【解決手段】(A)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(B)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーと、(C)下記(i)〜(iii)を満足するシロキサンエポキシ化合物と、(D)光重合開始剤とを含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
Si-NMRスペクトルにおいて、−47ppm〜−52ppmにシグナルを示す下記の構造T1、−55ppm〜−61ppmにシグナルを示す下記の構造T2及び−62ppm〜−72ppmにシグナルを示す下記の構造T3を有し、シグナルの面積比は、T1:T2:T3=0〜1:1〜10:1〜100であること。
固形分の全質量に対して、前記シロキサンエポキシ化合物の固形分含有量が3質量%以上25質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
シロキサン骨格を含まず且つエポキシ基又は重合性不飽和結合を有する非シロキサン型化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物は、所定の(A)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、(B)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、(C)エポキシ化合物及び(D)光重合開始剤を含有する。また、当該感光性樹脂組成物は、界面活性剤、溶媒等を含有していてもよい。以下、これらの成分の詳細を順に説明する。
【0014】
<(A)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂>
(A)成分の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、分子内に重合性不飽和基と酸性基とを有する樹脂であれば特に制限なく用いることができる。ここで、重合性不飽和基の代表的な例としてはアクリル基又はメタクリル基があり、酸性基の代表的な例としてはカルボキシ基がある。
【0015】
この重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の好ましい重量平均分子量(Mw)と酸価の範囲は、樹脂の骨格によって異なるが、Mwは2000〜50000であることが好ましく、酸価は30〜120mgKOH/gであることが好ましい。Mwが2000未満の場合には、アルカリ現像時のパターンの密着性が低下するおそれがあり、Mwが50000を超える場合には、現像性が著しく低下し、適正な現像時間の感光性樹脂組成物を得ることができなくなるおそれがある。また、酸価の値が30より小さい場合には、アルカリ現像時に残渣が残りやすくなり、酸価の値が120より大きくなる場合には、アルカリ現像液の浸透が早くなりすぎ、所望する溶解現像とならず剥離現像がおきてしまうおそれがある。なお、Mwは2000〜25000であること、酸価は40〜110mgKOH/gであることがより好ましい。なお、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
(A)成分の好ましい第一の例としては、エポキシ基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸(これは「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」の意味である)とを反応させ、得られたヒドロキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物に、(I)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物及び/又は(II)テトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物である。エポキシ(メタ)アクリレート酸付加物へと誘導されるエポキシ基を2個以上有する化合物としては、ビスフェノール型エポキシ化合物やノボラック型エポキシ化合物を挙げることができる。
【0017】
ビスフェノール型エポキシ化合物は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させて得られる2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物である。この反応の際には一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、ビスフェノール骨格を2つ以上含むエポキシ化合物を含んでいる。この反応に用いられるビスフェノール類の例には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン、4,4'−ビフェノール、3,3'−ビフェノール等が含まれる。この中でも、フルオレン−9,9−ジイル基を有するビスフェノール類が特に好ましい。
【0018】
エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(I)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、鎖式炭化水素ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸の酸一無水物、脂環式ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸の酸一無水物、又は芳香族ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸の酸一無水物等が使用される。ここで、鎖式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物が含まれ、これらに任意の置換基が導入されたものも含まれる。また、脂環式ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸等の酸一無水物が含まれ、これらに任意の置換基が導入されたものも含まれる。また、芳香族ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物の例には、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の酸一無水物が含まれ、これらに任意の置換基が導入されたものも含まれる。
【0019】
また、エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(II)テトラカルボン酸の酸二無水物としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物又は芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸等の酸二無水物が含まれ、さらには、これらに任意の置換基が導入されたものも含まれる。また、脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸等の酸二無水物が含まれ、さらには、これらに任意の置換基が導入されたものも含まれる。さらに、芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸等の酸二無水物が含まれ、さらには、これらに任意の置換基が導入されたものも含まれる。
【0020】
エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(I)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸無水物と(II)テトラカルボン酸の酸二無水物とのモル比(I)/(II)は、0.01〜10.0であることが好ましく、0.02以上3.0未満であることがより好ましい。モル比(I)/(II)が上記範囲を逸脱すると、良好な光パターニング性を有する感光性樹脂組成物とするための最適分子量が得られないおそれがある。なお、モル比(I)/(II)が小さいほど分子量は大きくなり、アルカリ溶解性は低下する傾向にある。
【0021】
エポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、既知の方法、例えば、特開平8−278629号公報や特開2008−9401号公報等に記載の方法により製造することができる。まず、エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させる方法の例には、エポキシ化合物のエポキシ基と等モルの(メタ)アクリル酸を溶剤中に添加し、触媒(トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、2,6−ジイソブチルフェノール等)の存在下、空気を吹き込みながら90〜120℃に加熱・攪拌して反応させる方法がある。次に、反応生成物であるエポキシアクリレート化合物の水酸基に酸無水物を反応させる方法の例には、エポキシアクリレート化合物と酸二無水物および酸一無水物の所定量を溶剤中に添加し、触媒(臭化テトラエチルアンモニウム、トリフェニルホスフィン等)の存在下、90〜130℃で加熱・攪拌して反応させる方法がある。この方法で得られたエポキシアクリレート酸付加物は一般式(1)の骨格を有する。
【0022】
【化5】
〔式(1)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を表し、R
5は、水素原子又はメチル基を表し、Aは、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、フルオレン−9,9−ジイル基又は直結合を表し、X
1は4価のカルボン酸残基を表し、Y
1及びY
2は、それぞれ独立して水素原子又は−OC−Z−(COOH)
m(但し、Zは2価又は3価カルボン酸残基を表し、mは1又は2の数を表す)を表し、nは1〜20の整数を表す。〕
【0023】
