【課題】変形が少なく、靭性に優れ、表面にめっき層を有する物品と接触しても相手物品のめっき剥がれが少ない成形品を与えることができる樹脂組成物、及びその成形品を提供する。
ウィスカーが、チタン酸カリウムウィスカー、ケイ酸カルシウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化珪素ウィスカー、三窒化珪素ウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、炭化珪素ウィスカー、及びボロンウィスカーから選択される1以上を含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0011】
[樹脂組成物]
本実施形態に係る樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、全芳香族ポリエステルアミド及びウィスカーを含有する。
(全芳香族ポリエステルアミド)
全芳香族ポリエステルアミドは、必須の構成成分として、下記構成単位(I)〜(V)を含有し、構成単位(I)の含有量が40モル%以上70モル%以下であり、構成単位(II)の含有量が0を超え8モル%以下であり、構成単位(III)の含有量が12.5モル%以上27.5モル%以下であり、構成単位(IV)の含有量が7.5モル%以上22.5モル%以下であり、構成単位(V)の含有量が1モル%以上9モル%以下である。構成単位(I)〜(V)の合計の含有量は100モル%である。
式中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立に2価の芳香族基を表す。
【0012】
構成単位(I)は、4−ヒドロキシ安息香酸(以下、「HBA」ともいう。)から誘導される。全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(I)を40モル%以上70モル%以下含む。構成単位(I)の含有量が40モル%未満であると、または70モル%を超えると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性の両立の観点から、構成単位(I)の含有量は、好ましくは45〜70モル%であり、より好ましくは50〜70モル%であり、更に好ましくは50〜68モル%であり、より更に好ましくは55〜68モル%であり、特に好ましくは55〜65モル%である。
【0013】
構成単位(II)は、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(以下、「HNA」ともいう。)から誘導される。全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(II)を、0を超え8モル%以下含む。構成単位(II)を含まない場合、または8モル%を超えると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(II)の含有量は、好ましくは0.1〜8モル%であり、より好ましくは1〜8モル%であり、更に好ましくは1.5〜7.5モル%であり、より更に好ましくは2〜7.5モル%であり、特に好ましくは2〜7モル%である。
【0014】
構成単位(III)において、Ar
1は、2価の芳香族基を表す。2価の芳香族基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−2,7−ジイル基、ナフタレン−1,6−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基等が挙げられる。構成単位(III)は、芳香族ジカルボン酸から誘導される。例えば、構成単位(III)は、1,4−フェニレンジカルボン酸(以下、「TA」ともいう。)、1,3−フェニレンジカルボン酸(以下、「IA」ともいう。)、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体から誘導される。構成単位(III)は、1,4−フェニレンジカルボン酸、1,3−フェニレンジカルボン酸、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸から選択される1以上から誘導されることが好ましく、1,4−フェニレンジカルボン酸(TA)から誘導されることがより好ましい。
【0015】
構成単位(III)は、以下の式(III−a)〜(III−c)から選択される少なくとも1つの構造を有していることが好ましく、式(III−a)の構造を有していることがより好ましい。
【0016】
全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(III)を12.5モル%以上27.5モル%以下含む。構成単位(III)の含有量が12.5モル%未満、または27.5モル%を超えると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(III)の含有量は、好ましくは13〜27モル%であり、より好ましくは14〜26モル%であり、更に好ましくは15.5〜25.5モル%であり、より更に好ましくは15〜25モル%であり、特に好ましくは15〜23モル%である。
【0017】
構成単位(IV)において、Ar
