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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-175766(P2021-175766A)
(43)【公開日】2021年11月4日
(54)【発明の名称】樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20211008BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20211008BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20211008BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20211008BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20211008BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20211008BHJP
【FI】
   C08J3/22CFD
   C08L101/00
   C08K3/04
   C08L67/00
   C08K3/013
   C08L23/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-81142(P2020-81142)
(22)【出願日】2020年5月1日
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】浅井 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】五島 一也
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AA32
4F070AA47
4F070AB08
4F070AB16
4F070AB24
4F070AC04
4F070AC28
4F070AD02
4F070AE01
4F070FA17
4F070FB03
4F070FB07
4F070FC06
4J002AA00W
4J002AA00X
4J002AA01W
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4J002BB06X
4J002BB07W
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4J002BC06W
4J002BN12X
4J002BN15W
4J002CB00W
4J002CF00W
4J002CF05W
4J002CF06W
4J002CF07W
4J002CG00W
4J002CH09W
4J002CL00W
4J002CN03W
4J002DA036
4J002DA067
4J002DC007
4J002DE117
4J002DE137
4J002DE187
4J002DE237
4J002DF017
4J002DG047
4J002DG057
4J002DJ007
4J002DJ017
4J002DJ027
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DK007
4J002DL007
4J002FD017
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】成形品の体積抵抗率を低減させることができる樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂組成物の製造方法であって、(i)樹脂Aの一部または全部とフタル酸ジブチル吸油量が300mL/100g以上であるカーボンブラックCとを溶融混錬すること、及び、(ii)(i)で得られた混錬物に、樹脂Aに非相溶の高分子化合物B、及び樹脂Aの残量がある場合はその全量を加えて溶融混錬すること、を含み、カーボンブラックCの総配合量が、樹脂A及び高分子化合物Bの合計100質量部に対して3.7〜7.8質量部である、樹脂組成物の製造方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物の製造方法であって、
(i)樹脂Aの一部または全部とフタル酸ジブチル吸油量が300mL/100g以上であるカーボンブラックCとを溶融混錬すること、及び
(ii)(i)で得られた混錬物に、樹脂Aに非相溶の高分子化合物Bを加えて溶融混錬すること、を含み、
カーボンブラックCの総配合量が、樹脂A及び高分子化合物Bの合計100質量部に対して3.7〜7.8質量部である、樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
(i)において、樹脂Aの総配合量の50質量%以上とカーボンブラックCの全量とを溶融混錬する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i)において、樹脂AとカーボンブラックCとをマスターバッチ化する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
高分子化合物Bの配合量が、樹脂Aの総量100質量部に対して2〜40質量部である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
樹脂Aが熱可塑性樹脂を含み、高分子化合物Bがエラストマーを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
樹脂Aが、熱可塑性ポリエステル樹脂を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(ii)において、さらに充填剤Dを配合する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
