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特開2021-172666地盤改良方法、硫酸カリウム含有地盤改良材、及び、改良土
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-172666(P2021-172666A)
(43)【公開日】2021年11月1日
(54)【発明の名称】地盤改良方法、硫酸カリウム含有地盤改良材、及び、改良土
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/10 20060101AFI20211004BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20211004BHJP
   C04B 28/04 20060101ALI20211004BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20211004BHJP
【FI】
   C09K17/10 P
   C09K17/02 P
   C04B28/04
   C04B22/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-74215(P2020-74215)
(22)【出願日】2020年4月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅彦
【テーマコード(参考)】
4G112
4H026
【Fターム(参考)】
4G112MB12
4G112PB10
4H026CA01
4H026CB02
4H026CC02
4H026CC05
(57)【要約】
【課題】早強ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材を用いて形成された改良土と同等の強度を発現する改良土を形成することができる地盤改良方法を提供することを課題とする。
【解決手段】対象土と地盤改良材とを混合して改良土を形成する地盤改良方法であって、対象土と地盤改良材と硫酸カリウムとを混合して改良土を形成する改良土形成工程を備えており、地盤改良材は、普通ポルトランドセメントを主成分として含んでおり、改良土形成工程では、対象土の単位体積に対して混合する地盤改良材の質量(x)と、対象土の単位体積に対して混合する硫酸カリウムの質量(y)との関係が下記(1)式を満たすように、対象土と地盤改良材と硫酸カリウムとを混合する。

y≧0.1265x−11.727・・・(1)

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象土と地盤改良材とを混合して改良土を形成する地盤改良方法であって、
対象土と地盤改良材と硫酸カリウムとを混合して改良土を形成する改良土形成工程を備えており、
地盤改良材は、普通ポルトランドセメントを主成分として含んでおり、
改良土形成工程では、対象土の単位体積に対して混合する地盤改良材の質量(x)と、対象土の単位体積に対して混合する硫酸カリウムの質量(y)との関係が下記(1)式を満たすように、対象土と地盤改良材と硫酸カリウムとを混合する、
地盤改良方法。

y≧0.1265x−11.727・・・(1)
【請求項2】
対象土の単位体積に対して混合する地盤改良材の質量(x)に対する対象土の単位体積に対して混合する硫酸カリウムの質量(y)の割合が6.6質量%以上である、
請求項1に記載の地盤改良方法。
【請求項3】
対象土と混合されて改良土を形成する地盤改良材と、硫酸カリウムとを含んでおり、
地盤改良材は、普通ポルトランドセメントを主成分として含んでおり、
地盤改良材と硫酸カリウムとの合計質量に対する硫酸カリウムの質量割合(z)は、下記(2)式を満たす、
硫酸カリウム含有地盤改良材。

z≧y/(x+y)×100・・・(2)
(x:対象土の単位体積に対して混合する地盤改良材の質量)
(y=0.1265x−11.727)
【請求項4】
対象土と地盤改良材と硫酸カリウムとを含む改良土であって、
地盤改良材は、普通ポルトランドセメントを主成分として含んでおり、
対象土の単位体積に対して混合される地盤改良材の質量(x)と、対象土の単位体積に対して混合される硫酸カリウムの質量(y)との関係が下記(1)式を満たす、
改良土。

