【解決手段】土壌と混合されて改質土壌を形成する土壌改質材であって、二水石膏と、アルミナセメントと、吸水剤とを含んでおり、二水石膏100質量部に対し、アルミナセメントを5.3質量部以上42.9質量部以下、吸水剤を1.2質量部以上、含む。
吸水剤は、アニオン型ポリアクリルアミド系高分子材料、カチオン型ポリアクリルアミド系高分子材料、及び、ノニオン型ポリアクリルアミド系高分子材料からなる群から選択される少なくとも一つである、
請求項1又は2に記載の土壌改質材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような土壌改質材を用いて形成された改質土壌は、運搬や転圧によって練り返されると、発現する強度が、練り返されなかった場合よりも低下することが知られている。
【0005】
そこで、本発明は、材齢が経過した後で練り返されても、発現する強度が低下するのを抑制することができる土壌改質材、土壌改質方法、改質土壌、又は、土壌改質処理工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る土壌改質材は、土壌と混合されて改質土壌を形成する土壌改質材であって、二水石膏と、アルミナセメントと、吸水剤とを含んでおり、二水石膏100質量部に対し、アルミナセメントを5.3質量部以上42.9質量部以下、吸水剤を1.2質量部以上、含む。
【0007】
斯かる構成によれば、改質土壌を形成して材齢が経過した後で、改質土壌を練り返しても、改質土壌が発現する強度が低下するのを抑制することができる。
【0008】
本発明に係る土壌改質材は、吸水剤を2.1質量部以上、含むことが好ましい。
【0009】
斯かる構成によれば、改質土壌を形成して材齢が経過した後で、改質土壌を練り返しても、発現する強度が比較的高い改質土壌を形成することができる。
【0010】
吸水剤は、アニオン型ポリアクリルアミド系高分子材料、カチオン型ポリアクリルアミド系高分子材料、及び、ノニオン型ポリアクリルアミド系高分子材料からなる群から選択される少なくとも一つである、ことが好ましい。
【0011】
斯かる構成によれば、改質土壌を形成して材齢が経過した後で、改質土壌を練り返しても、改質土壌が発現する強度が低下するのをより効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明に係る土壌改質方法は、土壌と、二水石膏と、アルミナセメントと、吸水剤とを混合して改質土壌を形成する土壌改質方法であって、二水石膏100質量部に対し、アルミナセメントを5.3質量部以上42.9質量部以下、吸水剤を1.2質量部以上で混合し、二水石膏と、アルミナセメントと、吸水剤との合計量100質量部に対し、土壌を1400質量部以上20000質量部以下で混合する。
【0013】
本発明に係る改質土壌は、土壌と、二水石膏と、アルミナセメントと、吸水剤とを含む改質土壌であって、二水石膏100質量部に対し、アルミナセメントを5.3質量部以上42.9質量部以下、吸水剤を1.2質量部以上、含んでおり、二水石膏と、アルミナセメントと、吸水剤との合計量100質量部に対し、土壌を1400質量部以上20000質量部以下、含む。
【0014】
本発明に係る土壌改質処理工法は、上記の改質土壌を地盤中で硬化させて硬化体を形成することで地盤の改質を行う。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、材齢が経過した改質土壌が練り返されても、該改質土壌の発現する強度が低下するのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本実施形態に係る土壌改質材は、土壌と混合されて改質土壌を形成するものである。また、土壌改質材は、二水石膏と、アルミナセメントと、吸水剤とを含む。
【0018】
二水石膏としては、天然のもの、化学合成されたもの、他の物質の副生成物として得られるもの等であってもよく、二水石膏を含む廃棄物を粉砕し、且つ、熱処理していないもの(所謂、再生二水石膏)等であってもよい。
また、二水石膏としては、ブレーン比表面積が500cm
2/g以上6000cm
2/g以下、好ましくは1000cm
2/g以上3000cm
2/g以下であるものを用いることができる。
