【解決手段】 (A)テトラカルボン酸無水物成分と、ジアミン成分と、を反応させてなるポリアミド酸及び(B)液晶ポリマーからなる形状異方性を有するフィラーを含有する樹脂組成物。(B)成分のフィラーの平均長軸径(L)と平均短軸径(D)との比(L/D)が3〜200の範囲内、(B)成分のフィラーの平均長軸径(L)が50〜3000μmの範囲内、平均短軸径(D)が1〜50μmの範囲内であることが好ましい。樹脂組成物により得られる樹脂フィルムは、ポリイミド層が、ポリイミドと、ポリイミド中に分散されている液晶ポリマーからなる形状異方性を有するフィラーと、を含有する。
前記(B)成分のフィラーの平均長軸径(L)が50〜3000μmの範囲内であり、平均短軸径(D)が1〜50μmの範囲内である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
前記(B)成分のフィラーの含有量が前記(A)成分及び前記(B)成分の合計量に対し1〜70体積%の範囲内である請求項1から3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
前記(A)成分のポリアミド酸を硬化させて得られるポリイミドの引張弾性率に対する前記(B)成分のフィラーの長軸方向における引張弾性率の比が1以上である請求項1から7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
前記(A)成分のポリアミド酸を硬化させて得られるポリイミドの真比重に対する前記(B)成分のフィラーの真比重の比が0.5〜2.0の範囲内である請求項1から8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
前記(B)成分の液晶ポリマーの1GHzにおける比誘電率が2.0〜3.5の範囲内であり、誘電正接が0.003未満である請求項1から9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
前記テトラカルボン酸無水物成分と前記ジアミン成分との反応液の粘度が1500cpsに達する前に前記(B)成分の液晶ポリマーからなる形状異方性を有するフィラーを添加し、混合する請求項11に記載の樹脂組成物の製造方法。
前記ポリイミド層中の樹脂成分の合計量に対する液晶ポリマーからなる形状異方性を有するフィラーの含有量が1〜70体積%の範囲内である請求項13から15のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリイミドは、耐熱性、耐薬品性などに優れた性質を有する樹脂であり、回路基板の絶縁樹脂層の材料として汎用されている。一方、液晶ポリマーも回路基板材料として用いられており、誘電特性に優れている。このことから、ポリイミド中に液晶ポリマーをフィラーとして配合することによって、ポリイミドフィルムの誘電特性を改善することが考えられる。しかし、液晶ポリマーは、熱膨張係数(CTE)が大きく、絶縁樹脂層の寸法安定性を毀損することが懸念される。
【0007】
従って、本発明の目的は、ポリイミド中に液晶ポリマーのフィラーが分散され、優れた誘電特性と寸法安定性が両立されている樹脂フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、下記の成分(A)及び(B)、
(A)テトラカルボン酸無水物成分と、ジアミン成分と、を反応させてなるポリアミド酸、
及び
(B)液晶ポリマーからなる形状異方性を有するフィラー、
を含有する。
【0009】
本発明の樹脂組成物は、前記(B)成分のフィラーの平均長軸径(L)と平均短軸径(D)との比(L/D)が3〜200の範囲内であってもよい。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、前記(B)成分のフィラーの平均長軸径(L)が50〜3000μmの範囲内であってもよく、平均短軸径(D)が1〜50μmの範囲内であってもよい。
【0011】
本発明の樹脂組成物は、前記(B)成分のフィラーの含有量が、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計量に対し1〜70体積%の範囲内であってもよい。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、前記液晶ポリマーの融点が280℃以上であってもよい。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、前記液晶ポリマーがポリエステル構造を有するものであってもよい。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、前記(B)成分のフィラーの長軸方向における引張弾性率が20GPa以上であってもよい。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、前記(A)成分のポリアミド酸を硬化させて得られるポリイミドの引張弾性率に対する前記(B)成分のフィラーの長軸方向における引張弾性率の比が1以上であってもよい。
【0016】
本発明の樹脂組成物は、前記(A)成分のポリアミド酸を硬化させて得られるポリイミドの真比重に対する前記(B)成分のフィラーの真比重の比が0.5〜2.0の範囲内であってもよい。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、前記(B)成分の液晶ポリマーの1GHzにおける比誘電率が2.0〜3.5の範囲内であってもよく、誘電正接が0.003未満であってもよい。
【0018】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、上記いずれかの樹脂組成物の製造方法であって、