(A)成分である重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の好ましい別の例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体で(メタ)アクリル基とカルボキシル基を有する樹脂が含まれる。上記樹脂は、例えば、第一ステップとしてグリシジル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル酸エステル類を溶剤中で共重合させて得られた共重合体に、第二ステップとして(メタ)アクリル酸を反応させ、第三ステップでジカルボン酸又はトリカルボン酸の無水物を反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂である。これら共重合体の中でも好ましく用いることができる例については、特願2017−33662に具体的に示されているものを参考にできる。このような(メタ)アクリル基とカルボキシル基を有する樹脂(共重合体)を得るための別の方法としては、第一ステップとして(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルを溶剤中で共重合させて得られた共重合体に、第二ステップとしてグリシジル(メタ)アクリレートを反応させ、第三ステップでジカルボン酸又はトリカルボン酸の無水物を反応させるという方法も可能である。
【0024】
もう1つの別の例としては、第一成分として分子中にエチレン性不飽和結合を有するポリオール化合物と、第二成分として分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物と、第三成分としてジイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタン化合物が含まれる。この系統の樹脂としては特開2017−76071号公報に示されているものを参考とすることができる。
【0025】
本発明においては、これらの(A)成分の中でも、第一の例として示したエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物を用いることが好ましく、より好ましくは、上記一般式(1)で示されるものである。
【0026】
<(B)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー>
(B)成分における少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、エチレン性二重結合を有する化合物として(メタ)アクリル基を有する樹枝状ポリマー等が含まれる。これらのモノマーの1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、当該光重合性モノマーは、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の分子どうしを架橋する役割を果たすことができるものであり、この機能を発揮させるためにはエチレン性二重結合を3個以上有するものを用いることが好ましい。また、モノマーの分子量を1分子中の(メタ)アクリル基の数で除したアクリル当量が50〜300であることが好ましく、アクリル当量は80〜200であることがより好ましい。なお、(B)成分は遊離のカルボキシ基を有しない。
【0027】
エチレン性二重結合を有する化合物として(メタ)アクリル基を有する樹枝状ポリマーの例としては、多官能(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリレート基の中の炭素-炭素二重結合の一部に多価メルカプト化合物を付加して得られる樹枝状ポリマーを例示することができる。具体的には、一般式(2)の多官能(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリレートと一般式(3)の多価メルカプト化合物を反応させて得られる樹枝状ポリマーなどが含まれる。
【0029】
ここで、R
6は水素原子またはメチル基を表し、R
7はR
8(OH)
pのp個のヒドロキシル基のうち1個のヒドロキシル基を式中のエステル結合に供与した残り部分を表し、好ましいR
8(OH)
pとしては、炭素数2〜8の非芳香族の直鎖又は分枝鎖の炭化水素骨格に基づく多価アルコールであるか、当該多価アルコールの複数分子がアルコールの脱水縮合によりエーテル結合を介して連結してなる多価アルコールエーテルであるか、又はこれらの多価アルコール又は多価アルコールエーテルとヒドロキシ酸とのエステルである。pおよびqは独立に2〜20の整数を表すが、p≧qである。
【0031】
ここで、R
9は単結合又は2〜6価のC1〜C6の炭化水素基であり、rはR
9が単結合であるときは2であり、R
9が2〜6価の基であるときは2〜6の整数を表す。
【0032】
一般式(2)で示される多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。これらの化合物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
一般式(3)で示される多価メルカプト化合物の具体例には、トリメチロールプロパントリ(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリ(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールトリ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトプロピオネート)等が含まれる。これらの化合物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
ここで、上記(A)成分と(B)成分との配合割合[(A)/(B)]については、20/80〜90/10であることが好ましく、40/60〜70/30であることがより好ましい。ここで、(A)成分の配合割合が少ないと、光硬化反応後の硬化物が脆くなり、また、未露光部において塗膜の酸価が低いためにアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターンエッジががたつきシャープにならないといった問題が生じる。反対に、(A)成分の配合割合が上記範囲より多くなると、光反応成分((A)成分+(B)成分) に占める光反応性官能基の割合が少なく光硬化反応による架橋構造の形成が十分でなくなるおそれがある。
【0035】
<(C)エポキシ化合物>
本発明における(C)成分のエポキシ化合物は、以下に示すシロキサン由来の構造を有するシロキサンエポキシ樹脂である。
ここで、
29Si-NMRスペクトルにおける含ケイ素結合単位TおよびDの化学シフトは、T単位:−45ppm〜−80ppm、D単位:0ppm〜−40ppmの範囲に観察されるところ、本発明の(C)成分のエポキシ化合物においては、T単位として、−47ppm〜−52ppm、−55ppm〜−61ppm、−62ppm〜−72ppmの各範囲にシグナルを示すものであり、これらはそれぞれ、下記の構造T1(−47ppm〜−52ppm)、T2(−55ppm〜−61ppm)およびT3(−62ppm〜−72ppm)の含ケイ素結合単位に由来するシグナルを表すものである。
【0036】
【化8】
〔但し、Rは水素基、メチル基、エチル基、フェニル基であり、Xは、次の(a)又は(b)であって、同一であっても異なっていてもよいが、各構造において少なくとも1つのXは(a)である。このXについては後述する。
(a)3,4−エポキシシクロヘキシル基、又は、炭素数1〜6の有機基の末端に3,4−エポキシシクロヘキシル基を有する基
(b)炭素数1〜6の有機基〕
【0037】
この(C)成分は、一般的なシロキサン樹脂でも観測されうるT3構造を示すシグナルに加えて、上記のT2構造及びT1構造を含有するところに特徴がある。T3構造に加えて、このようなT2及びT1構造も有することにより、T3構造に由来する耐熱性や耐薬品性を具備するとともに、有機溶剤への溶解性や他の樹脂と併用する場合の相溶性を向上させることが可能になり、硬化物の要求特性を幅広く設計することができるし、観光性樹脂組成物の使用する様々な加工プロセスに適用することも可能となる。そして、これらの構造T1〜T3については、そのシグナルの面積比が、T1:T2:T3=0〜1:1〜10:1〜100、好ましくは、0〜1:1〜10:1〜50であることがよい。
【0038】
さらに、(C)成分は、上記のT構造に加えて、
29Si-NMRスペクトルにおいて、−9ppm〜−13ppmにシグナルを示す下記の構造D1と−15ppm〜−24ppmにシグナルを示す下記の構造D2とを含有することが好ましい。このような所定のD1構造及びD2構造を持つことにより、有機溶剤やその他のエポキシ樹脂等との相溶性が良好になる点で好ましい。
【化9】
〔構造D1〜D2中、Rは水素基、メチル基、エチル基又はフェニル基であり、Yは、前記の(a)又は(b)であって、各構造において同一であっても異なっていてもよい。〕
【0039】
さらに、T構造とD構造のシグナルの面積比としては、(T1+T2+T3):(D1+D2)=10〜1:5〜0であることがよい。硬化物の低吸湿性の観点から、より好ましくは(T1+T2+T3):(D1+D2)=10〜1:2〜0である。例えば、耐熱性(低発ガス性)を高くする必要性があれば、T構造を多く導入するようにシロキサン樹脂を設計することが必要となる。また、例えば、硬化物の諸物性を制御する必要性があり、その他のエポキシ樹脂等との相溶性を向上させることが必要となる場合は、D構造を一定以上含有させるシロキサン樹脂の設計が必要となる。
【0040】
(C)成分の代表的な構造としては、分子中に下記式(4)又は(5)で表される基を有する。
【化10】
【0041】
上記式(4)および式(5)において、j、k、s、tは、
1≦j+k≦7 (j≧0、k≧1) ・・・(i)
2≦s+t≦100 (s≧1、t≧1) ・・・(ii)