2は、2価の芳香族基を表す。2価の芳香族基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基、ビフェニル−3,3’−ジイル、ビフェニル−3,4’−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−2,7−ジイル基、ナフタレン−1,6−ジイル基、ナフタレン1,4−ジイル等が挙げられる。構成単位(III)は、芳香族ジオールから誘導される。例えば、構成単位(IV)は、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(以下、「BP」ともいう。)、1,4−ジヒドロキシベンゼン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体から誘導される。構成単位(IV)は、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,4−ジヒドロキシベンゼン、及び2,6−ジヒドロキシナフタレンから選択される1以上から誘導されることが好ましく、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(BP)から誘導されることがより好ましい。
【0018】
構成単位(IV)は、以下の式(IV−a)〜(IV−c)から選択される少なくとも1つの構造を有していることが好ましく、式(IV−a)の構造を有していることがより好ましい。
【0019】
全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(IV)を7.5モル%以上22.5モル%以下含む。構成単位(IV)の含有量が7.5モル%未満、または22.5モル%を超えると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(IV)の含有量は、好ましくは8〜22モル%であり、より好ましくは8〜21モル%であり、更に好ましくは8.5〜21.5モル%であり、より更に好ましくは9〜21モル%であり、特に好ましくは10〜20モル%である。
【0020】
構成単位(V)は、p−アミノフェノール又はN−アセチル−p−アミノフェノールから誘導される。全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(V)を1モル%以上9モル%以下含む。構成単位(V)の含有量が1モル%未満であると、または9モル%を超えると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(V)の含有量は、好ましくは1.5〜9モル%であり、より好ましくは1.5〜8.5モル%であり、更に好ましくは2〜8モル%であり、より更に好ましくは2〜7.5モル%であり、特に好ましくは2.5〜7.5モル%である。
【0021】
全芳香族ポリエステルアミドは、高剛性及び高流動性の観点から、全構成単位に対して構成単位(I)〜(V)を合計で100モル%含むように構成する。
【0022】
次いで、全芳香族ポリエステルアミドの性質について説明する。全芳香族ポリエステルアミドは、溶融時に光学的異方性を示す。溶融時に光学的異方性を示すことは、全芳香族ポリエステルアミドが液晶性ポリマーであることを意味する。
【0023】
本実施形態において、全芳香族ポリエステルアミドが液晶性ポリマーであることは、全芳香族ポリエステルアミドが熱安定性と易加工性を併せ持ち、優れた耐熱性及び成形性を有する成形品を与える上で不可欠な要素である。上記構成単位(I)〜(V)から構成される全芳香族ポリエステルアミドは、構成成分及びポリマー中のシーケンス分布によっては、異方性溶融相を形成しないものも存在するが、本実施形態で用いるポリマーは溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルアミドに限られる。
【0024】
溶融異方性の性質は直交偏光子を利用した慣用の偏光検査方法により確認することができる。より具体的には溶融異方性の確認は、オリンパス社製偏光顕微鏡を使用しリンカム社製ホットステージにのせた試料を溶融し、窒素雰囲気下で150倍の倍率で観察することにより実施できる。液晶性ポリマーは光学的に異方性であり、直交偏光子間に挿入したとき光を透過させる。試料が光学的に異方性であると、例えば溶融静止液状態であっても偏光は透過する。
【0025】
ネマチックな液晶性ポリマーは融点以上で著しく粘性低下を生じるので、一般的に融点又はそれ以上の温度で液晶性を示すことが加工性の指標となる。
全芳香族ポリエステルアミドの融点は、でき得る限り高い方が耐熱性の観点からは好ましいが、ポリマーの溶融加工時の熱劣化や成形機の加熱能力等を考慮すると、350℃以下であることが好ましい目安となる。全芳香族ポリエステルアミドの融点は、耐熱性及び成形性の観点から、より好ましくは310〜350℃であり、更に好ましくは315〜345℃であり、より更に好ましくは320〜340℃である。
【0026】
なお、「融点」とは、示差走査熱量計で測定される融点Tm2を意味している。融点Tm2は、JIS K−7121(1999)に基づいた方法により、室温から20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)した際に観測される吸熱ピークにおけるピークトップの温度(融点Tm1)の測定後、(融点Tm1+40)℃で2分間保持し、次いで20℃/分の降温速度で室温まで冷却し、再度室温から20℃/分の昇温速度で加熱(2ndRUN)した際に観測される2ndRUNの吸熱ピークにおけるピークトップの温度とする。
【0027】
全芳香族ポリエステルアミドは、全芳香族ポリエステルアミドの融点より10〜30℃高い温度、かつ、剪断速度1000/秒における溶融粘度が、1000Pa・s以下であることが好ましい。上記溶融粘度を1000Pa・s以下にすることで、樹脂組成物の成形時において、流動性が確保されやすく、充填圧力が過度になりにくい。全芳香族ポリエステルアミドの溶融粘度は、流動性及び成形性の観点から、より好ましくは4〜500Pa・sであり、更に好ましくは4〜250Pa・sであり、より更に好ましくは5〜100Pa・sである。なお、本明細書において、溶融粘度とは、ISO11443に準拠して測定した溶融粘度をいう。