前記テトラカルボン酸無水物成分と前記ジアミン成分とを反応させて前記ポリアミド酸を合成する反応が完結するより前に、前記(B)成分の液晶ポリマーからなる形状異方性を有するフィラーを添加することを特徴とする。
【0019】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、前記テトラカルボン酸無水物成分と前記ジアミン成分との反応液の粘度が1500cpsに達する前に前記(B)成分の液晶ポリマーからなる形状異方性を有するフィラーを添加し、混合してもよい。
【0020】
本発明の樹脂フィルムは、ポリイミド層を含む樹脂フィルムであって、
前記ポリイミド層が、ポリイミドと、前記ポリイミド中に分散されている液晶ポリマーからなる形状異方性を有するフィラーと、を含有することを特徴とする。
【0021】
本発明の樹脂フィルムは、前記ポリイミド層の熱膨張係数が30ppm/K以下であってもよい。
【0022】
本発明の樹脂フィルムは、前記ポリイミド層の10GHzにおける比誘電率が2.0〜3.8の範囲内であってもよく、誘電正接が0.004以下であってもよい。
【0023】
本発明の樹脂フィルムは、前記ポリイミド層中の樹脂成分の合計量に対する液晶ポリマーからなる形状異方性を有するフィラーの含有量が1〜70体積%の範囲内であってもよい。
【0024】
本発明の樹脂フィルムは、前記ポリイミド層中で、前記液晶ポリマーの長手方向が配向していてもよい。
【0025】
本発明の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を備えた金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が上記いずれかの樹脂フィルムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ポリイミド中に液晶ポリマーのフィラーが分散され、優れた誘電特性と寸法安定性が両立されている樹脂フィルムが提供される。本発明の樹脂フィルムは、高周波信号伝送における損失が低減され、寸法安定性も維持できることから、各種の電子機器におけるFPC等の回路基板材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0029】
[樹脂組成物]
本実施の形態の樹脂組成物は、下記の成分(A)及び(B)、
(A)テトラカルボン酸無水物成分と、ジアミン成分と、を反応させてなるポリアミド酸、
及び
(B)液晶ポリマーからなる形状異方性を有するフィラー(以下、「LCPフィラー」と記すことがある)、
を含有する。
【0030】
[成分A:ポリアミド酸]
成分Aのポリアミド酸は、ポリイミドの前駆体であり、テトラカルボン酸無水物成分と、ジアミン成分と、を反応させて得られる。ポリイミドは、下記一般式(1)で表されるイミド基を有するポリマーである。さらにアミド基やエーテル結合を有する場合にはポリアミドイミドやポリエーテルイミドと呼称されることがあるが、本明細書では、これらを総じてポリイミドと記載する。ポリイミドは、ジアミン成分と酸二無水物成分とを実質的に等モル使用し、有機極性溶媒中で重合させる公知の方法によって製造することができる。この場合、粘度を所望の範囲とするために、ジアミン成分に対する酸二無水物成分のモル比を調整してもよく、その範囲は、例えば0.98〜1.03のモル比の範囲内とすることが好ましい。
【0032】
一般式(1)において、Ar
1はテトラカルボン酸二無水物残基を含む酸無水物から誘導される4価の基を示し、R
2はジアミンから誘導される2価のジアミン残基を示し、nは1以上の整数である。
【0033】
酸二無水物としては、例えば、O(OC)
2−Ar
1−(CO)
2Oによって表される芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、下記芳香族酸無水物残基をAr
1として与えるものが例示される。
【0035】
酸二無水物は、単独で又は2種以上混合して用いることができる。これらの中でも、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、及び4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)から選ばれるものを使用することが好ましい。
【0036】
ジアミンとしては、例えば、H
2N−R
2−NH
2によって表されるジアミンが好ましく、下記ジアミン残基をR
2として与えるジアミンが例示される。
【0038】
これらのジアミンの中でも、ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)、パラフェニレンジアミン(p−PDA)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、及び2,2−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)が好適なものとして例示される。
【0039】
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換して樹脂組成物を形成することができる。ポリアミド酸をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80〜400℃の範囲内の温度条件で1〜24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
【0040】
[成分(B):LCPフィラー]
