【課題】簡便な方法で反射率を低減でき、かつ、高い遮光性と高精細なパターン形成の両立が可能である感光性樹脂組成物およびその硬化膜、当該硬化膜を有するカラーフィルターを提供すること。
【解決手段】本発明の感光性樹脂組成物は、分子内にフェニルグリシジルエーテル基を2個以上有するエポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物に対して、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物、およびテトラカルボン酸またはその酸二無水物を反応させて得られる重量平均分子量が2500以上の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(i)と、側鎖にカルボキシ基および重合性不飽和基を有する重量平均分子量が6000以上の(メタ)アクリレート樹脂(ii)と、を樹脂成分として含み、黒色有機顔料、黒色無機顔料または混色有機顔料からなる群から選択される遮光材(iii)を必須成分として含む。
分子内にフェニルグリシジルエーテル基を2個以上有するエポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物に対して、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物、およびテトラカルボン酸またはその酸二無水物を反応させて得られる重量平均分子量が2500以上の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(i)と、
側鎖にカルボキシ基および重合性不飽和基を有する重量平均分子量が6000以上の(メタ)アクリレート樹脂(ii)と、
を樹脂成分として含み、
黒色有機顔料、黒色無機顔料または混色有機顔料からなる群から選択される遮光材(iii)を必須成分として含む感光性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本発明において、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。
【0018】
本発明の一実施の形態に係る感光性樹脂組成物は、分子内にフェニルグリシジルエーテル基を2個以上有するエポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物に対して、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物、およびテトラカルボン酸またはその酸二無水物を反応させて得られる重量平均分子量が2500以上の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(i)と、側鎖にカルボキシ基および重合性不飽和基を有する重量平均分子量が6000以上の(メタ)アクリレート樹脂(ii)と、を樹脂成分として含み、黒色有機顔料、黒色無機顔料または混色有機顔料からなる群から選択される遮光材(iii)を必須成分として含む。
【0019】
以下(i)〜(iii)成分について説明する。
【0020】
(重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂)
本発明の一実施の形態に係る(i)成分である重量平均分子量が2500以上の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は下記一般式(1)で表される。
【0022】
(式(1)中、R
1は、独立して炭素数2〜4の炭化水素基であり、R
2は、独立して炭素数1〜3の炭化水素基であり、R
3は、独立して水素原子またはメチル基であり、Xは、独立して内部にヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−O−、一般式(2)で表されるフルオレン−9,9−ジイル基または単結合であり、Yは4価のカルボン酸残基であり、Zは、独立して水素原子または一般式(3)で表される置換基である。ただし、Zの少なくとも1つは一般式(3)で表される置換基であり、Gは、独立して水素原子または一般式(4)で表される置換基であり、aは、独立して0〜10の数であり、1分子中におけるaの平均値も0〜10の数であり、組成物中のaの平均値も0〜10の数である。bは、独立して0〜4の数であり、1分子中におけるbの平均値も0〜4の数であり、組成物中のbの平均値も0〜4の数である。nは平均値が1〜20の整数である。)
【0026】
(式(3)、(4)中、R
4、R
6は水素原子またはメチル基であり、R
5、R
7は炭素数2〜4の炭化水素基であり、Lは2または3価のカルボン酸残基であり、c、fは0または1の数であり、dおよびeは0、1または2の数であり、d+eは1または2の数である。)
【0027】
上記一般式(1)で表される重量平均分子量が2500以上の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(i)(以下、単に、「一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂」ともいう)の製造方法について説明する。
【0028】
先ず、下記一般式(8)で表される1分子内にフェニルグリシジルエーテル基を2個以上有するビスフェノール型エポキシ化合物(a−1)(以下、単に、「一般式(8)で表されるエポキシ化合物」ともいう)と、不飽和基含有モノカルボン酸(例えば(メタ)アクリル酸)と、を反応させて、重合性不飽和基を含有するジオールを得る。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の総称であり、これらの一方または両方を意味する。
【0030】
(式(8)中、R
1は、独立して炭素数2〜4の炭化水素基であり、R
2は、独立して炭素数1〜3の炭化水素基であり、Xは、独立して内部にヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−O−、一般式(2)で表されるフルオレン−9,9−ジイル基または単結合であり、aは、独立して0〜10の数であり、bは、独立して0〜4の数である。)
【0032】
一般式(8)で表されるエポキシ化合物は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させて得られる、1分子内に2個のフェニルグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物である。この反応の際には、一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、ビスフェノール骨格を2つ以上含むエポキシ化合物を含んでいる。
【0033】
上記ビスフェノール類の例には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、3,3’−ビフェノールなどが含まれる。
【0034】
一般式(8)で表されるエポキシ化合物と反応させる不飽和基含有モノカルボン酸の例には、アクリル酸、メタクリル酸以外に、アクリル酸やメタクリル酸に無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等の酸一無水物を反応させた化合物などが含まれる。
【0035】
一般式(8)で表されるエポキシ化合物と上記不飽和基含有モノカルボン酸との反応は、公知の方法を使用することができる。たとえば、特開平4−355450号公報には、2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用することにより、重合性不飽和基を含有するジオールが得られることが記載されている。本発明において、上記反応で得られる反応物は、一般式(9)で表される重合性不飽和基を含有するジオール(d)(以下、単に、「一般式(9)で表されるジオール」ともいう)である。
【0037】
(式(9)中、R
1は、独立して炭素数2〜4の炭化水素基であり、R
2は、独立して炭素数1〜3の炭化水素基であり、R
