(XはC数1〜20の2価の炭化水素基又はC数1〜20の炭化水素基で置換されてもよい2価の芳香族炭化水素基を示す。YはH、C数1〜5の炭化水素基R又は置換基Zであり、置換基Zは(メタ)アクリロオキシ基およびジカルボン酸由来の2価の残基、エーテル結合を含んでもよい炭素数2〜6の2価の炭化水素基を有する。Yの少なくとも2つは置換基Zである。nは1〜20である。ナフタレン環のHの一部はR
前記(i)成分と前記(ii)成分の合計100質量部に対して、前記(iii)成分を0.1〜10質量部含有することを特徴とする、請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
前記(i)成分と前記(ii)成分の合計100質量部に対して、前記(iv)成分を10〜40質量部含有することを特徴とする、請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の感光性樹脂組成物について詳細に説明する。本発明は、
(i)一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂
(ii)少なくとも1個の重合性不飽和基を有する光重合性モノマーと、
(iii)光重合開始剤と、
を必須成分として含有する感光性樹脂組成物、および当該感光性樹脂組成物を硬化させて得た硬化物に関する。
【0025】
一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂は、ナフトール類の重合物から誘導される2個以上のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させ、得られた重合性不飽和基を有する多価アルコール化合物に、ジカルボン酸類、トリカルボン酸類またはその酸一無水物を反応させて得られる。
【0026】
一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂は、重合性不飽和基とカルボキシル基とを併せ持つため、アルカリ現像型感光性樹脂組成物に優れた光硬化性、良現像性、およびパターニング特性を有する。また、感光性樹脂組成物を硬化物にしたときに、低熱膨張性や耐アルカリ性に寄与することができる。
【0027】
一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の製造方法について詳細に説明する。好ましい実施形態である、一般式(1)において、Yが水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基R又は置換基Zであり、置換基Zは一般式(2)または一般式(3)で表される分子内に重合性二重結合とカルボキシル基を有する置換基であるアルカリ可溶性樹脂を例として示す。上記アルカリ可溶性樹脂は、上記炭化水素基Rのモル数をC
R、Zのモル数をC
Zとしたとき、C
R/C
Zの値は0.05〜2.0であることが好ましく、0.1〜1.5であることがより好ましい。
【0028】
まず、一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂は、ナフトール類の重合物のフェノール性水酸基をグリシジルエーテルに変換した2個以上のグリシジルエーテル基を有する一般式(5)で表されるナフタレン骨格を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる重合性不飽和基を含有する多価アルコール化合物から誘導される。このナフトール骨格を有するエポキシ化合物の製造方法は、例えば、特開2006−160868号公報に記載の製造方法を参考にすることができる。
【0030】
一般式(5)において、Xは炭素数1〜20の2価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基で置換されてもよい2価の芳香族炭化水素基を示す。Xは、具体的には、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−CH(C
2H
5)−、−CH(C
6H
5)−、一般式(6)、一般式(7)および一般式(8)で表される2価の結合基であることが好ましい。ここで、Xは、一般式(6)、一般式(7)、または一般式(8)であることが好ましい。
【0031】
Wは炭素数1〜5の炭化水素基R、またはグリシジル基Gを示し、ただしWの少なくとも2つはグリシジル基Gである。Rのモル数C
R、Gのモル数C
Gとしたとき、C
R/C
Gの値は0.05〜2.0であることが好ましく、0.1〜1.5であることがより好ましい。Rはメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0032】
一般式(5)の樹脂を製造する場合、通常、数値nの異なる分子の混合物として得られるが、平均値としてのnの値は1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜6であることが特に好ましい。
【0033】
さらに、一般式(5)のナフタレン環の水素原子の一部は置換基R
1で置換されていてもよく、一般式(6)〜(8)のベンゼン環の水素原子の一部は置換基R
2で置換されていてもよい。R
1、R
2は独立に炭素数1〜5の炭化水素基、ハロゲン原子またはフェニル基を示す。
【0037】
ナフトール類の重合方法は、一般的なフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂の製造法を参考にすることができるが、Wとして炭化水素基Rを有することを特徴とする一般式(5)の化合物に誘導するための製造方法としては特開2006−160868号公報に記載の方法を参考にすることができる。
【0038】
