【実施例1】
【0011】
図1は、本願の実施例1に係る半導体装置100の上面図である。また、
図2は、本願の実施例1に係る半導体装置100のA−A線に沿った断面図である。
【0012】
半導体装置100は、半導体素子10と、当該半導体素子10を実装するリードフレーム20と、半導体素子10の電極と外部端子であるリード22B及び82Cとを電気的に接続する金属板30及び61と、半導体素子10の電極とリード22B及び82Cとを固着する導電性固着材40と、を含む。
図1においては、理解を容易にするために、リードフレーム20を破線にて、金属板30並びに31及び導電性固着材40を一点破線にて示している。
【0013】
半導体素子10は、例えば、ダイオード、バイポーラ型トランジスタ又はMOSFET等のSiCを基板とする半導体素子である。尚、本実施例においては、半導体素子10がMOSFETである場合について説明する。
【0014】
半導体素子10は、基板50と、基板50の1の主面上に形成された拡散層60と、基板50の1の主面上に拡散層60を取り囲むように基板50上に環状に形成された複数の溝を有する基板凹凸部51と、基板50の1の主面上に基板50の拡散層60及び基板凹凸部51を覆うように形成された電極膜70と、基板50の1の主面上の電極膜70の外周部に形成されたウェハ保護膜80と、を有する。また、電極膜70とリードフレーム20の外部電極リード(図示せず)とを電気的に接続する金属板30と、電極膜70と金属板30とを固着し且つ電気的に接続する導電性固着材40と、を有する。
【0015】
基板50は、例えば、SiCを主材料とし、窒素(N)又はリン(P)等がドープされたn型の半導体基板である。
【0016】
基板50の1の主面には、例えば、アルミニウム(Al)又はホウ素(B)が拡散形成されたp型の拡散層60が形成されている。
【0017】
また、基板50の1の主面の反対側の面である裏面は、MOSFETとして機能する半導体素子10のドレイン電極として機能する。
【0018】
また、基板50の1の主面には、拡散層60の周囲を取り囲むように環状の少なくとも1の溝部を有する基板凹凸部51が形成されている。基板凹凸部51は、例えば、幅が約1um、深さ約1〜3um程度の溝が溝間ピッチ1umの間隔で拡散層60の周囲を環状に複数周回形成されている。
【0019】
基板50の1の主面上に形成された拡散層60及び基板凹凸部51上には、拡散層60及び基板凹凸部51を覆うように電極膜70が形成されている。電極膜70は、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム−シリコン(Al−Si)又はアルミニウム−シリコン−銅(Al−Si−Cu)等を主材料とした厚さ5umの導電性の合金膜である。電極膜70は、拡散層60とリードフレーム20の外部電極リードとを接続する電極パッドとして機能する。また、電極膜70の基板50及び拡散層60と接する面と反対側の面において、基板凹凸部51に対応する位置には、基板凹凸部51の形状によりパターン形成された複数周回のガードリング71が形成されている。すなわち、電極膜70は、拡散層60の位置に対応する中央部分は平坦であり、基板凹凸部51の位置に対応する電極膜70の外周部は凹凸が形成されたガードリング71が形成されている。尚、本実施例においては、基板凹凸部51及びガードリング71を5周回形成する場合について説明する。
【0020】
尚、電極膜70は、MOSFETとして機能する半導体素子10のソース電極として機能する。
【0021】
電極膜70の周囲には、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO2)又はポリイミド等のウェハ保護膜80が形成される。また、ウェハ保護膜80は、例えば、厚さ10umで形成される。また、ウェハ保護膜80には、電極膜70の上面を露出させる開口部である電極パッド開口部OP1が設けられる。
【0022】
