【解決手段】ガラスフリットとルテニウム化合物粉末1を含み、ルテニウム化合物粉末が針状粒子であることを特徴とする厚膜抵抗体組成物であって、ルテニウム化合物粉末が、針状粒子の粒子長L方向に対して垂直な断面の最大幅φ1が100nm以下であり、粒子長Lと、最大幅φ1から求められる「粒子長/最大幅」の式で表されるアスペクト比が1.5以上である。
前記ルテニウム化合物粉末が、前記針状粒子の粒子長方向に対して垂直な断面の最大幅が100nm以下であり、前記粒子長と、前記最大幅から求められる「粒子長/最大幅」の式で表されるアスペクト比が1.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の厚膜抵抗体組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係る厚膜抵抗体組成物は、ガラスフリットと導電物質のルテニウム化合物粉末を含み、前記ルテニウム化合物粉末が針状であることを特徴とする。さらに、そのルテニウム化合物粉末が、二酸化ルテニウム粉末であることが望ましい。
【0014】
上記厚膜抵抗体組成物を用い、厚膜抵抗体組成物と後述の有機ビヒクルとを混練して厚膜抵抗ペーストを得ることができる。
この得られた厚膜抵抗ペーストを、アルミナ基板等のセラミックス基板の表面に印刷するなどして厚膜抵抗体組成物を含有する印刷膜を形成し焼成して厚膜抵抗体を得ることができる。
以下、各構成要素について説明する。
【0015】
[ガラスフリット]
ガラスフリットは、その組成や製造方法について特に限定されるものではない。
厚膜抵抗体用組成物に用いるガラスフリットは、鉛を含有するアルミノホウケイ酸鉛が多く用いられているが、その他ホウケイ酸亜鉛系、ホウケイ酸カルシウム系、ホウケイ酸バリウム系などの鉛を含有しない組成系も用いられている。近年では環境保護の観点から鉛を含有しないガラスを用いることが望まれている。
【0016】
以上のように、例えばガラスフリットのガラスとしては例えば、アルミノホウケイ酸鉛ガラス、ホウケイ酸亜鉛系ガラス、ホウケイ酸カルシウム系ガラス、ホウケイ酸バリウム系ガラスから選択された1種以上を用いることができる。また、鉛を含まないガラス、例えばホウケイ酸亜鉛系ガラス、ホウケイ酸カルシウム系ガラス、ホウケイ酸バリウム系ガラスから選択された1種以上を用いることもできる。
【0017】
そのガラスフリットに含まれるSiO
2成分は、ガラス骨格を構成し、PbO、B
2O
3、RO(Rはアルカリ土類元素)は、ガラスの溶融性を調整する。さらに、ガラスの耐候性や焼成時の流動性を調整する目的で、Al
2O
3、ZrO
2、TiO
2、SnO
2、ZnO、Li
2O、Na
2O、K
2O等から選択された1種類以上が挙げられる。Al
2O
3はガラスの分相を抑制しやすく、ZrO
2、TiO
2はガラスの耐候性を向上させる、SnO
2、ZnO、Li
2O、Na
2O、K
2O等はガラスの流動性を高める働きがある。
【0018】
このガラスは、一般的に、所定の成分またはそれらの前駆体を目的とする配合にあわせて混合し、得られた混合物を溶融し急冷することによって製造できる。
その溶融温度は特に限定されるものではないが、例えば1400℃前後で行われている。また、急冷は溶融物を冷水中に入れるか冷ベルト上に流すことにより行われることが多い。
ガラスの粉砕はボールミル、振動ミル、遊星ミル、あるいはビーズミルなどで目的とする粒度まで行われる。
【0019】
ガラスフリットの粒径も限定されないが、レーザー回折を利用した粒度分布計により測定した50%体積累計粒度は5μm以下が好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。
このように、ガラスフリットの粒度が大き過ぎると、焼成された厚膜抵抗体の面積抵抗値は低くなるが、面積抵抗値のバラツキが大きくなり歩留まりが低下する。さらに負荷特性が低下するなどの不具合が生じる可能性が高くなる。このため、歩留まりを十分に高め、負荷特性を向上させる観点から、用いるガラス粒子の50%体積累計粒度は5μm以下であることが好ましい。
なお、ガラスフリットの粒度を過度に小さくすると、生産性が低くなり、不純物等の混入も増える恐れがあることから、ガラスフリットの50%体積累計粒度は0.5μm以上が好ましい。
【0020】