LCPフィラーは、液晶ポリマーからなる。液晶ポリマーは、誘電特性の周波数依存性がほとんどなく、非常に優れた誘電特性を有するとともに、難燃性向上にも寄与することから、これをフィラーとして配合することによって、樹脂フィルムの誘電特性と難燃性を改善することができる。樹脂フィルムの誘電特性を改善する目的で配合する場合、LCPフィラーは、単体として、1GHzにおける比誘電率が、好ましくは2.0〜3.5の範囲内、より好ましくは、2.7〜3.2の範囲内であり、誘電正接が、好ましくは0.003未満であり、より好ましくは0.002以下であるものを用いることがよい。
【0041】
液晶ポリマーの融点は、液晶転移温度や液晶化温度と称される場合があるが、280℃以上が好ましい。より好ましくは295℃以上、さらに好ましくは310℃以上である。融点が280℃を下回ると電子機器等の製造過程で融解し、特性の変化をきたすおそれがある。
【0042】
液晶ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の(1)〜(4)に分類される化合物及びその誘導体から導かれる公知のサーモトロピック液晶ポリエステル及びポリエステルアミドなどのポリエステル構造を有するものが好ましい。
(1)芳香族又は脂肪族ジヒドロキシ化合物
(2)芳香族又は脂肪族ジカルボン酸
(3)芳香族ヒドロキシカルボン酸
(4)芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミン又は芳香族アミノカルボン酸
【0043】
これらの原料化合物から得られる液晶ポリマーの代表例として、下記式(a)〜(j)に示す構造単位から選ばれる2つ以上の組み合わせを有する共重合体であって、式(a)で示す構造単位又は式(e)で示す構造単位のいずれかを含む共重合体が好ましく、特に、式(a)で示す構造単位と式(e)で示す構造単位とを含む共重合体がより好ましい。また、液晶ポリマー中の芳香環が多くなるほど、誘電特性と難燃性を向上させる効果が期待できることから、上記(1)として芳香族ジヒドロキシ化合物を、上記(2)として芳香族ジカルボン酸を含むものが好ましい。
【0045】
LCPフィラーは、形状異方性を有する。形状異方性とは、LCPフィラーの平均長軸径(L)と平均短軸径(D)との比(L/D)が3以上であることを意味し、好ましくは3〜200の範囲内である。ここで、直線状に伸ばした状態でのLCPフィラーに外接する仮想の直方体を想定したとき、該直方体の互いに垂直な3辺の長さのうち、最も短い辺の長さを短軸径、最も長い辺の長さを長軸径とする。
【0046】
LCPフィラーの平均長軸径(L)は、例えば50〜3000μmの範囲内が好ましく、100〜1000μmの範囲内がより好ましい。また、LCPフィラーの平均短軸径(D)は、例えば1〜50μmの範囲内が好ましく、3〜30μmの範囲内がより好ましい。平均長軸径(L)及び平均短軸径(D)が上記範囲内であれば、樹脂組成物によって樹脂フィルムを形成したときの表面平滑性を悪化させることがなく、外観良好な樹脂フィルムが得られる。
【0047】
LCPフィラーの具体的形状としては、例えば繊維状(針状を含む)、板状などを挙げることができる。繊維状としては、例えばミルドファイバー、チョップドファイバー、カットファイバー等であってもよい。板状としては、円盤状、扁平状、平板状、薄片状、鱗片状、短冊状等が例示される。また、LCPフィラーの断面形状は円形に限られず、星型や花型、十字型、中空型でもよい。LCPフィラーの断面形状を変えることで、LCPフィラーの表面積を調整してポリイミドとの接着性を制御することや、樹脂溶液の粘度を制御することが出来る。樹脂フィルムのCTE制御のしやすさの観点から、特に短繊維状のLCPフィラーが好ましい。
【0048】
LCPフィラーは、その長軸方向と液晶ポリマー分子の長手方向が概ね一致するように配向していることが好ましい。液晶ポリマー分子を配向させるためには、溶融工程と押出工程による成形を経ることが重要であり、特に、次式によって求められる押出時の最大剪断速度uを、好ましくは10
3sec
−1以上、より好ましくは10
4sec
−1以上とすることがよい。
u= 4Q/{π×(d/2)
3}
[但し、Qは押出吐出口断面を単位時間当たりに通過するポリマー吐出量(cm
3/sec)、dは押出吐出口断面の最も短い径の長さ(cm)を示すが、例えばチューブ状ノズルや細孔等の円形の押出吐出口の場合はその直径(cm)とする。]
このような最大剪断速度であると、液晶分子の配向が十分となり、LCPフィラーとして用いた際のCTEの制御性が得られやすくなる。
【0049】
また、LCPフィラーの配向が不十分である場合、流延若しくは押出工程後に延伸することによって配向を制御することができる。なお、細孔より樹脂を吐出することで延伸工程の省略が可能であり、そのためには、紡糸口金の孔径(直径)を、例えば1.0mm以下とすることが好ましく、0.5mm以下とすることがより好ましい。
【0050】
LCPフィラーは、上記の方法で製造された長繊維を束ねて所定の長さに切断するか、粉砕することによって製造することができる。また、繊維状とせずに、液晶ポリマー分子の配向度を高めた成型物を粉砕することによってもLCPフィラーを製造することができる。
【0051】
また、LCPフィラーの長軸方向における引張弾性率は、樹脂フィルムのCTEを低減するために、例えば20GPa以上であることが好ましく、40〜200GPaの範囲内であることがより好ましい。特に、(A)成分のポリアミド酸を硬化させて得られるポリイミドの引張弾性率E
Pに対するLCPフィラーの長軸方向における引張弾性率E
Lの比(E
L/E
P)が1以上であることが好ましい。樹脂フィルムにおけるマトリクスとなるポリイミドの引張弾性率E
PとLCPフィラーの引張弾性率E