また、半導体素子10は、電極膜70のソース電極と基板50の裏面のドレイン電極との間の電流量を制御する図示しないゲート配線及びゲート電極75を有する。当該ゲート電極75に電圧が印加されることで半導体素子10のソース−ドレイン間の電流量を制御する。また、当該ゲート電極75においても、ソース電極である電極膜70と同様に、ウェハ保護膜80に電極パッド開口部OP2が設けられておりゲート電極75が露出している。
【0023】
また、半導体装置100は、半導体素子10をパッケージに実装する際、当該半導体素子10をリードフレーム20のダイパッド21上に導電性固着材42を介して固着する。すなわち、基板50の裏面であるドレイン電極とリード22Aが電気的に接続される。導電性固着材42は、例えば、溶融はんだ、はんだペースト又は銀(Ag)ペースト等である。
【0024】
また、電極パッド開口部OP1の電極膜70の上面である基板50及び拡散層60と接している反対側の面上に、例えば、溶融はんだ、はんだペースト又はAgペースト等の導電性固着材40を塗布し、当該導電性固着材40に外部電極リードと接続する金属板30の一方の端を載置及び固着させて電極膜70と外部リードとを電気的に接続する。尚、金属板30の電極膜70と接続する方の反対側の他方の端は、同様に図示しない導電性固着材により、リード22Bと固着され、電気的に接続される。
【0025】
また、上記と同様に、ゲート電極75は、導電性固着材41を介して金属板31の一方の端と固着され電気的に接続される。また、金属板31の他方の端においても、同様に図示しない導電性固着材により、リード22Cと固着され、電気的に接続される。
【0026】
また、金属板30を載置する際において、半導体素子10のオン抵抗を低減させるために、導電性固着材40と金属板30との密着面積を可能な限り大きくすることが好ましい。すなわち、導電性固着材40と金属板30との密着面積を可能な限り大きくするべく、金属板30を導電性固着材40上に載置する際、金属板30の自重又は金属板30の載置時の荷重により導電性固着材40を押し込む場合がある。この時、導電性固着材40は、電極膜70の上面上で横方向に広がることとなる。
【0027】
例えば、導電性固着材40の塗布量がバラツキにより多くなる又は塗布位置が電極パッド開口部OP1の中心点からずれる等により、導電性固着材40の横方向への広がりが大きくなると、導電性固着材40が電極パッド開口部OP1からはみ出し、ウェハ保護膜80を乗り越えてしまう場合がある。ウェハ保護膜80に導電性固着材40が大きく接してしまうと、ウェハ保護膜80の変質や剥離等の不具合が発生する場合がある。
【0028】
本実施例1においては、電極膜70の外周部に対応する位置において、基板50に基板凹凸部51を形成する。これにより、電極膜70の外周部に基板凹凸部51の形状がパターン形成されたガードリング71を形成することが可能となる。
【0029】
ガードリング71を設けることにより、金属板30の載置時における導電性固着材40が横方向の広がりを抑制することが可能となる。具体的には、ガードリング71により凹部が形成されることで、電極膜70の表面積が増大する。当該増大した表面積の分だけ、導電性固着材40の電極パッド開口部OP1の端部への広がり距離が増大することとなる故、導電性固着材40の横方向の広がりを抑制することが可能となる。
【0030】
また、ガードリング71の凸部が導電性固着材40の横方向の広がりに対して障壁となることで当該横方向の広がりを抑制することが可能となる。また、ガードリング71の凸部があることにより、電極膜70が平坦である場合に比べ、導電性固着材40とガードリング71の凸部との動摩擦が高くなるためガードリング71が導電性固着材40の横方向の広がりを抑制することが可能となる。
【0031】
上記処理をされた半導体素子10及びリードフレーム20は、絶縁性の樹脂90で封止された後、個片化されて半導体装置100として製造される。
【0032】
