【課題】熱交換器に使用される複数のシートの間隔を輸送時には小さくして輸送効率を向上させ、熱交換器に組み込むときには、複数のシートの間隔を広げることができるシートの積層構造体を提供する。
【解決手段】熱交換器に使用されるシートの積層構造体30は、交互に重ね合わされた複数の第1シート31および複数の第2シート41を備える。各第1シート31は、同じ方向に突出する複数の第1突起36および複数の第3突起35を有し、各第2シート41は、同じ方向に突出する複数の第2突起46および複数の第4突起45を有する。複数の第1突起36および複数の第2突起46は、反転して反対方向に突出可能な可撓性を有しており、複数の第3突起35は、複数の第2突起46の裏側にそれぞれ接合されており、複数の第4突起45は、複数の第1突起36の裏側にそれぞれ接合されている。
前記第1シートと前記第2シートとの間隔は、前記複数の第1突起および前記複数の第2突起を反対方向に突出させたときの前記第1シートと前記第2シートとの間隔の1/10〜1/2である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシートの積層構造体。
前記複数の第1シートおよび前記複数の第2シートを互いに引き伸ばして、前記複数の第1突起および前記複数の第2突起を反転させて反対方向に突出させる工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
前記第1シートと前記第2シートとの間隔は、前記複数の第1突起および前記複数の第2突起を反対方向に突出させたときの前記第1シートと前記第2シートとの間隔の1/10〜1/2である、請求項9に記載の方法。
前記複数の第1シートおよび前記複数の第2シートの製造から、前記複数の第3突起の前記複数の第2突起の裏側への接合、および前記複数の第4突起の前記複数の第1突起の裏側への接合までの工程を工場内で実施して、初期状態の積層構造体を作成し、
前記初期状態の積層構造体を前記熱交換器が設置された現場へ輸送した後に、前記複数の第1シートおよび前記複数の第2シートを互いに引き伸ばして、前記複数の第1突起および前記複数の第2突起を反転させて反対方向に突出させる、請求項9に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、シートの積層構造体は工場で製作され、その後に冷却塔まで輸送される。しかしながら、特許文献1に開示されるように、シート間には水を流すための隙間があるため、積層構造体の全体は大きなものとなる。このため、シートの積層構造体を工場から現場まで輸送する効率が悪い。複数のシートを現場に運んで、現場にて積層構造体を組み立てることも考えられるが、通常、冷却塔は外に配置されているため、強風が吹いている場合などには作業性が悪い。さらに、複数のシートから積層構造体を組み立てる際には、隣接するシートが有機溶剤を用いて溶着される。しかしながら、有機溶剤は、一般に、可燃性および臭気性を有しているため、積層構造体の組立場所には制限があることが多い。
【0005】
そこで、本発明は、熱交換器に使用される複数のシートの間隔を輸送時には小さくして輸送効率を向上させ、熱交換器に組み込むときには、複数のシートの間隔を広げることができるシートの積層構造体を提供する。また、本発明は、そのようなシートの積層構造体を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、熱交換器に使用されるシートの積層構造体であって、交互に重ね合わされた複数の第1シートおよび複数の第2シートを備え、各第1シートは、同じ方向に突出する複数の第1突起および複数の第3突起を有し、各第2シートは、同じ方向に突出する複数の第2突起および複数の第4突起を有し、前記複数の第1突起および前記複数の第2突起は、反転して反対方向に突出可能な可撓性を有しており、前記複数の第3突起は、前記複数の第2突起の裏側にそれぞれ接合されており、前記複数の第4突起は、前記複数の第1突起の裏側にそれぞれ接合されている、シートの積層構造体が提供される。
【0007】
一態様では、各第1シートは、前記複数の第1突起の周囲をそれぞれ延びる複数の第1補強部を有し、各第2シートは、前記複数の第2突起の周囲をそれぞれ延びる複数の第2補強部を有している。
一態様では、前記複数の第1補強部および前記複数の第2補強部は、それぞれ折り返し部から構成されている。
