【構成】受電コイルを有し、受電コイルが受けた交流磁界により得られた交流電圧に基づいて、無線通信と無線受電とを切り替えつつ行う無線受電装置であって、交流電圧を整流して直流電圧を得る整流回路と、直流電圧を受け、当該直流電圧を安定化して無線通信を行うための通信用動作電圧を得る通信用安定化回路と、直流電圧を安定化して無線受電の受電電力を得る電力供給用安定化回路と、通信用動作電圧を受けて動作し、無線通信を行うとともに、電力供給用安定化回路の動作を制御する通信制御回路と、を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明に係る無線給電装置10及び無線受電装置20を含む無線電力伝送システム100の構成を示す回路図である。無線電力伝送システム100では、無線給電装置10に設けられている送電コイルTCと、無線受電装置20に設けられている受電コイルRCとの間の磁気結合によって、無線給電装置10側から無線受電装置20に電力を伝送する。
【0018】
無線給電装置10は、送電側共振回路11、電力供給用駆動回路12及び通信用駆動回路13を含む。
【0019】
送電側共振回路11は、並列接続された共振キャパシタC1及び送電コイルTCから構成されている。送電側共振回路11は、共振周波数が例えば13.56MHzに設定されており、電力供給用駆動回路12及び通信用駆動回路13から交流駆動電流の供給を受けて交流磁界を発生させる。送電側共振回路11には、電力供給用駆動回路12及び通信用駆動回路13が並列に接続されている。
【0020】
電力供給用駆動回路12及び通信用駆動回路13は、送電側共振回路11の共振周波数と略等しい13.56MHzの高周波の交流駆動電流を夫々生成し、駆動ラインL1及びL2を介して送電側共振回路11に供給する。電力供給用駆動回路12は、第1駆動部12a及び第2駆動部12bから構成されている。同様に、通信用駆動回路13は、第1駆動部13a及び第2駆動部13bから構成されている。
【0021】
無線受電装置20は、受電側共振回路21、整流回路22及び負荷回路23を含む。無線受電装置20は、無線給電装置10が生成した交流磁界からクロック信号を抽出し、抽出したクロック信号を動作クロックとして動作を行う。
【0022】
受電側共振回路21は、並列接続された共振キャパシタC2及び受電コイルRCから構成されている。受電側共振回路11は、共振周波数が例えば13.56MHzに設定されており、無線給電装置10の送電コイルTCが発生させた交流磁界により受電コイルRCと送電コイルTCとが磁気結合し、当該交流磁界に対応した電圧値を有する交流電圧をラインL3及びL4に印加する。
【0023】
整流回路22は、4つの整流用のダイオードD1〜D4が接続されたダイオードブリッジ及び平滑用のキャパシタSCを含む。整流回路22は、ラインL3及びL4に印加された交流電圧を全波整流及び平滑化して直流電圧を生成し、ラインL5及びL6を介して負荷回路23に供給する。
【0024】
負荷回路23は、整流回路22により平滑化された直流電圧の供給を受ける。負荷回路23は、例えば二次電池を充電する充電回路、或いはICカード等の各種電子機器の電源回路である。
【0025】
図2は、電力供給用駆動回路12及び通信用駆動回路13をCMOSトランジスタから構成した場合の無線給電装置10及び無線受電装置20を含む無線電力伝送システム100の構成を示す図である。
【0026】
電力供給用駆動回路12の第1駆動部12aは、第1チャネル型(第1導電型)のトランジスタであるPMOSトランジスタM1(以下、単にトランジスタM1と称する)及び第2チャネル型(第2導電型)のトランジスタであるNMOSトランジスタM2(以下、単にトランジスタM2と称する)から構成されている。トランジスタM1のソースには電源電位VDDが印加され、トランジスタM2のソースには接地電位GNDが印加されている。トランジスタM1及びM2のドレインは、互いに接続されるとともに、ラインL1に接続されている。
【0027】
電力供給用駆動回路12の第2駆動部12bは、第1チャネル型(第1導電型)のトランジスタであるPMOSトランジスタM3(以下、単にトランジスタM3と称する)及び第2チャネル型(第2導電型)のトランジスタであるNMOSトランジスタM4(以下、単にトランジスタM4と称する)から構成されている。トランジスタM3のソースには電源電位VDDが印加され、トランジスタM4のソースには接地電位GNDが印加されている。トランジスタM3及びM4のドレインは、互いに接続されるとともに、ラインL2に接続されている。
【0028】
通信用駆動回路13の第1駆動部13aは、第1チャネル型(第1導電型)のトランジスタであるPMOSトランジスタM5(以下、単にトランジスタM5と称する)及び第2チャネル型(第2導電型)のトランジスタであるNMOSトランジスタM6(以下、単にトランジスタM6と称する)から構成されている。トランジスタM5のソースには電源電位VDDが印加され、トランジスタM6のソースには接地電位GNDが印加されている。トランジスタM5及びM6のドレインは、互いに接続されるとともに、トランジスタM1及びM2のドレインに接続され、ラインL1に接続されている。
【0029】
通信用駆動回路13の第2駆動部13bは、第1チャネル型(第1導電型)のトランジスタであるPMOSトランジスタM7(以下、単にトランジスタM7と称する)及び第2チャネル型(第2導電型)のトランジスタであるNMOSトランジスタM8(以下、単にトランジスタM8と称する)から構成されている。トランジスタM7のソースには電源電位VDDが印加され、トランジスタM8のソースには接地電位GNDが印加されている。トランジスタM7及びM8のドレインは、互いに接続されるとともに、トランジスタM3及びM4のドレインに接続され、ラインL2に接続されている。