ガラスの焼成時の流動性に影響する尺度として軟化点がある。一般に、厚膜抵抗体を製造する際の、厚膜抵抗体用組成物を焼成する温度は800℃以上、900℃以下である。
このように、厚膜抵抗体を製造する際の厚膜抵抗体用組成物の焼成温度が800℃以上900℃以下の場合、本実施形態の厚膜抵抗体用組成物に用いるガラスの軟化点は、600℃以上、900℃以下が好ましい。
また、軟化点が600℃以上、800℃以下のガラスフリットと、より高い軟化点のガラスフリットを混合することもできる。
ここで、軟化点は、ガラスを示差熱分析法(TG−DTA)にて大気中で、10℃/minで昇温、加熱し、得られた示差熱曲線の最も低温側の示差熱曲線の減少が発現する温度よりも高温側の次の示差熱曲線が減少するピークの温度である。
【0021】
厚膜抵抗体は、厚膜抵抗体組成物を焼成して得られる。厚膜抵抗体を得る際の焼成温度は後述の通り800℃から900℃であり、ガラスフリットは、焼成の過程で溶融し、ガラスフリットの各粒子が融着してガラスマトリックスを形成する。厚膜抵抗体を構成するルテニウム化合物粉末の各粒子は、焼成の過程でガラスフリットのように溶融することはない。そして、厚膜抵抗体組成物を焼成して得られる厚膜抵抗体は、ガラスマトリックスが保持して形成されるルテニウム化合物粒子による導電ネットワークを構成要素とする。
【0022】
[ルテニウム化合物粉末]
厚膜抵抗体組成物におけるルテニウム化合物粉末は、導電性成分として機能する。
このルテニウム化合物粉末には、二酸化ルテニウム粉末、ルテニウム酸鉛粉末やルテニウム酸ストロンチウム粉末のようなルテニウム複合酸化物粉末を用いることができる。
【0023】
また、本実施の形態で使用されるルテニウム化合物粉末は、
図1に示される真直な針状粒子の形態を有し、その真直な針状粒子の最大長さである粒子長Lと、前記粒子長の方向に対して垂直な断面の最大幅φ
1が100nm以下であり、前記粒子長Lと、前記断面の最大幅φ
1から「粒子長L/断面の最大幅φ
1」の式により求められる真直な針状粒子のアスペクト比が1.5以上であり、5.0以下が望ましい。
【0024】
厚膜抵抗体は、ガラスマトリックスが保持して形成される針状粒子のルテニウム化合物粉末による導電ネットワークを構成要素とする。
本実施形態では、ルテニウム化合物粉末を構成する各粒子が針状粒子であるため、各ルテニウム化合物粉末では長径方向の導電ネットワークと、短径方向の導電ネットワークが形成される。
そのような構造の厚膜抵抗体に、パルストリミングの際の通電により、導電ネットワークの周囲のガラスマトリックスが加熱されて再溶融することで、長径方向の導電ネットワークを構成する各ルテニウム化合物粉末を構成する各粒子の配置にズレが生じて導電ネットワークの再構築が行われる。この導電ネットワークの再構築により抵抗値が変化する。
【0025】
一方、本実施形態と異なる、長径と前記断面における短径との比(長径方向における長径/断面における短径)が1.5未満で、粒状のルテニウム化合物粉末のみで構成される導電ネットワークでは、パルストリミングの際の通電の後の導電ネットワークの再構築が生じても、各ルテニウム化合物粉末を構成する各粒子の配置のズレが小さく、抵抗値の変化は小さい。
【0026】
そのルテニウム化合物粉末は、厚膜抵抗体組成物に5質量%以上、60質量%以下含まれることが望ましく、さらに望ましくは、10質量%以上55質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以上50質量%以下である。
【0027】
厚膜抵抗体組成物では、ガラスフリットとルテニウム化合物粉末の配合割合で得られる厚膜抵抗体の抵抗値を調整している。厚膜抵抗体組成物に含まれるルテニウム化合物粉末の含有率が5質量%未満では、抵抗値が高くなりすぎる。一方、厚膜抵抗体組成物に含まれるルテニウム化合物粉末の含有率が60質量%を超えると、厚膜抵抗体の焼結面が緻密にならないので、厚膜抵抗体の機械強度が確保できない。
【0028】
粉末を構成するルテニウム化合物には、二酸化ルテニウムを用いることが望ましい。
この二酸化ルテニウムは、ルテニウム酸鉛などのルテニウム複合酸化物よりも比抵抗が小さく、低抵抗域の厚膜抵抗体の抵抗値50Ω〜3000Ωの領域を実現するのに適しているからである。