第一段階として、ナフトール類と架橋剤とを酸性触媒存在下で縮合させる。本発明では、ナフトール類として1−ナフトール及び/又は2−ナフトールを用い、架橋剤としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド化合物;1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(クロロエチル)ベンゼン、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(クロロメチルビフェニル)エーテル等のハロゲン化アルキル化合物;p−キシリレングリコール、p−ジ(ヒドロキシエチル)ベンゼン、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルエーテル等のアルコール類;p−キシリレングリコールジメチルエーテル等の前記アルコール類のジアルキルエーテル類;ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のジビニル化合物を例示することができる。ここで、使用する架橋剤は、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(クロロエチル)ベンゼン、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、p−キシリレングリコール、p−ジ(ヒドロキシエチル)ベンゼン、p−キシリレングリコールジメチルエーテル、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニルであることが好ましい。酸性触媒としては、周知の無機酸、有機酸から適宜選択することができ、例えば塩酸、硫酸等の無機酸、ギ酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸、塩化アルミニウム等のルイス酸、活性白土、ゼオライト等の固体酸等を例示することができる。
【0039】
第二段階として、このナフトール類と架橋剤を反応させて得られた樹脂の水酸基の一部をアルコキシ化する。例えば、第一段階で得られた樹脂を、酸性触媒下でアルコール類と反応させる。用いるアルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール等を挙げることができ、酸性触媒は第一段階で例示した触媒を用いることができる。
【0040】
または、ナフトール類と架橋剤とを酸性触媒存在下で縮合させる際に、ナフトール類として1−ナフトール及び/又は2−ナフトールに加えて、アルコキシナフタレンを併用するという製造方法を用いてもよい。アルコキシナフタレンの例には、1−メトキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、1−エトキシナフタレン、2−エトキシナフタレン、1−プロポキシナフタレン、2−プロポキシナフタレンが含まれる。
【0041】
その後、ナフトール類の重合物のフェノール性水酸基をグリシジルエーテルに変換して、2個以上のグリシジルエーテル基を有する一般式(5)で表されるナフタレン骨格を有するエポキシ化合物を得ることができる。その製造方法は、通常のヒドロキシル基のエポキシ化反応と同様に行うことができる。たとえば、ナフトール類の重合物を過剰のエピクロルヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下に、20〜150℃で、1〜10時間反応させる方法がある。
【0042】
次に、このようなエポキシ化合物とカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物との反応は、公知の方法を使用することができる。たとえば、エポキシ基1モルに対し、1モルのカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物を使用して行う。すべてのエポキシ基にカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させるため、エポキシ基とカルボキシル基の等モルよりも若干過剰にカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物を使用してもよい。カルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物は分子内に一つのカルボキシル基および一つ以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物であり、例えば2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシヘキサン酸、2−メタアクリロイルオキシヘキサン酸などが挙げられる。
【0043】
この反応で得られる反応物は、一般式(9)で表されるようなエポキシ(メタ)アクリレート化合物である。
【0044】
【化9】
(但し、X、nの定義は一般式(5)の化合物と同様であり、Qは水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基、又は一般式(10)または一般式(11)で表される分子内に重合性不飽和基を有する置換基を示す。ただし、Qのうち少なくとも2つは、一般式(10)または一般式(11)で表される置換基である。)
【0045】
【化10】
(但し、R
3は水素原子またはメチル基を示す。R
4はエーテル結合を含んでもよい炭素数2〜6の2価の炭化水素基を示す。M
1は、ジカルボン酸又はその酸一無水物に由来する2価の残基を示す)
【0046】
【化11】
(但し、R
3は水素原子またはメチル基を示す。R
5はエーテル結合を含んでもよい炭素数2〜6の2価の炭化水素基を示す。)
【0047】
このとき使用する溶媒、触媒およびその他の反応条件は、特に制限されない。たとえば、溶媒は、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有することが好ましい。このような溶媒の例には、エチルセロソルブアセテートおよびブチルセロソルブアセテートなどを含むセロソルブ系溶媒;ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを含む高沸点のエーテル系またはエステル系の溶媒;シクロヘキサノンおよびジイソブチルケトンなどを含むケトン系溶媒が含まれる。触媒の例には、テトラエチルアンモニウムブロマイドおよびトリエチルベンジルアンモニウムクロライドなどを含むアンモニウム塩;トリフェニルホスフィンおよびトリス(2、6−ジメトキシフェニル)ホスフィンなどを含むホスフィン類などの公知の触媒が含まれる。
【0048】
