(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-159548(P2021-159548A)
(43)【公開日】2021年10月11日
(54)【発明の名称】人工股関節手術器具
(51)【国際特許分類】
A61F 2/32 20060101AFI20210913BHJP
A61B 17/72 20060101ALI20210913BHJP
【FI】
A61F2/32
A61B17/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-66522(P2020-66522)
(22)【出願日】2020年4月2日
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】508282465
【氏名又は名称】帝人ナカシマメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 大介
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】藤原 路浩
【テーマコード(参考)】
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C097AA04
4C097BB01
4C097CC12
4C097CC18
4C097SC01
4C160LL26
4C160LL43
(57)【要約】
【課題】ラスプを変更しなくてもネックトライアルを変更するだけで、他サイズのオフセットへ変更でき、かつ、仮整復時にラスプの挿入深さを容易に把握することができる人工股関節手術器具を提供する。
【解決手段】人工股関節手術器具1は、人工股関節のステム用の挿入穴を大腿骨の髄腔に加工するためのラスプ2と、ラスプ2に装着可能な、互いに異なる長さの複数のネックトライアル4A,4Bと、を備える。ラスプ2には、ネックトライアル4A,4Bで共通に使用される複数の挿入目安記号31〜33が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工股関節のステム用の挿入穴を大腿骨の髄腔に加工するためのラスプと、
前記ラスプに装着可能な、互いに異なる長さの複数のネックトライアルと、を備え、
前記ラスプには、前記複数のネックトライアルで共通に使用される複数の挿入目安記号が設けられている、人工股関節手術器具。
【請求項2】
前記複数の挿入目安記号は、互いに異なるものである、請求項1に記載の人工股関節手術器具。
【請求項3】
前記複数のネックトライアルのそれぞれにも少なくとも1つの挿入目安記号が設けられており、
前記複数のネックトライアルのそれぞれが前記ラスプに装着されたときに、当該ネックトライアルの1つの挿入目安記号と前記ラスプの1つの挿入目安記号とが互いに一体となって1つの図形を形成する、請求項1または2に記載の人工股関節手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工股関節手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
人工股関節の手術では、大腿骨の頭部が切除された後に、人工股関節のステムに類似する形状のラスプを用いて大腿骨の髄腔にステム用の挿入穴が加工される。その後、ラスプを利用して仮整復が行われる。
【0003】
仮整復では、ラスプにネックトライアルが装着されるとともにネックトライアルに骨頭トライアルが装着されて、それらの大腿骨側部材の寛骨臼側部材との組みの合わせ具合が確認される(例えば、特許文献1参照)。なお、特許文献1では、ラスプがブローチトライアルと称呼されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−10215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、仮整復では、患者に合った最適なサイズの確認、特にラスプ基準線から骨頭中心までのオフセットの確認を行い、かつラスプの大腿骨への挿入深さも確認される。通常、ネックトライアルとラスプは一組で用いられ、オフセットを変更する場合、ラスプごと設置し直す必要がある。あるいは、特許文献1に記載されているように、1つのラスプに対して種々の長さのネックトライアルが用意されることもある。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された人工股関節手術器具では、ラスプに挿入目安記号が設けられていない。そのラスプの側面には切刃が設けられていない比較的に大きな円形領域が在るため、その円形領域を使用してラスプの挿入深さを把握することは可能であるが、そのような作業は困難である。
