【課題】安定的に高い紫外線遮蔽性を示し、ざらつき感が抑制された表面処理金属酸化物粒子を提供する。前記の表面処理金属酸化物粒子を含む分散液、化粧料を提供する。前記の表面処理金属酸化物粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る表面処理金属酸化物粒子は、アルコキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理された金属酸化物粒子であって、前記金属酸化物粒子は紫外線遮蔽性を有し、前記表面処理された金属酸化物粒子の105℃、3時間における乾燥減量が0.5質量%以下であり、前記表面処理された金属酸化物粒子を、フーリエ変換式赤外分光光度計で測定した900cm
における反射スペクトルにおいて、前記アルコキシ基に由来するピークが検出されず、乾式粒径D98(μm)をBET換算粒子径(nm)で除した値(D98/BET換算径)が0.01以上5以下である。
前記アルコキシ基に由来するピークが検出されないことを判定する工程において、前記アルコキシ基に由来するピークが確認された場合、前記ピークが消失するまで、表面処理金属酸化物粒子を加熱する工程を含む、請求項5に記載の表面処理金属酸化物粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の表面処理金属酸化物粒子、分散液、化粧料および表面処理金属酸化物粒子の製造方法の好ましい実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。例えば、特に制限の無い限り、材料、量、種類、数、サイズ、比率、温度等の条件等を、必要に応じて変更、追加および省略してもよい。以下に述べる実施形態間において、互いの好ましい例を交換したり、共有したりしてもよい。
【0015】
以下の説明においては、表面処理金属酸化物粒子を「表面処理粒子」と略称することがある。
【0016】
[表面処理金属酸化物粒子]
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子は、アルコキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理された紫外線遮蔽性を有する金属酸化物粒子である。前記金属酸化物粒子は紫外線遮蔽性を有し、かつ、表面処理された金属酸化物粒子の105℃、3時間における乾燥減量が0.5質量%以下である。さらに、この表面処理された金属酸化物粒子を、フーリエ変換式赤外分光光度計(FT−IR)で測定した900cm
−1〜1300cm
−1における反射スペクトルにおいて、上記アルコキシ基に由来するピークが検出されない。さらに、この表面処理された金属酸化物粒子の乾式粒径D98(μm)をBET換算粒子径(nm)で除した値(D98/BET換算径)が0.01以上5以下である。
【0017】
(表面処理金属酸化物粒子の反射スペクトル)
上記アルコキシ基に由来するピークとは、アルコキシ基を有するシランカップリング剤をFT−IRで、ATR法で測定した場合に、一般的に、900cm
−1〜1300cm
−1の範囲で検出されるピークを意味する。
ピークの有無の検出については、詳細には、アルコキシ基を有するシランカップリング剤の構造を考慮し、「有機化合物のスペクトルによる同定法、第6版」を用いて、アルコキシ基のピークを同定すればよい。
【0018】
上記アルコキシ基に由来するピークであって、検出されないことが好ましいピークは、1170cm
−1、1100cm
−1、1080cm
−1、および950cm
−1である。これらのピークの少なくとも1つが検出されないことが好ましく、全てのピークが検出されないことがより好ましい。
これらのピークは、アルコキシ基を有するシランカップリング剤であるオクチルトリエトキシシランをFT−IRで測定したときに、900cm
−1〜1300cm
−1の範囲で検出されるピークである。
【0019】
本明細書において「ピークが検出されない」とは、ベースラインの反射率を0%としたときに、ピークトップの反射率が絶対値で1%以下(−1%以上0%以下)であることを意味する。
また、本明細書において、950cm
−1においてピークが検出されないとは、950cm
−1を範囲に含むピークが検出されないことを意味する。すなわち、950cm
−1をピークトップとするピークが検出されない、という意味ではない。1170cm
−1、1100cm
−1、1080cm
−1についても同様である。
なお、「フーリエ変換式赤外分光光度計」を「FT−IR」と略記する場合がある。
【0020】
フーリエ変換式赤外分光光度計で測定したスペクトルにおいて、アルコキシ基由来のピークが検出されないことの技術的意義について以下に説明する。
アルコキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理された金属酸化物粒子をFT−IRを測定した場合に、このアルコキシ基に由来するピークが観察されないということは、シランカップリング剤のアルコキシ基が残留していないことを意味する。
【0021】
本実施形態では、アルコキシ基を含むシランカップリング剤を加水分解反応させることにより、金属酸化物粒子を表面処理している。そのため、アルコキシ基が残留していないということは、シランカップリング剤中のアルコキシ基のほぼ全てが加水分解反応して、金属酸化物粒子表面にあるOH基と反応していると推測される。その結果、表面処理金属酸化物粒子に残存するOH基は少なくなっている、または残存していないと推測される。また、表面処理金属酸化物粒子を保管した場合に、前記粒子中に残留したアルコキシ基が大気中の水分により加水分解されて、その結果、表面処理金属酸化物粒子中のOH基が増えてしまうことを防止することができると推測される。
【0022】
(表面処理金属酸化物粒子の乾燥減量)
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子は、105℃、3時間における乾燥減量が0.5質量%以下であり、0.4質量%以下であることが好ましい。乾燥減量の下限値は任意に選択できるが、例えば、0.00質量%であってもよく、0.01質量%であってもよく、0.03質量%であってもよく、0.05質量%であってもよい。
【0023】
105℃、3時間における乾燥減量が0.5質量%以下であれば、表面処理金属酸化物粒子は、水系の揮発成分と油系の成分を含む組成物への分散安定性が保たれる。また、表面処理金属酸化物粒子を含む組成物が対象物(化粧料の場合、肌)に塗布された場合に、高い紫外線遮蔽性を示すことができる。
【0024】
表面処理金属酸化物粒子の105℃、3時間における乾燥減量は、以下の方法により得ることができる。
まず、表面処理金属酸化物粒子2gを用意する。この表面処理金属酸化物粒子は、乾燥条件下で保管されている粒子であることが好ましい。この粒子を105℃に設定した乾燥機で3時間加熱し、加熱後の質量を測定し、その質量減少率を乾燥減量(質量%)とすることができる。
すなわち、乾燥減量は、下記の式(1)より得ることができる。
表面処理金属酸化物粒子の乾燥減量(質量%)=(加熱前の表面処理金属酸化物粒子の質量−加熱後の表面処理金属酸化物粒子の質量)/加熱前の表面処理金属酸化物粒子の質量×100 (1)
【0025】
(表面処理金属酸化物粒子の紫外線遮蔽性)
本発明者等は、FT−IRで測定した900cm
−1〜1300cm
−1における反射スペクトルにおいて、アルコキシ基に由来するピークが検出されず、かつ、105℃、3時間における乾燥減量が0.5質量%以下の表面処理金属酸化物粒子であれば、化粧料に配合されたときに、表面処理金属酸化物粒子の紫外線遮蔽性が非常に高いことを見出した。
【0026】
その理由は次のように推測される。
化粧料は、一般に水中油型(oil in water:W/O型)または油中水型(water in oil:O/W型)の剤型で用いられる。アルコキシ基由来のピークが検出され、かつ、上記乾燥減量が0.5質量%を超える表面処理金属酸化物粒子が、油相に配合された化粧料においては、表面処理金属酸化物粒子中のOH基数が多い。このため、肌に塗布されて乾燥される過程で、油相中で表面処理金属酸化物粒子同士が凝集し易く、肌に所望の紫外線遮蔽性を付与することが難しくなると推測される。
【0027】
しかし、上記アルコキシ基由来のピークが検出されず、かつ、乾燥減量が0.5質量%以下の本実施形態の表面処理金属酸化物粒子であれば、表面処理金属酸化物粒子中のOH基が少なく、かつ、積極的に増えることはない。このため、安定的に高い紫外線遮蔽性を示すことができると推測される。
