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特開2021-180074薄膜リチウム二次電池及び薄膜リチウム二次電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-180074(P2021-180074A)
(43)【公開日】2021年11月18日
(54)【発明の名称】薄膜リチウム二次電池及び薄膜リチウム二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20211022BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20211022BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20211022BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20211022BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20211022BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20211022BHJP
【FI】
   H01M10/052
   H01M10/0562
   H01M10/0585
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M4/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-83266(P2020-83266)
(22)【出願日】2020年5月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊介
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM11
5H029BJ01
5H029BJ12
5H029CJ21
5H029HJ02
5H029HJ04
5H050AA15
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050FA02
5H050GA21
5H050HA02
5H050HA04
(57)【要約】
【課題】信頼性が高い薄膜リチウム二次電池及び薄膜リチウム二次電池の製造方法を提供することにある。
【解決手段】上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る薄膜リチウム二次電池は、第1のリチウム複合酸化物を有する正極層と、前記正極層から放出されるリチウムイオンを吸蔵または前記正極層にリチウムイオンを放出することが可能な負極層と、前記負極層と前記正極層との間に設けられ、第2のリチウム複合酸化物を有する固体電解質層とを具備する。前記固体電解質層の厚みが前記固体電解質層の側における前記正極層の表面の最大高さRmax値の4倍以上に設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のリチウム複合酸化物を有する正極層と、
前記正極層から放出されるリチウムイオンを吸蔵または前記正極層にリチウムイオンを放出することが可能な負極層と、
前記負極層と前記正極層との間に設けられ、第2のリチウム複合酸化物を有する固体電解質層とを具備し、
前記固体電解質層の厚みが前記固体電解質層の側における前記正極層の表面の最大高さRmax値の4倍以上に設定された
薄膜リチウム二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の薄膜リチウム二次電池であって、
前記厚みは、前記正極層の表面の最大山高さRp値を示す前記正極層の表面の位置における厚みである
薄膜リチウム二次電池。
【請求項3】
請求項1に記載の薄膜リチウム二次電池であって、
前記厚みは、前記固体電解質層の平均膜厚である
薄膜リチウム二次電池。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の薄膜リチウム二次電池であって、
前記第1のリチウム複合酸化物は、LiCoO、LiMn、LiFePO、LiNiCoMn(0<x、y、z<1)、LiNiCoAl(0<x、y、z<1)の少なくとも1つを含む
薄膜リチウム二次電池。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の薄膜リチウム二次電池であって、
前記第2のリチウム複合酸化物は、0<x<0.5とした場合、LiPON、LiPO、LiSiO、LiBO、LiGeO、LiSiO4−x、LiBO3−x、LiGeO4−xの少なくとも1つを含む
