であれば、静電チャック部材2の静電吸着力が低下することがなく、載置板11の載置面11aに載置される板状試料と温度調整用ベース部材3との間の熱伝導性が低下することもなく、処理中の板状試料の温度を好ましい一定の温度に保つことができる。
【0027】
[静電吸着用電極]
静電吸着用電極13では、電圧を印加することにより、載置板11の載置面11aに板状試料を保持する静電吸着力が生じる。
【0028】
静電吸着用電極13を構成する材料としては、チタン、タングステン、モリブデン、白金等の高融点金属、グラファイト、カーボン等の炭素材料、炭化ケイ素、窒化チタン、炭化チタン等の導電性セラミックス等が好適に用いられる。これらの材料の熱膨張係数は、載置板11の熱膨張係数に出来るだけ近似していることが望ましい。
【0029】
静電吸着用電極13の厚さは、5μm以上かつ200μm以下であることが好ましく、10μm以上かつ100μm以下であることがより好ましい。静電吸着用電極13の厚さが5μm以上であれば、充分な導電性を確保することができる。一方、静電吸着用電極13の厚さが200μm以下でれば、載置板11の載置面11aに載置される板状試料と温度調整用ベース部材3との間の熱伝導性が低下することがなく、処理中の板状試料の温度を望ましい一定の温度に保つことができる。また、プラズマ透過性が低下することがなく、安定にプラズマを発生させることができる。
【0030】
静電吸着用電極13は、スパッタ法や蒸着法等の成膜法、あるいはスクリーン印刷法等の塗工法により容易に形成することができる。
【0031】
[絶縁材]
絶縁材14は、静電吸着用電極13を囲繞して腐食性ガスおよびそのプラズマから静電吸着用電極13を保護するためのものである。
絶縁材14は、載置板11および支持板12と同一組成、または主成分が同一の絶縁性材料から構成されている。絶縁材14により、載置板11と支持板12とが、静電吸着用電極13を介して接合一体化されている。
【0032】
[給電端子]
給電端子16は、静電吸着用電極13に電圧を印加するためのものである。
給電端子16の数、形状等は、静電吸着用電極13の形態、すなわち単極型か、双極型かにより決定される。
【0033】
給電端子16の材料は、耐熱性に優れた導電性材料であれば特に制限されるものではない。給電端子16の材料としては、熱膨張係数が静電吸着用電極13および支持板12の熱膨張係数に近似したものであることが好ましく、例えば、コバール合金、ニオブ(Nb)等の金属材料、各種の導電性セラミックスが好適に用いられる。
【0034】
[温度調整用ベース部材]
温度調整用ベース部材3は、金属およびセラミックスの少なくとも一方からなる厚みのある円板状のものである。温度調整用ベース部材3の躯体は、プラズマ発生用内部電極を兼ねた構成とされている。温度調整用ベース部材3の躯体の内部には、水、Heガス、N
2ガス等の冷却媒体を循環させる流路(図示略)が形成されている。また、温度調整用ベース部材3の躯体の内部には、静電チャック部材2と同様に、固定孔15も形成されている。さらに、温度調整用ベース部材3の躯体の内部には、温度調整用ベース部材3を厚さ方向に貫通する収容孔18が形成されている。
【0035】
温度調整用ベース部材3に設けられた収容孔18内には、静電チャック部材2および温度調整用ベース部材3を接合・一体化する接合層4が延在し、その接合層4を介して、収容孔18にセラミックスからなる碍子21が接合・一体化されている。
碍子21には、碍子21の中央部を、その厚さ方向に貫通する貫通孔22が形成されている。碍子21に設けられた貫通孔22は、静電チャック部材2および接合層4に設けられた冷却ガス導入孔17と連通している。すなわち、温度調整用ベース部材3における冷却ガス導入孔17は、収容孔18内に配置された碍子21を厚さ方向に貫通する貫通孔22である。
【0036】
碍子21の静電チャック部材側の端面(上面)21aは、収容孔18内にある。すなわち、温度調整用ベース部材3の静電チャック部材2とは反対側の面(以下、「他方の面」と言う。)3bを基準として、碍子21の上面21aは、温度調整用ベース部材3の一方の面3aよりも下方に存在する。
【0037】
温度調整用ベース部材3の躯体は、外部の高周波電源31に接続されている。また、温度調整用ベース部材3の固定孔15内には、その外周が絶縁材料32により囲繞された給電端子16が、絶縁材料32を介して固定されている。給電端子16は、外部の直流電源33に接続されている。
【0038】
温度調整用ベース部材3を構成する材料は、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば特に制限されるものではない。温度調整用ベース部材3を構成する材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ステンレス鋼(SUS)等が好適に用いられる。
温度調整用ベース部材3における少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理またはポリイミド系樹脂による樹脂コーティングが施されていることが好ましい。また、温度調整用ベース部材3の全面が、前記のアルマイト処理または樹脂コーティングが施されていることがより好ましい。
【0039】