一態様では、各第1シートは、各第1突起と各第1補強部との間に設けられた複数の第1ヒンジ部を有し、各第2シートは、各第2突起と各第2補強部との間に設けられた複数の第2ヒンジ部を有し、前記複数の第1ヒンジ部および前記複数の第2ヒンジ部の厚さは、それぞれ、前記複数の第1突起および前記複数の第2突起の厚さよりも小さい。
【0008】
一態様では、前記複数の第1突起の高さは、前記複数の第3突起の高さよりも小さく、前記複数の第2突起の高さは、前記複数の第4突起の高さよりも小さい。
一態様では、前記第1シートと前記第2シートとの間隔は、前記複数の第1突起および前記複数の第2突起を反対方向に突出させたときの前記第1シートと前記第2シートとの間隔の1/10〜1/2である。
一態様では、前記第1突起および前記第2突起は、円錐台の形状を有する。
【0009】
一態様では、熱交換器に使用されるシートの積層構造体を製造する方法であって、同じ方向に突出する複数の第1突起および複数の第3突起をそれぞれ有する複数の第1シートを製造し、同じ方向に突出する複数の第2突起および複数の第4突起をそれぞれ有する複数の第2シートを製造し、前記複数の第3突起および前記複数の第4突起に接着剤を塗布し、前記複数の第1シートおよび前記複数の第2シートを交互に配列しながら、前記複数の第3突起を、前記複数の第2突起の裏側にそれぞれ接合し、前記複数の第4突起を、前記複数の第1突起の裏側にそれぞれ接合する方法が提供される。
【0010】
一態様では、前記複数の第1シートおよび前記複数の第2シートを互いに引き伸ばして、前記複数の第1突起および前記複数の第2突起を反転させて反対方向に突出させる工程をさらに含む。
一態様では、前記第1シートと前記第2シートとの間隔は、前記複数の第1突起および前記複数の第2突起を反対方向に突出させたときの前記第1シートと前記第2シートとの間隔の1/10〜1/2である。
【0011】
一態様では、前記複数の第1シートおよび前記複数の第2シートの製造から、前記複数の第3突起の前記複数の第2突起の裏側への接合、および前記複数の第4突起の前記複数の第1突起の裏側への接合までの工程を工場内で実施して、初期状態の積層構造体を作成し、前記初期状態の積層構造体を前記熱交換器が設置された現場へ輸送した後に、前記複数の第1シートおよび前記複数の第2シートを互いに引き伸ばして、前記複数の第1突起および前記複数の第2突起を反転させて反対方向に突出させる。
一態様では、前記複数の第1シートおよび前記複数の第2シートは、共通の金型を用いて製造される。
【発明の効果】
【0012】
第1シートの第3突起は、第2シートの第2突起の裏側に接合され、第2シートの第4突起は、第1シートの第1突起の裏側にそれぞれ接合されているので、第1シートと第2シートとの間隔を小さくすることができる。したがって、複数の第1シートおよび複数の第2シートを備えた積層構造体の全体をコンパクトにでき、輸送効率が向上する。積層構造体を冷却塔などの熱交換器に組み込むときは、第1突起および第2突起を、反対方向に突出するまで反転させる。結果として、第1シートと第2シートとの間隔が広がり、シートの積層構造体を通過する気体に過度の圧力損失を生じさせずに、液体と気体とが十分に熱交換可能な流路を第1シートと第2シートとの間に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係るシートの積層構造体が組み込まれた熱交換器の一例を示す模式図である。
図1に示す熱交換器は、水(液体)と空気(気体)との間で熱交換を行うことで水を冷却する冷却塔である。以下の説明では、冷却塔が熱交換器の一例として説明される。しかしながら、後述するシートの積層構造体は、冷却塔とは異なる熱交換器に使用されてもよい。
【0015】
図1に示す冷却塔は、冷却塔本体(熱交換器本体)1と、冷却塔本体1の内部に配置された気液接触部2と、冷却塔本体1の上部に取り付けられたファン装置3と、を備える。ファン装置3は、ファンケーシング18内に配置されたファン15と、該ファン15を回転させるモータ17とを備える。ファン15をモータ17によって回転させると、冷却塔本体1の側面に設けられたルーバ20を通って、冷却塔の外部の空気が冷却塔本体1に取り込まれる。冷却塔本体1に取り込まれた空気は、気液接触部2およびファンケーシング18を通って冷却塔の外部に排出される。
【0016】