樹脂A、樹脂Aに非相溶の高分子化合物B、及びフタル酸ジブチル吸油量が300mL/100g以上であるカーボンブラックCを含み、
カーボンブラックCの総配合量が、樹脂A及び高分子化合物Bの合計100質量部に対して3.7〜7.8質量部であり、
IEC60093により測定される体積抵抗率が、1×10〜1×1015Ωcmである、樹脂組成物。
【請求項9】
高分子化合物Bの含有量が、樹脂Aの総量100質量部に対して2〜40質量部である、請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
樹脂Aが、熱可塑性樹脂を含み、高分子化合物Bがエラストマーを含む、請求項8又は9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
さらに充填剤Dを含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、樹脂は絶縁性であるため電気を帯電しやすいという性質を有している。樹脂に帯電した静電気は、電子機器の誤作動やデータの破損などを引き起こす原因となり得る。近年は電子機器の小型軽量化や高精度化及びモバイル化などに伴い、静電気によって引き寄せられるほこりや砂などが問題になることもある。そのため、樹脂の帯電防止性能は益々重要な特性になっている。
樹脂に帯電防止性能を付与する方法として、樹脂成形品に導電塗装やメッキなどの処理を行ったり樹脂に帯電防止剤を添加したりすることにより、表面抵抗率や体積抵抗率を低減させる方法がある。例えば、樹脂にカーボンブラックを添加して帯電防止性を付与する技術がある(例えば、特許文献1,2)。
【特許文献1】特開2019−189791号公報
【特許文献2】特開2019−188739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
カーボンブラックは、一般的に使用される帯電防止剤、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩や第4級アンモニウム塩、グリセリン脂肪酸エステルなどと異なり環境の影響を受けにくく、半永久的に効果が得られることから使用されている。
しかし、カーボンブラックは、添加量が多いと樹脂成形品の靭性が低下したり成形時に粘度が上昇し流動性が低下したりしてしまうことがある。そのため、カーボンブラックの添加量を抑えつつ成形品の体積抵抗率を低減させる技術が求められている。
【0004】
本発明は、成形品の体積抵抗率を低減させることができる樹脂組成物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、体積抵抗率が小さい成形品を与えることができる樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、カーボンブラックの添加量の低減と体積抵抗率の低減とを両立する方法を研究する過程で、マトリクスとなる樹脂に該樹脂に非相溶の樹脂を添加することで、カーボンブラックの添加量を少なくしてもマトリクス樹脂中のカーボンブラック濃度を高め、体積抵抗率を低減させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1]樹脂組成物の製造方法であって、(i)樹脂Aの一部または全部とフタル酸ジブチル吸油量が300mL/100g以上であるカーボンブラックCとを溶融混錬すること、及び、(ii)(i)で得られた混錬物に、樹脂Aに非相溶の高分子化合物Bを加えて溶融混錬すること、を含み、カーボンブラックCの総配合量が、樹脂A及び高分子化合物Bの合計100質量部に対して3.7〜7.8質量部である、樹脂組成物の製造方法。
[2](i)において、樹脂Aの総配合量の50質量%以上とカーボンブラックCの全量とを溶融混錬する、[1]に記載の方法。
[3](i)において、樹脂AとカーボンブラックCとをマスターバッチ化する、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]高分子化合物Bの配合量が、樹脂Aの総量100質量部に対して2〜40質量部である、[1]から[3]のいずれかに記載の方法。
[5]樹脂Aが熱可塑性樹脂を含み、高分子化合物Bがエラストマーを含む、[1]から[4]のいずれかに記載の方法。
[6]樹脂Aが、熱可塑性ポリエステル樹脂を含む、[1]から[5]のいずれかに記載の方法。
[7](ii)において、さらに充填剤Dを配合する、[1]から[6]のいずれかに記載の方法。
[8]樹脂A、樹脂Aに非相溶の高分子化合物B、及びフタル酸ジブチル吸油量が300mL/100g以上であるカーボンブラックCを含み、カーボンブラックCの総配合量が、樹脂A及び高分子化合物Bの合計100質量部に対して3.7〜7.8質量部であり、IEC60093により測定される体積抵抗率が、1×10〜1×1015Ωcmである、樹脂組成物。
[9]高分子化合物Bの含有量が、樹脂Aの総量100質量部に対して2〜40質量部である、[8]に記載の樹脂組成物。
[10]樹脂Aが、熱可塑性樹脂を含み、高分子化合物Bがエラストマーを含む、[8]又は[9]に記載の樹脂組成物。
[11]さらに充填剤Dを含む、[8]から[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、成形品の体積抵抗率を低減させることができる樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
本発明によれば、体積抵抗率が小さい成形品を与えることができる樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0009】