温度調整用ベース部材3にアルマイト処理または樹脂コーティングを施すことにより、温度調整用ベース部材3の耐プラズマ性が向上するとともに、異常放電が防止される。したがって、温度調整用ベース部材3の耐プラズマ安定性が向上し、また、温度調整用ベース部材3の表面傷の発生も防止することができる。
【0040】
碍子21を構成する材料は、プラズマやラジカル(フリーラジカル)に対して耐久性を有するセラミックスが好ましく、このセラミックスとしては、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、サイアロン、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)から選択された1種からなるセラミックス、あるいは2種以上を含む複合セラミックス等が好適に用いられる。
【0041】
[接合層]
接合層4は、
図2に示すように、硬化体であるシリコーン系樹脂組成物と、フィラーとを含有する複合材料41に、静電チャック部材2を平面視した場合に多角形状のセラミックスからなるスペーサ42が複数個、同一平面内に略一定の密度で略規則的に配列されている。静電チャック部材2を平面視するとは、静電チャック部材2を載置板11の載置面11a側から視ることである。また、接合層4は、温度調整用ベース部材3に設けられた収容孔18内に延在し、収容孔18に碍子21を接合・一体化している。さらに、接合層4の内部には、静電チャック部材2と同様に、固定孔15および冷却ガス導入孔17も形成されている。
【0042】
図2では、スペーサ42が、最外周の同心円上に等間隔に8個、それよりも内側の同心円上に等間隔に8個、最内周の同心円上に等間隔に4個配置されている。これらのスペーサ42は、直線状に並ばないように配置されている。
【0043】
静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の厚さt1は、0.05mm超かつ0.20mm以下であり、0.10mm以上かつ0.15mm以下であることが好ましい。
静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の厚さt1が0.05mm以下では、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間の熱膨張率の差によるせん断歪を充分に緩和できず、静電チャック部材が破壊する場合がある。一方、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の厚さt1が0.20mmを超えると、接合層の熱抵抗が大きくなり、載置面11a上の板状試料を充分に冷却できない。
【0044】
碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4の収容孔18内にある部分の厚さt2が0.0mm以上かつ0.2mm以下であり、0.0mm以上かつ0.1mm以下であることが好ましい。
碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4の収容孔18内にある部分の厚さt2が0.0mm未満である場合、碍子21の端面21aが温度調整用ベース部材3の一方の面3aより上方となるため、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の熱膨張差に起因するせん断応力が碍子端面21a近傍の接合層4に集中し、接合層4に亀裂がはいる懸念がある。一方、碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4の収容孔18内にある部分の厚さt2が0.2mmを超えると、接合層の熱抵抗が大きくなりすぎ、板状試料中の碍子直上部の温度が高くなり、温度の均一性が損なわれる。
【0045】
収容孔18内において、碍子21と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の厚さt3が0.00mm超かつ0.05mm以下であることが好ましい。
碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4の厚さt3が0.00mmであれば、接合層の熱抵抗が小さくなりすぎ、碍子直上の板状試料の温度が低下する。一方、碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4の厚さt3が0.05mm超であれば、接合層の熱抵抗が大きくなり過ぎて、板状試料中の碍子直上部の温度が高くなり、温度の均一性が損なわれる。
【0046】
静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の厚さt1は、碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4の収容孔18内にある部分の厚さt2以上、かつ、収容孔18内において、碍子21と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の厚さt3より大きいことが好ましい。