【0007】
そこで、本発明は、ラスプを変更しなくてもネックトライアルを変更するだけで他サイズのオフセットへ変更でき、かつ、仮整復時にラスプの挿入深さを容易に把握することができる人工股関節手術器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の人工股関節手術器具は、人工股関節のステム用の挿入穴を大腿骨の髄腔に加工するためのラスプと、前記ラスプに装着可能な、互いに異なる長さの複数のネックトライアルと、を備え、前記ラスプには、前記複数のネックトライアルで共通に使用される複数の挿入目安記号が設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、複数のネックトライアルがラスプに装着可能であるので、ラスプを変更しなくてもネックトライアルを変更するだけで、他サイズのオフセットへ変更することができる。また、ラスプには複数の挿入目安記号が設けられているので、仮整復時にラスプの挿入深さを容易に把握することができる。しかも、それらの挿入目安記号は複数のネックトライアルで共通に使用されるものであるので、ネックトライアルを交換しても挿入目安記号を使い分ける必要がない。
【0010】
前記複数の挿入目安記号は、互いに異なるものであってもよい。この構成によれば、大腿骨に埋め込まれるステムにもラスプと同じ挿入目安記号を設けておけば、ステムをどれだけの深さで挿入穴へ挿入すべきかを容易に判断することができる。
【0011】
前記複数のネックトライアルのそれぞれにも少なくとも1つの挿入目安記号が設けられており、前記複数のネックトライアルのそれぞれが前記ラスプに装着されたときに、当該ネックトライアルの1つの挿入目安記号と前記ラスプの1つの挿入目安記号とが互いに一体となって1つの図形を形成してもよい。この構成によれば、ラスプの1つの挿入目安記号とネックトライアルの1つの挿入目安記号とを合いマークとして利用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、仮整復時に複数のサイズのオフセット確認を容易に行うことができるとともに、ネックトライアルを変更しても仮整復時にラスプの挿入深さを容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る人工股関節手術器具の側面図である。
【
図2】ラスプにネックトライアルが装着された状態を示す図である。
【
図3】ラスプに別のネックトライアルが装着された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、本発明の一実施形態に係る人工股関節手術器具1を示す。この手術器具1は、人工股関節のステム用の挿入穴を大腿骨の髄腔に加工するためのラスプ2と、ラスプ2に装着可能な2つのネックトライアル4A,4Bを含む。なお、ネックトライアルの数は、3つ以上であってもよい。
【0015】
ラスプ2は、人工股関節のステムに類似する形状を有している。ラスプ2は、
図1の紙面と直交する方向を厚さ方向とする長尺板状の本体部21と、本体部21から突出する係合軸22を含む。以下では、説明の便宜上、本体部21の延在方向の一方を上方、他方を下方という。
【0016】
本体部21は、下端から上端に向かって幅が徐々に太くなるように構成されており、上端に、大腿骨の切除面と平行な傾斜面20を有する。そして、本体部21の上部は、傾斜面20に向かって幅方向に僅かに湾曲している。また、本体部21の周面には、下部を除いて多数の切刃が設けられている。
【0017】
本体部21の周面は、下部以外は、本体部21の厚さ方向の一方および他方を向く一対の側面と、本体部21の幅方向の一方および他方を向く一対の端面で構成される。各側面の上部には、切刃が設けられていない長方形領域が在り、その長方形領域内に3つの挿入目安記号31〜33が設けられている。なお、挿入目安記号の数は、2つであっても4つ以上であってもよい。
【0018】
本実施形態では、長方形領域が、傾斜面20から本体部21の中心線に沿って延びており、挿入目安記号31〜33も本体部21の中心線に沿って並んでいる。最も上方に位置する挿入目安記号31は、傾斜面20に接する位置に設けられている。
【0019】
本実施形態では、挿入目安記号31〜33が互いに異なるものである。ただし、挿入目安記号31〜33は全て同じものであってもよい。
【0020】