[樹脂組成物の製造方法]
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、以下の工程:
(i)樹脂Aの一部または全部とフタル酸ジブチル吸油量が300mL/100g以上であるカーボンブラックCとを溶融混錬すること、及び
(ii)(i)で得られた混錬物に、樹脂Aに非相溶の高分子化合物Bを加えて溶融混錬すること
を含む。以下ではまず各成分について述べ、次に各製造工程について述べる。
【0010】
(樹脂A)
樹脂A(以下、「成分A」ともいう。)は、マトリクス樹脂としての作用を有する樹脂である。樹脂Aとしては、熱可塑性樹脂を好ましく用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリルニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等が挙げられる。樹脂Aは、上記から選択される1以上を用いることができる。樹脂Aは、吸水による体積抵抗率への影響が低く、配合する高分子化合物Bの耐熱性の観点から、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
【0011】
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、等のC2−6アルキレンアリレート樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂は、上記から選択される1以上を用いることができる。樹脂Aは、耐加水分解性の観点から、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を含むことが好ましい。
【0012】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4−ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート樹脂である。本実施形態において、ポリブチレンテレフタレート樹脂はホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上含有する共重合体であってもよい。
【0013】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましい。
【0014】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されないが、0.60dL/g以上1.2dL/g以下が好ましく、0.65dL/g以上0.9dL/g以下がより好ましい。このような範囲の固有粘度のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が特に成形性に優れたものとなる。また、異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.0dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂と固有粘度0.7dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.9dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂を調製することができる。ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、例えば、o−クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
【0015】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の調製において、コモノマー成分としてテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を用いる場合、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル等のC8−14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4−16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC5−10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)を用いることができる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0016】
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC8−12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC6−12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
【0017】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の調製において、コモノマー成分として1,4−ブタンジオール以外のグリコール成分を用いる場合、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール等のC2−10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC2−4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を用いることができる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0018】