一般式(9)で表される化合物の水酸基とジカルボン酸、トリカルボン酸又はそれらの酸一無水物とを反応させることにより、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を得ることができる。通常は、酸一無水物を使用して反応を行うので、酸一無水物として例示する。これらの酸一無水物の各炭化水素残基(カルボキシル基を除いた構造)は、さらにアルキル基、シクロアルキル基、芳香族基等の置換基により置換されていてもよい。飽和鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物が含まれる。また、飽和環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、ヘキサヒドロフタル酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、ヘキサヒドロトリメリット酸等の酸一無水物が含まれる。また、不飽和ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、マレイン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、メチル−3,6−エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸等の酸一無水物が含まれる。さらに、芳香族炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、フタル酸、トリメリット酸等の酸無水物が含まれる。これらのなかで、酸一無水物は、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、トリメリット酸の酸一無水物であることが好ましく、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、フタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、トリメリット酸の酸一無水物であることがより好ましい。なお、これら酸一無水物は1種類で使用することも、2種類以上を併用することもできる。
【0049】
一般式(9)で表される化合物の水酸基と、ジカルボン酸またはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物とを反応させる。一般式(1)で表される化合物を合成する際の反応温度は、20〜120℃であることが好ましく、40〜90℃であることがより好ましい。一般式(1)で表される化合物を合成する際の酸一無水物のモル比は、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価を調整する目的で任意に変更できる。
【0050】
一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価の好ましい範囲は20mgKOH/g以上180mgKOH/g以下であることが好ましく、40mgKOH/g以上140mgKOH/g以下であることがより好ましく、50mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。酸価が20mgKOH/g以上である場合には、アルカリ現像時に残渣が残りにくくなり、180mgKOH/g以下である場合には、アルカリ現像液の浸透が早くなり過ぎないので、剥離現像を抑制することができる。なお、酸価は、例えば、電位差滴定装置「COM−1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N−KOH水溶液で滴定して求めることができる。
【0051】
また、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の、重量平均分子量(Mw)は、1000以上100000以下が好ましく、1000以上20000以下がより好ましく、1000以上6000以下がさらに好ましい。重量平均分子量が1000以上の場合には、アルカリ現像時のパターンの密着性の低下を抑制することができる。また、重量平均分子量が100000以下である場合には、塗布に好適な感光性樹脂組成物の溶液粘度に調整しやすく、アルカリ現像に時間を要しすぎることがない。なお、重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定(HLC−8220GPC、東ソー株式会社製)を用いてポリスチレン換算で求めることができる。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を除いた固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマーを含む)中に、(i)の一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を30wt%以上含有することが好ましく、50wt%以上含有することがより好ましい。
【0053】
感光性樹脂組成物としての特徴を生かすためには、下記(i)〜(iii)成分を必須成分として含有することが好ましく、さらに任意に添加される(iv)成分を必須成分として含有することがより好ましい。
(i)一般式(1)で表される1分子内にカルボキシル基及び重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂、
(ii)少なくとも1個の重合性不飽和基を有する光重合性モノマー、
(iii)光重合開始剤、
(iv)エポキシ化合物
【0054】
このなかで、(ii)成分である少なくとも1個の重合性不飽和基を有する光重合性モノマーの例には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が含まれる。アルカリ可溶性樹脂の分子同士の架橋構造を形成する必要性がある場合には、2個以上の重合性不飽和基を有する光重合性モノマーを用いることが好ましく、3個以上の重合性不飽和基を有する光重合性モノマーを用いることがより好ましい。なお、これらの化合物は、1種類で使用することも、2種類以上を併用することもできる。
【0055】
これら(ii)成分と一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂〔(i)成分〕との配合割合[(i)/(ii)]は、20/80〜90/10であることが好ましく、40/60〜80/20であることがより好ましい。ここで、アルカリ可溶性樹脂の配合割合が十分に多いと、光硬化反応後の硬化物が十分に硬くなる。また、塗膜の酸価が十分に高くなるため、アルカリ現像液に対して十分に溶解し、未露光部において、パターンエッジががたつきにくくなり、シャープになりやすい。反対に、アルカリ可溶性樹脂の配合割合が多すぎないことにより、樹脂に占める光反応性官能基の割合を十分に多くして、光硬化反応による架橋構造を十分に形成させることができる。また、樹脂成分における酸価が高過ぎないため、アルカリ現像液に対する溶解性を所定の範囲に抑制しやすく、かつ、露光部において、目標とするだけの太さの線幅を有するパターンを形成しやすくし、パターンの欠落をより生じにくくすることができる。
【0056】