静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の厚さt1を、碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4の収容孔18内にある部分の厚さt2以上にすることにより、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間の熱膨張率の差によるせん断歪みを充分に緩和することができる。また、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の厚さt1を、収容孔18内において、碍子21と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の厚さt3より大きくすることにより、接合層4の熱抵抗が大きくなり過ぎることがなく、載置面11a上の板状試料中の碍子21の直上部の温度が高くなり過ぎることもなく、温度の均一性が保たれる。
【0047】
スペーサ42は、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3とを一定の厚さで接合するためのものである。スペーサ32の材料としては、高い誘電体損失(tanδ)を有しない材料、例えば、アルミナ(Al
2O
3)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、ジルコニア(ZrO
2)等の焼結体が好適に用いられる。なお、炭化ケイ素(SiC)焼結体、アルミニウム(Al)等の金属板、フェライト(Fe
2O
3)等の磁性材料といった高い誘電体損失を有する材料は放電の原因となるので好ましくない。
【0048】
以下、接合層4について、詳細に説明する。
静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間における接合層4は、硬化後のヤング率が8MPa以下の高分子材料からなることが好ましく、6MPa以下の高分子材料からなることがより好ましい。
接合層4は、硬化後のヤング率が8MPa以下の高分子材料から構成されることにより、接合層4の熱抵抗が大きくなり過ぎることがなく、載置面11a上の板状試料中の碍子21の直上部の温度が高くなり過ぎることもなく、温度の均一性が保たれる。
【0049】
接合層4を構成する高分子材料の硬化後のヤング率の測定方法は、DMA法により測定する。ここで、「DMA」とは、動的粘弾性分析をいい、例えば、JIS C 6481に規定される分析方法である。測定条件は、各測定温度条件にて、スパン40mmにて試験片の長手方向に10gの引張加重を加えた状態から,振幅16μm、周波数11Hzで長手方向に正弦波をかけて貯蔵弾性率を求め、その値をヤング率とする。
【0050】
硬化後のヤング率が8MPa以下高分子材料としては、シリコーン系樹脂組成物が好ましい。
シリコーン系樹脂組成物としては、公知文献(特開平4−287344号公報)に記載されているシリコーン樹脂含む。シリコーン系樹脂組成物は、シリコーン樹脂およびフィラーを含有していてもよい。
【0051】
図3に示すように、碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4(4A)は、フィラーを含有するシリコーン系樹脂組成物からなることが好ましい。これにより、接合層4Aの熱抵抗が大きくなり過ぎることがなく、載置面11a上の板状試料中の碍子21の直上部の温度が高くなり過ぎることもなく、温度の均一性が保たれる。
【0052】
また、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間における接合層4(4B)は、シリコーン樹脂およびフィラーを含有するシリコーン系樹脂組成物からなることが好ましい。これにより、接合層4(4B)の熱抵抗が大きくなり過ぎることがなく、載置面11a上の板状試料中の碍子21の直上部の温度が高くなり過ぎることもなく、温度の均一性が保たれる。
【0053】
また、碍子21と静電チャック部材2温度調整用ベース部材3の間における接合層4の収容孔18内にある部分4C(4)は、シリコーン樹脂のみからなる層を含むことが好ましい。これにより、収容孔18に対して、接合層4C(4)を介して、碍子21を強固に固定することができる。さらに、接合層4C(4)に含まれるシリコーン樹脂のみからなる層は、碍子21と接していることが好ましい。これにより、収容孔18に対して、接合層4C(4)を介して、碍子21をより強固に固定することができる。
【0054】
このシリコーン樹脂は、耐熱性、弾性に優れた樹脂であり、シロキサン結合(Si−O−Si)を有するケイ素化合物重合体である。このシリコーン樹脂は、例えば、下記の化学式(1)、化学式(2)で表すことができる。
【0055】
【化1】
(但し、Rは、Hまたはアルキル基(C
nH
2n+1−:nは整数)である。)
【0056】
【化2】
(但し、Rは、Hまたはアルキル基(C
nH
2n+1−:nは整数)である。)
【0057】
このようなシリコーン樹脂としては、特に、熱硬化温度が70℃以上かつ140℃以下のシリコーン樹脂を用いることが好ましい。シリコーン樹脂の熱硬化温度が70℃以上であれば、静電チャック部材2の支持板12と温度調整用ベース部材3とを接合する際に、接合過程の途中でシリコーン樹脂の硬化が始まることがなく、接合作業に支障を来すことがない。一方、シリコーン樹脂の熱硬化温度が140℃以下であれば、支持板12と温度調整用ベース部材3との熱膨張差を吸収することができるため、載置板11の載置面11aの平坦度が低下することがない。また、支持板12と温度調整用ベース部材3との間の接合力が低下することがなく、これらの間で剥離が生じることもない。
【0058】