【0028】
「融点よりも10〜30℃高いシリンダー温度」で測定した溶融粘度とは、シリンダー温度が前記した融点Tm2よりも10〜30℃高い温度のうち全芳香族ポリエステルアミドの組成によって適宜選択したいずれか一の温度で測定した溶融粘度を意味しており、融点Tm2よりも10〜30℃高い温度範囲の全てにおいて測定した溶融粘度が上記範囲内でなくともよい。溶融粘度の調整は、液晶性ポリマーの溶融重合時の最終重合温度を調整することで行うことができる。
【0029】
次いで、全芳香族ポリエステルアミドの製造方法について説明する。本実施形態の全芳香族ポリエステルアミドは、直接重合法やエステル交換法等を用いて重合される。重合に際しては、溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等、又はこれらの2種以上の組み合わせが用いられ、溶融重合法、又は溶融重合法と固相重合法との組み合わせが好ましく用いられる。
【0030】
重合に際し、重合モノマーに対するアシル化剤や、酸塩化物誘導体として末端を活性化したモノマーを使用できる。アシル化剤としては、無水酢酸等の脂肪酸無水物等が挙げられる。
【0031】
これらの重合に際しては種々の触媒の使用が可能であり、代表的なものとしては、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、トリス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト(III)等の金属塩系触媒、1−メチルイミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン等の有機化合物系触媒を挙げることができる。
【0032】
本実施形態においては、溶融重合で得られた樹脂を、さらに固相重合させることにより分子量を増加させることができる。
【0033】
(ウィスカー)
樹脂組成物は、ウィスカーを含む。驚くべきことに、本発明者の研究により、樹脂組成物に添加する充填剤としてウィスカーを用いることで、その樹脂組成物を用いた成形品は、表面にめっき層を有する物品と接触しても相手物品のめっき剥がれが少ないことが分かった。加えて、成形品が少なくとも一部の断面形状として全周のうち一部が開口された形状(例えばコの字形状、L字形状、E字形状など)を有するような場合でも、内倒れ変形が生じにくいことが分かった。
ウィスカーは、ウィスカー状(針状)の無機化合物を意味している。ウィスカーとしては、針状単結晶の無機化合物ウィスカーを挙げることができ、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ケイ酸カルシウムウィスカー(ウォラストナイト)、炭酸カルシウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化珪素ウィスカー、三窒化珪素ウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、炭化珪素ウィスカー、及びボロンウィスカー等が挙げられ、これらから選択される1以上を用いることができる。入手性等の点で、チタン酸カリウムウィスカー、ケイ酸カルシウムウィスカー(ウォラストナイト)、炭酸カルシウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、及びホウ酸アルミニウムウィスカーから選択される1以上を含むことが好ましく、チタン酸カリウムウィスカー及び/又はケイ酸カルシウムウィスカー(ウォラストナイト)を含むことがより好ましい。
【0034】
ウィスカーは、平均繊維長が1〜200μmであることが好ましい。ウィスカーの平均繊維長を1〜200μmの範囲内にすることで、相手物品のめっき剥がれがより少ない成形品を与える樹脂組成物にすることができる。ウィスカーの平均繊維長は、高い剛性及び機械的強度を維持する観点及び相手部品のめっき剥がれをより抑制する観点から、より好ましくは5〜200μmであり、更に好ましくは10〜150μmである。
一実施形態において、ウィスカーの平均繊維長は、1〜50μm、好ましくは5〜40μm、より好ましくは10〜20μmとすることができる。
一実施形態において、ウィスカーの平均繊維長は、50μmを超え200μm以下、好ましくは80〜150μm、より好ましくは100〜150μmとすることができる。
一実施形態において、平均繊維長が1〜50μm、好ましくは5〜40μm、より好ましくは10〜20μmのウィスカーと、平均繊維長が50μmを超え200μm以下、好ましくは80〜150μm、より好ましくは100〜150μmのウィスカーとを併用することもできる。
【0035】
なお、平均繊維長は、ウィスカー100本が撮影された実体顕微鏡画像をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定機によって画像処理手法により測定する。これを10回繰り返し、ウィスカーの本数が1000本となったときの測定値の平均値を採用する。なお、樹脂組成物中のウィスカーの平均繊維長は、樹脂組成物を600℃で2時間加熱して灰化した残渣を上記方法で測定することで得られる。
【0036】