図1に示す冷却塔は、気液接触部2に散布される水が供給される分配槽8をさらに有している。分配槽8は、気液接触部2の上方に設けられており、図示しない水の供給ラインが分配槽8に接続される。分配槽8には、例えば、冷凍機またはコンプレッサなどの設備の冷却液として用いられることで昇温した水が供給される。分配槽8から気液接触部2に散布された水は、該気液接触部2を略鉛直方向に流れ、その際に、空気と接触することで冷却される。具体的には、気液接触部2を流れる水は、ファン15によって冷却塔本体1に取り込まれた空気と接触し、該空気と熱交換を行うことで冷却される。さらに、気液接触部2を流れる水が空気と接触すると、水の一部が気化する。そのため、気化熱が水から奪われて、水がさらに冷却される。
【0017】
冷却塔本体1は、その下部に形成された水槽(回収槽)4を備えており、気液接触部2を流下する間に冷却された水は水槽4に貯められる。水槽4の下端には、排出管6が連結されており、水槽4に貯留された水は、排出管6を介して冷却塔本体1から排出される。排出管6は、図示しない回収ラインに連結されており、排出管6から回収ラインに流入した水は、再び、冷凍機または圧縮機などの設備の冷却水として用いられる。
【0018】
気液接触部2には、複数のシートが所定の間隔を開けて置かれた積層構造体が配置されている。
図2は、従来のシートの積層構造体の一例を模式的に示す側面図であり、
図3は、
図2に示す2種類のシートのそれぞれを模式的に示す斜視図である。
【0019】
図2に示すように、従来の積層構造体300は、2種類のシート31,41を交互に重なり合わせることで形成される。以下では、シート31を「第1シート31」と称し、シート41を「第2シート41」と称する。第1シート31は、平板状の第1シート本体33と、第1シート本体33から同じ方向に突出し、互いに高さの異なる複数の突起35,36と、を有している。同様に、第2シート41は、平板状の第2シート本体43と、第2シート本体43から同じ方向に突出し、互いに高さの異なる複数の突起45,46と、を有している。
【0020】
図3に示すように、2つのシート31,41間で、高い方の突起35,45の高さH1と、低い方の突起36,46の高さH2は同じであるが、高い方の突起35,45と低い方の突起36,46の位置が異なる。すなわち、
図2および
図3に示すように、第1シートの高い方の突起35に対応する位置に、第2シート41の低い方の突起46があり、第1シートの低い方の突起36に対応する位置に、第2シート41の高い方の突起45がある。このような2種類のシート31,41を交互に重ね合わせることで、
図2に示す積層構造体300が構成される。
【0021】
分配槽8(
図1参照)から気液接触部2に配置された積層構造体300に散布された水は、これらのシート31,41の表面上を下方に流れながら、冷却塔本体1に取り込まれた空気に接触することで冷却される。第1シート31の2種類の突起35,36および第2シート41の2種類の突起45,46は、これらシート31,41の間を流れる液体と気体とが十分に熱交換可能な間隔を形成するために設けられる。これら突起35,36,45,46は、シート31,41の間を通過する水と空気の抵抗となるので、できるだけ小さいことが好ましい。さらに、同様の観点から、突起35,36,45,46の数もできるだけ少ないことが好ましい。
【0022】
また、高さの異なる突起35,46と、突起36,45とが交互に接触されるので、シート31,41間の位置決めが達成される。シート31,41間の間隔を所望の大きさに設定するために、高い方の突起35,45の高さH1と、低い方の突起36,46の高さH2が設定される。具体的には、第1シート31の第1シート本体33と、第2シート41の第2シート本体43との間の間隔D(
図2参照)は、高い方の突起35,45の高さH1から低い方の突起36,46の高さH2を減算することで決定される。したがって、シート31,41間の間隔(第1シート本体33と第2シート本体43との間の距離)Dが所望の大きさになるように、高い方の突起35,45の高さH1および/または低い方の突起36,46の高さH2が設定される。
【0023】
従来は、工場で、
図3に示す第1シート31と第2シート41とを交互に接合して積層構造体300を組み立てて、冷却塔が設置される現場まで輸送していた。この場合、積層構造体300の全体は大きなものとなるため、積層構造体300を工場から現場まで輸送する効率が悪い。例えば、冷却塔の気液接触部2(
図1参照)に多数の積層構造体300を配置する場合には、積層構造体300の輸送コストが嵩んでしまう。
図3に示す第1シート31と第2シート41とを現場に搬送して、該現場で積層構造体300を組み立てる場合は、通常、冷却塔は外に配置されているため、強風が吹いている場合などには作業性が悪い。さらに、複数のシート31,41から積層構造体300を組み立てる際には、隣接するシート31,41が有機溶剤を用いて溶着される。しかしながら、有機溶剤は、一般に、可燃性および臭気性を有しているため、積層構造体300の組立場所には制限があることが多い。