3は、独立して水素原子またはメチル基であり、Xは、独立して内部にヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−O−、一般式(2)で表されるフルオレン−9,9−ジイル基または単結合であり、aは、独立して0〜10の数であり、bは、独立して0〜4の数である。)
【0039】
上記炭素数1〜20の2価の有機基の例には、2価の炭化水素基、炭化水素基の側鎖に一つまたは二つのカルボキシ基を有する2価の基などが含まれる。なお、上記炭化水素基は内部にエーテル結合性の酸素原子またはエステル結合を有していてもよい。
【0040】
また、上記2価の炭化水素基の例には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピリデン基、sec−ブチレン基、メチルイソブチレン基、へキシレン基、デシレン基、ドデシレン基などの直鎖または分岐鎖を有する炭化水素基が含まれる。また、炭化水素基の内部にエステル結合を有する2価の基の例には、一般式(10)〜(12)で表される2価の有機基が含まれる。
【0042】
(式(10)中、hは1〜20の整数である。)
【0044】
(式(11)中、iは2〜20の整数であり、jは0〜10の整数である。)
【0046】
(式(12)中、kは0〜18の整数であり、lは、独立して1〜10の整数である。)
【0047】
また、一般式(8)で表されるエポキシ化合物と、不飽和基含有モノカルボン酸との反応物である一般式(9)で表されるジオールの分子中のヒドロキシ基に対して、反応させる(a)ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物の例には、鎖式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物、脂環式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物、芳香族ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物等が含まれる。
【0048】
上記鎖式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸、およびそれらの酸一無水物などが含まれる。さらには、任意のこれらの置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸、およびそれらの酸一無水物等が含まれる。
【0049】
上記脂環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチル−3,6−エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、ヘキサヒドロトリメリット酸等の酸一無水物が含まれる。さらには、任意のこれらの置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物等も含まれる。
【0050】
上記芳香族ジカルボン酸またはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物の例には、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸およびそれらの酸一無水物が含まれる。さらには、任意のこれらの置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸およびそれらの酸一無水物が含まれる。
【0051】
上記ジカルボン酸またはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物の中では、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、トリメリット酸であることが好ましく、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸であることがより好ましい。また、上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸の中では、それらの酸一無水物を用いることが好ましい。上述したジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
また、一般式(8)で表されるエポキシ化合物と、不飽和基含有モノカルボン酸との反応物である一般式(9)で表されるジオールの分子中のヒドロキシ基に対して、反応させる(b)テトラカルボン酸またはその酸二無水物の例には、鎖式炭化水素テトラカルボン酸、脂環式炭化水素テトラカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸、またはそれらの酸二無水物等が含まれる。
【0053】
上記鎖式炭化水素テトラカルボン酸の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸、および脂環式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された鎖式炭化水素テトラカルボン酸等が含まれる。
【0054】
上記脂環式炭化水素テトラカルボン酸の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸、および鎖式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された脂環式テトラカルボン酸等が含まれる。
【0055】
芳香族テトラカルボン酸の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸等が含まれる。
【0056】
上記テトラカルボン酸の中では、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸であることが好ましく、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸であることがより好ましい。また、テトラカルボン酸またはその酸二無水物においては、その酸二無水物を用いることが好ましい。なお、上述したテトラカルボン酸またはその酸二無水物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0057】
上記一般式(9)で表されるジオールの分子中のヒドロキシ基に対して反応させる(a)ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物と、(b)テトラカルボン酸またはその酸二無水物とのモル比(a)/(b)は、0.01以上10.0以下であることが好ましく、0.02以上3.0未満であることがより好ましい。モル比(a)/(b)が0.01以上10.0以下であると、良好な光パターニング性を有する感光性樹脂組成物とするための最適分子量が得られる。なお、モル比(a)/(b)が小さいほど分子量は大きくなり、アルカリ溶解性は低下する傾向にある。
【0058】
また、一般式(8)で表されるエポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応、および当該反応で得られた一般式(9)で表されるジオールと多塩基酸またはその酸無水物との反応は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
【0059】
上記反応で合成される一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2500以上であり、2500以上100000以下であることが好ましく、2500以上25000以下であることがより好ましい。上記重量平均分子量(Mw)がより大きいほど、(メタ)アクリレート樹脂(後述)と相分離をして、硬化膜の最表層側(基材と接していない面)に薄層(10〜100nm)を形成するので、反射防止膜等を硬化膜の最表層(基材と接していない面)に設けなくても反射率を低減することができる。また、上記重量平均分子量(Mw)がより小さいほど、アルカリ現像時のパターンの密着性の低下を抑制することができるとともに、塗布に好適な感光性樹脂組成物の溶液粘度に調整しやすく、アルカリ現像に時間を要しすぎることがない。
【0060】