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC2−6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。
【0019】
ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に使用できるコモノマー成分としては、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−カルボキシ−4’−ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε−カプロラクトン等)等のC3−12ラクトン;これらのコモノマー成分のエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。
【0020】
樹脂Aの含有量は、樹脂組成物の全質量の30〜95質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましく、50〜70質量%であることがさらに好ましい。
【0021】
(高分子化合物B)
高分子化合物B(以下、「成分B」ともいう。)は、樹脂Aに非相溶の高分子化合物である。「樹脂Aに非相溶」とは樹脂Aと高分子化合物Bとを混錬した際に、樹脂Aで構成される連続した海相中に高分子化合物Bの島相が分散した海島構造が形成されることを意味する。
【0022】
驚くべきことに、本発明者は、カーボンブラックを添加したマトリクス樹脂(樹脂A)に、さらに、マトリクス樹脂に非相溶の化合物(高分子化合物B)を配合することで、カーボンブラックの添加量を低減させつつ成形品の体積抵抗率を低減させることができることを見出した。
従来、カーボンブラックは樹脂成分の全体に均一に分散させることでその性能をより発揮すると考えられていた。しかし、むしろ、樹脂Aで構成される連続した海相中に高分子化合物Bで構成される島相を分散することで、樹脂Aに存在するカーボンブラックの濃度を高め、体積抵抗率をより低減できることが分かった。
「樹脂Aに非相溶」であることは、ISO527に用いる引張試験片の標線間を短手方向に切断し、樹脂Aと高分子化合物BとのモルフォロジーをSEMなどで観察し、樹脂Aで構成される連続した海相中に高分子化合物Bの島相が観察されることで非相溶と判断することができる。例えば、樹脂Aがポリブチレンテレフタレート、高分子化合物Bがエチレン−エチルアクリレート共重合体の場合には、樹脂Aの海相中に3μm〜50μmのエチレン−エチルアクリレート共重合体が島相として観察される。
【0023】
高分子化合物Bとしては、樹脂Aと非相溶な熱可塑性樹脂、及びエラストマーが挙げられる。
【0024】
エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、アクリル系コアシェル型エラストマー、直鎖状ポリオレフィン樹脂、及びこれらの組み合わせを挙げることができ、これらから選択された1以上を用いることが好ましい。
【0025】
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EP共重合体)、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPD共重合体)、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、EP共重合体およびEPD共重合体から選択された少なくとも一種の単位を含む共重合体、オレフィンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体{エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体にメチルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体をグラフト重合させた共重合体(EEA−g−BAMMA)等}などが含まれる。好ましいオレフィン系エラストマーには、EP共重合体、EPD共重合体、オレフィンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体が含まれ、特にエチレンエチルアクリレート及び/又はエチレン−エチルアクリレート共重合体にメチルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体をグラフト重合させた共重合体を含むことが好ましい。これらのオレフィン系エラストマーは単独でまたは二種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
アクリル系コアシェル型エラストマーは、コア層がゴム成分(軟質成分)、シェル層が硬質成分で構成されるポリマーであり、コア層のゴム成分にアクリル系ゴムを用いるものである。コア層に用いるアクリル系ゴムは、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満(例えば−10℃以下)であるのが好ましく、−20℃以下(例えば−180℃以上−25℃以下)であるのがより好ましく、−30℃以下(例えば−150℃以上−40℃以下)であるのが特に好ましい。
【0027】
ゴム成分として用いるアクリル系ゴムは、アルキルアクリレート等のアクリル系モノマーを主成分として重合して得られる重合体が好ましい。アクリル系ゴムのモノマーとして用いるアルキルアクリレートは、ブチルアクリレート等のアクリル酸のC〜C12のアルキルエステルが好ましく、アクリル酸のC〜Cのアルキルエステルがより好ましい。
【0028】
アクリル系ゴムは、アクリル系モノマーの単独重合体でもよく、共重合体でもよい。アクリル系ゴムがアクリル系モノマーの共重合体である場合、アクリル系モノマー同士の共重合体でも、アクリル系モノマーと他の不飽和結合含有モノマーとの共重合体であってもよい。アクリル系ゴムが共重合体である場合、アクリル系ゴムは架橋性モノマーを共重合したものであってもよい。
