【課題】 耐電圧特性や耐サージ特性をほとんど低下させることなく小型化することが可能であり、且つ所望の抵抗値や抵抗温度係数を有し、電極の硫化断線を起こしにくい厚膜抵抗器を提供する。
【解決手段】 好適には角形チップ抵抗体の形態を有する厚膜抵抗器であって、絶縁基板21と、該絶縁基板21の少なくとも一方の面に形成された厚膜抵抗体22と、該厚膜抵抗体22の表面のうち、その両端部の電極接続面22aを除いて被覆する電気絶縁性の第1コート層23と、該第1コート層23で被覆されていない該厚膜抵抗体22の両端部の電極接続面22aにそれぞれ接続する1対の表面電極24とを備えており、該1対の表面電極24は、好ましくは該第1コート層23の両端部の表面をそれぞれ部分的に被覆している。
絶縁基板と、該絶縁基板の少なくとも一方の面に形成された厚膜抵抗体と、該厚膜抵抗体の表面のうち、その両端部の電極接続面を除いた部分を被覆する電気絶縁性の第1コート層と、該両端部の電極接続面にそれぞれ接続する1対の電極とを備えていることを特徴とする厚膜抵抗器。
前記絶縁基板の前記両端部に、前記1対の電極のうち前記第2コート層で被覆されていない部分及び前記絶縁基板の端面を覆う1対の端子電極が設けられていることを特徴とする、請求項5又は6に記載の厚膜抵抗器。
前記抵抗体ペーストの焼成温度が820〜880℃であり、前記ガラスペーストの焼成温度が580〜620℃であり、前記電極ペーストの焼成温度が580〜620℃であることを特徴とする、請求項9に記載の厚膜抵抗器の製造方法。
前記厚膜抵抗体形成工程の前に、前記絶縁基板の裏面に電極ペーストを印刷して焼成温度820〜880℃で焼成することで対となる裏面電極を形成する絶縁基板準備工程を有していることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項に記載の厚膜抵抗器の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の厚膜抵抗器の一具体例について、角形のチップ抵抗器を例に挙げて説明する。この本発明の具体例の厚膜抵抗器は、セラミック等の絶縁材からなる平面視矩形の絶縁基板と、該絶縁基板の少なくとも一方の面に形成された厚膜抵抗体と、該厚膜抵抗体の表面のうち、電圧印加方向(電流が流れる方向)の両端部の電極接続面を除いた部分を被覆する電気絶縁性の第1コート層と、該厚膜抵抗体の該両端部の電極接続面にそれぞれ接続する対となる電極とを備えている。かかる構成により、従来の厚膜抵抗器とは異なり、小型化しても耐電圧特性や耐サージ特性の低下を抑えることができるうえ、硫化腐食による断線を起こしにくくすることができる。
【0014】
すなわち、従来の厚膜抵抗器は、例えば
図1の角形のチップ抵抗器に示すように、セラミックなどの絶縁基板11の表面側の両端部に互いに離間するように設けられた1対の表面電極14と、これら1対の表面電極14を跨ぐ(架け渡す)ように設けられた厚膜抵抗体12とで構成されており、該厚膜抵抗体12の電圧印加方向の両端部は、それぞれ1対の表面電極14の互いに対向する側の表面に部分的に重なっている。
【0015】
この厚膜抵抗体12の表面は、全面に亘ってガラスからなる第1コート層13で被覆されており、該厚膜抵抗体12の抵抗値の調整(トリミング)のため、これら厚膜抵抗体12及び第1コート層13にはレーザー光により形成された溝状の切れ込み(トリミング部15)が設けられている。この第1コート層13の表面は、全面に亘ってガラス又は樹脂からなる第2コート層16で被覆されている。
【0016】
上記厚膜抵抗体12が設けられていないチップ抵抗器の裏面側の両端部には、互いに離間する1対の裏面電極17が設けられており、これら1対の裏面電極17と上記1対の表面電極14とをそれぞれ接続するようにチップ抵抗器の両端部には1対の端子電極18が設けられている。そして、チップ抵抗器の各端部において、これら表面電極14、裏面電極17、及び端子電極18を覆うようにニッケルめっき等からなるめっき層19が形成されている。