また、上記一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価は、30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましく、40mgKOH/g以上140mgKOH/g以下であることがより好ましく、80mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であることがより好ましい。上記アルカリ可溶性樹脂の酸価が30mgKOH/g以上であると、アルカリ現像時に残渣が残りにくくなる。また、200mgKOH/g以下であると、アルカリ現像液の浸透が早くなり過ぎないので、剥離現像を抑制することができる。
【0061】
一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製)で測定することができる。また、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価は、例えば、電位差滴定装置「COM−1600」(平沼産業株式会社製)を用いて測定することができる。
【0062】
なお、(i)成分の一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂については、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0063】
一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の質量は、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂と、一般式(13)で表される(メタ)アクリレート樹脂(後述)との全質量に対して、40〜99質量%であることが好ましく、40〜90質量%であることがより好ましく、40〜80質量%であることがさらに好ましく、50〜80質量%であることがさらに好ましく、65〜80質量%であることが特に好ましい。上記アルカリ可溶性樹脂の質量が40〜99質量%であると、高精細なパターン形成を維持したまま反射率を低減できる。
【0064】
((メタ)アクリレート樹脂)
本発明の一実施の形態に係る(ii)成分である、側鎖にカルボキシ基および重合性不飽和基を有する重量平均分子量が6000以上の(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、下記一般式(13)で表される。一般式(13)は各ユニットがそれぞれm個、o個、p個含まれるランダム共重合体である。
【0066】
(式(13)中、R
8、R
10、R
11は、独立して水素原子またはメチル基であり、R
9は炭素数1〜20の炭化水素基であり、前記R
9は内部にエーテル性酸素原子またはウレタン結合を含んでいてもよい。R
12は、独立して炭素数2〜10の2価の炭化水素基であり、gは、独立して0または1の数であり、m、oおよびpは、独立して任意の整数である。)
【0067】
上記一般式(13)で表される側鎖にカルボキシ基および重合性不飽和基を有する重量平均分子量が6000以上の(メタ)アクリレート樹脂(ii)(以下、単に、「一般式(13)で表される(メタ)アクリレート樹脂」ともいう)の製造方法について説明する。
【0068】
本発明の一実施の形態に係る一般式(13)で表される(メタ)アクリレート樹脂は、一般式(5)で表される(メタ)アクリレートと、一般式(6)で表される(メタ)アクリル酸と、を共重合させて得られる、下記一般式(14)で表される多価カルボン酸化合物から誘導される。一般式(14)は各ユニットがそれぞれm個、o個含まれるランダム共重合体である。
【0070】
(式(5)中、R
8は水素原子またはメチル基であり、R
9は炭素数1〜20の炭化水素基であり、前記R
9は内部にエーテル性酸素原子またはウレタン結合を含んでいてもよい。)
【0072】
(式(6)中、R
10は水素原子またはメチル基である。)
【0074】
(式(14)中、R
8、R
10は水素原子またはメチル基であり、R
9は炭素数1〜20の炭化水素基であり、前記R
9は内部にエーテル性酸素原子またはウレタン結合を含んでいてもよい。oおよびmは、任意の整数である。)
【0075】
上記一般式(5)で表されるR
9の炭化水素基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、エイコシル基などの直鎖状炭化水素基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデシルメチル基、デカヒドロナフチル基、下記一般式(15)で表される置換基などの環状脂肪族炭化水素基、メトキシエチル基、2−(メトキシエトキシ)エチル基等の脂肪族エーテル類、2−(エトキシカルボニルアミノ)エチル基などの脂肪族ウレタン類が含まれる。
【0077】
(式(15)中、R
13は、水素原子またはメチル基である。)
【0078】
上記炭化水素基の中では、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデシルメチル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデシルメチル基であることがより好ましい。
【0079】
上記一般式(5)で表される(メタ)アクリレートについては、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。また、一般式(6)で表される(メタ)アクリル酸については、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0080】
上記一般式(14)で表される多価カルボン酸は、一般式(5)で表される(メタ)アクリレートに由来する構成成分と、一般式(6)で表される(メタ)アクリル酸に由来する構成成分とが、基本的にランダムに結合した共重合体である。なお、共重合させる方法は、特に制限されず、公知の共重合方法を採用することができる。
【0081】
一般式(14)で表される多価カルボン酸における一般式(5)で表される(メタ)アクリレートに由来する構成成分の繰り返し単位(m)および一般式(6)で表される(メタ)アクリル酸に由来する構成成分の繰り返し単位(o)は、一般式(7)で表されるエポキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させることを考慮して、mとoとの数の総和を100とした場合のmは20〜70であることが好ましく、30〜60であることがより好ましい。また、oは30〜80であることが好ましく、40〜70であることがより好ましい。なお、m、oは、独立して任意の整数である。mを20〜70に、oを30〜80にすることにより、アルカリ現像液に対する溶解性と硬化性の両立が可能である。
【0082】
そして、一般式(14)で表される多価カルボン酸化合物のカルボキシ基の一部に、一般式(7)で表されるエポキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させることにより、本発明の一実施の形態に係る一般式(13)で表される(メタ)アクリレート樹脂が得られる。なお、上記構成成分の結合順序は特に規則性はなく、基本的にランダムに結合した共重合体である。
【0084】
(式(7)中、R
11は水素原子またはメチル基であり、R
12は炭素数2〜10の2価の炭化水素基であり、gは0または1の数である。)
【0085】
一般式(13)において、一般式(5)で表される(メタ)アクリレート化合物に由来する構成成分、一般式(6)で表される(メタ)アクリル酸化合物に由来する構成成分、および一般式(6)で表される(メタ)アクリル酸に由来する構成成分のカルボキシ基の一部に、一般式(7)で表されるエポキシ基を有する(メタ)アクリレートが付加した構成成分の3種の構成成分の結合順序は特に規則性はなく、3種の構成成分が基本的にランダムに結合した共重合体である。
【0086】
上記一般式(14)で表される多価カルボン酸中のカルボキシ基の一部に、一般式(7)で表されるエポキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させる際に使用する溶媒は、特に制限されないが、反応温度より高い沸点を有する溶媒であることが好ましい。
【0087】