【0029】
シェル層には、ビニル系重合体が好ましく用いられる。ビニル系重合体は、例えば、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、メタクリル酸エステル系単量体、及びアクリル酸エステル単量体の中から選ばれた少なくとも一種の単量体を重合あるいは共重合させて得られる。かかるアクリル系コアシェル型エラストマーのコア層とシェル層は、グラフト共重合によって結合されていてもよい。このグラフト共重合化は、必要な場合には、コア層の重合時にシェル層と反応するグラフト交差剤を添加し、コア層に反応基を与えた後、シェル層を形成させることによって得られる。グラフト交差剤として、シリコーン系ゴムを使用する場合は、ビニル結合を有したオルガノシロキサンあるいはチオールを有したオルガノシロキサンが用いられ、好ましくはアクロキシシロキサン、メタクリロキシシロキサン、ビニルシロキサンが使用される。
【0030】
直鎖状ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等、実質的に側鎖を有しないポリオレフィン樹脂であって、ASTM D2857法で測定した粘度平均分子量が1万〜100万であるものが好ましい。
【0031】
高分子化合物Bは、樹脂Aとして選択される樹脂に非相溶となる高分子化合物が選択される。すなわち、樹脂Aと溶融混錬したとき、樹脂Aで構成される連続した海相中に高分子化合物Bの島相が分散した海島構造を形成する高分子化合物が選択される。
例えば、樹脂Aとして熱可塑性ポリエステル樹脂(例えばPBT)が選択される場合の高分子化合物Bとしては、ポリオレフィン樹脂やエラストマーを含むことが好ましく、エラストマーとしてはオレフィン系エラストマー及びコアシェル系エラストマーから選択される1以上を含むことがより好ましい。
中でも、オレフィンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体及びコアシェルポリマーから選択される1以上を含むことが好ましい。特に、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体とメチルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体とをグラフト重合させた共重合体(EEA−g−BAMMA)、及びアクリルゴムをコア層とするコアシェルポリマーから選択される1以上を含むことがより好ましい。ただし、樹脂Aとしてポリブチレンテレフタレート樹脂を選択した場合、EGMA樹脂や無水カルボン酸変性オレフィン樹脂等、ポリブチレンテレフタレート樹脂のカルボン酸末端基や水酸基と反応するものは不適である。
【0032】
また例えば、樹脂Aとしてポリカーボネート樹脂が選択される場合の高分子化合物Bとしては、エラストマーを含むことが好ましく、オレフィン系エラストマーから選択される1以上を含むことがより好ましい。
【0033】
高分子化合物Bの配合量は、樹脂Aの総量100質量部に対して2〜40質量部であることが好ましく、2〜39質量部であることがより好ましく、3〜38質量部であることがさらに好ましく、3〜30質量部又は3〜20質量部とすることもできる。高分子化合物Bの配合量を樹脂Aの総量100質量部に対して2〜40質量部にすることで、体積抵抗率を低減することができるとともに、曲げ弾性率が低下するのを抑制することができる。
【0034】
(カーボンブラックC)
カーボンブラックC(以下、「成分C」ともいう。)としては、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が挙げられ、これらから選択される1以上を含むことが好ましく、ケッチェンブラックを含むことがより好ましい。
【0035】
カーボンブラックCのフタル酸ジブチル吸油量は、300mL/100g以上であり、320mL/100g以上であることが好ましく、350mL/100g以上であることがより好ましく、375mL/100g以上であることがさらに好ましく、380mL/100g以上であることがよりさらに好ましく、390mL/100g以上であることが最も好ましい。フタル酸ジブチル吸油量が300mL/100g以上であるので体積抵抗率を容易に低減することができる。一方、成形性の観点からは、カーボンブラックのフタル酸ジブチル吸油量が500mL/100g以下であることが好ましく、450mL/100g以下であることがより好ましく、425mL/100g以下であることがさらに好ましく、420mL/100g以下であることがよりさらに好ましく、410mL/100g以下であることが最も好ましい。
フタル酸ジブチル吸油量は、JIS K6217−4:2008に準拠して測定した値とする。
【0036】
カーボンブラックCの平均粒子径は、特に限定されないが、機械的特性を損なわないためには、5〜100nmであることが好ましく、20〜50nmであることがより好ましく、30〜40nmであることがさらに好ましい。なお、平均粒子径は、樹脂組成物中に配合される前のカーボンブラックについて、粒子1000個の電子顕微鏡観察により求めた算術平均粒子径である。樹脂組成物中のカーボンブラックCの平均粒子径は、樹脂組成物を薄片化し、上記方法で算出して得ることができる。
【0037】
カーボンブラックCの総配合量は、樹脂A及び高分子化合物Bの合計100質量部に対して3.7〜7.8質量部であり、好ましくは3.7〜7.7質量部であり、より好ましくは3.8〜7.7質量部であり、さらに好ましくは3.8〜7.6質量部であり、最も好ましくは3.9〜7.6質量部である。カーボンブラックCの配合量が樹脂A及び高分子化合物Bの合計100質量部に対して3.7〜7.8質量部であることにより、体積抵抗率を低減することができる。また、カーボンブラックCの含有量が少ないので、樹脂成形品の靭性が低下したり成形時に粘度が上昇し流動性が低下したりすることを防ぐことができる。