【0030】
通信用駆動回路13を構成するトランジスタM5、M6、M7及びM8のゲートには、無線給電装置10の通信動作時及び給電動作時の双方において、13.56MHzの交流電圧信号(交流電圧振幅)が供給される。
【0031】
一方、電力供給用駆動回路12を構成するトランジスタM1、M2、M3及びM4のゲートには、無線給電装置の通信動作時と給電動作時とで、異なる信号が供給される。具体的には、通信動作時には、PMOSトランジスタであるトランジスタM1及びM3のゲートにはHレベルの固定値を有する信号が供給され、NMOSトランジスタであるトランジスタM2及びM4のゲートにはLレベルの固定値を有する信号が供給される。これにより、電力供給用駆動回路12はオフ状態となり、出力がハイインピーダンス状態となる。給電動作時には、トランジスタM1、M2、M3及びM4のゲートには、13.56MHzの交流電圧信号が供給される。これにより、電力供給用駆動回路12はオン状態となる。
【0032】
電力供給用駆動回路12及び通信用駆動回路13は、単一の半導体IC(Integrated Circuit)チップに形成されていても良く、複数の半導体ICチップに分割して形成されていても良い。通信用駆動回路13のトランジスタを集積回路内のトランジスタとし、電力供給用駆動回路12のトランジスタを外付けの個別部品のトランジスタで構成することもできる。また、電力供給用駆動回路12をさらに複数のトランジスタの並列接続として構成し、一部を集積回路内、残りを外付け部品としても良い。
【0033】
次に、本実施例の無線電力伝送システム100における無線給電装置10及び無線受電装置20の動作について説明する。
[通信動作時]
無線給電装置10及び無線受電装置20は、給電のための電力伝送を行う前に、所定の相手方であることや給電が必要かどうかを確認し、送るべき電力量や時間などの情報を送受信するための通信動作を行う必要がある。
【0034】
まず、無線給電装置10において、通信用駆動回路13を構成するトランジスタM5、M6、M7及びM8のゲートに、13.56MHzの交流電圧信号を供給する。これにより、通信用駆動回路13が動作し、ラインL1及びL2に13.56MHzの交流信号(交流振幅)を出力する。
【0035】
一方、電力供給用駆動回路12を構成するトランジスタM1及びM3のゲートをHレベルに固定し、トランジスタM2及びM4のゲートをLレベルに固定する。これにより、電力供給用駆動回路12はオフ状態となり、出力が遮断状態(ハイインピーダンス状態)となる。
【0036】
図3は、送電コイルTCに流れる交流電流の波形を示す図である。通信用駆動回路13の動作により、送電コイルTCには、比較的振幅の小さい13.56MHzの交流電流が流れる。これにより、送電コイルTCには13.56MHzの交流磁界が発生する。
【0037】
無線受電装置20の受電コイルRCは送電コイルTCと磁気結合し、受電コイルRCには13.56MHzの交流磁界に応じた高周波電流が流れる。受電側共振回路21は、当該交流磁界に対応した電圧値を有する交流電圧をラインL3及びL4に印加し、整流回路22はこれを全波整流及び平滑化して直流電圧を生成する。無線受電装置20は、この直流電圧(直流電力)を用いて通信や情報処理を行うことできる。
[給電動作時]
無線給電装置10の通信用駆動回路13を構成するトランジスタM5、M6、M7及びM8のゲートには、引き続き13.56MHzの交流電圧信号を供給する。これにより、通信用駆動回路13は動作を継続する。
【0038】
一方、電力供給用駆動回路12を構成するトランジスタM1、M2、M3及びM4のゲートにも、13.56MHzの交流電圧信号を供給する。これにより、電力供給用駆動回路12が動作し、ラインL1及びL2に13.56MHzの交流信号(交流振幅)を出力する。
【0039】
従って、通信用駆動回路13及び電力供給用駆動回路12は並列動作した状態となり、ほぼ同位相の13.56MHzの交流信号を発生させる。従って、送電コイルTCには、
図3に示すように、比較的振幅の大きい13.56MHzの交流電流が流れる。これにより、送電コイルTCには13.56MHzの交流磁界が発生する。
【0040】
無線受電装置20の受電側共振回路21は、当該交流磁界に対応した電圧値を有する交流電圧をラインL3及びL4に印加し、整流回路22はこれを全波整流及び平滑化して直流電圧を生成する。従って、無線受電装置20では、通信動作時よりも大きな直流電圧が得られ、当該直流電圧を用いて負荷回路23に給電することができる。
【0041】
以上のように、本実施例の無線電力伝送システム100では、通信動作時には通信用駆動回路13を動作させて交流磁界を生成し、給電動作時には通信用駆動回路13及び電力供給用駆動回路12を並列動作させて交流磁界を生成する。従って、通信用と電力供給用とで駆動回路を択一的に切り替える場合とは異なり、交流電流の振幅を連続的に変化させ、交流磁界を途絶させることなく通信動作から給電動作に移行することができる。
【0042】
これにより、無線受電装置20は、交流磁界から連続して電力供給を受けることができ、さらに交流磁界から動作クロックを安定して得ることができる。
【0043】
また、無線給電装置10が交流磁界を連続的に送出することにより、交流電流の急激な変化による不要輻射や他の装置への干渉を低減することができる。
【0044】