y≧0.1265x−11.727・・・(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良方法、硫酸カリウム含有地盤改良材、及び、改良土に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤が軟弱で種々の用途に適さない場合、斯かる地盤を構成する土と、普通ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材とを混合して改良土を形成し、該改良土を固化させることで地盤を改良する方法が知られている。斯かる方法によって、地盤の強度、安定性、耐久性等を向上させることができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−299972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような地盤改良材であっても、土の性質によっては、十分な強度を発現する改良土を形成することができない場合がある。このような土の一例としては、火山灰質粘性土が挙げられる。該火山灰質粘性土は、地盤改良材と混合しても、一般的な粘性土に比べて、改良土の強度が高くなり難いことが知られている。その理由としては、以下のものが考えられる。
即ち、火山灰質粘性土には特有の粘土鉱物であるアロフェンが多く含まれる。また、アロフェンは、カルシウムイオンを吸着する性質がある。そのため、火山灰質粘性土と地盤改良材とを混合すると、地盤改良材に含まれるカルシウムイオンがアロフェンに吸着され、普通ポルトランドセメントの水和が阻害されると考えられる。その結果、改良土の強度が発現し難くなると考えられる。
【0005】
上記のように、改良土の強度が発現し難い土を対象に、十分な強度を発現させる方法として、地盤改良材の量を増やすことが考えられる。しかし、地盤改良材の量を増やすと、それに伴って発生する排泥(改良土)の処分にコストが掛かると共に、排泥による環境への負荷が増大することが懸念される。
そこで、他の方法として、早強ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材を用いる方法が提案されている。早強ポルトランドセメントは、水和反応速度が比較的早く、カルシウムが多く含まれるCSを比較的多く含むため、このような地盤改良材を用いることで、十分な強度を発現する改良土を形成することが可能となる。
【0006】
しかしながら、早強ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメントと比べて調達が困難な場合がある。さらに、早強ポルトランドセメントは普通ポルトランドセメントに比べて水硬率が高いため、焼成エネルギーが高くなり、それに伴い二酸化炭素の排出量も増加する。このため、普通ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材を用いて、早強ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材と同等の強度を発現させる技術が望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、早強ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材を用いて形成された改良土と同等の強度を発現する改良土を形成することができる地盤改良方法、及び、硫酸カリウム含有地盤改良材を提供することを課題とする。
また、早強ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材を用いて形成された改良土と同等の強度を発現する改良土を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る地盤改良方法は、対象土と地盤改良材とを混合して改良土を形成する地盤改良方法であって、対象土と地盤改良材と硫酸カリウムとを混合して改良土を形成する改良土形成工程を備えており、地盤改良材は、普通ポルトランドセメントを主成分として含んでおり、改良土形成工程では、対象土の単位体積に対して混合する地盤改良材の質量(x)と、対象土の単位体積に対して混合する硫酸カリウムの質量(y)との関係が下記(1)式を満たすように、対象土と地盤改良材と硫酸カリウムとを混合する。

y≧0.1265x−11.727・・・(1)
【0009】
斯かる構成によれば、早強ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材を用いて形成した改良土と同等の強度を発現する改良土を形成することができる。
【0010】
対象土の単位体積に対して混合する地盤改良材の質量(x)に対する対象土の単位体積に対して混合する硫酸カリウムの質量(y)の割合が6.6質量%以上であることが好ましい。
【0011】
斯かる構成によれば、より良好な強度を発現する改良土を形成することができる。
【0012】
本発明に係る硫酸カリウム含有地盤改良材は、対象土と混合されて改良土を形成する地盤改良材と、硫酸カリウムとを含んでおり、地盤改良材は、普通ポルトランドセメントを主成分として含んでおり、地盤改良材と硫酸カリウムとの合計質量に対する硫酸カリウムの質量割合(z)は、下記(2)式を満たす。

z≧y/(x+y)×100・・・(2)
(x:対象土の単位体積に対して混合する地盤改良材の質量)
(y=0.1265x−11.727)
【0013】
斯かる構成によれば、早強ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材を用いて形成した改良土と同等の強度を発現する改良土を形成することができる。
【0014】
本発明に係る改良土は、対象土と地盤改良材と硫酸カリウムとを含む改良土であって、地盤改良材は、普通ポルトランドセメントを主成分として含んでおり、対象土の単位体積に対して混合される地盤改良材の質量(x)と、対象土の単位体積に対して混合される硫酸カリウムの質量(y)との関係が下記(1)式を満たす。