を満たしている。ここで、j+kは、他の化合物との相溶性の観点から1以上が好ましく、一方で、塗膜の耐薬品性、密着性の観点からは7以下が好ましい。すなわち、このような特性を満足できるような適当なサイズの環状構造があることがよい。j+kは1〜6であることがより好ましく、1〜4であることがさらに好ましい。また、s+tは、分子量の制御、および他の化合物との相溶性の観点から、2以上100以下であることが好ましい。すなわち、環状構造と鎖状構造が適度な比率で結合した化合物であることがよく、このs+tは、2〜99であることがより好ましく、3〜75であることがさらに好ましい。*は結合手を表し、連結する場合はSi-O-Si結合を構成する。
【0042】
式(4)および式(5)中のXは、前記した(a)又は(b)であり、同じでもそれぞれ異なっていてもよいが(a)を1つ以上含む。なお、(a)はT構造中のX又はD構造中のYのどこかに存在すればよいが、(a)が複数個存在し、T構造中およびD構造中の両方に存在することが好ましい。
【0043】
上記炭素数1〜6の有機基の末端に3,4−エポキシシクロヘキシル基を有する基において、「炭素数1〜6の有機基」としては、分岐してもよいアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基などを含むことができる。炭素数としては、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましい。このような有機基としては、例えばメチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基等のアルキル基や、シクロプロピル基等のシクロアルキル基等を挙げることができる。なお、「各種」とは、n−、sec−、tert−、iso−を含む各種異性体を意味する。
【0044】
また、式(4)および式(5)中のXが炭素数1〜3の炭化水素基の場合の例としては、メチル基、エチル基が好ましい。
【0045】
複数のXは同一であっても、異なっていてもよいが、硬化性の観点から、1つ以上は3,4−エポキシシクロヘキシル基を含み、炭素数1〜6の有機基の末端に3,4−エポキシシクロヘキシル基を有する基を含有することが好ましく、より好ましくは、Siの100モル%に対して、炭素数1〜6の有機基の末端に3,4−エポキシシクロヘキシル基を有する基が15モル%以上、より好ましくは30モル%以上であることがよい。この炭素数1〜6の有機基の末端に3,4−エポキシシクロヘキシル基を有する基としては、β―(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基が好ましい。
【0046】
一方で、式(4)および式(5)中のR'は、水酸基、炭素数1〜3の炭化水素基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、または、下記式(6)で示される基である。
【化11】
ここで、式(6)中のR
Xは、水酸基、炭素数1〜3の炭化水素基、フェニル基、メトキシ基、又はエトキシ基であり、Xは、前記した(a)又は(b)である。*は結合手を表し、連結する場合はSi-O-Si結合を構成し、繰り返し単位が0〜15000であることが好ましい。
【0047】
式(4)および(5)のR'は同一であっても異なっていても良いが、R'が全て水酸基となる場合、保存安定性が悪く、また配合組成によっては硬化膜の低吸湿性が損なわれる場合があるため、好ましくは、水酸基の含有量がSiの100モル%に対して、30モル%以下であることがよく、より好ましくは、水酸基以外の基である。
【0048】
上記R'及びR
Xのうち、炭素数1〜3の炭化水素基としては、メチル基、エチル基がより好ましく、それにより耐熱性の高い硬化膜が得られる。
【0049】
そして、この(C)成分については、重量平均分子量が750〜20000であって、かつエポキシ当量が350g/eq未満である。
【0050】
このうち、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)で表される。Mwが750を下回る場合は、架橋密度が低く耐薬品性の乏しい膜(硬化物)となり、また未反応物として塗膜に残存しやすく塗膜の脱ガス特性が悪化する要因となる。Mwが20000より大きい場合は、膜(硬化物)とした場合の平坦性の悪化や、その他の化合物との相溶性が悪化する傾向にある。好ましくは、Mwが1000〜15,000であることがよい。
【0051】
また、エポキシ当量が350g/eq以上の場合、反応性基の含有量が低下して硬化性が不足し、架橋密度が低くなる傾向となるため、耐薬品性等の硬化膜の特性が悪化する。好ましくは、当該分子量が150以上350未満であることがよい。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記のような(C)成分を含有することにより、吸湿性が低い硬化膜を得ることができる。この理由の詳細は定かではないが、従来の一般的なシロキサンエポキシ樹脂のエポキシ基は親水性の高いグリシジルに由来する構造単位であるのに対し、3,4−エポキシシクロヘキシル基を含むシロキサンエポキシ樹脂は疎水性の高いシクロヘキシルエポキシ基であることが理由と推測している。さらに、従来の一般的なシロキサンエポキシ樹脂は加水分解縮合等で製造した場合に、シラノール基〔上記式(4)と(5)のR’において水酸基を示す基〕が生成又は残存しやすいのに対し、本発明の中でも3,4−エポキシシクロヘキシル基を含むシロキサンエポキシ樹脂にはシラノール基が少ないことが理由と推測している。
【0053】
(C)成分は、例えば、以下の(c)又は(d)の方法で製造することができる。すなわち、
(c)特定の有機基を有するアルコキシシラン化合物あるいは、特定の有機基を有するアルコキシシランと他のシラン化合物との混合物を適当な有機溶媒、酸および水の存在下で加水分解および重縮合させて得る方法や、
(d)ヒドロシラン構造を有するポリシロキサンに特定の有機基と二重結合基を有する化合物を付加させる方法など公知の方法で製造することができるが、(c)の方法が一般的かつ容易で好ましい。
【0054】
(c)の方法で製造する場合、アルコキシシラン化合物として一般式がSi(X
1)(OR
10)
3で表されるトリアルコキシシランを用いてこれを加水分解又は加水分解縮合させるか、又は、このSi(X
1)(OR
10)
3と、一般式がSi(X
2)
2(OR
11)
2で表されるジアルコキシシランとを加水分解又は加水分解縮合させることが挙げられる。但し、X
1は、前記(a)又は(b)に示す基であり、同一であっても異なっていてもよいが、1つ以上は(a)を含み、(a)の中でも炭素数1〜6の有機基の末端に3,4−エポキシシクロヘキシル基を有する基を含有することが好ましい。X
2は、前記(a)又は(b)に示す基であり、同一であっても異なっていてもよいが、1つ以上は(b)で示す基を有する。R
10およびR
11はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基である。
【0055】
このような反応については、例えば酸性条件下にて加水分解縮合させることがよい。フッ化水素、塩酸、硝酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸、マレイン酸、安息香酸、マロン酸、グルタール酸、グリコール酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸又は無機酸を用いることができる。加水分解縮合には水の存在が必要であり、水の量はシラン化合物の加水分解性基に対して、加水分解するのに十分な量以上であればよいが、好ましくは加水分解性基の数(理論量)の0.3〜1.5倍モルとなるように添加するのがこのましい。
【0056】
上記トリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、8−オクテニルトリメトキシシラン、8−グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、8−メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリプロポキシシラン等のトリアルコキシシランなどを挙げることができる。これらの中でも、3,4−エポキシシクロヘキシル基を有するトリアルコキシシランを用いることが好ましい。
【0057】
上記ジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジプロポキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ジエチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ジエチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラ、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、エチルメチルジメトキシシラン、エチルメチルジエトキシシラン、エチルメチルジプロポキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン化合物などを挙げることができる。
なお、これらのトリアルコキシ又はジアルコキシのシラン化合物は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0058】
本発明においては、上記(C)成分の感光性樹脂組成物の固形分中の含有量は、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。前記範囲内であれば、硬化物の低吸湿性が十分高くなる。一方、この上限としては、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0059】
<(D)光重合開始剤>