上記溶媒の例には、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、酢酸ブチル等の高沸点のエーテル系もしくはエステル系の溶媒、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒等が含まれる。
【0088】
また、使用する触媒は、特に制限されず、例えば、特開平9−325494号公報に記載のテトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類等が含まれる。
【0089】
一般式(14)で表される多価カルボン酸と一般式(7)で表されるエポキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させて、一般式(13)で表される(メタ)アクリレート樹脂を製造する際の反応温度は、20〜140℃であることが好ましく、40〜130℃であることがより好ましい。
【0090】
また、一般式(13)で表される(メタ)アクリレート樹脂を製造する際の一般式(7)で表されるエポキシ基を有する(メタ)アクリレートと、一般式(14)で表される多価カルボン酸の仕込み比は、一般式(13)で表される(メタ)アクリレート樹脂の酸価および硬化性を調整する目的で、任意に変更できる。この際、一般式(14)で表される多価カルボン酸中のカルボキシ基に対する一般式(7)で表されるエポキシ基を有する(メタ)アクリレート中のエポキシ基の仕込み比は、10〜50モル%が好ましく、30〜50モル%であることがより好ましい。
【0091】
また、一般式(13)で表される(メタ)アクリレート樹脂中の繰り返し単位(m、o、p)の総和を100とした場合の繰り返し単位(m、o、p)のそれぞれの数は、酸価および硬化性を調整する目的で、任意に変更できる。上記繰り返し単位(m)は20〜70であることが好ましく、30〜60であることがより好ましく、上記繰り返し単位(o)は、5〜70であることが好ましく、10〜50であることがより好ましく、繰り返し単位(p)は10〜75であることが好ましく、20〜60であることがより好ましい。mが20〜70であると重合性二重結合の含有量が低下して硬化膜の密着性や硬度が低下するのを抑制することができる。また、oが10〜50であると硬化膜の吸水率が高くなり過ぎないので、有機溶剤への溶解性が向上する。また、pが10〜40であると硬化時の体積収縮が大きくなり過ぎないので、基板との密着性、表面の平坦性を向上させることができる。
【0092】
一般式(13)で表される(メタ)アクリレート樹脂の重量平均分子量(Mw)は6000以上であり、6000以上1000000以下であることが好ましく、10000以上100000以下であることがより好ましい。上記重量平均分子量(Mw)がより大きいほど、前述のアルカリ可溶性樹脂と相分離をして、硬化膜の最表層側(基材と接していない面)に薄層(10〜100nm)を形成し、反射防止膜等を硬化膜の最表層(基材と接していない面)に設けなくても反射率を低減しやすくなる。また、上記重量平均分子量(Mw)がより小さいほど、密着性の低下、硬化性の低下および上記相分離による外観の劣化を抑制することができる。
【0093】
また、一般式(13)で表される(メタ)アクリレート樹脂の酸価は、30mgKOH/g以上200mgKOH/gであることが好ましく、40mgKOH/g以上140mgKOH/g以下であることがより好ましい。上記(メタ)アクリレート樹脂の酸価が30mgKOH/g以上であると、アルカリ現像時に残渣が残りにくくなる。また、200mgKOH/g以下であると、アルカリ現像液の浸透が早くなり過ぎないので、剥離現像を抑制することができる。
【0094】
上記一般式(13)で表される(メタ)アクリレート樹脂の重量平均分子量(Mw)および酸価は、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂で用いた測定装置と同様の装置で測定することができる。
【0095】
一般式(13)で表される(メタ)アクリレート樹脂の質量は、前述の一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂と、一般式(13)で表される(メタ)アクリレート樹脂の全質量に対して、1〜60質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、20〜60質量%であることがさらに好ましく、20〜50質量%であることがさらに好ましく、20〜35質量%であることが特に好ましい。また、上記(メタ)アクリレート樹脂の質量が、1〜60質量%であると、架橋構造の形成が十分となるため、硬化後の硬化膜が脆くなりにくい。なお、相分離による反射率の低下効果をより効果的に得る観点からは、上記一般式(13)で表される(メタ)アクリレート樹脂の質量の割合はより高いことが好ましい。また、上記相分離による表面の質感の低下を抑制する観点からは、上記一般式(13)で表される(メタ)アクリレート樹脂の質量の割合は50質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。
【0096】
(遮光材)
本発明の一実施の形態に係る(iii)成分である遮光材は、黒色有機顔料、黒色無機顔料または混色有機顔料からなる群から選択される。
【0097】
本発明で使用できる遮光材は、1〜1000nmの平均粒径で分散されたものであれば、公知の遮光成分を特に制限なく使用することができる。上記遮光材の平均粒径は、例えば、レーザー回折・散乱法粒径分布計、動的光散乱法粒径分布計で測定することができる。
【0098】
上記黒色有機顔料の例には、ペリレンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、ラクタムブラック、などが含まれる。
【0099】
上記黒色無機顔料の例には、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、およびチタンブラックなどが含まれる。
【0100】
上記混色有機顔料の例には、アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾメチン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、スレン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料などの有機顔料から選択される少なくとも2色の顔料を混合して擬似黒色化された混合顔料が含まれる。
【0101】
上記遮光材は、目的とする感光性樹脂組成物の機能に応じて、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。たとえば、カラーフィルターのブラックマトリックスの製造に用いられる遮光レジストとしては、カーボンブラック、チタンブラック、黒色有機顔料等を用いることができ、カラーフィルターの画素の製造に用いられる着色レジストとしては、赤色、橙色、黄色、緑色、青色、紫色の有機顔料等を用いることができ、プリント配線板の絶縁膜の製造に用いられるソルダーレジストとしては、有機顔料、無機顔料、無機フィラー等を用いることができ、タッチパネルの前面ガラスの意匠に用いられる加飾レジストとしては、カーボンブラック、チタンブラック、黒色有機顔料、白色顔料等を、高硬度、高耐久性の透明レジストとしてはシリカ等の透明フィラーを用いることができ、それぞれ適宜選定して使用することができる。
【0102】
なお、(iii)成分として混色有機顔料を用いる場合に使用可能な有機顔料の例には、カラーインデックス名で以下のナンバーのものが含まれるが、これに限定されない。
ピグメント・レッド2、3、4、5、9、12、14、22、23、31、38、112、122、144、146、147、149、166、168、170、175、176、177、178、179、184、185、187、188、202、207、208、209、210、213、214、220、221、242、247、253、254、255、256、257、262、264、266、272、279等
ピグメント・オレンジ5、13、16、34、36、38、43、61、62、64、67、68、71、72、73、74、81等