【0024】
そこで、本実施形態では、シートの積層構造体は、以下に説明する構成を有する。
図4(a)は、一実施形態に係る積層構造体を模式的に示す側面図であり、
図4(b)は、
図4(a)に示す積層構造体が拡大された状態を模式的に示す側面図である。
図4(a)は、冷却塔が設置された現場へ輸送される前の積層構造体30を示しており、
図4(a)に示す積層構造体30の状態を、以下では、「初期状態」と称する。
図4(b)は、冷却塔が設置された現場に輸送された後で、隣接するシート31,41間の間隔が広げられた積層構造体30を示しており、
図4(b)に示す積層構造体30の状態を、以下では、「拡大状態」と称する。特に説明しない本実施形態の構成は、
図2および
図3を参照して説明された従来の積層構造体300と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0025】
図4(a)に示す積層構造体30も、2種類のシート31,41を交互に重なり合わせることで構成される。
図4(a)に示すシート31,41は、低い方の突起36,46が反転して反対方向に突出可能な可撓性を有している以外は、
図3に示すシート31,41と同一の構成を有する。すなわち、第1シート31は、平板状の第1シート本体33と、第1シート本体33から同じ方向に突出し、互いに高さの異なる複数の突起35,36を有しており、第2シート41は、平板状の第2シート本体43と、第2シート本体43から同じ方向に突出し、互いに高さの異なる複数の突起45,46を有している。
【0026】
隣接するシート31,41間では、第1シート31の高い方の突起35は、第2シート41の低い方の突起46の裏側に接合されている。より具体的には、第1シート31の突起35の頂部の上面は、第2シート41の突起46の頂部の下面に接合されている。さらに、第2シート41の高い方の突起45は、第1シート31の低い方の突起36の裏側に接合されている。より具体的には、第2シート41の突起45の頂部の上面は、第1シート31の突起36の頂部の下面に接合されている。突起35,45の頂部の上面は、例えば、突起36,46の頂部の下面に接着剤によって接合される。
【0027】
本実施形態では、突起35,36,45,46は、それぞれ、円錐台形状を有する(
図3参照)。したがって、突起35,36,45,46の頂部の上面は円形状を有する。高い方の突起35,45の頂部の上面の直径は、低い方の突起36,46の頂部の下面の直径以下である。すなわち、高い方の突起35,45の頂部の上面の面積は、低い方の突起36,46の頂部の下面の面積以下である。一実施形態では、突起35,36,45,46は、多角形状の頂部を有する角錐台形状を有していてもよい。この場合でも、高い方の突起35,45の頂部の上面の面積は、低い方の突起36,46の頂部の下面の面積以下である。
【0028】
図4(a)に示す初期状態の積層構造体30を、両矢印Aの方向に引っ張ると、第1シート31の突起36と第2シート41の突起46とが反転して反対方向に突出し、隣接するシート31,41間の間隔が拡大する。すなわち、積層構造体30を、両矢印Aの方向に引っ張ることで、積層構造体30が
図4(a)に示す初期状態から
図4(b)に示す拡大状態に変形する。その結果、
図4(a)に示す両矢印Aの方向における積層構造体30の幅が拡大する。積層構造体30の各シート31,41に形成された突起36,46は、
図4(a)に示す初期状態から
図4(b)に示す拡大状態に変形するのに十分な可撓性を有している。
【0029】
このような可撓性を突起36,46に与えるために、第1シート31および第2シート41は、例えば、比較的柔らかい樹脂から形成される。このような樹脂の例としては、ポリ塩化ビニル、シリコン樹脂などが挙げられる。
【0030】
第1シート31および第2シート41の厚みも、突起36,46の可撓性に影響を与える。すなわち、シート31,41の厚みを小さくすればするほど、突起36,46の可撓性が増加する。しかしながら、シート31,41の厚みを小さくしすぎると、積層構造体30の全体の強度が低下して、拡大状態に至った積層構造体30が変形しやすくなる。したがって、積層構造体30に要求される強度を維持できる範囲で、シート31,41の厚みを小さくするのが好ましい。シート31,41の厚みを小さくすることで、積層構造体30の重量が低下する。その結果、積層構造体30の輸送がさらに容易になるとともに、気液接触部2(