より詳しくは、最も上方に位置する挿入目安記号31は、半円の模様と、その半円を取り囲む三角形の模様で構成されている。中間の挿入目安記号32は、本体部21を貫通する貫通穴で構成されている。ただし、挿入目安記号32は、円形の模様で構成されてもよい。最も下方に位置する挿入目安記号33は、本体部21を貫通する貫通穴と、その貫通穴を取り囲む六角形の模様で構成されている。ただし、挿入目安記号33は、六角形の模様のみで構成されてもよい。なお、上記の挿入目安記号は一例であり、適宜変更可能である。
【0021】
上述した係合軸22は、本体部21の傾斜面20から垂直に突出している。また、本体部21の傾斜面20には、後述するネックトライアル4A,4Bの突起43が挿入される窪み23が設けられている。
【0022】
ネックトライアル4A,4Bは、互いに異なる長さを有している。ラスプ2の挿入目安記号31〜33は、ネックトライアル4A,4Bで共通に使用されるものである。
【0023】
具体的に、ネックトライアル4A,4Bのそれぞれは、図略の骨頭トライアルの嵌合穴に挿入される圧入部44が形成された本体部41と、本体部41から突出する突起43を含む。本体部41は、ラスプ2の傾斜面20と当接する当接面40を含む。突起43は、当接面40から垂直に突出している。
【0024】
また、当接面40には、ラスプ2の係合軸22が挿入される係合穴42が設けられている。図示は省略するが、係合穴42内には係合機構が設けられており、この係合機構により係合軸22が係合穴42に挿入されてネックトライアル(4Aまたは4B)がラスプ2に装着されたときにその装着状態が保持される。
【0025】
圧入部44の中心線上には骨頭中心45が位置する。
図2および
図3に示すように、ネックトライアル(4Aまたは4B)がラスプ2に装着されたとき、ラスプ基準線25(ラスプ2の下部の中心線の延長線(
図1参照))から骨頭中心45までの距離がオフセットOである。
【0026】
本実施形態では、ネックトライアル4A,4Bのそれぞれにも2つの挿入目安記号51,52が設けられている。なお、挿入目安記号の数は、1つであっても3つ以上であってもよい。
【0027】
挿入目安記号51,52は、ネックトライアル(4Aまたは4B)がラスプ2に装着されたときにラスプ2の挿入目安記号31〜33と一列に並ぶように設けられている。下側の挿入目安記号51は、当接面40に接する位置に設けられている。また、ラスプ2の挿入目安記号31〜32と同様に、挿入目安記号51,52は互いに異なるものである。
【0028】
より詳しくは、下側の挿入目安記号51は、半円の模様と、その半円を取り囲む三角形の模様で構成されている。上側の挿入目安記号52は、一本の直線の模様で構成されている。
【0029】
ネックトライアル(4Aまたは4B)がラスプ2に装着されたときには、
図2および
図3に示すように、ネックトライアルの挿入目安記号51とラスプ2の挿入目安記号31とが互いに一体となって1つの図形を形成する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の手術器具1では、ネックトライアル4A,4Bがラスプ2に装着可能であるので、ラスプ2を変更しなくてもネックトライアルを変更するだけで、他サイズのオフセットOへ変更することができる。また、ラスプ2には複数の挿入目安記号31〜33が設けられているので、仮整復時にラスプ2の挿入深さを容易に把握することができる。しかも、それらの挿入目安記号31〜33は複数のネックトライアル4A,4Bで共通に使用されるものであるので、ネックトライアルを交換しても挿入目安記号を使い分ける必要がない。
【0031】
また、本実施形態ではラスプ2の挿入目安記号31〜33が互いに異なるものであるので、大腿骨に埋め込まれるステムにもラスプ2と同じ挿入目安記号を設けておけば、ステムをどれだけの深さで挿入穴へ挿入すべきかを容易に判断することができる。
【0032】
さらに、本実施形態では、ネックトライアル(4Aまたは4B)がラスプ2に装着されたときにネックトライアルの挿入目安記号51とラスプ2の挿入目安記号31とが1つの図形を形成するので、ラスプ2の挿入目安記号31とネックトライアル(4Aまたは4B)の挿入目安記号51とを合いマークとして利用することができる。
【0033】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0034】
例えば、ネックトライアル4A,4Bのそれぞれには、挿入目安記号が設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 人工股関節手術器具
2 ラスプ
4A,4B ネックトライアル
31〜33,51,52 挿入目安記号