【0038】
(充填剤D)
本実施形態に係る樹脂組成物には必要に応じて充填剤D(以下、「成分D」ともいう。)が配合される。充填剤は、機械的強度、耐熱性、寸法安定性、電気的性質等の性能に優れた性質を得るためには配合することが好ましく、特に剛性を高める目的で有効である。充填剤としては、目的に応じて繊維状、粉粒状又は板状の充填剤が用いられる。
【0039】
繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物などが挙げられる。なお、ポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂などの高融点の有機質繊維状物質も使用することができる。
【0040】
粉粒状充填剤としては、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトなどの珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナなどの金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属の硫酸塩、その他、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素等が挙げられる。
【0041】
また、板状無機充填剤としては、マイカ、ガラスフレーク等が挙げられる。
【0042】
充填剤の種類は特に限定されず、1種又は複数種以上の充填剤を添加することができる。特に、ガラス繊維を使用することが好ましい。
【0043】
充填剤の添加量は、特に限定されるものではないが、樹脂A及び高分子化合物の合計100質量部に対して0〜90質量部であることが好ましく、5〜70質量部であることがより好ましく、15〜65質量部であることがさらに好ましい。充填剤を過剰に添加した場合は成形性に劣り靭性が低下してしまうことがある。
【0044】
(その他の樹脂成分)
本実施形態に係る樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の熱可塑性樹脂を配合することもできる。その他の熱可塑性樹脂としては、例えば樹脂Aがポリブチレンテレフタレート樹脂の場合は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルスチレン樹脂等が挙げられる。
【0045】
(添加剤)
本実施形態に係る樹脂組成物には、所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂等に添加される公知の物質を添加併用することができる。例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐加水分解性向上剤等の安定剤、滑剤、離型剤、染料や顔料等の着色剤(カーボンブラックを除く)、難燃剤、難燃助剤等いずれも配合することが可能である。
樹脂組成物は、カーボンナノチューブやフラーレンを含まない又は前記物質の含有量が全樹脂組成物中2%以下であるように構成することができる。前記物質は少量で導電レベルまで体積抵抗率を下げられるが、絶縁材における帯電防止を目的とするレベルでの制御が困難であり、コネクタ材などの用途では、成形品自体が通電してしまい使用できない場合がある。
【0046】
(製造工程)
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法では、樹脂Aと高分子化合物Bとを混錬する前に、樹脂AとカーボンブラックCとを混錬する。これにより、成形品の体積抵抗率を低減することができる樹脂組成物を得ることができる。
すなわち、樹脂組成物の製造方法は、以下の工程:
(i)樹脂Aの一部または全部とフタル酸ジブチル吸油量が300mL/100g以上であるカーボンブラックCとを溶融混錬する工程、及び
(ii)(i)で得られた混錬物に、樹脂Aに非相溶の高分子化合物Bを加えて溶融混錬する工程
を有する。材料及び組成については上述のとおりである。
【0047】
(工程(i))
「樹脂Aの一部または全部」とは、樹脂Aの総配合量のうちの一部または全部のことを意味する。工程(i)において樹脂Aと溶融混錬するカーボンブラックCの量は、カーボンブラックCの総配合量のうちの一部であってもよく全部であってもよい。成形品の体積抵抗率をより低減する点で、工程(i)において樹脂Aの総配合量の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは全量と、カーボンブラックCの総配合量の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは全量とを溶融混錬することが好ましい。
好ましい実施態様において、工程(i)では、樹脂Aの総配合量の50質量%以上とカーボンブラックCの全量とを溶融混錬する。
【0048】
工程(i)において、樹脂A及びカーボンブラックCに、上記した充填剤D、添加剤、及びその他の樹脂を配合することができるが、成形品の体積抵抗率をより低減する点で、充填剤、添加剤、及びその他の樹脂は、後述する工程(ii)で配合することが好ましい。すなわち、工程(i)における充填剤、添加剤、及びその他の樹脂の総配合量は、樹脂Aの配合量100質量部に対して100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、70質量部以下であることがさらに好ましい。
【0049】
