【実施例】
【0031】
次に、実施例を示しながら、本発明について具体的に説明する。h/p等が互いに異なる複数の触媒コンバータについて、浄化性能及び圧力損失を評価した。
【0032】
平箔及び波箔に形成された各孔の直径は1.0mmとした。孔の形成領域は、ハニカム体の入側端部から5mm、出側端部から約5mmを避けた領域とした。孔の配置は、z方向に向かって互い違いとなる千鳥配置とした。
金属箔の箔厚は50μmに設定した。外筒の肉厚は1.5mmに設定した。平箔及び波箔を重ね合わせた状態で巻き回すことにより、直径50mm、長さ80mm、セル密度1インチあたり300セルのハニカム体を得た。
【0033】
セリア―ジルコニア―ランタナ−アルミナを主成分とし、100gあたりパラジウムを1.25g含有するウォッシュコート液をハニカム体に通し、余分なウォッシュコート液を除去した後、180℃で1時間乾燥し、続いて500℃で2時間焼成することにより、金属箔にウォッシュコート層をハニカム体の体積当たり乾燥後重量で200g/Lの量で担持させた。パラジウムの担持量は2.5g/Lであった。
【0034】
圧力損失は該触媒コンバータに所定流量に流量調整された常温の空気を流し、触媒コンバータ前後の圧力差を測定することにより評価した。本実施例においては、2.5Nm
3/分の流量の20℃の空気を流すことにより、圧力損失を評価した。これは、流速に換算すると平均で約21m/sになる。
【0035】
一方浄化性能は、300℃に加熱したモデルガス(一酸化炭素、プロピレン、一酸化窒素、酸素、二酸化炭素、水蒸気、窒素からなる混合ガス)を常温の触媒コンバータに所定の流量流し、プロピレンの濃度が50%低下するまでに要した時間を、コールドスタート時の浄化性能として評価した。モデルガスを構成する各ガスの濃度は、一酸化炭素:5000ppm、プロピレン:500ppm、一酸化窒素:500ppm、酸素:4500ppm、二酸化炭素:14%、水蒸気:10%とし、残部を窒素とした。標準状態で毎分300リットルを流して浄化性能を評価した。
【0036】
図3は比較例の配置であり、hとpの長さの比であるh/pは1.0であり、開口率は20%とした。
【0037】
図4は実施例の配置であり、pの値を
図3に示されているものに対して0.913倍、hの値を1.061倍にした。開口率は20%を維持した。すなわち開口率を20%に保った状態で、h/pの値を1.2に増加させた。
【0038】
図3に示したh/pが1.0の場合と、
図4に示したh/pが1.2の場合を比較すると、開口率が20%と同じ値で、浄化性能すなわちプロピレン濃度が50%低下するまでの時間は、ほぼ同一であった。しかしながら、
図4の例は
図3に比べてz方向の孔の間隔が広がっている。そのためガス流れ方向(z方向)における不要な乱流発生箇所が減少し、圧力損失が5%程度低下した。
【0039】
図5、
図6、
図7は本発明の他の実施例であり、それぞれpの値を
図3に示されているものに対して小さくし、hの値を大きくすることによって、h/pの値をそれぞれ1.5、2.0、3.0にした。開口率は同様に20%を維持した。この場合は、
図3に示したh/p=1.0のときと比較すると、コールドスタート時の浄化性能はほぼ変わらなかったが、圧力損失はそれぞれ9%程度、15%程度、20%程度低下させることができた。
【0040】
このように、開口率を同一の値に保ったままで、h/pの値を大きくしていくと、浄化性能を低下させることなく、圧力損失を減少できることがわかった。すなわち、コールドスタート時の高浄化性能と低圧力損失を両立できることがわかった。
【0041】
もちろん、同一のh/pの値で比較した場合は、開口率が大きい担体の方が、開口率が小さい担体よりも圧力損失が大きくなる。したがって、本発明のhとpの関係を満たさない開口率の小さい触媒コンバータよりも、hとpの関係を満たす開口率の大きい触媒コンバータの方が、圧力損失が大きくなる場合もあり得る。しかしながら、開口率の小さい担体は熱容量が大きくなるため、コールドスタート時の浄化性能が劣る場合もある。高浄化性能と低圧力損失との両立性という観点からは、本発明のh/pを満たす触媒コンバータの方が、トータルとしての性能に優れる。
【0042】
本来触媒コンバータの浄化性能とは、エンジンから排出される規制対象物質の量、目標とするテールパイプからの排出量の値などから決定されるべきものであって、目標とする排出量が達成されるのであれば、必要以上に圧力損失の増大を招く開口率の大きな触媒を使用する必要はない。その場合は、開口率の小さな触媒コンバータを用い、本発明のh/pの値を満足すれば、従来技術の孔開き担体と比較して、さらに低圧力損失が得られる。