また、(iii)の光重合開始剤の例には、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2−(O−クロロフェニル)−4,5−フェニルビイミダゾール、2−(O−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル))ビイミダゾール、2−(O−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2−(O−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2,4,5−トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類;2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メチルチオスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等のハロメチル−s−トリアジン系化合物類;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−(4−フェニルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−ベンゾアート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−アセタート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1−オンオキシム−O−アセタート等のO−アシルオキシム系化合物類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンが含まれる。なお、これらの光重合開始剤は、1種類で使用することも、2種類以上を併用することもできる。
【0057】
光重合開始剤の添加量は、(i)アルカリ可溶性樹脂と(ii)光重合性モノマーの合計量100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、2〜5質量部であることがより好ましい。ここで、光重合開始剤の添加量が0.1質量部以上であると感度が十分に高くなり、光重合開始剤の添加量が10質量部以下であるとテーパー形状(現像パターン断面の膜厚方向形状)がシャープにならないで裾を引いた状態になるハレーションが起こりにくくなる。さらに、後工程で高温に暴露した場合に分解ガスが発生する可能性も低くなる。
【0058】
また、(iv)のエポキシ化合物は、エポキシ樹脂等として市販されている公知の化合物を特に制限なく使用することができる。エポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む重合体、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸[(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル]に代表される脂環式エポキシ化合物、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えば「EHPE3150」、株式会社ダイセル製)、フェニルグリシジルエーテル、p−ブチルフェノールグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルイソシアヌレート、エポキシ化ポリブタジエン(例えば「NISSO−PB・JP−100」、日本曹達株式会社製)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物が含まれる。これらの成分は、エポキシ当量が100〜300g/eqであり、かつ、数平均分子量が100〜5000の化合物であることが好ましい。(iv)成分は1種類の化合物のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。アルカリ可溶性樹脂の架橋密度を上げる必要性がある場合は、エポキシ基を少なくとも2個以上を有する化合物が好ましい。
【0059】
(iv)のエポキシ化合物を使用する場合の添加量は、(i)成分と(ii)成分の合計100質量部に対して10〜40質量部であることが好ましい。ここで、エポキシ化合物を添加する1つの目的としては、硬化膜の信頼性を高めるためにパターンニング後硬化膜を形成した際に残存するカルボキシル基の量を少なくすることがあり、エポキシ化合物の添加量を10質量部以上とすることにより、絶縁膜として使用する際の耐湿信頼性をより高めることができる。また、エポキシ化合物の配合量を40質量部以下とすることにより、感光性樹脂組成物中の樹脂成分における感光性基の量を十分に多くして、パターニングするための感度を十分にすることができる。
【0060】
(i)の一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂と、(ii)光重合性モノマーと、(iii)光重合開始剤と、を必須成分として含み、任意成分として(iv)エポキシ化合物を含む、感光性樹脂組成物は、必要により溶剤に溶解させたり、各種添加剤を配合して用いることもできる。すなわち、本発明の感光性樹脂組成物を絶縁材料用途等に使用する場合においては、(i)〜(iv)の他に溶剤を使用することが好ましい。溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類が含まれる。これらを単独または2種類以上を併用して溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。
【0061】
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに(v)分散質を含ませることができる。分散質としては、1〜1000nmの平均粒径(レーザー回折・散乱法粒径分布計または動的光散乱法粒径分布計測定された平均粒径)で分散されたものであれば、感光性樹脂組成物に用いられている公知の分散質を特に制限なく使用することができる。分散質の例には、アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾメチン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、スレン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料等の有機顔料;酸化チタン顔料、複合酸化物顔料等の無機顔料;カーボンブラック顔料等の顔料(実質的に媒質に溶解しない着色剤);アクリル系ポリマー粒子、ウレタン系ポリマー粒子等の有機フィラー;シリカ、タルク、マイカ、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機フィラー;金属または金属酸化物のナノ粒子等が含まれる。