シリコーン樹脂としては、硬化後のヤング率が8MPa以下のものを用いることが好ましい。硬化後のヤング率が8MPa以下であれば、接合層4に昇温、降温の熱サイクルが負荷された際にも支持板12と温度調整用ベース部材3との熱膨張差を吸収することができるため、接合層4の耐久性が低下することを防止できる。
【0059】
フィラーとしては、高熱伝導性の材料であれば特に制限されるものではない。高熱伝導性のフィラーとしては、例えば、アルミナ(Al
2O
3)、酸化ケイ素(SiO
2)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス粉末や、アルミニウム(Al)等の金属粉末が挙げられる。フィラーとしては、熱伝導性に優れている点から、窒化アルミニウム(AlN)粒子の表面に酸化ケイ素(SiO
2)からなる被覆層が形成された表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子が好ましい。
【0060】
また、表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子は、窒化アルミニウム(AlN)粒子の表面に酸化ケイ素(SiO
2)からなる被覆層が形成されているため、表面被覆が施されていない単なる窒化アルミニウム(AlN)粒子と比較して、優れた耐水性を有している。したがって、シリコーン系樹脂組成物を主成分とする接合層4の耐久性を確保することができ、よって静電チャック装置1の耐久性を飛躍的に向上させることができる。
【0061】
表面被覆が施されていない窒化アルミニウム(AlN)粒子は、下記の化学反応式(3)で示されるように、例えば、大気中の水により加水分解されて水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)とアンモニア(NH
3)を生成する。この水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)により、窒化アルミニウム(AlN)の熱伝導性が低下する。
AlN+3H
2O→Al(OH)
3+NH
3 (3)
【0062】
一方、表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子は、窒化アルミニウム(AlN)粒子の表面が、優れた耐水性を有する酸化ケイ素(SiO
2)からなる被覆層により被覆されているため、窒化アルミニウム(AlN)が大気中の水により加水分解されることがなく、窒化アルミニウム(AlN)の熱伝導性が低下することもない。したがって、接合層4の耐久性が向上し、また、半導体ウエハ等の板状試料への汚染源となることもない。
【0063】
表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子は、被覆層中のケイ素(Si)とシリコーン系樹脂組成物とにより強固な結合状態を得ることが可能であるから、接合層4の伸び性を向上させることが可能である。これにより、静電チャック部材2の支持板12の熱膨張率と温度調整用ベース部材3の熱膨張率との差に起因する熱応力を緩和することができ、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3とを精度よく、強固に接合することができる。また、使用時の熱サイクル負荷に対する耐性が充分なものとなり、静電チャック装置の耐久性が向上する。
【0064】
この表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子の被覆層の厚さは0.005μm以上かつ0.05μm以下であることが好ましく、0.005μm以上かつ0.03μm以下であることがより好ましい。
被覆層の厚さが0.005μm以上であれば、窒化アルミニウム(AlN)の耐水性(耐湿性)を充分に発現することができる。一方、被覆層の厚さが0.05μm以下であれば、表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子の熱伝導性が低下することがなく、ひいては載置板11の載置面11aに載置される板状試料と温度調整用ベース部材3との間の熱伝導性が低下することがない。したがって、処理中の板状試料の温度を好ましい一定の温度に保つことができる。
【0065】
この表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子の平均粒径は、1μm以上かつ20μm以下であることが好ましい。
この表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子の平均粒径が1μmを下回ると、粒子同士の接触が不充分となり、結果的に熱伝導率が劣化する虞があり、また、粒径が細か過ぎると取扱等の作業性の低下を招くこととなり好ましくない。一方、平均粒径が20μmを越えると、局所的に見た場合、接合層4内におけるシリコーン系樹脂組成物の占める割合が減少し、接合層4の伸び性、接着強度の低下を招くことがあり、また、その場合、粒子の脱離が発生し易くなり、接合層4に空孔(ポア)が生じることとなり、結果的に熱伝導性、伸び性、接着強度の劣化を招くので好ましくない。
【0066】
この接合層4における表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子の含有量は、20vol%以上かつ40vol%以下であることが好ましい。