(D)光重合開始剤の例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p'−ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のα−アミノアルキルフェノン類;2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルビイミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2,4,5−トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類;2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メチルチオスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物類;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−(4−フェニルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−ベンゾアート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−アセタート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1−オンオキシム−O−アセタート等のO−アシルオキシム系化合物類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンなどが含まれる。この中でも、特に着色剤を含む感光性樹脂組成物とする場合は、O−アシルオキシム系化合物類(ケトオキシムを含む)が好ましい。また、これら光重合開始剤を1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本発明の光重合開始剤は、増感剤を含む。
【0060】
本発明の感光性樹脂組成物は、このような(D)光重合開始剤を、上記(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましく、1〜5質量部とすることがより好ましい。0.1質量部未満であると感度が十分に得られず、10質量部を超えるとテーパー形状(現像パターン断面の膜厚方向形状)がシャープにならないで裾を引いた状態になるハレーションが起こりやすくなるとともに後工程で高温に暴露した場合に分解ガスが発生する可能性がある。
【0061】
<(E)非シロキサン型化合物>
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、シロキサン構造を含まない非シロキサン型の化合物を含むことができる。このような非シロキサン型化合物は、上記のシロキサン樹脂と相溶性があるものであれば、特に制限なく用いることができ、これを含むことにより、平坦性や硬度などの特性をより向上させたり、粘度を調整したりすることが可能であるため好ましい。このような非シロキサン型化合物としては、シロキサン骨格を含まず且つエポキシ基又は重合性不飽和結合を有する化合物を用いる。これらの化合物のうち、常温で液状または常温で固体の化合物を溶剤添加の下で均一に混合できる限り、特に制限なく用いることができる。以下に具体的な化合物を例示する。
【0062】
シロキサン骨格を含まず且つエポキシ基を有する化合物から例示する。
常温で液状の鎖式脂肪族エポキシ化合物としては、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、分岐アルキルエステルのモノまたはジグリシジルエーテル、日産化学製のFOLDIシリーズ等が挙げられる。このような鎖式脂肪族エポキシ化合物は、硬化剤との反応で架橋密度の向上により耐熱性向上に寄与する。特に粘度が30〜500mPa・s(25℃)であるエポキシ化合物を好ましく用いることができる。
【0063】
また、常温で液状の脂環式エポキシ化合物としては、(3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル)3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,1−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−m−ジオキサンやビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノール−ビス3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等を挙げることができ、粘度が50〜3500mPa・s(25℃)であるエポキシ化合物を好ましく用いることができる。
【0064】
また、常温で液状の芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物等の低分子量化合物が挙げられる。
【0065】
また、常温で液状のトリアジン骨格を有するエポキシ化合物としては、トリアジン骨格を有する多官能エポキシ化合物(日産化学製、TEPIC−PAS、TEPIC−VL、TEPIC−UC等)等が挙げられる。
【0066】
これら常温で液状のエポキシ化合物の中でも、(3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル)3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の低分子量液状化合物をより好ましく用いることができる。
【0067】
これら液状エポキシ樹脂を用いることにより膜(硬化物)としての平坦性をさらに向上させることができる。
【0068】
一方で、常温で固体のエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えばダイセル社製「EHPE3150」)等の脂環式エポキシ化合物、(メタ)アクリル酸グリシジルを必須成分とする(メタ)アクリル酸エステル類の共重合体、エポキシ化ポリブタジエン(例えば日本曹達社製「NISSO−PB・JP−100」)、トリアジン骨格を有する3官能エポキシ化合物(日産化学社製 TEPICSC−G、S,SS,SP等)等、公知の常温で固体のエポキシ化合物を特に制限なく使用できる。また、常温でロウ状またはグラニュール状であり融点が低いエポキシ化合物である(3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル)3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートのε−カプロラクタム変性物(テトラケム社製 TTA2081、TTA2083)等も使用することができる。
【0069】
このうち、(メタ)アクリル酸グリシジルを必須成分とする2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの共重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルと(メタ)アクリルエステル類およびその他の重合性不飽和化合物を常法によりラジカル共重合して得られる化合物である。上記ラジカル共重合に際しては、アゾ化合物または過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。また、公知の連鎖移動剤または重合禁止剤等を利用して、重量平均分子量が900〜20000となるように重合度を制御してもよい。
【0070】
上記共重合体に用いる(メタ)アクリル酸グリシジル以外の(メタ)アクリルエステル類およびその他の重合性不飽和化合物を以下に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0071】
(メタ)アクリル酸エステル類は、(メタ)アクリル酸((メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸をいう)とアルコール(R
1OH)成分とを縮合反応させて得ることができる。(R
1OH)成分としては、公知のものが特に制限なく利用できる。R
1の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、フェニル基、トリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、および2−フェニルビニル基等の飽和または不飽和の一価の炭化水素基、ならびに、ピリジル基、ピペリジル基、ピペリジノ基、ピロリル基、ピロリジニル基、イミダゾリル基、イミダゾリジニル基、フリル基、テトラヒドロフリル基、チエニル基、テトラヒドロチエニル基、モルホリニル基、モルホリノ基、およびキノリル基等の飽和または不飽和の一価の複素環基等を挙げることができる。上記炭化水素基または複素環基等は、任意の位置に、ハロゲン原子、カルボニル基、チオカルボニル基、ニトロ基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、チオエステル基、ジチオエステル基、ウレタン基、チオウレタン基、ウレイド基、およびチオウレイド基等を置換基として導入した構造であってもよい。このような一価の基は、目的とする(メタ)アクリル酸エステルの共重合体の構造に応じて適宜選定されればよいが、性能および経済性の点から炭素原子数1〜20の飽和または不飽和の一価の炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数1〜6の飽和または不飽和の一価の炭化水素基であることがより好ましい。なお、飽和または不飽和の一価の炭化水素基は、分岐構造や環構造を有している炭化水素基でもよく、更には任意の置換基で置換されていてもよい。ただし、上記置換基は、酸性基およびアミド結合などの反応性の構造を有さないことが好ましい。
【0072】
その他の重合性不飽和化合物としては、スチレンおよびその誘導体を挙げることができ、具体的化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、又はスチレンの芳香環にアルキル基、ハロゲン原子およびヒドロキシ基等を導入した化合物が使用できる。
【0073】
上記の他にも、メタクリル酸グリシジル以外のエポキシ基含有重合性不飽和化合物(例えばアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸[4−(グリシジルオキシ)ブチル]、(メタ)アクリル酸[(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル]、および4−(グリシジルオキシメチル)スチレン等)、ならびに、アルコキシシリル基含有重合性不飽和化合物(例えば(メタ)アクリル酸[3−(トリメトキシシリル)プロピル]、(メタ)アクリル酸[3−(トリエトキシシリル)プロピル]、および4−(トリメトキシシリル)スチレン等)等を共重合させてもよい。