【0062】
これらの(v)分散質は、目的とする感光性樹脂組成物の機能に応じて単独でまたは複数の種類を組み合わせて用いることができる。カラーフィルターのブラックマトリクスの製造に用いられる遮光レジストの例には、カーボンブラック、チタンブラック、黒色有機顔料が含まれる。カラーフィルターの画素の製造に用いられる着色レジストの例には、赤色、橙色、黄色、緑色、青色、紫色の有機顔料が含まれる。プリント配線板の絶縁膜の製造に用いられるソルダーレジストの例には、有機顔料、無機顔料、無機フィラーが含まれる。タッチパネルの前面ガラスの意匠に用いられる加飾レジストの例には、カーボンブラック、チタンブラック、黒色有機顔料、白色顔料が含まれる。高硬度、高屈折率、高耐久性の透明レジストの例には、シリカ、チタニア等の透明フィラーが含まれる。これらの(v)分散質をそれぞれ適宜選定して使用することができる。
【0063】
また、(v)分散質が遮光材である場合の例には、黒色有機顔料、混色有機顔料、黒色無機顔料が含まれる。この場合、(v)分散質(遮光材)は、用途によるが、絶縁性、耐熱性、耐光性および耐溶剤性に優れたものであることが好ましい。ここで、遮光材である黒色有機顔料の例には、ペリレンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、ラクタムブラックが含まれる。遮光材である混色有機顔料の例には、赤、青、緑、紫、黄色、シアニン、マゼンタ等から選ばれる2種以上の顔料を混合して擬似黒色化されたものが含まれる。遮光材である黒色無機顔料の例には、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、チタンブラックが含まれる。これらの(v)分散質は、1種類で使用することも、2種類以上を併用することもできる。
【0064】
なお、(v)成分として使用可能な有機顔料の例には、カラーインデックス名で以下のナンバーのものが含まれるが、これに限定されるものではない。
ピグメント・レッド2、3、4、5、9、12、14、22、23、31、38、112、122、144、146、147、149、166、168、170、175、176、177、178、179、184、185、187、188、202、207、208、209、210、213、214、220、221、242、247、253、254、255、256、257、262、264、266、272、279等
ピグメント・オレンジ5、13、16、34、36、38、43、61、62、64、67、68、71、72、73、74、81等
ピグメント・イエロー1、3、12、13、14、16、17、55、73、74、81、83、93、95、97、109、110、111、117、120、126、127、128、129、130、136、138、139、150、151、153、154、155、173、174、175、176、180、181、183、185、191、194、199、213、214等
ピグメント・グリーン7、36、58等
ピグメント・ブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、80等
ピグメント・バイオレット19、23、37等
【0065】
さらに、その他の分散質として、耐衝撃性、加工時のメッキ金属との密着性等の改良のために公知のゴム成分を添加してもよい。ゴム成分は、現像性を確保するためにカルボキシル基を有する架橋弾性重合体であることが好ましい。ゴム成分の例には、カルボキシル基を有する架橋アクリルゴム、カルボキシル基を有する架橋NBR、カルボキシル基を有する架橋MBSが含まれる。ゴム成分を使用する場合には、一次粒子径が0.1μm以下の平均粒径を有するものを樹脂成分100質量部に対して3〜10質量部で添加することが好ましい。
【0066】
(v)分散質は、予め溶剤に分散剤とともに分散させて分散液としたうえで、感光性樹脂組成物として配合することが好ましい。この場合に使用する溶剤としては、前記本発明の感光性樹脂組成物を溶解する溶剤として例示したもの等を、1種類を使用することも、2種類以上を併用することもできる。
【0067】
分散質分散液を形成する分散質の配合割合については、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して1〜95質量%添加して用いることができる。なお、当該固形分とは、組成物のうち溶媒を除いた成分を意味する。当該固形分には、光硬化後に固形分となる(ii)成分も含まれる。分散質の1〜95質量%の幅広い添加量範囲は、例えばアクリル樹脂粒子、ゴム粒子等の有機質の比重の小さい分散質を用いる場合から、例えば金属粒子や金属酸化粒子といった比重の大きな分散質を用いる場合があるためである。例えば、着色のような目的で分散質を添加する場合は、5〜80質量%であることが好ましい。固形分中5質量%より多くすることで、所望の着色ができ、または所望の遮光性を付与できる等の分散質が付与するべき機能を付与しやすくなる。固形分中80質量%以下とすることで、本来バインダーとなる感光性樹脂の含有量を十分に多くして、現像特性および膜形成能を確保できる。したがって、固形分中の(v)成分は、着色剤(遮光材を含む)の場合には10〜70質量%であることがより好ましく、20〜60質量%であることがさらに好ましい。
【0068】
また、分散質分散液は、分散質を安定的に分散させるために、高分子分散剤等の公知の分散剤を使用することができる。分散剤は、顔料分散に用いられている公知の化合物(分散剤、分散湿潤剤、分散促進剤等の名称で市販されている化合物等)等を特に制限なく使用することができる。分散剤の例には、カチオン性高分子系分散剤、アニオン性高分子系分散剤、ノニオン性高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤(分散助剤)が含まれる。特に、分散剤は、顔料等の分散質への吸着点としてイミダゾリル基、ピロリル基、ピリジル基、一級、二級または三級のアミノ基等のカチオン性の官能基を有し、アミン価が1〜100mgKOH/g、数平均分子量が1千〜10万の範囲にあるカチオン性高分子系分散剤であることが好ましい。この分散剤の配合量は、分散質に対して1〜35質量%であることが好ましく、2〜25質量%であることがより好ましい。なお、樹脂類のような高粘度物質は、一般に分散を安定させる作用を有するが、分散促進能を有しないものは分散剤として扱わない。しかし、分散を安定させる目的で使用することを制限するものではない。