ウィスカーは、平均繊維径が0.1〜15μmであることが好ましい。ウィスカーの平均繊維径を0.1〜15μmの範囲内にすることで、相手物品のめっき剥がれがより少ない成形品を与える樹脂組成物にすることができる。また、内倒れ変形しにくい成形品を与える樹脂組成物にすることができる。ウィスカーの平均繊維径は、高い剛性及び機械的強度を維持する観点及び相手部品のめっき剥がれをより抑制する観点から、より好ましくは0.3〜10μmであり、更に好ましくは0.4〜9μmである。
一実施形態において、ウィスカーの平均繊維径は、1〜15μm、好ましくは3〜10μ、より好ましくは5〜10μmとすることができる。
一実施形態において、ウィスカーの平均繊維径は、0.1〜1μm、好ましくは0.1〜0.8μm、より好ましくは0.1〜0.5μmとすることができる。
一実施形態において、平均繊維径が1〜15μm、好ましくは3〜10μ、より好ましくは5〜10μmのウィスカーと、平均繊維径が0.1〜1μm、好ましくは0.1〜0.8μm、より好ましくは0.1〜0.5μmのウィスカーとを併用することもできる。
【0037】
なお、平均繊維径は、ウィスカー30本を走査型電子顕微鏡で測定し、その平均値を採用する。樹脂組成物中のウィスカーの平均繊維径は、樹脂組成物を600℃で2時間加熱して灰化した残渣を上記方法で測定することで得られる。
【0038】
ウィスカーは、相手部品のめっき剥がれがより少ない成形品を与える樹脂組成物にする観点から、平均アスペクト比が10〜50であることが好ましく、10〜40であることがより好ましい。なお、平均アスペクト比は、平均繊維長/平均繊維径により求めた値とする。
【0039】
(含有量)
全芳香族ポリエステルアミドの含有量は、全樹脂組成物中に55〜80質量%である。全芳香族ポリエステルアミドの含有量を55〜80質量%の範囲内にすることで、液晶性ポリマーが有する優れた流動性、剛性、機械強度、耐熱性、耐薬品性、電気的性質等を十分に発現させることができる。樹脂組成物中の全芳香族ポリエステルアミドの含有量は、耐熱性、高剛性、高流動性の観点から、好ましくは55〜75質量%であり、より好ましくは58〜70質量%であり、更に好ましくは60〜68質量%である。
【0040】
ウィスカーの含有量は、全樹脂組成物中に20〜45質量%である。ウィスカーの含有量を20〜45質量%の範囲内にすることで、優れた耐熱性、高剛性及び高流動性を維持しつつ、表面にめっき層を有する物品と接触しても相手物品のめっき剥がれが少ない成形品を与える樹脂組成物にすることができる。また、内倒れ変形しにくい成形品を与える樹脂組成物にすることができる。ウィスカーの含有量は、優れた耐熱性、高剛性及び高流動性並びに相手部品のめっき剥がれをより抑制する観点から、好ましくは25〜45質量%であり、より好ましくは30〜40質量%であり、更に好ましくは32〜38質量%である。
【0041】
(離型剤)
樹脂組成物には、離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、一般的に入手可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、脂肪酸エステル類、脂肪酸金属塩類、脂肪酸アミド類、低分子量ポリオレフィン等が挙げられ、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル(例えば、ペンタエリスリトールテトラステアレート)が好ましい。
【0042】
離型剤の配合量としては、樹脂組成物において、0.1〜3質量%の範囲が好ましい。離型剤の配合量が0.1質量%以上であると、成形時の離型性が向上するとともに、表面にめっき層を有する物品と接触してもめっき剥がれがより少ない成形品を得やすい。離型剤の配合量が3質量%以下であるとモールドデポジット(即ち、成形における金型への付着物をいう。以下、「MD」ともいう。)が低減しやすい。
【0043】
(その他の添加剤)
樹脂組成物には、使用目的に応じて、各種の粉粒状、板状又は繊維状の無機又は有機の充填剤を配合することができる。
粉粒状無機充填剤としてはカーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナなどの金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
【0044】
板状無機充填剤としてはマイカ、ガラスフレーク、タルク、各種の金属箔等が挙げられる。有機充填剤の例としては、芳香族ポリエステル繊維、液晶性ポリマー繊維、芳香族ポリアミド、ポリイミド繊維等の耐熱性高強度合成繊維等が挙げられる。
【0045】
繊維状無機充填剤としては、ガラス繊維、ミルドガラスファイバー、炭素繊維、アルミナ繊維等の繊維状充填剤(非晶質繊維又は多結晶繊維)等が挙げられる。
【0046】
これらの無機及び有機充填剤は一種又は二種以上を併用することができる。充填剤の使用にあたっては必要ならば収束剤又は表面処理剤を使用することができる。充填剤の配合量は、全樹脂組成物中に20質量%未満であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、無機及び有機充填剤を含有しない構成とすることもできる。
【0047】
特に、少なくとも一部の断面形状として全周のうち一部が開口された形状(例えばコの字形状、L字形状、E字形状など)を有している場合でも当該部分において内倒れ変形が生じにくい成形品を与える樹脂組成物とする観点から、板状充填剤の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、板状充填剤を含有しない構成とすることもできる。