【0074】
上記に例示した共重合体の中で、好ましい例としては、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アルキルエステル(C1〜C4のアルキル基)を共重合させたものや、更にスチレンを共重合させたもので、軟化点(Tg)が10〜90℃になるものを挙げることができる。共重合体のTgのより好ましい範囲は、40〜90℃である。
【0075】
上記した常温で固体のエポキシ化合物の中でも、特に、耐熱性、低発ガス性を更に向上させるとの観点から、以下の一般式(7)で表される、lの平均値が0〜2のエポキシ化合物である。
【0077】
一般式(7)中、Arは炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基である。また、Arで表される2価の芳香族炭化水素基の水素原子の一部は、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜5のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。
【0078】
この一般式(7)のエポキシ化合物としては、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、またはビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物とすることができる。このエポキシ化合物は、硬化性樹脂組成物の粘度に与える影響が比較的少なく、低発ガス性や耐熱性を付与するのに有効な成分である。特に低発ガス性を付与するためには、ビスナフトールフルオレン型エポキシ樹脂の方がより好ましい。
【0079】
一般式(7)中のlは、平均値が0〜2であればよく、0以上であれば溶解性を高めることができ、2を超えると硬化膜の硬化性に影響を及ぼす傾向がある。lの平均値は、0.01〜1であることが好ましい。lの平均値は、エポキシ当量から算出することができ、例えば、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物の場合は、
(エポキシ当量)×2=(lの平均値)×506.6+562.7
から算出することができる。また、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物の場合は、
(エポキシ当量)×2=(lの平均値)×406.5+462.5
から算出することができる。
【0080】
この一般式(7)のエポキシ化合物は、特開平9−328534号公報に記載の方法などの、公知の方法で合成することができるが、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンまたは9,9−ビス(4−ヒドロキシナフチル)フルオレンとエピクロロヒドリンをアルカリ存在下縮合させて得る方法が最も一般的で好ましい。lの値は、合成時の原料化合物のモル比を調整したり、反応条件を調整したりして、所望の値とすることができる。
【0081】
次に、(E)成分として、シロキサン骨格を含まない重合性不飽和結合を有する化合物を例示する。前記に例示したシロキサン骨格を含まないエポキシ化合物に、重合性不飽和結合を有するモノカルボン酸化合物であるアクリル酸、メタクリル酸等を反応させて得られるエポキシアクリレート化合物を、溶剤添加の下で均一に混合できる限り、特に制限なく用いることができる。なお、重合性不飽和結合を有するモノカルボン酸化合物のその他の例としては、(メタ)アクリレートがアクリレート又はメタクリレートを表すとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと無水コハク酸のハーフエステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと無水フタル酸のハーフエステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物のハーフエステル、4−ビニル安息香酸等が挙げられる。また、重合性不飽和結合を有する重合性モノマーも、溶剤添加の下で均一に混合できる限り、特に制限なく用いることができる。
【0082】
このうち、重合性モノマーの例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0083】
本発明において、上記のような非シロキサン型化合物を3質量%以上含有することが好ましく、5質量%以上がより好ましい。一方、この上限としては、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。前記範囲内であれば硬化物の吸湿性やパターン密着性、パターン精細度を損なうことなく平坦性やパターン直線性を向上させることが出来る。
【0085】
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、その他の任意の成分を含んだものであってもよく、例えば着色材、フィラー、樹脂、添加剤等を含有させることができる。ここで、着色材としては染料、有機顔料、無機顔料、カーボンブラック顔料等を、フィラーとしてはシリカ、タルク等を、樹脂としてはビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂等を、添加剤としては、分散剤、界面活性剤、シランカップリング剤、粘度調整剤、湿潤剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱ラジカル開始剤等をそれぞれ挙げることができる。これら任意の成分としては、公知の化合物を特に制限なく使用することができる。
【0086】
カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤(3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、および3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等)、チタン系カップリング剤、ならびにアルミニウム系カップリング剤などを利用できる。熱ラジカル開始剤としては、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2−アゾビス2−メチルプロピオネート、1,1’-アゾビス(1−アセトキシ-1-フェニルエタン)等のアゾ系開始剤や、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物を例示することができる。
【0087】
カラーフィルターの保護膜として使用する場合は、界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等)等を使用してもよい。界面活性剤としては、シリコーン系、フッ素系等の公知の界面活性剤を特に限定なく使用することができる。シリコーン系界面活性剤の例には、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが含まれる。フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが含まれる。また、これら界面活性剤を1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。界面活性剤の添加量は、感光性樹脂組成物の表面張力により調整することができ、その添加量範囲としては、感光性樹脂組成物中0.001〜0.1質量%であり、界面活性剤の種類によっても添加量の範囲は異なり、シリコーン系界面活性剤の場合には0.001〜0.01質量%、フッ素系界面活性剤であれば0.01〜0.1質量%の範囲となる場合が通常である。
【0088】
また、溶剤としては公知の化合物を利用できる。例えばエステル系溶剤(ブチルアセテート、およびシクロヘキシルアセテート等)、ケトン系溶剤(メチルイソブチルケトン、およびシクロヘキサノン等)、エーテル系溶剤(ジエチレングリコールジメチルエーテル、およびジエチレングリコールエチルメチルエーテル等)、アルコール系溶剤(3−メトキシブタノール、およびエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル等)、芳香族系溶剤(トルエン、およびキシレン等)、脂肪族系溶剤、アミン系溶剤、ならびにアミド系溶剤等を特に制限なく使用することができる。安全性の点からはプロピレングリコール骨格を有するエステル系やエーテル系の溶剤、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、およびプロピレングリコールジアセテート等が好ましい。また、これらに類似の構造を有する3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、および1,3−ブチレングリコールジアセテート等も好ましい。
【0089】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、多価カルボン酸、多価カルボン酸の無水物および多価カルボン酸の熱分解性エステルからなる群より選ばれるエポキシ化合物の硬化剤や、エポキシ化合物の硬化促進剤、硬化触媒または潜在性硬化剤等として知られる公知の硬化を促進する化合物を利用できる。硬化剤を用いる場合は、組成物の固形分の全質量に対して、1〜20質量%となるように配合することが好ましく、5〜10質量%となるように配合することがより好ましい。仮に1質量%未満では硬化剤としての効力に乏しく、また20質量%を超えると、硬化に寄与しない余剰の硬化剤が発ガス性に悪影響を及ぼす。また、硬化を促進する化合物を用いる場合は、組成物の固形分の全質量に対して、0.005〜2質量%となるように配合することが好ましく、0.01〜1質量%であることがより好ましい。仮に、0.005質量%未満では促進剤としての効力に乏しく、また、2質量%を超えると、硬化性樹脂組成物を溶液としたときに十分な保存安定性が得られなかったり、加熱時の着色に悪影響を及ぼしたりする。
