【解決手段】複数の無線タグ、タグ情報収集装置及び地表移動検出装置を有する災害救助支援システム100において、地表移動検出装置300は、第1の無線タグから送信されたタグ自身の位置情報に基づいて位置を検し、第1の無線タグから送信された第1の時点における位置情報である第1情報及び該第1の時点以降の第2の時点における位置情報である第2情報に基づいて第1の無線タグの移動方向及び移動距離を求め、第1の時点における第1位置の入力と移動方向及び移動距離に基づき第2の時点における位置を第2位置として求め、該第2位置を表す第3情報を供給する。
前記第2位置と、前記第1位置と、前記第1位置及び前記第2位置の移動軌跡と、前記第2位置を含む領域と、前記第2位置の緯度、経度及び高度と、を表示するためのデータを生成するデータ生成部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
前記第2の時点における位置と、前記指定位置と、前記指定位置及び前記第2の時点における位置の移動軌跡と、前記第2の時点における位置を含む領域と、前記第2の時点における位置の緯度、経度及び高度と、を表示するためのデータを生成するデータ生成部を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の位置移動算出システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明に係る災害救助支援システム100の概要を表すブロック図である。
図1に示すように、災害救助支援システム100は、無線タグTG
1〜TG
n(nは2以上の整数)、タグ情報収集装置200、及び地表移動検出装置300を有する。
【0012】
無線タグTG
1〜TG
nは、災害救助支援システム100による災害救助支援の対象となる地域(以下、救助支援対象地域と称する)の地表、或いはこの地域に建てられている建物の屋根又は壁等に分散して設置される。例えば、
図2に示すように、救助支援対象地域内に含まれる山又は台地等の凸状地Cvの地表面に複数の無線タグTG(黒丸にて示す)を一定間隔に設置する。更に、この凸状地Cvに存在する建物Hsの屋根又は壁の表面に複数の無線タグTG(黒丸にて示す)を設置する。
【0013】
図3は、無線タグTG
1〜TG
nの内部構成の一例を示すブロック図である。なお、無線タグTG
1〜TG
nは同一の内部構成を有し、夫々が
図3に示すように、位置検出部11、高度検出部12及び無線通信部13を含む。尚、位置検出部11、高度検出部12及び無線通信部13は例えば単一の半導体チップに形成されている。
【0014】
位置検出部11は、全地球測位システムを利用して自身の位置(緯度、経度)を検出するGPS(global positioning system)受信機を含み、このGPS受信機で検出された緯度及び経度を表す緯度経度情報PSを無線通信部13に供給する。高度検出部12は自身が位置する高度を検出し、この高度を表す高度情報ALを無線通信部13に供給する。無線通信部13は、タグ情報収集装置200から無線送信されたタグ情報要求信号を受信すると、自身を表す識別番号ID及び属性情報PTと共に、緯度経度情報PS及び高度情報ALにて表される位置情報を含むタグ情報を無線送信する。尚、属性とは、この無線タグが
図2に示すような建物Hsに設置されたものであるのか、或いは凸状地Cvの地表面に設置されたものであるのかを示す情報である。
【0015】
すなわち、無線タグTG
1〜TG
nは、タグ情報収集装置200から無線送信されたタグ情報要求に応じて、夫々の識別番号(ID)及び属性(PT)、並びに自身の位置(PS、AL)を夫々表すタグ情報を、タグ情報収集装置200に送信するのである。
【0016】
タグ情報収集装置200は、例えばドローン等の無人航空機、或いはヘリコプター等の有人航空機に搭載され、
図2に示すような救助支援対象地域の上空から、上記したタグ情報要求信号を無線送信する。その後、タグ情報収集装置200は、無線タグTG
1〜TG