上記によれば、半導体装置100は、一主面の1の領域に露出する拡散層60が形成されており、一主面において1の領域を取り囲む環状の基板凹凸部51を有するSiCからなる基板50と、1の領域及び基板凹凸部51を覆うように基板50の一主面上に形成され、上面の基板凹凸部51上の領域に基板凹凸部51に対応する形状を有するガードリング71を有する電極膜70と、一主面上に電極膜70を囲むように形成されかつガードリング71の少なくとも1部を露出する開口部OP1を有する保護膜80と、を有する。また、電極膜70は、上面のガードリング71に囲まれた領域の少なくとも一部が平坦な面である。また、ガードリング71は、基板50に形成された基板凹凸部51が転写されて形成されている。また、ガードリング71に囲まれた領域に塗布された導電性接着材40によって電極膜70に接合された外部リード22を有する。また、導電性固着材40は、はんだである。
【0033】
次に、
図3〜5、及び
図6〜20を用いて、本願の実施例1に係る半導体装置100の製造手順について説明する。
【0034】
図3〜5は、本願の実施例1に係る半導体装置100の製造手順を示す拡散層形成フローDF、素子形成フローCF1及び実装フローPFである。また、
図6〜20は、
図3及び4に示す製造手順の各ステップにおける半導体装置100の断面図を示す。
【0035】
まず、
図3に示す基板50に拡散層60を形成する拡散層形成フローDFについて説明する。
【0036】
ステップS101として、
図6に示すようにN又はP等がドープされたn型のSiC半導体である基板50を用意する(ステップS101)。
【0037】
図7に示すように基板50の1の主面上に、p型の拡散層60を形成する部分が開口されたパターンを有するレジスト膜RE1を形成する(ステップS102)。
【0038】
次に、拡散工程として、
図8に示すように、レジスト膜RE1が形成された基板50のレジスト膜RE1が成形された面からAl又はB等のイオンを注入し、p型の拡散層60を形成する(ステップS103)。拡散層60は、例えば、イオン化されたドーパントを基板50に加速注入して形成される。
【0039】
図9に示すように、基板50の1の主面上に形成されたレジスト膜RE1を除去する(ステップS104)。
【0040】
次に、
図4に示す基板50に素子構造を形成して半導体素子10とする素子形成フローCF1について説明する。
【0041】
図10に示すように、基板50の1の主面上に基板凹凸部51を形成する部分が開口されたパターンを有するレジスト膜RE2を形成する(ステップS105)。
【0042】
次に、凹凸形成工程として、
図11に示すように、レジスト膜RE2が形成された基板50のレジスト膜RE2が成形された面からエッチングを行い、基板凹凸部51を形成する(ステップS106)。本実施例においては、エッチング方法は、例えば、六フッ化硫黄(SF6)又は三フッ化窒素(NF3)等のガスを用いたドライエッチングである。
【0043】
図12に示すように、基板凹凸部51が形成された基板50の1の主面上に形成されているレジスト膜RE2を除去する(ステップS107)。
【0044】
次に、電極膜形成工程として、
図13に示すように、基板50の拡散層60及び基板凹凸部51が形成されている1の主面上に電極膜70を形成する(ステップS108)。電極膜70は、例えば、化学気相蒸着(CVD)又はスパッタリング等の物理蒸着(PVD)等で形成される。
【0045】
図14に示すように、電極膜70の上面である拡散層60及び基板凹凸部51と接している反対側の面にウェハ保護膜80を形成する部分以外を覆うようにパターンされたレジスト膜RE3を形成する(ステップS109)。
【0046】
図15に示すように、レジスト膜RE3が形成された基板50のレジスト膜RE3が成形された面からエッチングを行い、レジスト膜RE3で覆われた部分以外の電極膜70を除去する(ステップS110)。
【0047】
図16に示すように、電極膜70の上面に形成されたレジスト膜RE3を除去する(ステップS111)。
【0048】
図17に示すように、基板50の電極膜70が形成されている1の主面上にウェハ保護膜80を形成する(ステップS112)。
【0049】
図18に示すように、ウェハ保護膜80の上面である基板50及び電極膜70と接している反対側の面の電極膜70を露出させる部分以外にレジスト膜RE4を形成する(ステップS113)。