「溶融混錬する」方法は、特に限定されず、当該技術分野で知られている設備及び方法を用いることができる。例えば、樹脂A、カーボンブラックC及び必要に応じてその他の成分を混合し、1軸又は2軸の押出機又はその他の溶融混練装置を使用して混練することができる。全ての成分をホッパから同時に投入してもよいし、一部の成分はサイドフィード口から投入してもよい。
【0050】
溶融混錬する温度は、樹脂Aが流動を開始する温度以上(例えば、融点よりも20℃以上高い温度)とすることができる。温度の上限値は、樹脂Aの分解温度以下が望ましい。例えば、PBTの融点は225℃、分解温度は379℃であり、混練する温度は240℃から320℃、より好ましくは250℃から300℃の温度範囲で混練することができる。
【0051】
工程(i)で得られた溶融混錬物は、樹脂A、カーボンブラックC、及び必要に応じて添加された他の成分(充填剤D、添加剤、及びその他の樹脂等)を含む。溶融混錬物に、引き続き、後述する工程(ii)を適用してもよいし、溶融混錬物をマスターバッチ化(ペレット状化、板状化、又は塊状化)した後に工程(ii)を適用してもよい。樹脂AとカーボンブラックCとを溶融混錬した後に引き続き後述する工程(ii)を適用することで、作業効率よく樹脂組成物を製造することができる。樹脂AとカーボンブラックCとを溶融混錬した後にマスターバッチ化して工程(ii)を適用することで、容易に樹脂組成物を製造することができる。
【0052】
(工程(ii))
工程(ii)では、上記した工程(i)で得られた混錬物に、樹脂Aに非相溶の高分子化合物Bを加えて溶融混錬する。樹脂Aの残量がある場合は、その一部又は全量を、工程(i)で得られた混錬物に、高分子化合物Bとともに又は高分子化合物Bを加えた後に、加えることができる。
好ましい実施形態において、工程(ii)では、上記した工程(i)で得られた混錬物に、樹脂Aに非相溶の高分子化合物B、及び樹脂Aの残りがある場合は全残量を加えて溶融混錬する。
必要に応じて、上記した充填剤D、添加剤、及びその他の樹脂をさらに加えることができる。すなわち、一実施形態において、工程(ii)では、上記した工程(i)で得られた混錬物に、樹脂Aに非相溶の高分子化合物B、樹脂Aの残りがある場合は全残量、及び充填剤D、並びに必要に応じて添加剤及びその他の樹脂を加えて溶融混錬する。
【0053】
「溶融混錬」する方法は、特に限定されず、上記工程(i)で述べた設備及び方法を用いることができる。例えば、工程(i)で得られた混錬物に、必要に応じて事前に混合(又は混錬)した、高分子化合物B、必要に応じて樹脂Aの残量及びその他の成分を加えて、1軸又は2軸の押出機又はその他の溶融混練装置を使用して溶融混練することができる。
【0054】
溶融混錬する温度は、樹脂Aが溶融する温度以上(例えば、樹脂Aの融点に対して20℃以上)とすることができる。温度の上限値は、樹脂Aの分解温度以下が望ましい。例えば、PBTの融点は225℃、分解温度は379℃であり、混練する温度は240℃から320℃、より好ましくは250℃から300℃の温度範囲で混練することができる。高分子化合物Bが、オレフィン系エラストマー、アクリル系コアシェル型エラストマー、及び直鎖状ポリオレフィン樹脂から選択される1以上を含む場合、上記温度で良好な分散を得ることができる。
【0055】
(樹脂組成物)
上記の製造方法により得られる樹脂組成物は、樹脂A、樹脂Aに非相溶の高分子化合物B、及びフタル酸ジブチル吸油量が300mL/100g以上であるカーボンブラックCを含み、カーボンブラックCの総配合量が、樹脂A及び高分子化合物Bの合計100質量部に対して3.7〜7.8質量部である。樹脂組成物は、樹脂Aで構成される連続した海相中に高分子化合物Bの島相が分散した海島構造が形成され、かつカーボンブラックCが樹脂Aの連続した海相中に偏って分散している。
【0056】
この樹脂組成物は、カーボンブラックの添加量を抑えつつ、成形品の体積抵抗率を低減させることができる。樹脂組成物は、IEC60093により測定される体積抵抗率が、1E+2〜1E+15(1×10〜1×1015)Ωcmであり、好ましくは1E+8〜1E+15(1×10〜1×1015)Ωcm、更に好ましくは1E+9〜1E+14(1×10〜1×1014)である成形品を与えることができる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0058】
実施例及び比較例で用いた材料を以下に示す。
[材料]
(成分A)
A−1:ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプラスチックス株式会社製、IV=0.76、MFR(235℃、2.16kg)=47g/10min、MV(260℃、1000sec−1)=114Pa・s
A−2:ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプラスチックス株式会社製、IV=0.69、MFR(235℃、2.16kg)=73g/10min、MV(260℃、1000sec−1)=72Pa・s
(成分B)
B−1:エチレンエチルアクリレート(EEA)、日本ユニカー株式会社製「NUC−6570」、MFR(190℃、2.16kg)=20g/10min
B−2:エチレン−エチルアクリレート共重合体にメチルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体をグラフト重合させた共重合体(EEA−g−BAMMA)、日油株式会社製、「モディパーA5300」、MV(190℃、6.08×10sec−1)=118Pa・s
B−3:アクリル系コアシェルポリマー、ダウケミカル社製「パラロイド EXL−2311」
B−4:ポリエチレン(PE)、株式会社プライムポリマー製「ハイゼックス 6203B」、MV(260℃、1000sec−1)=239Pa・s
B−5:ポリエステルエラストマー、TICONA株式会社製「ライトフレックス 655A」、MFR(220℃、2.16kg)=10g/10min