なお、通信用駆動回路13及び電力供給用駆動回路12に入力される交流信号に位相の誤差(例えば、+/−20度程度)が存在する場合であっても、送電コイルTCは共振キャパシタC1とともに送電側共振回路11として動作するため、フライホイール効果によって、高周波振幅が欠けたり割れたりといった誤動作につながる影響を抑えることができる。
【0045】
また、電力供給用駆動回路12の一部又は全部を集積回路として構成することにより、駆動回路を構成するトランジスタにおける電力損失による発熱を分散して、集積回路の過熱を防止することができる。
【実施例2】
【0046】
図4は、本発明の実施例2の無線電力伝送システム200の構成を示す回路図である。無線電力伝送システム200は、無線給電装置10及び無線受電装置20から構成されている。無線電力伝送システム200では、実施例1の無線電力伝送システム100と同様、無線給電装置10に設けられている送電コイルTCと、無線受電装置20に設けられている受電コイルRCとの間の磁気結合によって、無線給電装置10から無線受電装置20に電力を伝送する。
【0047】
無線給電装置10は、送電側共振回路11及び交流信号源16を含む。
【0048】
送電側共振回路11は、並列接続された共振キャパシタC1及び送電コイルTCから構成されている。送電側共振回路11は、共振周波数が例えば13.56MHzに設定されており、交流信号源16から交流信号の供給を受けて交流磁界を発生させる。
【0049】
交流信号源16は、13.56MHzの交流信号を生成し、ラインL1及びL2を介して送電側共振回路11に供給する。
【0050】
無線受電装置20は、受電側共振回路21、整流回路22、電力供給用安定化回路24、通信用安定化回路25及び通信/制御回路26を含む。
【0051】
受電側共振回路21は、並列接続された共振キャパシタC2及び受電コイルRCから構成されている。受電側共振回路21は、共振周波数が例えば13.56MHzに設定されており、無線給電装置10の送電コイルTCが発生させた交流磁界により受電コイルRCと送電コイルTCとが磁気結合し、当該交流磁界に対応した電圧値を有する交流電圧をラインL3及びL4に印加する。
【0052】
整流回路22は、4つの整流用のダイオードD1〜D4が接続されたダイオードブリッジ及び平滑用のキャパシタSCを含む。整流回路22は、ラインL3及びL4に印加された交流電圧を全波整流及び平滑化して直流電圧を生成し、ラインL5及びL6に印加する。
【0053】
電力供給用安定化回路24は、ラインL5と給電端子PTとの間に接続されている。電力供給用安定化回路24は、ラインL5に印加された直流電圧を一定にして給電端子PTに供給するための安定化回路であり、例えばシリーズレギュレータから構成されている。給電端子PTには、負荷としての電源が接続されている。電力供給用安定化回路24は、通信/制御回路26の制御に応じて、通信動作時にはオフ状態、給電動作時にはオン状態となる。
【0054】
通信用安定化回路25は、ラインL5に印加された直流電圧を一定にして通信/制御回路26に供給するための安定化回路であり、例えばシリーズレギュレータから構成されている。通信用安定化回路25は、通信動作時及び給電動作時を通じてオン状態に制御される。
【0055】
通信/制御回路26は、ラインL3、L4及び受電側共振回路21を介して、無線給電装置10との間で通信(情報の送受信)を行う。また、通信/制御回路26は、電力供給用安定化回路24をオン又はオフに制御する処理を行う。通信/制御回路26は、通信用安定化回路25から供給された直流電圧を動作電圧としてこれらの動作を行う。
【0056】
次に、本実施例の無線受電装置20の動作について説明する。
【0057】
まず、無線給電装置10から交流磁界が印加されていない状態では、無線給電装置20は動作を停止している。
[通信動作時]
次に、無線給電装置10により交流磁界の印加が開始されると、無線給電装置20の受電コイルRCと無線給電装置10の送電コイルTCとが磁気結合し、受電コイルRCに13.56MHzの交流磁界に応じた高周波電流が流れる。受電側共振回路21により、ラインL3及びL4には交流電圧が印加される。整流回路22は、ラインL3及びL4に印加された交流電圧を全波整流及び平滑化して直流電圧を生成する。この直流電圧により、通信用安定化回路25が起動する。
【0058】
通信用安定化回路25は、整流回路22により生成された直流電圧を安定化した電圧を通信/制御回路26に供給する。これにより、通信/制御回路26が起動する。一方、電力供給用安定化回路24はオフ状態に制御される。
【0059】
通信/制御回路26は、ラインL3及びL4を介して交流磁界からクロック信号を抽出し、抽出したクロック信号を動作クロックとして、無線給電装置10との間の通信(情報の送受信)を行う。
[給電動作時]
無線給電装置10が給電のための交流磁界の印加を開始すると、通信/制御回路26は、電力供給用安定化回路24をオン状態とする。電力供給用安定化回路24は、ラインL5に印加された直流電圧を一定にした電圧を給電端子PTに印加する。これにより、負荷としての電源に給電端子PTを介して電力が供給される。
【0060】
以上のように、本実施例の無線受電装置20は、無線給電装置10からの交流磁界の印加に応じて通信用安定化回路25が動作し、通信/制御回路26を起動させる。そして、通信/制御回路26が電力供給用安定化回路24を制御してオン状態とする。これにより、電力がない状態から無線受電装置20を起動することができる。
【0061】