y≧0.1265x−11.727・・・(1)
【0015】
斯かる構成によれば、早強ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材を用いて形成した改良土と同等の強度を発現させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、早強ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材を用いて形成された改良土と同等の強度を発現する改良土を形成することができる地盤改良方法、及び、硫酸カリウム含有地盤改良材を提供することができる。また、早強ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材を用いて形成された改良土と同等の強度を発現する改良土を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、供試体(改良土)の一軸圧縮強さと、硫酸カリウムの混合割合と、の関係を示す散布図であって、(a)は、地盤改良材の混合質量が190kg/mであるときの散布図、(b)は、地盤改良材の混合質量が260kg/mであるときの散布図、(c)は、地盤改良材の混合質量が340kg/mであるときの散布図である。
図2図2は、H型改良土強度と同等のN型改良土強度が得られる際の硫酸カリウムの混合質量と、N型地盤改良材の混合質量と、の関係を示す散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について、説明する。
【0019】
本実施形態に係る地盤改良方法は、対象土と地盤改良材とを混合して改良土を形成するものである。
【0020】
地盤改良材は、普通ポルトランドセメントを主成分として含む。該普通ポルトランドセメントとは、「JIS R 5210:2009 ポルトランドセメント」に規定される普通ポルトランドセメントをいう。地盤改良材の質量に対する普通ポルトランドセメントの質量の割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、20〜96質量%であることが好ましく、40〜72質量%であることがより好ましい。
【0021】
地盤改良材が含みうる普通ポルトランドセメント以外の成分としては、特に限定されるものではなく、例えば、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ質混合材(ポゾラン)等が挙げられる。
【0022】
地盤改良材が高炉スラグを含む場合、該高炉スラグとしては、例えば、高炉水砕スラグの微粉末等が挙げられる。該高炉水砕スラグの微粉末としては、JIS A 6206:2013の“高炉スラグ微粉末”を用いることができる。
高炉水砕スラグの微粉末の比表面積としては、特に限定されるものではなく、例えば、2,750cm/g以上10,000cm/g未満であることが好ましい。なお、比表面積は、JIS R 5201:2015の比表面積試験に従って測定することができる。
地盤改良材の質量に対する高炉スラグの質量の割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、0質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
また、地盤改良材は、普通ポルトランドセメント以外の成分として石膏を含んでもよい。該石膏は、普通ポルトランドセメントを構成するものとは別のものを意味し、無水石膏(CaSO)、半水石膏(CaSO・0.5HO)、二水石膏(CaSO・2HO)等が挙げられる。
地盤改良材の質量に対する石膏(普通ポルトランドセメントに由来するものと、それ以外のものとの合計)の質量の割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、7.8質量%以上23.2質量%以下であることが好ましく、11.7質量%以上18.4質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
本実施形態に係る地盤改良方法の対象土としては、特に限定されるものではなく、例えば、火山灰質粘性土等が挙げられる。該火山灰質粘性土は、水を含有する。具体的には、火山灰質粘性土としては、例えば、所謂、関東ローム、赤ぼく、黒ぼく等が挙げられる。より詳しくは、火山灰質粘性土は、地盤工学会基準「地盤材料の工学的分類方法(JGS 0051−2009)」において火山灰に由来する火山灰質粘性土に分類される土質材料を意味する。なお、地盤工学会基準において火山灰質粘性土に分類される土質材料は、大分類で細粒土に属する。細粒土は、地盤工学会基準「地盤材料の工学的分類方法(JGS 0051−2009)」において、土質材料の乾燥質量を100質量%とした際に、粘土及びシルトを合わせて50質量%以上含む土を意味し、言いかえれば、土質材料の乾燥質量を100質量%とした際に、粒径0.075mm未満の粒子を50質量%以上含む土を意味する。粒径0.075mm未満の粒子の割合は、JIS A 1204:2009「土の粒度試験方法」によって測定することができる。
【0025】
本実施形態に係る地盤改良方法は、上記のように構成される地盤改良材(以下では、N型地盤改良材とも記す)と対象土と硫酸カリウムと水とを混合して改良土を形成する改良土形成工程と、該改良土で地盤を形成する地盤形成工程とを備える。
改良土形成工程では、「対象土の単位体積に対して混合するN型地盤改良材の質量(x)」と、「対象土の単位体積に対して混合する硫酸カリウムの質量(y)」との関係が下記(1)式を満たすように、対象土と地盤改良材と硫酸カリウムと水とを混合する。下記(1)式は、下記の実施例に記載の方法で得ることができる。