なお、本発明において、紫外線遮蔽性を有するとは、紫外線(10nm〜400nm)領域中の少なくとも何れかの範囲を遮蔽する効果を有することを意味する。紫外線遮蔽性の有無を評価する方法としては、例えば、金属酸化物粒子を10質量%含む塗膜の250nm〜450nmの波長領域における透過スペクトルを測定することが挙げられる。紫外線遮蔽性を有する場合、250nm〜400nmの波長領域における透過率が、450nmにおける透過率よりも低くなる領域がある。
なお、上記実施形態の表面処理金属酸化物粒子は、一次粒子であることが好ましい。ただし、これのみに限定されない。例えば、一次粒子同士が凝集して二次粒子を形成していてもよい。
【0028】
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子では、表面処理金属酸化物粒子の乾式粒径D98(μm)を、表面処理金属酸化物粒子のBET換算粒子径(nm)で除した値(D98(μm)/BET換算粒子径(nm))は、0.01以上5以下である。以下、「乾式粒径D98(μm)」を「D98」と、「BET換算粒子径(nm)」を「換算径」と略記する場合がある。
【0029】
本明細書において「D98」とは、レーザ回折式粒度分布測定装置(型式:Mastersizer 3000、Malvern社製)を用いて、乾式で体積粒度分布を測定したときの、粉体粒径の累積体積百分率が98%の時の値を意味する。
【0030】
本明細書において「BET換算粒子径(nm)」とは、表面処理金属酸化物粒子のBET比表面積(m
2/g)を、下記一般式(2)を用いて換算した粒子径を意味する。
BET換算粒子径(nm)=6000/(BET比表面積(m
2/g)×ρ(g/cm
3) (2)
式(2)中、ρは金属酸化物粒子の密度である。
例えば、酸化亜鉛のρは5.61g/cm
3であり、酸化チタンのρは4.23g/cm
3である。
また、BET比表面積とは、全自動比表面積測定装置(商品名:Macsorb HM Model−1201、マウンテック社製)を用い、BET法により測定された値を意味する。
【0031】
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子では、D98/換算径が0.01以上5以下であり、0.01以上4.5以下であることが好ましく、0.01以上3.0以下であることがより好ましい。D98/換算径が上記範囲であれば、表面処理金属酸化物粒子のざらつき感を抑制することができる。
【0032】
(表面処理金属酸化物粒子のBET比表面積)
前記表面処理金属酸化物粒子のBET比表面積は任意に選択できるが、1.5m
2/g以上であることが好ましく、2.5m
2/g以上であることがより好ましく、4m
2/g以上であることがさらに好ましい。また、表面処理金属酸化物粒子のBET比表面積は、65m
2/g以下であることが好ましく、60m
2/g以下であることがより好ましい。必要に応じて、表面処理金属酸化物粒子のBET比表面積は、50m
2/g以下であってもよく、30m
2/g以下であってもよく、10m
2/g以下であってもよい。表面処理金属酸化物粒子のBET比表面積の上記上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
表面処理金属酸化物粒子のBET比表面積が1.5m
2/g以上65m
2/g以下であれば、化粧料に配合した場合に透明性と紫外線遮蔽性に優れる。
化粧料に配合した場合の透明性を高くしたい場合には、上記表面処理金属酸化物粒子のBET比表面積は8m
2/g以上であることが好ましく、15m
2/g以上であることがより好ましく、20m
2/g以上であることがさらに好ましい。一方、化粧料に配合した場合のUVAの遮蔽性を大きくしたい場合には、上記表面処理金属酸化物粒子のBET比表面積は8m
2/g未満であることが好ましく、7.5m
2/g以下であることがより好ましく、7.0m
2/g以下であることがさらに好ましい。
【0033】
(表面処理金属酸化物粒子の平均一次粒子径)
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の平均一次粒子径は任意に選択できるが、15nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。また、上記表面処理金属酸化物粒子の平均一次粒子径は715nm以下であることが好ましく、650nm以下であることがより好ましい。
表面処理金属酸化物粒子の平均一次粒子径が15nm以上715nm以下であれば、化粧料に配合した場合に透明性と紫外線遮蔽性に優れる。
化粧料に配合した場合の透明性を高くしたい場合には、上記表面処理金属酸化物粒子の平均一次粒子径は135nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。一方、化粧料に配合した場合のUVAの遮蔽性を大きくしたい場合には、上記表面処理金属酸化物粒子の一次粒子径は135nmを超えることが好ましく、140nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。
【0034】
なお、上記表面処理金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、上記表面処理金属酸化物粒子のBET換算粒子径(nm)とだいたい一致するが、以下の方法で求めてもよい。すなわち、上記表面処理金属酸化物粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて観察した場合に、表面処理金属酸化物粒子を所定数、例えば、200個、あるいは100個を選び出す。そして、これら表面処理金属酸化物粒子各々の最長の直線部分(最大長径)を測定し、これらの測定値を算術平均する。
なお、表面処理金属酸化物粒子同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している表面処理金属酸化物粒子(一次粒子)を所定数測定し、平均一次粒子径とする。
【0035】
(金属酸化物粒子)
本実施形態における、原料として使用される金属酸化物粒子は、紫外線遮蔽性を有していれば特に限定されない。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、酸化セリウム粒子等を用いることができる。化粧料に一般的に使用されていることから、金属酸化物粒子としては、酸化亜鉛粒子と酸化チタン粒子がより好ましい。UV−A領域の紫外線遮蔽性に優れる点において、酸化亜鉛粒子がさらに好ましい。
【0036】
本実施形態における金属酸化物粒子のBET比表面積は任意に選択できるが、1.5m
2/g以上であることが好ましく、2.5m
2/g以上であることがより好ましく、4m
2/g以上であることがさらに好ましい。また、金属酸化物粒子のBET比表面積は、65m
2/g以下であることが好ましく、60m
2/g以下であることがより好ましい。必要に応じて、金属酸化物粒子のBET比表面積は、50m
2/g以下であってもよく、30m
2/g以下であってもよく、10m
2/g以下であってもよい。
金属酸化物粒子のBET比表面積の上記上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
上記金属酸化物粒子のBET比表面積が1.5m
2/g以上65m
2/g以下であれば、化粧料に配合した場合に透明性と紫外線遮蔽性に優れる。
化粧料に配合した場合の透明性を高くしたい場合には、金属酸化物粒子のBET比表面積は8m
2/g以上であることが好ましく、15m
2/g以上であることがより好ましく、20m
2/g以上であることがさらに好ましい。一方、化粧料に配合した場合のUVAの遮蔽性を大きくしたい場合には、上記金属酸化物粒子のBET比表面積は8m
2/g未満であることが好ましく、7.5m
2/g以下であることがより好ましく、7.0m
2/g以下であることがさらに好ましい。
【0037】
本実施形態における金属酸化物粒子のBET比表面積とは、全自動比表面積測定装置(商品名:Macsorb HM Model−1201、マウンテック社製)を用い、BET法により測定された値を意味する。
【0038】
本実施形態における金属酸化物粒子の平均一次粒子径は任意に選択できるが、15nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。また、上記金属酸化物粒子の平均一次粒子径は715nm以下であることが好ましく、650nm以下であることがより好ましい。