また、土壌改質材全体の質量に対する二水石膏の質量の割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、69.3質量%以上94.1質量%以下であってもよく、35.0質量%以上47.5質量%以下であってもよい。
【0019】
アルミナセメントは、主要成分としてCaO・Al
2O
3、CaO・2Al
2O
3、12CaO・7Al
2O
3などのアルミン酸カルシウムを含む。また、アルミナセメントは、Al
2O
3を含む鉱物として、C
3A,C
12A
7,CA,CA
2,C
4AF等を含む。先述の「A」はAl
2O
3を表し、「C」はCaOを表し、「F」はFe
2O
3を表す。
また、アルミナセメントとしては、ブレーン比表面積が2000cm
2/g以上6000cm
2/g以下であるものを用いることができる。具体的には、アルミナセメントとしては、JIS R 2521−1995に規定された「耐火物用アルミナセメントの物理試験方法」に記載されたものを用いることができる。
また、アルミナセメントの含有量は、二水石膏100質量部に対し、5.3質量部以上42.9質量部以下あり、好ましくは11.1質量部以上17.6質量部以下である。
また、土壌改質材全体の質量に対するアルミナセメントの質量の割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、5.0質量%以上29.7質量%以下であってもよく、2.5質量%以上15.0質量%以下であってもよい。
【0020】
吸水剤としては、水との接触によって水を取り込み、比較的粘度の高い液体を形成する有機高分子材料を用いることができる。具体的には、吸水剤は、水と混合した際の全量(混合液の全量)に対して0.25質量%の濃度となるように水と混合した際に、該混合液の粘度が300mPa・s以上となるものを用いることができる。
混合液の粘度は、下記の実施例に記載の方法で測定することができる。
また、吸水剤としては、アニオン型、カチオン型、又は、ノニオン型の有機高分子材料を用いることができる。具体的には、吸水剤としては、上記何れかの型のポリアクリルアミド系高分子材料、ポリアクリル酸エステル系高分子材料、ポリアクリル酸塩系高分子材料、ポリメタクリル酸エステル系高分子材料、ポリメタクリル酸塩系高分子材料、ポリアミジン塩酸塩系高分子材料、ポリビニルアルコール系高分子材料、ポリオキシエチレン系高分子材料、アクリルアミド−メタクリル酸エステル共重合体材料、及び、アクリルアミド−アクリル酸塩共重合体系高分子材料等からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。好ましくは、吸水剤としては、解離基として、カルボキシル基(―COO
−)又はスルホ基(―SO
3−)を有するアニオン型ポリアクリルアミド系高分子材料、解離基として、アンモニウム基(―NH
3+)又はトリメチルアンモニウム基(―N
+(CH
3)
3)を有するカチオン型ポリアクリルアミド系高分子材料、及び、ノニオン型ポリアクリルアミド系高分子材料からなる群から選択される少なくとも一つを用いることができる。
また、吸水剤の重量平均分子量としては、300万以上2000万以下のものを用いることができる。吸水剤としてアニオン型、又は、ノニオン型の有機高分子材料を用いる場合、該吸水剤の重量平均分子量としては、1500万以上2000万以下であってもよい。また、吸水剤としてカチオン型の有機高分子材料を用いる場合、該吸水剤の重量平均分子量としては、300万以上1000万以下であってもよい。重量平均分子量が上記の範囲であることで、材齢が経過した改質土壌が練り返されても、該改質土壌の発現する強度が低下するのをより効果的に抑制することができる。
また、吸水剤の含有量は、二水石膏100質量部に対し、1.2質量部以上であり、好ましくは2.1質量部以上であり、より好ましくは3.3質量部以上5.9質量部以下である。
【0021】
上記のように構成される土壌改質材と混合される土壌としては、特に限定されるものではなく、例えば、含水比が20質量%以上30質量%以下であるものが挙げられる。土壌の含水比は、「土壌中の水の質量/土壌中の固形分の質量」を「質量%」で表したものであり、地盤工学会のJGS 0121−2009「土の含水比試験方法」により測定することができる。
また、上記の土壌としては、特に限定されるものではなく、例えば、コーン指数が100kN/m
2以上300kN/m
2以下であるものが挙げられる。コーン指数は、後述の実施例と同じ方法で測定することができる。