【0017】
上記のように、従来のチップ抵抗器は、厚膜抵抗体の両端部がそれぞれ1対の表面電極の表面上に重なるように形成されているため、該厚膜抵抗体のうち表面電極に重なっている部分は抵抗体としての役割を十分に発揮させることができず、よって厚膜抵抗体の有効長が厚膜抵抗体の電圧印加方向の端から端までの長さより短くなっている。
【0018】
前述したように、抵抗器の耐サージ特性や耐電圧特性は厚膜抵抗体の有効長が長い方が有利であるため、
図1の構造の従来のチップ抵抗器では、耐サージ特性や耐電圧特性を向上させることが困難であった。また、
図1の構造の従来のチップ抵抗器では、表面電極を形成したのち抵抗体ペーストを高温で焼成して厚膜抵抗体を形成するため、表面電極を構成する成分の抵抗体への移行(拡散)や、逆に抵抗体を構成する成分の表面電極への移行(拡散)によって、厚膜抵抗体の抵抗値や抵抗温度係数(TCR)が目標とする値から変動してしまうことがあった。
【0019】
これに対して、本発明の一具体例の厚膜抵抗器は、
図2及び
図3の角形チップ抵抗器に示すように、アルミナに代表されるセラミックなどの絶縁基板21の表面側に、厚膜抵抗体22がその電圧印加方向の端から端まで絶縁基板21に接するように設けられており、この厚膜抵抗体22の表面のうち該電圧印加方向の両端部の電極接続面22aを除いた部分が電気絶縁性の第1コート層23で被覆されており、この第1コート層23で被覆されていない上記電極接続面22aに1対の表面電極24がそれぞれ電気的に接続している。
【0020】
上記の厚膜抵抗体22及び第1コート層23には、レーザー光により切れ込みを入れることで抵抗値が調整(トリミング)されており、これにより平面視略L字状の溝からなるトリミング部25が設けられている。そして、該第1コート層23の表面を被覆すると共に、該1対の表面電極24を跨ぐ(架け渡す)ように、樹脂又はガラスからなる第2コート層26が設けられている。
【0021】
上記厚膜抵抗体22が設けられていないチップ抵抗器の裏面側の該電圧印加方向の両端部には1対の裏面電極27が設けられており、これら1対の裏面電極27と上記1対の表面電極24とをそれぞれ接続するように、チップ抵抗器の両端部には1対の端子電極28が設けられている。そして、チップ抵抗器の各端部において、これら表面電極24、裏面電極27、及び端子電極28を覆うようにニッケルめっき等からなるめっき層29が形成されている。
【0022】
上記のように、本発明の一具体例の厚膜抵抗器においては、その電圧印加方向の両端部における積層順序を、
図1の構造とは異なり、厚膜抵抗体22、1対の表面電極24の順に絶縁基板21側から積層するため、厚膜抵抗体22の有効長を
図1の構造に比べて長くすることができるので、従来のチップ抵抗器と同じサイズであっても、より優れた耐サージ特性や耐電圧特性等の電気特性を有するチップ抵抗器を提供することができる。換言すれば、耐サージ特性や耐電圧特性等の電気特性をほとんど低下させることなく小型化できるので、厚膜抵抗体の小型化と高い電気特性とを両立させることができる。
【0023】
また、本発明の一具体例の厚膜抵抗器は、その電圧印加方向の両端部において、1対の表面電極24が厚膜抵抗体22の表面上に形成されているので、第2コート層26を形成する前の状態において露出している1対の表面電極24の表面の面積を
図1の構造の従来のチップ抵抗器に比べて広くすることができる。これにより、レーザー光でのトリミングの際、抵抗値測定用のプローブを当接するための電極面積を十分に確保することができる。なお、上記1対の表面電極24は、上記した厚膜抵抗体22の電圧印加方向の両端部における電極接続面22aのみならず、該第1コート層23の表面のうち、該電圧印加方向の両端部をそれぞれ部分的に覆っていてもよい、これにより該1対の表面電極24の表面の面積をより一層広くすることができる。