この表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子の含有量が20vol%を下回ると,接合層4の熱伝導性が低下し、ひいては載置板11の載置面11aに載置される板状試料と温度調整用ベース部材3との間の熱伝導性が低下し、処理中の板状試料の温度を好ましい一定の温度に保つことが困難なものとなるからであり、一方、含有量が40vol%を越えると、接合層4の伸び性が低下して熱応力緩和が不充分となり、載置板11の載置面11aの平坦度、平行度が劣化するのみならず、支持板12と温度調整用ベース部材3との間の接合力が低下し、両者間で剥離が生じる虞があるからである。
【0067】
この接合層4の厚みは、50μm以上かつ180μm以下であることが好ましい。
この接合層4の厚みが50μmを下回ると、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3との間の熱伝導性は良好となるものの、熱応力緩和が不充分となるからであり、一方、接合層4の厚みが180μmを超えると、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3との間の熱伝導性を充分確保することができず、またプラズマ透過性も低下するからである。
【0068】
本実施形態の静電チャック装置1によれば、碍子21の上面21aが収容孔18内にあり、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の厚さt1が0.05mm以上かつ0.20mm以下、碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4の収容孔18内にある部分の厚さt2が0.0mm超かつ0.2mm以下であるため、温度調整用ベース部材3と静電チャック部材2に、それらの熱膨張の差に起因するせん断変位やせん断応力が発生することを抑制することができる。
【0069】
以下、本実施形態の静電チャック装置1の製造方法を、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3との接合方法に重点をおいて説明する。
【0070】
まず、公知の方法により、静電チャック部材2と、温度調整用ベース部材3とを作製する。
【0071】
次いで、碍子21の側面に、シリコーン樹脂およびフィラーを含有するシリコーン系樹脂組成物の少なくとも一方を塗布し、碍子21の上面21aにフィラー入りシリコーン系樹脂組成物を塗布する。その後、温度調整用ベース部材3の収容孔18に、碍子21を挿入する。この際、収容孔18内において、碍子21と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の厚さt3が所望の寸法となるように、碍子21の外径と収容孔18の内径の寸法を設定する。
【0072】
碍子21の挿入においては、碍子21の端面(上面)21aが、温度調整用ベース部材3の一方の面3aより下方で、かつ碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4の収容孔18内にある部分4A(接合層4A)の厚さt2が所望の厚みとなるように位置決めする。位置決めは、温度調整用ベース部材3の他方の面3bを基準とした冶具を用いたり、碍子21、温度調整用ベース部材3の収容孔18を段付きとして突き当てたりする等の方法で行う。
【0073】
さらに、収容孔18への碍子21の挿入を真空中で行うことで、空気の巻き込みを防ぎ、気泡による耐電圧の低下や、熱伝達が不均一になることを抑制できる。
【0074】
その後、シリコーン系樹脂組成物を硬化させる。硬化条件は、シリコーン系樹脂の最適硬化条件に従えばよい。
【0075】
一方、シリコーン系樹脂組成物と、フィラーとを、所定の比率で混合し、この混合物に攪拌脱泡処理を施し、シリコーン系樹脂組成物とフィラーとの混合物を調製する。この場合、シリコーン系樹脂組成物の粘度が塗布に適する範囲内、例えば、50Pa・s以上かつ300Pa・s以下となるように、混合物に、トルエン、キシレン等の有機溶剤を加えてもよい。
【0076】
次いで、温度調整用ベース部材3の接合面を、例えば、アセトンを用いて脱脂、洗浄し、この接合面上に、幅1mm、長さ1mm、厚さ0.1mmのセラミックス製のスペーサ41を、常温硬化型シリコーン接着剤を用いて接着する。
【0077】
スペーサ41は、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3とを一定の間隔をおいて接合するためのものである。スペーサ31の個数、配置する位置は適宜でよい。例えば、直径298mmの静電チャック部材2と直径298mmの温度調整用ベース部材3とを接合する場合には、温度調整用ベース部材3上に最外周の同心円上に8個、さらに適度に中心方向に寄った同心円上に8個、さらに中心方向に寄った同心円上に8個配置する。これらのスペーサ41は、直線状に並ばないように配置する。さらに、中心方向の同心円上に4個、最内周の同心円上に4個配置する。
【0078】
次いで、常温に所定時間放置して、常温硬化型シリコーン接着剤を充分に硬化させた後、スペーサ41の上に、接合層4を形成するシリコーン系樹脂組成物を塗布する。シリコーン系樹脂組成物の塗布量は、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3とを一定の間隔を置いて接合するため所定の範囲内にする。