また、表面にめっき層を有する物品と接触してもめっき剥がれが少ない成形品を与える樹脂組成物とする観点から、繊維状充填剤の含有量は、全樹脂組成物中に10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、繊維状充填剤を含有しない構成とすることもできる。
【0048】
樹脂組成物は、液晶性ポリマー以外のその他の樹脂や、酸化防止剤、安定剤、顔料、結晶核剤等の添加剤を含有していてもよい。その他の樹脂及び添加剤の含有量は、樹脂組成物中に20質量%以下であることが好ましい。
【0049】
樹脂組成物の溶融粘度は、全芳香族ポリエステルアミドの融点より10〜30℃高い温度、かつ、剪断速度1000/秒における溶融粘度として、1000Pa・s以下であることが好ましい。樹脂組成物の上記溶融粘度を1000Pa・s以下にすることで、流動性が確保されやすく、充填圧力が過度になりにくい。流動性及び成形性を確保する観点から、樹脂組成物の上記溶融粘度は、より好ましくは4〜500Pa・sであり、更に好ましくは4〜250Pa・sであり、より更に好ましくは5〜100Pa・sである。
【0050】
樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法で調製することができる。例えば、各成分を配合して、これらを1軸又は2軸押出機を用いて溶融混練処理することで、樹脂組成物の調製が行われる。
【0051】
[用途]
本実施形態に係る樹脂組成物は、耐熱性、高機械強度、高剛性及び高流動性を有しているので、種々の立体成形品、繊維、フィルム等に加工できる。例えば、コネクタ、CPUソケット、リレースイッチ部品、ボビン、アクチュエータ、ノイズ低減フィルターケース、電子回路基板又はOA機器の加熱定着ロール等の製造に好ましく用いることができる。中でも、この樹脂組成物は、表面にめっき層を有する物品と接触してもめっき剥がれが少ない成形品を与えることができるので、製造時又は使用時に、めっきされた表面を有する物品と表面同士が擦れ合うような部品、例えば自動車等に搭載されるコネクタ部品(車載コネクタ用部品)の製造に好ましく用いることができる。また、この樹脂組成物は、内倒れ変形が生じにくい成形品を与えることができるので、少なくとも一部の断面形状が全周において一部が開口している形状(コの字形状、L字形状、E字形状など)である成形品の製造に好ましく用いることができる。
【0052】
[成形品]
本実施形態に係る成形品は、上記樹脂組成物を成形して得ることができる。成形方法としては、特に限定されず一般的な成形方法を採用することができる。一般的な成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形、ガスインジェクション成形、インフレーション成形等の方法を例示することができる。
【0053】
成形品は、表面粗さRaが、1.25μm以下であることが好ましい。表面粗さRaを1.25μm以下にすることで、表面にめっき層を有する物品と接触しても相手部品のめっき剥がれをより少なくすることができる。表面粗さRaは、相手部品のめっき剥がれをより少なくする観点から、より好ましくは1.20μm以下であり、更に好ましくは1.15μm以下である。表面粗さRaを小さくする方法としては、ウィスカーの組成や含有量を調整することの他、成形条件を調整すること等により行うことができる。表面粗さRaは、JIS B 0601:1994に準拠して測定した値とする。
【0054】
成形品は、例えば車載コネクタのように使用時に強い振動を受ける場合でも変形による破損を防ぐ観点から、ASTM D790に準拠して測定された曲げ歪みが2.0%以上であることが好ましく、2.2%以上であることがより好ましい。
【0055】
上記樹脂組成物を成形して得られる成形品は、変形が少なくかつ靭性に優れているので、種々の用途に用いることができる。例えば、成形品は、コネクタ、CPUソケット、リレースイッチ部品、ボビン、アクチュエータ、ノイズ低減フィルターケース、電子回路基板又はOA機器の加熱定着ロール等とすることができる。中でも、この成形品は、表面にめっき層を有する物品と接触してもめっき剥がれが少ないので、製造時又は使用時に、めっきされた表面を有する物品と表面同士が擦り合わされるような部品、例えば自動車等に搭載される車載コネクタ部品(例えばIGBTコネクタなど)とすることができる。
【0056】
(コネクタ部品)
図1に、コネクタ部品1及びメス端子20を備えるコネクタ(メスコネクタ)100の一構成例を示す。
図2に、
図1のコネクタ部品1の(a)A−A線に沿った断面図、及び(b)下面図を示す。
コネクタ部品1は、上記した樹脂組成物の射出成形品であり、メス端子20のハウジングとして機能する。コネクタ部品1は、メス端子20を収容するキャビティ2を有する箱体である。コネクタ部品1は、キャビティ2と、キャビティ2を取り囲む側壁3と、側壁3に連なりコンタクト(オス端子:図示しない)が挿入される側に設けられる底床4とを備える。なお、コンタクトは、
図1(b)の矢印方向からコネクタ100内に挿入される。
図2(a)に示すように、コネクタ部品1の上端部から下方に向けてキャビティ2を形成する部分は、断面が、少なくとも一辺が開口した四角形状(コの字形状)となっている。従来、このような形状を有する成形品を、液晶性ポリマーを用いて形成すると、成形品の外側と内側の樹脂の収縮率の違いにより、側壁3が内側に倒れ込み、内角A又はBが小さくなってしまうことがあった。しかし、コネクタ部品1は、上記した樹脂組成物を用いて形成されているので、内倒れ変形が生じにくい。
図2(b)に示すように、コネクタ部品1の下端部は底床4を形成しており、底床4はコンタクトを挿入するコンタクト挿入孔5を有している。コンタクト挿入孔5は、貫通孔であり、図示しないコンタクトを