薄膜リチウム二次電池。
【請求項6】
第1のリチウム複合酸化物を有する正極層と、リチウムイオンを吸蔵またはリチウムイオンを放出することが可能な負極層とに挟まれた、第2のリチウム複合酸化物を有する固体電解質層とを有する積層体を形成し、
前記固体電解質層の厚みを前記固体電解質層の側における前記正極層の表面の最大高さRmax値の4倍以上に設定する
薄膜リチウム二次電池の製造方法。
【請求項7】
請求項6の薄膜リチウム二次電池の製造方法であって、
前記正極層の表面に前記固体電解質層を形成する前に、
前記表面にプラズマ処理を行う
薄膜リチウム二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜リチウム二次電池及び薄膜リチウム二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正極集電層、正極層、固体電解質層、負極層、及び負極集電層を真空蒸着法、スパッタリング法等のドライプロセスによって積層させた薄膜リチウム二次電池が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、正極側と負極側との間に位置する固体電解質層は、リチウムイオンを通過させる電解質層として機能するほか、正極層と負極層との間のセパレータとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019−051363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、固体電解質層は、薄膜であるため、正極側と負極側との間での充放電が繰り返し行われたとしても、正極側と負極側との間の電気的短絡が起きにくい信頼性の高い構成であることが望まれている。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、信頼性が高い薄膜リチウム二次電池及び薄膜リチウム二次電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る薄膜リチウム二次電池は、正極層と、負極層と、固体電解質層とを具備する。
上記正極層は、第1のリチウム複合酸化物を有する。
上記負極層は、上記正極層から放出されるリチウムイオンを吸蔵または上記正極層にリチウムイオンを放出することができる。
上記固体電解質層は、上記負極層と上記正極層との間に設けられ、第2のリチウム複合酸化物を有する。
上記固体電解質層の厚みは、上記固体電解質層の側における上記正極層の表面の最大高さRmax値の4倍以上に設定される。
【0008】
このような薄膜リチウム二次電池であれば、固体電解質層の厚みが上記固体電解質層の側における上記正極層の表面の最大高さRmax値の4倍以上に設定されるため、電気的短絡が起きにくい信頼性の高い薄膜リチウム二次電池が形成される。
【0009】
上記の薄膜リチウム二次電池においては、上記厚みは、上記正極層の表面の最大山高さRp値を示す上記正極層の表面の位置における厚みであってもよい。
【0010】
このような薄膜リチウム二次電池であれば、上記厚みは、正極層の表面の最大山高さRp値を示す位置における厚みであるため、電気的短絡が起きにくい信頼性の高い薄膜リチウム二次電池が形成される。
【0011】
上記の薄膜リチウム二次電池においては、上記厚みは、上記固体電解質層の平均膜厚であってもよい。
【0012】
このような薄膜リチウム二次電池であれば、上記厚みは、固体電解質層の平均膜厚であるため、電気的短絡が起きにくい信頼性の高い薄膜リチウム二次電池が形成される。
【0013】
上記の薄膜リチウム二次電池においては、上記第1のリチウム複合酸化物は、LiCoO、LiMn、LiFePO、LiNiCoMn(0<x、y、z<1)、LiNiCoAl(0<x、y、z<1)の少なくとも1つを含んでもよい。
【0014】
このような薄膜リチウム二次電池であれば、第1のリチウム複合酸化物として、上記材料の少なくとも1つが含まれる。
【0015】
上記の薄膜リチウム二次電池においては、上記第2のリチウム複合酸化物は、0<x<0.5とした場合、LiPON、LiPO、LiSiO、LiBO、LiGeO、LiSiO4−x、LiBO3−x、LiGeO4−xの少なくとも1つを含んでもよい。
【0016】
このような薄膜リチウム二次電池であれば、第2のリチウム複合酸化物として、上記材料の少なくとも1つが含まれる。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る薄膜リチウム二次電池の製造方法では、第1のリチウム複合酸化物を有する正極層と、リチウムイオンを吸蔵またはリチウムイオンを放出することが可能な負極層とに挟まれた、第2のリチウム複合酸化物を有する固体電解質層とを有する積層体が形成される。