厚膜抵抗体で発熱抵抗とする場合は、パルストリミング性や得られる厚膜抵抗体の消費電力を考慮して厚膜抵抗体の抵抗値を50Ω〜100kΩとすることが望ましい。
【0029】
本実施形態のルテニウム化合物粉末の合成の例を説明する。
針状粒子の二酸化ルテニウム粉末の製造方法の一例は、ビスマス化合物の存在下、粒状の二酸化ルテニウム粉末を熱処理することで、針状の二酸化ルテニウム粉末を形成する針状化熱処理工程の後、ビスマス化合物を溶媒に溶解して得られた溶液中から、針状の二酸化ルテニウム粉末を固液分離する分離工程を経ることができる。
【0030】
一連の工程を具体的に説明すると、針状化熱処理工程では、二酸化ルテニウム粉末とビスマス化合物とを混合して作製した第1の混合物に、熱処理を実施して第2の混合物を得て、室温まで冷却する。その冷却された第2の混合物を分離工程に処し、その分離工程では第2の混合物を、酸などに溶解して針状粒子の二酸化ルテニウム粉末を固液分離して得るものである。
【0031】
粒状の二酸化ルテニウム粉末は、例えば、SEMを用いて観察される一次粒子の平均粒径が100nm以下であり、粉末のアスペクト比が1.5未満の球状又は略球状粒子であることが好ましい。このような上記形状を有する二酸化ルテニウム粉末を原料として用いた場合、粒子長の方向に垂直な断面の最大幅が100nm以下の針状の二酸化ルテニウム粉末を容易に得ることができる。
【0032】
ビスマス化合物は、ビスマスを含む化合物であり、熱処理の際に、二酸化ルテニウムと合金化しないものであれば、公知のビスマス化合物を用いることができる。
ビスマス化合物は、例えば、塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、酸化ビスマス、これらの混合物などを用いることができる。中でも、塩化ビスマス及びオキシ塩化ビスマスのうち少なくとも一つを用いることが好ましく、オキシ塩化ビスマスを用いることがより好ましい。
【0033】
第1の混合物は、上記粒状の二酸化ルテニウム粉末と、上記ビスマス化合物とを混合して得られる。粒状の二酸化ルテニウム粉末とビスマス化合物との混合比率は、粒状の二酸化ルテニウム粉末に対するビスマス化合物のモル比が、例えば、0.1倍以上、5倍以下であり、0.5倍以上、3倍以下が好ましく、0.5倍以上、2倍以下がより好ましい。
【0034】
粒状の二酸化ルテニウム粉末とビスマス化合物とを混合する方法は、両者が十分に混合できる方法であれば特に限定されず、公知の混合装置を用いて混合することができる。たとえば、ボールミル、ライカイ機、シェーカーミキサーなどの一般的な混合装置を用いて混合することができる。
【0035】
針状化熱処理工程は、酸化性雰囲気下600℃以上、900℃以下の温度で行うことができる。熱処理温度を上記範囲で調整することにより、得られる針状粒子の二酸化ルテニウム粉末の長さである粒子長(L)や太さ(粒子長の方向に垂直な断面の最大幅φ1)を容易に制御することができる。
この熱処理の諸条件は、原料となる粒状の二酸化ルテニウム粉末及びビスマス化合物の種類や形状、混合割合などに応じて、針状の二酸化ルテニウム粉末が得られる範囲で適宜調整することができる。
例えば、熱処理の雰囲気は、酸化性雰囲気下とすることができ、大気雰囲気で行うことができる。なお、酸化性雰囲気とは、酸素を10容積%以上含む気体をいい、例えば、空気を使用することができる。また、熱処理時間は、特に限定されず、例えば、1時間以上4時間以下程度とすることができ、1時間以上3時間未満とすることが好ましい。
【0036】
分離工程では、第2の混合物(針状の二酸化ルテニウム粉末及びビスマス化合物を含む混合粉末)に含まれるビスマス化合物を溶剤に溶解させた後、得られた溶液中から、針状の二酸化ルテニウム粉末を固液分離する。
ビスマス化合物の溶解に用いられる溶剤は、二酸化ルテニウム粉末を溶解せずにビスマス化合物のみを溶解するものであれば、特に限定されず、例えば、無機化合物の酸(鉱酸)や有機酸などが使用できる。ビスマス化合物を溶剤に溶解させる際の条件は、特に限定されず、ビスマス化合物が溶剤に十分溶ければよい。例えば、溶解時の液温は、30〜60℃程度とすることができる。
【0037】