また、電力供給のための安定化回路は大電力を扱うため素子サイズが大きく、オン状態では給電をしない場合にもアイドル電流を消費するが、本実施例によれば通信動作時には電力供給用安定化回路24をオフ状態とするため、アイドル電流を抑制することができる。
【0062】
また、電力供給用安定化回路24がオフ状態であっても通信用安定化回路25は動作するため、無線給電装置10から印加された交流磁界が小さな磁界であっても通信動作を行うことができる。
【0063】
また、給電動作時にも通信用安定化回路25は動作を続けるため、通信動作及び給電動作の切り替え時においても、通信/制御回路26は安定して動作を行うことができる。
【実施例3】
【0064】
図5は、本発明の実施例3の無線給電装置30の構成を示す回路図である。無線給電装置30は、タイミング回路31、定数設定回路32及び駆動スイッチ33を含む。設定入力端子ST1及びST2には、駆動スイッチの動作(すなわち、送電コイルTCへの電流送出動作)を制御して送電コイルTCに流れる高周波電流の振幅を設定するための設定信号が入力される。
【0065】
駆動スイッチ33は、ラインL1に接続された第1スイッチ回路33−1及びラインL2に接続された第2スイッチ回路33−2からなる差動スイッチ回路である。第1スイッチ回路33−1はスイッチSW1及びSW2から構成され、第2スイッチ回路33−2はスイッチSW3及びSW4から構成されている。第1スイッチ回路33−1及び第2スイッチ回路33−2は、一端に電源電圧VDDの印加を受け、他端に接地電位GNDの印加を受ける。
【0066】
スイッチSW1及びSW4は、駆動スイッチ制御信号の供給を受けてオン又はオフとなり、送電コイルTCの第1方向であるプラス方向(図中上から下へ)に電流を流す正極側スイッチである。スイッチSW2及びSW3は、駆動スイッチ制御信号の供給を受けてオン又はオフとなり、送電コイルTCの第1方向とは反対方向の第2方向であるマイナス方向(図中下から上へ)に電流を流す負極側スイッチである。以下の説明では、正極側スイッチに供給する駆動スイッチ制御信号を正極性パルス、負極側スイッチに供給する駆動スイッチ制御信号を負極性パルスと称する。
【0067】
駆動スイッチ33において、これらの正極側スイッチ及び負極側スイッチが相補的にオン又はオフとなることにより、送電コイルTCに高周波電流が流れる。
【0068】
定数設定回路32は、正極側設定回路32a及び負極側設定回路32bから構成されている。正極側設定回路32aは、タイミング回路31の正極側フリップフロップ31a−1〜31a−nによるタイミング調整を経て供給された設定信号に基づいて、駆動スイッチ33の正極側スイッチSW1及びSW4の動作を規定するための定数(例えば、正極性パルスのパルス幅)を設定する。かかる定数設定により、送電コイルTCのプラス方向に流れる電流の電流量が設定される。正極側設定回路32aは、クロック入力端子CTから入力された13.56MHzの交流クロック信号(以下、単に交流クロック信号と称する)を動作クロックとして動作を行う。
【0069】
負極側設定回路32bは、タイミング回路31の負極側フリップフロップ31b−1〜31b−nによるタイミング調整を経て供給された設定信号に基づいて、駆動スイッチ33の負極側スイッチSW2及びSW3の動作を規定するための定数(例えば、負極性パルスのパルス幅等)を設定する。かかる定数設定により、送電コイルTCのマイナス方向に流れる電流の電流量が設定される。負極側設定回路32bは、交流クロック信号をインバータIVにより反転した反転クロック信号(以下、単に反転クロック信号と称する)を動作クロックとして動作を行う。
【0070】
タイミング回路31は、設定入力端子ST1及びST2に入力された設定信号を遅延させて定数設定回路32に供給することにより、定数設定回路32による定数設定処理のタイミング調整(時間調整)を行う回路である。タイミング回路31は、正極側フリップフロップ31a−1〜31a−n(n:自然数)及び負極側フリップフロップ31b−1〜31b−nから構成されている。正極側フリップフロップ31a−1〜31a−nは、反転クロック信号を動作クロックとして動作を行う。負極側フリップフロップ31b−1〜31b−nは、交流クロック信号を動作クロックとして動作を行う。
【0071】
本実施例の無線給電装置30では、正極側設定回路32a及び負極側設定回路32bに設定信号が供給されるタイミングをタイミング回路31が調整することにより、正極側設定回路32a及び負極側設定回路32bにおける定数設定(すなわち、定数変更)のタイミングを調整することができる。
【0072】
従って、例えば正極性パルス及び負極性パルスのパルス幅を定数として変更する場合、正極性パルスがLレベル(すなわち、正極側スイッチがオフ)のときに正極性パルスの定数変更を行い、負極性パルスがLレベル(すなわち、負極側スイッチがオフ)のときに負極性パルスの定数変更を行うことができる。
【0073】
図6は、かかる定数変更のタイミングの例を示すタイムチャートである。ここでは、13.56MHzの交流クロック信号(図中、CSとして示す)、正極性パルス(図中、PPとして示す)、負極性パルス(図中、NPとして示す)、設定入力端子CTに入力される設定信号の設定データ(図中、SDとして示す)、正極性パルスの設定データ(図中、PDとして示す)及び負極性パルスの設定データ(図中、NDとして示す)の時間変化を示している。
【0074】