y≧0.1265x−11.727・・・(1)
【0026】
改良土を形成する際には、改良土中にN型地盤改良材を構成する成分全てが含まれればよく、例えば、N型地盤改良材が普通ポルトランドセメント以外の成分を含む場合、N型地盤改良材を構成する各成分を同時に(具体的には、各成分が混合された状態で)、対象土と混合してもよく、N型地盤改良材を構成する各成分を順次別々に、対象土と混合してもよい。
【0027】
なお、本実施形態に係る地盤改良方法では、「対象土の単位体積に対して混合する硫酸カリウムの質量」を決定する際には、以下の方法を採用することができる。
なお、以下では、対象土とN型地盤改良材と硫酸カリウムと水とを混合して形成される改良土の強度を、「N型改良土強度」とも記す。
また、以下では、対象土の単位体積に対して混合するN型地盤改良材の質量を、「N型地盤改良材の混合質量」とも記す。
また、以下では、対象土の単位体積に対して混合する硫酸カリウムの質量を、「硫酸カリウムの混合質量」とも記す。
また、以下では、「N型地盤改良材の混合質量」に対する硫酸カリウムの混合質量の割合を、「硫酸カリウムの混合割合」とも記す。
また、以下では、早強ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材を、「H型地盤改良材」とも記す。
また、以下では、対象土と「H型地盤改良材」と水とを混合して形成される改良土の強度を、「H型改良土強度」とも記す。
【0028】
まず初めに、「N型改良土強度」と、「硫酸カリウムの混合割合」と、の関係を示す散布図を作成する。該散布図は、「N型地盤改良材の混合質量」を変えて複数作成する。
【0029】
また、各散布図における「N型地盤改良材の混合質量」と同じ混合質量で「H型地盤改良材」を用いた際の改良土の強度(「H型改良土強度」)を求める。
なお、早強ポルトランドセメントとは、「JIS R 5210:2009 ポルトランドセメント」に規定される早強ポルトランドセメントをいう。
【0030】
更に、各散布図において、「H型改良土強度に最も近いN型改良土強度の点(P)」と、「H型改良土強度を超え、且つ、(P)の強度に最も近いN型改良土強度の点」と、「H型改良土強度未満であり、且つ、(P)の強度に最も近いN型改良土強度の点」と、に基づいて、線形近似線を作成し、該線形近似線の数式(y1=α1×x1+β1)を求める。
そして、各散布図において、前記数式に基づいて、「H型改良土強度と同等のN型改良土強度(y1)」が得られる際の「硫酸カリウムの混合割合(x1)」を求める。
また、散布図毎に求めた「硫酸カリウムの混合割合(x1)」と、各散布図における「N型地盤改良材の混合質量」とから、「硫酸カリウムの混合質量」を求める。つまり、N型地盤改良材の混合質量毎に、硫酸カリウムの混合質量を求める。
【0031】
そして、「硫酸カリウムの混合質量」と、「N型地盤改良材の混合質量」と、の関係を示す散布図を作成し、該散布図の線形近似線を示す数式(y=α×x+β)を作成する。
該線形近似線を示す数式は、N型改良土強度がH型改良土強度と同等になる際の、N型地盤改良材の混合質量と、硫酸カリウムの混合質量と、の関係を示したものとなる。
このため、「硫酸カリウムの混合質量」を決定する際に、斯かる線形近似線の数式を満たす「硫酸カリウムの混合質量」以上とすることにより、H型改良土強度以上のN型改良土強度を得ることができる。
【0032】
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る地盤改良方法は、N型地盤改良材と硫酸カリウムとを含む硫酸カリウム含有地盤改良材を用いる点で、第一実施形態と異なる。そこで、以下では、第一実施形態と異なる点について説明する。
【0033】
硫酸カリウム含有地盤改良材は、N型地盤改良材と硫酸カリウムとの合計質量に対する硫酸カリウムの質量の割合(z)が下記(2)式を満たす。xは、第一実施形態のN型地盤改良材の混合質量であり、yは、第一実施形態の硫酸カリウムの混合質量である。

z≧y/(x+y)×100・・・(2)
(x:対象土の単位体積に対して混合する地盤改良材の質量)
(y=0.1265x−11.727)
【0034】
以上のように、本発明に係る地盤改良方法、及び、硫酸カリウム含有地盤改良材は、早強ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材を用いて形成された改良土と同等の強度を発現する改良土を形成することができる。また、本発明に係る改良土は、早強ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材を用いて形成された改良土と同等の強度を発現する。
【0035】
即ち、上記の地盤改良方法は、対象土と地盤改良材とを混合して改良土を形成する地盤改良方法であって、対象土と地盤改良材と硫酸カリウムとを混合して改良土を形成する改良土形成工程を備えており、地盤改良材は、普通ポルトランドセメントを主成分として含んでおり、改良土形成工程では、対象土の単位体積に対して混合する地盤改良材の質量(x)と、対象土の単位体積に対して混合する硫酸カリウムの質量(y)との関係が下記(1)式を満たすように、対象土と地盤改良材と硫酸カリウムとを混合する。これにより、早強ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材を用いて形成した改良土と同等の強度を発現する改良土を形成することができる。

y≧0.1265x−11.727・・・(1)
【0036】
また、対象土の単位体積に対して混合する地盤改良材の質量(x)に対する対象土の単位体積に対して混合する硫酸カリウムの質量(y)の割合が6.6質量%以上であることが好ましい。これにより、より良好な強度を発現する改良土を形成することができる。
【0037】
また、上記の硫酸カリウム含有地盤改良材は、対象土と混合されて改良土を形成する地盤改良材と、硫酸カリウムとを含んでおり、地盤改良材は、普通ポルトランドセメントを主成分として含んでおり、地盤改良材と硫酸カリウムとの合計質量に対する硫酸カリウムの質量割合(z)は、下記(2)式を満たす。これにより、早強ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材を用いて形成した改良土と同等の強度を発現する改良土を形成することができる。