図1(b)の矢印方向からコネクタ100の内部に導きやすいよう、外側に向かって開口径が拡大する漏斗状に形成されている。コンタクト挿入孔5は、最大開口径(最外部の開口径)がコンタクトの最大径よりも大きく、最小口径(最内部の開口径)がコンタクトの径とほぼ同程度になるように形成されている。
図2(b)に示すコンタクト挿入孔5は、平面形状が四角形に形成されているが、他の形状(例えば円形状等)でもよい。
【0057】
上述のように、コンタクト挿入孔5の最大開口径(コンタクトが挿入される入口側の端部の開口径)は、コンタクトの直径よりも大きい。これにより、コンタクトがコンタクト挿入孔5に容易に挿入される。コンタクト挿入孔5の最小開口径(コンタクトの出口側、つまりコンタクトがコネクタ100内に入る側、の端部の開口径)は、コンタクトの直径と同程度である。これにより、コンタクト挿入孔5に挿入されたコンタクトはコネクタ内に容易に誘導される。
コンタクト挿入孔5の最大開口径は、例えば、コンタクトの実寸が約0.5×約0.7mmである場合に、0.65×0.85mmとすることができる。コンタクト挿入孔5の最小開口径は、例えば、0.50×0.70mmとすることができる。
【0058】
従来のコネクタ部品は、コンタクト挿入孔の内面がコンタクトと接触した際に、特に最小開口径となる部分(例えば
図2(b)のX)の内面がコンタクトに接触した際に、コンタクトの表面に形成されためっき層を削ってしまうことがあった。これに対して、本実施形態に係るコネクタ部品は、上記した樹脂組成物を用いて形成されているので、コンタクトと接触した場合でもめっき剥がれを抑制することができる。また、耐熱性、高強度、高剛性も有しているので、自動車のエンジンルーム等の高温で使用される場合でも破損を防ぐことができる。
【0059】
コネクタ部品1は、コンタクトを挿入する貫通孔(コンタクト挿入孔5)を1以上有し、1以上の貫通孔の内面の表面粗さRaが1.25μm以下であることが好ましい。表面粗さRaを1.25μm以下にすることで、表面にめっき層を有するコンタクトと接触してもコンタクトのめっき剥がれをより少なくすることができる。表面粗さRaは、コンタクトのめっき剥がれをより少なくする観点から、より好ましくは1.20μm以下であり、更に好ましくは1.15μm以下である。表面粗さRaを小さくする方法としては、ウィスカーの組成や含有量を調整することの他、成形条件を調整すること等により行うことができる。表面粗さRaは、JIS B 0601:1994に準拠して測定した値とする。
【0060】
図3は、コネクタ100を用いた電気コネクタ200の一例を示す斜視図である。
図3に示す構造を有する電気コネクタ200は、IGBTコネクタとも呼ばれ、バックプレート、キャップハウジング及びプラグハウジング等の部品で構成されるアウターハウジング30と、アウターハウジング30内に収納された6個のコネクタ100とを備えている。収納されるコネクタ100の数は用途に応じて適宜選択される。電気コネクタ200は、図示しない基板に半田接合される。基板は、通常、厚み方向に貫通した略矩形状のコンタクト挿入孔を有しており、コンタクトは、基板のメスコネクタ(コネクタ100)と反対の面側から、必要に応じてガイドコネクタ等を介して、基板のコンタクト挿入孔に導入され、その後、基板を貫通してメスコネクタ(コネクタ100)に導入され、メス端子20と接続される。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0062】
(全芳香族ポリエステルアミドの製造方法)
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、脂肪酸金属塩触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)4−ヒドロキシ安息香酸 1380g(60モル%)(HBA)
(II)6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸 157g(5モル%)(HNA)
(III−a)1,4−フェニレンジカルボン酸 484g(17.5モル%)(TA)
(IV)4,4’−ジヒドロキシビフェニル 388g(12.5モル%)(BP)
(V)N−アセチル−p−アミノフェノール 126g(5モル%)(APAP)
酢酸カリウム触媒 110mg
無水酢酸 1659g
【0063】
原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に340℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(すなわち1330Pa)まで減圧にして、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部から生成物を排出し、ペレタイズしてペレット状のプレポリマーを得た。得られたプレポリマーを、窒素気流下、300℃で2時間、熱処理(固相重合)を行い、目的とする全芳香族ポリエステルアミドを得た。得られた全芳香族ポリエステルアミドの融点は336℃、溶融粘度は20Pa・sであった。
【0064】
(全芳香族ポリエステルの製造方法)
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、脂肪酸金属塩触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)4−ヒドロキシ安息香酸 1040g(48モル%)(HBA)
(II)6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸 89g(3モル%)(HNA)