例えば、定数を旧設定データから新設定データに変更するため設定信号が、タイミングAにおいて設定入力端子ST1及びST2に入力された場合、タイミング回路31はこれを遅延させて正極側設定回路32a及び負極側設定回路32bに供給する。これにより、正極性パルス及び負極性パルスの設定データ(例えば、パルス幅)の変更を、夫々について最適なタイミングで行うことができる。例えば、正極性パルスの設定データの変更タイミングを図に示すタイミングBとすることにより、正極性パルスの定数変更を正極性パルスがLレベルの期間に行うことができる。また、負極性パルスの設定データの変更タイミングを図に示すタイミングCとすることにより、負極性パルスの定数変更を負極性パルスがLレベルの期間に行うことができる。
【0075】
図7は、本発明のようなタイミング回路31を有しない場合を比較例として示すタイムチャートである。設定データを旧設定データから新設定データに変更する設定信号がタイミングAにおいて設定入力端子ST1及びST2に入力された場合、正極側設定回路32aによる設定データの変更もこれに応じたタイミングで行われる。従って、そのタイミングによっては、正極性パルスがHレベルの期間に正極性パルスの設定データが変更され、正極性パルスの出力結果(図中、PRとして示す)の波形にひずみが生じる。その結果、送電コイルTCに流れる高周波電流にもひずみが生じてしまう。
【0076】
本実施例の無線給電装置30によれば、このような波形のひずみを生じさせることなく、正極性パルス及び負極性パルスの定数を変更させることができる。従って、送電コイルTCに流れる高周波電流の振幅変更を行う場合にも安定的な磁界を発生させ、受電側(無線受電装置)に電力及びクロックを安定して供給することができる。また、正極性パルス、負極性パルス及び高周波電流の波形のひずみは、不要輻射による他装置への干渉や電源変動による誤作動の原因となるため、本実施例の無線給電装置30によりこれらを低減することが可能となる。
【実施例4】
【0077】
図8は、本発明の実施例4の無線給電装置の構成を示す図である。本実施例の無線給電装置は、
図5に示した実施例3の無線給電装置30における駆動スイッチ33を並列接続された複数のトランジスタから構成し、定数設定回路32がその複数のトランジスタのうち電流送出時にオンとなるトランジスタの数(並列数)を定数として設定するように構成されたものである。また、タイミング回路31は、夫々3つずつの正極側フリップフロップ及び負極側フリップフロップ(すなわち、n=3)から構成されている。
【0078】
定数設定回路32は、正極側フリップフロップ31a−1〜31a−3からの出力信号(すなわち、設定入力端子ST1〜ST3に入力された設定信号をタイミング調整した信号)と交流クロック信号との論理積からなる信号を出力するアンド回路AD1、負極側フリップフロップ31b−1〜31b−3からの出力信号(すなわち、設定入力端子ST4〜ST6に入力された設定信号をタイミング調整した信号)と反転クロック信号との論理積からなる信号を出力するアンド回路AD2、負極側フリップフロップ31b−1〜31b−3からの出力信号と反転クロック信号との論理積からなる信号を出力するアンド回路AD3、及び正極側フリップフロップ31a−1〜31a−3からの出力信号と交流クロック信号との論理積からなる信号を出力するアンド回路AD4から構成されている。
【0079】
駆動スイッチ33は、PMOSトランジスタであるトランジスタM11、M12及びM13の並列接続とNMOSトランジスタであるトランジスタM14、M15及びM16の並列接続とからなる第1スイッチ回路と、PMOSトランジスタであるトランジスタM21、M22及びM23の並列接続とNMOSトランジスタであるトランジスタM24、M25及びM26の並列接続とからなる第2スイッチ回路と、から構成されている。
【0080】
トランジスタM11〜13及びM24〜M26は、送電コイルTCのプラス方向に電流を流す正極側スイッチトランジスタである。一方、トランジスタM14〜16及びM21〜M23は、送電コイルTCのマイナス方向に電流を流す負極側スイッチトランジスタである。
【0081】
トランジスタM11、M12及びM13のゲートには、アンド回路AD1の各出力信号(すなわち、フリップフロップ31a−1〜31a−3からの出力信号と交流クロック信号との論理積からなる信号)を反転した信号が供給される。トランジスタM14、M15及びM16のゲートには、アンド回路AD2の各出力信号(すなわち、フリップフロップ31b−1〜31b−3からの出力信号と反転クロック信号との論理積からなる信号)が供給される。
【0082】
トランジスタM21、M22及びM23のゲートには、アンド回路AD3の各出力信号(すなわち、フリップフロップ31b−1〜31b−3からの出力信号と反転クロック信号との論理積からなる信号)を反転した信号が供給される。トランジスタM24、M25及びM26のゲートには、アンド回路AD4の各出力信号(すなわち、フリップフロップ31a−1〜31a−3からの出力信号と交流クロック信号との論理積からなる信号)が供給される。
【0083】
設定入力端子ST1〜ST3に入力された設定信号に基づいて、トランジスタM11〜13及びM24〜M26のうちオン状態となって電流を送出するトランジスタが選択される。すなわち、設定信号に応じて、電流送出時にオンとなるトランジスタの数(並列数)が変化する。これにより、送電コイルTCのプラス方向に流れる電流の電流量が変化する。
【0084】
同様に、設定入力端子ST4〜ST6に入力された設定信号に基づいて、トランジスタM14〜16及びM21〜M23のうちオン状態となって電流を送出するトランジスタが選択される。すなわち、設定信号に応じて、電流送出時にオンとなるトランジスタの数(並列数)が変化する。これにより、送電コイルTCのマイナス方向に流れる電流の電流量が変化する。
【0085】