【0024】
更に、本発明の一具体例の厚膜抵抗器は、後述するように厚膜抵抗体22の形成後の1対の表面電極24の形成工程において、電極ペーストの焼成温度を、抵抗体ペーストの焼成温度よりも低くすることによって、該1対の表面電極24を構成する成分の厚膜抵抗体22への移行(拡散)や、逆に厚膜抵抗体22を構成する成分の1対の表面電極24への移行(拡散)を抑制できる。これにより所望の成分組成をそれぞれ有する1対の表面電極24及び厚膜抵抗体22からなるチップ抵抗器を作製することができる。
【0025】
また、本発明の一具体例のチップ抵抗器は、厚膜抵抗体22及び第1コート層23を被覆する第2コート層26において、1対の表面電極24の各々の表面を部分的に被覆している部分の厚さを
図1に示す構造の従来のチップ抵抗器に比べて薄くすることができるので、結果的に各表面電極24の表面上で接している第2コート層26とめっき層29との厚みの差を従来のチップ抵抗器に比べて小さくすることが可能になる。これにより、これら第2コート層26とめっき層29との間の隙間が発生しにくくなる。
【0026】
すなわち、
図1に示す構造の従来のチップ抵抗器では、1対の表面電極14の各々の表面上で接している第2コート層16及びめっき層19は、厚みに大きな差があるのでこれらの間に隙間が生じやすく、そこから硫黄を含むガスが進入し、表面電極14が硫化腐食を起こして断線にまで至ることがあった。これに対して、本発明の一具体例のチップ抵抗器では、この硫化腐食の問題が生じにくく、よって、表面電極24の断線が起こりにくいので、チップ抵抗器の信頼性を高めることができる。
【0027】
上記のチップ抵抗器を構成する厚膜抵抗体22は、ルテニウム酸化物と、Ag、Pd、Cu等の導電物粉末と、ガラス粉末等の無機添加剤とからなる主成分に溶媒及びバインダー樹脂を混ぜて作製される抵抗体ペーストをスクリーン印刷し、必要に応じて乾燥した後、焼成することで形成することができる。この抵抗体ペーストの焼成温度は、820〜880℃が好ましい。なお、上記の抵抗体ペーストの主成分であるガラス粉末は軟化点が620℃以上であるのが望ましく、620℃以上820℃以下であるのがより望ましい。また、この厚膜抵抗体22の膜厚は、1〜20μm程度が好ましい。
【0028】
上記の第1コート層23は、上記厚膜抵抗体22の表面をその両端部の電極接続面22aを除いて覆うことで、該厚膜抵抗体22を表面電極24から絶縁させる役割を担っており、主成分のガラス粉末、適宜添加される顔料等の添加剤、溶媒及びバインダー樹脂を混ぜて作製されるガラスペーストをスクリーン印刷し、必要に応じて乾燥した後、焼成することで形成することができる。このガラスペーストの焼成温度は、580〜620℃が好ましい。このように第1コート層23を形成する際の焼成温度を前述した抵抗体ペーストの焼成温度より低くすることで、厚膜抵抗体本来の特性が損なわれることを抑えることができる。なお、この第1コート層23の膜厚は、3〜10μm程度が好ましい。
【0029】
1対の表面電極24は、Au、Ag、Pd、Cuやこれらの合金に代表される主成分としての比抵抗の低い粉末状の金属材料、セラミック基板との結合のためのガラス粉末、無機化合物の添加剤、溶媒及びバインダー樹脂を混ぜて作製される電極ペーストをスクリーン印刷した後、焼成することで形成することができる。この1対の表面電極24の金属材料としては、Pdを0.5〜20質量%含有し、残部がAgであるPd−Ag合金が一般的である。
【0030】
上記の電極ペーストの焼成温度は、580〜620℃が好ましい。このように、1対の表面電極24を形成する際の焼成温度を前述した抵抗体ペーストの焼成温度より低くすることで、1対の表面電極24を構成する成分の厚膜抵抗体22への移行(拡散)や、逆に厚膜抵抗体22を構成する成分の表面電極24への移行(拡散)を抑制することができる。なお、前述したように、抵抗体ペーストの主成分であるガラス粉末の軟化点を620℃以上にすることで、上記した第1コート層23や1対の表面電極24を形成する際の焼成温度において、1対の表面電極24を構成する成分が厚膜抵抗体22の内部に拡散する程度に軟化するのを抑えることができる。