上記固体電解質層の厚みが上記固体電解質層の側における上記正極層の表面の最大高さRmax値の4倍以上に設定される。
【0018】
このような薄膜リチウム二次電池の製造方法であれば、固体電解質層の厚みが上記固体電解質層の側における上記正極層の表面の最大高さRmax値の4倍以上に設定されるため、電気的短絡が起きにくい信頼性の高い薄膜リチウム二次電池が形成される。
【0019】
上記の薄膜リチウム二次電池の製造方法においては、上記正極層の表面に上記固体電解質層を形成する前に、上記表面にプラズマ処理を行ってもよい。
【0020】
このような薄膜リチウム二次電池の製造方法であれば、正極層の表面にプラズマ処理が施されることにより、固体電解質層の厚みが正極層の表面の最大高さRmax値の4倍以上に設定され、電気的短絡が起きにくい信頼性の高い薄膜リチウム二次電池が形成される。
【発明の効果】
【0021】
以上述べたように、本発明によれば、信頼性が高い薄膜リチウム二次電池及び薄膜リチウム二次電池の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】図(a)は、本実施形態に係る薄膜リチウム二次電池の一例を示す模式的断面図である。図(b)は、本実施形態に係る薄膜リチウム二次電池の一例を示す模式的上面図である。
図2】薄膜リチウム二次電池の製造過程の一例を示す模式的断面図である。
図3】正極層としてLiCoO層を用いた場合、LiCoO層の膜厚と、LiCoO層の表面の最大高さRmax値との関係を示すグラフ図である。
図4】正極層の表面処理時間とRmax値の減少の程度との関係を示すグラフ図である。
図5】固体電解質層の交流インピーダンス測定の結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。また、以下に示す数値は例示であり、この例に限らない。
【0024】
図1(a)は、本実施形態に係る薄膜リチウム二次電池の一例を示す模式的断面図である。図1(b)は、本実施形態に係る薄膜リチウム二次電池の一例を示す模式的上面図である。図1(a)は、図1(b)のA1−A2線断面に対応している。
【0025】
薄膜リチウム二次電池1は、基板90の上に複数の層が積層されたリチウム二次電池であり、正極集電層60と、正極層10と、固体電解質層30と、負極層20と、負極集電層61とを具備する。さらに、薄膜リチウム二次電池1は、基板90と、封止樹脂91とを具備する。正極集電層60、正極層10、固体電解質層30、負極層20、及び負極集電層61は、基板90の上に設けられている。封止樹脂91は、負極層20を封止する。
【0026】
正極集電層60は、基板90の上に設けられる。正極集電層60は、基板90の側から、Pt膜/Ti膜の順に積層された積層膜である。正極集電層60は、正極層10に電気的に接続されている。正極集電層60は、封止樹脂91から引き出されている。正極集電層60は、薄膜リチウム二次電池1における正極側の引き出し電極である。
【0027】
正極層10は、正極活物質層である。正極層10は、例えば、正極集電層60の上に設けられる。正極層10は、リチウム複合酸化物(第1のリチウム複合酸化物)を有する。正極層10は、充電時にはリチウムイオンを放出したり、放電時にはリチウムイオンを吸蔵したりする。正極層10の厚み(体積)は、薄膜リチウム二次電池の目的とする電気容量に応じて適宜決定される。
【0028】
正極層10は、特に限定されず、例えば、LiCoO、LiMn、LiFePO、LiNiCoMn(0<x、y、z<1)、LiNiCoAl(0<x、y、z<1)の少なくとも1つを含む。
【0029】
固体電解質層30は、例えば、正極層10から引き出された正極集電層60の上、並びに正極層10の上に設けられる。固体電解質層30は、リチウム複合酸化物(第2のリチウム複合酸化物)を有する。固体電解質層30は、正極層10から負極層20に移動するリチウムイオンを通過させたり、負極層20から正極層10に移動するリチウムイオンを通過させたりする。
【0030】
固体電解質層30は、正極層10と負極層20との間に設けられる。固体電解質層30は、正極層10と負極層20とのセパレータとして機能する。固体電解質層30の厚みは、固体電解質層30の側における正極層10の表面10uの最大高さRmax値の4倍以上に設定される。換言すれば、固体電解質層30において、最低限必要とされる厚み(固体電解質層30の最小の厚み)は、固体電解質層30の側における正極層10の表面10uの最大高さRmax値の4倍以上に設定される。また、固体電解質層30は、非晶質層であり、リチウムイオンの伝導度に異方性がない。