従って、電流送出時にオンとなるトランジスタの数を段階的に変化させるように設定信号を入力することにより、
図9に示すように、送電コイルTCに流す高周波電流の振幅を段階的に変化させることが可能となる。
【0086】
また、
図10に示すように、送電コイルTCに流す高周波電流の振幅を疑似ランダムパターンに従うように変化させることも可能である。例えば、シフトレジスタを用いたランダムパターン発生回路や、ルックアップテーブル、デルタシグマ回路等により疑似ランダムパターンを生成し、これを設定入力端子ST1〜ST6に入力して電流送出時にオンとなるトランジスタの数を変化させることにより、高周波電流の振幅を疑似ランダムパターンで変化させることができる。
【0087】
また、これらとは異なり、トランジスタ数や正極性パルス及び負極性パルスのパルス幅を規則的に変化させても良い。また、時間軸方向の変化のパターンを等時的としても良く、時間間隔をランダムとしても良い。
【0088】
図11は、本実施例の無線給電装置30の変形例を示す図である。
図11の無線給電装置は、
図5に示した無線給電装置30において、定数設定回路32が駆動スイッチ33を構成するトランジスタのゲートに供給する正極性パルス及び負極性パルス(以下、これらをゲートパルスと称する)の幅を定数として設定(変更)するように構成されたものである。また、タイミング回路31は、夫々2つずつの正極側フリップフロップ及び負極側フリップフロップ(すなわち、n=2)から構成されている。
【0089】
定数設定回路32は、正極側フリップフロップ31a−1及び31a−2からの出力信号(すなわち、設定入力端子ST1及びST2に入力された設定信号をタイミング調整した信号)に基づいて交流クロック信号を遅延させた遅延クロック信号と交流クロック信号との論理積からなる信号を出力する正極側設定回路32a、及び負極側フリップフロップ31b−1及び31b−2からの出力信号(すなわち、設定入力端子ST3及びST4に入力された設定信号をタイミング調整した信号)に基づいて反転クロック信号を遅延させた遅延反転クロック信号と反転クロック信号との論理積からなる信号を出力する負極側設定回路32bから構成されている。
【0090】
駆動スイッチ33は、PMOSトランジスタであるトランジスタM17及びNMOSトランジスタであるトランジスタM18からなる第1スイッチ回路と、PMOSトランジスタであるトランジスタM27及びNMOSトランジスタであるトランジスタM28からなる第2スイッチ回路と、から構成されている。
【0091】
トランジスタM17及びM28は、送電コイルTCのプラス方向に電流を流す正極側スイッチトランジスタである。一方、トランジスタM18及びM27は、送電コイルTCのマイナス方向に電流を流す負極側スイッチトランジスタである。
【0092】
トランジスタM17のゲートには正極側設定回路32aからの出力信号を反転した信号が正極性パルスとして供給され、トランジスタM18のゲートには負極側設定回路32bからの出力信号が負極性パルスとして供給される。トランジスタM27のゲートには負極側設定回路32bからの出力信号を反転した信号が負極性パルスとして供給され、トランジスタM28のゲートには正極側設定回路32aからの出力信号が正極性パルスとして供給される。
【0093】
正極側設定回路32a及び負極側設定回路32bの出力信号は、設定入力端子ST1〜ST4に入力された設定信号に基づいて、そのパルス幅が変化する。すなわち、トランジスタM17、M18、M27及びM28のゲートに印加されるゲートパルスのパルス幅が設定信号に応じて変化することになる。これにより、送電コイルTCのプラス方向及びマイナス方向に流れる電流の電流量が変化する。
【0094】
従って、これらのパルス幅を段階的に変化させるように設定信号を入力することにより、
図9に示すように、送電コイルTCに流す高周波電流の振幅を段階的に変化させることが可能となる。また、パルス幅を疑似ランダムパターンに従って変化させるように設定信号を入力することにより、
図10に示すように、送電コイルTCに流す高周波電流の振幅を疑似ランダムパターンで変化させることが可能となる。
【0095】
以上のように、本実施例の無線給電装置30によれば、設定入力端子に入力する設定信号に応じて、高周波信号の振幅を滑らかに変化させることができる。従って、通信の開始及び終了、電力供給の開始及び終了、電力レベルの変更、通信時のASK変調、負荷変調において、高周波信号の変化を滑らかにすることにより、電源系への雑音の混入、不要輻射による他装置への干渉を抑えることができる。また、受電側(無線受電装置)に電力及びクロックを安定して供給することができる。
【0096】
また、本実施例の無線給電装置30では、トランジスタの数やトランジスタのゲートに供給されるゲートパルスのパルス幅を規則的又はランダムに変化させることにより、送電振幅の調整を細かく行うことができる。さらに、交流クロック信号として高精度のクロック信号を用いることにより、時間軸方向において高い精度で送電振幅を制御することが可能となる。
【0097】
また、本実施例の無線給電装置30によれば、送電側の電力を調整することにより、無駄な電力損失を減らすことができる。さらに、トランジスタのゲートに供給されるゲートパルスのパルス幅を調整して、各トランジスタがオン状態となる期間を短くすることにより、電源グランド間のスイッチが同時にオンすることによる貫通電流を抑制して、無駄な電力消費を抑えることができる。
【実施例5】
【0098】