【0050】
図19に示すように、レジスト膜RE4が形成された基板50のレジスト膜RE4が成形された面からエッチングを行い、レジスト膜RE4で覆われた部分以外のウェハ保護膜80を除去して電極パッド開口部OP1を形成する(ステップS114)。
【0051】
図20に示すように、ウェハ保護膜80の上面に形成されたレジスト膜RE4を除去する(ステップS115)。尚、ステップS112〜S115までの処理が保護膜形成工程として処理される。
【0052】
上記ステップS101〜S115の処理をすることにより、半導体素子10を形成する。
【0053】
次に、
図5に示す半導体素子10をリードフレーム20に実装してパッケージ化する実装フローPFについて説明する。
【0054】
形成された半導体素子10を基板50の裏面である1の主面の反対側の面からバックグラインドを行う(ステップS116)。
【0055】
バックグラインドを行った半導体素子10をダイシングしてそれぞれをチップ化する(ステップS117)。
【0056】
チップ化された半導体素子10をそれぞれはんだ等の導電性のチップ固着材が塗布されたリードフレーム20のダイパッド21に載置する(ステップS118)。
【0057】
半導体素子10の上面の電極パッド開口部OP1内の電極膜70に導電性固着材40を塗布する(ステップS119)。
【0058】
半導体素子10の電極膜70に塗布された導電性固着材40上にリードフレーム20の外部リードと接続する金属板30を載置する(ステップS120)。また、当該半導体素子10をリフロー装置等で加熱して導電性固着材40を溶融させた後、電極膜70及び金属板30を固着する。
【0059】
金属板30が固着された半導体素子10をそれぞれ樹脂封止及び個片化する(ステップS121)。
【0060】
上記ステップS116〜S121の処理をすることにより、半導体装置100を製造する。
【0061】
すなわち、上記によれば、半導体装置10の製造方法は、SiCからなる基板50の一主面の1の領域に露出する拡散層60を形成する拡散工程と、一主面において1の領域を取り囲む環状の基板凹凸部51を形成する凹凸形成工程と、1の領域及び基板凹凸部51を覆うように基板50の一主面上に形成され、上面の基板凹凸部51上の領域に基板凹凸部51に対応する形状を有するガードリング71を有する電極膜70を形成する電極膜形成工程と、一主面上に電極膜70を囲むように形成されかつガードリング71の少なくとも1部を露出する開口部OP1を有する保護膜80を形成する保護膜形成工程と、を含む。
【0062】
また、凹凸形成工程は、ドライエッチングによって環状の基板凹凸部51を基板50の一主面に形成する。
【0063】
図21は、本願の実施例1に係る半導体装置10の電極膜70に塗布した導電性固着材40が多かった場合に必要な基板凹凸部51の深さ及び周回数を試算した図である。本実施例においては、基板50に形成した基板凹凸部51において、幅1um、深さを1um、2um及び3umとした場合について説明する。
【0064】
横軸は、導電性固着材40を塗布した後の横方向への広がり時における導電性固着材40の直径とウェハ保護膜80の電極パッド開口部OP1の開口サイズとの寸法比を示す。具体的には、電極膜70の上面が一様に平坦であった場合に横軸に示した電極パッド開口部OP1の開口サイズとの比の寸法まで電極パッド開口部OP1から導電性固着材40がはみ出すことを示す。
【0065】
縦軸は必要となるガードリング71の幅を示す。具体的には、幅1umの溝が1umの間隔ごとに、縦軸で示した電極パッド開口部OP1の開口サイズ比の寸法の分だけ繰り返し環状に形成されることで導電性固着材40が電極パッド開口部OP1からはみ出なくなることを示す。尚、必要となるガードリング71の幅は、形成された凹凸部による表面積の増加率から算出される。
【0066】
尚、
図21に示す試算においては、導電性固着材40の塗布位置は電極パッド開口部OP1の中心位置に塗布されたものとして試算を行った。
【0067】