ピグメント・イエロー1、3、12、13、14、16、17、55、73、74、81、83、93、95、97、109、110、111、117、120、126、127、128、129、130、136、138、139、150、151、153、154、155、173、174、175、176、180、181、183、185、191、194、199、213、214等
ピグメント・グリーン7、36、58等
ピグメント・ブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、80等
ピグメント・バイオレット19、23、37等
【0103】
上記遮光材の含有量は、所望の遮光度によって任意に決めることができるが、感光性樹脂組成物中の固形成分に対して20〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。
【0104】
遮光材として、アニリンブラック、シアニンブラック、ラクタムブラック等の黒色有機顔料、またはカーボンブラック、チタンブラック等の黒色無機顔料を用いる場合は、感光性樹脂組成物中の固形成分に対して40〜60質量%であることが特に好ましい。遮光材の含有量が、感光性樹脂組成物中の固形成分に対して20質量%以上であると、遮光性を十分に得ることができる。また、遮光材の含有量が、感光性樹脂組成物中の固形成分に対して80質量%以下であると、本来のバインダーとなる感光性樹脂の含有量が減少することがないため、所望する現像特性および膜形成能を得ることができる。
【0105】
上記遮光材は、溶剤に分散させた遮光材分散体として他の配合成分と混合するのが通常であり、その際には分散剤を添加することができる。使用できる分散剤は、特に制限されず、顔料(遮光材)分散に用いられている公知の化合物(分散剤、分散湿潤剤、分散促進剤等の名称で市販されている化合物等)等を使用することができる。
【0106】
分散剤の例には、カチオン性高分子系分散剤、アニオン性高分子系分散剤、ノニオン性高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤(分散助剤)が含まれる。特に、分散剤は、着色剤への吸着点としてイミダゾリル基、ピロリル基、ピリジル基、一級、二級または三級のアミノ基等のカチオン性の官能基を有し、アミン価が1〜100mgKOH/g、数平均分子量(Mn)が1000〜100000の範囲にあるカチオン性高分子系分散剤であることが好ましい。この分散剤の含有量は、遮光材の全質量に対して1〜35質量%であることが好ましく、2〜25質量%であることがより好ましい。なお、樹脂類のような高粘度物質は、一般に分散を安定させる作用を有するが、分散促進能を有しないものは分散剤として扱わない。しかし、分散を安定させる目的で使用することを制限するものではない。
【0107】
(光重合性モノマー)
本発明の一実施の形態に係る感光性樹脂組成物は、(iv)成分である少なくとも2個の重合性不飽和基を有する光重合性モノマーを含むことが好ましい。
【0108】
上記光重合性モノマーの例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、エチレン性二重結合を有する化合物として(メタ)アクリル基を有する樹枝状ポリマー等が含まれる。これらのモノマーの1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0109】
また、上記光重合性モノマーは、上記アルカリ可溶性樹脂の分子同士を架橋する役割を果たすことができるものであり、この機能を発揮させるためには、少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有することが好ましく、エチレン性不飽和結合を3個以上有するものがより好ましい。また、モノマーの分子量を1分子中の(メタ)アクリル基の数で除したアクリル当量が50〜300g/eqであることが好ましく、アクリル当量は80〜200g/eqであることがより好ましい。なお、上記光重合性モノマーは遊離のカルボキシ基を有しない。
【0110】
また、エチレン性不飽和結合を有する化合物として(メタ)アクリロイル基を有する樹枝状ポリマーを用いることができる。上記樹枝状ポリマーの例には、多官能(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基の中の炭素−炭素二重結合の一部に多価メルカプト化合物を付加して得られる樹枝状ポリマーが含まれる。具体的には、一般式(16)で表される多官能(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基と一般式(17)で表される多価メルカプト化合物を反応させて得られる樹枝状ポリマーなどが含まれる。
【0112】
(式(16)中、R
14は水素原子またはメチル基であり、R
15はR
16(OH)
kのk個のヒドロキシ基の内n個のヒドロキシ基を式中のエステル結合に供与した残り部分である。好ましいR
16(OH)
kとしては、炭素数2〜8の非芳香族の直鎖または分岐鎖の炭化水素骨格に基づく多価アルコールであるか、当該多価アルコールの複数分子がアルコールの脱水縮合によりエーテル結合を介して連結してなる多価アルコールエーテルであるか、またはこれらの多価アルコールまたは多価アルコールエーテルとヒドロキシ酸とのエステルである。)
【0114】
(式(17)中、R
17は単結合または2〜6価のC1〜C6の炭化水素基であり、rはR
17が単結合であるときは2であり、R
17が2〜6価の基であるときは2〜6の整数である。)
【0115】
また、一般式(16)に示されるq、および一般式(17)に示されるrは、独立に2〜20の整数を表すが、q≧rである。
【0116】
上記一般式(16)で表される多官能(メタ)アクリレートの例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。これらの化合物は、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0117】
上記一般式(17)で表される多価メルカプト化合物の例には、トリメチロールプロパントリ(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリ(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールトリ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトプロピオネート)等が含まれる。これらの化合物は、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0118】
(i)成分と(iv)成分との配合割合は、重量比(i)/(iv)で、50/50〜90/10であることが好ましく、60/40〜80/20であることがより好ましい。(i)成分の配合割合が50/50以上であると、硬化後の硬化物が脆くなりにくく、また、未露光部において塗膜の酸価が低くなりにくいためにアルカリ現像液に対する溶解性の低下を抑制できる。よって、パターンエッジがぎざつくことや、シャープにならないといった不具合が生じにくい。また、(i)成分の配合割合が90/10以下であると、樹脂に占める光反応性官能基の割合が十分なので、所望する架橋構造の形成を行うことができる。また、樹脂成分における酸価度が高過ぎないので、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が高くなりにくいことから、形成されたパターンが目標とする線幅より細くなることや、パターンの欠落を抑制することができる。
【0119】
(光重合開始剤)
本発明の一実施の形態に係る感光性樹脂組成物は、(v)成分である光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0120】