金属酸化物粒子の平均一次粒子径が15nm以上715nm以下であれば、化粧料に配合した場合に透明性と紫外線遮蔽性に優れる。
化粧料に配合した場合の透明性を高くしたい場合には、上記金属酸化物粒子の平均一次粒子径は135nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。一方、化粧料に配合した場合のUVAの遮蔽性を大きくしたい場合には、上記金属酸化物粒子の一次粒子径は135nmを超えることが好ましく、140nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。
【0039】
上記金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、上記表面処理金属酸化物粒子のBET換算粒子径と同様に、上記金属酸化物粒子のBET比表面積を用いて上記一般式(2)式によって算出することができる。
また、上記金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、以下の方法で求めてもよい。すなわち、上記金属酸化物粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて観察した場合に、金属酸化物粒子を所定数、例えば、200個、あるいは100個を選び出す。そして、これら金属酸化物粒子各々の最長の直線部分(最大長径)を測定し、これらの測定値を算術平均する。
なお、金属酸化物粒子同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している金属酸化物粒子(一次粒子)を所定数測定し、平均一次粒子径とする。
【0040】
本実施形態では、金属酸化物粒子を表面処理することにより、表面処理金属酸化物粒子のBET比表面積が小さくなる傾向はあるが、実質的には同程度の大きさである。同様に、金属酸化物粒子を表面処理することにより、平均一次粒子径は大きくなる傾向はあるが、実質的には同程度の大きさである。
【0041】
本実施形態における金属酸化物粒子は、化粧料中での分散安定性を向上させる観点において、高純度の金属酸化物粒子を用いることが好ましい。
【0042】
(シランカップリング剤)
本実施形態において使用されるアルコキシ基を有するシランカップリング剤は、化粧料に使用可能なシランカップリング剤であれば特に限定されない。
例えば、シランカップリング剤としては、下記一般式(3)で表されるシランカップリング剤のうち、化粧料に使用可能なものが挙げられる。
R
1Si(OR
2)
3 (3)
(但し、R
1は、炭素数1〜18のアルキル基、フルオロアルキル基またはフェニル基、R
2は、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
【0043】
具体的には、表面処理に用いるシランカップリング剤としては、アルキルアルコキシシラン、フルオロアルコキシシラン、フルオロアルキルアルコキシシラン等が挙げられる。
アルキルアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリプロポキシシラン、n−プロピルトリブトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン(トリエトキシカプリリルシラン)、n−オクタデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
フルオロアルコキシシランとしては、例えば、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0044】
また、表面処理に用いるシランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシジフェニルシラン−トリエトキシカプリリルシランクロスポリマー、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン等、シロキサン骨格を主鎖とし、分子構造内にアルコキシ基とアクリル基とを有するポリマー型シランカップリング剤等が挙げられる。
【0045】
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
上記シランカップリング剤の中でも、分子内にオクチル基を有するシランカップリング剤が好ましい。具体的には、官能基の極性が中程度であり、ナチュラルオイルやエステル油からシリコーンオイルまでの幅広い極性の油相に対応可能な、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン−トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーを特に好適に用いることができる。
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
上記シランカップリング剤による表面処理量は、所望の特性に応じて適宜調整すればよい。金属酸化物粒子100質量部に対して、シランカップリング剤の配合量は、2質量部以上15質量部以下であることが好ましく、3質量部以上15質量部以下であることがより好ましく、4質量部以上12質量部以下であることがさらに好ましい。
上記範囲で金属酸化物粒子をシランカップリング剤で表面処理することにより、分散性に優れ、紫外線遮蔽性に優れる表面処理粒子が得られやすいため好ましい。上記シランカップリング剤の配合量は、製造時に加えられて使用される量であってもよい。
【0048】
なお、本実施形態の表面処理粒子の特性を阻害しない範囲であれば、シランカップリング剤に加えて、化粧料に用いられる表面処理剤であって、シランカップリング剤以外のものを用いて、金属酸化物粒子を表面処理してもよい。
【0049】
シランカップリング剤以外の表面処理剤としては、例えば、シリカ、アルミナ等の無機材料や、シリコーン化合物、脂肪酸、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステルおよび有機チタネート化合物等の有機材料を用いることができる。
【0050】
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子によれば、安定的に高い紫外線遮蔽性を示し、ざらつき感が抑制された表面処理金属酸化物粒子が得られる。
【0051】
[表面処理金属酸化物粒子の製造方法]
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法は、特に限定されず、任意に選択できる。表面処理に用いる成分に応じて、乾式処理や湿式処理等の公知の方法で、前記粒子の製造を適宜実施することができる。
【0052】
例えば、乾式処理の場合には、以下のような作業よって、表面処理を行う方法が挙げられる。
まず、原料としての金属酸化物粒子をヘンシェルミキサーやスーパーミキサー等のミキサー中で撹拌しながら、シランカップリング剤を液滴下あるいはスプレー噴霧にて加え、その後、一定時間高速強撹拌する。その後、撹拌を続けながら、70℃から200℃の温度にて、加熱処理する。次いで、所望のD98が得られるように、解砕処理する。なお、加熱温度や攪拌時間は、用いる材料やシランカップリング剤によって、必要に応じて選択できる。
【0053】
例えば、湿式処理の場合は、以下の方法によって表面処理を行う方法が挙げられる。まず、金属酸化物粒子とシランカップリング剤と溶媒とを撹拌しながら、25℃から100℃で数時間混合する。この後、固液分離し、洗浄し、得られたこの洗浄物を70℃から200℃で加熱処理する。次いで、所望のD98が得られるように、解砕処理する。
【0054】
上記乾式処理や湿式処理等の方法においては、シランカップリング剤の加水分解用の水分は、金属酸化物粒子の付着水を用いてもよい。また、シランカップリング剤の加水分解用の水分は、必要に応じてシランカップリング剤と共に、または別々に添加してもよい。
【0055】
上記乾式処理や湿式処理等の方法においては、シランカップリング剤は、シランカップリング剤と混合可能な溶媒で希釈して用いてもよい。このような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールや、n−ヘキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。加水分解用の水分を添加して表面処理する場合には、これらの溶媒の中でも、水との相溶性が高いアルコール等の極性溶媒が好適に用いられる。