【0031】
ここで、最大高さRmaxとは、AFM(Atomic Force Microscope)で計測された粒子の最大山高さと最小谷低さが目視上含まれる任意の領域 (ここでは5μm以内×5μm以内)における、輪郭曲線の山高さZpの最大値と谷深さZvの最大値の和で定義される。また、山とは、輪郭曲線の平均線より上側の部分の山であり、谷とは、輪郭曲線の平均線より下側の谷である。また、厚みとは、正極層10の表面の最大山高さRp値を示す正極層10の表面の位置における固体電解質層30の厚みで定義されてもよい。あるいは、厚みとは、固体電解質層30の平均膜厚で定義されてもよい。あるいは、厚みとは、成膜時に、基板90の周辺に置かれたダミー基板に形成された膜の厚みとしてもよい。最小の厚みとは、上記の厚みの中で、最も薄い膜厚を意味する。
【0032】
固体電解質層30は、特に限定されず、0<x<0.5とした場合、LiPON、LiPO、LiSiO、LiBO、LiGeO、LiSiO4−x、LiBO3−x、LiGeO4−xの少なくとも1つを含んでもよい。
【0033】
負極層20は、固体電解質層30の上に設けられる。負極層20は、固体電解質層30を通じて、正極層10から放出されるリチウムイオンを吸蔵したり正極層10にリチウムイオンを放出したりする。例えば、負極層20は、充電時にはリチウムイオンを吸蔵したり、放電時にはリチウムイオンを放出したりする。
【0034】
負極層20は、特に限定されず、例えば、Li、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン等のCを主成分とする炭素材料、Si、Sn、Inを主成分とする合金系材料、この合金系材料の酸化物の少なくとも1つを含む。
【0035】
負極集電層61は、固体電解質層30と負極層20との間に設けられる。負極集電層61は、固体電解質層30の側から、Cr膜/Ni膜の順に積層された積層膜である。負極集電層61は、負極層20に電気的に接続されている。負極集電層61は、封止樹脂91から引き出されている。負極集電層61は、薄膜リチウム二次電池1における負極側の引き出し電極である。負極集電層61は、負極層20と封止樹脂91との間に設けられてもよい。
【0036】
基板90は、シート状、フィルム状、または、板状の基板である。基板90は、特に限定されず、例えば、ガラス、アルミナ等のセラミックス材料、シリコン等の半導体材料、金属等の導電性材料、樹脂材料、ポリイミド、雲母、及びメタル/絶縁層等の少なくともいずれか1つを有する。
【0037】
封止樹脂91は、絶縁材料で構成される。封止樹脂91は、負極層20を被覆する。これにより、例えば、負極層20がLi等で構成されている場合には、負極層20の酸化が抑制される。絶縁材料は、特に限定されず、合成樹脂材料、金属化合物材料、あるいは、これらの積層体があげられる。
【0038】
また、図1(a)の例では、基板90の側から、正極集電層60、正極層10、固体電解質層30、負極層20、及び負極集電層61の順に積層されている。積層の順序は、基板90の側から、負極集電層61、負極層20、固体電解質層30、正極層10、及び正極集電層60の順に積層されてもよい。
【0039】
薄膜リチウム二次電池1の製造過程を正極層10としてLiCoO層、固体電解質層30としてLiPON層、負極層20としてLi層を例に説明する。
【0040】
図2(a)〜図2(c)は、薄膜リチウム二次電池の製造過程の一例を示す模式的断面図である。ここで、本実施形態での成膜は、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ等の複数の排気ユニットが少なくとも1つ組み合わされた超高真空槽を用いたドライプロセスで進行される。
【0041】
例えば、図2(a)に示すように、基板90の上に、正極集電層60が形成される。正極集電層60は、例えば、成膜法(例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等)、光リソグラフィ、及びエッチング(ドライエッチング、ウェットエッチング)等の手法によって形成される。
【0042】
ここで、正極集電層60の厚みは、正極集電層60の上に形成される正極層10の表面粗さに影響を与えない程度に設定される。例えば、Pt膜の膜厚は、一例として80nm〜120nm程度、Ti膜の膜厚は、10nm〜30nm程度に設定される。
【0043】
次に、正極集電層60の上に、正極層10としてのLiCoO層が成膜法、光リソグラフィ、エッチング等の手法によって形成される。例えば、LiCoO層の成膜条件の一例を以下に示す。
【0044】
成膜方式:RFマグネトロンスパッタリング法にDCマグネトロンスパッタリング法を重畳した方式