(III−a)1,4−フェニレンジカルボン酸 547g(21モル%)(TA)
(III−b)1,3−フェニレンジカルボン酸:91g(3.5モル%)(IA)
(IV)4,4’−ジヒドロキシビフェニル 716g(24.5モル%)(BP)
酢酸カリウム触媒 110mg
無水酢酸 1644g
【0065】
原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから20分かけて5Torr(すなわち667Pa)まで減圧にして、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部から生成物を排出し、ペレタイズしてペレット状の全芳香族ポリエステルを得た。得られた全芳香族ポリエステルの融点は355℃、溶融粘度は10Pa・sであった。
【0066】
得られた全芳香族ポリエステルアミド及び全芳香族ポリエステルの溶融粘度及び融点を後述する方法で測定した。
【0067】
[液晶性ポリマーの物性測定]
液晶性ポリマーの溶融粘度及び融点の測定方法は以下のとおりである。
(溶融粘度)
キャピラリー式レオメーター((株)東洋精機製作所製キャピログラフ)を使用し、下記シリンダー温度、剪断速度1000/秒で、ISO11443に準拠して、液晶性ポリマーの溶融粘度を測定した。測定には、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いた。
シリンダー温度:
350℃(全芳香族ポリエステルアミド)
370℃(全芳香族ポリエステル)
【0068】
(融点)
示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製)にて、液晶性ポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、(Tm1+40)℃の温度で2分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度、20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークの温度を測定した。
【0069】
[実施例1]
全芳香族ポリエステルアミド69.7質量%、チタン酸カリウムウィスカー(大塚化学(株)製、「ティスモ N−102」、平均繊維径0.45μm、平均繊維長15μm、平均アスペクト比33)30質量%、及び滑剤(ペンタエリスリトールテトラステアレート、エメリーオレオケミカルズジャパン(株)製、「LOXIOL VPG861」)0.3質量%を、二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α型)を用いて、シリンダー温度350)℃にて溶融混練し、実施例1の樹脂組成物ペレットを得た。
【0070】
[実施例2〜6、比較例1〜6]
表1に示す材料及び含有量とした以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットを得た。
【0071】
[比較例7]
全芳香族ポリエステル59.7質量%、チタン酸カリウムウィスカー(大塚化学(株)製、「ティスモ N−102」、平均繊維径0.45μm、平均繊維長15μm、平均アスペクト比33)40質量%、及び滑剤(ペンタエリスリトールテトラステアレート、エメリーオレオケミカルズジャパン(株)製、「LOXIOL VPG861」)0.3質量%を、二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α型)を用いて、シリンダー温度370)℃にて溶融混練し、比較例7の樹脂組成物ペレットを得た。
【0072】
なお、表1に示すケイ酸カルシウムウィスカー、タルク、マイカ、シリカ及びガラス繊維は、以下を用いた。
ケイ酸カルシウムウィスカー(ウォラストナイト、IMERYS社製、「NYGLOS 8」、平均繊維径8μm、平均繊維長130μm、平均アスペクト比16)
タルク:松村産業(株)製、「クラウンタルクPP」、メディアン径14.6μm
マイカ:ヤマグチマイカ製、「AB−25S」、メディアン径25.0μm
シリカ:デンカ(株)製、「FB−5SDC」、メディアン径5.0μm
ガラス繊維:日本電気硝子(株)製、「ECS03T−786」、平均繊維径10μm、平均繊維長3mm
【0073】
[樹脂組成物の物性測定及び評価]
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物について、溶融粘度、曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪み、荷重たわみ温度、表面粗さRaを以下の方法で測定した。また、成形性(コネクタ最小充填圧力)、変形(内倒れ変形)、金めっき削れを以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0074】
(溶融粘度)
キャピラリー式レオメーター((株)東洋精機製作所製キャピログラフ)を使用し、下記シリンダー温度、剪断速度1000/秒で、ISO11443に準拠して、樹脂組成物の溶融粘度を測定した。測定には、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いた。
シリンダー温度:
350℃(実施例1〜6、比較例1〜6)
370℃(比較例7)
【0075】
(表面粗さRa)
