【解決手段】センサ装置10は、基板20と、基板20及び基板20に設けられた支持枠31と各々間隙G1,G2を有して配設されるセンサ部32と、支持枠31に一端が接合され、センサ部32に他端が接合されてセンサ部32を支持する梁部33A,33Bであって、一般部331Aの梁幅よりも支持枠31との接合部331Bの梁幅を大きくした梁部33A,33Bと、を含む。
前記一対の梁部のうち一方の梁部の前記センサ部と接合するセンサ部側接合部は、他方の梁部の前記支持枠に接合する前記接合部に最も近接して配設される請求項8に記載のセンサ装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、開示の技術のセンサ装置の一例として、第1実施形態の赤外線センサ10について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。
図1は本開示の第1実施形態に係る赤外線センサ10の一例を示す斜視図、
図2は本開示の第1実施形態に係る赤外線センサ10の一例を示す断面図、
図3は本開示の第1実施形態に係る赤外線センサの一例を示す上面図である。なお、
図2における図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
【0012】
第1実施形態の赤外線センサ10は、
図1に示されるように、外形は、略直方体であり、シリコン(Si)からなる基板20と、基板20の上端面に配設された膜部30とを備えている。基板20は、
図2に示されるように、上方が開放した凹部21を有しており、凹部21は、底面21Aと、上方に向かうにつれて開口径が大きくなる側面21Bとから形成されている。基板20は、後述するセンサ部32との間に間隙G1を有している。
【0013】
膜部30は、
図2に示されるように、基板20の上端面に立設された支持枠31と、支持枠31と間隙G2を有して配設されるセンサ部32と、間隙G2に位置し、支持枠31とセンサ部32とを接続する一対の梁部33A,33Bとを備えている。梁部33の上面とセンサ部32の上面の間には段差が形成されている。また、支持枠31は、平面視で基板20と略同形状をなす壁状の外枠であり、センサ部32との間に間隙G2を有している。
【0014】
センサ部32は、赤外線を受光して吸収する赤外線集光膜であり、略正方形状に形成されている。センサ部32は梁部33によって支持枠31に固定されている。
【0015】
梁部33A,33Bは、
図3に示されるように、センサ部32を介して対向する一対の梁部であり、各梁部33A,33Bは、支持枠31に一端が接合され、センサ部32に他端が接合されてセンサ部32を支持する。梁部33A,33Bは、各々、支持枠31からセンサ部32に至るまでに1つの屈曲部330を有し、屈曲部330は、センサ部32の角部に対応する位置において略直角に折れ曲がることにより形成されている。なお、屈曲部330は、内側及び外側の角部が各々面取りされている。梁部33A,33Bは、支持枠31から屈曲部330まで延びる第1梁331と、屈曲部330と、屈曲部330からセンサ部32までの延びる第2梁332とで構成されている。
【0016】
図4は
図3の主要部拡大図である。梁部33A,33Bの第1梁331は、
図4に示されるように、一般部331Aの梁幅よりも支持枠31との接合部331Bの梁幅が大きく形成されている。第1実施形態においては、接合部331Bは、梁の両側面が一定の勾配をもって傾斜し、支持枠31に向かうに従って梁断面が大きくなるハンチHと、ハンチHと支持枠31との間において梁の両側面が直線状に延びる直線部Sとを有する。また、支持枠31と直線部Sとの接合部分の隅部にはR部34が設けられている。
【0017】
また、
図3に示されるように、一対の梁部33A,33Bのうち一方の梁部のセンサ部32と接合するセンサ部側接合部332Bは、他方の梁部の支持枠31に接合する接合部331Bに最も近接して配設されている。すなわち、梁部33Aのセンサ部側接合部332Bは、梁部Bの接合部331Bと対向し、梁部33Bのセンサ部側接合部332Bは、梁部Aの接合部331Bと対向する。
【0018】
(製造方法)
次に上記構成の赤外線センサ10の製造方法について説明する。基板20を形成する基板としては、シリコン単結晶基板が用いられる。このシリコン単結晶基板の一表面側に30nm程度の窒化膜を成膜し、成膜した窒化膜上に化学気相成長(Chemical Vapor Deposition、以下CVDと称する)法などにより、ポリシリコン膜を形成する。次にフォトリソグラフィ技術を使用し、フォトレジストをマスクにしてボロンをポリシリコン膜中に選択的に注入し、その後フォトレジストを剥離する。そして、再度フォトレジストをマスクにしてリンをポリシリコン膜中に選択的に注入し、その後フォトレジストを剥離する。