図1参照)に積層構造体30を組み込む際の作業性が向上する。ポリ塩化ビニル製のシート31,41の厚みは、例えば、0.3mmに設定される。
【0031】
次に、積層構造体30の製造方法の一例について説明する。最初に、複数の第1シート31および複数の第2シート41がそれぞれ形成される。第1シート31および第2シート41は、型成形、加圧成形、および真空成形などの公知の製造方法によって形成することができる。このような公知の製造方法によって、第1シート本体33と、該第1シート本体33上に同じ方向に突出する複数の突起35,36とが一体に形成された第1シート31、および第2シート本体43と、該第2シート本体43上に同じ方向に突出する複数の突起45,46が一体に形成された第2シート41を容易に製造することができる。
【0032】
第1シート31および第2シート41を、それぞれ別の金型を用いて製造してもよいし、共通の金型を用いて製造してもよい。金型は、一般に、高価であり、第1シート31および第2シート41の製造に共通の金型を使用することで、積層構造体30の製造コストを低減することができる。
【0033】
図5は、共通の金型を用いて第1シートおよび第2シートを製造する方法の一例を説明するための模式図である。
図5には、第1シート31および第2シート41で共通の金型で作成されたシート50が描かれている。
図5に示すシート50は、平板状のシート本体53と、シート本体53から同じ方向に突出し、互いに高さの異なる複数の突起55,56と、を有している。突起55,56は交互に配列されている。
図5に示すシート50では、シート本体53のコーナーCAに隣接する突起が低い方の突起56であり、シート本体53の一辺に沿った、コーナーCAの反対側のコーナーCBに隣接する突起が高い方の突起55である。
【0034】
図5に示す切断線CL1で平板状のシート本体53を切断することにより、
図3に示す第1シート31が形成される。この場合、シート50の高い方の突起55は、
図3に示す第1シート31の高い方の突起35に対応し、シート50の低い方の突起56は、
図3に示す第1シート31の低い方の突起36に対応する。
【0035】
図5に示す切断線CL2で平板状のシート本体53を切断することにより、
図3に示す第2シート41が形成される。この場合、シート50の高い方の突起55は、
図3に示す第2シート41の高い方の突起45に対応し、シート50の低い方の突起56は、
図3に示す第2シート41の低い方の突起46に対応する。
【0036】
図5に示すシート50では、切断線CL1またはCL2でシート本体53を切断しなくても、シート本体53が正方形であれば、シート本体53を90度回転させることで、第1シート31と第2シート41とを使い分けることができる。より具体的には、
図5に示すシート50が第1シート31に対応し、
図5に示すシート50を90度回転させると、回転後のシート50を第2シート41として用いることができる。このように、共通の金型を用いて第1シート31および第2シート41を製造することにより、積層構造体30の製造コストを低減することができる。
【0037】
次に、第1シート31の突起35の頂部の上面と、第2シート41の突起45の頂部の上面とに、接着剤を塗布する。さらに、第1シート31および第2シート41を交互に配列しながら、第1シート31の突起35の頂部の上面を第2シート41の突起46の頂部の下面に接合し、同時に、第2シート41の突起45の頂部の上面を第1シート31の突起36の頂部の下面に接合する。このようにして、同じ方向に突出する突起35,36をそれぞれ有する複数の第1シート31と、同じ方向に突出する突起45,46をそれぞれ有する複数の第2シート41が交互に配列された積層構造体30が形成される(
図4(a)参照)。
【0038】
図4(a)に示す初期状態の積層構造体30は、例えば、工場内で製造される。すなわち、工場内で、複数の第1シート31および複数の第2シート41を製造し、各第1シート31の複数の突起35を、各第2シート41の複数の突起46の裏側へ接合するとともに、各第1シートの複数の突起36を、各第2シート41の複数の突起45の裏側へ接合する。
図4(a)に示す初期状態の積層構造体30が、冷却塔(熱交換器)が配置された現場に輸送される。
【0039】