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製「SE100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、試験片(12.5mm×120mm×厚み0.8mm、2点サイドゲート、中央部分にウェルド部が形成されている薄肉ウェルド評価型)を得た。この試験片のエジェクタピン側表面について、JIS B 0601:1994に準拠して、表面粗さRaを測定した。測定条件は以下のとおりである。
〔試験片の成形条件〕
シリンダー温度:
350℃(実施例1〜6、比較例1〜6)
370℃(比較例7)
金型温度:80℃
射出速度:33mm/sec
〔測定条件〕
測定機:KEYENCE製 レーザー顕微鏡 VK−9500
測定倍率:20倍、ピッチ0.1μm、距離(Distance)30〜40μm
測定箇所:ゲートを上側にして試験片をおいた時のウェルド部の上側中央
中心線平均粗さ(Ra)
【0076】
(曲げ試験)
実施例及び比較例で得られた樹脂ペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製「SE100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、130mm×13mm×0.8mmの曲げ試験片を作製した。この試験片を用いて、ASTM D790に準拠し、曲げ強度、曲げ弾性率、及び曲げ歪みを測定した。
〔成形条件〕
シリンダー温度:
350℃(実施例1〜6、比較例1〜6)
370℃(比較例7)
金型温度:90℃
射出速度:33mm/sec
保圧:50MPa
【0077】
(荷重たわみ温度)
実施例及び比較例で得られた樹脂ペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製「SE100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、4mm×10mm×80mmの試験片を得た。この試験片を用いて、ISO75−1,2に準拠した方法で荷重たわみ温度を測定した。なお、曲げ応力としては、1.8MPaを用いた。
〔成形条件〕
シリンダー温度:
350℃(実施例1〜6、比較例1〜6)
370℃(比較例7)
金型温度:90℃
射出速度:33mm/sec
保圧:50MPa
【0078】
(流動性:コネクタ最小充填圧力)
実施例及び比較例で得られた樹脂ペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製「SE30DUZ」)を用いて、以下の成形条件で成形し、
図4に示すような、0.6mmピッチコネクタを得た。
図4(a)は平面図、
図4(b)は側面図、
図5(c)はA−A断面図である。成形品(0.6mmピッチコネクタ)サイズは、基本肉厚が0.6mm、全長が57.2mm、端子間ピッチが0.3mm、端子ピッチが0.3mm、極数が90ピン×2列(計180ピン)であった。
〔成形条件〕
シリンダー温度:
350℃(実施例1〜6、比較例1〜6)
370℃(比較例7)
金型温度:80℃
射出速度:200mm/sec
保圧:50MPa
【0079】
図4の0.6mmピッチコネクタを射出成形する際に良好な成形品(つまり、金型形状の再現性に優れる成形性)を得られる最小の射出充填圧力を最小充填圧力として測定し、以下の基準に従って評価した。最小充填圧力が低いほど、流動性が優れていると評価できる。
2(良好):最小充填圧力が100MPa以下
1(不良):最小充填圧力が100MPaを超える
【0080】
(めっき削れ)
実施例及び比較例で得られた樹脂ペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製「SE100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、100mm×100mm×3mmの試験片を得た。この試験片上に、表面に金めっき(平均厚み20μm程度)を施した半径2mmの球状の金属部品(SUS製)を荷重50gで静置したのち、水平方向(TD方向)に速度10mm/sで20mm摺動させ、金属部品表面のめっき層が削られるか否かを目視で評価した。
〔成形条件〕
シリンダー温度:
350℃(実施例1〜6、比較例1〜6)
370℃(比較例7)
金型温度:90℃
射出速度:33mm/sec
保圧:50MPa
2(良好):めっき層が削られていない
1(不良):めっき層の一部が削られている
【0081】
(反り変形:コネクタ反り)
実施例及び比較例で得られた樹脂ペレットを用いて作製された
図4に示す0.6mmピッチコネクタについて、
図5に示すとおり、コネクタ固定面両端の点を結んだ直線とコネクタ中央部分の点との距離を測定し、10個のコネクタについての測定値の平均を反りとした。
2(良好):反りの差が0.3mm以下
1(不良):反りの差が0.3mmを超える
【0082】
(内倒れ変形評価)
実施例及び比較例で得られた樹脂ペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製「SE30DUZ」)を用いて、以下の成形条件で成形し、
図6(a)及び
図6(b)に示す、長手方向に垂直な断面形状が、一辺が開放した四角形状(コの字型)である液晶性ポリマー成形体(10mm×5mm×5mm、厚み:0.5mm)を得、(株)キーエンス製画像寸法測定器IM−6020を使用し、
図6(b)に示す角A(ゲート側)及び角B(反ゲート側)を測定した。角Aと角Bとの和A+Bを内倒れ変形として算出し、以下の基準に従って評価した。
〔成形条件〕
シリンダー温度:
350℃(実施例1〜6、比較例1〜6)
370℃(比較例7)
金型温度:90℃
射出速度:100mm/sec
2(良好):175°以上
1(不良):175°未満
【0083】
【表1】