nの各々から無線送信されたn個のタグ情報片を受信し、受信したn個のタグ情報片と、その収集日(年、月、日)とを表す収集タグ情報群TDを、地表移動検出装置300に供給する。
【0017】
図4は、地表移動検出装置300の内部構成を表すブロック図である。
図4に示すように、地表移動検出装置300は、制御部30、管理メモリ31及び表示デバイス32を含む。
【0018】
制御部30は、タグ情報収集装置200から供給された収集タグ情報群TDを上記した収集日毎に区分けして管理メモリ31に格納する。
【0019】
また、制御部30は、以下の指定位置情報INP及びモード信号MODの入力を受け付ける。指定位置情報INPとは、
図2に示す救助支援対象地域内において、地滑りや土石流等の地表移動を伴う災害が発生した際に、救助対象者の災害発生前の時点での存在位置として推測される位置(緯度、経度)を指定位置として指定する為の入力情報である。例えば、災害発生の直前の時点で
図2に示す建物Hsに人が存在していると推測される場合には、この建物Hsの位置を指定位置として表す指定位置情報INPを地表移動検出装置300に入力する。また、
図2に示す凸状地Cvとしての山岳地帯に被災した登山者が存在していると推測される場合には、この登山者の登山計画書に基づき災害発生の直前の時点で当該登山者が存在していると推測される位置を指定位置とし、その指定位置を表す指定位置情報INPを地表移動検出装置300に入力する。また、モード信号MODとは、地表移動分布を表示デバイス32に表示させる地表移動分布表示モード、及び地表移動後の救助対象者の移動位置として表示デバイス32に表示させる移動位置表示モードのうちの一方を指定するための信号である。
【0020】
更に、制御部30は、以下の処理を行う地表移動分布算出部301、移動位置算出部302及び表示データ生成部303を有する。
【0021】
地表移動分布算出部301は、管理メモリ31に格納されている収集タグ情報群TDに基づき、救助支援対象地域内での地表移動分布を算出し、当該地表の移動分布を表す地表移動分布データGTを生成する。
【0022】
移動位置算出部302は、地表移動分布データGT及び指定位置情報INPに基づき、指定位置の地表部分の移動後の位置(緯度、経度、高度)を移動位置として求め、その位置を表す移動位置情報DPを生成する。
【0023】
表示データ生成部303は、地表移動分布データGTに基づき、救助支援対象地域内での地表移動の分布を表示する為の地表移動分布表示データを生成する。また、表示データ生成部303は、移動位置情報DPに基づき、救助対象者の位置を表示する為の移動位置表示データを生成する。表示データ生成部303は、表示モード信号MODが地表移動分布表示モードを示す場合には地表移動分布表示データを表示デバイス32に供給する一方、表示モード信号MODが移動位置表示モードを示す場合には移動位置表示データを表示デバイス32に供給する。
【0024】
表示デバイス32は、表示データ生成部303から供給された地表移動分布表示データ又は移動位置表示データに基づく表示を行う。尚、表示デバイス32は、地表移動分布表示データ又は移動位置表示データに基づく画像を2次元又は3次元にて表示する平面ディスプレイ、或いは空間中にその画像を立体的に投影する3次元ディスプレイ等からなる。
【0025】
以下に、
図1に示す災害救助支援システム100の運用手順に沿って、詳細な動作について説明する。
【0026】
先ず、
図2に示すような救助支援対象地域から災害発生前の収集タグ情報群TDを取得しておく。すなわち、災害発生前の時点(第1の時点)で、航空機等に搭載されたタグ情報収集装置200が、
図2に示す救助支援対象地域の上空から、無線タグTG
1〜TG
nの各々から送信されたタグ情報を収集して得られた収集タグ情報群TDを地表移動検出装置300に供給する。すると、地表移動検出装置300の制御部30は、収集タグ情報群TDにて表される情報、つまり、識別番号ID、属性情報PT、及び位置情報(PS、AL)を、災害前タグ情報DB0として、
図5に示すように無線タグTG
1〜TG
nの各々に対応付けして管理メモリ31に格納する。
【0027】
その後、