【0090】
上記硬化剤としての多価カルボン酸としては、1分子中に2つ以上のカルボキシ基を有する化合物であり、例えばコハク酸、マレイン酸、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキセン−4,5−ジカルボン酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸、フタル酸、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、およびブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸等を挙げることができる。
【0091】
また、硬化剤としての多価カルボン酸の無水物としては、上記例示した多価カルボン酸の酸無水物が挙げられ、これは分子間酸無水物でもよいが、一般には分子内で閉環した酸無水物が用いられる。好ましい酸無水物としては、無水トリメリット酸を例示することができる。
【0092】
さらに、硬化剤としての多価カルボン酸の熱分解性エステルとしては、上記例示した多価カルボン酸のt−ブチルエステル、1−(アルキルオキシ)エチルエステル、1−(アルキルスルファニル)エチルエステル(ただし、ここでいうアルキルは炭素数1〜20の飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、かかる炭化水素基は分岐構造や環構造を有していてもよく、任意の置換基で置換されていてもよい)等を挙げることができる。
【0093】
また、硬化剤としては、2つ以上のカルボキシ基を有する重合体または共重合体も用いることができる。上記重合体または共重合体のカルボキシ基は、無水物または熱分解性エステルであってもよい。このような重合体または共重合体の例としては、(メタ)アクリル酸を構成成分として含む重合体または共重合体、無水マレイン酸を構成成分として含む共重合体、テトラカルボン酸二無水物をジアミンまたはジオールと反応させて酸無水物を開環させた化合物等を挙げることができる。
【0094】
上記硬化を促進する化合物としては、例えば、三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、およびイミダゾール類等を挙げることができるが、特に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン若しくは1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンまたはそれらの塩が好ましい。
【0095】
また、本発明の感光性樹脂組成物の固形分濃度については特に制限はないが、例えば、カラーフィルターの保護膜用途としては、溶剤以外の成分の合計量である固形分濃度が10〜30質量%の範囲に調整されることが一般的である。また、カラーフィルターの保護膜の平坦性を高めるため、常圧における沸点が150℃未満の溶剤40〜90質量%及び常圧における沸点が150℃以上の溶剤10〜60質量%を併用して、感光性樹脂組成物の乾燥性を制御することが好ましい。また、溶剤を除いた固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマーを含む)中に、(A)〜(D)成分が合計で80質量%、好ましくは90質量%以上含むことが望ましい。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、感光性樹脂組成物中に70〜90質量%の範囲で含まれるようにするのがよい。
【0096】
本発明における感光性樹脂組成物は、以下のようなフォトリソグラフィー法により硬化させて形成することができる。先ず、感光性樹脂組成物をガラス基板、プラスチック基板等およびそれらの上にカラーフィルターの画素パターンやTFT等の画素駆動用の電極パターンを形成した基板の上に塗布し、次いで溶媒を乾燥させた(プリベーク)後、このようにして得られた皮膜の上にフォトマスクをあて、紫外線を照射して露光部を硬化させ、更にアルカリ水溶液を用いて未露光部を溶出させる現像を行ってパターンを形成し、更に後硬化としてポストベーク(熱焼成)を行う方法が挙げられる。
【0097】
感光性樹脂組成物の溶液を塗布する透明基板としては、ガラス基板のほか、透明フィルム(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等)上にITOや金などの透明電極が蒸着あるいはパターニングされたものなどが例示できる。感光性樹脂組成物の溶液を塗布する方法としては、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、皮膜が形成される。プリベークはオーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。プリベークにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば60〜110℃の温度で1〜5分間行われる。
【0098】
プリベーク後に行われる露光は、紫外線露光装置によって行なわれ、フォトマスクを介して露光することによりパターンに対応した部分のレジストのみを感光させる。露光装置及びその露光照射条件は適宜選択され、超高圧水銀灯、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、遠紫外線灯等の光源を用いて露光を行い、塗膜中のブラックレジスト用感光性樹脂組成物を光硬化させる。
【0099】
露光後のアルカリ現像は、露光されない部分のレジストを除去する目的で行われ、この現像によって所望のパターンが形成される。このアルカリ現像に適した現像液としては、例えばアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができるが、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩を0.05〜3質量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて23〜28℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。
【0100】
現像後、好ましくは80〜250℃の温度(基板の耐熱温度を超えないように設定)及び20〜90分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた樹脂膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプリベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。ポストベークの熱処理条件のより好ましい範囲は、温度180〜230℃、加熱時間30〜60分である。本発明のパターニングされた樹脂膜は、以上のフォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。
【0101】
本発明の感光性組成物はソルダーレジスト、メッキレジスト、エッチングレジストや、半導体素子を搭載する配線基板の多層化用の絶縁膜、半導体のゲート絶縁膜、カラーフィルター用保護膜および平坦化膜、有機EL画素形成用の隔壁材(RGBをインクジェット法により形成する場合等向け)、タッチパネル用絶縁膜等を形成するのに有用であり、これらの樹脂膜パターンを構成要素として含む液晶や有機EL等の表示装置用、撮影素子用、タッチパネル用の部材向けとすることが可能である。
【実施例】
【0102】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の感光性樹脂組成物の調製例から説明し、当該感光性樹脂組成物を用いて形成した塗膜の評価結果を説明する。
【0103】
先ず、(A)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成例を示す。合成例における樹脂の評価は、以下の通りに行った。
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W
0(g)〕に含浸させて秤量し〔W
1(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の重量〔W
2(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W
2−W
0)/(W
1−W
0)
【0104】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置〔平沼産業株式会社製、商品名COM−1600〕を用いて1/10N−KOH水溶液で滴定して求めた。
【0105】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)[東ソー株式会社製 商品名:HLC−8220GPC、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuperH−2000(2本)+TSKgelSuperH−3000(1本)+TSKgelSuperH−4000(1本)+TSKgelSuper−H5000(1本)〔東ソー株式会社製〕、温度:40℃、速度:0.6ml/min]にて測定し、標準ポリスチレン〔東ソー株式会社製PS−オリゴマーキット〕換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0106】
[
29Si−NMR測定条件]
装置名 :日本電子(株)社製 JNM―ECA400
観測核 :
29Si
観測周波数 :79.43MHz
測定温度 :室温
測定溶媒 :CDCl
3
パルス幅 :8.75μsec(90°)
パルス繰り返し時間:5.0sec
積算回数 :11000回
試料濃度(試料/測定溶媒/緩和試薬):200mg/0.7ml/10mg
緩和試薬 :Cr(acac)
3
【0107】
また、合成例で使用する略号は次のとおりである。