【0031】
本発明の一具体例のチップ抵抗器は、1対の裏面電極27が絶縁基板21の下面側に形成されており、この形状は一般的に広く採用されている形状である。この1対の裏面電極27は、主成分としての比抵抗の低い粉末状の金属材料、溶媒及びバインダー樹脂を含んだ電極ペーストをスクリーン印刷した後、焼成することで形成することができ、上記の裏面電極27の金属材料としては、Agが最適である。該1対の裏面電極27は、上記の厚膜抵抗体22を形成する工程よりも前に形成することで、この1対の裏面電極27の形成の際の電極ペーストの焼成温度を820〜880℃にすることができる。
【0032】
上記の第1コート層23及び1対の表面電極24で覆われた厚膜抵抗体22のほぼ全体を覆う第2コート層26は、絶縁保護層の役割を担っており、樹脂ペーストをスクリーン印刷した後に熱硬化処理したり、ガラスペーストをスクリーン印刷した後に焼成処理したりすることで形成することができる。前者の樹脂ペーストで形成する場合は、150〜200℃で熱硬化処理するのが好ましい。一方、後者のガラスペーストで形成する場合は、580〜620℃の焼成温度で焼成処理するのが好ましい。なお、第2コート層26は、厚膜抵抗体22及び第1コート層23のトリミング部25を保護する役割も担っている。
【0033】
絶縁基板21の電圧印加方向の両端部に断面略コの字状に形成されている1対の端子電極28は、1対のめっき層29の下地の役割を担っている。この1対の端子電極28は、電極ペーストをスクリーン印刷した後に熱硬化処理したり電極ペーストをスクリーン印刷した後に焼成処理したりする厚膜成膜法か、あるいはNi−Cr等をスパッタリングする薄膜成膜法で形成することができる。これら1対の端子電極28、1対の表面電極24、及び1対の裏面電極27を覆う1対のめっき層29は、電解めっきにより形成することができる。
【0034】
次に、本発明の厚膜抵抗器の製造方法の実施形態について、該厚膜抵抗器が
図2に示す角形のチップ抵抗器である場合を例に挙げて説明する。
図2に示すような角形のチップ抵抗器の製造では、一般的に、セラミック製の1枚の大型の絶縁基板に複数の厚膜抵抗体や複数対の電極等を形成して複数個の抵抗体素子がマトリックス状に並んだ大型の絶縁基板を作製した後、この大型の絶縁基板を該抵抗体素子毎に縦横に分割し、各々に端子電極やめっき層を形成する方法が採用される。
【0035】
すなわち、本発明の実施形態の厚膜抵抗体の製造方法は、絶縁基板の裏面に電極ペーストを印刷して焼成温度820〜880℃で焼成することで対となる裏面電極を形成する絶縁基板準備工程と、絶縁基板の表面に抵抗体ペーストを印刷して所定の焼成温度で焼成することで厚膜抵抗体を形成する厚膜抵抗体形成工程と、該厚膜抵抗体の表面のうち、両端部の電極接続面を除いた部分にガラスペーストを印刷して該厚膜抵抗体形成工程の焼成温度より低い温度で焼成することで第1コート層を形成する第1コート層形成工程と、該厚膜抵抗体の両端部の電極接続面にそれぞれ重なるように電極ペーストを印刷して該厚膜抵抗体形成工程の焼成温度より低い温度で焼成することで対となる表面電極を形成する表面電極形成工程と、該厚膜抵抗体に対してレーザーによるトリミングを行う抵抗値調整工程と、該第1コート層を覆う第2コート層を形成する第2コート層形成工程と、該対となる表面電極及び対となる裏面電極をそれぞれ接続する対となる端子電極を形成する端子電極形成工程と、該対となる表面電極、対となる裏面電極、及び対となる端子電極をそれぞれ覆う対となるめっき層を形成するめっき工程とを有している。以下、これら工程の各々について説明する。