Lとの関係がE
L≧E
Pである場合に、CTE低減の効果が大きくなる。
【0052】
また、(A)成分のポリアミド酸を硬化させて得られるポリイミドの真比重S
Pに対するLCPフィラーの真比重S
Lの比(S
L/S
P)が、例えば0.5〜2.0の範囲内であることが好ましい。樹脂フィルムにおけるマトリクスとなるポリイミドの真比重S
PとLCPフィラーの真比重S
Lとの関係が上記範囲内であることによって、LCPフィラーの分散性が良好になるとともに、樹脂フィルム全体の軽量化を図ることができる。
【0053】
LCPフィラーは、分散性及びポリイミドとの密着性を向上させる目的で、表面改質処理がなされていてもよい。表面改質処理としては、例えば、プラズマ処理、コーティング処理などを挙げることができる。また、LCPフィラーは、芯鞘型構造であってもよい。芯鞘型構造としては、例えば芯部分が液晶ポリマーで、鞘部分がポリイミドと接着性が高い樹脂であるものが好ましい。ポリイミドと接着性が高い樹脂としては、例えばポリイミド、ポリアミド、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂が好適である。
【0054】
LCPフィラーは、市販品を適宜選定して用いることができる。例えば、繊維状のものとして、クラレ社製ベクトラン(商品名)、同ベックリー(商品名)、東レ社製シベラス(商品名)、KBセーレン社製ゼクシオン(商品名)などを好ましく使用可能である。なお、LCPフィラーとして2種以上の異なるものを併用してもよい。
【0055】
[溶剤]
樹脂組成物は、さらに溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール、アセトン、メチルイソブチルケトン等の有機溶媒が挙げられる。これらの溶剤を2種以上併用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。溶剤の含有量としては特に制限されるものではないが、樹脂組成物における固形分濃度が5〜50重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0056】
[任意成分]
樹脂組成物には、必要に応じて任意成分として、ポリアミド酸以外の樹脂成分、難燃剤、架橋剤、硬化促進剤、化学触媒、LCPフィラー以外の有機フィラー、無機フィラー、可塑剤、カップリング剤、顔料などを適宜配合することができる。
【0057】
[組成]
樹脂組成物における(B)成分のLCPフィラーの含有量は、樹脂フィルムの使用目的に応じて適宜設定できるが、例えば(A)成分及び(B)成分の合計量に対し1〜70体積%の範囲内であることが好ましく、5〜65体積%の範囲内であることがより好ましい。LCPフィラーの配合量が下限値未満であると、誘電特性の改善効果及びCTE低減効果が十分に得られない場合があり、上限値を超えると樹脂溶液の増粘によるハンドリング性の低下や樹脂フィルムが脆弱化したりする場合がある。
なお、溶剤は、(A)成分のポリアミド酸を溶解し、溶液状態にできる量で配合することが好ましい。
【0058】
[粘度]
樹脂組成物の粘度は、樹脂組成物を塗工する際のハンドリング性を高め、均一な厚みの塗膜を形成しやすい粘度範囲として、例えば3000cps〜100000cpsの範囲内とすることが好ましく、5000cps〜50000cpsの範囲内とすることがより好ましい。上記の粘度範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
【0059】
[樹脂組成物の製造方法]
樹脂組成物は、(A)成分の原料であるテトラカルボン酸無水物成分とジアミン成分とを反応させてポリアミド酸を合成する反応が完結するより前に、(B)成分のLCPフィラーを添加することが好ましい。ポリアミド酸の合成反応が完結した後でLCPフィラーを添加しても、LCPフィラーの凝集が生じやすく、また凝集後の分散工程も煩雑になりやすい。LCPフィラーを添加するタイミングの好ましい目安として、例えば、テトラカルボン酸無水物成分とジアミン成分との反応液の粘度が1500cpsに達するより前にLCPフィラーを添加し、混合することがよい。反応液の粘度が1500cpsに達した後でLCPフィラーを添加しても、均一な混合状態が得られなくなる。
【0060】
以上の観点から、テトラカルボン酸無水物成分とジアミン成分を反応させる前の段階で、テトラカルボン酸無水物成分及び/又はジアミン成分にLCPフィラーを添加することがより好ましい。
具体的には、テトラカルボン酸無水物成分とジアミン成分とLCPフィラーを同時に混合した後、テトラカルボン酸無水物成分とジアミン成分とを反応させてポリアミド酸の合成反応を進行させてもよい。
また、テトラカルボン酸無水物成分にLCPフィラーを添加した混合物に、ジアミン成分を添加し、混合することによって、ポリアミド酸の合成反応を開始させてもよい。
また、ジアミン成分にLCPフィラーを添加した混合物に、テトラカルボン酸無水物成分を添加し、混合することによって、ポリアミド酸の合成反応を開始させてもよい。
いずれの場合も、原料となるテトラカルボン酸無水物成分、ジアミン成分、LCPフィラーは、一回で全量を投入してもよいし、数回に分けて少しずつ添加してもよい。また、あらかじめLCPフィラーを分散させた溶剤を用いてもよい。
【0061】
[樹脂フィルム]