【0022】
上記のように構成される土壌改質材を用いた土壌改質方法では、該土壌改質材と土壌とを混合して改質土壌を形成する。具体的には、二水石膏と、アルミナセメントと、吸水剤との合計量100質量部に対し、土壌を1400質量部以上20000質量部以下、好ましくは2800質量部以上8000質量部以下混合する。
なお、土壌改質材を構成する各成分は、同時に、土壌と混合されてもよく、各成分が別々に土壌と混合されてもよい。
また、土壌改質材と土壌とを混合する際には、土壌の含水比に応じて、追加で水を混合してもよく、追加で水を混合しなくてもよい。
土壌の含水比としては、特に限定されるものではなく、好ましくは10%以上、50%以下、より好ましくは15%以上、35%以下である。
また、改質土壌のコーン指数としては、特に限定されるものではなく、例えば、390kN/m
2以上であってもよく、400kN/m
2以上であってもよく、1000kN/m
2以上であってもよい。コーン指数は、後述の実施例と同じ方法で測定することができる。
また、改質土壌のpHとしては、特に限定されるものではなく、例えば、10未満であってもよく、5.8以上8.6以下であってもよい。pHは、後述の実施例と同じ方法で測定することができる。
そして、上記のように形成される改質土壌を地盤中で硬化させて硬化体を形成することで地盤の改質を行うことができる(土壌改質処理工法)。
【0023】
以上のように、本実施形態に係る土壌改質材、土壌改質方法、改質土壌、及び、土壌改質処理工法は、材齢が経過した改質土壌が練り返されても、該改質土壌の発現する強度が低下するのを抑制することができる。
【0024】
即ち、土壌と混合されて改質土壌を形成する土壌改質材であって、二水石膏と、アルミナセメントと、吸水剤とを含んでおり、二水石膏100質量部に対し、アルミナセメントを5.3質量部以上42.9質量部以下、吸水剤を1.2質量部以上、含むことで、改質土壌を形成して材齢が経過した後で、改質土壌を練り返しても、改質土壌が発現する強度が低下するのを抑制することができる。
【0025】
また、吸水剤を2.1質量部以上、含むことで、改質土壌を形成して材齢が経過した後で、改質土壌を練り返しても、発現する強度が比較的高い改質土壌を形成することができる。
【0026】
また、吸水剤は、アニオン型ポリアクリルアミド系高分子材料、カチオン型ポリアクリルアミド系高分子材料、及び、ノニオン型ポリアクリルアミド系高分子材料からなる群から選択される少なくとも一つであることで、改質土壌を形成して材齢が経過した後で、改質土壌を練り返しても、改質土壌が発現する強度が低下するのをより効果的に抑制することができる。
【0027】
なお、本発明に係る土壌改質材、土壌改質方法、改質土壌、及び、土壌改質処理工法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
<土壌>
粉末粘土(関東化成社製、品名:トチクレー)100質量部に対して7号珪砂(瓢屋社製)を233質量部混合し、含水比が25%となるように加水し、コーン指数200kN/m
2となる土壌を作製した。
【0030】
<土壌改質材>
1.使用材料
・再生二水石膏(中央環境開発社製)
・試薬二水石膏(関東化学社製)
・アルミナセメント
・吸水剤1:アニオン型のポリアクリルアミド系高分子材料(粘度:700mPa・s、解離基:カルボキシル基(−COO
−))
・吸水剤2:カチオン型のポリアクリルアミド系高分子材料(粘度:440mPa・s、解離基:トリメチルアンモニウム基(−N
+(CH
3)
3))
・吸水剤3:ノニオン型のポリアクリルアミド系高分子材料(粘度:355mPa・s)
・硫酸アルミニウム(関東化学社製)
【0031】
上記の粘度は、吸水剤と水とを混合した混合液の全量に対して吸水剤が0.25質量%となる混合液の粘度であり、JIS K 7117−1:1999「プラスチック−液状、乳濁状又は分散状の樹脂−ブルックフィールド型回転粘度計による見掛け粘度の測定方法」に基づき、B型回転粘度計(製品名:B型粘度計 BL2、東機産業社製)によって測定することができる。
【0032】
上記の粘度の測定では、水498.75gを計量した1000mLビーカー内に、吸水剤1.25gを投入し、プロペラミキサにて1000rpmで1時間撹拌して混合液を得た。
【0033】