図4(a)に示す積層構造体30によれば、同じ方向に突出する第1シート31の突起35と、第2シート41の突起46とが接合され、かつ同じ方向に突出する第2シート41の突起45と、第1シート31の突起36とが接合されている。したがって、第1シート31と第2シート41との間の間隔を小さくすることができるので、複数の第1シート31および複数の第2シート41を備えた積層構造体30の全体をコンパクトにでき、輸送効率が向上する。
【0040】
第1シート31の突起35,36の高さの差、および第2シート41の突起45,46の高さの差によって、隣接する第1シート31と第2シート41との間に隙間が形成される。したがって、隣接する第1シート31と第2シート41とが密着することが防止される。
【0041】
積層構造体30を冷却塔(熱交換器)に組み込むときは、第1シート31と第2シート41との間に形成された隙間に工具を挿入して、第1シート31と第2シート41とを互いに引き伸ばし、第1シート31の突起36と第2シート41の突起46とが反対方向に突出するまで反転させる(
図4(b)参照)。この作業により、第1シート31と第2シート41との間の間隔が広がり、その結果、積層構造体30を通過する空気に過度の圧力損失を生じさせずに、水と空気とが十分に熱交換可能な流路が第1シート31と第2シート41との間に形成される。
【0042】
初期状態の積層構造体30を、拡大状態の積層構造体30に変形させるためのこの作業は、初期状態の積層構造体30を冷却塔が設置された現場へ輸送した後に行われる。すなわち、冷却塔が設置された現場で、複数の第1シート31および複数の第2シート41を互いに引き伸ばして、各第1シート31の複数の突起36、および各第2シート41の複数の突起46を反転させて反対方向に突出させる。
【0043】
図4(a)に示す初期状態の第1シート31と第2シート41との間の間隔D1は、
図4(b)に示す拡大状態の第1シート31と第2シート41との間の間隔D2の1/10〜1/2の範囲にあるのが好ましい。突起35,45の高さH1(
図3参照)、および/または突起36,46の高さH2(
図3参照)を変更することで、間隔D2に対する間隔D1の比t(=D1/D2)を調整することができる。なお、初期状態の第1シート31と第2シート41との間の間隔D1は、突起35,45の高さH1から突起36,46の高さH2を減算することで得られる(D1=H1−H2)。これに対し、拡大状態の第1シート31と第2シート41との間の間隔D2は、突起35,45の高さH1に突起36,46の高さH2を加算することで得られる(D2=H1+H2)。
【0044】
一般的な冷却塔において、シートの積層構造体の隣接するシート間の距離は、積層構造体を通過する気体に大きな圧力損失が生じるのを抑制しつつ、液体と気体とが十分に熱交換可能な流路を形成するために20mm程度に設定される。すなわち、第1シート31と第2シート41との間の間隔D2は、20mm程度に設定されるのが好ましい。これに対し、積層構造体30の輸送効率の観点からは、初期状態における第1シート31と第2シート41との間の間隔D1はできる限り小さく設定されることが好ましい。しかしながら、間隔D1を小さくしすぎると、積層構造体30を初期状態から拡大状態まで広げるときの作業性が低下するとともに、突起36,46の反転が困難になる。そのため、間隔D2に対する間隔D1の比の下限は、好ましくは、1/10である。
【0045】
一方で、積層構造体30を初期状態から拡大状態まで広げるときの作業性、および突起36,46の反転の容易性の観点からは、初期状態における第1シート31と第2シート41との間の間隔D1はできる限り大きく設定されることが好ましい。しかしながら、間隔D1が大きくなるにつれて、輸送効率が低下する。したがって、間隔D2に対する間隔D1の比の上限は、好ましくは、1/2である。
【0046】
図6(a)は、第1シート31に形成された低い方の突起36と、該低い方の突起36の周辺部の構成の一例を拡大して示す斜視図であり、
図6(b)は、
図6(a)に示す突起36と、その周辺部の部分断面図である。
【0047】
図6(a)および
図6(b)に示す突起36は、頂部36aと、頂部36aから第1シート本体33に向かって斜めに延びる可撓部36bと、を備える。頂部36aの上面は、第1シート31の低い方の突起36を第2シート41の高い方の突起45の裏側に接合する接着面として機能する。すなわち、頂部36aは突起36の接着部である。積層構造体30を初期状態から拡大状態に広げると、可撓部36bが第1シート本体33に対して反転する。すなわち、可撓部36bは突起36の反転部である。第1シート本体33と平行な断面における可撓部36bの直径は、頂部36aから第1シート本体33に向かって徐々に大きくなる。
【0048】