上記光重合開始剤の例には、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルビイミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2,4,5−トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類;2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メチルチオスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物類;1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−(4−フェニルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−ベンゾアート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−アセタート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1−オンオキシム−O−アセタート、4−エトキシ−2−メチルフェニル−9−エチル−6−ニトロ−9H−カルバゾロ−3−イル−O−アセチルオキシム、エタノン,1−[9−エチル−6−(2-メチルベンゾイル)−9H-カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のO−アシルオキシム系化合物類;ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン等が含まれる。これらの光重合開始剤は、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0121】
特に、着色剤を含む感光性樹脂組成物とする場合には、O−アシルオキシム系化合物類(ケトオキシムを含む)を用いることが好ましい。好ましく用いることができる化合物群の例としては、一般式(18)および一般式(19)で表されるO−アシルオキシム系光重合開始剤がある。これらの化合物群の中においても、着色剤を高顔料濃度で用いる場合および硬化膜パターンを形成する場合には、365nmにおけるモル吸光係数が10000以上であるO−アシルオキシム系光重合開始剤を用いることが好ましい。なお、本発明でいう「光重合開始剤」とは、増感剤を含む意味で使用される。なお、モル吸光係数は、例えば、紫外可視近赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて測定することができる。
【0123】
(式(18)中、R
18、R
19は、独立してC1〜C15のアルキル基、C6〜C18のアリール基、C7〜C20のアリールアルキル基またはC4〜C12の複素環基を表し、R
20はC1〜C15のアルキル基、C6〜C18のアリール基、C7〜C20のアリールアルキル基を表す。ここで、アルキル基およびアリール基はC1〜C10のアルキル基、C1〜C10のアルコキシ基、C1〜C10のアルカノイル基、ハロゲンで置換されていてもよく、アルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。また、アルキル基は直鎖、分岐、または環状のいずれのアルキル基であってもよい。)
【0125】
(式(19)中、R
21およびR
22は、独立して、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるか、炭素数4〜10のシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基もしくはアルキルシクロアルキル基であるか、または炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。R
23はそれぞれ独立に、炭素数2〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基であり、当該アルキル基またはアルケニル基中の−CH
2−基の一部が−O−基で置換されていてもよい。さらに、これらR
21〜R
23の基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0126】
(v)成分の光重合開始剤の含有量は、(i)および(iv)の各成分の合計100重量部を基準として3〜30重量部であることが好ましく、5〜20重量部であることがより好ましい。(v)成分の配合割合が3重量部以上の場合には、感度が良好であり、十分な光重合の速度を有することができる。(v)成分の配合割合が30重量部以下の場合には、適度な感度を有することができるので、所望するパターン線幅および所望するパターンエッジを得ることができる。
【0127】
(感光性樹脂組成物)
適切な方法で、上記(i)〜(v)成分を混合して分散させることにより、感光性樹脂組成物に用いられる分散液を調製することができる。
【0128】
(溶剤)
本発明の感光性樹脂組成物には、(i)〜(v)の成分の他に、(vi)成分として溶剤を使用することが好ましい。溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類が含まれる。これらを単独または2種類以上を併用して溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。
【0129】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じてエポキシ樹脂等の(i)成分以外の樹脂、硬化剤、硬化促進剤、熱重合禁止剤および酸化防止剤、可塑剤、充填材、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤、カップリング剤等の添加剤を配合することができる。
【0130】
熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。
【0131】
上記可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。
【0132】
上記充填材の例には、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等が含まれる。
【0133】
上記消泡剤やレベリング剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。界面活性剤の例には、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが含まれる。
【0134】
上記カップリング剤の例には、3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0135】
本発明の感光性樹脂組成物は、(vi)成分である溶剤を除いた固形成分(固形成分には硬化後に固形成分となるモノマーを含む)中に、(i)成分であるアルカリ可溶性樹脂と、(ii)成分である(メタ)アクリレート樹脂と、(iii)成分である遮光材と、(iv)成分である光重合性モノマーと、(v)成分である光重合開始剤と、が合計で80質量%以上含まれていることが好ましく、90質量%以上含まれることがより好ましい。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、全体量に対して40〜90質量%であることが好ましい。
【0136】
本発明の感光性樹脂組成物は、(i)〜(v)成分、および任意の添加剤を、混合することにより得ることができる。
【0137】
また、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜は、例えば、感光性樹脂組成物の溶液を基板等に塗布し、溶剤を乾燥し、光(紫外線、放射線等を含む)を照射して硬化させることで得られる。フォトマスク等を使用して光が当たる部分と当たらない部分とを設けて、光が当たる部分だけを硬化させ、他の部分をアルカリ溶液で溶解させれば、所望のパターンが得られる。
【0138】
また、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜はブラックマトリックスとしてカラーフィルターに用いることができる。例えば、膜厚が1.0〜2.0μmである硬化膜を透明基材上に形成し、硬化膜形成後にレッド、ブルーおよびグリーン各画素をフォトリソグラフィーにより形成すること、また、硬化膜中にインクジェットプロセスでレッド、ブルーおよびグリーンのインクを打ち込むこと等により作製される。