まず、基板凹凸部51の溝深さを1umとし且つ導電性固着材40が電極パッド開口部OP1の開口サイズの1.2倍まで広がる場合、導電性固着材40が電極パッド開口部OP1からはみ出さないようにするのに必要なガードリング71の幅は、電極パッド開口部OP1の開口サイズの約0.1倍の幅が必要となる。例えば、電極パッド開口部OP1の開口サイズが100umであった場合、幅10umの環状のガードリング71が必要となる。すなわち、基板50には、基板凹凸部51として幅1um及び深さ1umの溝が1umの間隔ごとに5周回の溝を形成する必要がある。
【0068】
また、導電性固着材40が電極パッド開口部OP1の開口サイズの1.5倍まで広がる場合、必要なガードリング71の幅は、電極パッド開口部OP1の開口サイズの約0.26倍の幅となる。例えば、電極パッド開口部OP1の開口サイズが100umであった場合、約26umのガードリング71の幅が必要となり且つ、基板50には、基板凹凸部51として13周回の溝を形成する必要がある。
【0069】
また、導電性固着材40が電極パッド開口部OP1の開口サイズの2倍まで広がる場合、必要なガードリング71の幅は、電極パッド開口部OP1の開口サイズの約0.53倍の幅となる。電極パッド開口部OP1の開口サイズの約0.53倍の幅のガードリング71を環状に形成することはチップサイズを考慮すると困難である。よって、導電性固着材40が電極パッド開口部OP1の開口サイズの2倍まで広がる場合、基板50に形成する基板凹凸部51の溝の深さが1umでは導電性固着材40の電極パッド開口部OP1からのはみ出しを防ぐことは困難である。
【0070】
次に、基板凹凸部51の溝の深さを2umとし且つ導電性固着材40が電極パッド開口部OP1の開口サイズの1.2倍まで広がる場合、必要なガードリング71の幅は、電極パッド開口部OP1の開口サイズの約0.07倍の幅となる。例えば、電極パッド開口部OP1の開口サイズが100umであった場合、約7umのガードリング71の幅が必要となり且つ、基板50には、基板凹凸部51として4周回の溝を形成する必要がある。
【0071】
また、導電性固着材40が電極パッド開口部OP1の開口サイズの1.5倍まで広がる場合、必要なガードリング71の幅は、電極パッド開口部OP1の開口サイズの約0.18倍の幅となる。例えば、電極パッド開口部OP1の開口サイズが100umであった場合、約18umのガードリング71の幅が必要となり且つ、基板50には、基板凹凸部51として9周回の溝を形成する必要がある。
【0072】
また、導電性固着材40が電極パッド開口部OP1の開口サイズの2倍まで広がる場合、必要なガードリング71の幅は、電極パッド開口部OP1の開口サイズの約0.36倍の幅となる。例えば、電極パッド開口部OP1の開口サイズが100umであった場合、約36umのガードリング71の幅が必要となり且つ、基板50には、基板凹凸部51として18周回の溝を形成する必要がある。
【0073】
次に、基板凹凸部51の溝の深さを3umとし且つ導電性固着材40が電極パッド開口部OP1の開口サイズの1.2倍まで広がる場合、必要なガードリング71の幅は、電極パッド開口部OP1の開口サイズの約0.05倍の幅となる。例えば、電極パッド開口部OP1の開口サイズが100umであった場合、約5umのガードリング71の幅が必要となり且つ、基板50には、基板凹凸部51として3周回の溝を形成する必要がある。
【0074】
また、導電性固着材40が電極パッド開口部OP1の開口サイズの1.5倍まで広がる場合、必要なガードリング71の幅は、電極パッド開口部OP1の開口サイズの約0.13倍の幅となる。例えば、電極パッド開口部OP1の開口サイズが100umであった場合、約13umのガードリング71の幅が必要となり且つ、基板50には、基板凹凸部51として7周回の溝を形成する必要がある。
【0075】
また、導電性固着材40が電極パッド開口部OP1の開口サイズの2倍まで広がる場合、必要なガードリング71の幅は、電極パッド開口部OP1の開口サイズの約0.26倍の幅となる。例えば、電極パッド開口部OP1の開口サイズが100umであった場合、約26umのガードリング71の幅が必要となり且つ、基板50には、基板凹凸部51として13周回の溝を形成する必要がある。