【0036】
絶縁基板準備工程では、セラミック製の矩形大形の絶縁基板の裏面側において、後工程で表面側に形成する複数の厚膜抵抗体にそれぞれ対応する位置に、Ag、Cuやこれらの合金からなるペーストをスクリーン印刷し、820〜880℃の焼成温度で焼成することによって複数対の裏面電極を形成する。
【0037】
厚膜抵抗体形成工程では、上記の複数対の裏面電極が裏面側に形成された大型の絶縁基板の表面側に、ルテニウム酸化物、Ag、Pd、Cu等の導電物粉末、及びガラス粉末を主成分とする抵抗体ペーストをスクリーン印刷し、必要に応じて乾燥を行って該抵抗体ペーストに含まれる溶剤成分を揮発させた後、820〜880℃の焼成温度で焼成して複数の厚膜抵抗体を形成する。
【0038】
第1コート層形成工程では、上記複数の厚膜抵抗体の各々の表面のうち、電圧印加方向の両端部に位置する電極接続面を除いた領域にガラス粒子を主成分とするガラスペーストをスクリーン印刷し、必要に応じて乾燥した後、580〜620℃の焼成温度で焼成することによって第1コート層を形成する。この第1コート層の形成用のガラスペースト又はこれを乾燥することで得られるガラスペースト乾燥膜の焼成は、次工程の表面電極形成工程の電極ペーストの印刷前に行ってもよいし、後述するように、該表面電極形成工程において印刷した電極ペースト又はこれを乾燥することで得られる電極ペースト乾燥膜の焼成と同時に行ってもよい。
【0039】
表面電極形成工程では、上記複数の厚膜抵抗体の各々の電圧印加方向の両端部に位置する両電極接続面、及び好ましくは第1コート層又はその焼成前の乾燥膜の上記電圧印加方向の両端部を覆うように、Au、Ag、Cuやこれらの合金粉末を主成分とする電極ペーストをスクリーン印刷し、必要に応じて乾燥した後、580〜620℃の焼成温度で焼成することによって複数対の表面電極を形成する。この電極ペースト又はこれを乾燥して得られる電極ペースト乾燥膜の焼成は、前述したように、上記ガラスペースト又はその乾燥膜の焼成とは別に行ってもよいし、ガラスペースト又はその乾燥膜と同時に焼成してもよい。
【0040】
抵抗値調整工程では、各厚膜抵抗体の抵抗値を所望の値に調整するため、第1コート層の上方からレーザービームを照射してトリミングを行い、好適には平面視略L字形状の溝からなるトリミング部を形成する。このトリミングの際、対応する1対の表面電極にプローブを当接させることで抵抗値の測定が行われる。なお、抵抗値の調整が必要でない場合はこの抵抗値調整工程は省かれる。
【0041】
第2コート層形成工程では、上記第1コート層を覆うと共に対となる表面電極を跨ぐ(架け渡す)ように、熱硬化樹脂ペースト又はガラスペーストをスクリーン印刷し、熱硬化樹脂ペーストであれば150〜200℃で熱硬化処理し、ガラスペーストであれば、必要に応じて乾燥してから580〜620℃の焼成温度で焼成処理することで第2コート層を形成する。
図2に示すように、この第2コート層は、対になっている表面電極の表面のうちチップ抵抗器の電圧印加方向の両端部側は覆わないようにする。
【0042】
端子電極形成工程では、大型の絶縁基板を個々の厚膜抵抗体素子毎に分割した後、それらの各々に対して上記の対になっている表面電極及び対になっている裏面電極をそれぞれ接続するように、分割された絶縁基板の電圧印加方向の両端部に電極ペーストをスクリーン印刷し、150〜200℃で熱硬化処理するか、又は580〜620℃の焼成温度で焼成処理することによる厚膜成膜法、あるいはNi−Cr等をスパッタリングする薄膜成膜法によって対となる端子電極を形成する。
【0043】
めっき工程では、分割された各抵抗体素子の両端部の各々において、端子電極、表面電極のうち第2コート層で被覆されていない露出部分、及び裏面電極に電解めっきによりめっき層を形成する。このめっき層の形成では、厚膜抵抗器の上記の3種類の電極を保護するためのニッケルめっきを下地として施した後、実装する際のはんだと馴染みの良い錫めっきを該ニッケルめっきの表面に施すのが好ましい。上記の一連の工程により、品質上のばらつきの少ない複数個の厚膜抵抗器を高い生産性で作製することができる。