【0069】
このようにして得られた分散質分散液は、(i)成分(分散質分散液を調製する際に(i)成分を共分散させた場合は、残りの(i)成分)、(ii)成分、(iii)成分、任意に添加される(iv)成分と混合し、必要に応じて溶剤を追加して適正な溶液粘度とすることで、分散質を含有する感光性樹脂組成物とすることができる。
【0070】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤、熱重合禁止剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、カップリング剤、界面活性剤等の添加剤を配合することができる。このうち、硬化促進剤としては、例えばエポキシ化合物に通常適用される硬化促進剤、硬化触媒、潜在性硬化剤等として知られる公知の化合物を利用でき、三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類、ジアザビシクロ系化合物等が含まれる。熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤が含まれる。可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。消泡剤およびレベリング剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物等が含まれる。カップリング剤の例には、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランが含まれる。界面活性剤の例には、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0071】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を除いた固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマーを含む)中に、(i)一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂と、(ii)光重合性モノマーと、(iii)光重合開始剤と、任意成分である(iv)エポキシ化合物および/又は(v)分散質と、が合計で70wt%以上含まれることが好ましく、80wt%以上含まれることがより好ましく、90wt%以上含まれることがさらに好ましい。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、全体量に対して10〜80wt%であることが好ましい。
【0072】
また、本発明の塗膜(硬化物)は、例えば、感光性樹脂組成物の溶液を基板等に塗布し、乾燥し、光(紫外線、放射線等を含む)を照射し、これを硬化させることにより得られる。フォトマスク等を使用して光が当たる部分と当たらない部分とを設けて、光が当たる部分だけを硬化させ、他の部分をアルカリ溶液で溶解させることにより所望のパターンの塗膜が得られる。
【0073】
感光性樹脂組成物の塗布・乾燥による成膜方法の各工程は、具体的に例示すると、感光性樹脂組成物を基板に塗布する際には、公知の溶液浸漬法、スプレー法、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコート機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プレベーク)ことにより、被膜が形成される。プレベークはオーブン、ホットプレート等による加熱、真空乾燥またはこれらの組み合わせによって行われる。プレベークにおける加熱温度および加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば、80〜120℃で、1〜10分間行われる。
【0074】
露光に使用される放射線は、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、放射線の波長の範囲は、250〜450nmであることが好ましい。また、このアルカリ現像に適した現像液の例には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の水溶液が含まれる。これらの現像液は樹脂層の特性に合わせて適宜選択されうるが、必要に応じて界面活性剤を添加することも有効である。現像温度は、20〜35℃であることが好ましく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗される。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
【0075】
このようにして現像した後、180〜250℃で、20〜100分間、熱処理(ポストベーク)を行われる。このポストベークは、パターニングされた塗膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプレベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明のパターニングされた塗膜は、以上のフォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。そして、熱により重合または硬化(両者を合わせて硬化ということがある)を完結させ硬化膜パターンとする。このときの硬化温度は160〜250℃であることが好ましい。
【0076】
本発明の感光性樹脂組成物は、従来のものに比べて重合性不飽和基数が多いために光硬化性が向上し、光重合開始剤を増量することなく硬化後の架橋密度を高めることができる。すなわち、厚膜で紫外線または電子線を照射した場合、硬化部は底部まで硬化するため、露光部と未露光部分におけるアルカリ現像液に対する溶解度差がなくなることから、パターン寸法安定性、現像マージン、パターン密着性が向上し、高解像度でパターン形成することができる。そして、薄膜の場合にも、高感度化されたことにより、露光部の残膜量の大幅な改善や現像時の剥離を抑制することができる。
【0077】
本発明の感光性組成物は回路基板作製のためのソルダーレジスト、メッキレジスト、エッチングレジストや、半導体素子を搭載する配線基板の多層化用の絶縁膜、半導体装置の各種絶縁膜、半導体のゲート絶縁膜、感光性接着剤(特にフォトリスグラフィーによるパターン形成後にも加熱接着性能を必要とするような接着剤)等に極めて有用である。
【実施例】
【0078】