【0056】
上記解砕処理としては、所望のD98が得られるように各粒子を解砕することができる方法であればよく、特に限定されないが、解砕機を用いて各粒子を解砕する方法が挙げられる。解砕機としては、例えば、アトマイザー、ハンマーミル、ジェットミル、インペラーミル、ピンミル等が挙げられる。
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法では、D98/換算径を0.01以上5以下となるように解砕処理することにより、表面処理金属酸化物粒子のざらつき感を抑制することができ、表面処理金属酸化物粒子を化粧料に使用した場合の使用感を向上させることができる。
【0057】
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法は、アルコキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理された金属酸化物粒子をフーリエ変換式赤外分光光度計で測定した900cm
−1〜1300cm
−1における反射スペクトルにおいて、上記アルコキシ基に由来するピークが検出されないことを判定する工程(以下、「判定工程」、「第1の判定工程」ということもある。)を含む。本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法は、任意に選ばれる方法で製造された、アルコキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理された金属酸化物粒子を用意する工程や、この粒子をフーリエ変換式赤外分光光度計で測定する工程を含むことも好ましい。
【0058】
ところで、物の製造方法においては、同一条件で製造した物であっても、全く同一の物を製造することはなかなか困難である。原料ロットの変更、製造日の温湿度、製造量等、様々な条件により、表面処理金属酸化物粒子の特性は変化する可能性がある。しかし、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法は、上記判定工程を含む。そのため、表面処理粒子の未反応のアルコキシ基の量を定量的に確認することができ、紫外線遮蔽性に優れる表面処理金属酸化物粒子が得られているか否かを、製造後に簡易に確認することができる。よって、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法は、上記判定工程を含むことにより、品質の安定した製品を提供することができる。
【0059】
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法は、上記判定工程において、前記アルコキシ基由来のピークが確認された場合、さらに次の工程を含むことが好ましい。具体的には、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法は、上記ピークが消失するまで、上記アルコキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理された金属酸化物粒子を、すなわち、上記表面処理金属酸化物粒子を、加熱する工程を含むことが好ましい。この加熱工程の加熱条件は任意に選択できる。加熱条件は、例えば、上記粒子の製造時と同じ温度、すなわち、70℃から200℃の温度であってもよい。この加熱工程を含むことにより、表面処理粒子に残留する未反応のアルコキシ基の量が好ましい範囲にあるように、定量的に管理することができる。このため、紫外線遮蔽性に優れる表面処理金属酸化物粒子を安定的に製造することができる。
【0060】
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法によれば、残留するアルコキシ基の存在を確認する工程を含む。このため、未反応のアルコキシ基の量を定量的に確認することができ、紫外線遮蔽性に優れる表面処理金属酸化物粒子が得られているか否かを確認することができる。また、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法は、加熱工程を含んでもよい。これにより、表面処理粒子に残留するアルコキシ基の量を定量的に管理することができる。このため、紫外線遮蔽性に優れる表面処理金属酸化物粒子を安定的に製造することができる。
【0061】
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法は、表面処理された金属酸化物粒子の105℃、3時間における乾燥減量が0.5質量%以下であることを判定する第2の判定工程を含んでもよい。
【0062】
第2の判定工程は、上述の表面処理金属酸化物粒子の105℃、3時間における乾燥減量の測定方法と同様に行うことができる。
第2の判定工程は、フーリエ変換式赤外分光光度計を用いた判定工程より先に行ってもよく、後に行ってもよい。
第2の判定工程において乾燥減量が0.5質量%を超えていた場合には、乾燥減量が0.5質量%以下となるまで加熱する工程を含んでもよい。この加熱工程の加熱条件は、任意に選択できる。加熱条件は、例えば、前記粒子の製造時と同じ温度、すなわち、70℃から200℃の温度であってもよい。
【0063】
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法は、第1の判定工程でアルコキシ基に由来するピークが検出されず、かつ、第2の判定工程で乾燥減量が0.5質量%以下となるまで、上記表面処理金属酸化物粒子を加熱する工程を含むことが好ましい。
また、第1の判定工程および第2の判定工程の少なくとも一方で所望の特性を満たしていない場合には、それらの特性を満たすまで、70℃から200℃の温度で加熱することが好ましい。
【0064】
[分散液]
本実施形態の分散液は、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子と、分散媒と、を含有する。
なお、本実施形態の分散液は、粘度が高いペースト状の分散体も含む。
【0065】
分散媒は、化粧料に処方することが可能で、表面処理粒子が分散できるものであれば、特に限定されない。
分散媒としては、例えば、水、アルコール類、エステル類、エーテル類、ナチュラルオイル、エステル油、シリコーンオイル等が好適に用いられる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、オクタノール、グリセリン等が挙げられる。
エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0066】
また、他の分散媒としては、ケトン類、芳香族炭化水素、環状炭化水素、アミド類、鎖状ポリシロキサン類、環状ポリシロキサン類、変性ポリシロキサン類、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、高級脂肪酸、高級アルコール等が用いられる。
【0067】
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。
環状炭化水素としては、例えば、シクロヘキサン等が挙げられる。
アミド類としては、例えば、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
鎖状ポリシロキサン類としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0068】
環状ポリシロキサン類としては、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等が挙げられる。
変性ポリシロキサン類としては、例えば、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0069】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン等が挙げられる。
エステル油としては、例えば、イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート等が挙げられる。
シリコーン油としては、例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール等が挙げられる。
【0070】
上記分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