BPFE:ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物〔9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物。エポキシ当量250g/eq〕
AA:アクリル酸
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
TEAB:臭化テトラエチルアンモニウム
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA:テトラヒドロ無水フタル酸
MAA:メタクリル酸
MMA:メタクリル酸メチル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
GMA:グリシジルメタクリレート
TPP:トリフェニルホスフィン
TBPC:2,6-ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
【0108】
<(A)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成>
[合成例1]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にBPFE 114.4g(0.23モル)、AA 33.2g(0.46モル)、PGMEA 157g及びTEAB 0.48gを仕込み、100〜105℃で加熱下に20時間撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内にBPDA 35.3g(0.12モル)、THPA 18.3g(0.12モル)を仕込み、120〜125℃で6時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)−1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56.1質量%、酸価(固形分換算)は103mgKOH/g、GPC分析によるMwは3600であった。(重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂A−1)
【0109】
[合成例2]
窒素導入管及び還流管付き1000ml四つ口フラスコ中にMAA51.65g(0.60モル)、MMA36.04g(0.36モル)、CHMA40.38g(0.24モル)、AIBN5.91g、及びPGMEA360gを仕込み、80〜85℃で窒素気流下、8時間撹拌して重合させた。更に、フラスコ内にGMA61.41g(0.43モル)、TPP2.27g及びTBPC0.086gを仕込み、80〜85℃で16時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)−2を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は35.7質量%、酸価(固形分換算)は50mgKOH/g、GPC分析によるMwは19600であった。(重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂A−2)
【0110】
<(C)シロキサンエポキシ樹脂の合成>
[合成例3]
攪拌装置、滴下漏斗、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン25.0g、トルエン150.0gを仕込み、完全に溶解した後、酸性触媒としてp-トルエンスルホン酸一水和物1.25gを更に混合し室温で30分攪拌した。更に水を3.3g滴下投入し、24時間攪拌した。反応終了後、NaHCO
3水溶液で洗浄し、有機層をMgSO
4で乾燥させろ過した後、減圧下で揮発物を除去することにより、透明粘調性樹脂18.8gを得た。得られた樹脂のエポキシ当量は250g/eqであった。Mwは4100であった(シロキサンエポキシ樹脂C−1)。
【0111】
[合成例4]
攪拌装置、滴下漏斗、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン20.0g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン5.0g、トルエン150.0gを仕込み、完全に溶解した後、酸性触媒としてp-トルエンスルホン酸一水和物1.25gを更に混合し室温で30分攪拌した。更に水を3.1g滴下投入し、24時間攪拌した。反応終了後、NaHCO
3水溶液で洗浄し、有機層をMgSO
4で乾燥させろ過した後、減圧下で揮発物を除去することにより、透明粘調性樹脂20.3gを得た。得られた樹脂のエポキシ当量は270g/eqであった。Mwは3200であった(シロキサンエポキシ樹脂C−2)。
【0112】
[合成例5]
攪拌装置、滴下漏斗、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン12.5g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン12.5g、トルエン150.0gを仕込み、完全に溶解した後、酸性触媒としてp-トルエンスルホン酸一水和物1.25gを更に混合し室温で30分攪拌した。更に水を3.0g滴下投入し、24時間攪拌した。反応終了後、NaHCO
3水溶液で洗浄し、有機層をMgSO
4で乾燥させろ過した後、減圧下で揮発物を除去することにより、透明粘調性樹脂19.7gを得た。得られた樹脂のエポキシ当量は230g/eqであった。Mwは5000であった(シロキサンエポキシ樹脂C−3)。
【0113】
[合成例6]
攪拌装置、滴下漏斗、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン7.5g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン17.5g、トルエン150.0gを仕込み、完全に溶解した後、酸性触媒としてp-トルエンスルホン酸一水和物1.25gを更に混合し室温で30分攪拌した。更に水を2.6g滴下投入し、24時間攪拌した。反応終了後、NaHCO
3水溶液で洗浄し、有機層をMgSO
4で乾燥させろ過した後、減圧下で揮発物を除去することにより、透明粘調性樹脂19.7gを得た。得られた樹脂のエポキシ当量は290g/eqであった。Mwは3800であった(シロキサンエポキシ樹脂C−4)。
【0114】
[合成例7]
攪拌装置、滴下漏斗、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン25.0g、トルエン15.0gを仕込み、完全に溶解した後、酸性触媒としてp-トルエンスルホン酸一水和物1.25gを更に混合し室温30分攪拌した。更に水を2.8g滴下投入し、24時間攪拌した。反応終了後、NaHCO
3水溶液で洗浄し、有機層をMgSO
4で乾燥させろ過した後、減圧下で揮発物を除去することにより、透明粘調性樹脂20.1gを得た。得られた樹脂のエポキシ当量は340g/eqであった。Mwは3500であった(シロキサンエポキシ樹脂C−5)。
【0115】
[合成例8]
攪拌装置、滴下漏斗、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン12.5g、ジメチルジエトキシシラン12.5g、トルエン150.0gを仕込み、完全に溶解した後、酸性触媒としてp-トルエンスルホン酸一水和物1.25gを更に混合し室温で30分攪拌した。更に水を3.7g滴下投入し、24時間攪拌した。反応終了後、NaHCO
3水溶液で洗浄し、有機層をMgSO
4で乾燥させろ過した後、減圧下で揮発物を除去することにより、透明粘調性樹脂20.0gを得た。得られた樹脂のエポキシ当量は310g/eqであった。Mwは2900であった(シロキサンエポキシ樹脂C−6)。
【0116】
[合成例9]
攪拌装置、滴下漏斗、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン15.0g、ジメチルジエトキシシラン5.0g、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.0g、トルエン150.0gを仕込み、完全に溶解した後、酸性触媒としてp-トルエンスルホン酸一水和物1.25gを更に混合し室温で30分攪拌した。更に水を3.5g滴下投入し、24時間攪拌した。反応終了後、NaHCO
3水溶液で洗浄し、有機層をMgSO
4で乾燥させろ過した後、減圧下で揮発物を除去することにより、透明粘調性樹脂20.0gを得た。得られた樹脂のエポキシ当量は260g/eqであった。Mwは2000であった(シロキサンエポキシ樹脂C−7)。
【0117】
[比較合成例1]
攪拌装置、滴下漏斗、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン25.0g、トルエン100.0g、2−プロパノール(IPA)50.0gを仕込み、完全に溶解した後、塩基性触媒として5%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMAH水溶液)7.5gを入れ、常温で24時間攪拌した。反応終了後、クエン酸水溶液で洗浄し、有機層をMgSO
4で乾燥させろ過した後、減圧下で揮発物を除去することにより、透明粘調性樹脂20.4gを得た。得られた樹脂のエポキシ当量は169g/eqであったMwは28000であった(シロキサンエポキシ樹脂c−1)
【0118】
(感光性樹脂組成物の作製)
表1〜表4に示す組成によって配合を行い、室温で3時間攪拌混合して固形分成分を溶剤に溶解させ、感光性樹脂組成物を作製した。組成の数値は質量部である。
【0119】
感光性樹脂組成物として、実施例および比較例の配合に使用した成分を以下に示す。
<(A)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂>
A−1:合成例1で得られた樹脂溶液
A−2:合成例2で得られた樹脂溶液
<(B)光重合性モノマー>
B−1:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物(日本化薬(株)製 商品名:DPHA)
<(C)シロキサンエポキシ樹脂>