【実施例】
【0044】
[実施例1]
下記に示す3種類のペーストを用いて絶縁基板の表面に厚膜抵抗体、第1コート層、及び表面電極をこの記載順に形成することで、評価用の厚膜抵抗器を複数個作製し、それらの特性を評価した。
【0045】
(1)抵抗体ペーストA
厚膜抵抗体の形成用の抵抗体ペーストには、公称面積抵抗値1000Ωの抵抗体ペーストであるR−13U(住友金属鉱山株式会社製)と、公称面積抵抗値10000Ωの抵抗体ペーストであるR−14U(住友金属鉱山株式会社製)とを混合することで調製した、面積抵抗値が約3300Ωとなる混合抵抗体ペーストAを用いた。このように混合する理由は、後述するように、電極間距離0.6mm、抵抗体幅0.3mmの厚膜抵抗器を作製したとき、その電極間の抵抗値が6700Ωとなるようにするためである。なお、これらR−13U、R−14U、及び混合抵抗体ペーストAは、いずれも大気雰囲気下においてピーク温度850℃の焼成温度で9分間かけて行う焼成処理に適した抵抗ペーストである。
【0046】
(2)第1コート層用ガラスペースト
第1コート層の形成用のガラスペーストには、大気雰囲気下において焼成温度600℃で5分間かけて行う焼成処理に適したガラスペーストである住友金属鉱山株式会社製のI−9760を用いた。
【0047】
(3)表面電極用Ag−Pdペースト
対となる表面電極の形成用の電極ペーストには、大気雰囲気下において焼成温度600℃で5分間かけて行う焼成処理に適したAg−Pdペーストである住友金属鉱山株式会社製のC−4420を用いた。
【0048】
評価用の厚膜抵抗器の評価項目には、下記に示す膜厚、面積抵抗値、及びサージ特性を採用した。
【0049】
(1)膜厚
同様の条件で作製した5個の厚膜抵抗器の各々に対して、触針の厚さ粗さ計(株式会社東京精密製、型番:サーフコム480B)により膜厚を測定し、得られた測定値を相加平均することで膜厚を求めた。
【0050】
(2)面積抵抗値
同様の条件で作製した25個の厚膜抵抗体器の各々に対して、その抵抗値をデジタルマルチメーター(KEITHLEY社製、2001番)で測定し、得られた測定値を相加平均することで面積抵抗値を求めた。
【0051】
(3)サージ特性
サージ特性は、ESD(静電気放電)で評価した。具体的には、同様の条件で作製した10個の厚膜抵抗器の各々に対して、レーザートリミングを行った後、200pFのコンデンサに2KVの電圧で充電した静電気を5回放電し、その前後における抵抗値の変化率を求め、それらを相加平均して得た平均値で評価した。
【0052】
評価用の厚膜抵抗器は下記の方法で作製した。先ず一辺の長さ1インチ(25.4mm)、厚み1mmの平面視正方形のアルミナ基板の表面に、長さ0.8mm、幅0.3mm、焼成後の膜厚約7μmの厚膜抵抗体が10個×3列のマトリックス状に並ぶパターンとなるように混合抵抗体ペーストAをスクリーン印刷した。次に、雰囲気温度120℃で10分間かけて乾燥処理を行うことで混合抵抗体ペーストAに含まれる溶剤を除去した後、大気雰囲気下でピーク温度850℃の焼成温度で9分間かけて焼成処理した。このようにして形成した焼成体からなる30個の厚膜抵抗体から任意に5個を選択し、それらの膜厚を測定した。
【0053】
次に、上記にて形成した30個の厚膜抵抗体の各々の長手方向(電圧印加方向)の両端からそれぞれ0.1mmの範囲を除く領域を覆うように第1コート層用ガラスペーストをスクリーン印刷した。その際、焼成後の膜厚が5μmとなるように第1コート層用ガラスペーストの印刷膜厚を調整した。上記のように第1コート層用ガラスペーストを印刷した後、雰囲気温度120℃で10分間かけて乾燥処理を行った。
【0054】