図2に示すような救助支援対象地域において、地滑りや土石流等の地表移動を伴う災害が発生したら、災害発生後の時点(第2の時点)で、航空機に搭載されたタグ情報収集装置200が再び当該救助支援対象地域の上空から、無線タグTG
1〜TG
nの各々から送信されたタグ情報を収集し、得られた収集タグ情報群TDを地表移動検出装置300に供給する。すると、地表移動検出装置300の制御部30は、収集タグ情報群TDにて表される、識別番号ID、属性情報PT、及び位置情報(PS、AL)を、災害後タグ情報DB1として、
図5に示すように無線タグTG
1〜TG
nの各々に対応付けして管理メモリ31に格納する。
【0028】
制御部30の地表移動分布算出部301は、先ず、
図5に示す災害前タグ情報DB0及び災害後タグ情報DB1に基づき、災害前の無線タグTG
1〜TG
nの設置位置毎に、その設置位置からの地表の移動方向及び移動距離を表す移動ベクトルを算出する。例えば、
図5に示す災害前タグ情報DB0にて表される災害前の無線タグTG
1の設置位置(緯度、経度、高度)と、災害後タグ情報DB1にて表される災害後の無線タグTG
1の現在位置(緯度、経度、高度)とにより、無線タグTG
1の移動ベクトルが求まる。
【0029】
そして、地表移動分布算出部301は、無線タグTG
1〜TG
n各々の災害前の設置位置毎に算出した移動ベクトルを用いた補間演算により、救助支援対象地域の全域に亘る地表の移動ベクトルを表す地表移動分布を求め、当該地表移動分布を表す地表移動分布データGTを生成する。
【0030】
ここで、救助支援を行う管理オペレータが、救助対象者の移動位置を特定する為に、災害発生前に当該救助対象者が存在していると推測される位置を表す指定位置情報INPを地表移動検出装置300に入力する。すると、地表移動検出装置300の移動位置算出部302は、先ず、この指定位置情報INPにて示される指定位置の移動ベクトルを地表移動分布データGTから抽出する。そして、移動位置算出部302は、抽出した移動ベクトルにて示される移動方向において当該移動ベクトルにて示される移動距離の分だけ指定位置から離間した位置を、救助対象者が存在する移動位置として求め、当該移動位置を表す移動位置情報DPを生成する。
【0031】
表示データ生成部303は、救助支援対象地域の地形を模式的に表す画像中に、上記した地表移動分布データGTにて示される地表の移動ベクトルを視覚的に表すマークを付加した地表移動分布画像を表示させる為の地表移動分布表示データを生成する。例えば、表示データ生成部303は、
図6に示すように、救助支援対象地域(Cv、Hs)の地形を表す画像中に、地表の移動ベクトルを視覚的に表す例えば矢印マークYJを付加した地表移動分布画像を表示させる為の地表移動分布表示データを生成する。尚、表示データ生成部303は、災害前タグ情報DB0に含まれる属性情報PTに基づき、各矢印マークYJが建物Hs及び凸状地Cvの地表面のうちのいずれの移動を表すのかを判別し、建物Hsの移動を表す矢印マークYJ(破線にて示す)と、凸状地Cvの地表面での移動を表す矢印マークYJ(実線にて示す)との表示色を異ならせるようにしても良い。
【0032】
更に、表示データ生成部303は、救助支援対象地域の地形を表す画像中に、移動位置情報DPにて表される移動位置(緯度、経度、高度)を中心とする円形、楕円形、或いは多角形の領域を存在領域として表す画像を含む移動位置表示データを生成する。
【0033】
例えば、表示データ生成部303は、
図7に示すように、救助支援対象地域(Cv、Hs)の地形を表す画像中に、指定位置IP、移動位置PP、これら指定位置IP及び移動位置PP間の移動軌跡を表す矢印マークYJ、及び存在領域QPを表す移動位置表示データを生成する。尚、存在領域QPとは、移動位置PPを含み、地表移動分布データGTに基づき救助対象者の存在確率が所定率よりも高いと予測される領域である。尚、表示データ生成部303は、
図7に示すように、存在領域QPの近傍に、移動位置PPの緯度、経度及び高度を表す文字情報が付された移動位置表示データを生成するようにしても良い。
【0034】