図12は、本発明の実施例5の無線電力伝送システム500の構成を示す回路図である。実施例1と同様、無線電力伝送システム500は無線給電装置10及び無線受電装置20から構成され、無線給電装置10に設けられている送電コイルTCと無線受電装置20に設けられている受電コイルRCとの間の磁気結合によって、無線給電装置10側から無線受電装置20に電力を伝送する。
【0099】
本実施例の無線給電装置10は、電力供給用駆動回路12において、電流測定回路51を有する。電流測定回路51は、第1駆動部12a及び第2駆動部12bにおける駆動電流の電流値を測定する。
【0100】
本実施例の無線給電装置10は、送電コイルTCに導体片等の異物が近接しているか否かを判定する機能を有する。すなわち、送電コイルTCに異物が近接していると、異物に電磁誘導による高周波電流が流れ、駆動電流の電流値が変化する。従って、無線給電装置10は、電流測定回路51が測定した駆動電流の電流値に基づいて、送電コイルTCに異物が近接しているか否かを判定することができる。
【0101】
本実施例の無線受電装置20は、受電側共振回路21において、共振変更回路52を有する。共振変更回路52は、スイッチSW5及びキャパシタC3から構成されている。スイッチSW5がオンになると、キャパシタC3が受電コイルRCに並列に接続された状態となる。これにより、受電側共振回路21における共振キャパシタの容量が変更される。無線受電装置20は、無線給電装置10による異物検出動作の際に、スイッチSW5をオンにして共振キャパシタの容量の変更を行う。
【0102】
次に、本実施例の無線給電装置10及び無線受電装置20の動作について、
図13のフローチャートを参照して説明する。
【0103】
まず、無線給電装置10及び無線受電装置20が起動する。無線給電装置10の通信用駆動回路13の動作により送電コイルTCに交流磁界が発生し、無線給電装置10から無線受電装置20に通信のための電力伝送及びクロック供給が行われる。無線給電装置10及び無線受電装置20は、通信動作を開始する(ステップS101、201)。
【0104】
次に、無線給電装置10の電力供給用駆動回路12が動作し、給電のための電力伝送を開始する(ステップS102)。無線受電装置20は、電力の受電を開始する(ステップS202)。この状態で、無線受電装置20は、所定時間の経過を待つ(ステップS203)。
【0105】
無線給電装置10の電流測定回路51は、駆動電流の電流値の測定を行い、測定された電流値があらかじめ設定しておいた第1の設定閾値の範囲内(例えば、50mA以上60mA以内)であるか否かを判定する(ステップS103)。
【0106】
第1の設定閾値の範囲内ではないと判定すると(ステップS103:No)、異物があると判定し(ステップS106)、無線給電装置10は給電のための電力伝送を終了し、送電電力を通信動作状態のレベルに減少させて、通信動作に戻る(ステップS107)。これに応じて、無線受電装置20も受電動作を終了し、通信動作に戻る。
【0107】
一方、測定された駆動電流の電流値が第1の設定閾値の範囲内であると判定すると(ステップS103:Yes)、無線受電装置20は共振変更回路52のスイッチSW5をオンにし、受電側共振回路21における共振キャパシタの容量を変更する(ステップS204)。これにより、駆動負荷が変化する。無線受電装置20は、この状態で所定時間の経過を待つ(ステップS205)。
【0108】
無線給電装置10の電流測定回路51は、あらためて駆動電流の電流値の測定を行い、測定された電流値があらかじめ設定しておいた第2の設定閾値の範囲内(例えば、40mA以上50mA以内)であるか否かを判定する(ステップS104)。
【0109】
第2の設定閾値の範囲内ではないと判定すると(ステップS104:No)、異物があると判定し(ステップS106)、無線給電装置10は給電のための電力伝送を終了し、送電電力を通信動作状態のレベルに減少させて、通信動作に戻る(ステップS107)。これに応じて、無線受電装置20も受電動作を終了し、共振変更回路52のスイッチSW5をオフにして通信動作に戻る。
【0110】
一方、測定された駆動電流の電流値が第2の設定閾値の範囲内であると判定すると(ステップS104:Yes)、無線受電装置20は共振変更回路52のスイッチSW5をオフにし、受電側共振回路21における共振キャパシタの容量を元に戻す(ステップS206)。無線給電装置10は、異物なしと判定し、送電電力を設定して電力供給を行う(ステップS105)。無線受電装置20は、これに応じて電力を受電する(ステップS207)。所定の電力供給を実行した後、無線給電装置10は給電のための電力伝送を終了し、通信動作に戻る(ステップS107)。これに応じて無線受電装置20も電力の受電を終了し、通信動作に戻る(ステップS208)。
【0111】
以上の動作により、本実施例の無線給電装置10及び無線受電装置20は、送電コイルTCに異物が近接しているか否かを判定する。駆動電流の測定による異物検出を、共振変更回路52のスイッチSW5をオフにした状態とオンにした状態とで行うことにより、無線受電装置20において異物検出のために共振変更回路のスイッチSW5をオンとした際に受電電力が不足することによる誤動作の発生を防止し、動作を安定して継続することが可能となる。
【実施例6】
【0112】
図14は、本発明の実施例6の無線電力伝送システム600の構成を示す回路図である。実施例1と同様、無線電力伝送システム600は無線給電装置10及び無線受電装置20から構成され、無線給電装置10に設けられている送電コイルTCと無線受電装置20に設けられている受電コイルRCとの間の磁気結合によって、無線給電装置10側から無線受電装置20に電力を伝送する。