【0019】
次に、フォトリソグラフィ技術を使用し、フォトレジストをマスクにしてポリシリコン膜をドライエッチングし、その後フォトレジストを剥離することによって、サーモパイルを構成する熱電対に相当するポリシリコン(
図2の符号35参照)を残す。そして、ポリシリコン膜上に、500nm程度のプラズマ酸化膜を形成し、フォトレジストをマスクにしてプラズマ酸化膜をドライエッチングすることにより、コンタクトを形成し、その後フォトレジストを剥離する。コンタクトを形成した後で、アルミ(AI)配線を形成する。
【0020】
次に、窒化膜を形成し、フォトレジストをマスクにして窒化膜をドライエッチングすることにより、ボンディングパッドを形成し、その後フォトレジストを剥離する。さらに、フォトレジストをマスクにして、センサ部32の下方に位置するシリコン単結晶基板をエッチングするためのエッチングホールを形成する。そのため、窒化膜、酸化膜、窒化膜の順で積層された積層膜を形成してドライエッチングし、その後、フォトレジストを剥離する。
【0021】
次に、保護酸化膜を形成し、フォトレジストをマスクにしてエッチングホールを形成するために保護酸化膜をドライエッチングする。そして、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH:Tetramethylammonium hydroxide)を主体とするエッチング液に浸漬することにより、センサ部32の下方に間隙G1を形成する。そして、洗浄後に、保護酸化膜を剥離して乾燥させる。以上により、赤外線センサ10が製造される。
【0022】
なお、第1実施形態においては、上記のようにして赤外線センサ10を形成したが、本開示の技術はこれに限られず、CVD法、フォトリソグラフィ技術、及びエッチング技術等の公知の技術を使用して製造することができる。
【0023】
(実施例)
第1実施形態の赤外線センサ10において、R部34の半径Rを2μm、直線部Sの長さD1を2μm、ハンチHの長さD2を6μm、直線部Sの梁幅を5.4μm、一般部331Aの梁幅を3.8μmとした赤外線センサ10を製造した。この赤外線センサ10では、
図9に示される一般部331AとR部34のみを設けただけの構造、すなわち直線部SとハンチHが設けられていない構造よりも約70%耐衝撃性が向上することが分かった。また、
図9に示される構造、すなわち直線部SとハンチHが設けられていない構造において、R部34の半径Rを6μmとした場合には、第1実施形態の上記赤外線センサ10よりも耐衝撃性が下がることが分かった。これにより、梁部33A,33Bの接合部331Bに、直線部SとハンチHを設ける構造は、耐衝撃性向上に有効な手段であるといえる。一方、第1実施形態の上記赤外線センサ10と直線部SとハンチHが設けられていない構造の赤外線センサとでは、基板20とセンサ部32との間の温度変化量を比較すると、どちらもほぼ同じであった。これにより、どちらも感度は同じであるといえる。
【0024】
次に、直線部Sの長さD1とハンチHの長さD2との組み合わせについて検証した。
図5は直線部SとハンチHの長さの比(以下、直線部:ハンチ比という)と応力との関係を示すグラフである。横軸が示す直線部:ハンチ比はハンチHの長さD2に対する直線部Sの長さD1の割合を示す値であり、直線部:ハンチ比が大きくなるにつれて、直線部Sの長さD1がハンチHの長さD2よりもより長くなることを示す。また、縦軸が示す標準化応力(a.u.:Arbitraty Unit)は、支持枠31と梁部33A,33Bとの接合部分に及ぼされる応力であり、任意単位で示される。また、縦軸が示す温度変化率は、直線部:ハンチ比2.50を基準とした場合の、基板20とセンサ部32との間の温度変化量の変化率を示す。なお、
図5中、実線は標準化応力の推移を表し、点線は温度変化率の推移を表す。
【0025】
図5に示されるように、直線部:ハンチ比が大きくなるにつれて、すなわち直線部Sの長さD1がハンチHの長さD2よりも長くなるにつれて、支持枠31と梁部33A,33Bとの接合部分に及ぼされる応力が大きくなることがわかる。また、直線部Sの長さD1がハンチHの長さD2よりも長くなるにつれて、温度変化が小さくなるので、センサ部32から熱が逃げ易い、すなわち梁部33A,33Bの熱伝導率が大きいことを表している。
図5においては、直線部:ハンチ比が1.00程度である場合に、基板20とセンサ部32との間の温度変化量を十分に保ちつつ耐衝撃性の向上を図れる効果が得られた。ただし、実際は、赤外線センサ10の全体の構造に合わせて直線部:ハンチ比を決定することが望ましい。