本実施の形態の樹脂フィルムは、ポリイミドと、ポリイミド中に分散されているLCPフィラーと、を含有するポリイミド層(以下、「LCPフィラー含有ポリイミド層」と記すことがある)を含んでいる。LCPフィラー含有ポリイミド層のマトリクス樹脂はイミド化されたポリイミドであり、その中にLCPフィラーが分散された状態となっている。樹脂フィルムは、単層でもよいし、複数層から構成されていてもよい。つまり、樹脂フィルムの全体がLCPフィラー含有ポリイミド層であってもよいし、LCPフィラー含有ポリイミド層以外の樹脂層を含んでいてもよい。ただし、LCPフィラー含有ポリイミド層は、樹脂フィルムの主たる層であることが好ましい。ここで、「主たる層」とは、樹脂フィルムの全体厚みに対して50%を超える厚みを有する層を意味する。
【0062】
樹脂フィルムにおけるLCPフィラー含有ポリイミド層の熱膨張係数は、回路基板材料としての寸法安定性を考慮し、30ppm/K以下であることが好ましく、1〜25ppm/Kの範囲内であることがより好ましい。
【0063】
また、LCPフィラー含有ポリイミド層の10GHzにおける比誘電率は、高周波信号伝送への対応を図るため、2.0〜3.8の範囲内であることが好ましく、2.5〜3.5の範囲内であることがより好ましい。また、LCPフィラー含有ポリイミド層の10GHzにおける誘電正接は、高周波信号伝送への対応を図るため、0.004以下であることが好ましく、0.003以下であることがより好ましい。
【0064】
LCPフィラー含有ポリイミド層中の樹脂成分の合計量に対するLCPフィラーの含有量は、使用目的に応じて適宜設定できるが、例えば、1〜70体積%の範囲内であることが好ましく、5〜65体積%の範囲内であることがより好ましい。LCPフィラーの含有量が下限値未満であると、誘電特性の改善効果及びCTE低減効果が十分に得られない場合があり、上限値を超えると樹脂溶液の増粘によるハンドリング性の低下や樹脂フィルムが脆弱化したりする場合がある。なお、LCPフィラー含有ポリイミド層におけるLCPフィラーの体積比率は、三次元透過型電子顕微鏡(TEM)によるイメージング像から算出することもできるし、強アルカリ溶解による分解分析や熱分解分析法によって得られる重量比から換算して求めることもできる。また、X線回折による相体積比率計測、断面SEM画像の面積比から計算により求めることもできる。
【0065】
LCPフィラー含有ポリイミド層中では、液晶ポリマー分子の長手方向が配向していることが好ましい。特に、LCPフィラー含有ポリイミド層の長手方向(MD方向)と液晶ポリマー分子の長手方向がほぼ同方向であることが、寸法安定性を高める観点から好ましい。そのためには、上述のとおり、LCPフィラーの長軸方向と液晶ポリマー分子の長手方向とが概ね一致するように配向させておくことが好ましい。
【0066】
<厚み>
樹脂フィルムの厚みは、使用目的に応じて適宜設定できるが、例えば2〜150μmの範囲内が好ましく、10〜120μmの範囲内であることがより好ましい。樹脂フィルムの厚みが2μmに満たないと、樹脂フィルムの製造等における搬送時にシワが入るなどの不具合が生じるおそれがあり、一方、樹脂フィルムの厚みが150μmを超えると樹脂フィルムの生産性低下の虞がある。
【0067】
樹脂フィルムは、フィルム(シート)状であればよく、任意の基材、例えば銅箔、ガラス板、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルムなどに積層された状態であってもよい。
【0068】
[樹脂フィルムの製造方法]
樹脂フィルムは、樹脂組成物を熱処理し、ポリアミド酸をイミド化することによってLCPフィラー含有ポリイミド層を形成することによって製造することができる。樹脂組成物を熱処理してLCPフィラー含有ポリイミド層を得る方法は、特に限定されるものではなく公知の手法を採用することができる。
【0069】
まず、樹脂組成物を任意の支持基材上に直接流延塗布して塗布膜を形成する。次に、塗布膜を150℃以下の温度である程度溶剤を乾燥除去する。その後、塗布膜に対し、ポリアミド酸のイミド化のために、例えば100〜400℃、好ましくは130〜380℃の温度範囲で5〜30分間程度の熱処理を行う。このようにして支持基材上にLCPフィラー含有ポリイミド層を形成することができる。イミド化のための熱処理温度が100℃より低いとポリイミドの脱水閉環反応が十分に進行せず、反対に400℃を超えると、ポリイミド層が劣化するおそれがある。
【0070】
樹脂フィルムを2層以上のポリイミド層によって形成する場合、第一のポリアミド酸の樹脂組成物を塗布、乾燥したのち、第二のポリアミド酸の樹脂組成物を塗布、乾燥する。それ以降は、同様にして第三のポリアミド酸の樹脂組成物、次に、第四のポリアミド酸の樹脂組成物、・・・というように、ポリアミド酸の樹脂組成物を必要な回数だけ順次塗布し、乾燥する。その後、まとめて熱処理を行って、イミド化を行うことが好ましい。なお、この中の少なくとも一層がLCPフィラー含有ポリイミド層であればよい。
また、イミド化した任意のポリイミド層に適切な表面処理等を行うことで、さらに重ねて樹脂組成物の塗布、乾燥及びイミド化の工程を経て、新たに層を重ねることができる。その場合、途中工程のイミド化は完結させる必要はなく、最終工程にてまとめてイミド化を完結させることができる。
また、イミド化した任意のポリイミド層は、別に形成した樹脂フィルムと加熱圧着することができる。
なお、樹脂フィルムは支持基材付きの状態でも良い。
【0071】
また、樹脂フィルムを形成する別の例を挙げる。
まず、任意の支持基材上に、樹脂組成物を流延塗布してフィルム状成型する。このフィルム状成型物を、支持基材上で加熱乾燥することにより自己支持性を有するゲルフィルムとする。ゲルフィルムを支持基材より剥離した後、例えば100〜400℃、好ましくは130〜380℃の温度範囲で5〜30分間程度熱処理し、ポリアミド酸をイミド化させてLCPフィラー含有ポリイミド層を含む樹脂フィルムを得ることができる。また、必要に応じ、樹脂フィルムを延伸してもよい。
【0072】
[金属張積層板]