溶剤へのビスマス化合物の溶解後、針状粒子の二酸化ルテニウム粉末が分散し、溶解されたビスマス化合物を含む溶液が得られる。その得られた溶液から、固液分離処理を経て、針状粒子の二酸化ルテニウム粉末を得ることができる。固液分離して得られた針状粒子の二酸化ルテニウム粉末は、さらに、乾燥を行ってもよく、その乾燥温度や時間は、水分が除去できる温度であれば良い。
【0038】
針状粒子のルテニウム酸ストロンチウム粉末(SrRuO
3)などの針状ルテニウムの複合酸化物粉末を得るには、ストロンチウム等のルテニウム酸塩を構成するルテニウム以外の金属元素のキレート化合物の溶液と、針状の二酸化ルテニウム粉末とも混合して混合液を用意し、該混合液を乾燥によりゲル化させ、キレート錯体ゲルを得て、該キレート錯体ゲルを800℃以下の温度で熱処理することで得ることができる。
【0039】
[厚膜抵抗体組成物]
本実施形態に係る厚膜抵抗体組成物は、ガラスフリットとルテニウム化合物粉末を含有する。また、厚膜抵抗体組成物には、厚膜抵抗体の電気特性の一つである抵抗温度係数を調整するなどの効果がある公知のTiO
2粉末等を添加することもできる。
【0040】
[有機ビヒクル]
本実施形態で使用する有機ビヒクルは特定のものである必要はなく、厚膜抵抗ペーストを製造するのに一般に使用されるもので良い。乾燥及び焼成時の脱バインダーの際に揮発、分解して消失してしまうものが望ましい。下記の有機溶媒、たとえばエチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、アクリル樹脂等の樹脂を用いることができる。
【0041】
これらの樹脂をターピネオール等のテルペンアルコール類、リモネン等のテルペン類、ブチルカルビトールアセテートやブチルセロソルブアセテート等のエーテル類等の有機溶剤に溶かしたものを有機ビヒクルとして使用することができる。厚膜抵抗ペーストの粘度調整の為、ターピネオール等の有機溶剤をさらに添加してもよい。
また、厚膜抵抗体組成物をビヒクルに分散させる為に、分散剤として、カルボキシル基やアミノ基を備えた高分子分散剤、ステアリン酸等の脂肪酸、レシチン等のリン脂質類を添加してもよい。
【0042】
[厚膜抵抗ペーストの製造方法]
ルテニウム化合物粉末、ガラスフリット、有機ビヒクル、有機溶媒は均一に分散させることが望ましい。方法についての限定はないが、公知の3本ロールによる分散方法が好適である。
【0043】
[厚膜抵抗体の形成方法]
得られた厚膜抵抗ペーストを、スクリーン印刷によりアルミナなどのセラミックス基板上に厚膜抵抗体のパターンを印刷し、乾燥と焼成を経て厚膜抵抗体を形成することができる。
【0044】
焼成条件は、大気中でピーク温度800℃から900℃で、そのピーク温度の保持時間が5分間から60分間とする。また室温からピーク温度までの昇温時間を5分間から60分間とし、ピーク温度保持終了後、室温まで冷却される。焼成の過程の昇温の際に、厚膜抵抗ペーストの印刷膜に残留する有機溶剤や樹脂成分を除去する脱バインダー処理が行われる。
ピーク温度800℃から900℃で焼成された厚膜抵抗体は、膜厚5μm〜20μmに調整されており、より好ましい膜厚は8μm〜15μmである。
【0045】
さらに厚膜抵抗体は、その表面を600℃程度の焼成温度で焼成できるガラスペーストで被覆し、そのガラスペーストを焼成して厚膜抵抗体の保護膜とすることで保護膜付きの厚膜抵抗器とすることができる。このように厚膜抵抗体の表面をガラスペーストから形成された保護膜を配することで、厚膜抵抗器の表面を平滑にすることができる。
なお、厚膜抵抗体の形成に先立ち、セラミックス基板の表面に厚膜抵抗体の端子となる電極を公知の厚膜技術で形成してもよい。
【0046】
[厚膜抵抗体のパルストリミング]
焼成して得られた厚膜抵抗体の抵抗値をパルストリミング法で調整する。
具体的には、パルス電圧を厚膜抵抗体に印加し、所定の抵抗値となるまで、パルス電圧を印加する。印加電圧は、厚膜抵抗体の抵抗値により適宜選択すればよい。パルス電圧を逐次印加して印加前の抵抗値に対して印加後の抵抗値の変化率が小さいと、効率的な抵抗値の調整が困難となる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を用いて本実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0048】