【0026】
(作用効果)
一般的に赤外線センサでは、外力等の衝撃により梁部とセンサ部が振動し易く、支持枠31に近い梁部33A,33Bすなわち接合部331Bに応力が集中する。第1実施形態の赤外線センサ10の構成によれば、梁部33A,33Bは一般部331Aの梁幅よりも支持枠31との接合部331Bの梁幅の方が大きく形成されているので、応力が集中する箇所のみが補強される。そのため、梁部33A,33Bの梁幅を全て大きくした場合と比較して、梁部33A,33Bの梁幅の増加を抑えることができるので、熱伝導率が大きくなるのを防止でき、センサ部32で得た熱が逃げてしまうのを抑制することができる。これにより熱伝導による感度の低下を抑止することができる。また、従来と比較して曲線部すなわちR部34の曲げ半径を大きくしていないので、センサ部32の面積を減らす必要がない。従ってセンサ部32の面積減少による感度の低下を防止することができる。以上により、上記構成によれば、赤外線センサ10において感度の低下を抑制しつつ、耐衝撃性を向上させることができる。
【0027】
また、第1実施形態の赤外線センサ10の接合部331BはハンチHを有している。このようにハンチHを設けることで応力の流れがスムーズとなる。
【0028】
また、第1実施形態の赤外線センサ10は、支持枠31と梁部33A,33Bの接合部分の隅部にR部34が設けられている。これにより、隅部にR部34を設けない態様よりも、隅部における応力を分散させることができる。
【0029】
また、第1実施形態の赤外線センサ10は、支持枠31からセンサ部32に至るまでに1つの屈曲部330を有する。このように、センサ部32を支持する梁部33A,33Bの一部に1つの屈曲部330を設けることにより、例えば特許文献1に記載された複数の屈曲部を設けた場合のように梁部が2重にならない。そのため、センサ部32の面積が小さくなるのを防止することができる。
【0030】
また、第1実施形態の赤外線センサ10は、センサ部32を介して対向する一対の梁部33A,33Bを備える。これにより、梁部33A,33Bはセンサ部32を両側から支持することになるので、一対の梁部33A,33Bによってセンサ部32を安定して支持することができる。
【0031】
また、第1実施形態の赤外線センサ10は、一対の梁部33A,33Bのうち一方の梁部のセンサ部32と接合するセンサ部側接合部332Bは、他方の梁部の支持枠31に接合する接合部331Bに最も近接して配設されている。これにより、梁部33A,33Bをより長く形成することができるので、熱抵抗をより大きくすることができ、熱伝導率が大きくなるのを防止することができる。
【0032】
(第1実施形態の変形例)
次に上記第1実施形態の赤外線センサ10の変形例について説明する。
図6は本開示の第1実施形態の変形例である赤外線センサ10Aの一例を示す主要部上面図である。なお、
図6において
図4と同一の箇所は同符号で示して説明は省略し、異なる箇所についてのみ詳細に説明する。また、製造方法はマスクのパターン形状を変更したのみで、上記第1実施形態の赤外線センサ10と同じであるため、ここでの説明は省略する。
【0033】
図6で示される赤外線センサ10Aは、接合部331BがハンチHのみを有している。すなわち、接合部331Bが直線部Sを有しておらず、この点において
図4の赤外線センサ10とは異なっている。
【0034】
(変形例の実施例)
上述した変形例の赤外線センサ10Aにおいて、R部34の半径Rを2μm、ハンチHの長さD2を8μm、ハンチHの一番広い梁幅を5.4μm、一般部331Aの梁幅を3.8μmとした赤外線センサ10Aを製造した。この赤外線センサ10Aでは、第1実施形態の赤外線センサ10と同様に、
図9に示される直線部SとハンチHが設けられていない構造よりも、約70%耐衝撃性が向上することが分かった。また、基板20とセンサ部32との間の温度変化量を比較すると、
図6に示される変形例の赤外線センサ10Aの方が、
図4に示される第1実施形態の赤外線センサ10よりも僅かに大きくなった。
【0035】
(変形例の作用効果)
変形例の赤外線センサ10Aにおいては、
図4に示される第1実施形態の赤外線センサ10と比較して直線部Sがない分だけ、梁幅が狭くなる。梁幅が狭くなると、熱伝導率が小さくなるので、センサ部32で吸収された熱が梁部33A,33Bに逃げ難くなる。そのため、本変形例の赤外線センサ10Aの方が、第1実施形態の赤外線センサ10よりも温度変化量が大きくなる。温度変化量により得られた電気信号を後で増幅率の非常に大きな回路で増幅させることを考えると、僅かな差であっても温度変化量が大きい本変形例の赤外線センサ10Aの方が、赤外線センサ10の量産性に大きく貢献することが考えられる。このことから、本変形例においては、耐衝撃性の向上を図りながら十分な温度変化量を得ることができる。