C−1:合成例3で調製したシロキサンエポキシ樹脂
C−2:合成例4で調製したシロキサンエポキシ樹脂
C−3:合成例5で調製したシロキサンエポキシ樹脂
C−4:合成例6で調製したシロキサンエポキシ樹脂
C−5:合成例7で調製したシロキサンエポキシ樹脂
C−6:合成例8で調製したシロキサンエポキシ樹脂
C−7:合成例9で調製したシロキサンエポキシ樹脂
C−8:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランとジメチルジメトキシシランとの縮合物(恆橋産業製の「6730D」、エポキシ当量295/eq、Mw:4,500)
c−1:比較合成例1で調製したシロキサンエポキシ樹脂(エポキシ当量169g/eq、Mw:28,000)
c−2:エポキシシクロヘキシル基を有するシロキサンエポキシ樹脂(信越化学工業製の「X−40−2669」、エポキシ当量191g/eq、Mw:383)
c−3:エポキシシクロヘキシル基を有するシロキサンエポキシ樹脂(信越化学工業製の「KR−470」、エポキシ当量200g/eq、Mw:737)
c−4:メトキシ基およびエトキシ基およびグリシジル基を有するシロキサンエポキシ樹脂(信越化学工業製の「X−41−1059A」、エポキシ当量350g/eq、Mw:2,500)
c−5:エポキシシクロヘキシル基を有するが、水酸基、メトキシ基、エトキシ基又はフェノキシ基は有さないシロキサンエポキシ樹脂(荒川化学工業製の「POLY200」)
<(D)光重合開始剤>
D−1:1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O-ベンゾイルオキシム)(BASF社製、商品名:イルガキュアOXE−01)
<(E)非シロキサン型化合物>
E−1:フルオレン型エポキシ樹脂〔日鉄ケミカル&マテリアル(株)製、ESF−300C、エポキシ当量220〜240/eq〕
E−2:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(株式会社ダイセル製、EHPE3150、エポキシ当量:170〜190g/eq)
<カップリング剤>
F−1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
<界面活性剤>
G−1:メガファックF−477(DIC社製)
<溶剤>
H−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
H−2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(MMPG)
H−3:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)
【0120】
配合に使用した(C)シロキサンエポキシ樹脂成分については、核磁気共鳴装置(日本電子製 JNM―ECA 400)を用いて、前記の条件にて
29Si−NMR測定を行った。その結果、成分C−1〜C−8および成分c−1およびc−4においては、前記構造T1、T2及びT3に由来する、47ppm〜−52ppm及び−55ppm〜−61ppm及び−62ppm〜−72ppmにシグナルが観測された。成分C−2、C−4、C−6、C−7においては、更に、前記構造D1及びD2に由来する−6ppm〜−13ppmかつ−15ppm〜−24ppmシグナルが観測された。
各シグナルの面積比率は、A−8については、T1:T2:T3=1:7:15、D1:D2=4:26であった。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】
(感光性樹脂組成物の評価:平坦性)
カラーフィルター基板として、ブラックマトリクス及びレッド・グリーン・ブルーの画素およびモザイク状にブルーの画素が無いパターンが形成されており、画素上で高さ2.5μmの凹凸が生じているものを用意した。上記感光性樹脂組成物をカラーフィルター基板にスピンコーターを用いて塗布し、90℃のホットプレートで2分間乾燥させて試験片を作製した。このとき、画素上に膜厚1.5μmの硬化膜が得られるように塗布条件(スピン回転数)を調節した。次にi線照度30mW/cm
2の超高圧水銀ランプで50mJ/cm
2の紫外線を照射して、光硬化反応を行った。その後試験片を230℃の熱風オーブンで30分間焼成し、硬化性樹脂組成物の硬化膜を得た。
【0126】
画素を保護するように形成された硬化膜の表面のうち任意に選択した2点の凹凸の高さを、接触式表面粗さ計(商品名 株式会社小坂研究所社製 微細形状測定器 ET−4000A)で測定し、次の基準により3段階評価を行った。
◎(良好) :凹凸の高さの差が0.20μm以下
○(やや良好) :凹凸の高さの差が0.20μm超え0.30μm以下
△(やや不良) :凹凸の高さの差が0.30μm超え0.40μm以下
×(不良) :凹凸の高さの差が0.40μm超え
【0127】
(感光性樹脂組成物の評価:吸湿性)
上記感光性樹脂組成物を無アルカリガラス基板にスピンコーターを用いて塗布し、90℃のホットプレートで2分間乾燥させて試験片を作製した。このとき、膜厚1.5μmの硬化膜が得られるように塗布条件(スピン回転数)を調節した。次にi線照度30mW/cm
2の超高圧水銀ランプで50mJ/cm
2の紫外線を照射して、光硬化反応を行った。その後試験片を230℃の熱風オーブンで30分間焼成し、感光性樹脂組成物の硬化膜を得た。次にこの硬化膜付き基板を恒温恒室装置(エスペック製 環境試験機SH−221)中、85℃、湿度85%RH環境下において24時間静置し吸湿させた。この試験片の硬化膜を10mg削り取ってサンプリングし、これを窒素雰囲気下、室温から150℃まで10℃/分で昇温して150℃において20分保持した際の重量減少量を膜の吸湿による重量変化として、熱重量分析装置(商品名株式会社リガク社製 示差熱天秤 Thermo plus EVO2)にて測定し、次の基準により3段階評価を行った。
◎ :重量減少が0.5%未満
○ :重量減少が0.5%以上2%未満
△ :重量減少が2%以上3%未満
× :重量減少が3%以上
【0128】
(感光性樹脂組成物の評価:発ガス性)
上記感光性樹脂組成物を無アルカリガラス基板にスピンコーターを用いて塗布し、90℃のホットプレートで2分間乾燥させて試験片を作製した。このとき、膜厚1.5μmの硬化膜が得られるように塗布条件(スピン回転数)を調節した。次にi線照度30mW/cm
2の超高圧水銀ランプで50mJ/cm
2の紫外線を照射して、光硬化反応を行った。その後試験片を230℃の熱風オーブンで30分間焼成し、硬化性樹脂組成物の硬化膜を得た。試験片の硬化膜を10mg削り取ってサンプリングし、これを大気気流下、室温から120℃を10℃/分で昇温して120℃において30分保持後、120℃から230℃を10℃/分で230℃にて3時間保持した際の重量減少を、熱重量分析装置(商品名株式会社リガク社製 示差熱天秤 Thermo plus EVO2)で測定し、次の基準により3段階評価を行った。
◎ :重量減少が5%未満
○ :重量減少が5%以上7%未満
△ :重量減少が7%以上10%未満
× :重量減少が10%以上
【0129】
(感光性樹脂組成物の評価:透明性)
上記発ガス性評価と同様にして感光性樹脂組成物の硬化膜が形成された試験片を作製した。波長400nmにおける硬化膜の透過率を分光光度計で測定し、次の基準により3段階評価を行った。
◎ :透過率が97%以上
○ :透過率が95%以上
△ :透過率が93%以上95%未満
× :透過率が93%未満
【0130】
(現像特性評価用の硬化膜(塗膜)の作成)
表に示した感光性樹脂組成物を、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cm
2の紫外線を照射して表面を洗浄した、125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)(以下「ガラス基板」という)上に、加熱硬化処理後の膜厚が2.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で2分間プリベークをして硬膜(塗膜)を作製した。次いで、露光ギャップを100μmに調整し、上記硬化膜(塗膜)上に10〜50μm(5μm刻み)のネガ型フォトマスクを被せ、i線照度30mW/cm
2の超高圧水銀ランプで50mJ/cm
2の紫外線を照射して、光硬化反応を行った。
【0131】
次いで、露光した上記硬化膜(塗膜)を25℃、0.04%水酸化カリウム溶液により1kgf/cm
2のシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から20秒間、現像処理を行った後、5kgf/cm
2のスプレー水洗を行い、上記硬化膜(塗膜)の未露光部分を除去してガラス基板上に硬化膜パターンを形成し、その後試験片を230℃の熱風オーブンで30分間焼成し、硬化性樹脂組成物の硬化膜を得た。
【0132】
[現像特性評価]
(パターン密着性)
(評価方法)
本硬化(ポストベーク)後の20μmマスクパターンを光学顕微鏡で観察した。なお、○以上を合格とした。
【0133】
(評価基準)
◎:全く剥離していない
○:僅かに剥離している
△:一部が剥離している
×:大部分が剥離している
【0134】
(パターン直線性)
(評価方法)
本硬化(ポストベーク)後の20μmマスクパターンを光学顕微鏡観察した。なお、○以上を合格とした。
【0135】
(評価基準)
◎:パターンエッジ部分のギザつきが全く認められない
○:パターンエッジ部分のギザつきが僅かに認められる
△:パターンエッジ部分のギザつきが一部に認められる
×:パターンエッジ部分のギザつきが大部分に認められる
【0136】
(パターン精細度)
(評価方法)
本硬化(ポストベーク)後の10〜50μmマスクパターンを光学顕微鏡観察した。なお、○以上を合格とした。
【0137】
(評価基準)
◎:10〜15μmのパターンが形成されている
○:16〜24μmのパターンが形成されている
△:25〜50μmのパターンが形成されている
×:パターンが形成されていない
【0138】
【表5】
【0139】
【表6】
【0140】
【表7】
【0141】
【表8】
【0142】
【表9】
【0143】
【表10】