例えば、直径298mmの静電チャック部材2と直径298mmの温度調整用ベース部材3とを接合する場合には、温度調整用ベース部材3の接合面に20g〜22g、静電チャック部材2の接合面に15g〜17g、それぞれ塗布する。
【0079】
このシリコーン系樹脂組成物の塗布方法としては、ヘラ等を用いて手動で塗布する他、バーコート法、スクリーン印刷法等を用いることができる。
【0080】
塗布後、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3とをシリコーン系樹脂組成物を介して重ね合わせ、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3との間隔がスペーサ41の厚さになるまで、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の積層体を押し潰して、余分なシリコーン系樹脂組成物を押し出して、除去する。押し潰す際の温度は、シリコーン系樹脂組成物の流動性が最も高くなる温度が好ましい。
【0081】
また、シリコーン系樹脂組成物中の気泡を除去するために、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3とを重ね合わせた後に真空脱泡処理を施すことも、強固かつ均一な組織を有する接合層4を得る上で有効である。
【0082】
その後、シリコーン系樹脂組成物を硬化させる。硬化条件は、用いるシリコーン系樹脂の最適硬化条件に従えばよく、また、硬化時に加圧してもよい。
【0083】
このようにして静電チャック部材2の支持板12と温度調整用プレート部材3とを接合し、支持板12と温度調整用プレート部材3の間に形成された接合層4の熱伝導率の平均値は0.35W/mK以上であり、熱伝導性に優れている。
【0084】
なお、本実施形態に係る板状試料としては、半導体ウエハに限るものではなく、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ等の平板型ディスプレイ(FPD)用ガラス基板等であってもよい。また、その基板の形状や大きさに合わせて本実施形態の静電チャック装置を設計すればよい。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
[実施例1]
(静電チャック装置の作製)
「静電チャック部材の形成」
載置板11および、中央に給電端子16を有する支持板12を、接合一体化することにより、静電チャック部材2を得た。
具体的には、内部に絶縁材14により周囲を絶縁され、厚さ15μmの静電吸着用電極13が埋設された、
図1に示す載置板11と支持板12を有する静電チャック部材2を作製した。
この静電チャック部材2の載置板11は、炭化ケイ素を8質量%含有する酸化アルミニウム−炭化ケイ素複合焼結体であり、直径は310mm、厚みは3mmの円板状であった。
【0087】
また、支持板12も載置板11と同様、炭化ケイ素を8質量%含有する酸化アルミニウム−炭化ケイ素複合焼結体であり、直径は310mm、厚さは5.0mmの円板状であった。
【0088】
この接合体(静電チャック部材2)に機械加工を施し、直径298mm、厚さ1.0mmの円盤形とした。
その後、この載置板11の静電吸着面を、高さが50μmの多数の突起部を形成することで、凹凸面とし、これらの突起部の頂面を板状試料Wの保持面とした。接合体は、この形状により、凹部(吸着面の突起部以外の箇所)と静電吸着された板状試料Wとの間に形成される溝に冷却ガスを流すことができるように形成された。
【0089】
「温度調整用ベース部材の形成」
直径350mm、高さ30mmの円盤状のアルミニウム製の温度調整用ベース部材3を、機械加工により作製した。この温度調整用ベース部材3の内部には冷媒を循環させる流路34を形成した。冷却ガス導入箇所の碍子の収容孔18を複数形成した。収容孔18の内径を直径5.0mmとした。
収容孔18の温度調整用ベース部材3の一方の面3a側には、C0.05mmの面取りを施した。
【0090】
「シリコーン系樹脂組成物の作製」
シリコーン樹脂(商品名:TSE3221、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)に、表面が酸化ケイ素(SiO
2)により被覆された表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粉末(商品名:TOYALNITE、東洋アルミニウム株式会社製)を、上記のシリコーン樹脂および表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粉末の体積の合計量に対して35vol%となるように混合し、この混合物に攪拌脱泡処理を施し、シリコーン系樹脂組成物を得た。このシリコーン系樹脂組成物の熱伝導率は0.8W/mKであった。
【0091】
「碍子の形成」
酸化アルミニウム焼結体を管状に加工し、碍子21を形成した。この際、碍子21の外径を直径4.9mm、内径を直径2.0mm、全長を29.95mmとした。
【0092】
「碍子の接合」