ここで、管理オペレータが、地表移動分布表示モードを表す表示モード信号MODを入力すると、表示データ生成部303は、上記した地表移動分布表示データを表示デバイス32に供給する。この際、表示デバイス32は、
図6に示すような地表移動分布を表示する。
【0035】
かかる地表移動分布表示によれば、管理オペレータは、地滑りや土石流等に伴う地表移動の状態、並びに建物(Hs)の倒壊の状態を確認することが可能となる。
【0036】
一方、管理オペレータによって入力された表示モード信号MODが移動位置表示モードを示す場合には、表示データ生成部303は、上記した移動位置表示データを表示デバイス32に供給する。この際、表示デバイス32は、
図7に示すように、救助支援対象地域内において、救助対象者が存在すると推定される移動位置PPを含み且つ救助対象者が存在する可能性が高い存在領域QPを表す移動位置表示を行う。
【0037】
よって、かかる移動位置表示によれば、管理オペレータは、地滑りや土石流等による地表面の移動が考慮された存在領域QPを捜査範囲とする指示を救助隊に出すことが可能となる。従って、本発明によれば、地滑りや土石流等によって地表移動が生じた全地域中から救助対象者の捜索範囲を絞ることができるので、捜索時間の短縮を図ることが可能となる。
【0038】
尚、上記実施例では、無線タグTG
1〜TG
nの各々は、タグ情報収集装置200からのタグ情報要求に応じて、夫々の識別番号(ID)及び属性(PT)、並びに自身の現在位置(PS、AL)を夫々表すタグ情報を無線送信しているが、所定周期毎に自主的にタグ情報を無線送信するようにしても良い。また、タグ情報を無線送信するにあたり、無線タグTG
1〜TG
nが1つずつ順にタグ情報の無線送信を行う、或いは、夫々が異なる搬送波周波数でタグ情報を同時に無線送信する。これにより、タグ情報収集装置200では、無線送信されたタグ情報を無線タグTG
1〜TG
n毎に区分けして収集することが可能となる。
【0039】
また、無線タグTG
1〜TG
nの各々は、自身の位置情報(PS、AL)だけを無線送信するようにしても良い。
【0040】
要するに、夫々が自身の位置情報を得る複数の無線タグ(TG
1〜TG
n)から送信された複数の位置情報片(PS、AL)に基づいて地表移動を検知する地表移動検出装置(300)として、以下の地表移動分布算出部と、移動位置算出部と、を含むものであれば良いのである。つまり、地表移動分布算出部(301)は、複数の無線タグから送信された、第1の時点(例えば地表移動が生じる前の時点)における複数の位置情報片、及び第1の時点以降の第2の時点(例えば地表移動後の時点)における複数の位置情報片に基づいて地表移動分布(GT)を求める。そして、移動位置算出部(302)は、第1の時点における指定位置(IP)の入力に応じて、地表移動分布に基づき指定位置の地表部分の第2の時点における位置を移動位置(PP)として求める。
【0041】
尚、地表移動検出装置300は、ハードウェアで構成しても良いが、パーソナルコンピュータ、或いはスマートフォン等のタブレット型の端末装置で実現しても良い。この際、地表移動検出装置300の地表移動分布算出部301及び移動位置算出部302の動作を、以下の地表移動検出方法に従ったソフトウェアにて実現する。つまり、夫々が自身の位置情報を無線送信する複数の無線タグ(TG
1〜TG
n)から無線送信された複数の位置情報片に基づき移動位置を検出するにあたり、以下の第1〜第4のステップを有するソフトウェアで上記した端末装置を動作させるのである。先ず、複数の無線タグから無線送信された、第1の時点(例えば、地表移動が生じる前の時点)における複数の位置情報片を収集する(第1のステップ)。更に、複数の無線タグから無線送信された第2の時点(例えば、地表移動が生じた後の時点)における複数の位置情報片を収集する(第2のステップ)。そして、これら第1の時点における複数の位置情報片及び第2の時点における複数の位置情報片に基づいて地表移動分布を求め(第3のステップ)、第1の時点での指定位置(IP)の入力に応じて、地表移動分布(GT)に基づき指定位置の地表部分の第2の時点における位置(PP)を求める(第4のステップ)。