本実施の形態の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を備えた金属張積層板であり、絶縁樹脂層の少なくとも1層が上記方法によって製造された樹脂フィルムからなる。金属張積層板は、絶縁樹脂層の片面側のみに金属層を有する片面金属張積層板であってもよいし、絶縁樹脂層の両面に金属層を有する両面金属張積層板であってもよい。
【0073】
<絶縁樹脂層>
絶縁樹脂層は単層又は複数層から構成され、上記樹脂フィルムからなる層を含んでいる。例えば、上記樹脂フィルムが、機械特性や熱物性を担保するための絶縁樹脂層の主たる層としての非熱可塑性ポリイミド層を形成していてもよい。また、上記樹脂フィルムが、銅箔などの金属層との接着強度を担う接着剤層としての熱可塑性ポリイミド層を形成していてもよい。なお、「主たる層」とは、絶縁樹脂層の総厚みの50%を超える厚みを占める層を意味する。
【0074】
樹脂フィルムを絶縁樹脂層とする金属張積層板を製造する方法としては、例えば、樹脂フィルムに直接、又は任意の接着剤を介して金属箔を加熱圧着する方法や、金属蒸着等の手法によって樹脂フィルムに金属層を形成する方法などを挙げることができる。なお、両面金属張積層板は、例えば、片面金属張積層板を形成した後、互いにポリイミド層を向き合わせて熱プレスによって圧着し形成する方法や、片面金属張積層板のポリイミド層に金属箔を圧着し形成する方法等により得ることができる。
【0075】
<金属層>
金属層の材質としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。これらの中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。金属層は、金属箔からなるものであってもよいし、フィルムに金属蒸着したもの、ペースト等を印刷したものであってもよい。また、金属箔でも金属板でも使用可能であり、銅箔若しくは銅板が好ましい。
【0076】
金属層の厚みは、金属張積層板の使用目的に応じて適宜設定されるため特に限定されないが、例えば5μm〜3mmの範囲内が好ましく、12μm〜1mmの範囲内がより好ましい。金属層の厚みが5μmに満たないと、金属張積層板の製造等における搬送時にシワが入るなどの不具合が生じるおそれがある。反対に金属層の厚みが3mmを超えると硬くて加工性が悪くなる。
【0077】
以上のようにして得られる樹脂フィルム及び金属張積層板は、ポリイミド中にLCPフィラーが分散されていることにより、優れた誘電特性と寸法安定性が両立されている。従って、樹脂フィルム及び金属張積層板は、高周波信号伝送における損失が低減され、寸法安定性も維持できることから、各種の電子機器におけるFPC等の回路基板材料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0078】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0079】
[粘度の測定]
E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV−II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%〜90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから1分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
【0080】
[熱膨張係数(CTE)の測定]
ポリイミドフィルムをTD方向3mm×MD方向20mmのサイズに切り出し、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、MD方向に5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から260℃まで昇温させ、さらにその温度で10分保持した後、5℃/minの速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。
【0081】
[融点の測定]
示差走査熱量分析装置(DSC、SII社製、商品名;DSC−6200))を用いて、不活性ガス雰囲気中、室温から450℃まで1.5℃/minで昇温し、融点の測定を行った。
【0082】
[引張弾性率の測定]
(樹脂フィルム)
テンションテスター(オリエンテック製、商品名; テンシロン)を用いて、樹脂フィルムから、試験片(幅12.7m m×長さ127mm)を作製した。この試験片を用い、50mm/minで引張試験を行い、25℃における引張弾性率を求めた。
(フィラー)
無作為に10本のフィラー加工前の長繊維を取り出し、それぞれを200mmの長さに加工して、JISL 1013(2010)の標準時試験に準じ、引張り試験機(島津製作所社製、商品名;AGS−500NX)を用いて、引張り速度200mm/minにて、長繊維のそれぞれについて引張弾性率を求め、平均値で表した。
【0083】
[平均長軸径及び平均短軸径の測定方法]
無作為に10個のフィラーを取り出し、実体顕微鏡を用いて、独立に観察し、取り出したフィラーそれぞれについて長軸径及び短軸径を測定し、平均値として求めた。
【0084】
[真比重の測定]
連続自動粉体真密度測定装置(セイシン企業社製、商品名;AUTO TRUE DENSERMAT‐7000)を用いて、ピクノメーター法(液相置換法)による真比重の測定を行った。
【0085】
[凝集評価]
ワニスを支持体へ塗布する際に、500mLのワニスを500μmのギャップコーターに通過させた時の非通過固形物の存在の有無を確認した。
【0086】