上記にて形成した第1コート層用ガラスペーストの乾燥膜で覆われていない各厚膜抵抗体の長手方向の両端部を覆うと共に該第1コート層の両端から0.1mmの領域を覆うように、表面電極用Ag−Pdペーストを各厚膜抵抗体に対して2個の一辺2.5mmの正方形が並ぶパターンとなるようにスクリーン印刷した後、雰囲気温度120℃で10分間かけて乾燥処理を行った。
【0055】
このようにして形成したAg−Pdペーストの乾燥膜を、上記第1コート層用ガラスペーストの乾燥膜と一緒に大気雰囲気下においてピーク温度600℃の焼成温度で5分間かけて焼成処理した。これにより、長手方向の両端からそれぞれ0.1mmの範囲の第1コート層で覆われていない電極接続面において1対の表面電極と電気的に接続している厚膜抵抗体を備えた厚膜抵抗器を30個作製した。各厚膜抵抗器の抵抗体は、長手方向の両端部を除いた長さ0.6mm幅、0.3mmの領域が第1コート層で覆われており、且つ電圧印加方向の両端部に1対の表面電極が電極間距離0.6mmでそれぞれ接続しているので、厚膜抵抗体の有効長は0.6mmとなる。
【0056】
上記にて作製した30個の厚膜抵抗器のうち任意に選択した25個の抵抗値を測定した。この抵抗値の測定後、抵抗値を10000Ωに調整するため、波長1.06μmのYAGレーザーを照射してレーザートリミングを行うことで厚膜抵抗体に第1コート層と共に平面視略L字状の溝からなるトリミング部を形成した。このレーザートリミング後、ESDによりサージ特性を評価した。
【0057】
[比較例1]
実施例1と同様のアルミナ基板の表面に30対の表面電極を各々対となる電極が互いに0.3mm離間するように住友金属鉱山株式会社製のAg−PdペーストであるC−4605を、一辺2.5mmの正方形が10個×6列で並ぶパターンとなるようにスクリーン印刷した後、雰囲気温度120℃で10分間かけて乾燥処理を行った。このようにして形成したAg−Pdペーストの乾燥膜を大気雰囲気下においてピーク温度850℃の焼成温度で9分間かけて焼成処理して30対の表面電極を形成した。なお、C−4605は、大気雰囲気下においてピーク温度850℃の焼成温度で9分間かけて行う焼成処理に適したAg−Pdペーストである。
【0058】
次に面積抵抗値が約6600ΩとなるようにR−13U及びR−14Uを混合した混合抵抗体ペーストBを調製し、これを各対の表面電極の互いに対向する側の端部に0.1mmずつ重ねることでこれらを跨ぐ(架け渡す)ように、幅0.3mmの帯状ペーストが10個×3列で並ぶパターンとなるようにスクリーン印刷した後、実施例1の条件で同様に乾燥及び焼成処理して厚膜抵抗体を形成した。なお、上記スクリーン印刷の際、焼成後の膜厚が約7μmとなるようにした。
【0059】
得られた各厚膜抵抗体の表面を全面に亘って覆うように第1コート層用ガラスペーストをスクリーン印刷し、実施例1と同様の条件で乾燥及び焼成した。このようにして比較例1の厚膜抵抗器を30個作製した。各厚膜抵抗器の抵抗体は、電圧印加方向の両端部に1対の表面電極が電極間距離0.3mmでそれぞれ接続するので有効長0.3mm、幅0.3mmとなる。以降は実施例1と同様に抵抗値を測定し、その後抵抗値を10000Ωに調整するため、波長1.06μmのYAGレーザーで厚膜抵抗体及び第1コート層に平面視略L字状の溝からなるトリミング部を形成した後、ESDによりサージ特性を評価した。その評価結果を実施例1の評価結果と合わせて下記表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
上記表1から分かるように、実施例1及び比較例1は第1コート層の形成後の平均抵抗値はほぼ同じ値であった。しかしながら、レーザートリミング後のEDSの評価結果では、実施例1は比較例1に比べて変化率が顕著に小さくなっており、このことから本発明の要件を満たす実施例の厚膜抵抗体は比較例1に比べて電気特性が優れていることが分かる。