【0113】
本実施例の無線受電装置20は、ラインL5及びL6において電圧及び電流を測定する電圧/電流測定回路53を有する。無線受電装置20は、測定した電圧値及び電流値に基づいて、過大な磁界が発生しているか否かを判定する機能を有する。
【0114】
また、無線受電装置20は、実施例5と同様、スイッチSW5及びキャパシタC3から構成される共振変更回路52を有する。スイッチSW5がオンになることにより、キャパシタC3が受電コイルRCに並列に接続され、受電側共振回路21における共振キャパシタの容量が変更される。無線受電装置20は、過大磁界検出処理において、送電コイルTC及び受電コイルRCの磁界結合のマッチングをずらして受電電力の低減を図るため、スイッチSW5をオンにして共振キャパシタの容量の変更を行う。
【0115】
次に、本実施例の無線受電装置20が行う過大磁界検出処理の動作について、
図15のフローチャートを参照して説明する。
【0116】
まず、無線受電装置20の許容電力損失に基づいて、受電電力についての設定閾値(例えば1ワット)をあらかじめ設定しておく。
【0117】
無線受電装置20は、無線給電装置10から伝送された電力を受電する。電圧/電流測定回路53は、ラインL5及びL6における電圧値及び電流値を測定し、測定した値に基づいて演算(電圧×電流)を行い、受電電力を算出する(ステップS301)。そして、無線受電装置20は、算出した受電電力があらかじめ設定した設定閾値を超えているか否かを判定する(ステップS302)。
【0118】
受電電力が設定閾値を超えていない場合(ステップS302:No)、正常動作であると判定して処理を終了し、受電動作に戻る(ステップS303)。
【0119】
一方、受電電力が設定閾値を超えている場合(ステップS302:Yes)、無線受電装置20は、磁界結合のマッチングをずらして受電電力の低減を図るため、共振変更回路52のスイッチSW5をオンにして共振キャパシタの容量を変更する(ステップS304)。これにより、駆動負荷が変化する。この間、無線給電装置10からの電力及びクロックの供給は継続して行われ、無線受電装置20の通信回路及び制御回路(図示せず)は動作を継続する。
【0120】
電圧/電流測定回路53は、あらためて電圧値及び電流値を測定し、測定した値に基づいて演算(電圧×電流)を行い、受電電力を算出する(ステップS305)。そして、無線受電装置20は、算出した受電電力があらかじめ設定した設定閾値を超えているか否かを判定する(ステップS306)。
【0121】
受電電力が設定閾値を超えていない場合(ステップS306:No)、過大磁界の状態であり且つ共振キャパシタの容量の変更により過大磁界からの保護が成功したと判定して処理を終了し、受電動作に戻る(ステップS308)。
【0122】
一方、受電電力が設定閾値を超えている場合(ステップS306:Yes)、過大磁界の状態であり且つ過大磁界からの保護が失敗したと判定する(ステップS307)。無線受電装置20は、ヒューズ溶断など他の保護手段による保護に移行する。
【0123】
以上のように、本実施例の無線受電装置20は、受電電力が閾値を超えていた場合に過大磁界が発生していると判定し、共振キャパシタの容量を変更する。そして、共振キャパシタの容量を変更した状態で再び受電電力が閾値を超えていた場合に他の保護手段による保護に移行する。
【0124】
過大磁界が印加された場合に、すぐにクランプや短絡といった手段を用いると無線受電装置の通信回路及び制御回路の動作のための電力やクロックも喪失してしまい、起動と保護動作とを繰り返すような望ましくない状態となるが、本実施例の無線受電装置20によれば、共振キャパシタの容量を変更することにより過大磁界の状態でもある領域までは通信回路及び制御回路が動作を継続することができ、安定且つ安全に動作を行うことができる。
【0125】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施例では、送電側共振回路及び受電側共振回路を差動回路としているが、いずれかあるいは双方をシングルエンド回路としても良い。すなわち、送電コイルの一端をグランド(GND)に接続し、他端に駆動回路を接続しても良い。また、受電コイルの一端をグランドに接続し、他端に整流回路を接続しても良い。
【0126】
また、上記実施例3では、駆動スイッチ33が差動型である場合を例として説明した。しかし、
図16に示す無線給電装置30のように、駆動スイッチ33をシングルエンド型として構成しても良い。
【0127】
また、上記実施例では、送電側共振回路及び受電側共振回路が、夫々コイル(送電コイル、受電コイル)と共振キャパシタと並列に接続した並列共振回路として構成されているが、直列共振回路等の他の回路方式としても良い。
【0128】
また、通信動作と給電動作との切り替え時における高周波電流の振幅変化のみでなく、通信時にASK変調信号を送出する手段として階段状のレベル変化を使っても良い。
【0129】
また、上記実施例2(
図4)では、1つの整流回路を用いているが、電力供給用と通信用とで2つの整流回路を用いても良い。例えば、入力側で回路を分岐させ、一方を電力供給用安定化回路に接続し、他方を通信用安定化回路に接続しても良い。
【0130】
また、上記実施例4では、タイミング回路を13.56MHzの交流クロック信号の正相及び逆相で動作するフリップフロップで構成しているが、タイミング回路の構成はこれに限られない。例えば、他のクロック周波数の交流クロック信号を用いても良く、遅延素子を用いても良い。すなわち、ロジック回路で一般的に行われるタイミング調整手段を用いることができる。