【0076】
上記試算を目安として、導電性固着材40の塗布量のバラツキ幅を予め考慮することにより、導電性固着材40が電極パッド開口部OP1からはみ出しを確実に防ぐガードリング71の形成幅を決定することが可能となる。
【0077】
本実施例1においては、SiCを主原料とした基板50に基板凹凸部51を形成し、電極膜70にガードリング71を形成した場合について説明した。しかし、基板凹凸部51を形成する基板50はSiCに限定されない。例えば、シリコン(Si)又は窒化ガリウム(GaN)等の半導体基板に基板凹凸部51を形成して電極膜70にガードリング71を形成してもよい。
【0078】
また、本実施例1においては、幅約1um、深さ約1〜3umの寸法の基板凹凸部51及びガードリング71を5周回形成した場合について説明したが、基板凹凸部51及びガードリング71の寸法及び周回数はこれに限定されない。電極膜70に塗布する導電性固着材40の塗布量並びに塗布位置のバラツキ又は導電性固着材40の粘性等による広がり特性に合わせて電極膜70から導電性固着材40がはみ出さないように溝の幅、溝の深さ及び溝の周回数を適宜決定すればよい。
【0079】
また、本実施例1においては、基板凹凸部51及びガードリング71が櫛歯状の断面形状を有するようにエッチング及びパターン形成された場合について説明したが、基板凹凸部51及びガードリング71の断面形状はこれに限定されない。例えば、異方性エッチング等により、基板凹凸部51の凸部が略台形の断面形状を有するように基板凹凸部51を形成してもよい。
【実施例2】
【0080】
図22は、本願の実施例2に係る半導体装置100Aの上面図である。また、
図23は、本願の実施例2に係る半導体装置100AのB−B線に沿った断面図である。
【0081】
半導体装置100Aの構成は、実施例1で述べた半導体装置100と基本的に同じ構成であり、実施例1では基板50の拡散層60の外周部にエッチングで基板凹凸部51を形成した点に対し、実施例2では基板50の拡散層60の外周部をレーザアニールによって表面を環状に粗くした点で異なる。
【0082】
すなわち、基板50の拡散層60の外周部にレーザアニールによって凹凸を形成した基板凹凸部51Aが形成されている。
【0083】
SiCは、レーザLBの照射等により、ステップバンチングと呼ばれる現象が生じ、SiC結晶表面が荒れ、凹凸が生じることがわかっている。本実施例2においては、この現象を利用し、基板50に基板凹凸部51Aを形成する。
【0084】
電極膜70の基板50及び拡散層60と接する面と反対側の面において、基板凹凸部51Aに対応する位置には、基板凹凸部51Aの形状によりパターン形成されたガードリング71Aが形成されている。
【0085】
本実施例2においても、実施例1と同様に、ガードリング71Aを設けることにより、金属板30の載置時における導電性固着材40が横方向の広がりを抑制することが可能となる。
【0086】
具体的には、ガードリング71Aにより凹部が形成されることで、電極膜70の表面積が増大する。当該増大した表面積の分だけ、導電性固着材40の電極パッド開口部OP1の端部への広がり距離が増大することとなる故、導電性固着材40の横方向の広がりを抑制することが可能となる。
【0087】
また、ガードリング71Aの凸部が導電性固着材40の横方向の広がりに対して障壁となることで当該横方向の広がりを抑制することが可能となる。また、ガードリング71Aの凸部があることにより、電極膜70が平坦である場合に比べ、導電性固着材40とガードリング71Aの凸部との動摩擦が高くなるためガードリング71Aが導電性固着材40の横方向の広がりを抑制することが可能となる。
【0088】
加えて、レーザLBを照射することによって基板凹凸部51Aを形成することにより、新たにエッチングマスクを用意する必要なくガードリング71Aを形成することができ、コスト低減することが可能となる。
【0089】