本実施形態の分散液は、その特性を損なわない範囲において、一般的に用いられる添加剤を含んでもよい。
【0072】
添加剤としては、例えば、防腐剤、分散剤、分散助剤、安定剤、水溶性バインダー、増粘剤、油溶性薬剤、油溶性色素類、油溶性蛋白質類、UV吸収剤等が好適に用いられる。
【0073】
本実施形態の分散液における粒度分布の累積体積百分率が50%のときの表面処理金属酸化物粒子の粒径(d50)は、任意に選択できるが、300nm以下であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。
【0074】
d50の下限値は、特に限定されず、例えば、50nm以上であってもよく、100nm以上であってもよく、150nm以上であってもよい。d50の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0075】
また、本実施形態の分散液における粒度分布の累積体積百分率が90%のときの表面処理金属酸化物粒子の粒径(d90)は、任意に選択できるが、400nm以下であることが好ましく、350nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることがさらに好ましい。
【0076】
d90の下限値は、特に限定されず、例えば、100nm以上であってもよく、150nm以上であってもよく、200nm以上であってもよい。d90の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0077】
分散液のd50が300nm以下の場合には、この分散液を用いて作製した化粧料を皮膚に塗布した場合に、表面処理粒子が均一に分布し易く、紫外線遮蔽効果が向上するため好ましい。また、分散液のd90が400nm以下の場合には、分散液の透明性が高く、この分散液を用いて作製された化粧料の透明性も高くなるため好ましい。
【0078】
すなわち、本実施形態の分散液におけるd50とd90が上記範囲であることにより、透明性に優れ、紫外線遮蔽性に優れる分散液を得ることができる。また、この分散液を用いて作製した化粧料も、透明性と紫外線遮蔽性に優れる。
【0079】
分散液における粒度分布の累積体積百分率は、動的光散乱式粒径分布測定装置を用いて測定することができる。
【0080】
本実施形態の分散液における表面処理金属酸化物粒子の含有量は、所望の特性に合わせて適宜調整すればよい。
【0081】
本実施形態の分散液を化粧料に用いる場合には、分散液における表面処理金属酸化物粒子の含有量は、任意に選択できるが、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、分散液における表面処理金属酸化物粒子の含有量は、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。分散液における表面処理金属酸化物粒子の含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0082】
分散液における表面処理金属酸化物粒子の含有量が上記範囲であることにより、表面処理金属酸化物粒子が高濃度で含有される。このため、処方の自由度を向上することができるとともに、分散液の粘度を取り扱いが容易な程度とすることができる。
【0083】
本実施形態の分散液の粘度は、任意に選択できるが、5Pa・s以上であることが好ましく、8Pa・s以上であることがより好ましく、10Pa・s以上であることがさらに好ましく、15Pa・s以上であることが最も好ましい。また、分散液の粘度は、300Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましく、80Pa・s以下であることがさらに好ましく、60Pa・s以下であることが最も好ましい。分散液の粘度の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0084】
分散液の粘度が上記の範囲であることにより、固形分(表面処理金属酸化物粒子)を高濃度に含んでいても、取り扱いが容易な分散液を得ることができる。
【0085】
本実施形態の分散液は、表面処理粒子を10質量%含有させた分散液を、所定の基板の上に、乾燥後の厚さが12μmとなるように塗布して15分間自然乾燥させて塗膜を形成した場合、当該塗膜について測定される物性値が、次の範囲であることが好ましい。
すなわち、上記塗膜の450nmにおける透過率が、40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。透過率の上限値は特に限定されず、100%以下であってもよく、90%以下であってもよく、80%以下であってもよい。塗膜の450nmにおける透過率の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0086】
上記塗膜の450nmにおける透過率が大きいほど透明性に優れる。このため、450nmにおける透過率は高いことが好ましい。
【0087】
また、上記塗膜の290nm〜320nmにおける平均透過率は、10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。下限値は特に限定されず、0%以上であってもよく、0.5%以上であってもよく、1%以上であってもよい。塗膜の290nm〜320nmにおける平均透過率の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0088】
上記塗膜の290nm〜320nmにおける平均透過率が小さいほど紫外線遮蔽性に優れる。このため、290nm〜320nmにおける平均透過率は小さいことが好ましい。
【0089】
また、上記塗膜のSPF値は、30以上であることが好ましく、35以上であることがより好ましく、40以上であることがさらに好ましい。上記塗膜のSPF値の上限値は特に限定されず、150以下であってもよく、100以下であってもよく、80以下であってもよい。上記塗膜のSPF値の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0090】
上記塗膜のSPF値が大きいほど、紫外線B波を防ぐ効果が大きい。このため、SPF値は大きいことが好ましい。
【0091】
上記塗膜の臨界波長(Critical Wavelength)は、370nm以上であることが好ましい。塗膜の臨界波長が370nm以上であることにより、塗膜は長波長紫外線(UVA)および短波長紫外線(UVB)の広範囲の紫外線を遮蔽することができる。したがって、本実施形態の分散液を含有する化粧料は、臨界波長が370nm以上となり、化粧料によって皮膚上に形成された膜は長波長紫外線(UVA)および短波長紫外線(UVB)の広範囲の紫外線を遮蔽することができる。
【0092】
なお、本明細書において上記「臨界波長」とは、分散液を塗布した前記塗膜を測定することで求められる値である。具体的には、上記塗膜について、290nm以上かつ400nm以下の紫外線領域の吸収スペクトルを測定し、得られた吸収スペクトルにおいて290nmから長波長側に積分する。このとき、積分面積が290nm以上かつ400nm以下の全領域での積分面積の、90%となる波長を、求める「臨界波長」とする。
【0093】
本実施形態の分散液の製造方法は、特に限定されない。例えば、本実施形態の表面処理粒子と、分散媒とを、公知の分散装置で、機械的に分散する方法が挙げられる。
【0094】
分散装置は、必要に応じて選択でき、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、サンドミル、ボールミル、ロールミル等が挙げられる。
【0095】
本実施形態の分散液は、化粧料の他、紫外線遮蔽機能やガス透過抑制機能等を有する塗料等に用いることができる。
【0096】
本実施形態の分散液によれば、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子を含むため、安定的に高い紫外線遮蔽性を示すことができる。
【0097】
[組成物]
本実施形態の組成物は、本実施形態の表面処理粒子と、高分子と、を含有する。
【0098】
本実施形態の組成物における表面処理粒子の含有量は、所望の特性に合わせて適宜調整すればよい。上記含有量は、例えば、10質量%以上40質量%以下であることが好ましく、20質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
【0099】