以下に、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の実施例等に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例等によりその範囲を限定されるものではない。また、これらの実施例における樹脂の評価は、断りのない限り以下のとおりに行った。
【0079】
[固形分濃度]
実施例1(及び比較例1)中で得られた樹脂溶液、感光性樹脂組成物等(1g)をガラスフィルター〔質量:W
0(g)〕に含浸させて秤量し〔W
1(g)〕、160℃で2時間加熱した後の質量〔W
2(g)〕の値を用いて下記式より算出した。
固形分濃度(質量%)=100×(W
2−W
0)/(W
1−W
0)
【0080】
[酸価]
酸価は、樹脂溶液をテトラヒドロフランに溶解させ、電位差滴定装置「COM−1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N−KOH水溶液で滴定して、固形分1gあたりに必要としたKOHの量を酸価とした。
【0081】
[分子量]
分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)(「HLC−8320GPC」東ソー株式会社製、カラム:TSKgelSuperH2000(2本)+TSKgelSuperH3000(1本)+TSKgelSuperH4000(1本)+TSKgelSuperH5000(1本)(いずれも東ソー株式会社製)、溶媒:テトラヒドロフラン、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(「PS−オリゴマーキット」東ソー株式会社製)換算値として求めた値を重量平均分子量(Mw)とした。
【0082】
また、本実施例で使用する略号は次のとおりである。
NAMMEA−1:1−ナフトールとp−キシリレングリコールジメチルエーテルの反応物(ナフトールアラルキル樹脂)にメタノールを反応させて水酸基の一部をメトキシ化した化合物(水酸基とメトキシ基の合計量に対するメトキシ基の割合は28%)にエピクロルヒドリンを反応させて得られたエポキシ化合物(エポキシ当量320、一般式(5)において、Xが一般式(6)、Wがメチル基(R)およびグリシジル基(G)でありC
R/C
Gの値が0.39)に、さらに2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸を反応させて得られた化合物(エポキシ基とカルボキシル基の等当量反応物)
NAMMEA−2:1−ナフトールとp−キシリレングリコールジメチルエーテルの反応物(ナフトールアラルキル樹脂)にメタノールを反応させて水酸基の一部をメトキシ化した化合物(水酸基とメトキシ基の合計量に対するメトキシ基の割合は28%)にエピクロルヒドリンを反応させて得られたエポキシ化合物(エポキシ当量320、一般式(5)において、Xが一般式(6)、Wがメチル基(R)およびグリシジル基(G)でありC
R/C
Gの値が0.39)に、さらに2−アクリロイルオキシエチルフタル酸を反応させて得られた化合物(エポキシ基とカルボキシル基の等当量反応物)
NAMMEA−3:1−ナフトールとp−キシリレングリコールジメチルエーテルの反応物(ナフトールアラルキル樹脂)にメタノールを反応させて水酸基の一部をメトキシ化した化合物(水酸基とメトキシ基の合計量に対するメトキシ基の割合は28%)にクロロメチルオキシランを反応させて得られたエポキシ化合物(エポキシ当量320、一般式(5)において、Xが一般式(6)、Wがメチル基(R)およびグリシジル基(G)でありC
R/C
Gの値が0.39)に、さらに2−アクリロイルオキシエチルコハク酸を反応させて得られた化合物(エポキシ基とカルボキシル基の等当量反応物)
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA:1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物
SA:コハク酸無水物
TEAB:臭化テトラエチルアンモニウム
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0083】
以下の合成例1〜4は、一般式(1)で表されて、1分子内にカルボキシル基及び重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂の合成例である。また、比較合成例1は一般式(1)とは異なる骨格を有する重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂であり、ビスフェノールA型エポキシ化合物のエポキシアクリレート酸付加物である。
【0084】
[合成例1]
(アルカリ可溶性樹脂の合成)
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中にNAMMEA−1の55%PEGMEA溶液(461.5g)と、THPA(49.1g)と、TEAB(0.90g)と、PEGMEA(32.3g)とを仕込み、120〜125℃で6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)−1を得た。得られた樹脂の固形分濃度は56.4wt%、酸価(固形分換算)は65mgKOH/g、及び分子量(Mw)は1250であった。
【0085】
[合成例2]
(アルカリ可溶性樹脂の合成)
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中にNAMMEA−2の55%PEGMEA溶液(456.8g)と、THPA(49.1g)と、TEAB(0.90g)と、PEGMEA(34.5g)とを仕込み、120〜125℃で6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)−2を得た。得られた樹脂の固形分濃度は56.2wt%、酸価(固形分換算)は65mgKOH/g、及び分子量(Mw)は1250であった。
【0086】
[合成例3]
(アルカリ可溶性樹脂の合成)
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中にNAMMEA−1の55%PEGMEA溶液(483.0g)と、SA(33.8g)と、TEAB(0.95g)と、PEGMEA(21.7g)とを仕込み、120〜125℃で6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)−3を得た。得られた樹脂の固形分濃度は67.9wt%、酸価(固形分換算)は69mgKOH/g、及び分子量(Mw)は2800であった。
【0087】