スパッタリングターゲット:LiCoOターゲット
投入電力:RF2.8W/cm、DC2.8W/cm
放電ガス:Ar
放電圧力:3.0Pa
基板温度:室温
成膜後アニール:500℃℃、10h、大気雰囲気
【0045】
次に、図2(b)に示すように、正極層10の上に、固体電解質層30としてのLiPON層が成膜法、光リソグラフィ、エッチング等の手法によって形成される。例えば、LiPON層の成膜条件の一例を以下に示す。
【0046】
成膜方式:RFマグネトロンスパッタリング法
スパッタリングターゲット:LiPOターゲット
投入電力:RF2.8W/cm
放電ガス:N
放電圧力:0.3Pa
基板温度:室温
【0047】
ここで、固体電解質層30の最小の厚みは、固体電解質層30の側の正極層10の表面10uの最大高さRmax値の4倍以上に設定される。正極層10の表面10uの最大高さRmax値は、例えば、正極層10の厚みによって調整される。
【0048】
次に、図2(c)に示すように、固体電解質層30の上、及び基板90の上に、例えば、成膜法、光リソグラフィ、及びエッチング等の手法によって負極集電層61が形成される。次に、真空蒸着法によって、固体電解質層30の上及び負極集電層61の上に、負極層20が形成される。
【0049】
これにより、正極層10と、負極層20とに挟まれた固体電解質層30とを有する積層体が形成される。この後、封止樹脂91によって、負極層20が封止される。
【0050】
図3は、正極層としてLiCoO層を用いた場合、LiCoO層の膜厚と、LiCoO層の表面の最大高さRmax値との関係を示すグラフ図である。
【0051】
Rmax値(μm)は、LiCoO層の表面において5μm×5μmの領域を無作為に選択し、AFM測定器(株式会社日立ハイテクサイエンス製、型番AFM5400L)から測定された。例えば、Rmax値は、膜厚が0.5μmで0.0407μm、膜厚が1.0μmで0.0668μm、膜厚が3μmで0.228μm、膜厚が10μmで0.736μm、膜厚が30μmで1.486μm、膜厚が60μmで2.646μmである。
【0052】
ここで、LiCoO層のRmax値及びLiPON層の厚みのそれぞれを変化させた薄膜リチウム二次電池を準備し、それぞれの薄膜リチウム二次電池の正極集電層と負極集電層との間に定電流を通電して、それぞれの薄膜リチウム二次電池に定電流充電を試みた。そして、それぞれの薄膜リチウム二次電池の充電中における電圧にノイズが発生し、充電状態が終わらない現象が発生するか否かを調査した。ここで、ノイズが発生し、充電状態が終わらない現象とは、充電時に急峻な電位の変化がした後に設計した電池のキャパシティ(電流×時間(μA・h)が2倍以上のキャパシティを充電しても電位が設定上限に達しない現象を意味する。その結果を表1に示す。
【0053】
表1の「〇」は、ノイズ発生がなかったことを意味し、「×」は、充電のキャパシティが設計した電池のキャパシティの2倍以上のキャパシティを充電しても電位が設定上限に達しない現象を意味する。また、このようなノイズが発生した薄膜リチウム二次電池においては、正極側と負極側との間での電気的短絡が生じる場合があった。従って、ノイズ発生は、薄膜リチウム二次電池の短絡を引き起こす目安となる。なお、電気的短絡が生じる要因の一例として、充電時のLiCoO層の表面における局部的な電界集中が考えられる。この電解集中は、Rmax値が高くなるほど起きやすい。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示されたように、ノイズ発生を抑えるには、LiCoO層のRmax値が大きくなるほど、LiPON層をより厚く設定しなければならないことが分かる。
【0056】
ここで、ノイズが発生しなかった薄膜リチウム二次電池(〇)において、LiCoO層のRmax値に対するLiPON層の厚みdの比を算出すると、Rmax値が1.486μmでは、膜厚が6μmにおいて、比が4.04、Rmax値が0.228μmでは、膜厚dが0.5μm以上6μm以下の範囲において、比が4.39以上26.3以下、Rmax値が0.08μmでは、膜厚dが0.5μm以上6μm以下の範囲において、比が6.25以上75以下であることが分かった。すなわち、ノイズが発生しなかった薄膜リチウム二次電池(〇)では、その比がいずれも4以上になっている。
【0057】
換言すれば、薄膜リチウム二次電池(〇)のLiPON層の最小の厚みがLiCoO層の表面のRmax値の4倍以上に設定されていれば、薄膜リチウム二次電池の充電時には充電圧の振動(ノイズ)が発生しにくくなることになる。
【0058】