[比誘電率及び誘電正接の測定]
(樹脂フィルム)
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名;ベクトルネットワークアナライザE8363C)およびSPDR共振器を用いて、周波数10GHzにおける樹脂フィルム(硬化後の樹脂フィルム)の比誘電率(ε1)及び誘電正接(Tanδ1)を測定した。なお、測定に使用した樹脂フィルムは、温度;24〜26℃、湿度;45〜55%の条件下で、24時間放置したものである。
(液晶ポリマー)
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名;ベクトルネットワークアナライザE8363C)およびSPDR共振器を用いて、液晶ポリマーを板状へ溶融成型したサンプルの周波数1GHzにおける比誘電率(ε1)及び誘電正接(Tanδ1)を測定した。なお、測定に使用したサンプルは、温度;24〜26℃、湿度;45〜55%の条件下で、24時間放置したものである。
【0087】
[断面観察]
1)測定用サンプルの作製
銅張積層板(TD;10mm×MD;10mm)の、サンプルの観察面(厚み方向の断面)がMD方向になるように、エポキシ系樹脂でサンプルを包埋後、回転板型研磨機を用いて、複数のエメリー紙(♯1200まで)及びバフ研磨(ダイヤモンド粒子ペーストの1μmまで)並びに薬液による化学研磨を行い、測定用サンプルを作製した。
2)測定用サンプルの観察
測定用サンプルの観察面を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、200〜3000倍の倍率で観察した。
【0088】
実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
m‐TB:2,2’‐ジメチル‐4,4’‐ジアミノビフェニル
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
フィラー1:ポリエステル構造を有する液晶ポリマー、短繊維状、平均短軸径;28μm、平均長軸径;1000μm、融点(Tm);350℃、真比重;1.4、引張弾性率;85GPa、比誘電率;3.1、誘電正接;0.0010
フィラー2:ポリエステル構造を有する液晶ポリマー、短繊維状、平均短軸径;28μm、平均長軸径;500μm、融点(Tm);350℃、真比重;1.4、引張弾性率;85GPa、比誘電率;3.1、誘電正接;0.0010
フィラー3:ポリエステル構造を有する液晶ポリマー、短繊維状、平均短軸径;28μm、平均長軸径;1000μm、融点(Tm);330℃、真比重;1.4、引張弾性率;160GPa、比誘電率; 3.4、誘電正接;0.0020
フィラー4:ポリエステル構造を有する液晶ポリマー、短繊維状、平均短軸径;14μm、平均長軸径;1000μm、融点(Tm);330℃、真比重;1.4、引張弾性率;140GPa、比誘電率;3.4 、誘電正接;0.0020
フィラー5:ポリエステル構造を有する液晶ポリマー粒子、不定形状、平均短軸径;8μm、平均長軸径;14μm、融点(Tm);320℃、真比重;1.4、比誘電率;3.4、誘電正接;0.0010
【0089】
[実施例1]
300mlのセパラブルフラスコに、17gのm−TB(82mmol)、230gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、4.5gのPMDA(20mmol)及び18gのBPDA(62mmol)、4.2gのフィラー1を添加し、室温で18時間撹拌して樹脂溶液1(粘度;30,000cps、不揮発性成分に対するフィラー1の含有率;10体積%)を調製した。
【0090】
銅箔(電解銅箔、厚み;12μm)の上に樹脂溶液1を約350μmの厚みで塗布し、130℃で5分間乾燥させて樹脂層を形成した。その後150℃から380℃まで20分間かけて、段階的に熱処理を行い、イミド化を完結し、銅張積層板1を調製した。
銅張積層板1の銅箔をエッチング除去し、樹脂フィルム1(厚み;48μm)を調製した。樹脂フィルム1のCTEは13ppm/K、比誘電率は3.1、誘電正接は0.0039であった。
【0091】
[実施例2]
実施例1におけるフィラー1の添加量を17gに代え、フィラー1の添加後に、更に94gのDMAcを追加して添加した以外は実施例1と同様にして樹脂溶液2(粘度;34,000cps、不揮発性成分に対するフィラー1の含有率;30体積%)を調製した。
【0092】
銅箔(電解銅箔、厚み;12μm)の上に樹脂溶液2を約350μmの厚みで塗布し、130℃で5分間乾燥させて樹脂層を形成した。その後150℃から380℃まで20分間かけて、段階的に熱処理を行い、イミド化を完結し、銅張積層板2を調製した。
銅張積層板2の銅箔をエッチング除去し、樹脂フィルム2(厚み;37μm)を調製した。樹脂フィルム1のCTEは3ppm/K、比誘電率は2.3、誘電正接は0.0035であった。
【0093】
[実施例3]
実施例1における4.2gのフィラー1に代えて、4.3gのフィラー2を添加したこと、及びフィラー2の添加後に、更に25gのDMAcを追加して添加した以外は実施例1と同様にして樹脂溶液3(粘度;28,000cps、不揮発性成分に対するフィラー2の含有率;10体積%)を調製した。
【0094】
銅箔(電解銅箔、厚み;12μm)の上に樹脂溶液3を約350μmの厚みで塗布し、130℃で5分間乾燥させて樹脂層を形成した。その後150℃から380℃まで20分間かけて、段階的に熱処理を行い、イミド化を完結し、銅張積層板3を調製した。
銅張積層板3の銅箔をエッチング除去し、樹脂フィルム3(厚み;55μm)を調製した。樹脂フィルム3のCTEは15ppm/K、比誘電率は2.8、誘電正接は0.0037であった。