【0043】
開口率を20%から40%に拡大して、同様の実験方法により、浄化性能及び圧力損失を評価した。開口率が20%の場合と同様に孔径を1.0mmに設定し、開口率以外の触媒コンバータの構成は開口率20%の場合と同じにした。
図8は比較例の配置であり、hとpの長さの比であるh/pは1.0とした。h/p=1.0の場合は、コールドスタート時の浄化性能すなわちプロピレン濃度が50%になるまでの時間は
図3に示す開口率20%の場合と比較して約17秒から12秒に短縮された。しかしながら圧力損失は開口率が増加したため15%程度増加した。
【0044】
図8に示されている、開口率40%の場合の従来技術の配置(h/p=1.0)に対して、
図9(実施例)のようにpの値を約0.91倍、hの値を約1.06倍にしてh/pの値を1.2にした場合、圧力損失を5%程度減少させることができた。同様に
図10(実施例)に示すようにpの値を0.816倍、hの値を1.155倍にして、h/pの値を1.5にした場合、圧力損失を9%程度減少させることができた。
【0045】
ただし開口率が40%の場合は、h/pの値をおよそ2.0以上にするとθ方向で隣り合う孔同士が連接される。孔同士が連接されると、開口率が減少するため、孔が連接するような配置は、本発明の概念からは除外する。
【0046】
孔径を2.0mmにして開口率を20%と40%にしたもの、孔径を4.0mmにして開口率を20%と40%にしたもの、孔径を6.0mmにして開口率を20%にしたものについて、同様に圧力損失と浄化性能を調査した。なお、開口率以外の触媒コンバータの構成は同じとした。その結果を
図11に示した。圧力損失は、孔径が1.0mmで開口率が20%の場合のときの圧力損失を1としてその比で現わした。
【0047】
同図のグラフから、開口率が高く、孔径が小さいものが、浄化性能は高いものの圧力損失が高くなることがわかった。図の最も右側の曲線が従来技術に相当するh/p=1.0の場合であって、h/pの値が大きくなるほど、曲線は左側にシフトすることがわかった。すなわち開口率及び孔径が同一の場合、h/pを大きくすることにより、浄化性能を維持しながら圧力損失が低下することがわかった。また孔径が小さいほど、同じ開口率でも浄化性能がよくなることから、乱流の発生が浄化性能向上に寄与しているものと推定される。
【0048】
ただし孔径が6.0mmになるとh/pの値を大きくすることによる圧力損失低減効果が小さくなるとともに、浄化性能も若干悪化することがわかった。したがって孔径は、6.0mm以下が好ましいことがわかった。
【0049】
箔厚を50μmから30μmに変更するとともに、セル密度を1インチあたり300セルから400セルに変更し、孔径及びh/pを変えることによる圧力損失と浄化性能の関係について調査した。なお、箔厚及びセル密度以外の触媒コンバータの構成は同様とした。
図12のその結果を示した。
図11の50μm/300cpsiの場合と比較して浄化性能が向上しているが、圧力損失と浄化性能の関係は、ほぼ同様の傾向を示すことを確認できた。
【0050】
50μmの箔に比べて30μmの箔は薄く、箔自体の熱容量が小さいので温まりやすく、もともと暖機性能には優れるため、浄化性能は向上する。ただし、箔厚が薄いので当然高温環境や熱サイクル環境、排ガスの脈動に対する耐久性の面では厚い箔からなる担体よりも劣る。またセル密度を高くすると、エンジンの高速回転時における高流量下での浄化性能を向上させる効果があるが、その分圧力損失が高くなるので、箔厚、セル密度はそれぞれ使用される環境に応じて適宜選択することが望ましい。
【0051】
本発明の変形例として、
図13に示されるように、孔8が格子状に配置される場合は、pとhはそれぞれθ方向、z方向の孔同士の距離であることは言うまでもない。
図14に示されている配置は、
図13に示す孔の位置から、θ方向に並ぶ孔列が、一列おきにθ方向にオフセットされている場合である。この場合においても、pとhは図のように定義される。
【0052】
上述の実施形態では、平箔及び波箔を重ね合わせた状態で巻き回した捲回体によってハニカム体を構成したが、本発明はこれに限るものではなく、平箔及び波箔を交互に積層したハニカム体にも適用することができる。
【0053】
以上述べたように、本発明によれば、コールドスタート時の浄化性能を損ねることなく、圧力損失を低減できる触媒コンバータを提供する。