【0139】
また、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜は、液晶表示装置のブラックカラムスペーサーとして使用することもできる。たとえば、単一のブラックレジストを用いて、膜厚の異なる部分を複数作製して、一方をスペーサーとして機能させ、他方をブラックマトリックスとして機能させることもできる。
【0140】
本発明の一実施の形態に係る感光性樹脂組成物の塗布・乾燥による硬化膜の成膜方法の各工程について、具体的に例示する。
【0141】
感光性樹脂組成物を基板に塗布する方法としては、公知の溶液浸漬法、スプレー法、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコート機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プレベーク)ことにより、被膜が形成される。プレベークはオーブン、ホットプレート等による加熱、真空乾燥またはこれらの組み合わせることによって行われる。プレベークにおける加熱温度および加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択されうるが、例えば、80〜120℃で、1〜10分間行われることが好ましい。
【0142】
露光に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、放射線の波長の範囲は、250〜450nmであることが好ましい。また、このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の水溶液を用いることができる。これらの現像液は、樹脂層の特性に合わせて適宜選択されうるが、必要に応じて界面活性剤を添加することも有効である。現像温度は、20〜35℃であることが好ましく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗される。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
【0143】
このようにして現像した後、180〜250℃で、20〜100分間、熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた硬化膜(硬化膜)と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプレベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明のパターニングされた硬化膜(硬化膜)は、フォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。そして、熱により重合または硬化(両者を合わせて硬化ということがある)を完結させ、所望のパターンを有する硬化膜を得ることができる。このときの硬化温度は160〜250℃であることが好ましい。
【0144】
上記方法で得られる硬化膜は、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(メタ)アクリレート樹脂とが相分離をして、硬化膜側の最表層(基材と接していない面)に薄層を形成する。その結果、屈折率を下げた樹脂を用いることなく、また、形成した硬化膜の最表層(基材と接していない面)に、別途、反射防止膜等を設けることなく、容易に反射率を低減した硬化膜を得ることができる。
【0145】
また、本発明のカラーフィルターは、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜をブラックマトリックスとして有するので、良好な視認性を得ることができる。
【実施例】
【0146】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0147】
(i)成分である一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂、および(ii)成分である一般式(13)で表される(メタ)アクリレート樹脂の合成例から説明するが、これらの合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。各種測定機器について、同一の機種を使用した場合には、2か所目から機器メーカー名を省略している。また、実施例において、測定用硬化膜付き基板の作製に使用しているガラス基板は、全て同じ処理を施したガラス基板を使用している。
【0148】
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W
0(g)〕に含浸させて秤量し〔W
1(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の重量〔W
2(g)〕から下記数式(1)より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W
2−W
0)/(W
1−W
0) (1)
【0149】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM−1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N−KOH水溶液で滴定して求めた。
【0150】
[分子量]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuper H−2000(2本)+TSKgelSuper H−3000(1本)+TSKgelSuper H−4000(1本)+TSKgelSuper H−5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS−オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0151】
合成例および比較合成例で使用する略号は次のとおりである。
BPFE :フルオレン−9,9−ジイル基の化合物(9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンとエピクロルヒドリンとの反応物(エポキシ当量250g/eq))
AA :アクリル酸
BPDA :3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA :テトラヒドロ無水フタル酸
TEAB :臭化テトラエチルアンモニウム
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
MAA :メタクリル酸
MMA :メタクリル酸メチル
CHMA :メタクリル酸シクロヘキシル
GMA :メタクリル酸グリシジル
AIBN :アゾビスイソブチロニトリル
TPP :トリフェニルホスフィン
【0152】
[合成例1]
(アルカリ可溶性樹脂)
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中に、BPFE(224.00g、0.45モル)と、AA(64.57g、0.90モル)と、PGMEA(43.27g)と、TEAB(0.94g)と、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(0.10g)と、を仕込み、100〜105℃で20時間撹拌して反応させた。次いで、PGMEA(246.32g)と、BPDA(65.90g、0.225モル)、THPA(34.08g、0.225モル)と、を仕込み、120〜125℃で加熱下に6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)(固形分濃度:56.5質量%、重量平均分子量(Mw):3600、酸価(固形分換算):99.5mgKOH/g)を得た。
【0153】
[合成例2]
((メタ)アクリレート樹脂)