【0036】
なお、上述した実施形態において、センサ部32は上面が略正方形の直方体で形成されているが、本開示の技術はこれに限られない。例えば、上面が略長方形、略円形、略楕円形、及び多角形等であってもよい。この場合、支持枠31の形状は、センサ部32の形状に合わせた形状とすることが好ましい。
【0037】
また、上述した実施形態において、基板20を形成するシリコン単結晶基板に窒化膜を成膜したが、本開示の技術はこれに限られず、例えば酸化膜等を成膜してもよい。
【0038】
また、上記実施形態において、一対の梁部33A,33Bのうち一方の梁部のセンサ部32と接合するセンサ部側接合部332Bは、他方の梁部の支持枠31に接合する接合部331Bに最も近接して配設されているが、本開示の技術はこれに限られない。例えばセンサ部側接合部332Bが、センサ部32の一辺の中央に設けられていてもよいし、中央よりも接合部331Bから離れる側に設けられていてもよい。ただし、梁部33A,33Bの熱抵抗をより大きくするためには、梁部33A,33Bをより長く形成することが好ましい。
【0039】
(第2実施形態)
次に第2実施形態の赤外線センサ10Bについて説明する。上述した第1実施形態、及び第1実施形態の変形例の赤外線センサ10,10Aにおいては、基板20にエッチングを施すことにより、基板20とセンサ部32との間の間隙G1を形成したが、本開示の技術はこれに限られない。例えばアンカー構造を採用することにより、基板20とセンサ部32との間の間隙G1を形成することができる。
図7は本開示の第2実施形態に係る赤外線センサ10Bの一例を示す断面図、
図8は本開示の第2実施形態に係る赤外線センサ10Bの一例を示す主要部上面図である。なお、
図8の点線は、
図7の断面に相当する箇所を示している。また、
図7における図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
【0040】
第2実施形態の赤外線センサ10Bは、
図7及び
図8に示されるように、基板20の上面には、2つの四角柱状のアンカー構造40Aがセンサ部32を挟んで対角に対向して立設されており、各アンカー構造40Aには、支持枠41が固定されている。第2実施形態において、支持枠41は、枠の一部が取り除かれて、センサ部32を挟んで対角に対向して位置する一対の直方体状の支持体41A,41Bで構成されている。
【0041】
(第2実施形態の製造方法)
次に上記構成の赤外線センサ10Bの製造方法について説明する。
図9は本開示の第2実施形態に係る赤外線センサ10Bのエッジング処理前の一例を示す断面図である。基板20を形成する基板としては、シリコン単結晶基板が用いられる。このシリコン単結晶基板の一表面側に酸化膜等の絶縁膜40を形成し、その上に金属を堆積させることにより犠牲層40Bを形成する(
図9参照)。次に、犠牲層40Bの上に30nm程度の窒化膜を成膜し、第1実施形態と同様の方法により、支持枠41すなわち支持体41A,41B、センサ部32、及び梁部33A,33Bを形成する。また、犠牲層40Bをエッチングすることによって、アンカー構造40Aを形成する。これによりアンカー構造40Aによって、センサ部32と絶縁膜40との間に間隙G1が形成される。
【0042】
(第2実施形態の作用効果)
第2実施形態の赤外線センサ10Bの構成によれば、第1実施形態の赤外線センサ10と同様に、梁部33A,33Bは一般部331Aの梁幅よりも支持枠31との接合部331Bの梁幅の方が大きく形成されている。従って、第2実施形態の赤外線センサ10Bは、第1実施形態の赤外線センサ10と同様の効果を得ることができる。
【0043】
なお、第2実施形態においては、支持枠41は一対の支持体41A,41Bで構成されているが、本開示の技術はこれに限られず、例えば第1実施形態の支持枠31と同様に梁部33A,33Bを囲む枠で形成してもよい。
【0044】
また、第2実施形態の赤外線センサ10Bにおいても、第1実施形態の赤外線センサ10と同様に、梁部33A,33Bの接合部331Bを、直線部Sを除いたハンチHのみで形成した変形例を適用することができる。
【0045】
なお、上述した実施形態において、センサ装置として赤外線センサ10を一例として説明したが、本開示のセンサ装置は赤外線センサ10に限られない。センサ部が梁部によって支持枠に支持される構造を有するセンサであれば、ガスセンサ、風向センサ、及び風速センサ等に適用することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。