針状粒子の二酸化ルテニウム粉末Aを13質量%、アルミノホウケイ酸鉛ガラスフリットBを50質量%、残部が有機ビヒクルからなる厚膜抵抗体組成物を3本ロールミルにより、その組成物を構成する各種無機材料が、有機ビヒクル中に分散する様に混錬し、実施例1の厚膜抵抗ペーストを作製した。なお、有機ビヒクルにはエチルセルロースを溶解したターピネオールを用いた。
【0049】
針状粒子の二酸化ルテニウム粉末Aの粒子長方向に対して垂直な断面の最大幅φ1が25nmであり、粒子長Lと、その最大幅φ1から求められる「粒子長(L)/断面における最大幅(φ1)」の式で表されるアスペクト比が2.0のものを使用した。針状粒子の二酸化ルテニウム粉末Aの粒子長(L)と断面の最大幅(φ1)は、TEM像で観測した。
【0050】
ガラスフリットBは、50%体積累計粒度が1.3μmで、軟化点が860℃であった。
有機ビヒクルは、ターピネオール85質量%とエチルセルロース15質量%を混合し80℃で溶解して調製した。
【0051】
[厚膜抵抗体の形成方法]
予め、アルミナ基板上に形成された0.3mm間隔の5対の厚膜Au電極間に、作製した厚膜抵抗ペーストを幅0.3mmで印刷し、ピーク温度150℃×5分のベルト炉で乾燥処理して溶剤成分のターピネオールを除去した。その後、ピーク温度810℃×9分のベルト炉で焼成した。同様の処理をした試料をアルミナ基板単位で5枚作製した。膜厚は、触針式の表面粗さ計(株式会社東京精密製 型番:サーフコム480B)を用いて、評価用試料の中からアルミナ基板単位で任意の1枚を選択し、5個の厚膜抵抗体の膜厚をそれぞれ測定したところ、5個の厚膜抵抗体の平均値は13μmであった。
【0052】
さらに、AGC製ガラスペーストAP5564を、前記厚膜抵抗体を覆うように塗布し、ピーク温度150℃×5分のベルト炉で乾燥処理した。その後、ピーク温度810℃×9分のベルト炉で焼成し、評価用サンプルとした。
【0053】
[厚膜抵抗体のパルストリミング]
評価試料の厚膜抵抗体に対し、電圧印加前の抵抗値Rsを測定した。そして、評価試料の厚膜抵抗体に「ESS−6008(株式会社ノイズ研究所製)」を用いて、200pFの電気容量、内部抵抗0Ωとして電圧を1500Vに設定して各電圧のパルスを印加した後、1秒の間隔をあけて、電圧1500Vのパルスを再度印加する条件で電圧印加を行い、電圧印加後の抵抗値Reを測定した。その抵抗値変化率を下記式(1)にて算出した。印加電圧とその時の算出した抵抗値変化率を表1に示す。
なお、抵抗値は、デジタルマルチメーター(KEITHLEY社製、2001番)で測定した。
【0054】
【数1】
【0055】
(比較例1)
略球状の粒状粒子の二酸化ルテニウム粉末Cを11質量%、粒状のルテニウム酸鉛粉末Dを2質量%、アルミナホウケイ酸鉛ガラスフリットEを45質量%、残部が実施例1と同じ有機ビヒクルからなる厚膜抵抗体組成物を3本ロールミルにより、組成物を構成する各種無機材料が有機ビヒクル中に分散する様に混錬し、比較例1の厚膜抵抗ペーストを作製した。なお、粒状の二酸化ルテニウム粉末Cは、その粒子長の方向に垂直な断面の最大幅(φ1)が20nmであり、アスペクト比が1.1のものを使用した。二酸化ルテニウム粉末の粒子長(L)と最大幅(φ1)は、実施例1と同様に、TEM像で観測した。
【0056】
ルテニウム酸鉛粉末Dは、TEM像で観測して、粒子長の方向に垂直な断面の最大幅(φ1)が50nmで、粒子長(L)と最大幅(φ1)で構成するアスペクト比が1.1の略球状の粉末であった。
ガラスフリットEは、50%体積累計粒度が1.4μmで、軟化点が660℃であった。
【0057】
また、実施例1と同様の方法で評価用試料の厚膜抵抗体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。各評価結果を表1に示す。なお、5個の厚膜抵抗体の膜厚をそれぞれ測定したところ、5個の厚膜抵抗体の平均値は8.6μmであった。
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示す通り、本実施例の針状粒子の二酸化ルテニウム粉末を用いて作製した厚膜抵抗ペーストにより形成された実施例1の厚膜抵抗体は、粒状粒子の二酸化ルテニウム粉末を用いて作製した従来の厚膜抵抗ペーストにより形成された比較例1の厚膜抵抗体に比べ、パルストリミング評価における抵抗値変化率が負に大きく、パルストリミング性が優れていることが分かる。