このように、薄膜リチウム二次電池1においては、例えば、目的とする電気容量に応じて正極層10の厚みが決定された場合、固体電解質層30の最小の厚みが正極層10の表面10uの最大高さRmax値に応じて適宜設定される。例えば、固体電解質層30の最小の厚みは、固体電解質層30の側における正極層10の表面10uの最大高さRmax値の4倍以上に設定される。
【0059】
これにより、薄膜リチウム二次電池1に充電を行ったとしても、薄膜リチウム二次電池1では、充電時ノイズが発生しにくくなり、信頼性の高い薄膜リチウム二次電池1を得ることができる。
【0060】
特に、固体電解質層30は、正極層10と負極層20とのセパレータとして機能することから、正極層10と負極層20との間を往来するLiイオンにとっては抵抗層になる。このため、固体電解質層30は、Liイオンにとっての低抵抗層、すなわち薄い層であることが望ましい。
【0061】
この固体電解質層30の最小の厚みを決定するにあたり、本実施形態で導かれた「固体電解質層30の最小の厚みは、正極層10の表面10uのRmax値の4倍以上が必要」という知見が有効に働き、固体電解質層30の厚みを正極層10の表面10uのRmax値の最低4倍に設定することで、充電時にノイズが発生しにくい信頼性の高い薄膜リチウム二次電池が確実に形成される。
【0062】
(変形例)
【0063】
正極層10の表面10uのRmax値は、正極層10の厚みによって調整する手法に限らず、正極層10の表面処理を行うことで調整してもよい。例えば、固体電解質層30を成膜する前に正極層10の表面10uにプラズマ処理を施して、正極層10の表面10uのRmax値を調整してもよい。
【0064】
図4は、正極層の表面処理時間とRmax値の減少の程度との関係を示すグラフ図である。ここで、横軸は、プラズマ処理時間であり、縦軸は、プラズマ処理前のLiCoO層のRmax値からプラズマ処理後のLiCoO層のRmax値を差し引いたΔRmax値である。プラズマ処理条件を以下に示す。
【0065】
放電方式:RFマグネトロン放電にDCマグネトロン放電を重畳した方式
正極層:LiCoO
投入電力:RF2.8W/cm、DC2.8W/cm
放電ガス:Ar
放電圧力:3.0Pa
【0066】
図4に示すように、プラズマ処理の時間が長くなるほど、ΔRmax値が増加している。すなわち、プラズマ処理前の正極層10の表面10uの凹凸がプラズマ処理の時間が長くなるほどより緩和されて、プラズマ処理前のRmax値が徐々に下がることが分かった。但し、プラズマ処理時間が一定以上経過すると、ΔRmax値が飽和することが分かった。このように、正極層10の表面10uにプラズマ処理を施して、正極層10の表面10uのRmax値を調整することができる。
【0067】
図5は、固体電解質層の交流インピーダンス測定の結果を示すグラフ図である。図5には、所謂Cole-Coleプロットが示されている。ここで、1st semicircleは、固体電解質層30としてのLiPON層の交流インピーダンスである。2nd semicircleは、固体電解質層30と正極層10との界面の交流インピーダンスを示している。
【0068】
固体電解質層30の交流インピーダンスを測定するサンプルとして、正極層10の表面10uにプラズマ処理を施していないサンプルAと、正極層10の表面10uにプラズマ処理を60分間施したサンプルBとを準備した。ここで、サンプルAの正極層10のRmax値は、0.228μm、固体電解質層30の厚みは、2μm、厚みd/Rmax値が8.77である。サンプルBの正極層10のRmax値は、0.0407μm、固体電解質層30の厚みは、0.5μm、厚みd/Rmax値が12.29である。すなわち、いずれのサンプルA、Bにおいても、固体電解質層30の厚みは、正極層10の表面の最大高さRmax値の4倍以上である。
【0069】
サンプルA、Bにおいて、ともに定電流充電時にノイズの発生は見られなかった。特に、サンプルBにおいては、固体電解質層30の厚みがサンプルAの固体電解質層30の厚みの1/4程度であるにもかかわらず、定電流充電においてノイズの発生が抑えられた。これは、固体電解質層30の厚み(0.5μm)が正極層10の表面10uの最大高さRmax値の4倍以上に設定されているためである。
【0070】
また、図5の結果からは、サンプルAの固体電解質層30の交流インピーダンスよりも、サンプルBの固体電解質層30の交流インピーダンスのほうが低くなることが分かった。すなわち、サンプルBを以て、リチウムイオンにとってのより低抵抗層となる固体電解質層30が形成されることが確認された。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…薄膜リチウム二次電池
10…正極層
10u…表面
20…負極層
30…固体電解質層
60…正極集電層
61…負極集電層
90…基板
91…封止樹脂
図1
図2
図3
図4
図5