次いで、前記碍子21の側面に常温硬化型シリコーン接着剤 信越シリコーンKE4895T(信越化学工業株式会社製)を塗布し、碍子21の上面21aにフィラー入りシリコーン系樹脂組成物を塗布した。シリコーン系樹脂組成物としては、上述のようにして作製したものを用いた。その後、温度調整用ベース部材3の冷却ガス導入箇所の碍子の収容孔18に、碍子21を挿入した。その際、碍子21の下端部21bと温度調整用ベース部材3の他方の端面3bが同一高さとなるように位置決め固定した。その結果、碍子21の上端部21aは、収容孔18内にあり、温度調整用ベース部材3の一方の面3aとの段差が0.05mmとなった。
【0093】
「スペーサの形成」
幅1mm、長さ1mm、厚さ0.1mmの角形状のスペーサ42を、アルミナ(Al
2O
3)焼結体にて作製した。
【0094】
「スペーサの配置」
前述のスペーサ42を常温硬化型シリコーン接着剤(商品名:信越シリコーンKE4895T、信越化学工業株式会社製)で温度調整用ベース部材3上の所定の位置に接着し、スペーサ42を固定した。
【0095】
「接合層の形成」
次いで、静電チャック部材2上に、スクリーン印刷法により上記のシリコーン系樹脂組成物を塗布した。
【0096】
「静電チャック部材とベース部材の積層」
その後、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3とを、前記シリコーン系樹脂組成物を介して重ね合わせた。
次いで、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の間隔がスペーサ42の厚さになるまで適度な圧力を加えて落し込み、押し出された余分の接着剤を除去し、硬化した。その結果、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間における接合層厚さt1は、0.1mmとなった。
また、碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4の収容孔18内にある部分の厚さt2は、0.05mmとなった。
【0097】
(均熱性評価)
図5に示すような温度評価用基板5、および赤外線ヒータ付きの真空チャンバー6を用い、静電チャック装置1の均熱性を評価した。
【0098】
温度評価用基板5は、炭化ケイ素(SiC)ウエハ51に熱電対52を取り付けたもので、熱電対52を取り付けた位置の基板温度を測定できる。熱電対52の取り付け位置は、碍子21の中心直上と、碍子21の中心から20mm離れた箇所としている。
【0099】
温度評価用基板5は、赤外線ヒータ付きの真空チャンバー6に取り付けられた静電チャック装置1の静電チャック部材2を構成する載置板11の載置面11aに静電吸着される。真空チャンバー6内において、温度評価用基板5に対向して赤外線ヒータ61が配置され、その赤外線ヒータ61により温度評価用基板5を加熱する構造となっている。また、熱電対52で、SiCウエハ51の温度を測定する。静電チャック装置1の温度調整用ベース部材3は、冷媒62によって冷却される。
【0100】
測定の手順は、真空ポンプ63で、真空チャンバー6内を0.1Pa以下に真空引きし、20℃の冷媒62を温度調整用ベース部材3に流した状態で、赤外線ヒータ61によって所定の入熱量となるように温度評価用基板5を加熱し、熱電対52の位置のSiCウエハ51の温度を測定した。結果を表1に示す。
表1の結果から、温度評価用基板5の碍子21の直上と碍子21の直上から20mm離れた箇所の温度差が0.7℃であり、温度が均一であることが分かった。
【0101】
(温度サイクル試験)
次いで、静電チャック装置1を恒温槽に設置し、−20℃から130℃の間で温度を昇降させる温度サイクル試験を実施し、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の熱膨張差に起因する変位を接合層4に繰り返し与えた。
【0102】
温度サイクル試験前後で、
図6に示すような方法で接合層4の耐電圧試験を実施した。
直流電源71に接続された電極ピン72を、静電チャック装置1の冷却ガス導入孔17に挿入し、温度調整用ベース部材3を接地した状態で直流電源71により、静電チャック装置1に電圧を印加した。温度調整用ベース部材3とグランド間に接続された電流計73によって、電極ピン72と温度調整用ベース部材3間の漏れ電流を測定し、耐電圧を調べた。
結果を表2に示す。温度サイクル試験後も耐電圧が10kV以上あることが分かった。
【0103】
[実施例2]
実施例1と同様にして、静電チャック部材2、温度調整用ベース部材3を作製した。
【0104】
「碍子の形成」
酸化アルミニウム焼結体を管状に加工し、碍子21を形成した。この際、碍子21の外径を直径4.9mm、全長を30.00mmとした。
【0105】
「碍子の接合」
実施例1と同様の方法で、温度調整用ベース部材3と碍子21を接合した。その結果、碍子21の上端部21aは、収容孔18内にあり、温度調整用ベース部材3の一方の面3aとの段差が0.0mmとなった。
【0106】
「スペーサの形成」
幅1mm、長さ1mm、厚さ0.05mmの角形状のスペーサ42を、アルミナ(Al
2O
3)焼結体にて作製した。
【0107】
実施例1と同様にして、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3を積層した。その結果、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間の接合層4の厚さt1は、0.05mmとなった。