窒素導入管および還流冷却管付き1000ml四つ口フラスコ中に、MAA(61.98g、0.72モル)と、MMA(43.25g、0.43モル)と、CHMA(48.45g、0.29モル)と、AIBN(7.09g)と、ジエチレングリコールジメチルエーテル(432g)と、を仕込み、80〜85℃で窒素気流下、8時間撹拌して重合させた。さらに、上記四つ口フラスコ内にGMA(73.69g、0.52モル)と、TPP(1.76g)と、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(0.10g)と、を仕込み、80〜85℃で16時間撹拌し、(メタ)アクリレート樹脂(ii)−1(固形分濃度:35.5質量%、重量平均分子量(Mw):21500、酸価(固形分換算):50mgKOH/g)を得た。
【0154】
[合成例3]
((メタ)アクリレート樹脂)
窒素導入管および還流冷却管付き1000ml四つ口フラスコ中に、MAA(61.98g、0.72モル)と、MMA(43.25g、0.43モル)と、CHMA(48.45g、0.29モル)と、AIBN(21.28g)と、ジエチレングリコールジメチルエーテル(458g)と、を仕込み、80〜85℃で窒素気流下、8時間撹拌して重合させた。さらに、上記四つ口フラスコ内にGMA(73.69g、0.52モル)と、TPP(1.76g)と、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(0.10g)と、を仕込み、80〜85℃で16時間撹拌し、(メタ)アクリレート樹脂(ii)−2(固形分濃度:35.6質量%、重量平均分子量(Mw):6500、酸価(固形分換算):52mgKOH/g)を得た。
【0155】
[比較合成例]
((メタ)アクリレート樹脂)
窒素導入管および還流冷却管付き1000ml四つ口フラスコ中に、MMA(84.10g、0.84モル)と、CHMA(141.41g、0.84モル)と、AIBN(8.28g)と、ジエチレングリコールジメチルエーテル(430g)と、を仕込み、80〜85℃で窒素気流下、8時間撹拌し、(メタ)アクリレート樹脂(ii)−3(固形分濃度:35.3質量%、重量平均分子量(Mw):19300)を得た。
【0156】
表1に記載の配合量(数値は質量%)で、実施例1〜5および比較例1、2の感光性樹脂組成物を調製した。表中で使用した配合成分は以下のとおりである。
【0157】
(i) :合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂(固形分濃度56.5質量%)
(ii)−1:合成例2で得られた(メタ)アクリレート樹脂(固形分濃度35.5質量%)
(ii)−2:合成例3で得られた(メタ)アクリレート樹脂(固形分濃度35.3質量%)
(ii)−3:比較合成例で得られた(メタ)アクリレート樹脂(固形分濃度35.6量%)
(iii) :カーボンブラック20.0質量%、高分子分散剤5.0質量%のPGMEA分散液(固形分25.0%、カーボンブラックの平均二次粒径162nm)
(iv) :ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(v) :Irgacure OXE02(BASFジャパン社製、「Irgacure」は同社の登録商標)
(vi) :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0158】
【表1】
【0159】
[評価]
実施例1〜5および比較例1、2の感光性樹脂組成物を用いて、以下の評価を行った。また、評価用硬化膜の作製に使用しているガラス基板は、全て同じ処理を施したガラス基板を使用している。
【0160】
(密着性および直線性評価用の硬化膜の作製)
表1に示した感光性樹脂組成物を、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cm
2の紫外線を照射して表面を洗浄した、125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)(以下「ガラス基板」という)上に、加熱硬化処理後の膜厚が1.5μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で1分間プリベークをして硬化膜を作製した。次いで、パターン形成用のネガ型フォトマスクを介して、i線照度30mW/cm
2の高圧水銀ランプを用いて、波長365nmの紫外線を照射して露光した。
【0161】
上記露光した上記硬化膜を23℃、0.15%炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像処理を行った後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、密着性および直線性評価用の硬化膜を得た。
【0162】
[密着性評価]
(評価方法)
本硬化(ポストベーク)後のパターン線幅を光学顕微鏡「ECLIPSE LV100」(株式会社ニコン製)で確認した。
【0163】
(評価基準)
○:L/S(ライン幅/スペース幅)が20μm/20μm以上のパターンが残渣なく形成されているもの
×:L/S(ライン幅/スペース幅)が20μm/20μm未満のパターンが形成されていないか、パターンの裾引きや残渣が目立つもの
【0164】
[直線性評価]
(評価方法)
本硬化(ポストベーク)後の硬化膜の細線パターン直線性を光学顕微鏡「ECLIPSE LV100」で確認した。
【0165】
(評価基準)
○:ガラス基板に対する細線パターンの剥離や欠け、パターン端部のギザツキが認められない
×:ガラス基板に対する細線パターンの剥離や欠け、パターン端部のギザツキが認められる
【0166】
(反射率、光学濃度および外観評価用の硬化膜の作製)
表1に示した感光性樹脂組成物を、ガラス基板上に、加熱硬化処理後の膜厚が1.5μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で1分間プリベークをして硬化膜を作製した。次いで、パターン形成用のネガ型フォトマスクを介さずに、i線照度30mW/cm
2の高圧水銀ランプを用いて、波長365nmの紫外線を照射して露光した。
【0167】
上記露光した上記硬化膜を23℃、0.15%炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像処理を行った後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、反射率、光学濃度および外観評価用の硬化膜を得た。
【0168】
[反射率評価]
(評価方法)
反射率評価用の硬化膜付き基板に対して、紫外可視近赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて入射角2°で硬化膜側(ガラス基板とは反対側)の反射率を測定した。
【0169】
(評価基準)
◎:硬化膜表面の反射率が5.5以下である
○:硬化膜表面の反射率が5.5超6.5以下である
△:硬化膜表面の反射率が6.5超7.5以下である
×:硬化膜表面の反射率が7.5超である
【0170】
[外観評価]
外観評価用の硬化膜の白化、表面のムラ、異物の有無を目視で観察した。
【0171】
(評価基準)
◎:白化、色ムラ、または異物が全く確認されない
○:表面の1/4以下の領域に白化、色ムラ、または異物が観察される
△:表面の1/3以下の領域に白化、色ムラ、または異物が観察される
×:全体に白化、色ムラ、または異物が観察される
【0172】
[光学濃度評価]
(評価方法)
マクベス透過濃度計を用いて、光学濃度(OD)評価用の硬化膜と同様にして作製した硬化膜の光学濃度(OD)を評価した。また、基板に形成した硬化膜の膜厚を測定し、光学濃度(OD)の値を膜厚で割った値をOD/μmとした。
【0173】
光学濃度(OD)は下記数式(1)で算出した。
光学濃度(OD)=−log
10T (1)
(Tは透過率を示す)
【0174】
上記評価結果を表2に示す。
【0175】
【表2】
【0176】
上記実施例1〜5および比較例1、2の結果から明らかなように、本発明のアルカリ可溶性樹脂(i)と、(メタ)アクリレート樹脂(ii)と、を含む感光性樹脂組成物を用いることにより、硬化膜側の反射率を低減でき、かつ、高い遮光性と高精細なパターン形成の両立が可能であることがわかった。
【0177】
また、異なる2種類の樹脂を用いることにより、簡便な方法で反射率を低減でき、かつ、高い遮光性と高精細なパターン形成の両立が可能である感光性樹脂組成物を得られることがわかった。