【0095】
[実施例4]
実施例2のフィラー1の代わりにフィラー2を用いたこと以外は実施例2と同様にして樹脂溶液4(粘度;30,000cps、不揮発性成分に対するフィラー2の含有率;30体積%)を調製した。
【0096】
銅箔(電解銅箔、厚み;12μm)の上に樹脂溶液4を約350μmの厚みで塗布し、130℃で5分間乾燥させて樹脂層を形成した。その後150℃から380℃まで20分間かけて、段階的に熱処理を行い、イミド化を完結し、銅張積層板4を調製した。
銅張積層板4の銅箔をエッチング除去し、樹脂フィルム4(厚み;67μm)を調製した。樹脂フィルム4のCTEは8ppm/K、比誘電率は2.5、誘電正接は0.0034であった。
【0097】
[実施例5]
実施例1における4.2gのフィラー1に代えて、34gのフィラー2を添加したこと、及びフィラー2の添加後に、更に180gのDMAcを添加した以外は実施例1と同様にして樹脂溶液5(粘度;45,000cps、不揮発性成分に対するフィラー2の含有率;60体積%)を調製した。
【0098】
銅箔(電解銅箔、厚み;12μm)の上に樹脂溶液5を約350μmの厚みで塗布し、130℃で5分間乾燥させて樹脂層を形成した。その後150℃から380℃まで20分間かけて、段階的に熱処理を行い、イミド化を完結し、銅張積層板5を調製した。
銅張積層板5の銅箔をエッチング除去し、樹脂フィルム5(厚み;67μm)を調製した。樹脂フィルム5のCTEは2ppm/K、比誘電率は3.0、誘電正接は0.0029であった。
【0099】
[実施例6]
実施例1のフィラー1の代わりにフィラー3を用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂溶液6(粘度;30,000cps、不揮発性成分に対するフィラー3の含有率;10体積%)を調製した。
【0100】
銅箔(電解銅箔、厚み;12μm)の上に樹脂溶液6を約350μmの厚みで塗布し、130℃で5分間乾燥させて樹脂層を形成した。その後150℃から380℃まで20分間かけて、段階的に熱処理を行い、イミド化を完結し、銅張積層板6を調製した。
銅張積層板6の銅箔をエッチング除去し、樹脂フィルム6(厚み;50μm)を調製した。樹脂フィルム6のCTEは18ppm/K、比誘電率は3.1、誘電正接は0.0039であった。
【0101】
[実施例7]
実施例1のフィラー1の代わりにフィラー4を用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂溶液7(粘度;28,000cps、不揮発性成分に対するフィラー4の含有率;10体積%)を調製した。
【0102】
銅箔(電解銅箔、厚み;12μm)の上に樹脂溶液7を約350μmの厚みで塗布し、130℃で5分間乾燥させて樹脂層を形成した。その後150℃から380℃まで20分間かけて、段階的に熱処理を行い、イミド化を完結し、銅張積層板7を調製した。得られた銅張積層板7の断面構造を
図1に示した。ポリイミド中に配向しているフィラー4の短軸方向の断面が確認された。
銅張積層板7の銅箔をエッチング除去し、樹脂フィルム7(厚み;45μm)を調製した。樹脂フィルム7のCTEは16ppm/K、比誘電率は3.0、誘電正接は0.0040であった。
【0103】
(比較例1)
銅箔(電解銅箔、厚み;12μm)の上にポリアミド酸溶液1を約500μmの厚みで塗布し、130℃で5分間乾燥させて樹脂層を形成した。その後150℃から380℃まで20分間かけて、段階的に熱処理を行い、イミド化を完結し、銅張積層板8を調製した。
銅張積層板8の銅箔をエッチング除去し、樹脂フィルム8(厚み;41μm)を調製した。樹脂フィルム8のCTEは19ppm/K、比誘電率は3.4、誘電正接は0.0041、真比重は1.4、引張弾性率は8GPaであった。
【0104】
(比較例2)
140gのポリアミド酸溶液1及び8.3gのフィラー3を混合し、攪拌し、樹脂溶液9(不揮発性成分に対するフィラー3の含有率;30体積%)を調製した。
【0105】
銅箔(電解銅箔、厚み;12μm)の上に樹脂溶液9を約350μmの厚みで塗布したところフィラーの凝集した固形物がコーターギャップ間に詰まった。500μmのギャップへ広げても同様に固形物のつまりが発生した。
【0106】
(参考例1)
実施例1のフィラー1の代わりに7gのフィラー5を用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂溶液10(粘度;28000cps、不揮発性成分に対するフィラー5の含有率;30体積%)を調製した。
【0107】
銅箔(電解銅箔、厚み;12μm)の上に樹脂溶液10を約350μmの厚みで塗布し、130℃で5分間乾燥させて樹脂層を形成した。その後150℃から380℃まで20分間かけて、段階的に熱処理を行い、イミド化を完結し、銅張積層板10を調製した。
銅張積層板10の銅箔をエッチング除去し、樹脂フィルム10(厚み;45μm)を調製した。樹脂フィルム10のCTEは33ppm/K、比誘電率は3.3、誘電正接は0.0030であった。
【0108】
以上の結果をまとめて表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
実施例1〜7、比較例1の結果から、フィラー1〜4を添加することによって、CTEの上昇を抑えながら、誘電率及び誘電正接を低減できることが確認された。比較例2(配合法)では、樹脂液中でフィラー同士が絡み合い凝集が発生し、塗工が不可となった。また、参考例1では誘電正接は低下したが、CTEが著しく上昇した。
【0111】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。