また、碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4の収容孔18内にある部分の厚さt2は、0.0mmとなった。
【0108】
(評価)
実施例1と同様にして、静電チャック装置1の均熱性を評価した。結果を表1に示す。表1の結果から、温度評価用基板5の碍子21の直上と碍子21の直上から20mm離れた箇所の温度差が0.5℃であり、温度が均一であることが分かった。
次いで、実施例1と同様にして、静電チャック装置1の温度サイクル試験を実施した。結果を表2に示す。温度サイクル試験後も耐電圧が10kV以上あることが分かった。
【0109】
[実施例3]
スペーサ42の厚さを0.2mm、碍子21の外径を4.98mm、全長を29.80mmとした以外は、実施例1と同様にして、静電チャック装置1を作製した。静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間の接合層厚さt1は、0.2mm、碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4の接合層4の収容孔18内にある部分の厚さt2は、0.20mm、碍子21と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の厚さt3は、0.01mmとなった。
【0110】
(評価)
実施例1と同様にして、静電チャック装置1の均熱性を評価した。結果を表1に示す。表1の結果から、温度評価用基板5の碍子21の直上と碍子21の直上から20mm離れた箇所の温度差が0.9℃であり、温度が均一であることが分かった。
次いで、実施例1と同様にして、静電チャック装置1の温度サイクル試験を実施した。結果を表2に示す。温度サイクル試験後も耐電圧が10kV以上あることが分かった。
【0111】
[比較例1]
碍子21の長さを30.05mmとした以外は、実施例1と同様にして、静電チャック装置1を作製した。静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間の接合層厚さt1は、0.1mm、碍子21の上端部21aは、収容孔18から飛び出し、碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4の接合層4の収容孔18内にある部分の厚さt2は、−0.05mm、碍子21と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の厚さt3は、0.05mmとなった。
【0112】
(評価)
実施例1と同様にして、静電チャック装置1の均熱性を評価した。結果を表1に示す。表1の結果から、温度評価用基板5の碍子21の直上と碍子21の直上から20mm離れた箇所の温度差が0.1℃であり、温度が均一であることが分かった。
次いで、実施例1と同様にして、静電チャック装置1の温度サイクル試験を実施した。結果を表2に示す。温度サイクル試験後の耐電圧測定では9kVで放電し、静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の熱膨張差に起因する変位によって接合層4の耐電圧が低下したことが分かった。
【0113】
[比較例2]
碍子21の全長を29.70mmとした以外は、実施例1と同様にして、静電チャック装置1を作製した。静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間の接合層厚さt1は、0.1mm、碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4の収容孔18内にある部分の厚さt2は、0.10mm、碍子21と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の厚さt3は、0.05mmとなった。
【0114】
(評価)
実施例1と同様にして、静電チャック装置1の均熱性を評価した。結果を表1に示す。表1の結果から、温度評価用基板5の碍子21の直上と碍子21の直上から20mm離れた箇所の温度差が1.6℃であり、碍子21の直上の温度が高く、不均一であることが分かった。
次いで、実施例1と同様にして、静電チャック装置1の温度サイクル試験を実施した。結果を表2に示す。温度サイクル試験後も耐電圧が10kV以上あることが分かった。
【0115】
[比較例3]
スペーサ42の厚さを0.3mm、碍子21の全長を29.80mm、外径を4.86mmとした以外は、実施例1と同様にして、静電チャック装置1を作製した。静電チャック部材2と温度調整用ベース部材3の間の接合層厚さt1は、0.3mm、碍子21と静電チャック部材2の間における接合層4の収容孔18内にある部分の厚さt2は、0.20mm、碍子21と温度調整用ベース部材3の間における接合層4の厚さt3は、0.07mmとなった。
【0116】
(評価)
実施例1と同様にして、静電チャック装置1の均熱性を評価した。結果を表1に示す。表1の結果から、温度評価用基板5の碍子21の直上と碍子21の直上から20mm離れた箇所の温度差が1.4℃であり、碍子21の直上の温度が51.3℃と高く、不均一であることが分かった。
次いで、実施例1と同様にして、静電チャック装置1の温度サイクル試験を実施した。結果を表2に示す。温度サイクル試験後も耐電圧が10kV以上あることが分かった。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】