組成物における表面処理粒子の含有量が上記範囲であることにより、固形分(表面処理金属酸化物粒子)を高濃度に含むため、表面処理粒子の特性が充分に得られ、かつ、表面処理粒子を均一に分散した組成物を得ることができる。
【0100】
本実施形態の組成物における高分子としては、特に限定されず、例えば、水溶性高分子、半合成高分子、合成高分子、樹脂等を用いることができる。
水溶性高分子としては、例えば、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルブミン、デンプン等が挙げられる。
半合成高分子としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等が挙げられる。
合成高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボマー(カルボキシビニルポリマー)、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0101】
樹脂としては、工業用途で一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。化粧料用途で用いる場合には、シリコーン樹脂を用いることが好ましい。
【0102】
本実施形態の組成物における高分子の含有量は、特に限定されず、目的とする組成物の特性に応じて適宜調整される。
【0103】
本実施形態の組成物は、分散媒を含んでもよい。
分散媒としては、工業用途で一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
本実施形態の組成物における分散媒の含有量は、特に限定されず、目的とする組成物の特性に応じて適宜調整される。
【0105】
本実施形態の組成物は、その特性を損なわない範囲において、一般的に用いられる添加剤を含んでもよい。
添加剤としては、例えば、重合開始剤、分散剤、防腐剤、増粘剤、高級脂肪酸等が挙げられる。
【0106】
本実施形態の組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態の表面処理粒子と、高分子とを、公知の混合装置で、機械的に混合する方法が挙げられる。
【0107】
また、上述した分散液と、高分子とを、公知の混合装置で、機械的に混合する方法が挙げられる。
【0108】
混合装置としては、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。
【0109】
本実施形態の組成物を、ロールコート法、フローコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、はけ塗り法、および浸漬法等の通常の塗布方法により、任意に選ばれる基材、例えば、ポリエステルフィルム等のプラスチック基材に塗布することにより、塗膜を形成することができる。これらの塗膜は、任意に選ばれる用途、例えば、紫外線遮蔽膜やガスバリア膜として活用することができる。
【0110】
本実施形態の組成物によれば、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子を含むため、安定的に高い紫外線遮蔽性を示すことができる。
【0111】
[化粧料]
本実施形態の一実施形態の化粧料は、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子、本実施形態の分散液および本実施形態の組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する。
【0112】
本実施形態の別の一実施形態の化粧料は、化粧品基剤原料と、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子、本実施形態の分散液および本実施形態の組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を含有する。
【0113】
化粧品基剤原料は、化粧品の本体を形成する諸原料のことである。化粧品基剤原料としては、例えば、油性原料、水性原料、界面活性剤、粉体原料等が挙げられる。
油性原料としては、任意に選択でき、例えば、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油類等が挙げられる。
【0114】
水性原料としては、任意に選択でき、例えば、精製水、アルコール、増粘剤等が挙げられる。
【0115】
粉末原料としては、任意に選択でき、例えば、有色顔料、白色顔料、パール剤、体質顔料等が挙げられる。
【0116】
本実施形態の化粧料は、例えば、本実施形態の分散液を、乳液、クリーム、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドー等の化粧品基剤原料に、従来通りに配合することにより得られる。
【0117】
また、本実施形態の化粧料は、例えば、本実施形態の表面処理粒子を油相または水相に配合して、O/W型またはW/O型のエマルションとしてから、化粧品基剤原料と配合することにより得られる。
【0118】
本実施形態の化粧料における表面処理金属酸化物粒子の含有量は所望の特性に応じて適宜調整すればよい。例えば、前記表面処理粒子の含有量の下限は、0.01質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよい。また、表面処理粒子の含有量の上限は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。化粧料における表面処理粒子の含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0119】
以下、日焼け止め化粧料について具体的に説明する。
日焼け止め化粧料において、紫外線を、特に長波長紫外線(UVA)を効果的に遮蔽し、かつ、粉っぽさやきしみの少ない良好な使用感を得るためには、表面処理金属酸化物粒子の含有量を調整することも好ましい。例えば、日焼け止め化粧料における表面処理金属酸化物粒子の含有量の下限は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。また、日焼け止め化粧料における表面処理粒子の含有量の上限は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。日焼け止め化粧料における表面処理粒子の含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。また上記範囲の中で、5質量%〜15質量%や、10質量%〜20質量%など、好ましい範囲を任意に選択することができる。
【0120】
日焼け止め化粧料は、必要に応じて、疎水性分散媒、表面処理金属酸化物粒子以外の無機微粒子や無機顔料、親水性分散媒、油脂、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、pH調整剤、栄養剤、酸化防止剤、香料等を含んでもよい。
【0121】
疎水性分散媒としては、例えば、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、高級脂肪酸、高級アルコール等が挙げられる。
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン等が挙げられる。
エステル油としては、例えば、イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート等が挙げられる。
シリコーン油としては、例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール等が挙げられる。
【0122】
化粧料に含まれる表面処理金属酸化物粒子以外の無機微粒子や無機顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(アパタイト)、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、酸化チタン、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、γ−酸化鉄、チタン酸コバルト、コバルトバイオレット、酸化ケイ素等が挙げられる。
【0123】
日焼け止め化粧料は、さらに有機系紫外線吸収剤を少なくとも1種含有していてもよい。
【0124】