また、上記の粘度の測定では、上記のように作製した混合液を500mLビーカーに移して上記の粘度計に設置し、回転ローター(2号ローター)を混合液に浸し、回転数を1分あたり30回転として測定した。測定では、読み値を記録し、2回測定の平均値を換算表に従い粘度(mP・s)を算出した。
【0034】
2.土壌改質材の配合
各実施例及び各比較例の土壌改質材の配合は、下記表1〜4の通りとした。
【0035】
<練り返し低下率>
1.コーン指数(直後成型)
上記の土壌に対して土壌改質材を50kg/m
3添加して混合し、改質土壌を作製した。そして、作製直後の改質土壌を、JIS A 1210:2009「突固めによる土の締固め試験方法」に基づいて、φ10×12.7cmの鋼製型枠に打設し、20℃で7日間養生し、供試体を得た。つまり、斯かる供試体は、材齢が経過した後で改質土壌を型枠に打設したものではない(換言すれば、改質土壌を練り返すことなく作製したものである)。
得られた供試体(改質土壌の材齢は7日)について、JIS A 1228:2009「締固めた土のコーン指数試験方法」に基づいて、コーン貫入試験を行い、コーン指数を得た。コーン指数(直後成型)については、下記表1〜4に示す。
【0036】
2.コーン指数(材齢時成型)
密封養生した材齢7日の改質土壌を型枠に打設したこと以外は、上記の「1.コーン指数(直後成型)」と同じ条件で供試体を作製した。つまり、斯かる供試体は、材齢が経過した改質土壌が練り返されて型枠に打設されたものである。
そして、作製直後の供試体について、上記の「1.コーン指数(直後成型)」と同じ条件でコーン貫入試験を行い、コーン指数を得た。コーン指数(材齢時成型)については、下記表1〜4に示す。
【0037】
3.練り返し低下率
直後成型のコーン指数に対する材齢時成型のコーン指数の低下率を下記の式に基づいて算出し、「練り返し低下率」とした。練り返し低下率は、下記表1〜4に示す。
「練り返し低下率(%)」=
{1−(「材齢時成型のコーン指数」/「直後成型のコーン指数」)}×100
【0038】
<pH>
JGS 0211−2009「土懸濁液のpH試験方法」に基づいて、密封養生した材齢7日の改質土壌18.8gに蒸留水71.2gを加えて撹拌し、30分後に上澄み液のpHを測定した。pHの測定は、pHメーター(品名:D―72、堀場製作所社製)、ガラス電極(9615S−10D、堀場製作所社製)を用いた。改質土壌のpHについては下記表1〜4に示す。
【0039】
なお、下記表1〜4の各実施例及び各比較例について、コーン指数(材齢時成型)390kN/m
2以上、練り返し低下率35.0%未満、且つ、pH10.0未満を満足したものを「〇」として評価した。また、下記表1〜4の各実施例について、コーン指数(材齢時成型)1000kN/m
2以上、練り返し低下率15.0%未満、且つ、pH5.8〜8.6を満足したものを「◎」として評価した。また、練り返し低下率が35.0%以上のものを「×」として評価した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
<まとめ>
上記の表1〜4を見ると、各実施例の方が各比較例よりも練り返し低下率が低いことが認められる。つまり、本願発明の構成とすることで、改質土壌を作製して材齢が経過した後に、該改質土壌を練り返しても、改質土壌が発現する強度(コーン指数)が低下するのを抑制することができる。
また、上記の表1を見ると、土壌改質材中の吸水剤の含有量を、二水石膏100質量部に対して2.1質量部以上とすることで、材齢時成型のコーン指数が高くなることが認められる。つまり、二水石膏100質量部に対し、吸水剤を2.1質量部以上とすることで、比較的高い強度(コーン指数)を発現する改質土壌を得ることができる。
また、表4の比較例5,6を見ると、材齢時成型のコーン指数が390kN/m
2以上であって比較的高い数値であるが、改質土壌のpHが11であることが認められる。つまり、材齢時成型のコーン指数を比較的高くするために、土壌改質材中のアルミナセメントの含有量を増やすと、改質土壌がアルカリ性になることが認められる。これに対し、表1を見ると、二水石膏及びアルミナセメントと、吸水剤とを併用することで、アルミナセメントの含有量を低減しつつ、材齢時成型のコーン指数を高くできることが認められる。つまり、本願発明の構成とすることで、上記のように改質土壌が発現する強度(コーン指数)が低下するのを抑制しつつ、改質土壌のpHを10未満にすることができる。