[合成例4]
(アルカリ可溶性樹脂の合成)
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中にNAMMEA−3の55%PEGMEA溶液(467.9g)と、SA(36.1g)と、TEAB(1.01g)と、PEGMEA(24.4g)とを仕込み、120〜125℃で6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)−4を得た。得られた樹脂の固形分濃度は54.4wt%、酸価(固形分換算)は73mgKOH/g、及び分子量(Mw)は2150であった。
【0088】
[比較合成例1]
(アルカリ可溶性樹脂の合成)
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中にビスフェノールA型エポキシ化合物(エポキシ当量=480)とアクリル酸との反応物の50%PGMEA溶液(442.0g)と、BPDA(20.6g)と、THPA(24.3g)と、TEAB(0.84g)を仕込み、120〜125℃で6時間拡販し、アルカリ可溶性樹脂溶液(i)−5を得た。得られた樹脂の固形分濃度は56.1wt%、酸価(固形分換算)は63mgKOH/gおよび分子量(Mw)は9000であった。
【0089】
次に、感光性樹脂組成物とその硬化物の製造と評価について、実施例1〜4および比較例1に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで、以降の実施例1〜4および比較例1の感光性樹脂組成物の製造で用いた原料および略号は以下のとおりである。
【0090】
(i)−1 :合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂
(i)−2 :合成例2で得られたアルカリ可溶性樹脂
(i)−3 :合成例3で得られたアルカリ可溶性樹脂
(i)−4 :合成例4で得られたアルカリ可溶性樹脂
(i)−5 :比較合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂
(ii) :ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(iii)−1:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM RESINS B.V.社製)
(iii)−2:p,p’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)
(iv):クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN−700−7、エポキシ当量200g/eg、軟化点70℃、日鉄ケミカル&マテリアル社製)
溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0091】
上記の配合成分を表1に示す割合で配合して、実施例1〜4および比較例1の感光性樹脂組成物を調製した。なお、表1中の数値はすべて質量部を表す。
【0092】
【表1】
【0093】
[実施例1〜4及び比較例1の感光性樹脂組成物の評価]
表1に示した感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)上にポストベーク後の膜厚が30μmとなるように塗布し、110℃で5分間プリベークして塗布板を作製した。その後、パターン形成用のフォトマスクを通して500W/cm
2の高圧水銀ランプで波長365nmの紫外線を照射し、露光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗板を0.8wt%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液、23℃のシャワー現像にてパターンが現われ始めた時間からさらに30秒間の現像を行い、さらにスプレー水洗を行い、塗膜の未露光部を除去した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間加熱硬化処理を行って、実施例1〜4及び比較例1に係る硬化膜を得た。
【0094】
上記硬化膜について、以下に示す評価を行った。その結果を表2に示す。
【0095】
(密着性および残渣)
硬化膜の細線パターン密着性を光学顕微鏡「ECLIPSE LV100」(株式会社Nikon製)で確認した。
【0096】
(密着性評価基準)
○:L/S(ライン幅/スペース幅)が30μm/30μm以上のパターンが形成されているもの
×:L/S(ライン幅/スペース幅)が30μm/30μm未満のパターンが形成されていないもの
【0097】
(残渣評価基準)
○:L/S(ライン幅/スペース幅)が30μm/30μm以上のパターンにおいてパターン間に残渣がないもの
×:L/S(ライン幅/スペース幅)が30μm/30μm以上のパターンにおいてパターン間に残渣が目立つもの
【0098】
(直線性)
硬化膜の細線パターン直線性を光学顕微鏡「ECLIPSE LV100」(株式会社Nikon製)で確認した。
【0099】
(直線性評価基準)
○:ガラス基板に対する細線パターンの剥離や欠け、パターン端部のギザツキが認められない
×:ガラス基板に対する細線パターンの剥離や欠け、パターン端部のギザツキが認められる
【0100】
(テーパー形状)
テーパー形状は、1〜100μmのライン&スペースパターンを設けたネガ型フォトマスクを使用し、露光、現像したパターンを、走査型電子顕微鏡「VE−7800」(株式会社KEYENCE製)を用いて観察した。
【0101】
(テーパー形状評価基準)
◎:断面形状が垂直に近い
○:断面形状が台形であり、パターン側面とガラス基板とで形成するパターン端部の内角が60°〜90°である
△:断面形状がなだらかで丸い
×:断面形状が台形であり、パターン側面とガラス基板とで形成するパターン端部の内角が90°より大きい
【0102】
【表2】
【0103】
実施例1〜4で調製したアルカリ可溶性樹脂を含む感光性樹脂組成物は、表2で示されるように、高い密着性と残渣の抑制を両立し、テーパー形状に優れる硬化膜パターン形成が可能であることがわかる。
【0104】
以上より、本発明のアルカリ可溶性樹脂を含む感光性樹脂組成物は、回路基板作製のためのソルダーレジスト、メッキレジスト、エッチングレジストを始め、液晶表示装置、有機EL表示装置、μLED表示装置、イメージセンサー等のカラーフィルターや遮光膜等のフォトリソグラフィー法により形成される、優れた寸法精度とパターンの断面形状を有する硬化膜の形成が必要な場合に適用することができる。