有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤、安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、シリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤、これら以外の有機系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0125】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0126】
ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤としては、例えば、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、1−(4’−イソプロピルフェニル)−3−フェニルプロパン−1,3−ジオン、5−(3,3’−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン等が挙げられる。
【0127】
安息香酸系紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸(PABA)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、N,N−ジメチルPABAメチルエステル等が挙げられる。
【0128】
アントラニル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等が挙げられる。
【0129】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−2−プロパノールフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0130】
ケイ皮酸系紫外線吸収剤としては、例えば、オクチルメトキシシンナメート(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)、ジ−パラメトキシケイ皮酸−モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート等が挙げられる。
【0131】
シリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤としては、例えば、[3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル−1−メチルプロピル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル−3−メチルプロピル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルブチル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−トリス(トリメチルシロキシ)シリル−1−メチルプロピル]−3,4−ジメトキシシンナメート等が挙げられる。
【0132】
上記以外の有機系紫外線吸収剤としては、例えば、3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、5−(3,3’−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン、シリコーン変性紫外線吸収剤、フッ素変性紫外線吸収剤等が挙げられる。上記紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
本実施形態の化粧料の臨界波長は、370nm以上であることが好ましい。化粧料の臨界波長が370nm以上であることにより、長波長紫外線(UVA)および短波長紫外線(UVB)の広範囲の紫外線を遮蔽することができる。
【0134】
本実施形態の化粧料によれば、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子、本実施形態の分散液および本実施形態の組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。このため、安定的に高い紫外線遮蔽性を示すものとなる。
【実施例】
【0135】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0136】
[実施例1]
「表面処理金属酸化物粒子の作製」
酸化亜鉛粒子(BET比表面積:30m
2/g、住友大阪セメント社製)100質量部と、オクチルトリエトキシシラン(商品名:KBE−3083、信越化学社製)8質量部と、純水0.6質量部と、イソプロピルアルコール34.2質量部との混合液をヘンシェルミキサー内で混合した。
次いで、その混合液を80℃でイソプロピルアルコールが除去されるまで乾燥した。
【0137】
次いで、得られた乾燥物を、D98が500μm以下になるまでハンマーミルで16000回転にて解砕し、この解砕粉を120℃にて3時間乾燥することで、実施例1の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
【0138】
「分散液の作製」
実施例1の表面処理酸化亜鉛粒子10質量部と、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(商品名:KF−6028、信越化学社製)2質量部と、デカメチルシクロペンタシロキサン(商品名:SH245、東レ・ダウコーニング社製)88質量部とを、攪拌機を用いて4000rpmで撹拌し、実施例1の分散液を得た。
なお、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは、表面処理酸化亜鉛粒子をデカメチルシクロペンタシロキサンに分散させるための分散剤として、混合物に加えられている。
【0139】
[実施例2]
実施例1において、120℃にて3時間乾燥する替わりに、120℃にて2時間乾燥したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1で得られた表面処理酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例2の表面処理酸化亜鉛粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の分散液を得た。
【0140】
[実施例3]
実施例1において、BET比表面積が30m
2/gの酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、BET比表面積が45m
2/gの酸化亜鉛粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1で得られた表面処理酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例3の表面処理酸化亜鉛粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の分散液を得た。
【0141】
[実施例4]
実施例1において、120℃にて3時間乾燥する替わりに、120℃にて2時間乾燥し、BET比表面積が30m
2/gの酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、BET比表面積が45m
2/gの酸化亜鉛粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1で得られた表面処理酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例4の表面処理酸化亜鉛粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の分散液を得た。
【0142】
[実施例5]
酸化亜鉛粒子(BET比表面積:60m
2/g、住友大阪セメント社製)100質量部と、オクチルトリエトキシシラン(商品名:KBE−3083、信越化学社製)12質量部と、純水0.6質量部と、イソプロピルアルコール34.2質量部との混合液をヘンシェルミキサー内で混合した。
次いで、その混合液を80℃でイソプロピルアルコールが除去されるまで乾燥した。
【0143】
次いで、得られた乾燥物を、D98が500μm以下になるまでハンマーミルで16000回転にて解砕し、この解砕粉を120℃にて3時間乾燥することで、実施例5の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