(成分C)
カーボンブラック(ケッチェンブラック)、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「ECX」、フタル酸ジブチル吸油量396mL/100g、平均粒子径35nm
(成分D)
ガラス繊維、日本電気硝子製「ECS 03−T−187」
【0059】
(実施例1)
成分A−1及び成分Cを表1に示す配合量となるよう秤量し、日本製鋼所製二軸押し出し機TEX30を用いて250℃、100rpm、10kg/hrで溶融混錬し、混錬物のマスターバッチを得た(工程(i))。
上記マスターバッチ、及び、表1に示す配合量となるように秤量した、成分B−1、成分C及び成分Dを、日本製鋼所製二軸押し出し機TEX30αを用いて、260℃、150rpm、15kg/hrで溶融混錬し、樹脂組成物ペレットを得た(工程(ii))。
【0060】
(実施例2〜9)
材料及び配合割合を表1に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物ペレットを得た。
【0061】
(実施例10,11)
成分A−1及び成分Cを表1に示す配合量となるよう秤量し、日本製鋼所製二軸押し出し機TEX30を用いて250℃、100rpm、10kg/hrで溶融混錬し、混錬物のマスターバッチを得た(工程i)。
上記マスターバッチ、成分A−2及び、表1に示す配合量となるように秤量した、成分B−1、成分C及び成分Dを、日本製鋼所製二軸押し出し機TEX30αを用いて、260℃、150rpm、15kg/hrで溶融混錬して樹脂組成物ペレットを得た(工程(ii))。
【0062】
(比較例1)
成分A−1、成分B−1、成分C及び成分Dを、表2に示す配合量となるよう秤量し、日本製鋼所製二軸押し出し機TEX30αに一括投入し、260℃、150rpm、15kg/hrで溶融混錬して、樹脂組成物ペレットを得た。
【0063】
(比較例2,4,5,7,8,11〜15,17)
材料及び配合割合を表2又は表3に記載のとおりとした以外は、比較例1と同様にして、樹脂組成物ペレットを得た。
【0064】
(比較例3,6,16)
材料及び配合割合を表2又は表3に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物ペレットを得た。
【0065】
(比較例9)
成分A−1及び成分Cを表3に示す配合量となるよう秤量し、日本製鋼所製二軸押し出し機TEX30を用いて250℃、100rpm、10kg/hrで溶融混錬し、混錬物のマスターバッチを得た(工程(i))。
上記マスターバッチ、及び、表1に示す配合量となるように秤量した、成分C及び成分Dを、日本製鋼所製二軸押し出し機TEX30αを用いて、260℃、150rpm、15kg/hrで溶融混錬して樹脂組成物ペレットを得た。なお、この工程は、高分子化合物Bを用いない点で工程(ii)には該当しないが、樹脂A及びカーボンブラックCを配合する工程と、その他の成分を配合する工程とを分けた方法である観点から、表3では、工程(i)及び(ii)の有無が「有」として記載した。
【0066】
(比較例10)
成分A−1、成分C及び成分Dを、表3に示す配合量となるよう秤量し、日本製鋼所製二軸押し出し機TEX30αに一括投入し、260℃、150rpm、15kg/hrで溶融混錬して、樹脂組成物ペレットを得た。
【0067】
[評価]
(体積抵抗率)
実施例および比較例の各樹脂組成物ペレットを、それぞれ、射出成形機(ファナック株式会社製「ROBOSHOT S−2000i100B」)にてシリンダー温度260℃、金型温度80℃、射出速度150mm/sec、保圧60MPaにて射出成形し、80mm×80mm×厚さ3mmの平板状試験片を得た。
得られた試験片を、超高抵抗計(株式会社アドバンテスト製「R8340」)を用いて、印加電圧500VでIEC60093に準じて体積抵抗率を測定した。
【0068】
(曲げ弾性率)
実施例および比較例の各樹脂組成物ペレットを、それぞれ射出成形機(東芝機械株式会社製「EC40」)にてシリンダー温度260℃、金型温度80℃、射出速度17mm/sec、保圧力60MPaで射出成形を行い、ISO3167に準じた試験片(幅10mm、厚み4mmt)を作製し、ISO178に準じて曲げ弾性率を測定した。結果を表1〜3に示す。表1〜3において、「E+n」等の記載は、10のn乗であることを意味している。例えば、「E+13」は1013を意味している。
【0069】
【表1】


【表2】

【表3】
【0070】
実施例1〜6と比較例1,2,5,8,11,12との対比から、材料の組成が同じ場合でも工程(i),(ii)をこの順で行うことで、各成分を一括添加して溶融混錬した場合に比べて、体積抵抗率を約1/10以下に低減することができることが理解できる。
実施例1,7,8,9と比較例1,13,14,15との対比から、高分子化合物Bの種類を変更したとしても、工程(i),(ii)をこの順で行うことで、各成分を一括添加して溶融混錬した場合に比べて、体積抵抗率を約1/10以下に低減することができることが理解できる。
実施例1と比較例1,9,10との対比から、高分子化合物Bを用いない場合は、工程(i)及び(ii)をこの順で行ったとしても(樹脂A及びカーボンブラックCを配合する工程と、その他の成分を配合する工程とを分けたとしても)、体積抵抗率を低減することができないことが理解できる。
比較例3と比較例4との対比、比較例6と比較例7との対比から、カーボンブラックの添加量が所定の範囲未満又は所定の範囲を超える場合も、工程(i)及び(ii)をこの順で行ったとしても、体積抵抗率を低減することができないことが理解できる。
比較例16と比較例17との対比から、樹脂Aと非相溶ではない(相溶性の)高分子化合物を用いた場合は、工程(i)及び(ii)をこの順で行ったとしても、体積抵抗率を低減することができないことが理解できる。