z≧y/(x+y)×100・・・(2)
(x:対象土の単位体積に対して混合する地盤改良材の質量)
(y=0.1265x−11.727)
【0038】
上記の改良土は、対象土と地盤改良材と硫酸カリウムとを含む改良土であって、地盤改良材は、普通ポルトランドセメントを主成分として含んでおり、対象土の単位体積に対して混合される地盤改良材の質量(x)と、対象土の単位体積に対して混合される硫酸カリウムの質量(y)との関係が下記(1)式を満たす。これにより、早強ポルトランドセメントを主成分とする地盤改良材を用いて形成した改良土と同等の強度を発現させることができる。

y≧0.1265x−11.727・・・(1)
【0039】
なお、本発明に係る地盤改良方法、硫酸カリウム含有地盤改良材、及び、改良土は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
<使用材料>
・地盤改良材I(N型地盤改良材)
普通ポルトランドセメント(質量):無水石膏(質量)=83:17

・地盤改良材II(H型地盤改良材)
早強ポルトランドセメント(質量):無水石膏(質量)=83:17

・対象土
関東ローム(湿潤密度:1.393g/cm、自然含水比:112.3%)

・硫酸カリウム(特級試薬)
【0042】
<供試体の作製>
上記の各材料を用いて、下記表1の配合で改良土を作製し、該改良土を用いて、JGS 0821「安定処理土の締固めをしない供試体作製方法」に準拠した供試体を作製した。該供試体は、20℃、95%RHの条件で封緘養生した。
【0043】
<一軸圧縮強さ>
得られた供試体(材齢28日)について、JIS A 1216に準拠して一軸圧縮試験を行い、一軸圧縮強さ(N型改良土強度、及び、H型改良土強度)を求めた。一軸圧縮強さについては、下記表1に示す。
【0044】
<散布図の作製I>
N型地盤改良材を用いた各供試体(改良土)の「N型改良土強度」と、N型地盤改良材を用いた各供試体(改良土)の「硫酸カリウムの混合割合」と、の関係を示す散布図を作成した。また、該散布図は、「N型地盤改良材の混合質量」毎に作成した。各散布図は、図1(a)〜(c)に示す。
また、各散布図における線形近似線を求めた。具体的には、各散布図において、「H型改良土強度に最も近いN型改良土強度の点(P)」と、「H型改良土強度を超え、且つ、(P)の強度に最も近いN型改良土強度の点」と、「H型改良土強度未満であり、且つ、(P)の強度に最も近いN型改良土強度の点」と、に基づいて(即ち、図1(a)〜(c)それぞれの白抜きの3点に基づいて)、線形近似線を作成し、該線形近似線の数式(y1=α1×x1+β1)を求めた。線形近似線の数式については、図1(a)〜(c)に示す。
【0045】
<散布図の作製II>
上記の各散布図において、H型地盤改良材を用いた供試体(改良土)の「H型改良土強度」に相当する「N型改良土強度(y1)」が得られる際の「硫酸カリウムの混合割合(x1)」を、各散布図の線形近似線に基づいて求めた。「硫酸カリウムの混合割合(x1)」は、下記表2に示す。
また、得られた「硫酸カリウムの混合割合(x1)」と「N型地盤改良材の混合質量」とから、H型改良土強度に相当するN型改良土強度が得られる際の「硫酸カリウムの混合質量」を求めた。「硫酸カリウムの混合質量」は、下記表2に示す。
そして、得られた「硫酸カリウムの混合質量」と「N型地盤改良材の混合質量」との関係を示す散布図を作成し、該散布図の線形近似線を求めた。散布図及び線形近似線の数式については、図2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
<まとめ>
図2の線形近似線を示す数式(y=0.1265x−11.727)は、N型改良土強度がH型改良土強度と同等になる際の、「N型地盤改良材の混合質量」と、「硫酸カリウムの混合質量」との関係を示したものとなる。
このため、対象土と混合する「硫酸カリウムの混合質量」を決定する際に、斯かる線形近似線の数式を満たす「硫酸カリウムの混合質量(y)」以上とすることにより(即ち、y≧0.1265x−11.727を満たすようにすることで)、H型改良土強度以上のN型改良土強度を得ることができる。
図1
図2