【0144】
実施例1で得られた表面処理酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例5の表面処理酸化亜鉛粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の分散液を得た。
【0145】
[実施例6]
酸化亜鉛粒子(BET比表面積:20m
2/g、住友大阪セメント社製)100質量部と、オクチルトリエトキシシラン(商品名:KBE−3083、信越化学社製)6質量部と、純水0.6質量部と、イソプロピルアルコール34.2質量部との混合液をヘンシェルミキサー内で混合した。
次いで、その混合液を80℃でイソプロピルアルコールが除去されるまで乾燥した。
【0146】
次いで、得られた乾燥物を、D98が500μm以下になるまでハンマーミルで16000回転にて解砕し、この解砕粉を120℃にて3時間乾燥することで、実施例6の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
【0147】
実施例1で得られた表面処理酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例6の表面処理酸化亜鉛粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例6の分散液を得た。
【0148】
[実施例7]
酸化亜鉛粒子(BET比表面積:8m
2/g、住友大阪セメント社製)100質量部と、オクチルトリエトキシシラン(商品名:KBE−3083、信越化学社製)6質量部と、純水0.6質量部と、イソプロピルアルコール34.2質量部との混合液をヘンシェルミキサー内で混合した。
次いで、その混合液を80℃でイソプロピルアルコールが除去されるまで乾燥した。
【0149】
次いで、得られた乾燥物を、D98が500μm以下になるまでハンマーミルで16000回転にて解砕し、この解砕粉を120℃にて3時間乾燥することで、実施例7の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
【0150】
実施例1で得られた表面処理酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例7の表面処理酸化亜鉛粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の分散液を得た。
【0151】
[比較例1]
実施例1において、120℃にて3時間乾燥する替わりに、100℃にて1時間乾燥したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1で得られた表面処理酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比較例1の表面処理酸化亜鉛粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の分散液を得た。
【0152】
[比較例2]
酸化亜鉛粒子(BET比表面積:45m
2/g、住友大阪セメント社製)100質量部と、オクチルトリエトキシシラン(商品名:KBE−3083、信越化学社製)8質量部と、純水0.6質量部と、イソプロピルアルコール34.2質量部との混合液をヘンシェルミキサー内で混合した。
次いで、その混合液を80℃でイソプロピルアルコールが除去されるまで乾燥した。
【0153】
次いで、得られた乾燥物を、D98が700μm以下になるまでハンマーミルで8000回転にて解砕し、この解砕粉を120℃にて3時間乾燥することで、比較例2の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
【0154】
実施例1で得られた表面処理酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比較例2の表面処理酸化亜鉛粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の分散液を得た。
【0155】
「評価」
(フーリエ変換式赤外分光光度計(FT−IR)の測定)
実施例1〜実施例7および比較例1、比較例2で得られた表面処理酸化亜鉛粒子について、フーリエ変換式赤外分光光度計FT/IR670Plus(日本分光社製)を用いて、600cm
−1から1500cm
−1のスペクトルをATR法で測定した。また、参考例として、オクチルトリエトキシシランのスペクトルを測定した。
その結果、実施例1〜実施例7、比較例2で得られた表面改質酸化亜鉛粒子については、1170cm
−1、1100cm
−1、1080cm
−1、および950cm
−1にピークが検出されなかった。それに対して、比較例1の表面処理酸化亜鉛粒子は、1170cm
−1、1100cm
−1、1080cm
−1、および950cm
−1にピークが検出された。すなわち、実施例1〜実施例7と比較例2では粒子表面には、未反応のオクチルトリエトキシシランは検出されず、比較例1では未反応のオクチルトリエトキシシランが残留していることが確認された。表1に、ピークが検出された場合を「有」、ピークが検出されなかった場合を「無」と表示した。
実施例1と比較例1とオクチルトリエトキシシランのFT−IRの測定結果を
図1に示す。
【0156】
(乾燥減量の測定)
実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例2で得られた表面処理酸化亜鉛粒子について、それぞれ2gを105℃に設定した乾燥機で3時間加熱した。加熱前後の質量を測定し、質量減少率を得て、乾燥減量(質量%)とした。すなわち、乾燥減量を、下記の式(1)で得られる値とした。結果を表1に示す。
表面処理金属酸化物粒子の乾燥減量(質量%)=(加熱前の表面処理金属酸化物粒子の質量−加熱後の表面処理金属酸化物粒子の質量)/加熱前の表面処理金属酸化物粒子の質量×100 (1)
【0157】
(粒度分布の測定)
実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例2で得られた表面処理酸化亜鉛粒子のD98について、レーザ回折式粒度分布測定装置(型式:Mastersizer 3000、Malvern社製)を用いて、乾式で体積粒度分布を測定した。結果を表1に示す。
【0158】
(BET比表面積の測定)
実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例2で得られた表面処理酸化亜鉛粒子のBET比表面積について、全自動比表面積測定装置(商品名:Macsorb HM Model−1201、マウンテック社製)を用い、BET法により測定した。結果を表1に示す。
また、上記(2)式から算出したBET換算粒子径を表1に示す。
【0159】
(感触の評価)
実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例2で得られた表面処理酸化亜鉛粒子の感触を次のようにして評価した。表面処理酸化亜鉛粒子を、親指と人差し指で取り、すり合わせた時のざらつき感の有無を評価した。ざらつき感がないものを「〇」と評価し、ざらつき感があるものを「×」と評価した。結果を表1に示す。
【0160】
(SPF値の測定)
実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例2で得られた分散液を、それぞれ石英ガラス板上に分散液の厚さが12μmとなるように塗布し、15分間自然乾燥させて塗膜を形成した。
得られた塗膜について、SPFアナライザーUV−2000S(Labsphere社製)を用いて評価し、SPF値を求めた。結果を表1に示す。
【0161】
【表1】
【0162】
実施例1〜実施例7の表面処理酸化亜鉛粒子は、1170cm
−1、1100cm
−1、1080cm
−1、および950cm
−1のいずれにもピークが検出されず、これらのピークが検出される比較例1の表面処理酸化亜鉛粒子よりも、SPF値が高いことが確認された。
また、105℃、3時間における乾燥減量が0.5質量%以下である実施例1〜実施例7の表面処理酸化亜鉛粒子は、乾燥減量が0.5質量%を超える比較例1の表面処理酸化亜鉛粒子よりも、SPF値が高いことが確認された。
また、D98/換算径が0.01以上5以下である実施例1〜実施例7の表面処理金属酸化物粒子は、ざらつき感が抑制されていることが確認された。