図24は、本願の実施例2に係る半導体装置100Aの製造手順を示す素子形成フローCF2である。
【0090】
尚、半導体装置100Aの製造手順において、素子形成フローCF2の前工程である拡散層形成フローDFは実施例1と同様である故、ここでは説明を割愛する。また、素子形成フローCF2の後工程である実装フローPFにおいても実施例1と同様である故、ここでは説明を割愛する。また、素子形成フローCF2の電極膜70を形成するステップS402〜S409以降においても、実施例1の素子形成フローCF1のステップS108〜S115と同様である故、説明を割愛する。
【0091】
まず、凹凸形成工程として、
図25に示すように、拡散層形成フローDFのステップS104までの処理を行って拡散層60を形成した基板50に対し、基板50の拡散層60が形成されている1の主面に対して拡散層60の外周にレーザLBを照射してレーザアニールを施して基板凹凸部51Aを形成する(ステップS401)。レーザアニールでは、例えば、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)レーザを用いてSiCの基板50の表面を1200℃以上に加熱する。これにより、基板50のレーザ照射部の表面でステップバンチングが生じ、基板50のレーザ照射部に表面荒れが生じる。また、形成する基板凹凸部51Aの幅は、例えば、200um程度である。
【0092】
次に、電極膜形成工程として、
図26に示すように、ステップS401で基板50のレーザアニールによって形成された基板凹凸部51A上に電極膜70を形成する。基板凹凸部51Aの形状がパターン形成されたガードリング71Aを有する電極膜70を形成することが可能となる。
【0093】
上記処理がなされて電極膜70が形成されたSiC基板50は、続けてステップS402〜S409(
図4のステップS108〜S115に相当)がなされることで、
図27に示すようなガードリング71Aが設けられた半導体素子10Aが製造される。また、続けて
図5に示した実装フローPFがなされることで、ガードリング71Aが設けられた半導体装置100Aが製造される。
【0094】
上記によれば、凹凸形成工程は、レーザアニールによって環状の基板凹凸部51Aを基板50の一主面に形成する。
【0095】
本実施例2においては、実施例1と同様にガードリング71Aを設けることにより、金属板30の載置時における導電性固着材40が横方向の広がりを抑制することが可能となる。
【0096】
本実施例2においては、基板凹凸部51Aの幅を200um程度とした場合について説明したが、基板凹凸部51Aの幅はこれに限定されない。電極膜70の開口部サイズに対して所定の割合の幅を持たせてもよい。また、電極膜70に塗布する導電性固着材40の塗布量並びに塗布位置のバラツキ又は導電性固着材40の粘性等による広がり特性に合わせて電極膜70から導電性固着材40がはみ出さないように適宜基板凹凸部51Aの幅を可変に形成すればよい。
【0097】
本実施例1及び2においては、n型のSiCの基板50を用い、p型の拡散層60を形成した半導体装置100について説明した。しかし、基板50及び拡散層60の極性はこれに限定されず、p型のSiCの基板50を用い、n型の拡散層60を形成してもよい。
【0098】
また、本実施例1及び2においては、ソース電極として機能する電極膜70にガードリング71及び43Aを形成する場合について説明した。しかし、ガードリングは、ゲート電極75にも設けられていてもよい。
【0099】
また、本実施例1及び2においては、ウェハ保護膜80の電極パッド開口部OP1が矩形の形状を有し、ガードリング71及び43Aが矩形の環状を有する場合について説明したが、これらの形状は矩形形状に限定されない。これらの形状は、略円形状又は楕円形状でもよい。
【0100】
また、本実施例1及び2においては、半導体装置100がMOSFETである場合について説明したが、半導体装置100はこれに限定されない。例えば、半導体装置100は、SiCを主材料としたショットキーバリアダイオード、バイポーラトランジスタ等の半導体素子にも適用可能である。