図6(a)および
図6(b)に示すように、シート31は、突起36の周囲を延びる第1補強部37を有していてもよい。第1補強部37は、突起36を取り囲むように、可撓部36bの下端の全周にわたって延びている。可撓部36bは、第1補強部37を介して第1シート本体33に接続される。
【0049】
第1補強部37は、突起36と第1シート本体33の接続部分の強度を増加させるために設けられる。図示した例の第1補強部37は、初期状態(
図4(a)参照)にある突起36と同じ方向に突出する折り返し部によって構成される。第1補強部37によって、積層構造体30を初期状態から拡大状態まで広げるときに突起36に加わる力によって、突起36の周囲の第1シート本体33が変形することが阻止される。すなわち、第1補強部37によって、第1シート本体33が第2シート本体43と平行である状態を維持したまま、突起36の可撓部36bを反対方向に突出するまで反転させることができる。
【0050】
なお、第2シート41に形成された突起46と、その周辺部も、
図6(a)および
図6(b)に示す突起36と、その周辺部の構成と同様に構成されてもよい。この場合、
図6(a)および
図6(b)を参照して説明された第1シート31の突起36とその周辺部の構成において、第1シート31の第1シート本体33、第1シート31の突起36、突起36の頂部36aおよび可撓部36b、および第1補強部37を、それぞれ、第2シート41の第2シート本体43、第2シート41の突起46、突起46の頂部46aおよび可撓部46b、および第2補強部47と読み替えればよい。このように第2シート41の突起46と、その周辺部を構成することで、第2シート本体43が第1シート本体33と平行である状態を維持したまま、突起46の可撓部46bを反対方向に突出するまで反転させることができる。
【0051】
図7(a)は、
図6(b)に示す突起36の周辺部の構成の変形例を示す断面図であり、
図7(b)は、
図6(b)に示す突起36の周辺部の構成の他の変形例を示す断面図である。
【0052】
図7(a)に示す実施形態では、第1シート31の突起36の可撓部36bの反転を容易に行うために、第1シート31は、突起36の可撓部36bの下端と第1補強部37との間に設けられた第1ヒンジ部38をさらに有する。突起36の可撓部36bは、第1ヒンジ部38と第1補強部37を介して第1シート本体33に接続される。
【0053】
第1ヒンジ部38は、突起36の厚さよりも小さい厚さを有する薄肉部として構成される。すなわち、第1ヒンジ部38の厚さは、突起36の可撓部36bの厚さよりも小さい。本実施形態では、突起36の可撓部36bの厚さは、突起36の頂部36aの厚さ、および第1シート本体33の厚さと同一である。第1ヒンジ部38の厚さを突起36の厚さよりも小さくすることで、積層構造体30を初期状態から拡大状態まで広げるときに、第1ヒンジ部38は、突起36の可撓部36bよりも先に変形を開始する。第1ヒンジ部38は、可撓部36bの反転のきっかけ部として機能する。第1ヒンジ部38の一方の端部は、第1補強部37に接続されており、該第1補強部37によって第1シート本体33の変形が阻止されている。その一方で、第1ヒンジ部38の他方の端部は、突起36の可撓部36bに接続されており、第1ヒンジ部38の変形によって、可撓部36bはその下端から変形を開始する。したがって、第1ヒンジ部38の変形によって、突起36の可撓部36bの変形が促され、突起36を容易に反対方向に突出させることができる。
【0054】
図7(b)に示す実施形態では、第1ヒンジ部38は、突起36の可撓部36bの全周にわたって延びる溝38aを有している。この溝38aによって、第1ヒンジ部38は、突起36の厚さよりも小さい厚さを有する薄肉部として構成される。このような溝38aを第1ヒンジ部38に設けることによっても、積層構造体30を初期状態から拡大状態まで広げるときに、第1ヒンジ部38の変形を、突起36の可撓部36bよりも先に開始させることができる。その結果、
図7(a)に示す実施形態と同様に、突起36の可撓部36bの変形が促され、突起36を容易に反対方向に突出させることができる。
【0055】
第2シート41も、
図7(a)または
図7(b)に示す第1ヒンジ部38と同様の構成を有してもよい。この場合、
図7(a)または
図7(b)を参照して説明された第1ヒンジ部38、および溝38aを、第2ヒンジ部48、および溝48aと読み替えればよい。
【0056】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。